一71一
〈 研 究 ノー ト〉
1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッパ
ーEUの 避 貨 統 合 そ して イ ギ リ ス,フ ラ ンス の 新 政 権 政 党 の 課 題(D‑一
清 水 嘉 治
1。 い ま ヨ ー ロ ッパ で 何 が 起 こ っ て い る か 2.ヨmッ パ 通 貨 統 合 の 課 題
3.ア ム ス テ ル ダ ム 条 約(新EU条 約)と は 何 か 4.1997〜98の イ ギ リ ス,フ ラ ン ス の 新 政 権 政 党
の 課 題
1.い ま ヨ ー ロ ッ パ で 何 が 起 っ て い る の か 。
わ た く しは,90年 代 に入 っ た ヨー ロ ッパ の大 き な 出 来 事 を 鮮 明 に 記 憶 して い る。 そ れ は,1991年 12月9〜12日 に か け て オ ラ ン ダ の ハ ー グ の 郊 外 に あ る 静 か な 歴 史 と伝 統 を も っ た 古 都 で あ る マ ー ス ト リ ヒ ト(Maastricht)で 開 か れ たEC首 脳 会 議 で あ った 。 そ れ は,当 時 加 盟 国 で あ った ヨ ー ロ ッ パ12か 国 だ け の 問 題 だ け で な く,89年 秋 の東 欧 の 「市 民 革 命 」,東 西 ドイ ッ統 一 の 激 動 の 時 代 か ら 21世 紀 を 睨 ん だ,全 ヨ ー ロ ッパ の 新 しい 市 民 主 体 の 「秩 序 」 作 りを ど うす る か の 第 一 歩 を 示 した 画 期 的 な 会 議 で あ っ た 。 こ の 首 脳 会 議 は 国 民 国 家 を 部 分 的 に超 え る 歴 史 的 実 験 と な る1958年 の ロ ー マ 条 約 を 大 胆 に 改 正 した 点 に そ の 意 義 が あ っ た。
そ れ が 加 盟13国 に よ っ て,承 認 さ れ た マ ー ス ト リ ヒ ト条 約(TreatyonMaastrightま た は欧 州 連 合 条 約=TreatyonEuropeanUnion)で あ っ た(2)。
こ の 条 約 の 基 本 性 格 は,欧 州 市 場 統 合 の 拡 大, 通 貨 統 合 の 確 立,安 保 体 制(政 治 統 合 を 目指 した) の 統 合 に あ っ た。 最 後 に あ た る政 治 の 協 力 体 制 に お い て は,欧 州 の 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 を導 入
し,欧 州 独 自 の 防 衛 体 制 作 り に一 歩 踏 み 出 し た点 に あ る。 そ れ は 米 国 中 心 の 「世 界 秩 序 」 作 りへ の 批 判 と主 体 的 な 多 中 心 主 義 の 世 界 秩 序 へ 向 け た
「西 欧 同 盟 」(WEU瓢WesternEuropeanUnion)で
あ り,そ れ は新 しい 欧 州 安 保 体 制 の 受 け皿 と して
浮 上 し,「欧 州 軍 」創 設 の検 討 を 始 め た だ け で な く す で に 「独 仏 軍 」 を 創 設 し,相 互 に不 戦 体 制=軍 縮 へ の 道 を 示 した こ と に あ っ た 。
こ の 体 制 は,EU安 保 体 制,旧 東 欧 のEUへ の 依 存,協 力 体 制,新 しい 欧 州 の 強 固 な 平 和=軍 縮 体 制 を 通 じて,活 力 あ る福 祉 連 合 国 家 へ の 道 を 模 索 して い る兆 しと い って もよ い の で は な い か 。
ロ ー マ 条 約 か ら マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 へ の 道 は, 欧 州 連 合 の 目 的 を次 の5点 に 求 め た 点 に あ っ た の で は な い か,こ こ に再 確 認 して お こ う。
第1に,持 続 的 で 均 衡 の と れ た 社 会 的,経 済 的 進 歩 の 促 進 を 図 る こ と,そ れ は 内 部(域 内)の 国 境 の な い地 域 の 形 成 や 経 済,社 会 の 格 差 是 正 を 実 現 す る こ と,最 終 的 に は,2001年 の 通 貨 統 合 に 連 動 す る経 済,財 政,金 融,通 貨 の 各 政 策 を 調 整 す
る こ と に あ る。
第2に,前 述 した 共 通 防 衛 政 策 の 形 成 へ と着 実 に 発 展 す る こ と を 含 む 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 を 通 じて 連 合 の 存 在 を 国 際 的 に ア ッ ピー ル す る こ と に あ っ た 。
第3に,欧 州 市 民 権 の 導 入 を 通 じた,加 盟 国 市 民 の 生 存 権,人 権,学 習 権,人 格 権,自 治 権,労 働 権,生 活 権,環 境 権 な ど の 諸 権 利 と各 企 業,機 関 の 利 益 を 保 護 す る こ と に あ っ た 。
第4に,司 法,内 務 分 野 の 協 力,と くに 国 境 を こえ た 刑 犯 罪,テ ロ な ど を 防 止 す る た め の協 力 を 強 化 す る こ と。
第5に,「 ヨmッ パ 共 同 体 」の 法 令 の 集 積 を 維 持,発 展 し,共 同 体 の 構 成 国 の 法 令 の 調 整,独 自 のEC法 の 確 立 を め ざ す こ と に あ った 。
加 盟 国 は こ う した 目 的 を 具 体 的 に ど の よ うに 実 践 して い るか を ト レー ス す る こ と に あ っ た 。 だ が 事 態 は こ うで あ る。 ま ず 加 盟 国 が,こ の 条 約 を ど
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の よ う に認 知 す る か が 焦 点 に な っ た 。 そ の た あ に 加 盟 各 国 は,そ れ ぞ れ の議 会 で,あ る い は国 民 投 票 を通 じて 承 認 す る こ と に あ った 。 そ れ は厳 しい 重 い課 題 で あ っ た 。い う ま で も な く92年6月,デ
ンマ ー ク は 国 民 投 票 の 結 果,批 准 を 拒 否 した 。 フ ラ ン ス は,ミ ッテ ラ ン大 統 領 が 街 に で て 国 民 の 議 論 を き き,自 ら も訴 え た。 そ の 国 民 投 票 の 結 果
「僅 差 」 で 批 准 した 。 もち ろ ん ドイ ッ,イ タ リア な ど大 国 で も国 民 の 間 で 大 議 論 と な っ た が,辛 う じ て 議 会 で 承 認 さ れ,そ して 批 准 した 。 そ の 後 デ ン マ ー ク は,域 内 格 差 是 正,通 貨 統 合,福 祉 水 準 の 段 階 的 適 用 を 条 件 に 再 度 批 准 の賛 否 を 問 う国 民 投 票 を 実 施 し た 。 賛 成 票 が13.6%上 回 っ て 批 准 し た 。 こ う して 条 約 は,欧 州 市 民 権 の あ り方,格 差 是 正,各 国 の 市 民 の 参 加 権,国 民 生 活 の 利 益 を前 提 に した 通 貨 統 合 な ど を 実 現 す る と い う条 件 で, 1993年11月 発 足 し,ECか らEUに 「発 展 」 した の で あ っ だ31。
そ の 後,EUの 最 大 の 課 題 は,通 貨 統 合 の 問 題 に あ っ た。 そ れ は各 国 の 経 済 主 権 と通 貨 政 策,金 融 政 策,財 政 政 策 に 対 して 大 きな イ ンパ ク トを 与
え る か らで あ った 。 この 課 題 に つ い て は,す で に 問 題 点 を 明 らか に し,そ の あ り方 に つ い て 論 じて き だ2}。だ が93年 マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 が 具 体 的 に 発 効 さ れ て も,ヨ ー ロ ッパ の 経 済 は た え ず 低 成 長 に 直 面 し,失 業 問 題 経 済 格 差 の 問 題 財 政 危 機 な ど に 直 面 した 。 そ れ は1990年 代 後 半 に も重 要 課 題 と して 持 ち越 さ れ た 。 と くに 通 貨 統 合 の5条 件 は,数 か 国 しか 満 た さ れ な か っ た。 と りわ け, 各 国 の 財 政 赤 字 はGDPの3%以 下 を 達 成 す る こ
と は か な り厳 しい 条 件 で あ っ た。 い う まで もな く EUの 本 部,EU委 員 会 は,各 国 の代 表 に よ っ て 構 成 さ れ て い る もの の,各 国 と の 調 整 を 通 じて 独 自 の 働 き,と く にEU首 脳 会 議 で 決 定 した こ と を 実 行 す る行 政 機 関 の 機 能 を も って い る。 す で に, 1980年 代 に約10年 間 務 め た フ ラ ン ス 政 府 推 薦 の 元EC委 員 長 で あ っ たJ,ド ロ ー ル は,EU経 済 統 合 の 基 軸 は 通 貨 統 合 に あ る こ と を 展 望 し だ4)。
だ が90年 代 後 半 に 向 って,フ ラ ンス,イ ギ リス の 経 済 成 長 率 が 若 干 増 加 に 転 じた が,ド イ ッ は鈍 化 し,他 の 参 加 国 は 低 成 長 率 を 維 持 した 。 と こ ろ で
EUは,加 盟 各 国 で95年 か ら96年 に か け て お こ っ た,EC官 僚 制 批 判,政 策 決 定 過 程 へ の 市 民 参 加 の 実 現,多 様 な 市 民 ニ ー ズ な ど に ど の よ う に 対 応 す べ き で あ る か と い う課 題 に 直 面 し,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 を 見 直 す 動 き を 示 す よ うに な っ た 。 96年3月 イ タ リア の ト リ ノで,EUはEU加 盟 国 の 政 府 間 会 議(IGC)を 開 き,域 内 の雇 用 問 題, 競 争 力 低 下,テ ロ防 止 問 題 環 境 問 題,移 民 問 題 を ど うす るか と い う政 策 調 整 を 迫 られ た 。 っ ま り 各 国 機 構 間 の バ ラ ン ス,民 主 主 義,効 率 化,連 帯 性,透 明 性,補 完 性 を,さ ら に ど の よ うに 維 持 ・ 発 展 させ る か とい う課 題 を残 した の で あ っ た 。 さ
ら に前 述 した マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 は基 本 支 柱 の相 互 関 連 性,通 貨 同 盟 の 具 体 化 の課 題,政 策 決 定 過 程 の シ ス テ ム を 徹 底 化 す る課 題 を ど う す る か に
あ った 。
こ の点 を踏 ま え て,加 盟 各 国 は,議 論 を 重 ね て き た 筈 で あ る。 だ が,と くに 通 貨 同 盟 の 参 加 条 件 は,各 国 の 財 政 問 題 を 直 撃 した。 ドイ ッ,フ ラ ン ス は,こ の 問 題 で 大 論 争 を ま き お こ し,と くに3
%条 項 の 問 題 で は産 業 界 と労 働 界 で 対 立 し,激 論 を 展 開 した 。
イ ギ リス に お い て は,5月 に ブ レア 労 働 党 政 権 が 誕 生 し,6月 に は フ ラ ン ス で は ジ ョス パ ン社 会 党 主 軸 の 政 権 が誕 生 し た。 フ ラ ン ス に お い て は, 大 統 領 は シ ラ ク保 守 党 出身,内 閣 は革 新 党 と い う 保 革 共 存(コ ァ ビ タ シオ ン)政 権 の 登 場 と な った 。 こ う して,97年 前 半 年 の ヨ ー ロ ッパ は政 治 的 に 激 動 した 。 さ らに イ タ リア で は,少 数 革 新 政 党 が
「オ リー ブ の 木 」 と よ ば れ,政 治 の キ ャ ス チ ン グ ボ ー トを 握 り,政 権 を 担 って い る。
こ こで は,第1に,通 貨 同 盟 に 当 って 具 体 的 課 題 は何 か,第2に,97年6月 に 承 認 され た ア ム ス
テ ル ダ ム条 約 と は何 か を 改 め て 検 討 す る。 そ して 第3に,英 国 労 働 党,フ ラ ン ス社 会 党 政 権 の 誕 生 の 意 味 は何 か,そ の 課 題 は 何 か,を 究 明 した い 。 わ た く し た ち の ヨ ー ロ ッパ 訪 問 の 目 的 も こ こ に あ った 。 で は問 題 を 進 め よ う。
2.ヨ ー ロ ッ パ 通 貨 統 合 の 課 題
1997〜98・ 激 動 す る ヨmッ パ
第1表
〈低 金利 国〉
一73一
欧州主要国の政策金利(%)
1989年 の ドロ ー ル レ ポ ー トの 欧 州 通 貨 統 合 の 構 想 は,93年 発 効 した マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 第105 条,第109条f項 に 吸 収 され た 。 そ こ で は通 貨 統 合 の た め の 欧 州 中 央 銀 行 の設 立 に よ る加 盟 各 国 の 中 央 銀 行 と の 調 整 は も ち ろ ん の こ と,欧 州 中 央 銀 行 の 設 立 の 目 的 を,域 内 の物 価 の安 定 に お い て い る。 問 題 は,各 国 の物 価 上 昇 率 が 極 端 に 違 っ た 場 合 に,ど の よ う に 欧 州 中 央 銀 行 が 介 入 す る か な ど の 課 題 は残 さ れ て い る。
ECB設 立 後 の 欧 州 の 共 通 の 金 利 政 策 は,ど の よ う に設 定 す るか と い う課 題 で も あ る。 こ の 点 に つ い て,99年 予 定 の通 貨 統 合 に 向 け て,欧 州 各 国 の 短 期 市 場 金 利 が 収 れ ん しつ っ あ る。 と い う の は ドイ ッ な ど低 金 利 国 に 対 して は 上 昇 圧 力 が か か り,イ タ リア,ア イ ル ラ ン ドな ど高 金 利 国 で は 低 下 圧 力 が か か り,次 第 に 格 差 を縮 小 させ る傾 向 に あ る(第1表)。 期 間10年 な ど長 期 市 場 金 利(図 表
ド イ ツ オ ー ス ト リ ア オ ラ ン ダ ベ ル ギ ー フ ラ ン ス フ ィ ン ラ ン ド
〈高 金 利 国 〉
公定歩合 同上
特別貸出金利 中心金利 市場介入金利 入札金利
2.50 2.50 3.00 3.25 3.10 3.25
ス ペ イ ン ポ ル トカ ル イ タ リ ア ア イ ル ラ ン ド
レポ金利 同 上 公 定 歩合
短 期 フ ァシ リテ ィ
5.25 5.50 6.25 6.75
OECD,EconomicOutlook,August,1997.
1)は,収 れ ん が 進 行 して い た が,各 国 通 貨 当 局 は,統 合 へ の 道 を 考 慮 して 協 力 体 制 を み せ て い る よ う だ。97年5月,EUは,参 加 国 通 貨 間 の 交 換 相 場 な ど を 設 定 す る こ と を 決 め た 。 こ の こ と は, 通 貨 当 局 が 共 通 に 金 利 一 本 化 へ 収 れ ん す る こ と を 意 味 して い る 一 方 この 傾 向 はsド イ ッ の 政 策 金 利
の 小 幅 上 昇 を み せ た(例 え ば,97年3月 約3.0%
(図 表1)EU主 要 国 の 長 期 金 利 (名 目 長 期 金 利 〈国 債10年 物 利 回 り〉 、%)
15
14
13
Z2
11
10
9
8
7
6
54月
91年92
(出 所)CEU,Datastream,rss7.
93 94 95
/仏
96
一一一74一 1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッパ
(図衷2)EU主 要 国 の財 政 バ ラ ン ス見通 し
(GDP比 、%) 0
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フ ラ ン ス
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イ タ リ ア英国92年9394
(注)96年 は実 績 見 込 み,97年 は 見 通 し。
(出 所)OECD・EconomicOutlookDecember,1996.
95 96 97
(図 表3)EU主 要 国 の イ ン フ レ率 (CPI前 年 比 、%)
24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0
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フ ラ ン ス
英 国
謄 一 ゾ ∴/
瓦 翫;\ \ 八〜ノ ・ 淑/'こ 麹 、 ハ
/一 》 薦 ◇ 食!嚇 痴 望 灘 ぎ、=衰
ド イ ツ
80年81828384858687888990919293949596
〔出 所 〕CEU,Eurostat:Yearbook96,AStatisticalEyeonEurope1985〜1995.
〜9月19日 ,3.1%)。 他 方 イ タ リ ア で は 同 期 間 に,約6.7%〜6.3%に 下 げ た 。 統 合 発 足 時 の 域 内
短 期 金 利 は,4.0〜4.5%に 収 れ ん す る と予 想 さ れ て い る。 ま た す で に イ ン フ レ率 も収 敏 しつ つ あ る
1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッ パ
(図表3)。
各 国 と も,加 盟 各 国 の 通 貨 当 局 は,自 らの 国 民 経 済 の 利 益 を 優 先 しな が ら,参 加 して い く こ と に
な る。
こ う した 金 利 政 策 の統 合 以 前 に,各 国 の最 大 課 題 は,後 で 検 討 す るが,参 加 基 準 を ど の よ う に満
た す か と い う点 に あ る。97年10月14日,EU委
員 会 は,加 盟15力 国 の97年 と98年 の 財 政 見 通 しを 発 表 した(第2表,図 表2)。 フ ラ ン ス とギ リ シ ヤ を 除 く13力 国 が 「1997年 の 財 政 赤 字 を 国 内 総 生 産(GDP)の3%以 下 に 抑 え る」 と。 フ ラ ン ス も,98年 に は3%に 収 ま る見 通 しで あ る と述 べ, 99年1月 発 足 に 自信 を み せ た 。 こ の 発 表 に よ る
と,財 政 黒 字 の 国 は,デ ン マ ー ク と ル ク セ ン ブ ル グ に 加 え,成 長 が 好 調 で あ る ア イ ル ラ ン ドが 新 し く加 わ る見 通 しで あ る。 ま た通 貨 統 合 へ の参 加 の 条 件 と して 「政 府 債 務 の対GDP比 を 原 則 と して 60%以 下 に す る」事 項 が あ る。 こ の 点,ベ ル ギ ー, ギ リ シ ヤ,イ タ リ ア は そ れ ぞ れ121.3%, 106.4%,121.9%で あ るか ら,こ ん ご政 府 債 務 を
第2表 欧 州 委 員 会 に よ る各 国 の財 政 見通 し(%)
ベ ル ギ ー デ ン マ ー ク
ド イ ツ ギ リ シ ャ
ス ペ イ ン フ ラ ン ス ア イ ル ラ ン ド イ タ リ ア ル ク セ ンブ ル グ
オ ラ ン ダ オ ー ス ト リ ア
ポ ル トガ ル フ ィ ン ラ ン ド ス ウ ェ ー デ ン 英 国
財 政 赤字 の 政 府 債 務 の 対GDP比 対GDP比
〔 灘 下〕〔 羅簾 〕
1997年98年1997年98年 2.62.3
3.0 4.2 2.9 3.1
2.6 3.0 2.4 3.0
3.03.7
2.1 2.8 2.7 1.4 1.9 2.0
1.9 2.6 2.4 0.2 0、2 0.6
124.7 s7.o
・
109.3
・:
57.3 65.8 123.2
6.7 73.4 66.E 62.5 59.0 77。4 52.9
121.3 62.2 61.7
106・4房 ・
66.5ク ン
セ マ58
.2 ン1
59.2ブ ク
ル 、121
.9
潔
s.s
ii;蓬
57.3 75.3 51.5
EMI,TheSingleMonetaryPolicyinStageThree,Sept, 1997.98年 は 見 通 し 。
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積 極 的 に 削 減 しな け れ ば な らな い。 も ち ろ ん,加 盟 国 は,国 民 経 済 を優 先 しっ つ,同 時 に 参 加 条 件 を 守 らな け れ ば な らな い 。 こ の 課 題 を 克 服 して い か な い 限 り,参 加 して も安 定 しな い で あ ろ う。 内
も外 も厳 しい 課 題 で あ る。
ま たEC委 員 会 は,英 国 の 財 政 赤 字 を97年 2.0%,政 府 債 務 はGDPの52.9%に と ど ま り, 参 加 条 件 を 満 た して い る(第2表)と 公 表 し て い る。 した が って,英 国 労 働 党 は,97年5月 の 総 選 挙 で,通 貨 同 盟 参 加 国 を 国 民 投 票 で 決 め る と約 束 して い る 関 係 上a次 回 の 選 挙(2001年)で そ の 態 度 を 決 め る で あ ろ う と い わ れ て い る151。だ が,国 内 の 与 論 が,EUへ の 参 加 志 向 を 早 め る と い う ニ ー ズ を示 した ら,そ れ 以 前 に早 期 に参 加 要 求 を す る可 能 性 も あ る。
通 貨 統 合 の 条 件 達 成 を 満 た す 国 の な か で も ス ウ ェ ー デ ン,デ ンマ ー ク で は,不 参 加 の 立 場 を 主 張 す る 与 論 が 強 い の で 見 合 せ る と 予 想 さ れ て い る。
こ こで,EMI(EuropeanmonetaryInstitute
e欧 州 通 貨 機構)が1996年11月 ,97年9月 に 発 表 した3つ の段 階 に お け る単 一 通 貨 政 策 の ポ イ ン
トを 紹 介 しっ っ,そ の 問 題 点,と く に第3段 階 の 主 要 ポ イ ン トを 整 理 して み た い。
ま ずEMU(EuropeanmonetaryUnion)の 第1 段 階 は,91年7月 よ り開 始 さ れ 将 来 の 欧 州 中 央 銀 行 制 度(EuropeanSystemofCentralBanks=
ESCB)の 下 で の 一 元 的 な 金 融 政 策 を 展 望 し,加 盟 国 間 の 政 策 協 調 を 強 化 す る た め,当 時 のEC中 央 銀 行 総 裁 会 議 の 機 能 と蔵 相 理 事 会 で の 多 角 的 サ ー ベ イ ラ ンス 体 制 を 強 化 す る こ と に あ る。 加 盟 国 中 央 銀 行 が 次 年 次 の 金 融 政 策 の 方 針 等 を 報 告 し,討 議 す る 「年 次 事 前 評 価 」 制 度 を 導 入 す る一 方,蔵 相 理 事 会 は,加 盟 各 国 か ら,コ ンバ ー ジ ェ ン ス ・
プ ロ グ ラ ム(経 済 パ フ ォー マ ンスの収 赦 計 画)の 提 出 を 受 け,こ れ を 評 価 す る枠 組 を設 け た 。 こ の 点 は,現 実 の 欧 州 経 済 の 不 況 下 の 中 で,各 国 の パ フ ォ ー マ ン ス の 違 い が み られ,計 画 調 整 は か な り 遅 れ た 。 前 述 した よ う に マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 は, 難 産 に難 産 を 重 ね た末,93年11月 に 発 効 した 。
ロ ー マ条 約 に 基 づ くECは,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約
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に 基 づ くEUへ と 発 展 し,当 時 の 加 盟 国12力 国 が95年1月 か ら15力 国 に 拡 大 し た 。 こ れ に 前 後
す る が94年1月1日 か らEMUは 第2段 階 に 入
り,欧 州 中 央 銀 行(EuropeanCentralBank=ECB) の 前 身 と し て,EC中 央 銀 行 総 裁 会 議 やEMCF (EuropeanMonetaryCooperationFund=欧 州 通 貨 協 力 基 金)を 吸 収 す る 形 で 欧 州 通 貨 機 構(Europe‑
anMonetaryInstitute=EMI)を 設 立 し,ラ ン フ ア ル シ ー が 初 代 総 裁 と し て 務 め,97年7月 か ら は ド イ ゼ ン ベ ル ク ・オ ラ ン ダ 中 央 銀 行 総 裁 が 就 任 し て い る 。 だ がECBの 初 代 総 裁 は 未 決 定 で あ る (1997年12月 現 在)。
こ う し て 欧 州 中 央 銀 行 確 立 の 準 備 を 着 実 に 進 め て き た 。 こ こ で95年12月 マ ド リ ッ ドEUサ ミ ッ トで の 決 定 を み る と,第1に 第3段 階 移 行 時 期 を 99年1月1日 と し た こ と,第2に 単 一 通 貨 の 名 称 をeuro(ユ ー ロ)と し た こ と,第3に 単 一 通 貨 へ の 切 り 替 え(theChangeover)を 採 択 し た こ と な ど で あ る 。96年12月 ダ ブ リ ンEUサ ミ ッ トで は, 第3段 移 行 に つ い て 議 論 し た が,参 加 条 件 を ク リ ア ー し て い る 国 が 過 半 数 に 達 せ ず,各 国 が 参 加 に 向 け て 協 力 す る こ と で 合 意 し た 。 さ ら にEUサ
ミ ッ ト は,「 安 定 協 定(StabilityandGrowth Pact),新ERM(NewExchangeRateMecha‑
nism),euro導 入 に 関 す る 法 的 フ レ ー ム の 確 立 に つ い て の 合 意 を み せ た 。 そ し て1998年 の 早 い 時 期 に,参 加 国 を 決 定 し,99年1月1日 へ 移 行 す る
こ と も決 め た 。
と こ ろ で,重 要 な 決 定 事 項,制 度 に つ い て の 経 過 措 置 を 述 べ た の で あ る が,97年9月17日,私
た ち が 招 待 を 受 け た パ リ第13人 学 の 国 際 関 係 論 の 教 授,J・ マ ジ ェ お よ び 大 蔵 省 参 事 官F・ モ ス と の 討 議 の 要 約 を 紹 介 し て お く。 ま ず こ ち ら 側 の 次 の 質 問 書(作 成 者 一 清 水)を 提 出 す る 。 こ れ を 討 議 の 材 料 と し た 。
した が って 通 貨 統 合 が 実 現 した 場 合,各 国 の 雇 用 政 策 を 優 先 した統 合 政 策 を ど の よ う に 実 施 す
るか 。
EUの1800万 人 の 失 業 対 策 を ど の よ う に 実 施 す る か 。
2.1997年,4月23日EU委 員 会 は,EUの 中 期 経 済 予 測 を発 表 した 。 これ に よ る と,加 盟15 か 国 の う ち,イ タ リア,ギ リ シ ャを 除 い て,13 か 国 の97年 度 の 財 政 赤 字 が 国 内 総 生 産(GD
P)の3.0%以 下 と な り,99年1月 か らの 欧 州 通 貨 統 合 に 参 加 す る た あ の 基 準 を 満 した。
こ ん ご単 一 通 貨 「ユ ー ロ」 と米 ドル が 世 界 経 済 の 二 大 基 軸 通 貨 体 制 に な る が,米 ドル と の 関 係 を ど の よ う に位 置 づ け た らよ い か 。
3.通 貨 統 合 後 の 単 一 通 貨 「ユ ー ロ」 の 金 利 は, どの よ う に決 め る の か 。 そ れ は各 国 の 通 貨 価 値 の 調 整 を して か ら決 め る の か 。 そ れ と もECB 独 自 に決 め る の か 。
4.単 一 通 貨 ユ ー ロ は,共 通 政 策 の 実 施 に 当 っ て,そ れ に対 す る決 済 シ ス テ ム(systemofset‑
tlement)はTargetsystemな の か 。 欧 州 市 場 の 流 動 性(liquidity)の 調 整(regulationorad‑
justment)を 通 じ て 実 施 す る の か 。Target Systemは 加 盟 各 国 のRTGS(即 時 グ ロ ス決 済,受 け払 い ご と に取 引 額 を即 時 決 済 す る シ ス テ
ム)に よ る の か 。
5.単 一 通 貨 実 施 後,加 盟 国 の 物 価 と通 貨 が 安 定 し,EUの 経 済 は,世 界 経 済 の 安 定 化 に 寄 与 す る か 。
6.欧 州 通 貨 統 合 後,加 盟 国 の 福 祉 水 準 は量,質 と も に 高 ま るか 、 と くに 北 欧 の 加 盟 国 とEU全 体 の 福 祉 水 準 を ど の よ うに 調 整 す る の か 。 7.欧 州 通 貨 統 合 後,域 内 の 所 得 格 差 を どの よ う に解 消 して い くの か 。 そ の 政 策 に つ い て 問 う。
(その他,欧 州 市 民 権 との 関係etc)
1.1997年6月18日,EU首 脳 会 議 は,従 来 の マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 を 改 定 し,新 しいEUの 憲 法 と な る新 欧 州 条 約(ア ム ス テ ル ダ ム条 約)を 採 択 した。
こ の条 約 の 目 的 に 「高 水 準 の 雇 用 」を 加 え た。
こ う した 質 問 に 対 して,各 人 自 由 に や り と りを した が,マ ジ ェ教 授 は,質 問 に 同 感 しつ つ,整 理 して,通 貨 同 盟 を 実 現 す る に あ た っ て,雇 用 を 優 先 す べ き で あ る と い う。同 教 授 は い う。「私 た ち は
この 問 題 に つ い て は,EU当 局 に,欧 州 学 者 一 同
1997〜98・ 激 動 す る ヨmッ パ
(MirenEtxezarreta=バ ノレセ ロナ の オ ウ トノマ大 学 応 用経 済 学 教 授,SorgHuffschmid=ブ レー メ ン大学 の 欧州 経 済,経 済政 策 研 究 所 教 授,JohnGrahl=Qン
ドンの ク ウ ェ ー ンマ リー大 学 教 授,JacquesMajier, パ リ13大 学 教授 な ど)で ,共 同 声 明(本 研究 ノー ト 末 尾 に原 文 を 紹 介)を 発 表 した の で そ れ を 差 し上 げ る」 と い うの で あ る。 整 理 して紹 介 す る。
1997年5月 に,欧 州 経 済 学 者 の 声 明 と し て,
「完 全 雇 用,社 会 的 格 差 是 正 と 公 平 性 の た め に 一 欧 州 に お け る代 替 経 済 政 策 の た め に一 一 」 を ア ピー ル した 。 この 点,第1は 雇 用 対 策 に 万 全 を 期 す べ きで あ る。EUの 失 業 者1,800万 人,労 働 人 口 の 失 業 率11%の 雇 用 を 優 先 す べ き で あ る こ
と,失 業 者 の う ち若 い人 が 全 体 の5分 の1以 上 雇 用 さ れ て い な い。 こ う した 事 態 に 対 して,具 体 的 対 策 を す べ き で あ る と い う。
第2に,短,中,長 の 各 期 の 通 貨 統 合 政 策 の 具 体 化 に あ っ て,ど ん な 場 合 で も,EUは,通 貨 の 安 定 した グ ロ ー バ ル の 枠 組 を 確 立 す る こ と を 目 的
に した 国 際 通 貨 体 制 に す べ き で あ る と い う。
第3にEUは,中,長 期 に わ た っ て,財 政 政 策 を 安 定 化 し,加 盟 国 民 の 生 活 を 優 先 す べ き で あ
る。
第4に,労 働 時 間 を 短 縮 し,活 力 あ る経 済 政 策 を 展 開 す べ きで あ る。 現 在 の 低 賃 金,雇 用 縮 小 を 改 善 して,仕 事 を ふ や し,働 く場 を与 え,労 働 時 間 を 短 縮 す る と 同 時 に,賃 金 を 少 しづ っ 上 昇 さ せ,実 質 賃 金 の 増 大 を 通 じて,消 費 購 買 力 を 増 大 さ せ,企 業 の 活 動 を活 性 化 し,税 収 を 増 大 し,福 祉 な ど公 共 投 資 に 再 分 配 す べ きで あ る。
第5に,労 働 市 場 を 増 大 し,福 祉 の 量 と質 の水 準 を 高 め る べ き で あ る。 過 去20年 間 にEUの 中 の 所 得 格 差 を 是 正 し,と くに 高 所 得 者 に対 して 適 正 な 税 制 を 実 施 し,そ の 税 収 入 を 福 祉 に ま わ し, こ ん この 安 定 したEUの 経 済 政 策 を 実 施 す べ き で あ ろ う。
以 上 の 問 題 は,こ ん ごEUの 共 通 した 課 題 で あ ろ う。 わ た く した ち の,第2〜7の 質 問 に対 す る 解 答 の 要 約 に入 る前 に,第3段 階 参 加 条 件 に つ い て ふ れ て お く と,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で は,参 加 要 件 と して ① 各 国 の 中 央 銀 行 法 を含 む 国 内 法 制 度
一77一
を,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 お よ び 欧 州 中 央 銀 行 法 と 整 合 的 な もの に す る こ と と規 定 さ れ て い る。 こ の 点 を 調 整 す べ きで は な い か 。 ② 経 済 パ フ ォ ー マ ン ス に 関 す る収 敏 基 準(コ ンバ ー ジェ ンス ・ク ラ ィテ リア)の 達 成 状 況 につ い て も チ ェ ッ クを 受 け る仕 組 み が 設 け られ て い る こ と,こ の チ ェ ッ ク の 判 定 基 準 はEUサ ミ ッ トに委 ね られ て い る が,条 約 の 付 属 議 定 書 で,前 述 した収 赦 基 準 を 「イ ン フ レ率 」
「財 政 赤 字 」 「為 替 相 場 」 「長 期 金 利 」 に 求 め た の で あ る こ と を 付 け加 え て お ぐ61。
な お,こ の 収 敏 基 準 の 関 連 性 の 論 議 に つ い て は,こ こで は省 略 し,問 題 を 進 め て い く。
欧 州 の エ コ ノ ミス トの 有 志 の提 言 は き わ め て 適 切 で,今 後 の 重 要 課 題 に な るで あ ろ う。 以 下 私 た
ち の 質 問 事 項2‑7に つ い て 書 く。
私 た ち の 質 問 書 に あ る第2の 問 題 に つ い て は, ドイ ッ も フ ラ ン ス も,GDPの3%以 下 に 努 力 し て い る が,こ の 問 題 は,フ ラ ン ス の ジ ョス パ ンの 政 策 と の 関 連 で 論 述 した い 。
第3の 単 一 通 貨 「ユ ー ロ」 の 金 利 は,参 加 国 の 大 蔵 大 臣 の 会 議 ・討 議 を 重 視 しつ っ,欧 州 中 央 銀 行 の 金 融 政 策 委 員 会 で 決 定 す る と い う。 もち ろ ん 最 終 的 に は,ECB総 裁 が 決 め る と い う の で あ る。 従 来 の 各 国 通 貨 政 策 が,そ れ ぞ れ の 国 の 中 央 銀 行 が 金 利 政 策 を独 自 に打 ち 出 す と同 じ よ う に,
ECBが 独 自 に 金 利 を 決 定 す る こ とが で き る と い う。
第4の 単 一 通 貨 ユ ー ロ の 決 済 シ ス テ ム に つ い て は,欧 州 市 場 の 流 動 性 の 調 整 を 通 じて 実 施 す る こ と を 予 定 して い る。 これ は,各 国 の通 貨 担 当 者 の 意 見 を踏 え て,ECBが,主 体 的 に決 あ て い く と
い う の だ 。
第5の 質 問 に 対 して は,EUの 物 価 が 安 定 す る こ と に通 貨 統 合 の 目 的 が あ る わ け だ か ら ユmの 安 定 を 最 優 先 し,国 際 通 貨 と して の ドル 基 軸 体 制
と調 整 し,世 界 経 済 の 安 定 化 を 図 っ て い く と い う の で あ る。
第6に つ い て は,ア ッ ピー ル で も主 張 して い る よ う に,環 境 保 全 と共 存 す る経 済 成 長 を 政 策 的 に 誘 導 しつ っ,財 政 収 入 を 図 りつ っ,EU全 体 の 福 祉 水 準 を 高 め て い くと い う も の で あ る。
78 1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッパ
第7に つ い て は,第1の 課 題 と共 通 して い る。
雇 用 対 策 に優 先 しつ つ,中 成 長 を 維 持 し,労 働 と 資 本 の 協 力 を 通 じて,賃 金 格 差 を 地 道 に解 消 して い く。こ の こ と は,工 業 地 域 と非 工 業 地 域,過 密 地 域 と過 疎 地 域 の 所 得 格 差 を,雇 用 と福 祉 を 前 提 に 工 業 化 を 図 って い くだ け で な く,所 得 の 再 分 配 政 策 を 図 っ て い く と い う(経 済 省 一(MinistεreDe L'economie)の 欧 州 局 主 任 のJ.P.ド ッペ ッカ ー氏 も
同 じ解 答 を して い る)。
J.マ ヂ ィ エ 教 授 とJ.P.ド ッペ ッ カ ー氏 は,そ れ ぞ れ 立 場 は違 って も,EU通 貨 統 合 の 中 で,雇 用 を 優 先 して い く点 で は,一 致 して い た。
EUの こん こ の 重 要 課 題 と して 単 一 通 貨euro は,ド ル に次 ぐ国 際 通 貨 と して の も う一 極 を 形 成 す る。 為 替 市 場 で の イ ンパ ク トと して は,加 盟 各 国 の 外 貨 準 備 調 整,ド ル,円 等 域 外 国 通 貨 も含 め た 外 貨 準 備 保 有 構 成 を ど の よ う に 見 直 す か で あ る。1990年 時 点 で,当 時EC12力 国 の 外 貨 準 備 合 計 は約4000億 ドル の うち 約2300億 ドル が 解 放 さ れ る 。 これ らの 外 貨 準 備 で,euroに 転 換 さ れ,ド ル と円 に 対 して,有 利 に 対 応 で き る の で は な い か
と考 え る。 もち ろ ん,一 方,第3段 階 に 移 行 す る 段 階 でeuroの 通 貨 に 不 安 定 性 を 感 じて,ド ル に シ フ トす る と,euro通 貨 の 価 値 低 下 に つ な が る 可 能 性 も あ る 。EU当 局 も この 点,準 備 周 到 に お こ た り な い か ら不 安 は な い と 考 え て い る。 し た が っ てEU理 事 会 はeuro圏 内 に お け る金 融 ・資 本 市 場 の 安 定 性 を ど の よ う に 図 るか で あ る。 だ か ら参 加 条 件 を 厳 し く守 っ て 参 加 す れ ば,必 ず 安 定 す る で あ ろ う。 も ち ろ ん,雇 用,福 祉,環 境 を 守 る こ と を前 提 に した 成 長 を 図 り,国 際 収 支 も黒 字 基 調 に 誘 導 し,為 替 の 安 定 化 を 図 るべ き で は な い か 。 こ の点,日 本 の 海 外 進 出 企 業 の み な らず 国 際 金 融 関 係 者 は,改 め て 世 界 経 済 と複 数 の 基 軸 通 貨 を ど の よ うに 位 置 づ け た らよ い か を 自 ら も知 る べ きで あ ろ う。
3.ア ム ステル ダム 条約 とは何 か
欧 州 の 経 済 政 治 の動 き の テ ン ポ は早 い。EUの 本 部 だ け で な く,フ ラ ンク フ ル トの 欧 州 通 貨 機 関
(1999年 か ら欧 州 中 央 銀 行 へ 移 行)を 訪 問 し,通 貨 ・為 替 の 専 門 家 と議 論 して も,彼 ら は,自 信 を
も っ て 通 貨 統 合 こ そ が ヨ ー ロ ッパ 経 済 の再 生 で あ り,新 欧 州 の 発 展 で あ り,前 途 が き わ め て 明 るい と予 測 す る。
私 た ち は9月25日 フ ラ ン ク フ ル トの 中 心 部 に 建 った 高 層 ビル に あ る 欧 州 通 貨 機 構 の 本 部 に,通 貨 専 門 家 で あ る フ ラ ン ク ・モ ス(FrankMoss=
HeadofPlanningSection,PolicyDivision,General Secretariat)氏 を 訪 ね て 討 議 した 。
こ こで は,EMIの 仕 事 の 内容 やECBの 設 立 の 準 備 状 況 に つ い て 詳 し く話 を き い た。 と く にE
CB設 立 に っ い てEU蔵 相 会 議 で,97〜99年 の間 に決 め,政 策 手 段 に つ い て はECBに よ る市 場 で の金 利 操 作,流 動 性 管 理,お よ び 金 融 政 策 ス タ ン ス の シ グ ナ リ ン グ を 可 能 と す る こ と を 目 的 に,公 開 市 場 操 作 を 柱 と しつ つ,金 利 の 上 下 限 を 設 立 す
る常 設 フ ァ シ リテ ィ ー(Standingfacility)も 列 挙 す る と い う。
さ らに 加 盟 各 国 の 財 政 基 盤 を強 化 し,3%以 内 条 項 は厳 守 す べ き で あ る と モ ス氏 は 強 調 した 。 ま た 欧 州 中 央 銀 行 は 政 治 的 に 独 自性 を 発 揮 す べ きで あ る 。 こ の点 に つ い て わ た く しな り に整 理 して み る(7)。
加 盟 国 の法 改 正 に役 立 っ た め に,モ ス氏 が 務 め るEMIに お い て は,96年11月 公 表 し た コ ン バ ー ジ ェ ン ス ・ レ ポ ー ト(収 敏 レポ ー ト)に お い て,各 国 中 央 銀 行 の独 立 性 の 法 的 担 保 に っ い て 組 織 人 事,機 能,財 務 の 独 立 性 を 法 的 に担 保 す る。
欧 州 中 央 銀 行 法 も各 国 の 中 央 銀 行 と の 不 整 合 を 改 め,こ う した 側 面 だ け で な く政 治 的 中 立 性 を 明 確 に うち 出 す べ き で あ ろ う と い う の で あ る〔7)。
1998年7月 ま で に,欧 州 中 央 銀 行 の行 員 は500 人 で 発 足 す る と い うか ら現 在EMIの350人 よ り 多 くな る。EUは,euroに 関 す る法 整 備,決 済 シ ス テ ム,銀 行 券 発 行 の準 備(銀 行 券 にっ いて99年1 月1日euro導 入2002年1月1日 流 通 開 始 の 予 定)(81 統 計 準 備 な ど さ ら にEU主 要 金 融 市 場 のEU系 企 業 の 競 争 力 強 化 な ど の課 題 に っ い て 討 議 した 。
こ の こ と は,ど う して も,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 新 し い段 階 で の 見 直 し と な って 表 面 化 した 。
1997〜98・ 激 動 す る ヨmッ パ
前 に 触 れ た マ ー ス ト リヒ ト条 約 は,批 准 した 政 府 や 国 民,市 民 か ら も,さ ま ざ ま な 批 判 や要 求 が 出 さ れ た 。 そ れ は,条 文 の 問 題 だ け で は な い。 政 策 の優 先 順 位,EUの 機 構 の 官 僚 主 義 的 傾 向,政 策 決 定 プ ロ セ ス の 問 題 地 域 格 差 問 題,雇 用,人 権 問 題 な ど の 課 題 が 山 積 して い た 。 そ れ らの 課 題
を 今 世 紀 末 ま で に 解 決 す る た め にy96年3月29 日 に,イ タ リア の ト リノ でIGC(政 府 間 会 議)を 開 き97年6月 ま で に 欧 州 理 事 会 で,次 の 段 階 の 新EU条 約 の 草 案 を 作 る こ と を 決 め た の で あ る。
IGCに お い て も,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 に お け る 域 内 国 境 の 障 害 問 題,市 民 の 政 策 決 定 へ の参 加 の 問 題EMU第3段 階 へ の 移 行 上 の 諸 問 題EU 拡 大(旧 東 欧 諸 国 の加 盟 問 題),中 成 長 の 維 持,雇 用 問 題 自 由 と安 全 な ど を 具 体 的 に対 応 して い くた め に,新 条 約 す な わ ち ア ム ス テ ル ダ ム条 約 を 必 要 と して い た の で あ る 。 そ れ が1997年6月16・17 日,オ ラ ン ダ の ア ム ス テ ル ダ ム で 開 か れ た 欧 州 理 事 会 で ま と め られ た の で あ る。 この ア ム ス テ ル ダ
ム 条 約 は,欧 州 連 合 の 雇 用 ,市 民 の権 利 重視,移 動 の 自 由 と安 全 の 維 持,世 界 に 対 す る欧 州 の 発 言 権 の 強 化,EU機 構 の 効 率 化 な ど を 目的 に集 約 さ れ た の で あ る。
そ の 条 約 案 の 主 要 事 項 を 紹 介 して お く(9}。
第1章 が 基 本 権 と差 別 撤 廃 の 条 項 で あ る。 す な わ ちEUは 自 由,民 主 主 義,人 権 と基 本 的 権 利 の 尊 重,法 の 支 配 の 原 則 に 立 脚 す る と して い る。
第2章 で は 自 由,安 全,法 と正 義 の 地 域 の 斬 新 的 建 設 の 条 項 を も り込 ん で い る。 こ の た め にEU 理 事 会 は,条 約 発 効 後5年 以 内 に,人 の 自 由 な 移 動 を 保 障 す る措 置 を取 る。 こ の 点 は,シ ェ ン ゲ ン 協 定 と 関 連 で み る と一 歩 前 進 で あ る。 「シ ェ ンゲ
ン協 定 調 印 国(13力 国)は,EUの 法 的 枠 組 の 中 で 緊 密 な 協 力 関 係 を 続 け る」 と し て い る。 ま た
「司 法 協 力 は と く に テ ロ,組 織 犯 罪,子 供 へ の 犯 罪,麻 薬 犯 罪 な ど に 対 処 す る こ と を 目 的 とす る」
と して い る。
さ らに この 協 定 に 国 内 事 情 か ら参 加 で き な い 英 国,ア イ ル ラ ン ド,デ ン マ ー ク は,い つ で も これ らの 条 項 の一 部 ま た は 全 部 を 受 け入 れ る こ と が で き る」 と寛 容 の 態 度 を と っ て い る。
一79
第3章 で は,フ ラ ン ス,イ ギ リス が 主 張 す る 雇 用 を 取 り上 げ る 。 ① 加 盟 国 は 雇 用 に 関 す る統 一 的 な戦 略 を た て,高 水 準 の 雇 用 を確 保 す る。 ② 理 事 会 は 毎 年 域 内 の 雇 用 情 勢 を 調 査 し,年 次 報 告 書 (annualReport)を 作 成,結 論 を 採 択 す る。③ 理 事 会 は 雇 用 情 勢 を 監 視 す る雇 用 委 員 会 を 設 置 す る。
こ の 点 は 従 来 の 雇 用 対 策 の 問 題 半 ば 放 任 状 態 か ら確 実 な 一 歩 前 進 で あ る。
第4章 が 社 会 政 策 で あ る。「加 盟 国 は,労 働 環 境 改 善,労 働 者 へ の 情 報 提 供,男 女 雇 用 均 等 化 の 活 動 を 支 援 す る 」 第5章 か ら11章 ま で に は,環 境, 市 民 の健 康 消 費 者 保 護,そ の 他 のEU政 策,補 完 性 の原 則,透 明 性,EU立 法 の 質 に っ い て 規 定
して い る。 第12章,第13章 で は,共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策,対 外 経 済 関 係 を 規 定 して い る。 前 者 で は,「EUは 外 交,安 全 保 障 の 共 通 分 野 で の 共 通 政 策 を 策 定 し,実 施 す る。 共 通 外 交 ・安 全 保 障 政 策 の 一 般 的 指 針 を 策 定 し,共 通 戦 略 を採 用,共 同 一 般 的 指 針 を 策 定 し
,共 通 戦 略 を 採 用 し,共 同 行 動 を 取 る」 と な っ て い る。 この 点 は,世 界 の 安 全 保 障 に 対 す るEUの 発 言 力 が 強 力 に な り,そ の 基 底 に は 市 民 主 体 の 共 通 外 交,安 全 保 障e軍 縮 と い
う展 望 が あ る と考 え られ る。
第14〜19章 で は,EUの 機 構,す な わ ち,欧 州 議 会,理 事 会,欧 州 委 員 会,欧 州 裁 判 所,そ の 他 の 諸 機 構 各 国 議 会 の 役 割,さ らに 緊 密 な 協 力 す な わ ち 柔 軟 性,EU諸 条 約 の 簡 素 化 と統 合 整 理 を 規 定 し,一 般 市 民 に もわ か りや す く し,EUの 協 力 関 係 を強 化 して い く と い うの で あ る。
こ の ア ム ス テ ル ダ ム条 約 草 案 は,97年10月, ア ム ス テ ル ダ ム で15か 国 が 公 式 に 調 印 し,あ と は各 国 に お け る国 民 投 票,ま た は 議 会 に お け る批 准 と い う形 で,そ の 承 認 が 有 権 者 の 手 に ま か され
た ◎
こ の 条 約 は,EUが21世 紀 に 向 け て,内 容 の 充 実,深 化 と拡 大 を め ざ して 新 しい大 き な歩 み を 示 した こ とに な る 。 も ち ろ ん,加 盟 国 の 市 民 の参 加, 統 治,開 拓,協 力 に つ い て の 討 議 こ そ 重 要 課 題 で あ ろ う。 激 動 す る ヨ ー ロ ッパ の 主 人 公 は た え ず 市 民 で な け れ ば な らな い で あ ろ う。
一80一 1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッパ
4.1997〜98年 の イ ギ リ ス,フ ラ ン ス の 新 政 権 政 党 の 課 題
(1)イ ギ リス 労 働 党 政 権 の 誕 生 の 意 味
1997年5月 イ ギ リス 国 民 は燃 え た 。18年 間 保 守 党 政 権 が 続 い た イ ギ リ ス は,戦 後 イ ギ リス経 済 の 代 名 詞 に な っ た 「英 国 病 」 を 返 上 した と い わ れ た 。そ れ は,1979年3月28日,サ ッ チ ャー 女 史 は 保 守 党 主 と して 労 働 党 内 閣 に 不 信 任 の 動 議 を だ し,当 時 第3の 政 党 で あ る 自 由 党 を ま み 込 み,保 守 党311票 対310票 で 可 決 した 。 一 票 の 差 で 彼 女
は そ の後 の 首 相 の 座 を確 固 た ら し め た 。 同 年5月 3日 の 総 選 挙 の 結 果,保 守 党339,労 働 党269,自
由党11,そ の 他16と い う結 果 で あ っ た 。そ の 後4 度 の 選 挙 で サ ッ チ ャ ー 保 守 党 は 勝 利 し,サ ッ
チ ャ ー=メ イ ジ ャ ー政 権 は,18年 間 続 い た 。 サ ッ チ ャ ー の 経 済 政 策 は こ う で あ っ だ1⑪。 第1 に イ ギ リス 経 済 の 「活 性 化 」 を 選 択 し,従 来 の ケ イ ンズ 的 有 効 需 要 政 策 を 放 棄 し,供 給 サ イ ドか ら の 経 済 の パ フ ォ ー マ ン ス を 改 善 しよ う と した点 に あ っ た 。 第2に 「規 制 緩 和 政 策 」 を 実 践 した点 に あ った 。 従 来 の 政 府 に よ る価 格 抑 制 政 策,所 得 政 策 を 放 棄 し,資 本 の 自 由 移 動 政 策 を 選 択 した 。 例 え ば,為 替 管 理 の 全 廃,運 賃 の 規 制 廃 止 を し た こ
と に よ っ て,資 本 の流 入 を通 して 国 内 の 企 業 の 競 争 力 に 刺 激 を 与 え た り,自 由価 格 制 を 採 用 し,運 賃 を 引 き下 げ た り,自 由 化 政 策 を 進 め た 。 第3に 証 券 取 引 上 の 制 度 改 革,す な わ ち ビ ッ グ ・バ ンの 採 用 に あ っ た 。 ① 証 券 取 り引 き の 自 由化 の た あ に 取 引 所 の 会 員 権 を 開 放 した こ と,② 証 券 業 務 の 引 き受 け(マ ー チ ャ ン トバ ンカ ー),委 託 売 買 業(プ ロー カ ー),売 買 業(ジ ョ ッパ ー)の3分 割 を 廃 止
し,国 際 資 本 に対 抗 で き る よ う に す る た あ に 「単 一資 格 制 度 」 を廃 止 した こ と,③ 委託 最 低 手数 料 を 撤 廃 した こ と な ど証 券 業 に お け る弱 肉 強 食 」 の 論 理 を 定 着 さ せ,外 国 資 本 の 流 入 を 活 発 化 さ せ た 。 第4に は,国 有 企 業 の 「民 営 化 」(Privatiza‑
tion)政 策 で あ っ た。 こ れ は,労 働 党 に対 す る実 質 上 の批 判 で あ っ た 。 労 働 党 が 実 施 した 国 有 化 企 業 の 非 効 率 性,非 競 争 性 を 改 革 す る こ と に あ っ た (も ち ろ ん国 有 化後20年 近 くは,き わ め て効 率 性,公
平 性 を もた ら した)。50社 以 上 の 国 有 企 業 の 民 営 化 を 目指 した 。 この 点 は,さ ま ざ ま な 問 題 を提 出 し た 。 そ の他,財 政 赤 字,公 共 負 担 を軽 く した こ と や,エ リー ト主 義 教 育 を 廃 止 した 。 他 方 人 頭 税 の 設 定,税 制 改 革 な ど を 実 行 した。
こ う した サ ッチ ャ ー リズ ム は,一 方 で,資 本, 経 営,資 産 の論 理 を貫 徹 し,他 方 で,中 間 層 や 中 所 得 者(労 働 者),技 術 者 な ど に ア ピ ー ル した 。 だ か ら18年 間 も政 権 を 担 当 す る こ と が で き た の だ
と思 う。
と こ ろで,こ う した 「活 性 化 政 策 」 も,保 守 長 期 政 権 の 中 で,貧 富 の 格 差 拡 大,福 祉 の 後 退,教 育 政 策 の 軽 視,教 育 設 備 の貧 弱 性,初 等 教 育 水 準
の低 下,資 産 の所 有 者 と非 所 有 者 の 格 差 の 拡 大, を も た ら し た 。 さ ら にEUに お け る 共 通 通 貨 政 策,社 会 政 策 へ の 不 参 加(市 場 統 合 へ は参 加)に 対 す る批 判,所 得 税 率 の 公 平 化 の 後 退,開 発 志 向 主 義 へ の 厳 し い批 判 な どが 顕 在 的 に か つ 潜 在 的 に国 民 の 間 に ま き起 って 来 た 。
こ の よ う な 中 で,97年3月 の 世 論 調 査 を み て も わ か る よ うに,国 民 の労 働 党 へ の 期 待 は 大 きか っ た 。だ か ら97年5月 の 総 選 挙 は,労 働 党 の 圧 勝 に 終 っ た 。 念 の た め に記 録 して お く。 総 議 席659の
う ち労 働 党419議 席(解 散 時272,得 票率44.5%), 保 守 党165議 席(解 散 時321,得 票 率31.5%),自 由 民 主 党46議 席(解 散 時46,得 票率17.2%)ア イ ル ラ ン ド統 一 党10,(解 散 時9)tス コ ッ トラ ン ド民 族 党6{4),ウ ェ ー一ル ズ 民 族 党4(4}そ の 他 の 政 党9 (9),そ れ ぞ れ の議 席 数 で あ った 。 こ う して 労 働 党 が 地 滑 り的 な 勝 利 を お さ め,野 党 に な っ た保 守 党 に254議 席 の 大 差 を っ け た こ と は,第2次 大 戦 後 の 英 国 総 選 挙 の 歴 史 上 始 め て の こ とで あ るU11。
で は な ぜ 労 働 党 は圧 勝 で き た の か 。 そ れ に は労 働 党 が 一 貫 して サ ッ チ ャ ー 政 権 の 実 態 を 踏 ま え て,そ の 政 策 を 系 統 的 に 批 判 し,同 時 に党 の 体 質 改 革 に 積 極 的 に取 組 み,実 行 した 点 に あ る。 前 者 に つ い て は,1970年 代 に,か な り是 正 され た 所 得 格 差 を 拡 大 した こ と,と くに80年 代,先 進 国 の 中 で も,賃 金 格 差 上 昇 率 の 増 大 を み せ た こ と,前 述 した よ う に教 育,医 療,福 祉 面 で の公 費 切 り下 げ, 国 民 の 自 己 負 担 が 増 大 し た こ と,税 制 の 不 公 平
1997〜98・ 激 動 す る ヨ ー ロ ッ パ
性,中 小 企 業 の 切 り捨 て 政 策 が 表 面 化 した こ と な ど の 理 由 か ら,国 民 が 労 働 党 の 政 策 を 支 持 した の で あ る。 後 者 に っ い て は 党 首 トム ・ブ レ ア の 革 新 的 イ メ ー ジ が 手 伝 っ て い る。 「労 働 党 の 勝 利 は 明 か に ブ レア の個 人 的 勝 利 だ 。 中 道 へ の 修 正 の 決 断 を くだ した ブ レ ア の 政 策 が 労 働 党 へ の 信 頼 を醸 成 し,選 挙 運 動 に 対 す る批 判 を 補 って 余 り あ る も の と な っ た 」(FinancialTimes,2May1997)と 。
こ う した 評 価 は,ブ レ ア の 労 働 党 の体 質 改 革 な しに は 考 え られ な い 。 ブ レア を魅 力 あ る も の に し た の は,こ の10〜15年 に わ た る身 を 切 る よ う な 懸 命 な労 働 党 の 改 革 の 歴 史 が あ っ た か ら だ。 例 え ば,1983年 の 当 時41才 のN.キ ノ ッ ク(Kinnock) が 党 主 と して 党 内 対 立 を 克 服 した と い う。 彼 は 1987年 の 総 選 挙 の 敗 北 後,労 働 党 の 政 策 全 般 の 見 直 し,点 検 を 行 い,と く に労 働 者,経 営 者,市 民 の ニ ー ズ に 対 応 す る こ と を 優 先 した の で あ る。89 年 の党 大 会 で,執 行 部 は 「市 場 社 会 主 義 」 「社 会 主 義 と経 済 的 効 率 と の あ り方 」,「欧 州 統 合 の一 構 成 国 」を 軸 と し た新 総 合 政 策 を発 表 した 。だ が92年 の 総 選 挙 で57%勝 利 す る だ ろ う と 与 論 調 査 の 結 果 が で た が,敗 北 した 。 キ ノ ッ ク は,責 任 を 取 っ て 辞 任 した 。 後 継 者 に は,労 働 党 の 影 の 内 閣 の 蔵 相 で あ っ たM.J.ス ミス新 党 首 が 就 任 した 。 彼 は 総 選 挙 敗 北 の分 析 を した 結 果,政 策 は正 当 性 を も っ よ う に な っ た が,労 働 組 合 と労 働 党 の 関 係 ,国 民 と労 働 党 の 関 係 を 市 民 社 会 的 に 改 革 しな け れ ば な らな い と訴 え た。 例 え ば 労 組 員 の 党 員 登 録 を個 人 の 明 確 な 意 思 に基 づ い て 行 な い,従 来,党 の あ り方 を左 右 して き た ブ ロ ッ ク投 票 を廃 止 して1人 1票 制 と した 。 こ の 方 式 に 交 通 関 係 の 大 労 組 は, 激 し く反 対 した が,93年 の党 大 会 で 賛 否 の 結 果, 改 革 案 が 僅 小 差 で 可 決 した。 だ が 惜 しい こ と に, ス ミス は,1年 後,心 臓 病 で 倒 れ 急 逝 した。 彼 は, 党 の 再 生 を 賭 け て,古 い体 質 を ひ とつ ひ とつ 改 革 した 。 こ の 功 績 は,い ま も って 評 価 さ れ て い る。
彼 の 後 継 者 と して 党 大 会 で 選 出 され た 党 首 が,影 の 内 務 大 臣 で あ っ た 当 時,41歳 の トニ ー ・ブ レア (TonyBlair)で あ っ た。 彼 は,オ ッ ク ス フ ォ ー ド 出 身 の イ ンテ リと して 知 識 人,中 産 階 級,女 性 層, と り わ け若 も の な ど に 人 気 が あ っ た 。 こ こ で 触 れ
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て お き た い の は,経 済 政 策 学 者 や 経 済 学 者 は,従 来 経 済 の シ ス テ ム や 経 済 制 度 や 機 構 分 析 に 終 始 す
る が,そ れ を 改 革 す る人 間 や 政 党 の あ り方,そ の 政 策 の 分 析 を 欠 落 さ せ て き た の で は な い で あ ろ う か 。
T・ ブ レ ア は,ス ミス の 後 を継 い で ,労 働 党 の
「既 得 権 の 打 破 」 を 訴 え た。 と くに 「公 共 活 動 」 を い か に 位 置 づ け る か,ま た コ ミュ ニ テ ィ概 念 を 見 直 して 社 会 主 義 の 構 想 を い か に 打 ち立 て るか に 腐 心 した 。 さ らに ブ レ ア は,各 人 は コ ミ ュ ニ テ ィ に 支 え られ て そ の 権 利 を 守 られ る と同 時 に 各 人 は コ ミュ ニ テ ィ を 支 え る義 務 を 背 負 って い る こ と を 強 調 した。 彼 は 権 利 と義 務 の 相 互 性 を 主 張 し,サ ッ チ ャ ー主 義 の 倫 理 性,社 会 ル ー ル な ど の 重 要 性 , す な わ ち 「法 と秩 序 」 を 重 視 した 。 彼 は,94年 党 主 に な るや 若 者 と女 性 の 参 加 を 求 め,そ の後3年 間 に3万 人 の 若 い 党 員 の 加 入 に成 功 した と い わ れ
る。94年 の 党 大 会 で,労 働 党 が 国 民 主 流 を 代 表 す る党,多 数 者 の党 に な る決 意 を表 明 し た。 個 人 が 強 力 で,人 間 味 の あ る コ ミュ ニ テ ィの 中 で 生 き て い け る 当 り前 の 社 会 観 を も っ た 社 会 主 義 を 主 張 し た 。 した が っ て 彼 は,ヨ ー ロ ッパ 社 会 民 主 主 義 と も,マ ル ク ス主 義 的 「科 学 的 社 会 主 義 」 と も違 っ た 倫 理 社 会 主 義 コ ミュ ニ テ ィ主 体 の 社 会 主 義 を 強 調 した。 した が っ て 「生 産,交 換 手 段 の 公 有 化 」
「産 業 の 国 有 化 」 を 規 定 して い る党 規 約 第4条 の 改 訂 を提 案 した 。
わ た く し な り に 整 理 す れ ば,社 会 主 義 の 目標 と 市 場 経 済 は両 立 す る と い う。 公 的 規 制 と規 制 緩 和,公 共 分 野 の 経 済 と市 場 経 済 と の 有 機 的 結 び っ きを 強 調 した 。 もち ろ ん 理 論 的 な問 題 は 山 積 して い る け れ ど も,ブ レア が 「生 れ か わ る労 働 党 」 「新 しい ヴ ィ ジ ョ ンを も った 英 国 を 」 ス ロ ー ガ ン に し て 全 国 行 脚 に乗 り 出 し,国 民 の ニ ー ズ を 吸 収 して 政 策 づ く りを 展 開 した こ とが,国 民 の 支 持 を え た の で は あ る ま い か と考 え る。
彼 の 政 権 獲 得 後 の 施 政 方 針 を み る と,<経 済 政 策 関 連 〉 で は こ うで あ る。{1)物 価 安 定 の た め, イ ン グ ラ ン ド銀 行 に 対 す る最 低 貸 出 金 利 の 決 定 権 の 移 管(97年5月6日 に声 明)を す る こ と,(2)公 的 債 務 の 厳 格 な 管 理 と赤 字 財 政 の 削 減 計 画 を す る
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こ と。(3)民 営 化 さ れ た 公 益 企 業 の 超 過 利 潤 に対 す る 「ウ ィ ン ド ・フ ォ ー ル(た なぼ た)」 税 を 設 定 し,実 行 す る。 こ の 超 過 利 潤 の 課 税 を財 源 と して 雇 用 促 進 計 画(Welfaretowork)を 具 体 化 す る こ と。(4)投 資 促 進,中 小 企 業 支 援,地 域 経 済 開 発 の 調 整 を 担 う 「地 域 開 発 庁(RegionalDevelop‑
mentAgencies)」 の設 立 に よ る雇 用 増 と企 業 の 活 性 化 政 策 の両 立 を 図 る こ と な どで あ る 。
さ ら に 〈 社 会 ・生 活 関 連 〉 の 政 策 と して は(1) 教 育 改 革 で あ る。 サ ッチ ャ ー 時 代 の エ リー ト教 育
を 抑 制 して,低 所 得 家 庭 出 身 の優 秀 な 生 徒 に対 す る学 費 国 家 援 助 制 度 を 止 め て,そ の 予 算 を 学 級 サ イ ズ縮 小 に振 り向 け る。 教 育 水 準 の 量 と質 を 高 め る た め に 総 合 教 育 審 議 会 を 新 設 す る。 教 師 の 能 力 を 向 上 さ せ る た め に 資 格 を 厳 し くす る。(2)ス
コ ッ ト ラ ン ドと ウ ェ ー ル ズ の 議 会 設 立 に 関 す る国 民 投 票 を 実 施 す る。 この 点 に つ い て は,97年10
月11日,1707年 の イ ン グ ラ ン ドと の 合 併 以 来 約 290年 ぶ り に ス コ ッ ト ラ ン ドは議 会 を 開 設 す る こ と に な っ た 。11日 の 住 民 投 票 の 結 果70%が 開 設 賛 成 で あ った 。 ブ レア の 「地 方 分 権 」 政 策 が 実 現 す る。 政 府 提 案 で は,外 交 ・国 防 な ど を 除 く幅 広 い 行 政 分 野 で 独 自 の 立 法 権 を も ち,所 得 税 を3%
の 幅 で 増 減 す る 権 限 も 与 え られ る 。 こ の 結 果, 2000年 ま で に エ デ ィ ンバ ラ に議 会 が 開 か れ,行 政 機 関 は 「地 方 政 府 」 の 性 格 を もっ こ と に な る。 ス
コ ッ トラ ン ドは,イ ン グ ラ ン ドへ の 対 抗 意 識 が 強 い。 与 党 ・労 働 党 や 「完 全 独 立 」 を 唱 え る ス コ ッ
トラ ン ド民 族 党(SNP)な ど は開 設 推 進 キ ャ ン ペ ー ン を 張 っ て 頑 張 っ た 。 ま た ウ ェ ル ズ で も,わ ず か 約3000票 の 差 で,議 会 開 設 派 が 勝 利 し た 。こ の 点,ブ レ ア の 政 策 は実 現 さ れ る。 ③ 大 ロ ン ド ン 市 お よ び市 長 選 出 に 関 して は,国 民 投 票 を 提 案 し て い る。 そ れ は イ ギ リス の 首 都 と して の 位 置 づ け に あ る。 そ の 他 宝 く じ収 益 金 の う ち10億 ポ ン ド を 医 療,教 育,科 学 振 興 に再 分 配 す る こ と,子 ど も の 夜 間 外 出 禁 止,青 少 年 対 象 の 刑 事 訴 訟 の 簡 略 化,拳 銃 所 持 の 全 面 的 非 合 法 化 な ど を打 ち 出 して
い る。
一 方 対 外 的 に は ,政 権 獲 得後4日 目に当 る5月 5日,EUの 「社 会 憲 章 」 に 調 印 す る と表 明 した 。
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通 貨 統 合 へ の 参 加 も,国 民 投 票 を 早 く実 施 した い と い う意 向 を 非 公 式 に 表 明 した よ う だ 。
他 方,ブ レア首 相 は,5人 の 女 性 大 臣 を 起 用 し た 。 貿 易 産 業 相 に マ ー ガ レ ッ ト ・ベ ケ ッ ト,北 ア イ ル ラ ン ド相 に マ ー ジ ャ リ ・モ ー ラ ム,国 際 開 発 相 に ク レ ア ・シ ョ ー ト,社 会 保 障 相 に ハ リエ ッ
ト ・ハ ー マ ン,枢 密 院 議 長 ・下 院 院 内 総 務 に ア ン ・テ イ ラ ー を え らん だ こ と は画 期 的 な こ とで あ る。 これ に は総 選 挙 で女 性 議 員 の 数 が120人 と倍 増 し た こ と もあ る。 私 た ち が9月22日 午 前10時
に テ イ トギ ャ ラ リ近 く に あ る 労 働 党 本 部(John SmithHouse,150WalworthHouseLondonSE17
1JT)に 行 き,政 策 担 当 の幹 部 で あ り,ブ レア を 支 え て い る ブ レ ー ンJ・ マ ッ ゼ ウ 氏 と懇 談 し た と き,労 働 党 の 経 済 政 策 に つ い て,自 信 と 誇 り を も っ て 答 え て い た。 そ れ は 多 数 決 を 取 って い る労 働 党 の 余 裕 な の か も しれ な い 。 ブ レ ア の 人 気 は, 与 論 調 査 で61%以 上 で あ る(1998年1月 現 在)。
彼 は い う。 「経 済 政 策,市 場 経 済 を 活 用 し,雇 用,福 祉 政 策 に重 点 を お く。EUの 一 構 成 国 と し
て積 極 的 に協 力 して い く」 とい う,基 本 軸 を 説 明 して い た 。 も ち ろ ん 雇 用 と成 長,環 境 と開 発 な ど に つ い て 討 論 した の は有 意 義 だ っ た 。
こ ん ご国 際 化 の 中 で,EUの 中 で,ブ レア 政 権 は ど の よ うに イ ギ リス を 位 置 づ け て い くの か 注 目
され るで あ ろ う。 国 際 的 に も,そ の イ ンパ ク トは 大 き い。
(2)97〜98・ フ ラ ン ス の ジ ョス パ ン政 権 の 主 要 政 策 と課 題
1997年6月 に 入 っ て フ ラ ン ス は大 い に 揺 れ た 。 シ ラ ク大 統 領 が 保 守 連 合 を 強 化 す る た め に,議 会 を 解 散 した が,そ れ が 国 民 の 批 判 と して 表 面 化 し た。 同 年6月1日,国 民 議 会 選 挙(第1回5月25
日)で,総 当 選 者 数577議 席(小 選 挙 区 制)で あ るが,第1回 目 の 選 挙 で 得 票 数50%以 上 取 らな け れ ば 当選 で き な い 。 第1回 目 の投 票 で 当 選 した 者 は総 数 の2%す な わ ち12人 で あ っ た。そ して 第2 回 目 の 投 票 の 結 果 を み る と,当 選 者 数 の分 布 は以 下 の 通 りで あ る。 社 会 党253(解 散 時63),共 産 党 39(同,24),環 境 保 護 派7(同,0),共 和 国 連 合135
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(同258),仏 民 主 連 合108(同206),国 民 戦 線1(同 0),そ の他34(同24)計577(解 散 時 は576)で あ る。 社 ・共 ・環 境 保 護 派 の 連 合 内 閣 が 成 立 した 。 こ う した 背 景 に は,共 和 国 連 合 と仏 民 主 連 合 な ど の 保 守 派(ジ ュ ペ 内 閣)に よ る成 長 至 上 主 義 に 対 す る批 判 が 続 出 し た こ と に あ る 。 い わ ゆ る保 守 派 が 合 理 化,効 率 性,規 制 緩 和 を 実 行 し た こ と に
よ っ て,福 祉 軽 視,雇 用 軽 視,教 育 予 算 の 削 減 , 労 働 時 間 の 週39時 間 の 維 持,環 境 保 全 軽 視 な ど を 強 行 して き た か らで は な い で あ ろ うか 。
そ れ で は,ジ ョ ス パ ンの 勝 利 の 直 接 要 因 は ど こ に あ っ た の か 。 直 接 的 要 因 は,ジaぺ 内 閣 が 財 政 赤 字 削 減 の た め に 公 務 員 削 減 計 画 を 発 表 し た こ と に あ る。そ の た め 労 組 に よ る,全 国 的 デ モ が 起 り, 国 民 に政 治 的 関 心 を盛 り上 げ た 。 この 点 の イ ンパ
ク トは大 きか っ た。 ジ ョス パ ンの 基 本 政 策 は,成 長 を 軽 視 す る も の で は な い が,公 務 員 削 減 の 中 止
な ど雇 用 優 先,最 低 賃 金 引 き上 げ,福 祉 充 実 を 通 じて 経 済 を 活 性 化 す べ き で あ る と い う点 に あ っ た 。 と く に 目立 っ た 政 策 は,労 働 時 間 を週39時 間 か ら35時 間 に 短 縮 す る こ と に あ っ た ほ か 一 部 付 加 価 値 税 の 引 き下 げ,ユ ー ロ へ の 参 加 を 表 明 し た 。当 時 す で に フ ラ ンス は失 業 率12.8%に 達 し, 史 上 最 悪 と な っ た。 労 組 は こ れ に ス トで 対 抗 し た 。
こ こで,政 府 は最 大 の 課 題 で あ る失 業 対 策 と し て 公 共 部 門 で35万 人 の 雇 用 創 出 を め ざ す 法 案 を ま と め た 。 さ ら に5年 の 任 期 中 に,賃 金 を 下 げ ず に労 働 時 間 を 週4時 間 に減 らす こ と,経 営 者 側 は
「賃 金 を 減 さ な い で 時 短 を 進 め る と,有 給 休 暇 を 増 や す よ う な もの で,経 営 者 は大 き な負 担 を 強 い られ る」 と い っ て 反 対 す る。 さ ら に ジ ョス パ ン政 府 はr軍 事 費 の う ち装 備 費,施 設 費 を 削 減 して そ の 分 雇 用 を 維 持 す る と い う施 策 も発 表 した 。
こ こ で,整 理 す る と,週39時 間 を35時 間 に短 縮 し,ワ ー ク シ ェ ア リ ン グ を 進 め れ ば,約200万 人 分 の雇 用 創 出 効 果 が あ る と い う試 算 が あ る。 周 知 の よ う に,労 働 時 間 短 縮 の 流 れ は,70年 代 か ら 90年 代 に か け て 欧 州 全 域 に拡 大 した 。労 働 者 が 自 己 の 労 働 を統 治 す る こ と に よ って 仕 事 の価 値 を創 造 す る こ と を 試 さ れ る こ と に な る。 隣 国 ドイ ッ は
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業 種 ご と の労 使 協 議 で 労 働 時 間 を 決 め て い る が , 自 動 車,機 械,金 属 な ど の 有 力 業 種 は フ ラ ンス に 先 駆 け て 正 規 従 業 員 の 週35時 間 労 働 を 実 現 して い る。 給 与 水 準 を 引 き下 げ ず に実 施 さ れ た こ と に よ って,ド イ ッ の 労 働 時 間 あ た り の 賃 金 は,先 進 国 最 高 水 準 に な っ た。 フ ラ ン ス国 立 統 計 経 済 研 究 所 に よ る主 要 国 の週 平 均 労 働 時 間 を み る と(1994 年),英 国44時 間,日 本43時 間,オ ラ ンダ40時 間,フ ラ ン ス39時 間,ド イ ッ35時 間,米 国35時 間,カ ナ ダ31時 間 で あ る。
ジ ョ スパ ン内 閣 は,97年7月 に 緊 急 財 政 赤 字 対 策 を ま と め,大 企 業 の 法 人 税 率 引 き上 げ を 決 め た。 そ の 理 由 に つ い て,ス トロ ス カ ー ン大 蔵 大 臣 はa「大 企 業 は利 益 に 見 合 っ た国 内 投 資 を せ ず ,雇 用 創 出 に 十 分 に 貢 献 し て い な い 」(Lemonde, Samedi20Septembre1997)と い う。
と もあ れ,ジ ョス パ ン政 権 は6月6日 の 欧 州 社 会 党 大 会 で,英 国 の ブ レ ア首 相 と と も に,欧 州 統 合 が 市 場 経 済 の 原 理 だ け で 進 め て は な らず,失 業 問 題 の 解 決 な ど市 民 の 利 益 に か な う形 に しな け れ ば な ら な い と主 張 した 。 ジ ョ ス パ ン首 相 は,欧 州 の 社 民 党,労 働 党 の連 帯 の 中 で ,雇 用 問 題 も解 決 して い くと い う方 針 を 打 ち 出 した。 欧 州 連 合 は , い ま や 労 働 者,女 性,市 民,経 営 者,技 術 者 な ど の ニ ー ズ を 吸 収 す る社 民 党,労 働 党 ,環 境 保 護 の 各 政 党 の 重 み を 重 視 せ ざ る を え な く な っ て きて い る。 フ ラ ン ス に お け る社 会 党 を 中 心 と した 左 翼 勢 力 の 増 大 の 背 景 に は,「 社 会 の 亀 裂 」 へ の 懸 念 が あ った 。 失 業 や 福 祉 削 減 な ど に よ る貧 富 の差 の 拡 大,そ の 不 満 の は け 口 と して の 排 他 主 義 の 台 頭 な ど で,社 会 が 一 体 感 を な く して い る の で は な い か 。 市 民 は,保 守 ・中 道 政 権 の 行 財 政 改 革,規 制 緩 和 を 柱 とす る 自 由 主 義 経 済 路 線 が そ れ に拍 車 を か け た と受 け と め て い る。 欧 州 の主 要 政 党 の 選 択 肢 と して,し ば しば 「ユ ー ロ ッ プ ・リベ ラル 」(自 由 主 義経 済 の欧 州)と 「ユ ー ロ ップ ・ソ シ ア ル 」(社 会政 策 重 視 の欧 州)が 引 合 い に だ さ れ る。前 者 が 保 守 中 道 路 線 に 対 して,後 者 が 社 会 路 線 で あ る 。
ち な み にEU各 国 で 政 権 を担 当 す る主 な 左 翼 政 党 を み る と,次 の よ う に な って い る(1997年9月 時 点)。