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手書き文章の魅力的な文字配置方法

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2014 年度 修士論文 字配りの平均化による

手書き文章の魅力的な文字配置方法

提出日: 2015 年 2 月 2 日 指導: 山名 早人 教授

早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻 学籍番号: 5113B016-9

鬼沢 和也

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概 要

魅力的な文字を書きたいと考えている人は多い.ペン字に関する多数の書籍が販売されていた り,ペン字の通信講座があったり,書写技能検定が存在するのも,魅力的な文字を書きたいと考 えている人が多いからであると考えられる.魅力的といえば,複数人の顔を平均すると魅力的に なると言われている.そこで,手書き文章も平均すれば魅力的になると考えた.手書き文章の印 象を左右する要素としては,文字自体の美しさと,文字間隔や行間隔,文字サイズといった,字 配りが考えられる.文字自体は平均化することにより綺麗になるという報告がある.しかし,字 配りに関しては我々の知る限り平均化された例はない.そこで手書き文章が与えられた際に,そ の文章の字配りを平均的な字配りにする手法を提案する.具体的には,手書き文章の字配りは,

人それぞれが持つ固有なパラメータにより決まると考える.複数人の文章より字配りを決めるパ ラメータをあらかじめ抽出し,平均しておく.手書き文章が与えられた際に,あらかじめ用意し たパラメータを用いて平均的な字配りを求める.10 名の手書き文章から抽出したパラメータを 用いて,字配りを平均した手書き文章と字配りを平均する前の手書き文章を比較し,受ける印象 がどのように違うかについて13名に回答してもらう実験を行った.実験の結果,字配りを平均 した文章のほうが平均する前の文章よりもきれい,読みやすい,好感を持てる,丁寧,真面目と いう回答がそれぞれ 75.4%,74.6%,60.8%,60.8%,58.5%となり,提案手法の有効性が確認 できた.

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目次

第1章 はじめに ...1

第2章 関連研究 ...2

2.1 平均に関する研究 ... 2

2.1.1 Langloisらの研究 ...2

2.1.2 中村らの研究 ...3

2.2 字配りに関する研究 ... 4

2.2.1 文字サイズに関する研究 ...4

2.2.2 文字間隔に関する研究 ...5

2.3 まとめ ... 6

第3章 提案手法 ...7

3.1 パラメータの抽出 ... 7

3.1.1 字配りの特徴に関する調査 ...7

3.1.2 文字の基礎的な構成要素と文字カテゴリー ...9

3.1.3 抽出するパラメータ ... 10

3.1.4 パラメータの平均 ... 14

3.2 手書き文章への平均パラメータ適用 ... 14

第4章 実験 ... 18

4.1 字配りを平均化することによる印象変化の調査 ... 18

4.1.1 実験準備 ... 18

4.1.2 実験方法 ... 21

4.1.3 実験結果と評価 ... 22

4.2 文字配置を平均化することによる印象変化の調査 ... 24

4.2.1 実験準備 ... 24

4.2.2 実験方法 ... 25

4.2.3 実験結果と評価 ... 26

第5章 まとめ ... 29

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1 章 はじめに

魅力的な文字を書きたいと考えている人は多い.ペン字に関する多数の書籍が販売され ていたり,ペン字の通信講座があったり,書写技能検定が存在するのも,魅力的な文字を 書きたいと考えている人が多いからであると考えられる.

魅力的といえば,複数人の顔写真を合成すると,合成する前の顔写真よりも魅力的になる という研究結果がある[1].また,複数の人が書いた同一文字の筆跡を平均すると,平均前 の文字より魅力的になるという研究結果もある[2].そこで,複数人の特徴を平均すること により,何においてもより魅力的になる傾向があるのではないかと考えた.

ここで,手書き文章の印象が何によって決定されるのかについて考える.候補となる要素 としては,文字自体の印象,字配りがある.字配りとは,文字の文字間隔,行間隔,文字 サイズのことである.例えばプロの書いた美しい文字で構成される文章であっても,文字 間隔が極端に不揃いであったり,文字サイズが極端に不揃いであったりする場合,文章の 与える印象はあまり良くない.よって,少なくとも

 文字自体の印象

 字配り

は手書き文章の印象を決める要素になり得ると考えられる.

文字の筆跡を平均すると,平均前の文字より魅力的になる[2]というのはつまり,手書き 文章の印象を決める 2 つの要素のうち,文字自体は平均することにより魅力的になるとい うことである.つまり,字配りについても,複数人の傾向を平均すればより魅力的な字配 りの文章を生成できる可能性がある.

魅力的な字配りの文章を作成する従来の研究としては,熟練者の文字間隔を再現する研究 [5]がある.また,漢字とひらがなのサイズ比を調整する研究[3][4]もある.しかし字配りを 平均化する研究は筆者の知る限り存在しない.そこで手書き文章が与えられた際に,その 文章の字配りを平均的な字配りにする手法を提案する.具体的には,手書き文章の字配り は,人それぞれが持つ固有なパラメータにより決まると考える.複数人の文章より字配り を決めるパラメータをあらかじめ抽出し,平均しておく.文章が与えられた際に,あらか じめ用意したパラメータを用いて平均的な字配りを求める. 実験により,手書き文章の印 象が字配りを平均化することによりどう変化するか確かめる.

本稿では以下の構成をとる.まず第2章で関連研究について述べ,第3章で提案手法につ いて述べる.次に第4章で実験と評価を行い,最後に第5章でまとめを述べる.

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2

2 章 関連研究

本章では関連研究について述べる.2.1節では本稿で提案する手法の着想を得た,平均に 関する研究について述べる. 2.2 節では既存の字配りに関する研究について述べる.最後 に節でまとめる.

2.1 平均に関する研究

2.1.1項で顔写真を合成することにより平均したLangloisらの研究[1],2.1.2項でひらが

なの筆跡を平均した中村らの研究[2]について述べる.

2.1.1 Langlois らの研究

Langloisら[1]は複数人の顔写真を合成すると,合成する前の顔写真よりも魅力的になる

というということを示した.具体的には,まず男性と女性の顔写真を 96 枚ずつ用意した.

次に96 枚の顔写真をランダムに3セットに分けた.96 枚の顔写真を3セットに分けたの で,1セット当たり32枚の顔写真が含まれている.その後,各セット内で5種類の合成顔 写真を作成した.5種類の合成顔写真は,合成に使用した顔写真の枚数が異なる.合成に使 用した顔写真の枚数は,2枚,4枚,8枚,16枚,32枚の5種類である.実験ではランダ ムに顔写真を1枚ずつ表示した.表示した時間は1枚当たり10秒間である.表示した写真

は 1(非常に魅力的でない)から5(非常に魅力的)の 5 段階で評価された.その結果が表 2-1

である.表 2-1より,特に8枚以上の顔写真を合成した写真の平均スコアは合成前の平均 スコアを上回っており,合成後の顔写真の方が魅力的であることを示した.

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表 2-1 魅力度の評価結果([1] Table.1を参考に作成)

顔写真 数 平均 標準偏差

男性 個人

SET1 32 2.60 0.53

SET2 32 2.51 0.54

SET3 32 2.42 0.48

SET1-3 96 2.51 0.52

合成

2 枚 3 2.34 0.23

4 枚 3 2.45 0.61

8 枚 3 2.75 0.57

16 枚 3 3.31 0.17

32 枚 3 3.27 0.08

女性 個人

SET1 32 2.38 0.67

SET2 32 2.48 0.63

SET3 32 2.42 0.66

SET1-3 96 2.43 0.64

合成

2 枚 3 2.87 0.49

4 枚 3 2.84 0.77

8 枚 3 3.03 0.34

16 枚 3 3.06 0.18

32 枚 3 3.25 0.07

2.1.2 中村らの研究

中村ら[2]は複数の筆跡を平均すると,平均前の筆跡よりも高く評価されることを示した.

具体的には,まず手書き文字を収集した.収集した手書き文字のうち,実験に使用したの は濁点および半濁点の付与されていないひらがな46文字である.10人の被験者に5日間,

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一日に一度全文字を記述させた.そのため,使用した文字は全部で 46(文字)×5(日間)×

10(人)の2300文字である.そして各文字のストロークをフーリエ級数を用いて式に変換し

た.そしてこの式を平均することにより,平均文字を生成した.実験ではまず,各被験者 に自分が書いた1~5日目の文字と,自分が書いた1~5日目の文字を平均した文字をランダ ムに表示した.そして綺麗だと思う順に1~3位までの順位をつけてもらった.1位を3点,

2位を2点,3位を1点とし,1~5日目の文字と平均文字の平均スコアを算出した結果,1~5 日目の文字の平均スコアは0.7~0.8程度だったのに対し,平均文字の平均スコアは2.1程度 であった.この結果より,実際にユーザが書いた文字よりも実際にユーザが書いた文字を 平均した文字のほうが高く評価されることが分かった.

次に先程の各被験者の平均文字と被験者10人全員の平均文字を平均した文字を比較する 実験を行った.全11パターンの文字を同時に表示し,実験協力者が綺麗だと思う順に1~3 位の順位を付けてもらった.そして1位を3点,2位を2点,3位を1点として集計した結 果,全員の平均文字の平均スコアがその他の平均スコアの 2~8 倍程度となった.この結果 より,ある程度字が綺麗であると評価されている人の平均文字よりも,その他の被験者の 平均文字も融合した全員の平均文字が高く評価されることが分かった.

2.2 字配りに関する研究

字配りとは,文字サイズや文字間隔,行間隔のことである.文字サイズ,文字間隔につ いての研究は存在するが,行間隔に関する研究は我々の知る限り存在しない.本節では文 字サイズに関する研究について2.2.1項,文字間隔に関する研究について2.2.2項で述べる.

2.2.1 文字サイズに関する研究

文字サイズに関する研究は,ワードプロセッサにおいて,好印象を与える漢字とひらが なの文字サイズ比について調査した研究[3]がある.また,手書き文章に近いワープロフォ ントの漢字に対するひらがなフォントサイズ比について調査した研究[4]もある.

才木らは,好印象を与える漢字とひらがなの文字サイズ比について調査した[3].具体的 には,一対比較法を用いたアンケートにより調査した.アンケートでは,2つの文章のうち どちらのほうが印象良く感じるか選択してもらう.アンケートで表示される文章は横書き のワープロ文章であり,全部で5種類ある.漢字の文字サイズは全ての文章で14ポイント であり,ひらがなの文字サイズを文章毎に変化させた.ひらがなの文字サイズは6, 8, 10, 12, 14ポイントの5種類である.この5種類の文章を,MS明朝,MSゴシック,正楷書の3 種類のフォントで作成し,アンケートをとった.その結果,MS明朝とMSゴシックではひ らがなの文字サイズを12ポイントにした場合最も印象が良かった.また,正楷書の場合は

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ひらがなの文字サイズを漢字と同じ14ポイントにした場合が最も印象が良かった.しかし 3 種類のフォントで漢字の縦幅と横幅に対するひらがなの縦幅と横幅の比率を調査したと ころ,正楷書は他のフォントに比べて比率が小さいことが分かった.最終的に,漢字の横 幅に対するひらがなの横幅は0.7程度,漢字の縦幅に対するひらがなの横幅は0.8程度が最 も好印象を与えることが分かった.

才木らは,手書き文章に近い,ワープロフォントの漢字に対するひらがなフォントサイ ズ比についても調査している[4].この調査を行ったのは,1/f揺らぎ現象が人に馴染むとい う報告があったため,ワープロ文章と手書き文章の文字重心間揺らぎを調べたところ,ワ ープロ文章はf揺らぎに近いのに対し手書き文章は1/f揺らぎに近かったためである.調査 の結果,プロポーショナルフォントを用いて漢字のフォントサイズを14ポイント,ひらが なの文字サイズを11ポイントにした場合,最も手書き文章に近くなることが分かった.

2.2.2 文字間隔に関する研究

才木ら[5]は手書き風フォントの文字構造から,熟練者の文字間隔を再現する手法を提案 した.具体的には,熟練者の文字配置モデルを考え,実際に熟練者の書いた手書き文章を 解析することにより文字配置モデルを求めた.前後2文字の文字間隔をL,前後2 文字の 中心座標のずれをPとし,文字幅をW,文字の高さをH,文字画像の重心位置を基準とし たx方向の2次モーメントをI,y方向の2次モーメントをJ,文字の外接四角形の中心位 置を基準としたx,y方向の重心位置のずれをX,Yとすると,才木らの構築したモデルは 式(1),(2)である.

𝐿 = 𝑎𝐿𝑓𝑊𝑓+ 𝑏𝐿𝑓𝐻𝑓+ 𝑐𝐿𝑓𝐼𝑓+ 𝑑𝐿𝑓𝐽𝑓+ 𝑒𝐿𝑓𝑋𝑓+ 𝑓𝐿𝑓𝑌𝑓

+ 𝑎𝐿𝑠𝑊𝑠+ 𝑏𝐿𝑠𝐻𝑠+ 𝑐𝐿𝑠𝐼𝑠+ 𝑑𝐿𝑠𝐽𝑠+ 𝑒𝐿𝑠𝑋𝑠+ 𝑓𝐿𝑠𝑌𝑠+ 𝐸𝐿 (1)

𝑃 = 𝑎𝑃𝑓𝑊𝑓+ 𝑏𝑃𝑓𝐻𝑓+ 𝑐𝑃𝑓𝐼𝑓+ 𝑑𝑃𝑓𝐽𝑓+ 𝑒𝑃𝑓𝑋𝑓+ 𝑓𝑃𝑓𝑌𝑓 + 𝑎𝑃𝑠𝑊𝑠+ 𝑏𝑃𝑠𝐻𝑠+ 𝑐𝑃𝑠𝐼𝑠+ 𝑑𝑃𝑠𝐽𝑠+ 𝑒𝑃𝑠𝑋𝑠+ 𝑓𝑃𝑠𝑌𝑠+ 𝐸𝑃

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ここで,𝑎𝐿𝑓, 𝑏𝑙𝑓, 𝑐𝐿𝑓, ⋯ , 𝑓𝑃𝑠は偏回帰係数であり,𝐸𝐿, 𝐸𝑃は残差である.偏回帰係数と残差は 実際に熟練者が書いた手書き文章より,実際の値を計測し,重回帰分析を行うことにより 得た.ただし,句読点等は文字配置が特殊な文字は対象外としている.またこの研究では 縦書き文章を対象としている.

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2.3 まとめ

2.1 節では平均に関する研究について述べた.Langlois らの研究[1]より,複数人の顔写 真を合成すると,合成前の顔写真より魅力的になることが分かった.また,中村らの研究[2]

より,複数人のひらがなの筆跡を平均することにより,平均前よりも綺麗であると評価さ れることが分かった.

また,2.2節では既存の文字配置に関する研究について述べた.2.2 節で述べた研究を表 2-2にまとめた.

表 2-2 文字配置に関する既存研究のまとめ 研究 対象とする文字配置 備考

[3][4] 漢字とひらがなの文字サイズ比 ワープロ文書が対象

[5] 文字間隔 縦書き日本語文章に対応

句読点等,文字配置が特殊な文字は対 象外.

文字サイズに関する研究[3][4]では,横書きワープロ文書における,漢字とひらがなのよ り良い文字サイズ比が調査されている.しかし文字サイズがほぼ一定なフォントを対象に しており,文字サイズが変動する手書き文字を対象としたものではない.

文字間隔に関する研究[5]では,熟練者の手書き文章の文字間隔を,手書き風フォントに よる文章において再現する手法が提案されている.しかし文字サイズや行間隔については 考慮されていない.また,句読点等,文字配置が特殊な文字には対応していない.

以上を踏まえて本稿では,手書き文字を対象とした,平均化による魅力的な文字の配置 方法を提案する.2.1節で述べた研究成果より,文字サイズや文字間隔,行間隔といった文 字配置も,複数人の特徴を平均することにより魅力的になると考えられる.また,既存の 研究では手書き文字の文字サイズや行間隔については考慮されていなかったが,提案手法 では考慮する.そして既存研究では対応していなかった句読点等,文字配置が特殊な文字 にも提案手法では対応する.提案手法の詳細は第3章にて述べる.

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3 章 提案手法

本節では,複数人が書いた文章の字配りを平均する手法について述べる.本手法ではあ らかじめ複数人の手書き文章から個人固有なパラメータを抽出し,平均しておく.手書き 文章の配置調整は,あらかじめ平均しておいたパラメータを用いて行う.パラメータの抽 出については3.1節,抽出したパラメータを用いた字配りの調整については3.2節で述べる.

なお,本手法は横書きの手書き文章を対象としている.

3.1 パラメータの抽出

本手法を考えるに当たり,字配りのどの部分に特徴が出るか調査した.そこで,まず字配 りの特徴に関する調査結果について3.1.1項で述べる.次に抽出するパラメータを説明する にあたって必要な,文字の基礎的な構成要素と文字カテゴリーについて3.1.2説明する.そ の後抽出するパラメータについて3.1.3項で述べ,最後にパラメータを平均する方法につい

て3.1.4項で述べる.

3.1.1 字配りの特徴に関する調査

提案手法を考えるにあたり,字配りのどの部分に特徴が出るか調査した.今回は筆跡鑑 定で評価する部分は個人の特徴が出る部分であると考え,筆跡鑑定についての書籍[6]を参 考にした.その結果,表 3-1に示す12の鑑定要素が存在することが分かった.これらの鑑 定要素のうち,字配りに関連する特徴は以下の6つである.

 字形が縦長か横長か

 文字の大きさのとり方

 字間

 漢字と平仮名との大きさのバランス

 行の流れ

 通常の書写態度との整合性

しかし通常の書写態度との整合性は体系的にまとめられていなく,特徴を抽出すること は難しい.そこで,通常の書写態度との整合性を除く字配りに関連する特徴5つを参考に,

抽出するパラメータを決定した.抽出するパラメータの詳細は以降で述べる

(11)

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表 3-1 筆跡鑑定における12の鑑定要素([6]を基に作成)

鑑定要素 備考

運筆の性状 字形が縦長か横長か.また,線が直線的か,丸 みがあるか

文字の大きさのとりかた 文字の大きさのとりかたは,技量にかかわらず,

個人それぞれに潜在する

字間のとりかた 字間が狭いか,広いか,不安定か.一般的に,

桝目に書かない場合には,文字が次第に大きく なり,字間も離れがちになる

漢字と平仮名との 大きさのバランス

漢字は大きめに,平仮名は小さめにというのが 一般的な傾向であるが,そこにも微妙な差異が ある

行の流れ 蛇行するかしないか,水平か,上方に上ってい くか,下方に下がっていくか.この行の傾きは 横画の方向との関連が強い

筆記用具の選択と特質 どの筆記用具を使用したか.どのインクを使用 したか

筆圧の状況

漢字の習熟度

平仮名の用法 「ゐ」や「ゑ」といった古典的仮名づかいをし ているか.また, 「わ」 「れ」 「ね」 「ぬ」 「す」に は筆跡特徴が表れやすい

通常の書写態度との整合性 用いた紙質の整合性

印鑑の整合性

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3.1.2 文字の基礎的な構成要素と文字カテゴリー

抽出するパラメータを述べる前に,抽出するパラメータを説明するのに必要な,文字の 基礎的な構成要素と文字カテゴリーについて述べる.

図 3-1に文字の基礎的な構成要素を示した.文字を構成する全ての点のうち,最小の𝑥, 𝑦 座標を𝑥𝑚𝑖𝑛, 𝑦𝑚𝑖𝑛,最大の𝑥, 𝑦座標を𝑥𝑚𝑎𝑥, 𝑦𝑚𝑎𝑥とする.手書き文字を外接四角形で切り出 した時の文字幅を𝑊,文字の高さを𝐻,外接四角形の中心位置を𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟とする.𝑊の値,𝐻の 値,𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟の座標を𝑥𝑚𝑖𝑛, 𝑦𝑚𝑖𝑛, 𝑥𝑚𝑎𝑥, 𝑦𝑚𝑎𝑥を用いて表すと,それぞれ𝑥𝑚𝑎𝑥− 𝑥min𝑦𝑚𝑎𝑥 𝑦min,(𝑥𝑚𝑖𝑛+𝑥2 max,𝑦𝑚𝑖𝑛+𝑦2 max)となる.

図 3-1 文字の基礎的な構成要素

また,文字を「漢字」「ひらがな・カタカナ」「記号」の 3 つのカテゴリーに分けた.カ テゴリー名の通り,漢字は漢字カテゴリー,ひらがなとカタカナはひらがな・カタカナカ テゴリーに分類される.記号カテゴリーに分類されるのは,カギ括弧開き”「”,カギ括弧閉 じ”」”,句点”。”,読点”、”の4文字である.

ただし,現時点では「っ」や「ッ」といった小さい文字,アルファベット,上記で述べ

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た4文字以外の記号には対応していない.しかし,「っ」や「ッ」といった小さい文字は句 読点と同様に扱えば上手くいくと考えられる.また,アルファベットもひらがなやカタカ ナと同様に扱えば上手くいくと考えられる.その他の記号については個別に適用方法を考 える必要がある.

3.1.3 抽出するパラメータ

抽出するパラメータは以下の5種類である.

 文字ごとの縦幅の平均𝐻avgと横幅の平均𝑊𝑎𝑣𝑔

 平均文字間隔𝐼𝑎𝑣𝑔

 行の傾きの平均𝑅𝑜𝑤𝑆𝑎𝑣𝑔

 行間隔の平均𝑅𝑜𝑤𝐼𝑎𝑣𝑔

 行頭文字位置の傾き𝐶𝑜𝑙𝑆

前半の3種類は,筆跡鑑定についての書籍[6]から字配りの特徴が出る部分を調査した結果 に基づくパラメータである.しかしこの 3 種類のパラメータのみでは字配りを決定できな い.そこで,字配りを完全に決定するために後半の 2 種類のパラメータを定めた.以下で 各パラメータの説明を行った後,抽出するパラメータ一覧をまとめる.

 文字ごとの縦幅の平均𝐻avgと横幅の平均𝑊𝑎𝑣𝑔

「あ」や「い」といった,一文字一文字の縦幅と横幅の平均を抽出しておく.縦幅の 平均を𝐻𝑎𝑣𝑔,横幅の平均を𝑊𝑎𝑣𝑔とする.このパラメータにより3つの特徴,「字形が縦長 か横長か」「文字の大きさのとり方」「漢字と平仮名との大きさのバランス」を抽出する.

 平均文字間隔𝐼𝑎𝑣𝑔

特徴「字間」を抽出するため,平均文字間隔を算出しておく.文字間隔とは,文字と 文字の間の空間の長さである.文字間隔の例を図 3-2に示した.図 3-2のように 𝑥𝑚𝑎𝑥, 𝑥min を定義した場合,文字間隔𝐼の値は𝑥𝑚𝑖𝑛 − 𝑥𝑚𝑎𝑥となる.𝑥𝑚𝑖𝑛 − 𝑥𝑚𝑎𝑥は負の値に なる場合もあるが,負の値の場合もそのまま変更を加えずに扱う.平均文字間隔を𝐼𝑎𝑣𝑔と する.

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11 図 3-2 文字間隔

ただし記号カテゴリーに属する文字は通常の文字間隔とは別に分けて,別の方法で文 字間隔を集計する.記号カテゴリーに属する文字は,前後の文字との位置関係が特殊だ からである.記号カテゴリーに属する文字は,記号の前後の文字との𝑥方向と𝑦方向の文 字間隔を計測し,平均値を別々に保存しておく.また,記号の場合は文字間隔の計測方 法が一文字ごとに異なる.カギ括弧開きの例を図 3-3に示した.カギ括弧開きの場合は,

前の文字との文字間隔は,前の文字の外接四角形の右上の頂点と,カギ括弧開きの外接 四角形の左上の頂点より𝑥方向と𝑦方向に分けて取る.後の文字との文字間隔は,カギ括 弧開きの左上の頂点と,後の文字の左上の頂点から取る.カギ括弧閉じの場合,前の文 字との文字間隔は,前の文字の右下の頂点と,カギ括弧閉じの右下の頂点より取る.後 の文字との文字間隔は,カギ括弧閉じの右下の頂点と,後の文字の左下の頂点から取る.

句点と読点の場合は文字間隔の計測方法が共通である.前の文字との文字間隔は,前の 文字の右下の頂点と,句点または読点の左下の頂点より取る.後の文字との文字間隔は,

句点または読点の右下の頂点と,後の文字の左下の頂点から取る.記号の前の文字,記 号,記号の後の文字の𝑥,𝑦座標をそれぞれ𝑥𝐿,𝑦𝐿,𝑥𝐶,𝑦𝐶,𝑥𝑅,𝑦𝑅とした場合に,各記 号において計測される文字間隔の値を表 3-2 にまとめた.なお,記号の文字間隔は,記 号ごとに保存しておく.

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図 3-3 カギ括弧開きの文字間隔

表 3-2 記号の前後の文字間隔の値 記号 文字間隔𝐼

前の文字𝐼𝑝𝑟𝑒 後の文字𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟

𝑥方向𝐼𝑝𝑟𝑒𝑥 𝑦方向𝐼𝑝𝑟𝑒𝑦 𝑥方向𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑥 𝑦方向𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑦

カギ括弧開き「 𝑥𝐶𝑚𝑖𝑛− 𝑥𝐿𝑚𝑎𝑥 𝑦𝐶𝑚𝑖𝑛− 𝑦𝐿𝑚𝑖𝑛 𝑥𝑅𝑚𝑖𝑛− 𝑥𝐶𝑚𝑖𝑛 𝑦𝑅𝑚𝑖𝑛− 𝑦𝐶𝑚𝑖𝑛 カギ括弧閉じ」 𝑥𝐶𝑚𝑎𝑥− 𝑥𝐿𝑚𝑎𝑥 𝑦𝐶𝑚𝑎𝑥− 𝑦𝐿𝑚𝑎𝑥 𝑥𝑅𝑚𝑖𝑛− 𝑥𝐶𝑚𝑎𝑥 𝑦𝑅𝑚𝑎𝑥− 𝑦𝐶𝑚𝑎𝑥

句読点。、 𝑥𝐶𝑚𝑖𝑛− 𝑥𝐿𝑚𝑎𝑥 𝑦𝐶𝑚𝑎𝑥− 𝑦𝐿𝑚𝑎𝑥 𝑥𝑅𝑚𝑖𝑛− 𝑥𝐶𝑚𝑎𝑥 𝑦𝑅𝑚𝑎𝑥− 𝑦𝐶𝑚𝑎𝑥

 行の傾きの平均𝑅𝑜𝑤𝑆𝑎𝑣𝑔

特徴「行の流れ」を取り入れるために,文章の各行の傾きの平均𝑅𝑜𝑤𝑆𝑎𝑣𝑔を計測する.各 行の傾きを得るには,各行の記号カテゴリーに属する文字以外の文字の𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟を通る直線 を,最小二乗法により求める.そして,その直線の傾きを各行の傾き𝑅𝑜𝑤𝑆とする.傾きは𝑥軸 が正の方向に対し,左回りを正とし,右回りを負とする.例えば図 3-4の𝜃は正であり,𝜃′は負 である.ただし−𝜋/2 ≤ 𝑅𝑜𝑤𝑆 < 𝜋/2[rad]とする.この範囲を超える場合は+ 𝜋または− 𝜋す ることにより−𝜋/2 ≤ 𝑅𝑜𝑤𝑆 < 𝜋/2[rad]の範囲に収める.なお,縦書きの文章には対応して いない.

 行間隔の平均𝑅𝑜𝑤𝐼𝑎𝑣𝑔

行間隔を得るためには,まず行の傾きを得る時と同じ方法で各行について行の傾きを 表わす直線を得る.また,文章の全ての文字の𝑥𝑚𝑖𝑛と𝑥𝑚𝑎𝑥から,最小の𝑥と最大の𝑥を取 得しておく.最小の𝑥と最大の𝑥を足して2で割ることにより,文章全体の中心の𝑥座標を 得る.文章全体の中心の𝑥座標における,隣同士の行の傾きを表わす直線の距離が行間隔 𝑅𝑜𝑤𝐼である.1つの文章における全ての𝑅𝑜𝑤𝐼の平均をとることにより,𝑅𝑜𝑤𝐼𝑎𝑣𝑔を得る.

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 行頭文字位置の傾き𝐶𝑜𝑙𝑆

各行の先頭文字のうち,記号以外の文字の𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟を通る直線を,行の傾き𝑅𝑜𝑤𝑆と同様 に最小二乗法により求める.この直線の傾きが行頭文字位置の傾き𝐶𝑜𝑙𝑆である.傾きは 𝑅𝑜𝑤𝑆と同様に,𝑥軸が正の方向に対し,左回りを正とし,右回りを負とする.ただし

−𝜋 < 𝐶𝑜𝑙𝑆 ≤ 0[rad]とする.この範囲を超えた場合の調整方法も𝑅𝑜𝑤𝑆と同様である.な お,現在は先頭に空白がある場合も,先頭に空白が無い場合と同様に処理している.

図 3-4 角度の取り方

以上で抽出する各パラメータの説明を行った.抽出する全てのパラメータの種類と,実 際に抽出するパラメータを表 3-3にまとめた.

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表 3-3 パラメータの種類と抽出するパラメータ

パラメータの種類 抽出するパラメータ 縦幅の平均と横幅の平均 各文字の縦幅の平均𝐻

𝑎𝑣𝑔

各文字の横幅の平均 𝑊

𝑎𝑣𝑔

平均文字間隔 記号以外の平均文字間隔𝐼

𝑎𝑣𝑔

各記号の平均文字間隔 𝐼

𝑎𝑣𝑔

行の傾きの平均 行の傾きの平均𝑅𝑜𝑤𝑆

𝑎𝑣𝑔

ただし−

𝜋2

≤ 𝑅𝑜𝑤𝑆 <

𝜋2

[rad]

行間隔の平均 行間隔の平均 𝑅𝑜𝑤𝐼

𝑎𝑣𝑔

行頭文字位置の傾き 行頭文字位置の傾き𝐶𝑜𝑙𝑆

ただし−𝜋 < 𝐶𝑜𝑙𝑆 ≤ 0[rad]

3.1.4 パラメータの平均

3.1.3で述べたパラメータを複数人が書いた手書き文章から1名分ずつ抽出する.抽出し

た複数人分のパラメータを平均することにより,パラメータの平均を得ることができる.

全てのパラメータは数値で得られるため,単純に数値の平均を取ることにより,パラメー タを平均することができる.

3.2 手書き文章への平均パラメータ適用

手書き文章が入力された際に,以下の4つのstepで字配りを調整する.

step1. 文字の切り出しと,文字カテゴリーの判別

step2. 文字サイズの調整

step3. 行,行頭位置の決定

step4. 文字配置

各ステップについて,以下で詳細を説明する.

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step1 文字の切り出しと,文字カテゴリーの判別

入力された手書き文章を,図 3-5 のように一文字一文字外接四角形により切り出す.そ して,切り出した文字がどの文字カテゴリーに属するか,あらかじめ判別しておく.スペ ースがある場合,スペースは無視する.本稿における切り出し・判別処理は手動で行って いるが,枠なし文字認識[9]を用いることで自動化できると考えられる.

図 3-5 手書き文章の文字を切り出した例

step2 文字サイズの調整

step1で切り出した各文字の縦幅と横幅の大きさを,あらかじめ抽出,平均しておいた各

文字の𝐻𝑎𝑣𝑔,𝑊𝑎𝑣𝑔と同値になるよう変更する.縦幅,横幅は独立に変更する.

step3 行,行頭位置の決定

step4の文字配置は,図 3-6のような直線を参考に行う.step3ではこれらの直線を求め

る.縦方向の直線は行頭文字の𝑥座標を決める際に用いる.横方向の直線は各行の文字の𝑦座 標を決める際に用いる.これらの直線を決定するために,まず入力文章から,記号以外の 文字で始まる最初の行を取得する.そしてその行の先頭文字の𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟の座標を得る.この 座標𝑃𝑐𝑓を元に直線を決定する.縦方向の直線は,𝑃𝑐𝑓を通り,傾きが𝐶𝑜𝑙𝑆な直線である.横 方向の直線の1つは,𝑃𝑐𝑓を通り,傾きが𝑅𝑜𝑤𝑆な直線である.この直線と傾きが同じで,距 離が𝑅𝑜𝑤𝐼𝑎𝑣𝑔の整数倍離れた直線が,他の横方向の直線である.

(19)

16

図 3-6 文字配置のための補助線

step4 文字配置

文字配置ではまず各行の先頭文字を配置する.その後,1つ前の文字位置を元に次の文字 を配置していく.

各行の先頭文字の配置方法は,その文字が記号カテゴリーに属する文字かどうかにより異 なる.記号カテゴリー以外の文字であれば,図 3-6 の縦方向の直線と横方向の直線の交点 𝑃𝑟𝑓𝑐が先頭文字の中心となるように文字を配置する.行の先頭文字が記号カテゴリーに属す る文字の場合は,まず記号の次の文字の位置を決定し,次の文字の位置から記号の位置を 決定する.次の文字の𝑥座標は,その直前の記号の𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑥𝑎𝑣𝑔と𝑃𝑟𝑓𝑐の𝑥座標の和である.次の

文字の𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟の座標は,𝑥座標が先程求めた𝑥座標かつ,その行の横方向の直線上にある点

である.ここまでで次の文字の位置が決定された.記号の位置は,記号と次の文字の文字 間隔が𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑎𝑣𝑔となるように決める.

各行の先頭文字の配置が終わった後,1つ前の文字位置から次の文字位置を決定していく.

記号カテゴリー以外の文字は,前の文字との文字間隔が𝐼𝑎𝑣𝑔となり,さらに𝐶𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟の座標が その文字が属する行の横方向の直線上にあるようにする.カギ括弧開きの場合は,まずカ ギ括弧開きの後の文字の位置を決定し,その文字との文字間隔が𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑎𝑣𝑔となるようにカギ 括弧開きの位置を決定する.カギ括弧開きの後の文字は,カギ括弧開きの前の文字との字

間を𝐼𝑝𝑟𝑒𝑥avg+ 𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑎𝑣𝑔とし,位置を決定する.カギ括弧開き以外の記号の場合は,前の文

字との文字間隔が𝐼𝑝𝑟𝑒𝑎𝑣𝑔となる位置に配置する.ただし前の文字がカギ括弧開きの場合は𝑦 方向の位置を決定出来ないので,その場合は𝑦座標を前の前の文字の𝑦𝑚𝑎𝑥と𝐼𝑝𝑟𝑒𝑦𝑎𝑣𝑔の和と

(20)

17 する.次の文字との文字間隔は𝐼𝑎𝑓𝑡𝑒𝑟𝑥𝑎𝑣𝑔となる.

(21)

18

4 章 実験

字配りを平均化することによりどのように印象が変わるか確認する実験と,文字配置を 平均化することによりどのように印象が変わるか確認する実験を行った.それぞれ4.1項と 4.2項で詳細を説明する.

4.1 字配りを平均化することによる印象変化の調査

以下の2種類の文章を比較し,手書き文章の字配りを平均化することにより,どのように 与える印象が変わるか確認する実験を行った.

 手書き文章そのまま

 提案手法により字配りを調整した手書き文章

この実験を行うための準備について4.1.1項,詳細な実験方法について4.1.2項,実験を 実験結果と評価について4.1.3項で述べる.

4.1.1 実験準備

実験準備として,あらかじめ以下の3つを行った.

 手書き文章の収集

 パラメータ抽出

字配りの調整

各項目について以下で詳細を説明する.

手書き文章の収集については,情報理工学を専攻している大学生,大学院生,計10名に 依頼をし,手書き文章を収集した.依頼した10名は全て男性である.収集した文章の全文 を図 4-1に示した.この文章は新聞記事[8]の一部である.また,実際の手書き文章収集環 境を図 4-2に示した.手書き文章の収集にはDNPのアノトペンADP-601を使用した.ア ノトペンにはボールペンとカメラが内蔵してある.そのため,特殊な用紙に記述すると,

通常のボールペンと同様の書き味で手書きデータを収集することが出来る.今回はアノト ペンで図 4-2の中央に表示されている用紙に,図 4-2の左側の紙に書かれた内容を自由に 記述させた.記述をさせる前に,以下の三点を指示した.

 図 4-2の左側の紙に書かれている内容を,図 4-2の中央に表示されている紙に自由に

(22)

19 記述する

 友達へ送る年賀状に書く手書き文字程度の丁寧さで記述する

 ペンに内蔵されているカメラの位置により取得できる座標にズレが生じるため,なる べく回転させない

パラメータ抽出では,収集した手書き文章から,平均的な字配りのパラメータを3.1節に おいて説明した方法で算出した.

字配りの調整では,収集した各手書き文章の字配りを変更し,1つの手書き文章当たり2 種類の字配りパターンを用意した.1つは何も変更しない,そのままの字配りパターン.も う1つは3.2項で述べた方法で字配りを変更した,平均的な字配りパターンである.1つの 手書き文章におけるそのままの字配りパターンと平均的な字配りパターンの例を図 4-3 に 示す.

図 4-1 収集した手書き文章 全文([8]から抜粋)

「美文字王子」とも呼ばれる青山さん。普段遣い

の美文字とは「相手に読みやすく、伝わる文字。人

にやさしい文字です」と力を込める。「文字は、人

とつながる大切なアイテムだと気づくことが第一

歩。読み手を思う意識が大切」と説く。読みやすい

字を書くために必要なのは、まずはペンを自在にコ

ントロールできること。長年のくせで、筆記具を正

しく持てない人は案外多いという。

(23)

20

図 4-2 手書き文章収集環境

図 4-3 ひとつの文章におけるそのままの字配りパターン(左)と 平均化した字配りパターン(右)

(24)

21

4.1.2 実験方法

以下の2種類の手書き文章を同時に表示し,印象がどう違うか確認する実験を行う.被験 者は筆者と同じ研究室に所属する大学生,大学院生13人(男性:11名,女性:2名)である.被 験者のうち8名はパラメータ抽出および適用に使用した手書き文章の筆者である.

 手書き文章そのまま(以下「字配り平均前」と呼ぶ)

 提案手法により字配りを調整した手書き文章(以下「字配り平均後」と呼ぶ)

表示する手書き文章は,4.1.1 項で述べた,あらかじめ収集した 10 名分の手書き文章であ る.手書き文章を 1 名分ずつ表示し,字配り平均前と,字配り平均後,どちらがより「き れい」「真面目」「丁寧」「読みやすい」「暖かい」「友人になりたい」「恋人になりたい」「個 性的」「好感を持てる」の9つの言葉に当てはまるか選択してもらう.この9つの言葉は手 書き文章の認知次元を調査した新垣らの研究[7]と,フォントから受ける印象を調査した井 上らの研究[10]を参考に選んだ.選択肢は「どちらも変わらない」「若干(字配り平均前 or 字 配り平均後)の方が当てはまる」「(字配り平均前 or 字配り平均後)の方が当てはまる」の 5 つである.なお,手書き文章は左右に表示され,その並び順はランダムである.

実験はWeb上で行った.回答に使用する実際の画面を図 4-4に示した.

(25)

22

図 4-4 実際の回答画面

4.1.3 実験結果と評価

図 4-5は,全文章における回答の割合を,言葉ごとに分けて集計したものである.また,

表 4-1 は,各言葉に対し,字配り平均前よりも提案手法により字配り平均後のほうが若干 当てはまる,もしくは当てはまるという回答を「字配り平均後」,変わらないという回答を

「変わらない」,字配り平均前のほうが若干当てはまる,もしくは当てはまるという回答を

「字配り平均前」として集計した結果である.字配り平均前よりも字配り平均後のほうが 若干当てはまる,もしくは当てはまるという回答は,「きれい」「真面目」「丁寧」「読みや すい」「好感を持てる」といった言葉の場合が 58.5%以上,「個性的」という言葉の場合は 6.7%である.逆に字配り平均前の方が若干当てはまるもしくは当てはまるという回答は,

「きれい」「真面目」「丁寧」「読みやすい」「好感を持てる」といった言葉の場合 15.4%以 下,「個性的」という言葉の場合は61.1%である.よって,提案手法により手書き文章の字 配りを平均化すると,「個性的」な印象は薄れるが,「きれい」「真面目」「丁寧」「読みやす い」「好感を持てる」といった印象を与えられることが分かる.また,「暖かい」「友人にな りたい」「恋人になりたい」という言葉については,変わらないという回答が半数以上を占 めている.よって,他の印象と比べて,「暖かい」「友人になりたい」「恋人になりたい」と いった印象は字配りを平均してもあまり変わらないことが分かる.

(26)

23

図 4-5 全文章における言葉ごとの回答割合

(27)

24

表 4-1提案手法により字配りが平均化された手書き文章とそのままの手書き文章の 選択された回答割合

字配り平均後 字配り平均前 変わらない

きれい 75.4% 14.6% 10.0%

真面目 58.5% 15.4% 26.2%

丁寧 60.8% 10.8% 28.5%

読みやすい 74.6% 11.5% 13.8%

暖かい 31.5% 16.2% 52.3%

友人になりたい 29.2% 12.3% 58.5%

恋人になりたい 38.5% 10.8% 50.8%

個性的 10.0% 58.5% 31.5%

好感を持てる 60.8% 9.2% 30.0%

4.2 文字配置を平均化することによる印象変化の調査

4.1節で述べた実験により,字配りを平均化することにより「個性的」な印象は薄れるが,

「きれい」「真面目」「丁寧」「読みやすい」「好感を持てる」といった印象を与えられるこ とが分かった.しかし,4.1節で述べた実験ではパラメータ抽出に使用したデータとパラメ ータを適用したデータが同一である.よって,パラメータ抽出に使用していない他の文章 にパラメータを適用した場合は同じ結果が出るとは限らない.また,文字サイズの平均化 は既存手法[2]でも可能である.

そこで,4.1節とは別の手書き文章を収集し,文字サイズ以外のパラメータを適用し,印 象の変化を確認する実験を行った.この実験を行うための準備について4.2.1項,詳細な実 験方法について4.2.2項,実験を実験結果と評価について4.2.3項で述べる.

4.2.1 実験準備

実験準備として,あらかじめ以下の3つを行った.

 手書き文章の収集

 パラメータ抽出

文字配置の調整

各項目について以下で詳細を説明する.

(28)

25

手書き文章は4.1節で述べた実験と同様の方法で収集した.4.1節で述べた実験と異なる のは収集した文章の数と内容である.4.1節で述べた実験では10 名の手書き文章を収集し たが,本実験では5名の手書き文章を収集した.5名のうち3名は,4.1節で述べた実験に おいても手書き文章の収集をした依頼した人物である.収集した文章の全文を図 4-6 に示 す.この文章は図 4-1 で示した文章に含まれる文字のみを使用し,筆者が作成した文章で ある.

図 4-6 図 4-1で示した文章に含まれる文字のみで構成された文章

パラメータ抽出は3.1節で述べたパラメータに追加して,漢字カテゴリーに属する文字の 平均サイズ,ひらがな・カタカナカテゴリーに属する文字の平均サイズを抽出した.

文字配置の調整は3.2節のstep2,文字サイズの調整以外を行うことにより行った.ただ し,文字配置の調整を行う前に,パラメータを適用する手書き文章の漢字カテゴリーに属 する文字の平均サイズおよびひらがな・カタカナカテゴリーに属する文字の平均サイズが なるべくあらかじめ抽出した値に近くなるよう,文章全体を拡大または縮小した.また,

文字配置の調整が終わった後,文章全体を拡大または縮小することにより,文章全体のサ イズを元に戻した.

4.2.2 実験方法

以下の2種類の手書き文章を同時に表示し,印象がどう違うか確認する実験を行う.被験 者は筆者と同じ研究室に所属する大学生,大学院生12 名(男性:11 名,女性:1 名)である.

12名うち4名はパラメータを適用した手書き文章の筆者である.

 手書き文章そのまま(以下「文字配置平均前」と呼ぶ)

 文字配置を調整した手書き文章(以下「文字配置平均後」と呼ぶ)

表示する手書き文章は,4.2.1項で述べた,あらかじめ収集した5名分の手書き文章であ る.実験は4.1.2項と同様の方法で行った.実験画面の一例を図 4-7に示す.

(29)

26

図 4-7 実際の実験画面(左:文字配置平均後,右:文字配置平均前)

4.2.3 実験結果と評価

図 4-8は,全文章における回答の割合を,言葉ごとに分けて集計したものである.また,

表 4-2は,各言葉に対し,文字配置平均前よりも文字配置平均後のほうが若干当てはまる,

もしくは当てはまるという回答を「文字配置平均後」,変わらないという回答を「変わらな い」,文字配置平均前のほうが若干当てはまる,もしくは当てはまるという回答を「文字配 置平均前」として集計した結果である.これらの結果より, 4.1.3項で示した結果ほどでは ないが,文字配置を平均化すると「丁寧」「真面目」「きれい」「読みやすい」といった印象 を与えられることが分かる.また,4.1.3項で示した結果と違い,「個性」「好感」といった 印象は文字配置を平均化してもあまり変わらないことが分かる.「暖かい」「友人になりた い」「恋人になりたい」といった印象が文字配置を平均する前後で変わらないのは 4.1.3 項 で示した結果と同様である.

以上より,パラメータを抽出する文章と適用する文章を別にし,さらに文字サイズを変更 しなかった場合でも,4.1.3項で示した結果ほどではないが「丁寧」「真面目」「きれい」「読 みやすい」といった印象を与えられることが分かる.

(30)

27

図 4-8全文章における言葉ごとの回答割合

(31)

28

表 4-2文字配置を平均化した手書き文章とそのままの手書き文章の 選択された回答割合

文字配置平均後 文字配置平均前 変わらない

きれい 46.7% 31.7% 21.7%

真面目 41.7% 16.7% 41.7%

丁寧 43.3% 18.3% 38.3%

読みやすい 45.0% 28.3% 26.7%

暖かい 18.3% 15.0% 66.7%

友人になりたい 8.3% 11.7% 80.0%

恋人になりたい 10.0% 16.7% 73.3%

個性的 16.7% 23.3% 60.0%

好感を持てる 30.0% 25.0% 45.0%

(32)

29

5 章 まとめ

ペン字に関する多数の書籍が販売されていたり,ペン字の通信講座があったりする.こ れは魅力的な文字を書きたいと考えている人が多いことの表れであると考えられる.また,

手書き文章の印象を決める要素としては,少なくとも

 文字自体の印象

 文字間隔や行間隔,文字サイズといった,字配り

の2つが考えられる.この2つのうち,文字自体を平均することにより,文字自体の印象 を良くした研究はある.しかし,字配りを平均する研究は我々の知る限り無い.

このような背景を踏まえ,本稿では複数人の字配りを平均する手法を提案した.また,

字配りを平均した文章と,平均する前の文章を比較する実験を行った.実験の結果,字配 りを平均した文章のほうが平均する前の文章よりもきれい,読みやすい,好感を持てる,

丁寧,真面目という回答がそれぞれ 75.4%,74.6%,60.8%,60.8%,58.5%となった.ま た,既存研究でも文字サイズを平均できるため,文字配置(文字間隔と行間隔)のみを平均し,

平均前と比べる実験も行った.その結果,文字配置を平均した後の文章のほうがきれい,

真面目,丁寧,読みやすいという回答がそれぞれ46.7%,41.7%,43.3%,45.0%となった.

なお,文字配置を平均した後より平均する前の文章のほうがきれい,真面目,丁寧,読み やすいという回答はそれぞれ31.7%,16.7%,18.3%,28.3%である.

今後は提案手法を全て自動化し,システム化したい.また,文字の筆跡を平均する研究[2]

と本手法を組み合わせることにより,手書き文章をより魅力的な手書き文章にできるよう にしたい.

(33)

30

謝辞

本研究を行うにあたり,数々のご指導を頂いた山名早人教授に厚く御礼申し上げます.

また,お忙しい中いつもアドバイスや論文の校正をしてくださった浅井洋樹先輩,何度も データ収集や実験に協力してくださった同輩,後輩の皆様に深く感謝いたします.

(34)

31

研究業績

 鬼沢和也,浅井洋樹,山名早人:"字配りの平均化による手書き文章の魅力的な文字配 置方法", DEIM2015, 2015. (発表予定)

(35)

32

参考文献

[1] Langlois, Judith H., and Lori A. Roggman. "Attractive faces are only average."

Psychological science, Vol.1, No.2, pp.115-121, 1990.

[2] 中村聡史, 鈴木正明, 小松孝徳. “平均文字は美しい.” エンタテインメントコンピュ ーティングシンポジウム2014論文集, pp.32-39, 2014.

[3] 才木常正, 山下隆義, 北川洋一, 林昭博. "漢字よりひらがなを小さく印刷するワー ドプロセッサ機能." ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.3, No.1, pp.25-30,

2001.

[4] 才木常正, 北川洋一, 林昭博. "手書き文章の幾何学的特性を持つワードプロセッサ 印刷文章の漢字とひらがなのフォントサイズ." ヒューマンインタフェース学会論 文誌, Vol.5, No.2, pp.275-282, 2003.

[5] 才木常正, 北川洋一, 林昭博. "文字構造を考慮した手書き風ワープロ文章の印字方 法." 電 気 学 会 論 文 誌 C (電 子 ・ 情 報 ・ シ ス テ ム 部 門 誌), Vol.123, No.10, pp.1753-1759, 2003.

[6] 魚住和晃.“筆跡鑑定入門 ニセ遺言書、文書偽造を見破るには”,芸術新聞社,

pp.144-148,2013.

[7] 新垣紀子, 都築幸恵. "人は手書き文字をどのような次元で認知しているのか?." 成 城大学社会イノベーション研究, Vol.4, No.2, pp. 27-43, 2009.

[8] 毎日新聞. “みんなの○○:美文字 持ち方 手首固定して指を曲げ伸ばし”,東京 朝刊, p.14, 2013年9月2日.

[9] 小沼元輝, 中川正樹. "文字方向および行方向に依存しないオンライン手書き枠なし 文字列認識." 電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理 解, Vol.102, No.555, pp.49-54, 2003.

[10] 井上正之, 鎧沢勇. "文字形態から受ける印象と品質評価要因の検討." 電子情報通信

学会論文誌 B, Vol.67, No.3, pp.328-335, 1984.

(36)

33

付録 1 字配り平均前後の手書き文章

4.1節で述べた実験で使用した,字配り平均前の手書き文章と字配り平均後の手書き文章 を以下に示す.左側が字配り平均前,右側が字配り平均後である.

(37)

34

(38)

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36

(40)

37

付録 2 文字配置平均前後の手書き文章

4.2節で述べた実験で使用した,文字配置平均前の手書き文章と文字配置平均後の手書き 文章を以下に示す.左側が文字配置平均前,右側が文字配置平均後である.

(41)

38

図  3-1  文字の基礎的な構成要素    また,文字を「漢字」 「ひらがな・カタカナ」 「記号」の 3 つのカテゴリーに分けた.カ テゴリー名の通り,漢字は漢字カテゴリー,ひらがなとカタカナはひらがな・カタカナカ テゴリーに分類される.記号カテゴリーに分類されるのは,カギ括弧開き”「”,カギ括弧閉 じ”」”,句点”。”,読点”、”の 4 文字である.    ただし,現時点では「っ」や「ッ」といった小さい文字,アルファベット,上記で述べ
図  4-2  手書き文章収集環境
図  4-5  全文章における言葉ごとの回答割合
図  4-8 全文章における言葉ごとの回答割合

参照

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