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大学生涯学習研究の現代的視角

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長 崎大学教 育 学部 妃要 一教 育科 学 一 62号 1‑9 (20023月)

大学 生涯学 習研究の現代 的視角

猪 山 勝 利

Mode r nAngl eofSt udyonLi f el ong Lear ni ngofUni ve r s i t y

Ka t s ut os hiI YAMA

I

.間鹿 の所在

本稿 は、大学 な ど高等教 育機 関が現代 的生涯学 習 に対応す るための現代 的課題研 究 の視 角 を明 らか にす るこ とを 目的 としてい る。

国 内的 に も、 国際的 に も生涯学 習 システムの形成が本格化 す るに したが って、生涯学 習 の推進 に大学 な ど高等教育機 関の果 たす役割 が期待 されつつ あ る。大学 開放 にお いては「後 発 国」 であ る と言 われて きた 日本 にお いて も、1990年代 にはいって大 学 開放 は急激 に高 ま

りつつ あ る。しか し、その開放動 向は早稲 田大学 な ど歴 史的蓄積 のあ る一部私大 を除 いて、

公 開講座 な どの部分・開放 に止 まってい るのが現状 であ る。今 後、大学 内外 の要 因に よって 大学 開放 は急速 に拡 充 して い くと思 われ るが(1)、 それ だけ に大 学 開放 や大 学生涯 学 習 の現 代 的在 り方 を把握 してい くこ とが不可 欠 とな って い る。本稿 は、大学生涯学 習 の現代 的在 り方 を研 究す る視角 を提示す るこ とに あ るが、基本 的 には以下 の諸点 に焦点 をあてて論究 す る。

第 1に、 これか らの大学 が対応す る生涯学習の基本性格 の把握 であ る。

この点 を論 究す るのは、 日本 の大学 開放 が始動 した1980年代 の生涯 学習政策 が いわゆ る

「生 きが い」教養教 育 を推進 していたため、大学 開放 は公 開講座 方式 の高度 な教養教育 の提 供 サー ビス とす る視 点が、今 日も多 くの大学開放 の基本 とな ってい るか らで\あ る。 この視 点 は、近代 「中期 」 の ≪生涯教 育》 の地平 に対応す る大学 開放 であ り、近代 「後期 」 の現 代社会 が推進 しょうとして い る ≪生涯 学習》の地平 に対 応す る大学 開放 とは言 えない。

第 2に、大学生涯学 習の大 学機能 におけ る位 置づ けで あ る。

後述 す るよ うに、 国際的 には欧米 を中心 に大学 開放 は基本機 能 として位 置づ け されて き たが、 日本 では基本機 能外 の 「奉仕 」 的機 能 とされが ちであ った。 したが って、大学 開放

‑参加 す るのは、 「奉仕精神 」のあ る個 々 の教 員 の 自主活動 であ り、教 月 の 「本務 」外 の活 動 とされが ちであ った。 しか し、今 日、大学生涯学 習 は基本機 能 とされつつ あ る。

第3に、大学 開放 ・大学生涯学 習 の展 開構造 であ る。

大学 開放 ・生涯 学習が大学 に基本機 能 として定着す るには、大学 の教育、研 究 システム 内へ の 内在 的位 置づ けが求 め られ る。従 来 の公 開講座 な ど特別枠 の開放 システム主体 か ら、

正規 システム内の開放 システムの構築 が不 可欠 となって い る。

(2)

第 4に、大学 開放推進方策 の問題 であ る。

その1は、大学改革 のため に、近年大学法制 も改訂 されて きたが、 その焦点 は大学経営 や伝 統的学生教育 に重点が置かれてお り、大学生涯学習 にかかわ る法制 改訂 は弱体 であ り、

本格 的 な法制改訂 は これか らの課題 であ る。

その2は、大学 内の大学生涯学習推進 システムの問題 であ る。大学生涯学習 を推進 して い くには、大学 開放法制 の改訂 と併行 して、大学 内の大学生涯学習推進 システムの形成が 不可 欠であ る。現在 、国公私 立の多 くの大学 で生涯学習系 セ ンター が創設 されつつ あ るが、

弱体 なシステムに止 まってい る。今 後、大学生涯学習 を本格 的に推進 してい くには、推進 システムの本格 的整備 が求め られてい る。

第 5に、大学生涯学 習推進 コラボレー シ ョンの問題 であ る。

従 来 日本 の大学 自体 が社会 的に閉鎖 的 であ り、大学生涯学 習の推進 も大学独 自に推進 さ れて きた。 しか し、今 日、 多 くの大 学 で他 の生涯学習 との連 関が始動 してい る。大学生涯 学習 も現代社会 が推進 しょうとしてい る生涯学 習の一環 であ り、現代生涯学習構 造 との連 関が不可欠 な課題 とな りつつ あ る。

第 6に、大学生涯学習推進へ の社会対応問題 であ る。

大学が閉鎖 的であった こ との反照 として、社会 の大学‑ の対応 も閉鎖的 であった。今 後、

大学生涯学 習 を本格 的 に推進 してい くには、社会 の大学開放 へ の対 応 を拡 充 してい くこ と が課題 であ る。

Ⅰ .

「知創造」社会の教育推進原理 と しての生涯 学習

1960年代 に 「生涯教育」 として提 唱 され た教育思想 は、近代工業社会 の技術革新や社会 構造変化 に対応 して、人々が社会 「適応」す るための近代 「中期」教育思想 であった。 し たが って、その推進原理 としては、当時OECDが提 唱 した よ うに、 と くに社会 的不利益層 の幼 児期 か らの教 育 の拡 充や社会 人の リカレン ト教育 (学校教育 回帰)が主流 であ った。

つ ま り、基本 としての近代学校教育 システムは改革 しないで、学校教育 が「補完」、「拡 張」

す る教育形態 で対応す るか、成人教 育 (日本 では社会教 育) に よる対応 を推進 システム と して対応す る教育 であった。 日本 では、高学歴化 に よる中等教育や 高等教 育 の拡 充や企業 内教 育の拡 充が進展 したため、社会 人教育 は基本的にはいわゆ る 「生 きが い」学習 を中心 に公 民館 な ど公 的 な社会教育 か民間教育事業 の拡 充 に よって対応 し、大学 の対応 は公 開講 座 な どの 「高度」生 きが い教養教育 を提供 す るに止 まっていた。

しか し、1990年代 にはい って、 グローバ ル化やITの進展が基底 とな り、 人間 を 「人材

(ヒューマ ン リソー ス)として資源、手段要 因 とす る工 業社会 システムか ら、人間 を「人財」

(ヒューマ ンキャ ピタル)として主体要 因 とす る 「知 識基盤」社会 システムへ の転換が生起 しは じめ てい る(2)0

その動 向に対応 して近代 「後期 」教育 システムの転換が始 まろ うとしてい る。 その端的 な シンボルが、OECDの各 国大 臣 レベ ルの教 育委月会 レポー ト"LIFELONGLEARNING FORALL"(1996年)であ り、 「リカ レン ト教 育か ら、生涯学習へ」が基調 として提 唱 され てい る。OECDレポー トは、知創造社会へ の転換 を支 えるために、すべ ての人々‑ の生涯 にわた る教 育 の現実 的保 障 を基調 として、学校教育 を含め た教育推進 システムの転換 を提

(3)

猪 山 :大学生涯学 習研 究 の現代 的視角 3

嶋 して い る。 と くに、 主体 的 学 習 を基本 として、‑ イテ ク ノロ ジイの学 習や クロス ー カ リ キュ ラム方 式 の学 習 を推 進 す る と共 に、 学 習 と仕事 な どを総合 化 した主体 的、実 践 的学 習 を強調 し、社 会 人教 育 として は成 人教 育 機 関 の整備 と と もに 「改革 した」 学校 教 育 の新 た な対 応 を強調 して い る。 と くに、大 学 な ど高等教 育 機 関 は生 涯 学 習 の ため に 「拡 張

型 の 開放 (OPEN)か ら、 さ らに大 学 改革 を基 盤 とした 「拡 大 」 型 の開放 (OPEN‑UP)へ 転 換 して い くこ とか 強調 され て い るO

この動 向 の基底 に は、国民 の高度 な知 的、技術 的 な学 習 内容 へ の要 求 の高 ま りと と もに、

学 習者 の知 的基盤 の質 的進 展 が あ る。 す なわ ち、 開発 国 の 国 民 の学 歴構 成 は 中等教 育段 階 に達 して お り、 高等教 育 ‑ の主体 的学 習 基盤 が成 熟す る と ともに、 高 等教 育 後 の リカ レン

ト教 育 基 盤 も成 熟 して い るの で あ る。

さ らに、 日本 に お いて は社 会 人 の 中等教 育 後 の継 続教 育 は産 業 界 が企 業 内教 育 と して推 進 して きたが 、今 日、 内容 的 に も、 経 費的 に も対 応 が 困難 とな りつ つ あ る こ とが あ る(3)0

Ⅲ.大 学 の基 本機 能 と しての 開放 ・生 涯 学 習機 能

現代 の生涯 学 習 に対 応 して い くに は、 大 学 自体 の改革 、即 ち大 学 の 基本機 能 の 改革 が不 可 欠 で あ るが、 その ため に は大 学 開放 の 第 3段 階 で あ る現代 の大 学 開放 の性格 を とらえ る 必要 が あ る。

19世 紀 の後 半 に イ ギ リスか ら始動 した第 1段 階 の大 学 開放 は、〔大 学 の社 会 サー ビス して

「教 養 教 育 拡 張」 型 の大 学 開放 を推 進 し、世 界 の 高 等教 育機 関 の大 学 開放 を主 導 して きた。

1960年 代 の技術 革新 を基底 とす る社 会 人 の リカ レン ト教 育 要 求 の高 ま りは、 第2段 階 の 大 学 開放 を始動 させ 、 ア メ リカ合 衆 国 の大 学 が主 導 して 〔大 学 の教 育 拡 充機 能 〕 と して第 1段 階 の大 学 開放 を継承 、発 展 させ た継 続 高 等教 育 型 の 「職 業 、生 活教 育拡 張 」 を推 進 し て きた。 第2段 階 の大 学 開放 は、 第 1段 階 の正 規 の教 育 「外 」拡 張 型 か ら正 規 の教 育 シス テム 「内」 の開放 (社 会 人学 生 ) を も含 む 開放 型 を推 進 して い るこ とで あ る。

しか し、1990年 代 に は い って、世 界 の大 学 開放 は第3段 階 を迎 えて い る。 す なわ ち、大 学 開放 は、既 存 の大 学 の基本 機 能 と連 関す る基本機 能 として位 置づ け られつ つ あ り、 それ に と もな って大 学 生 涯 学 習 も大 学 の基 本機 能 として位 置づ け られ よ う と して い る(4)。 これ か らの大 学 の基本 機 能 は、研 究機 能 、伝 統 的学 生 の教 育機 能 と並 ぶ基 本機 能 と して大 学 開 放 機 能 を位 置づ け る トラ イア ン グル機 能 と して位 置づ け られ、研 究 と連 関 した大 学 生 涯 学 習大 学 の基本機 能 として 内包 され て い くで あ ろ う。

第 1段 階、 第2段 階 、 第3段 階 の大 学 開放 段 階 を図示 す れ ば、 以下 の よ うに とらえ られ よ う。

図 1〈大 学 開放 の発 展段 階 )

発 第 第 第 展 2 3 1 段 段 段 段 階 階 階 階

大 学拡 大大 学拡 張大 学拡 充開放 の性格 教 育機 能 の拡 充開放 の機 能 的性格機 能 外 サ ー ビス基本機 能 教 養 ・職 業専 門教 育 の開放教 養 教 育 の 開放開放 の 基本 内容研 究 ・教 育 の社 会 総合 開放

(4)

図2〈大学機能構造 )

第 1段 階 研 究機能‑教育機能‑ (教育 の開放サー ビス) 第2段階 研究機能‑学生 の教 育機能

‑ (社会 人の教育機能) 第3段 階 研究機能一一学生 の教育機能

ii凹 iiH (社会総合 開放機能)

社会捻合 開放機能 としての大学開放機能は、研究や教育 を社会 開放 的視 点 で「再組織化」

し、 リフ レッシュす る機能 であ り、研 究や教育の社会 的稔合化機能 として組織化 す る社会 総合的 「学習 ・研究」開放機能 であ る。

さらに、 この社会稔合 開放機能 は 日本 の ように高等教育機 関 と社会 が遊艶 しが ちな土壌 においては、大学 の研 究機能や学生 の教育機能 に種 々の社会 か らの刺激や影響 を及ぼ して、

それ らの活性化機能 として果 たす役割 も大 きい(5)0

なお、大学 に この よ うな機能が定着す るため には、後述す るよ うな法制概 念の転換 とと もに、大学数月 の職務評価領域 を従来 の 「研究」、「教育」の2領域 に、「開放参画 (社会貢 戟)

を加 えた3領域 とす るこ とが不可欠であ る。

Ⅳ.

大学開放 ・生涯学習の展 開構造

第3段階の大学 の開放機能 ・生涯学習 を大学の具体 的 システムに位 置づ け る方式につ い ては、第1段 階 を主導 したイギ リスや 第2段階 を主導 してい るア メ リカにおいて も試行段 階 であ る(6)。本稿 では、諸外 国の事例 も参照 して、国内の大学開放 ・生涯学習の構造 につ い て試論 を提起 したい。

1.大学開放 ・生涯学習の基本構成

基本的には、以下の3領域 に類型 され るが、教養学習 と技術学習が捻合 的に展開 され る 福祉学習や環境学習の よ うに、 その展開においては総合化 してい くこ とが 多い。

[1]教養 の学習 ・研 究 G) 基礎 的教養 の修得

大学学部 の基礎単位 の修得や教養公 開講座 の受講

② 現代 的教養 の学習 ・研究

現代 的人間性、生活 ・社会課題性 な どに主体 的に対応す る教養学習 [2]技術移転学習 ・研究

① 基礎 技術 の習得

自然、社会、職業 な どの基礎 技術 の学習 (参 基礎 資格 の修得

転職や キャ リアー ア ップに対応す る資格修得学習

(5)

猪 山 :大学生涯学習研 究の現代 的視角 5

(診 技術発 展 の学 習 ・研 究 先端 技術 の学 習 ・研 究

[3]「知創造 」社会創造 の研 究 ・学 習

① 「地域 」 な どの創造研 究 ・教育

地域産 業、地域 生活、 自治体 な どの社 会課題 の研 究や学 普

② 「グローバ ル」対応 の研 究 ・学 習

文化 、経済、政 治 な どの グローバ ル社会 課題 の研 究 ・学 習 2.大学 開放 ・生涯 学習の展 開構造

大学 開放 ・生涯 学 習の展 開 は学 内だけでな く、学外 との協 同に よって展 開す るこ とが増 加 して い るが、 ここでは大学独 自の展 開構造 につ いて論 究 したい。

[1]大学 の正規 システムの拡 充

① 教育 システムの拡充 a.学部段 階 の教 育拡 充

社会 人入学 科 目履修 生 研修 生

夜 間主 コー ス な ど社会 人 コー ス生 通信教 育受 講生

b.大学 院段 階の教 育拡 充 社会 人入学

特定科 目履修 生 研修 生 ・研 究生

夜 間主 コー スな ど社会 人 コー ス生 大 学院通信 コー ス生

高度専 門大学 院生

② 研 究 システムの拡充 a.学部段 階の研 究拡 充

特定課題研 究生

研 究開放 ゼ ミナー ル受 講生 社 会 との協 同研 究生

b.大学院段 階 の研 究開放 特 定課題研 究生

先端研 究ゼ ミナー ル受 講生 社会 との協 同研 究生

[2]特別拡 充 システム

① 単発 開放 講演会

シンポジュー ムな ど

② 継続 開放

(6)

継続公開講座 継続公開セ ミナー 短期 資格修得 講座 な ど

Ⅴ.大学開放 ・生涯学習推進方策

1.現代大学 の生涯学習推進法制 の形成

大学 の大学開放 ・生涯学習機能が大学の基本機能 として位 置づ くには、大学の主体 的改 革が求め られ るが、制度 ・政策的対応 も不可欠にな りつつ あ る。

第1に、 その根幹 に関わ る課題 として、法制 の改訂課題 があ る。現行教育法制 の制定時 が高等教育機 関の創設期 であったため、研究 と伝統 的学生教育機能 の定着 を高等教育機 関 の基本機能 として定着す るこ とが優先 し、大学開放 は研究や学生教育 に「支障が ない限 り

取 り組 むサー ビス ととらえる法概 念が法定 されたのであ る。

近年、基礎 的学生教育 システムの拡充 を基盤 として、社会 開放す る 「運用的」法改正 が なされて きたが、根幹の大学開放 を高等教育機 関の基本機能 とす る法制 には至 っていない。

この点 での、法改正 が早急にな され る必要が あ る。

第2に、大学の開放 が、今後本格 的制度 として位 置づ いてい く制度要 因 として、大学行 政 の在 り方 も再検討が求め られている。職業社会 人の教育が、企業 内教育 システム を主導 に し、 それ を補完す る公共訓練 システム を労働行政 が主管す る一方、社会 人の教養教育 は 社会教育 として文部行政が主管す る行政 の双頭 システムが、大学開放 を公開講座 的教養教 育主導 に偏 岐 させ てい る。

さらに、文部行政 内の高等局 と生涯学習局 の分 岐 も大学開放 が本格化 しない要 因 となっ てい る。前者 の基本行政 の分業 システムの転換 とともに、後者 の文部行政 内の行政 システ ムの転換が早急に求め られてい る。後者 につ いては、文部科学省 の成立 と生涯学習政策局 の組織化 は、大学開放行政 の在 り方 を根底か ら改革 してい くと思 われ る。

第3に、大学 の性格規定 問題 があ るOす なはち、これか らの大学 を「研究主導大学」、「教 育主導大学」、 「大学開放 ・生涯学習主導大学」 に類別 す る大学政策 であ る この よ うに類 別す る大学政策 の善 し悪 しは、本稿 では論 じないが、す くな くとも研究性や教育性 と分離 させ た大学開放 ・生涯学習は社会教育や民間教育産業 と差異性 のない同等次元の教育 とし て位 置づ き、上記 して きた よ うな機能 を形成 しえないであろ う。 したが って、研究主導大 学、教育主導大学 において こそ大学開放 ・生涯学習機能 を本格化す る必要が あ る。

2.大学 内の大学開放 ・生涯学習推進 システムの定着

従来、大学開放 ・生涯学習の推進 システム を考察す るス タンス として、大学開放 の先導 国家 イギ リス を理念 モデルす るこ とが 多 く、教養教育 を拡張す る独 自な 「学部」 システム を目標 に設定す るこ とが 多か った。 しか し、 この視 点 は、 これか らの大学生涯学習推進 シ ステムの理念 にな りえないのではなか ろ うか。

大学生涯学習推進 システム として、以下 の ように発展段 階が措定 で きる

(∋ 教月 の個 人対応 を主 とす る個 人 レベ ル

大学開放 が大学 内に システム化 され ない段 階において も、種 々の形態の個 人対応に

(7)

猪 山 :大学生涯学習研究の現代 的視角 7

よる教 育や研 究 の開放 が推 進 され て い るが、 その対 応 は大 学職務 として評価 されず、

大 学 も開放 活動 を大 学 の機 能外 の教 月 活動 ととらえ る レベ ル であ る。

② 講座 や 学科 を主 とす る部 局 レベ ル

教 月 が 講座 や 学科 の集 団的業務 と して開放 事 業 を展 開 す る形 態 で参 加 す る型 で あ り、 内部 集 団職務 として評価 され るが、大 学全 体 の職務 評価 は され ない。 この レベ ル も(丑と同様 に、 「研 究や 学 生 の教 育 に差 し障 りが ない範 囲 での活動 」 とされ る.

③ 公 開講座 運 営委 月会 な どを主 とす る全 学教 育機 能支援 レベ ル

正 規教 育 システム とは別 の教 育 システム として大学 の活動 に大 学 開放 を位 置づ け る が、 その活動 は本務 外 で あ る。 しか し、 この レベ ル に な る と、 開放 経 費が大 学 経 費 と

して計上 され る場合 が 多い。

④ 全 学教 育 ・研 究 開放 運 営委月会 な どを主 とす る全学教 育 ・研 究 開放 機 能推 進 レベ ル この レベ ル は、③ に加 えて研 究機 能 の開放 が絵合化 され る。専任教職 月 の配 置 は な いが 、全 学 の企 画や事 業 経 費配分 が な され るな ど、全 学 におけ る開放 の位 置づ け は 内 部化 され る。

⑤ 開放 セ ンター 方式 な ど組 織 的全 学教 育 ・研 究機 能推進 レベ ル

この段 階 の レベ ル に な る と大学 開放 が基本機 能 では ないが、大 学 の シス テム 内に組 み込 まれ、専 任教職 月 の配 置 と開放 独 自予算 が計上 され る。 しか し、 セ ン ター 方式 は 学部 な どの基本研 究 ・教 育 シス テムでは な く、サ ブ システムで あ り、大 学全体 の研 究、

教 育 計 画 を規 定 す る段 階 には至 らず、研 究や教 育 の 「延 長 」活動 に止 ま る。 日本 の大 学 も近年 、 この レベ ル の大 学 開放 ・生涯 学 習 の位 置づ けが な され る大学 が 3割 をこえ つ つ あ る。

⑥ イギ リス、 ア メ リカ合 衆 国 な どの成 人教 育推 進 「学部 」、 「ブ ランチ

レベ ル

今 日、 イ ギ リスや ア メ リカ合 衆 国の大学 にお いて は、成 人教 育 学部や 大 学 開放 ブ ラ ンチ な ど学部相 当の システム で大 学 開放 ・生涯学 習 (継続教 育 ) を展 開 してお り、大 学 開放 ・生涯 学 習が大 学 の基本教 育機 能 として、位 置づ け られ て い る。 しか し、開放 ・ 生 涯 学 習 の位 置づ け は 「教 育」領 域 を主 とし、総合 的 な 「社 会 的研 究 ・教 育 開放 」 レ ベ ル は これ か らの課題 であ る。

⑦ 大 学 開放 総合 推進機構 方式 な ど全 学大学稔 合 開放 レベ ル

この レベ ル は、大 学 開放 ・生涯 学 習機 能 を大 学 の基本機 能 として位 置づ け、大学機 能 を3機 能 として位 置づ け る レベ ルで あ る。 この レベ ル は、 どの 国 もこれか らの課題

で あ るが、近 年 開発 国の都 市立地大学 に その萌芽 が 台頭 しつつ あ る(7)0

日本 の大学 も生涯 学 習 系 セ ン ター の設立 が25%を超 え るな ど、 か な りの推進 組織 が形成 されつつ あ るo Lか し、今 後 の総合 開放推 進 方 式 と して学部段 階 だけ でな く、大学 院段 階 を包括 し、研 究 と教 育 の捻合 的 開放 を内包す るには(丑の組織化 が求 め られ よ う. その呼称 として、本論文 では長崎 大学 が設置 しよ う として い る 「機構 」 を措 定 したが 、 イギ リスの マ ン チ ェ ス ターUMISTの シ ス テ ム の よ うに、研 究 と教 育 を総 合 化 して社 会 開 放 す る

"INSTITUTE"的 システム を組織化 すべ き と思 われ る。

3.大 学教 職 月 の開放 ・生涯 学 習 の評価 や 資質 の向上

大 学 の基本機 能 に大 学 開放 ・生涯 学 習が位 置付 けば、 それ を推 進 す る大学教 職 員 の職 務

(8)

構造の転換が生 じる。す なわち、従来大学数月 の本務 は 「研 究 と (伝統学生 の)教育」 と されていたが、今後 は 「研究」・「教育」・「開放」の3職務構造 として職務構成 をすべ きで あ り、従 って教月評価 も3構造評価 を してい くこ とが不可欠であ る。

近年、従来 の大学数月 の研究資質 に加 えて、教育資質 の向上 を図 るこ とを目標 としたファ カルティ

DEVELOPMENT

が取 り組 まれは じめてい るが、今後 は 「大学開放、生涯学習

推進資質 の形成 のためのセ ミナーや ワー クシ ョップ な どの取 り組みが不可欠 であ る。なお、

大学開放専 門職月 の配置 とその資質養 成 も重要 な課題 であ る。

Ⅵ.大学開放 ・生涯学習推進 コラボ レーシ ョンシステムの創設

近年、大学開放 ・生涯学習推進 システムの拡充 として、「高等教育 ネ ッ トワー ク」、「コン ソシアム」な ど地域の生涯学習推進 システム との連携が胎動 してい る(8)。その ような動 向が 進展 してい る要 因は、地域住 民の生涯学習要求の高度化 と大学サ イ ドの開放 ・生涯学習推 進 の地域定着化 であ るが、両サ イ ドの同等 な協 同的 コラボレー シ ョンではな く、教育領域 では地域 の教育行政体 主導、研究領域 では大学主導 で進展 してい るこ とが 多い。

今後 は、教育領域 の大学 の本格 的参画、研究領域 の地域 の協 同的 な本格 的参画 システム を形成す る必要 が あ り、 その総合 的推進組織化が不可欠 となってい る。既存組織 の 「運用 的

連携 ではな く、新 たな協働 システム を形成 してい くには、仙 台市の仙 台都 市稔合研究 機構

SURF

が提起 してい るよ うな 「都 市 ・大学経営 ボー ド」 の ような 「経営」組織の組織 化 が不可欠 とな りつつ あ る(9)。 この点、地域行政組織 に民間 ・大学 ・行政 の協 同 を内在化す るこ とを企 図 して北九州 市は、従来 の企画局 を組織再編成 して、 「企画 ・学術局」を創設 し、

新 たな対応 を始動 してい るこ とは注 目され る。 さらに、 その よ うな行政 の積極 的対応 とと もに、大学 間の主体 的 な地域的、全 国的連携 システムづ くりが求め られて い る。

Ⅶ.大学開放 ・生涯学習推進 への社会的対応

従来、 日本 においては社会 人の教育 ・研究が、社会教育機 関か企業 内教育 ・研究 システ ム を主体 に展開 して きたために、大学 自体 の開放へ の消極 的 スタンス とも相 まって、大学 開放 ・生涯学習‑ の社会 的対応は弱体 であ る。

法制度 として、 ヨー ロ ッパ諸国の ような 「教育有給休 暇制度」 の法定や 「社会 人学習支 援経費制度」 の創設が差 し迫 った課題 であ る とともに、企業や社会教育機 関 との事業連携

システムの創設必要 であ る。

さらに、社会 人が大学 にア クセスす るには、時間 と費用が基盤 として不可欠であ るので、

e ‑ LEARNI NG

システムの拡 充、大学サ イ ドの夜間開放、土 日開放やサ テ ライ ト設置、企 業 な ど社会 サ イ ドの学習参加時間、費用 な どの参加支援 な どが早急 に取 り組 まれ るべ きで

あろ う。

(注)

(1)奥 島孝康 ・原輝 史 r生涯学 習 と高等教育J早稲 田大学 出版部 1998

清成忠 男 ・岡本義 行編著 r地域 におけ る大 学 の役割 J 日本 経済評論社 2000年 \

(9)

猪 山 :大学生涯 学習研 究 の現代 的視角 9

(2) A.Burtonn、 野 中郁次郎 訳 r知 識 資本 主義j 日本経済社 2001

アーサー ア ンダー セ ンH・C

・ S

F人材革新 マ ネ ジメン ト』生産性 出版 2000 (3) 根 本 Fe‑ラー ニ ン グ」 中央経済社 平 成13

(4)猪 山勝 利 「大学 生涯学 習の拡 充 と大学 改革」大学生涯 学習推進研 究プ ロゼ ク トr大学 におけ る生涯学 習 推進 に関す る研 究』平成12

(5)猪 山勝 利 「大学 の第3の機 能 としての大 学 開放 」大学 開放 にかか わ る研 究委員会 r平成11年 度生涯学 習 活動 の促 進 に関す る研 究 開発』2000

(6) J.Field"LifelongLearningandEducationalOrder"TRENTHAM BOOK 2000 P.G.ELLIOTT "TheUrbanCampus"ORYXPRESS1994

(7) P.G.ELLIOTT,ibid,

A.シナ トラ 「北 イタ リア におけ る大学 の役割 」清成忠 男、前掲書 17

(8) 猪 山勝 利 「高等教 育 ネ ッ トワー ク・仙 台」大学 開放 にかか わ る研 究委月会 F平成12年度生涯学 習 の促 進 に関す る研 究 開発』2001

大 阪市教 育委 見合 ・大 阪大学 『生涯学 習社会 にむけ た大 学 の開放 と行 政 との連 携」 大 阪市教 育 委 月会 平成11

(9) 仙 台市総合研 究機 構 F学都 仙 台の都 市経営 に関す る一考 察 』平成12

図 2 〈 大学機能構造 ) 第 1段 階 研 究機能‑教育機能‑ ( 教育 の開放サー ビス) 第 2 段階 研究機能‑学生 の教 育機能 ‑ ( 社会 人の教育機能) 第 3 段 階 研究機能一一学生 の教育機能 i i凹 i iH ( 社会総合 開放機能) 社会捻合 開放機能 としての大学開放機能は、研究や教育 を社会 開放 的視 点 で「 再組織化」 し、 リフ レッシュす る機能 であ り、研 究や教育の社会 的稔合化機能 として組織化 す る社会 総合的 「 学習 ・研究」開放機能 であ る。

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