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朝鮮半島をめぐる今後の国際関係の展望 (2005 年度財務省委嘱研究会 ) 第 3 章北朝鮮のエネルギー事情 国士舘大学 21 世紀アジア学部 教授小牧輝夫 はじめに 北朝鮮は 1990 年代後半における経済の危機的な状況から 2000 年代初めに回復兆候が出始め 2005 年には中国経済への依存を

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第3章 北朝鮮のエネルギー事情

国士舘大学21 世紀アジア学部 教授 小牧 輝夫 はじめに 北朝鮮は、1990 年代後半における経済の危機的な状況から 2000 年代初めに回復兆候 が出始め、2005 年には中国経済への依存を強めながら、回復基調が定着してきた。北朝 鮮経済の現在の回復程度は、ピークであった 1990 年頃の水準に比べ、おおよそ 70~ 80%と見られる。今後の経済回復がどこまで進むかは、基本的に、北朝鮮が核問題をは じめとする懸案問題と国内のエネルギー問題をどのように解決するかにかかっていると言 えよう。 本章では、北朝鮮のエネルギー問題を北朝鮮経済の現況の中に位置づけて分析するため に、まず、2005 年の経済概況と 2006 年の経済展望を提示しておきたい。そのうえで、 石炭への依存度が極めて高い北朝鮮のエネルギー構造を概観し、次に、エネルギーの需給 状況や政府のエネルギー政策に言及する。 この 1~2 年の大きな動きとして、北朝鮮経済と中国経済の密接化が顕著であるが、そ れがエネルギー分野でもさまざまな形で現れている。北朝鮮の鉱物資源に対する中国の投 資、海底油田の中朝共同開発の動きなど、注目すべき動きが出てきた。 1.2005 年の北朝鮮経済の概況と 2006 年の展望 (1)農業を最優先した経済政策 北朝鮮では、2005 年が労働党創建 60 周年、「祖国光復」60 周年に当たる節目の年で あったことから、1950 年代の「千里馬大高潮」の時期のように「前例のない生産的高 揚」を実現するよう、国民に強く呼びかけた。また、2005 年の経済運用政策でもっとも 大きな特徴は、農業が「今年の社会主義経済建設の主攻戦線である」と規定したことで あった。 2006 年 1 月 1 日の労働新聞など 3 紙の共同社説では、2005 年の経済建設の成果とし て、①農業にすべての力を集中し、総動員することにより、農業生産で新たな前進をもた らした、②大安親善ガラス工場や白馬-鉄山水路建設などの記念碑的な「創造物」が建設 された、③基幹産業と重要な工業部門の多くの工場、企業所で生産的高揚が起こったとし、 「国の経済全般が確固とした上昇の軌道に乗るに至った」と評価した。 実際、農業は順調であった。政府は、土地整理事業や水路建設といった農業基盤整備と ジャガイモ栽培や二毛作の奨励、それに種子改良などを引き続き推進したほか、年初より 農業生産とくに食糧生産増大のためのキャンペーンを繰り広げ、田植えや収穫時には都市

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住民や兵士を動員した。天候が比較的順調であったことや、韓国の肥料支援 35 万トンの 効果もあり、結果的に、2005 年の食糧生産は 1990 年代に入って以来、最高の収穫をあ げたようである。公式発表はないが、北朝鮮の経済専門家は 10 月末段階の暫定的な推定 として、「少なくとも 500 万トンから 600 万トン」という数字を示したが、最終的には、 籾ベースで 500 万トン以上(精米ベースで 400 万トン以上)の収穫をあげたようである。 なお、韓国の農村振興庁は、2005 年の穀物生産量を精米ベースで 454 万トン、前年比 5.3%増と推定している。 そうした食糧生産改善の動きを受けて、2005 年 10 月から食糧配給制の「正常化措 置」がとられた。食糧の配給制は廃止されていたわけではないが、食糧の絶対量が不足す る中で、断続的で部分的な配給にとどまっていた。政府は、これを正常な状態(規定では 成人1 人当たり 1 日 700 グラム)に戻すこととし、国家が配給のための食糧を確保する ため、市場での穀物販売を再禁止した。この配給制正常化措置は、2005 年の最も重要な 経済的措置であった。 政府がこの措置に踏み切った背景には、もちろん食糧生産がある程度改善したことがあ る。しかし、配給制を正常化したといっても、全国的に完全に実施できるほど食糧が確保 されているとは思えない。農民からの買上価格を引き上げたとはいえ、市場での穀物販売 を禁止することは、農民の生産意欲を阻害する可能性もある。そうしたリスクにもかかわ らず、政府があえてこうした措置をとったのは、市場の食糧価格が高騰し、国民の不満が 強まったためではないかと推測される。 穀物価格は、2002 年 7 月の経済管理改善措置で大幅に引き上げられ、コメの場合、国 定価格が1 キロ 0.08 ウォンから 44 ウォンへと 550 倍になったが、その後も市場では高 騰し、数百ウォンに達したケースも伝えられていた。賃金も引き上げられたが、物価の上 昇には追いついていない。穀物価格の高騰を利用した不正蓄財なども広がり、当局として、 放置できなくなったようである。さらにまた、国際的な食糧支援の代償として、外国人に よるモニタリングなどの活動を受け入れてきたが、軍事上および体制上、これ以上は好ま しくないとの判断をしたものと思われる。そのため、配給制度正常化とあわせて、国際的 な食糧支援の受け入れを中止するとの意向を表明した。 ただし、2005 年は食糧生産が順調であったが、それでも精米ベースでの最低必要量 500 万トン(加工用などを含めれば 600 万トン)には達していない。北朝鮮の農業生産 は、まだまだ天候に左右される要素が大きいだけに、配給制度が完全に正常化し、今後も 維持できるかどうか、見通しはなお不透明である。北朝鮮では現在、800 万トン(籾ベー ス)を目標とする食糧増産 5 ヵ年計画を実施中と伝えられているが、当初の目標年度で ある2007 年までの達成はすでに困難となっている。 一方、基幹産業部門についても、後述するように、電力生産が多少とも改善する傾向に あることから、工業生産はまずまずの実績を挙げたようである。前年 2004 年の場合、国 家歳入の増加率を予算では 5.7%と策定していたが、決算では 1.7%の低い伸びにとど まった。これと関連して、一時好調を伝えられていた工業生産もやや腰砕けとなり、増加

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表 3-1 公表された工業生産額増加率と国家歳入増加率の推移 (単位:%) 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 工業生産額増加率 - - 10 2 12 10 - 未発表 国家歳入増加率 0.4 0.05* 5.6* 3.5* 3.0* 14.6* 1.7* (15.1) ( 注 )-は非公表を示す。*は公表された数値からの試算。歳入増加率は決算ベースであるが、()内 は予算ベースである。 (出所)各年度内閣活動報告および財政報告。 率の実績が発表されないという結果になった。それと比べれば、2005 年の歳入増加率や 工業生産増加率が高まったことは確かであろう。しかし、電力、石炭、金属工業、鉄道輸 送などのいわゆる先行部門とされる基幹産業について、具体的な成果は、なお発表されて おらず、工業生産額増加率を含め、4 月の最高人民会議での内閣事業報告と財政報告を待 つ必要がある。 表 3-1 は、1988 年以降の公表された工業生産額増加率と国家歳入増加率の推移を示し たもので、どの程度信憑性があるかという問題はあるが、両指標の間にはそれなりの連関 性が見られる。最高人民会議で2005 年の工業生産額増加率が発表される場合、決算ベー スの歳入増加率と比較・検討することで、ある程度、その妥当性が検証されよう。いずれ にせよ、前年の増加率が(非公表であることから)低かったはずであり、その分、2005 年の増加率が高くなったものと思われる。 (2)中国経済との密接化 2005 年の経済動向で著しい特徴は、対外経済関係での大きな動きである。アメリカが 北朝鮮の麻薬や偽ドル取引疑惑に関連して北朝鮮に対する金融制裁の姿勢を強めたし、日 本も拉致問題と関連して各方面での規制を強めた結果、日朝貿易が2004 年の 2 億 5,000 万ドルから2005 年には 2 億ドルを下回る水準にまで縮小した。そうしたなかで、中国と は、貿易に加え投資関係が大きく進展し、韓国とは、食糧や肥料支援のほか、開城工業団 地事業が進展するなど、両国との経済関係が一段と密接となり、きわめて対照的であった。 中国経済との緊密化は2004 年ごろからの傾向であるが、2005 年には 10 月の呉儀副首 相とそれに続く胡錦濤総書記の訪朝を軸に経済関係がいっそう強まった。それをもっとも 象徴している大安親善ガラス工場(日産 300 トン)は、中国の無償援助 2 億 6,000 万元 (約3,200 万ドル)によるものであるが、こうした大規模な工場施設が中国から提供され たのは初めてのことである。中国の対北朝鮮投資は、大韓貿易投資振興公社(KOTRA) によると、2003 年の 130 万ドルから 2004 年に一挙に 8,850 万ドルに急増した。2005 年 には、中国から北朝鮮に対する投資がさらに増加したものと思われる。中国からの投資は、 投資分野が従来のホテルをはじめとするサービス産業中心から、資源開発や製造業、さら に、流通や運輸にまで広がってきた。資源開発では、茂山鉱山(鉄鉱石)を中心に銅鉱山

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など金属鉱山や、また、後述する炭鉱などエネルギー分野の開発にまで及んできた。製造 業部門では、平壌に大規模な自転車工場が合弁で建設され、操業を開始した。 中国との経済関係の密接化は、貿易関係に反映されており、中朝貿易は 2005 年には総 額15.8 億ドルに達し、前年比 14.1%増となった。南北間の貿易も、2005 年には 10.6 億 ドルとはじめて10 億ドルの大台を超え、前年比 51.4%の急増ぶりを示した。日朝貿易は、 2005 年には 1.9 億ドルで前年比 23.0%減であった。詳細は別稿に譲るが、こうした状況 からみて、北朝鮮の 2005 年の貿易額の全体は 40 億ドルの大台を超えたことは確実で、 場合によっては過去最高である1990 年の 41.8 億ドル前後に達した可能性もある。40 億 ドル台というのは、約 2,300 万人の人口をもつ国の貿易規模としては少ないが、1998 年 には16.6 億ドルに落ち込んでいたことを考えれば、回復がめざましい。 国内部門を中心とする北朝鮮経済の全般的な回復度は、財政規模や重要品目の生産水準 から判断して、1990 年水準の、およそ 70%台と推定しうる。しかし、貿易額だけはすで に2004 年に 85%に達し、2005 年には、ほぼ 100%に達したことになる。 北朝鮮では、「自立的民族経済論」の立場から、これまで貿易依存度は相対的に低く抑 えられてきた。しかし、経済規模が小さい北朝鮮の場合、ここ 2~3 年の急速な貿易の拡 大によって、貿易依存度は高まってきた。北朝鮮の中国への経済的依存が、はたして今後 どこまで強まるのかは即断できないが、前述した胡錦濤総書記訪朝時の経済・技術協力協 定締結や2006 年 1 月の金正日総書記の訪中・経済関係施設の視察などから見ると、少な くとも当分の間、こうした傾向が続くものと思われる。このことは、北朝鮮経済が対外経 済部門をテコとして回復する可能性や、中国への経済依存の深化が周辺諸国に及ぼす影響 など、さまざまな問題を提起しており、注目する必要がある。 (3)今後の経済展望 今後の北朝鮮経済の展望はどうであろうか。当面の 2006 年の経済に関しては、3 紙共 同社説で「社会主義強盛大国建設で一大飛躍を遂げる全面的攻勢の年」と規定された。比 較的順調であった 2005 年の実績を背景に、さらに経済の回復を進めたいとの意思表明で ある。経済建設の優先順位は、農業が引き続き「主攻戦線」とされ、農業以外では電力、 石炭、金属工業、鉄道輸送といった基幹産業を最重視する方針で、2005 年とまったく同 じである。また、「先軍政治」のスローガンの下、国防工業は他の産業と別格扱いにし、 「国防工業に必要なあらゆるものを最優先的に保障すべきである」としているのも、前年 と同様である。 2006 年の共同社説で注目されることは、経済建設の戦略として、「改建現代化」を強 調したことである。これは、資金的になお大きな制約がある中で、全面的な設備の更新や 近代化は不可能であることを前提に、改造に重点を置いた設備の近代化が必要であること を強調したものである。また、こうした「改建現代化事業」を「経済のすべての部門、す べての単位」で実施するよう求めたことは、経済回復がある程度進展し、ようやく全国的 規模で設備の近代化に目を向けることができる段階にきたことを意味している。

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在日朝総連傘下の朝鮮新報は 2006 年 1 月 13 日のインターネット版で、「(朝鮮で は)今年から基幹工業と農業で 3 年連続計画を実施することになっている」と伝え、 2008 年までに基幹工業と農業で達成すべき生産目標が提示されていること、および目標 は大体において 1980 年代後半の生産水準の再現であることを明らかにした。現在までの ところ、北朝鮮のメディアはこのことについてなにも報道していないが、朝鮮新報がこれ まで北朝鮮の経済改善措置などについての報道で果たした実績からみて、事実と思われる。 しかし、この「3 年連続計画」が、2003 年から実施されたとされるエネルギー増産 3 ヵ年計画、食糧増産 5 ヵ年計画、科学技術発展新 5 ヵ年計画などとどのような関係にあ るのか、また 1994 年以来中断されている長期経済発展計画と同水準の計画なのか、不明 な点が多い。ただし、目標が 1980 年代後半の水準に置かれている点は、筆者が試算した 北朝鮮経済の回復水準から見て、妥当であるとの印象を受ける。 北朝鮮の経済改革の行方については、さまざまな見方がありうるが、今後も当分、全面 的な市場経済化への転換はなさそうである。また、市場での食糧の販売禁止など再統制的 な動きもあるが、これらは、いわば微調整の範囲とみられ、「社会主義の原則を堅持しつ つ最大限の実利を追求する」という実利主義は基本的に維持されており、経済回復を進め るためにも、その点の変更はないものと思われる。 以上のようなことを総括してみると、北朝鮮経済は、今後も当分の間、アメリカ・日本 との厳しい緊張関係を抱えつつも、①国連安保理レベルでの経済制裁の実施や軍事的対決 に至らず、②中国経済の成長が続き、③韓国が支援政策を続ける限り、回復基調を維持す る可能性が高い。 2.北朝鮮のエネルギー事情の概況 (1)特異な 1 次エネルギー供給構造 北朝鮮経済のもっとも重要な問題の一つがエネルギー問題である。北朝鮮では、「電力 と石炭は経済の生命線である」(1999 年 1 月 1 日の 3 紙共同社説)と指摘しているよう に、エネルギーの確保問題は、経済再建のカギと言っても過言ではない。 そうした観点から見るとき、まず、北朝鮮のエネルギー供給構造が、国際的にも極めて 特異であることを指摘しなければならない。表3-2 は、国際エネルギー機関(IEA)が推 定した2003 年の北朝鮮の 1 次エネルギー供給構造であるが、石炭の比率が 84.2%と非常 に高い。原油と石油製品を合わせた石油類が 5.7%、水力、CRW(薪、木炭、動物の排 泄物などの可燃性再生可能エネルギーおよび廃棄物)が各 5.1%である。北朝鮮の場合、 石炭の供給のほとんどが国内生産によるものである。IEA の統計によると、1 次エネル ギーのなかで石炭の比率が高い国は、北朝鮮以外では、南アフリカ共和国 74.4%、ポー ランド 61.5%、中国 60.1%などであるが、北朝鮮は断然 1 位である。ちなみに、原油へ の依存度が高い韓国では、石炭の比率は 22.9%であり、北朝鮮と違って、石炭の大部分 を輸入に依存している。

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表 3-2 北朝鮮の 1 次エネルギー供給構造(2003 年、原油換算) (単位:1,000TOE* 石炭 原油 石油製品 水力 CRW 電力 合計 16,730 0 0 1,008 1,022 0 18,760 237 570 662 0 0 0 1,469 -184 0 0 0 0 0 -184 0 0 -100 0 0 0 -100 構成比 (%) 生産 輸入 輸出 在庫増減 一次エネルギー 供給合計 16,783 570 562 1,008 1,022 0 19,944 100 0 5.1 5.1 2.8 2.9 84.2 ( 注 )IEA 推定。ただし、構成比は筆者の試算。CRW は、薪、木炭、動物の排泄物などの可燃性再生可 能エネルギーおよび廃棄物。*TOE は石油換算トン。

(出所)IEA, 2003 Energy Balances for DPRK.

表 3-3 北朝鮮の 1 次エネルギー供給構造(原油換算) (単位:1,000TOE) 構成比 構成比 構成比 構成比 (%) (%) (%) (%) 1985 24,940 18,750 75.2 1,960 7.9 3,110 12.5 1,120 4.5 1990 23,963 16,575 69.2 2,520 10.5 3,748 15.7 1,120 4.7 1995 17,280 11,850 68.6 1,100 6.4 3,535 20.5 795 4.6 1996 15,836 10,500 66.3 1,436 9.1 3,109 19.6 791 5.0 1997 14,746 10,300 69.8 1,006 6.8 2,656 18.0 784 5.3 1998 14,030 9,300 66.3 1,400 10.0 2,554 18.2 776 5.0 1999 14,955 10,500 70.2 881 5.9 2,794 18.7 780 5,2 2000 15,687 11,250 71.7 1,117 7.1 2,540 16.2 780 5.0 2001 16,230 11,550 71.2 1,250 7.7 2,650 16.3 780 4.8 2002 15,638 10,950 70.0 1,253 8.0 2,655 17.0 780 5.0 2003 16,079 11,150 69.3 1,219 7.6 2,930 18.2 780 4.9 2004 16,535 11,400 69.0 1,230 7.4 3,125 18.9 780 4.7 水力 その他* 合計 石炭 石油 ( 注 )韓国政府推定。*その他には薪、廃棄物加熱などが含まれる。 (出所)韓国・統計庁『南北韓社会像比較』2005 年(原資料は国家情報院)。 表3-3 は、独自な計算方法をとっている韓国政府が推計した、北朝鮮の 1 次エネルギー 供給構造である。これによると、石炭の比率は 2003 年で 69.3%、2004 年で 60.0%と なっており、IEA の推計より大分低いが、それでも国際的に非常に高い部類であること に変わりない。また、長期的に見ても、石炭の比率はあまり変わっていない。 北朝鮮のこうした 1 次エネルギー供給構造のために、石炭生産の動向がエネルギー問 題に重大な影響をもたらす。1990 年代になって、1 次エネルギーの供給量が大きく減少 し、1998 年には 1990 年の 58.5%まで低下した。その後は回復過程にあるが、2004 年で は、なお 69%の水準にとどまっている。北朝鮮の主要炭鉱では生産力が低迷しており、 また産出される石炭の品質が低下し、低カロリー炭が増えている。これは、鉱脈が複雑に

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なってきたほか、資金と技術不足のため、新たな炭鉱の開発が進まないためと思われる。 また、全量を輸入に頼る石油の供給量が、ピークである1990 年に比べ、ほぼ半減してい ることも、北朝鮮のエネルギー不足の大きな原因となっている。 (2)電力事情はわずかに改善 北朝鮮のエネルギー供給において、最も重要視されているのは電力である。北朝鮮の電 力は水力と火力からなるが、自力更生の原則から、石油への依存を少なくするため、火力 発電は主として石炭に依存している。石炭生産の低迷から、必然的に電力不足の状況が続 いているが、火力、水力を問わず、設備の老朽化と故障も電力不足の原因となっている。 政府は、水力発電では中小型の発電所の建設のほか、最近は大規模な水力発電所の建設 も再開して設備増強に努めている。他方、火力発電では新規の建設は行わず、既存発電所 の修理・改造で出力を増やす方策をとっている。 核問題の行き詰まりで KEDO による重油供給が中止され、一時電力不足が極めて深刻 となったが、2003 年から実施されたエネルギー増産 3 ヵ年計画などによって、わずかな がら電力事情は改善されつつある。とくに平壌の場合、停電が相対的に少なくなり、ア パートの電灯は夜遅くまで点灯するようになったことや、路面電車やトロリーバスなどの 運転本数にも回復傾向が見られる。 しかしながら、全国的には電力不足問題は、なお深刻であることに変わりない。主要工 場への電力供給が多少改善され、操業率はやや上昇したが、なお正常化するには至ってい ない。KEDO の軽水炉事業は、2005 年 11 月に米・日・韓・EU の間で事業の廃止が合 意され、2006 年1月、残っていた最後の要員が撤収した。こうしたことから、北朝鮮は、 核問題解決の条件として、KEDO に代わる、6 カ国協議の枠組みによる新たな軽水炉の 提供を要求し始めた。一方で北朝鮮は、凍結されている寧辺(5 万 kW)と泰川(20 万 kW)原子炉の建設再開の動きも見せている。核兵器開発問題とは別に、原子力発電への 強い志向がある。大規模な水力発電所の建設には多大なコストと時間がかかり、老朽化し た火力発電所の設備更新や新設も資金的に困難な状況にあるためである。北朝鮮は、引き 続き原子力発電に執着し、その獲得に努めるものと思われる。 3.エネルギー需給の現状と問題点 (1)1 次エネルギーの需給 IEA の推定によると、2003 年の北朝鮮の 1 次エネルギー供給合計は、表 3-2 で見たと おり、1,994 万 TOE である。これが、各エネルギー別・部門別にどのように消費される かを示したものが、表 3-4 である。1 次エネルギーの中心である石炭の場合、1,678 万 TOE のうち、15.3%が発電所で消費され、64.5%が工業部門で消費される。

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表 3-4 北朝鮮の一次エネルギーの部門別消費(2003 年) (単位:1,000TOE) 石炭 原油 石油製品 水力 CRW 電力 合計 16,783 570 562 1,008 1,022 0 19,944 2,571 0 -440 -1,008 0 1,809 -2,210 0 -570 556 0 0 0 -14 -70 0 0 0 0 0 -70 0 0 -17 0 0 -172 -189 0 0 0 0 0 -286 -286 14,141 0 661 0 1,022 1,351 17,175 10,818 0 94 0 0 676 11,588 0 0 525 0 0 0 525 3,323 0 42 0 1,022 676 5,062 住宅 0 0 42 0 1,022 676 42 その他 3,323 0 0 0 0 0 5,021 供給合計 発電所 精油所 工業部門 輸送部門 その他 石炭変換 自家消費 送電ロス 最終消費合計 ( 注 )IEA 推定。CRW は、薪、木炭、動物の排泄物などの可燃性再生可能エネルギーおよび廃棄物。 (出所)IEA, 2003 Energy Balances for DPRK(国際原子力機関 IEA のホームページより作成)。

(2)石炭の需給 北朝鮮における石炭生産は、かつて公式発表では 5,000 万トンとか 8,000 万トンとか いわれたこともあるが、実際には、それほどの生産量には達していないようである。石炭 生産量は、IEA の推定と韓国政府の推定は同一である。表 3-5 のとおり、韓国政府の推 定によると、石炭生産量は、1990 年の 3,315 万トンから 1998 年には 1,860 万トンまで 低下し、その後、やや回復して、2004 年には 2,280 万トンとなっている。 これを、1990 年を 100 とする指数で見ると、1998 年は 56、2004 年では 69 となる。 IEA によると、2003 年の石炭生産量 2,230 万トンのうち、30 万トンが輸出され、国内供 給量は 2,200 万トンである。そのうち、発電所での消費が 372 万トン(生産量の 16.7%)、工業部門が 1,452 万トン(同 65.1%)である。 (3)電力の需給 北朝鮮では火力発電と水力発電の比率は、ほぼ半々といわれる。IEA の推定によると、 表3-6 のとおり、2003 年の北朝鮮の電力生産は 210 億 3,500 万 kWh であるが、うち火 力は石炭が39.4%、石油が 4.9%、小計 44.3%、水力が 55.7%である。一方、韓国政府の 推定によると、表 3-7 のとおり、火力と水力の比率は長期的に変動しており、1980 年代 後半から水力の比率が漸増している。2003 年で、ほぼ 60 対 40、2004 年では、61 対 39 の水準にある。 電力の消費構造を見ると、IEA 推計では表 3-6 のとおり、エネルギー部門で全体の 9.5%を、工業部門で 37.4%、その他の最終消費が同じく 37.4%を占める.このほか、北 朝鮮の電力不足の一つの重要な要因である送配電ロスが15.8%と見積もられている。

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表 3-5 石炭生産の推移 (単位:1,000 トン) 年 生産量 指数 年 生産量 指数 1985* 37,500 113 1999 21,200 64 1990 33,150 100 2000 22,500 68 1995 23,700 71 2001 23,100 70 1996 21,000 63 2002 21,900 66 1997 20,600 62 2003 22,300 67 1998 18,600 56 2004 22,800 69 ( 注 )*1985 年は生産能力基準。 (出所)韓国・統計庁『南北韓社会像比較』2005 年(原資料は国家情報院)より作成。 表 3-6 北朝鮮の電力供給と消費(2003 年) (単位:100 万 kWh) 生産合計 21,035 (%) 21,035 (%)   石 炭 8,292 39.4 1,995 9.5   石 油 1,023 4.9 3,325 15.8   水 力 11,720 55.7 15,715 74.7   その他 0 0 工業 7,858 37.4 その他 7,857 37.4 消費合計  エネルギー部門  送配電ロス  最終消費 ( 注 )IEA 推定。 (出所)IEA ホームページより作成。 北朝鮮の発電量は、韓国政府の推定によると、表 3-7 のとおり、1998 年を底に、2004 年には206 億 kWh となり、基本的に回復傾向にある。それでも、ピークの 1990 年に比 べ、74.4%の水準にとどまっている。電力不足の問題に対処するため、北朝鮮政府は 2005 年 4 月の最高人民会議で、「既存の火力発電設備をフル稼働させ、発電所の改造・ 補修に引き続き大きな力を入れて電力生産を正常化する」(朴奉珠首相)との方針を示し た。この方針の下に、建設中の大規模水力発電所と中小型発電所の建設を推進し、29 万 kW 余りの新たな発電能力を獲得することを目標とした。ちなみに、韓国政府の推定では、 北朝鮮の2004 年の発電設備容量は、777.2 万 kW である。 2005 年中の大きな話題になったことの一つは、7 月に、核問題の解決を条件に、韓国 が北朝鮮に 200 万 kW の電力を供給することを提案したことである。もっとも北朝鮮は、 この提案は受け入れなかった。エネルギー安保の観点から拒否したものと思われる。これ とは別に、同年 3 月から、韓国電力が開城工業団地のパイロット工場向けに 1 万 5,000kW の小規模な送電を開始した。なお南北間では、2007 年に、同団地第 1 段階 (100 万坪)向けに 10 万 kW の電力を供給することで合意している。

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表 3-7 北朝鮮の発電量 (単位:億kWh) 構成比(%) 構成比(%) 1985 251 123 49 128 51 1990 277 156 56.3 121 43.7 1995 230 142 61.7 88 38.3 1996 213 125 58.7 88 41.3 1997 193 107 55.4 86 44.6 1998 170 102 60 68 40 1999 186 103 55.4 83 44.6 2000 194 102 52.8 92 47.2 2001 202 106 52.5 96 47.5 2002 190 106 55.8 84 44.2 2003 196 117 59.7 79 40.3 2004 206 125 60.7 81 39.3 合 計 水 力 火 力 ( 注 )韓国政府推定。 (出所)韓国・統計庁『南北韓社会像比較』2005 年(原資料は国家情報院)。 表 3-8 北朝鮮の石油供給と消費(2003 年) (単位:1,000 トン) 原 油 ガソリン 灯 油 ディーゼル 住宅燃料 生 産 0 185 37 201 116 輸 入 566 30 3 84 562 在庫増減 0 0 0 0 -104 国内供給合 計 566 215 40 285 574 転換合計 566 0 0 0 458 発電所 0 0 0 0 458 精油所 566 0 0 0 0 エネルギー 部門 0 0 0 0 18 最終消費合 計 0 215 40 285 98  工業 0 0 0 0 98  輸送 0 215 0 285 0  住宅 0 0 40 0 0 ( 注 )IEA 推定。 (出所)IEA ホームページより作成。 (4)石油の需給 北朝鮮の石油の需給に関しては、IEA の推定は表 3-8 のとおりである。原油は 2003 年 の場合、56.6 万トン輸入された。これに対し、表 3-9 に示された大韓貿易投資振興公社 (KOTRA)の推定では、2003 年の原油輸入量は 57.4 万トン、2004 年は 61.3 万トンで ある。IEA と KOTRA の数字には多少の違いはあるが、大きく離れてはいない。北朝鮮

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表 3-9 北朝鮮の年度別原油輸入実績 (単位:万トン) 中国 タイ リビア イエメン イラン ロシア シリア 合計 1991 110.0 - - - 75.0 4.0189.0 1992 110.0 - 20.022.0 - - 152.0 1993 105.0 - 10.0 - 21.0 - - 136.0 1994 83.0 - 8.0 - - - - 91.0 1995 102.0 - 8.0 - - - - 110.0 1996 93.6 - - - - - - 93.6 1997 50.6 - - 60.0 - - - 110.6 1998 50.3 - 5.3 - - - 5.3 60.9 1999 31.7* - - - - - - 31.7 2000 38.9 - - - - - - 38.9 2001 57.9 - - - - - - 57.9 2002 47.2 - - - - 12.559.7 2003 57.4 - - - - - - 57.4 2004 53.2 8.1 - - - - - 61.3 ( 注 )KOTRA 推計。*1998 年度無償援助 8 万トン中、残余分である 20,527 トンを含む。 (出所)大韓貿易投資振興公社(KOTRA)「2004 年北韓の対外貿易動向」(2005 年 5 月)。 表 3-10 原油輸入量の推移 (単位:1,000 バレル) 年 輸入量 指数 年 輸入量 指数 1985 14,369 78 1999 2,325 13 1990 18,472 100 2000 2,851 15 1995 8,063 44 2001 4,244 23 1996 6,861 37 2002 4,376 24 1997 3,709 20 2003 4,207 23 1998 3,694 20 2004 3,900 21 ( 注 )韓国政府推定。 (出所)韓国・統計庁『南北韓社会像比較』2005(原資料は国家情報院)より作成。 は最近、原油を年間約 60 万トン輸入していると見てよいであろう。北朝鮮はかつて、原 油を最大 300 万トン程度輸入したことがあり、それに比べると、最近の輸入量は大きく 落ち込んでいる。この点は経済の落ち込みと直接つながっている。 表3-9 では、相手国別輸入量が示されている。これによると、原油の輸入先はほとんど が中国であり、年によって、まれにタイ、ロシア、中東産油国から少量が輸入されている。 したがって、北朝鮮の原油輸入は、中国からの輸入で、おおよその動向がわかる。北朝鮮 の原油輸入量は、1990 年代の初めに比べ、最近のレベルは約 3 分の 1 に、また中国から の原油輸入量は約2 分の 1 に減少している。 表3-10 は、韓国政府推定の原油輸入量であるが、前 2 者と異なり、バレル表示となっ ている。この推計で1990 年の 1,847 万バレルを 100 として試算すると、2004 年の水準

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表 3-11 北朝鮮の中国からの原油輸入 原油輸入額 原油輸入量 トン当たり平均単価 (1,000ドル) (トン) (ドル) 1994 87,438 832,785 105.0 1995 130,853 1,021,519 128.1 1996 118,698 936,170 126.8 1997 64,635 506,147 127.7 1998 48,400 503,931 96.0 1999 30,963 317,241 97.6 2000 75,570 389,236 194.1 2001 108,757 579,278 187.7 2002 76,468 472,167 162.0 2003 121,004 573,558 211.0 2004 139,326 531,785 262.0 ( 注 )トン当たり平均単価は、単純に原油輸入額を輸入量で割ったものである。 (出所)『中国・海関統計年報』各年版より作成。 表 3-12 北朝鮮の鉱物燃料の対中輸入・輸出額 (単位:100 万ドル) 対中国輸入総額 鉱物燃料輸入額 比率(%) 対中国輸出総額 鉱物燃料輸出額 比率(%) 2001 573.1 161.8 28.2 166.7 4.3 2.6 2002 467.7 118.4 25.3 270.8 11.3 4.2 2003 627.6 180.5 28.8 395.3 17.3 4.4 2004 799.5 204.7 25.6 585.7 53.1 9.1 2005 1,081.20 285.7 26.4 499.2 112 22.4 (出所)『中国・海関統計』各年 12 月号より作成。 は、ほぼ5 分の 1 に当たる 21 と大きく減少している。 北朝鮮の中国からの原油輸入を、輸入額と輸入量を比較しながら見ると、表 3-11 のと おり、その輸入単価が 2000 年代以降、急上昇していることがわかる。1994 年の原油輸 入額を輸入量で割るとトン当たり単価は 105 ドルであった。その後、やや上昇して 120 ドル台となるが、北朝鮮経済がもっとも苦しかった 1998 年、1999 年には 96 ドル、98 ドルと引き下げられた後、2000 年に急騰して 194 ドルにとなる。その後、やや反落する が、2003 年から再び騰勢を強め、2004 年には 262 ドルに達した。国際的な原油価格は 2005 年以降急騰したので、その後さらに輸入単価が上昇した可能性がある。 北朝鮮の中国からの輸入額が、2003 年以降に急拡大しているが、そのなかで鉱物燃料 の輸入額が大きく増加している。表3-12 のとおり、鉱物燃料の輸入額は、2001 年の 1.6 億ドルから2005 年の 2.9 億ドルに大きく増えている。これは、原油の輸入量はあまり増 えていないのに、輸入単価が上昇したことが作用している。 表 3-12 のとおり、北朝鮮の中国からの輸入総額のうち、原油を中心とする鉱物燃料輸 入額が占める比率は、この数年間は 25~28%台で比較的安定してきた。しかしながら、

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表 3-13 北朝鮮の中国向け無煙炭輸出

(単位:万ドル) 2001 2002 2003 2004 2005(1~4) 輸出額 171 739 1,543 4,908 2,519

(出所)The Daily NK, No.144(2005 年 6 月 5 日)。

中国に対する輸出総額のうち、鉱物燃料の占める比率が 2003 年以降急上昇し、2005 年 には 22.4%という異常な拡大ぶりである。これは、中国の高度成長に伴い、エネルギー 不足が強まり、北朝鮮から中国への石炭輸出が急増していることを示している。 表 3-13 は、北朝鮮の中国向け無煙炭輸出の動向である。輸出額は、2001 年の 171 万 ドルから年々拡大し、2004 年には 4,908 万ドルに達した。2005 年には、最初の 4 ヶ月 だけで 2,519 万ドルに上っており、年間では 1 億ドルに達しても不思議ではない。ただ し、北朝鮮自身も石炭が不足しており、こうした燃料資源の輸出がどこまで可能か注目さ れる。北朝鮮の中国に対する地下資源輸出が増えている背景には、こうした部門に対する 中国の投資が急増していることがある。無煙炭の場合、中国側が掘削機械などを提供し、 その見返りに無煙炭を受け取るという補償貿易的な形の投資が一般的である。 そうした中で、中国の金属製品生産・販売大手の五鉱集団公司が 2005 年 10 月、北朝 鮮貿易省と石炭関連の合弁会社を設立することに合意した。同集団の周中枢総裁は、呉儀 副首相の訪朝団に随行して北朝鮮入りした。北朝鮮で、資源分野において、正式に外資系 企業の合弁会社設立が認められたのは初めてである。 4.原油の開発問題 北朝鮮では、エネルギー不足の問題を解決するため、石炭の増産、電力の増産にもっと も大きな努力を傾注しているが、最近は、その他の再生可能なエネルギーの開発にも目を 向け始めた。とくに、太陽電池は、平壌市の光復通りの 5 階建てアパートなどに実験的 に設置され、太陽エネルギー利用住宅として推進している。風力発電についてはドイツや 日本からの導入を含め、研究開発中である。そのほか、潮力発電の研究も行われているが、 まだ実験段階の域を超えていない。 そうした中で、原油の探査に拍車がかけられており、その結果が注目される。 北朝鮮の原油探査は 1965 年に開始され、最も有望とされる西海の南浦沖合などを中心 に、外国の探査会社によるものを含めて推進されている。1980 年代後半には、イラン、 オーストラリアの探査会社が南浦沿岸で探査・試掘を行なった。1993 年に原油探査総局 が原油工業部(現・採掘工業省)に格上げされ、金正日総書記の指示で本格的に探査事業 が行われるようになった。1997 年に原油工業部が発表した資料によれば、原油の埋蔵が 予想される地域は、西朝鮮湾盆地、安州盆地など海・陸を合わせて7 地域である。

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こうした探査事業に関連して、一時、探査成功のうわさも流れた。たとえば、韓国の朝 鮮日報は2001 年 6 月、北朝鮮が平安南道の海底油田で 1998 年ごろ原油の試掘に成功し、 すでに生産に入っていると報道した。また、2002 年 8 月には、シンガポールに拠点を置 くソブリン・ベンチャーズが、咸鏡北道の会寧、穏城地域で油田と天然ガスを発見したと 伝えられた。同社は2001 年 9 月に朝鮮石油開発会社から、外国企業としては初の内陸部 での25 年(3 年間は地震探査、2 年間は掘削、20 年間が生産期間)にわたる採掘権を取 得したという。しかし、いずれも商業ベースに乗るだけの油量が確保できず、明確な成果 がないまま今日に至っている。 現在、最も注目されているのは、イギリス・アイルランドの石油開発会社であるアミ ネックス(Aminex:ロンドンとダブリンの証券市場にて上場)による石油探査である。 各種の報道を総合すると、現在、アメリカ、ロシア、タンザニアで操業している同社のブ ライアン・ホール CEO(最高経営責任者)によれば、同社は 2004 年 6 月に北朝鮮政府 と、陸と海の両方での独占的な石油探査契約(期間20 年)を結んでおり、約 2 年半にわ たり、1,000 万ドルを投資して開発に当たるという。なお、ホール CEO は、2005 年 1 月 17 日のロイターとのインタビューで、埋蔵量を 40~50 億バレルと推定しており、 「多くの困難があるが、楽観視している」と述べている。 これとは別に、2005 年 12 月 24 日、北朝鮮は中国との海上での原油共同開発に関する 協定に調印し、各方面の関心を集めている。協定は、中国を訪問した北朝鮮の政府代表団 の盧斗哲副首相と中国の曾培炎副首相が署名した。韓国の連合ニュースによると、投資規 模は 5 億ドルと言われているが、対象地域をはじめ具体的な内容は一切発表されていな い。しかし、双方副首相による協定署名であることから、埋蔵可能性が高いのではないか との観測が出ている。 これまで、北朝鮮の西海岸沿海は原油埋蔵の可能性が高いといわれてきたが、2005 年 10 月、中国海洋石油総公司が渤海湾で新たな油層を発見したとし、推定埋蔵量は 660 億 バレルであると発表したことから、大陸棚でつながっている西海岸沿海の埋蔵可能性が いっそう強まった。 この地域の原油開発は、北朝鮮の資金難や探査施設の老朽化などのほか、中国との国境 紛争の可能性があることや、アメリカの北朝鮮に対する経済制裁の影響で石油メジャーが 探査を忌避してきたこともあって、進展しなかった経緯がある。北朝鮮が、中国の資金と 技術を利用することが出来れば、事態は変わる可能性が高い。 韓国・朝鮮日報のインターネット版(NKchosun.com,2005.12.26)は、北朝鮮と中国 の油田共同開発が、北朝鮮の経済回復の問題だけでなく、北東アジアの軍事戦略問題にも 大きな意味をもつとして、中国の軍事専門家である葉剣による「(中朝)両国は油田地域 を保護するために、共同巡察艦隊を構成することもできる」との発言を引用し、今後の動 きに注目している。

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おわりに 北朝鮮の困難なエネルギー事情は、石炭への高い依存とともに、資金や技術不足で長期 にわたって開発が遅れたことの結果であり、短期間に解決できる問題ではない。さらに、 核問題などの懸案問題のため、北朝鮮がエネルギー開発で国際的な支援を受けるのは難し い。しかし、中国が北朝鮮のエネルギー開発に協力するということになれば、限定的であ るにせよ、事態はかなり違ってこよう。すでに、一般貿易面で北朝鮮経済と中国経済の密 接化は顕著であるが、さらに投資面での密接化が進展すれば、北朝鮮のエネルギー開発、 ひいては、全般的な経済回復にも大きく影響する可能性がある。 中国による東シナ海の天然ガス開発では、日本との関係が大きな外交問題になっている ことから、中国が海底油田の共同開発という形で、北朝鮮に対して積極的に働きかけた可 能性もある。北東アジアの国際関係にも影響するところが大きいので、今後の動きを注目 すべきであろう。

表 3-3  北朝鮮の 1 次エネルギー供給構造(原油換算)  (単位:1,000TOE)  構成比 構成比 構成比 構成比 (%) (%) (%) (%) 1985 24,940 18,750 75.2 1,960 7.9 3,110 12.5 1,120 4.5 1990 23,963 16,575 69.2 2,520 10.5 3,748 15.7 1,120 4.7 1995 17,280 11,850 68.6 1,100 6.4 3,535 20.5 795 4.6 1996 15,836 1
表 3-4  北朝鮮の一次エネルギーの部門別消費(2003 年)                                                    (単位:1,000TOE)  石炭 原油 石油製品 水力 CRW 電力 合計 16,783 570 562 1,008 1,022 0 19,944 2,571 0 -440 -1,008 0 1,809 -2,210 0 -570 556 0 0 0 -14 -70 0 0 0 0 0 -70 0 0 -17 0 0 -172 -189 0
表 3-7  北朝鮮の発電量                                  (単位:億 kWh)  構成比(%) 構成比(%) 1985 251 123 49 128 51 1990 277 156 56.3 121 43.7 1995 230 142 61.7 88 38.3 1996 213 125 58.7 88 41.3 1997 193 107 55.4 86 44.6 1998 170 102 60 68 40 1999 186 103 55.4 83 44.6 2000 1
表 3-9  北朝鮮の年度別原油輸入実績                                                (単位:万トン)  中国 タイ リビア イエメン イラン ロシア シリア 合計 1991 110.0 - - - 75.0 4.0 - 189.0 1992 110.0 - 20.0 - 22.0 - - 152.0 1993 105.0 - 10.0 - 21.0 - - 136.0 1994 83.0 - 8.0 - - - - 91.0 1995 102.0 - 8.
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