間を許容する : 見えない生活困窮者による空間的 Lifehackという手段
著者 姉崎 匠
出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科
雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編
巻 9
ページ 1‑4
発行年 2020‑03‑02
URL http://doi.org/10.15002/00023484
法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.9(2020年3月) 法政大学
間を許容する
-見えない生活困窮者による空間的 Lifehack という手段-
ACCEPT THE GAP
MEANS OF SPATIAL LIFE HACK BY INVISIBLE WORK HARD PEOPLE
姉崎匠 Takumi Anezaki
主査 赤松佳珠子 副査 川久保俊・北山恒
法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程Utilizing existing skeletons in vacant houses lurking in residential areas, reconsider the way of living in a symbiotic sphere where social housing with residuals that can be changed by residents is established.
Key Words : lifehack,work hard people
1.背景
(1)変化した家族形態
家族の形態が多様に変化する中で個が強くなり排他的に なった傾向がある。
世帯規模は縮小しており、三世代世帯や核家族世帯の 一般世帯数に占める割合が減少する一方、単独世帯は急 増している。社会保障制度をはじめさまざまな社会の制 度や仕組みについて、家族の変化への対応という視点か ら不断の見直しをしていくことが求められている。
伝統的な地域社会の関係に対する閉塞感が高まるとと もに、都市への人口移動や都市型の生活スタイルの広が りによって、個人と地域の関わりは希薄化している。
これらは社会住宅が隔離されるように作られる原因の 一つにもなっている。
(2)見えない生活困窮者という位置付け
現在公営住宅を作る仕組みとしてセーフティネット住 宅というものがあり住宅確保を配慮するもので公営住宅 の大幅な増加が見込めない状況で民間の空き家、空き室 の活用を支援する取り組みである。
しかし都心での事例の少なさや密集地帯での改修の難 しさ、住宅の登録するための基準が高く古すぎる建物は 活用できないことや住宅確保要配慮者としての枠は狭く 整合性が取れていない現状である。
こうした制度は扶養を持つ人々に対してのものが多 く、一定の年収を超えてる層は受けることができないの である。奨学金の返済に追われる新社会人や給料の問題 により転職のタイミングが難しい人など制度を受けるこ とができない若年層の暮らし方を再考する必要がある。
社会変化により若年層の誰もが見えない生活困窮者に なり得る。
変化した家族形態 単身者割合の推移
平均世帯人員と世帯数推移
生活困窮のバリエーション 20 代男性の年収平均推移
年齢階層別の平均給与
2.敷地
(1)墨田区東向島
墨田区東向島は木造密集地帯であり空き家や老朽化し た家を抱えながらも多くの新住宅が立ち並んでいます。
ほぼ住宅しかない東向島では生活動線、範囲が決まっ ており大通りに出るように街区の外側へ向かい駅に出て 都心へ向かうのが当たり前になっています。
細い道路などは近隣の人としか利用せず公共性が低く なっている
3.計画概要
東向島での生活では土地に根ざした生活がなくなって いる。日常の生活行為を少し預けられるような共有の場 を作ることで、決まった生活範囲というのが少しずつ崩
れてゆき、顔馴染みができたり関係性が深まったりする ことで公園が利用されたり家の前で遊ぶことが許される ような街全体が共生圏になる計画を行う。
4.設計
(1)空間的 Lifehack
部屋のコストを減らすため居住空間を最小限に設定 し、リビングやキッチンなどの機能を共有空間へと集め ていく。地域の人々も使う共有空間を居住と隣接させず に時間によって用途を可変できるような空間を挟むこと でプライベートとパブリックのバランスを保ちながら最 大限少ない面積を活かしていく。
現状のリノベーションでは既存躯体をフレーム化し、
大規模な改修を行うことが基本であるが、「ライフハッ ク空間」では既存の壁を剥す、残ったフレームに手を加 えない、空き家同士の余地空間への鉄骨による簡単な増 設など用い最小限の改修により残余空間として残すこと で住まい手による生活の選択性が発生する。
夜自分が夜ご飯を食べていたプライベートな場所が次 の日のお昼には地域の住民のおしゃべりする場所となっ ていたり、共有空間として開かれているリビングをバイ トまでの間の時間に勉強をする場として使うなど、住民 や利用者にとってそれぞれの使い方ができるのである。
住宅供給に置ける転貸借の位置付け
(3)多様化する住宅供給
人口減少による空き家の増加、相続対策などによる賃 貸住宅の供給過多など、既存ストック活用の促進を図る ために、「住み手によって形を変えられる賃貸物件」の 市場への流通が増加している、2010 年以降の既存活用 の多様化が進んでいる。
こうした既存ストックを活用した DIY やサブリース は住宅計画・供給に置いてコーポラティブ方式などボト ムアップ型の住宅計画の一つに位置付けられる。
住まい手が主体になって持続的に変化し続けることが できるサブリースは標準的な家族像やライフスタイルか た計画する従来の住まい作りの枠組みを変える可能性が ある。
東向島生活動線プロット図
居 住 空 間 の 最 小 化 主 要 路 線 か ら 外 れ て い る 東 向 島 裏 側 の 住 宅 地
選 択 性 を 持 つ 空 間 を 咬 ま せ る
管理者となる住民
超密集地帯▷未接道敷地を縫うように
公園とマンションの裏側▷抜けと動線を生み出す 道路を挟んで向かい合う▷角地での繋がり
(2)日常行為の占有と共有
手がつけられなくなっている空き家を持つ人が賃貸者 となりオーナーとしてサブリース化を行い社会住宅とし て供給する。日常の延長を行えるような共有の場を持つ 社会住宅ではそこに住まう見えない生活困窮者たちが管 理者となっていくのである。
見えない生活困窮者たちが管理者となり自宅にいる間な ど周辺の住民にとって生活行為を預けられるような共有 空間を交代制で管理することで手軽で低価格で住まうこ とができるのである。
プログラム:社会住宅+ランドリー、キッチン
プログラム:社会住宅+保育室、キッチン、スタジオ プログラム:社会住宅+収納、キッチン、スタジオ
仲良くなった近隣の人と居住空間を自分たちの場所にする
公園への抜けにそれぞれの活動が見える
今までまっすぐ歩いてたところを曲がりたくなる
既 存 躯 体 Lifehack 空 間
既 存 躯 体 Lifehack 空 間
既 存 躯 体 Lifehack 空 間
5.おわりに
近年、生活困窮者問題は非常に多く取り上げられてい るが多くの人々はそこに深入りはせず自覚しようとはし ていない、見えない生活困窮者という層は自身がこれか らなり得る立場でもあると考え本設計に取り組んだ。
暮らし方がこんなにも早く移ろうようになった今、機 能を先に限定しそれを元に計画することは難しくなって いる、機能とは人間によって環境に対し発見され続ける ものになっているのである。
住まい方は多様になりその人にあった暮らしは想定で きなくなった今、空間的 Lifehack という概念が室内体 験を常に都市体験と同時に捉えるだろう。
【参考文献】
・「脱住宅「小さな経済圏」を設計する」/山本理顕/
沖俊治
・『都市への権利』/ アンリ ルフェーブル / ちくま学芸 文庫
・『地域社会圏主義』/ 山本理顕 /LIXIL 出版
・『脱住宅:「小さな経済圏」を設計する』/ 山本理顕 / 仲俊治 / 平凡社
・『RePUBULIC 公共空間のリノベーション』/ 馬場正尊 / 学芸出版社
・『PUBLICHACK:私的に自由にまちを使う』/ 笹尾和宏 / 学芸出版社
・『公共性(思考のフロンティア)』/ 齋藤純一 / 岩波出 版
・『コミュニティ―公共性・コモンズ・コミュニタリア ニズム 』/ 広井良典 / 小林正弥 / 勁草書房
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