立教大学 教職課程 2021 年 1 月
オンライン授業におけるロールプレイングの導入とその検証
-教職課程科目「教育相談」での実践を通じて-
岩瀧 大樹
〔問題と目的〕
2019 年後半,世界各地で新型コロナウィル ス感染症(COVID-19)が報告されるようにな り,2020 年 3 月には WHO によりパンデミッ クに相当するとの見解が示された。世界中のあ らゆる領域にその影響は拡大し,大学機関にお いても,多くがキャンパスの閉鎖などとともに,
オンライン授業の導入を余儀なくされる状況と なった。e ラーニング戦略研究所(2020)の調 査においては,2020 年 7 月時点での大学のオ ンライン授業実施率は 97% であり,同年 4 月 導入が 57.6%,5 月導入が 36.1%であったこと が示されている。社会的情勢を踏まえ,大多数 の大学がこれまで広く行われていた対面授業か ら,オンライン授業へのシフトチェンジを強い られていたことが読み取れる。しかし,急な授 業形態の変更に際しては,学生のみならず,教 員にも混乱を伴っていたことは想像に難くな い。例えば,学生のオンライン授業に対する不 安として,大阪教育大学(2020)は,集中力の 持続や課題への対応,自身の学習環境などを,
教員の不安として,慶應義塾大学カリキュラム 委員会(2020)は,学生の通信環境や意思の疎 通などを,示している。これらのことから,双 方にとって,より良い環境や方法を模索しつつ,
不安を伴いながらのオンライン授業導入であっ た状況が推察される。
もちろん,大学だけではなく,すべての学校 において,臨時休業等を強いられる状況となり,
予定されていた教育実習の中止や短縮,延期を 受け入れることとなった教職志望学生は少なく ない。文部科学省(2020)は実習期間の弾力化 などによる対応を進めていたが,学生にとって,
児童・生徒と触れ合う貴重な機会が失われたこ とは,やむを得ないとはいえ、苦しい現実であ ろう。オンライン授業での対応や補講代替が厳 しい部分である。教職課程にとっては,座学の みならず,実習や演習的な活動による学びも,
学生にとって有意義なものとなっている。ゆえ に,オンライン授業の形態をとりながらも,一 方向性の学びだけではなく,双方向かつ活動を 取り入れた実践の検討は不可欠になる。例えば,
教職課程科目を構成するひとつとして,「教育 相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を 含む。)の理論及び方法」があげられるが,文 部科学省(2017)が「全国すべての大学の教職 課程で共通的に修得すべき資質能力」を明らか にすべく作成した「教職課程コアカリキュラム」
は,到達目標のひとつとして,「受容・傾聴・
共感的理解等のカウンセリングの基礎的な姿勢 や技法を理解している」という点を掲げている。
いじめや不登校,キャリア教育や保護者支援な
ど,多くの課題を抱える今日の学校の現状を踏
まえると,座学での知識の習得のみならず,ロー
ルプレイング(Roll Playing;以下 RP)や,ディ スカッションを含むグループワーク等の演習的 な要素を取り入れながら,基本的なカウンセリ ングの技術等を体得していくことは,重視され るべきだといえよう。
アクティブ・ラーニング(学習者の能動的な 学び)を進める観点からも,上記のディスカッ ションや RP などのグループワークに期待され る部分は大きい。ディスカッションに関しては,
水野ら(2008)により自己盲点の発見や,自身 の気づきへの深化が可能であることが検証さ れ,大学における授業への積極的導入の有効性 が提言されている。また寺本(2019)も,学生 を対象としたグループワークの効果として,自 己分析や相互のエンパワーメントにつながるこ とを指摘し,アイデンティティ構築にポジティ ブな作用をもたらすことを論じている。また,
ただ単に RP やグループワークを積極的に導入 するのではなく,松尾(2017)は,そのデザ インの工夫が必須であることを主張している。
ゆえに,目的や枠組みをクリアにした RP やグ ループワークを設定していくことが,授業を担 う教員に求められる点である。
しかし,オンラインによるカウンセリングの RP はどこまで可能なのであろうか。オンライ ンでの面談に関しては,その利点として,池田 ら(2018)は利用者のアクセスのしやすさを挙 げているとともに、谷田ら(2013)は,倫理的 配慮の課題がありながらも,90 年代よりイン ターネットを媒介としたカウンセリングが積極 的に行われつつあり,引きこもりなど,外出で きないクライエントへの有効な支援であること を提言している。そのため,オンラインにおい
ても,カウンセリングの実践的学びには,意義 があるといえよう。
また,RP に関しては,学生を対象としたプ ロジェクトマネージャー育成の観点から,丸山 ら(2013)により,オンラインでの RP が,コミュ ニケーションスキルや問題解決スキル,リー ダーシップの獲得に有効であることが指摘され ている。さらに、中村ら(2012)によっても,
同様の視座から,オンライン形式での RP につ いて,96% 以上の学生が授業内容の理解を肯 定的にとらえていることを明らかにしている。
以上のことから,本実践においては,今日の 社会的情勢を踏まえ,余儀なくされているオ ンライン形態の授業ではあるが,RP やディス カッションなどの計画的かつ積極的な導入によ る,教職志望学生の教育相談(カウンセリング)
に関する基礎的な姿勢や技法の習得に向けた指 導・支援について検討していく。
〔方法〕
1. 調査対象者
関東地区の大学の教職課程に在籍し,教育相 談に関する科目を受講した学生 49 名(男子 17 名,女子 32 名。4 年生 2 名,3 年生 4 名,2 年 生 43 名。年齢は 19 ~ 24 歳)より有効回答が 得られた。
2. 調査時期
2020 年 5 月~ 7 月
3. 調査方法
オンラインにて,上述の学生に対し,本調査
の目的と意義,および調査の手続き(回答フォー
ム等の利用),個人情報の保護や管理,データ 処理の方法などを十分に説明し,合意を得るこ とのできた 49 名を調査対象者とした。各回答 は Google フォームにて求めた。
4. 調査内容
(1)予備調査(2020 年 5 月上旬)
デモグラフィック要因(性別・学年・年齢),
任意の ID コード(7 桁)とともに,オンライ ン授業におけるカメラとマイクの使用の可否に ついて尋ねた。45 名がカメラとマイクの使用 が可能であった。マイクの使用のみ困難であっ た 4 名に対しては,チャットでの参加で合意を 得ることができた。
(2)第1回調査(2020 年 5 月上旬)
①オンライン授業におけるグループワーク等 に対する意識(1. 不安はない~ 4. 不安がある,
の 4 件法),②オンライン授業におけるグルー プワーク等に対する取り組み(1. 思うように参 加できない~ 4. 思ったように参加できる,の 4 件法),③現在履修中の講義での(ディスカッ ションを含む)グループワーク等の導入につ いて(1. ほとんど導入されていない~ 6. ほと んどで導入されている,の 6 件法),④オンラ イン授業の導入に対する意見(自由記述),⑤ オンライン授業における RP 実施に対する意見
(自由記述)について尋ねた。
(3)第 2 回調査(2020 年 6 月中旬)
(2)と同様の①と②について尋ねた。
(4)第 3 回調査(2020 年 7 月下旬)
(2)や(3)と同様の①と②および,③オン ライン授業におけるグループワーク開始時の アイスブレイキングの効果(1. 効果なかった~
4. 効果あった,の 4 件法),④オンライン授業 における RP 開始時のアイスブレイキングの効 果(1. 効果なかった~ 4. 効果あった,の 4 件法),
⑤オンラインでの RP における言語的要因(相 手の言葉を聴くこと)に関する影響(1. 問題な かった~ 4. 困難だった、の 4 件法),⑥オンラ インでの RP における非言語的要因(相手の表 情や動作を見ること)への影響(1. 問題なかっ た~ 4. 困難だった、の 4 件法),⑦オンライン RP におけるメリットとデメリット(自由記述)
について尋ねた。
5. オンライン授業の概要
Zoom ビデオコミュニケーション社による Web 会議サービス Zoom を使用することとし た。なお RP を含むグループワークにおいては,
このブレイクアウトルーム機能を用いた。さら に,RP を行わない回に関しても,鯖戸(2016)
などを参考にしたアイスブレイキングを取り入
れるとともに,ディスカッションを含むグルー
プワークを設定していった。また,レクチャー
においてはカメラとマイクをオフに,グループ
ワークにおいては両者をオンにして,授業を進
めていったが,カメラとマイクをオンにするタ
イミングについて,学生より,グループワーク
に移行する直前に,授業者(教員)が一斉指示
を行うのが最適であるとの旨が寄せられたた
め,採用していった。
6. RP の概要
全 14 回の第 11 ~ 14 回の講義内で各 1 回の RP を導入した。前半の 40 分では教育相談の 基礎的姿勢や技術に関するレクチャーを行い,
後半に履修学生を 4 ~ 5 名のグループに分け,
①教員(学級担任)役,②相談者(中学生)役,
③オブザーバー役,の 3 つを全員が体験できる ようにグループメンバーを固定したローテー ションを設定し,15 分間の RP と,30 分間のディ スカッションを行った。その後、履修学生全体 との質疑応答(シェアリング)の 15 分間を設 定した。RP 中においては,③はカメラとマイ クをオフにすることとした。なお,各回の相談 者(中学生)役に関しては,氏名・学年・家族
構成・主訴・パーソナリティ特性などの設定を 予め伝え,役づくりにつなげることとした。性 別に関しては,本人に選択を委ねた。また,各 回の PR 等開始時においては,アイスブレイキ ングを導入した。これらの概要を Table.1 に示 す。
〔結果〕
1. オンライン授業におけるグループワーク等 に対する意識および取り組みについて
3 回の調査(① 5 月上旬,② 6 月中旬,③ 7 月下旬)での比較検討を実施した。結果を以下 に示す(Table.2,Figure.1)。
Fig.1 グループワーク等に対する意識および関わりの平均値推移 Table.1 RP 実施時のオンライン授業の概要
Table.2 オンライン授業におけるグループワーク等に対する意識および関わりの平均値と標準偏差
<グループワーク等に対する意識> <グループワーク等に対する関わり>
2. 履修中の講義でのディスカッションを含む グループワーク等の導入について
2020 年 5 月上旬の時点での本実践での講義 を含む,調査対象者の様子を Fig.2 に示す。
3. オンライン授業導入に対する意見(自由記 述)
40 名より回答が得られた(複数回答)。概要 は,ディスカッションを含むグループワーク開 始時への不安や問題提起(13 名),通学時間短 縮や自分の時間や空間を大切にできるなどの肯 定的見解(11 名),特に変化はない(10 名),
通信環境への懸念(5 名),疲労や課題量への 問題提起的見解(4 名)であった。
4. オンライン授業における RP 実施に対する意 見(自由記述)
17 名より回答が得られた(複数回答)。概 要は,積極的なモチベーション(9 名),開始 のタイミングやグループ構成に対する不安(5 名),特になし(2 名),通信環境や疲労への懸 念(2 名)であった。
5. オンライン授業におけるグループワークお よび RP 開始時のアイスブレイキングの効果
2020 年 7 月の時点での調査対象者の様子を Fig.3 に示す。
Fig.3 グループワークおよび RP 開始時のアイスブレイキングの効果 Fig.2 履修中の講義でのディスカッションを含むグループワーク等の導入
<グループワーク開始時における効果> < RP 開始時における効果>
6. オンラインでの RP における言語的および非 言語的要因に関する影響
5. と同様に,2020 年 7 月の時点での調査対 象者の様子を Fig.4 に示す。
7. オンライン RP におけるメリットとデメリッ ト(自由記述)
(1)メリット
主な意見(複数回答)として,他の人の話し 声や騒音が聞こえない(19 名),相手の表情を とらえることができる(10 名),集中できる(9 名),自宅等の慣れた環境で受講できる(7 名)
などがあげられた。
(2)デメリット
主な意見(複数回答)として,通信状況の影 響が大きい(22 名),表情や空気の変化を把握 しにくい(14 名)などがあげられた。
〔考察〕
1. オンライン授業におけるグループワーク等 に対する意識および取り組み
オンライン授業を進めるにつれ,グループ
ワーク等に対する不安の減少と,参加へのモチ ベーションの向上が有意であったことが示され た。手探り状態であるとはいえ,学生はオンラ イン授業の経験を重ねることにより,その不安 を払拭し,積極的に関わろうとする意欲を高め ていったといえよう。今回の実践に関しては,
特に前者にその傾向が顕著であった。オンライ ンでのグループワーク実施が,学生に受け入れ られていった様子が読み取れる。当初のモチ ベーションも低くはなかったが,より高めてい た点からも,学生はこの形態に順応していった と判断できる。山口(2020)の新入生を対象と した,同様の調査においても,コミュニケーショ ンやグループワークにおける不安が減少したと いう結果が示されており,本実践も先行研究と 同様の知見を得ることができた。発達心理学等 で指摘されているように,流動性知能(新しい 環境への適応)がピークとされている年代では あることに加え,学生たちはオンライン形態で の授業を積極的にとらえつつある点がうかがえ た。
また,RP におけるグループを固定していた 点も,より不安の減少等につながった可能性が
Fig.4 オンラインでの RP における言語的および非言語的要因に関する影響
<言語的要因に関する影響> <非言語的要因に関する影響>
あげられる。オンラインの環境とはいえ,各回 にアイスブレイキングや RP を含む協働学習的 な取り組みを実施していったことは,メンバー 同士のリレーション形成や,取り組みへの動機 づけにつながったと推測される。
2. 履修中の講義でのディスカッションを含む グループワーク等の導入
導入に日の浅い 5 月の時点でのデータゆえ,
その後変化をした可能性もあげられるが,当初 はオンライン授業における学生同士でのコミュ ニケーションは少なかった様子がうかがえる。
ベネッセ教育総合研究所(2008)においては,
今回のコロナ禍以前の状況で,大学でディス カッションを含むグループワーク等を取り入れ た授業は約半数であることを指摘している。そ の後,アクティブ・ラーニングを念頭に置いた 授業が増えている背景も予想できるが,急なオ ンライン授業へのシフトチェンジを余儀なくさ れたがゆえに,今回の調査結果では,学生同士 でのコミュニケーションが一時的に少なくなっ ていた様子がうかがえる。九州大学教育改革推 進本部(2020)の調査は,学生のオンライン授 業での他の受講者とのコミュニケーションにつ いて,約 3 割が満足であるものの,約 2 割が不 満足であることを把握している。授業を提供し ている教員のスキルアップとともに,適切な ツールを活用していくことが期待される。
3. オンライン授業導入およびオンライン授業 での RP に実施に対する意見
全体的に,初めての体験による不安を抱きつ つも,積極的に取り組もうとする様子が見受け
られた。1. と同様に,現在の環境に適応しよう としている学生の前向きな姿勢を読み取ること ができる。特に通学時間の短縮や,自身の時間 の有効活用などの,肯定的な意見が散見された。
その一方で,オンライン授業における通信環境 の心配や,オンライン授業が続くことへの疲労,
課題の量が多くなることを懸念している意見も 見られた。愛知東邦大学(2020)においても,
学生の通信状況として,約 8 割は問題なく受講 ができる環境にあるものの,2 割弱は何らかの 不具合を抱えている現状を指摘している。また,
白百合女子大学 FD 推進委員会(2020)の調査 では,オンライン授業において,9 割以上の学 生がパソコンやスマートフォンで受講している 実態とともに,3 割以上の学生が時折通信が途 切れる環境にあることが示されている。これら の点は,本実践のみならず,すべてのオンライ ン授業に該当する事項であるが,大学からの適 切なサポートも,引き続き検討していく必要が あろう。
4. オンライン授業におけるグループワークお よび RP 開始時のアイスブレイキングの効果
ともに,約 9 割の学生より,ある程度の効果 があったという結果が得られた。今回の実践で の履修学生の所属は多岐にわたっており,多く の学生が初対面の者とグループワーク等をする ことになっていたため,簡単な自己紹介を含む アイスブレイキングが,文字通り緊張を解き,
積極的な取り組みにつながったものと推察され
る。今村(2009,2014)などにおいても,メン
バー同士による出会いの重要性が指摘され,ア
イスブレイキングのその促進要因が提唱されて
いる。オンラインであっても,オンラインでな くても,初めての出会いに緊張を伴うのは至極 当然のことである。大谷・船木(2014)は,人 間関係が構築されていない時期にはアイスブレ イキングが関係性構築に効果的であることを実 践的に検証するとともに,加藤(2011)の実践 においても,アイスブレイキングの導入により,
学生がディスカッションへのモチベーションを 高めるとともに,メンバー同士のリレーション が深まることを論じている。さらに、田村(2018)
も,アクティブ・ラーニングの教育効果に関わ る要因として,学習者の他者とのコミュニケー ションに対する不安をあげている。授業者側に よる,学習者の不安の軽減は,実践において視 野に入れるべき取り組みだといえよう。
また,アイスブレイキング導入は,グループ ワークを活性化させるというアクティブ・ラー ニングの観点からだけではなく,社会人基礎力 の育成という観点からも重要であることがうか がえる。経済産業省(2006)は,そのひとつの 能力として「チームで働く力(チームワーク)」
を掲げているが,これは, 「多様な人々とともに,
目標に向けて協力する力」であることを提唱し ている。福田(2012)は,アイスブレイキング やコミュニケーションスキルは,包括的なスキ ル教育を構成する要素であることを実践的見地 から検証している。授業形態に関わらず,アイ スブレイキングの効果を改めて見直すことがで きたが,オンライン授業においては,関わりや 会話の前からの情報がほとんどなく,いきなり ディスプレイから出会いがスタートすることが 多い。そのため,学生の緊張は対面授業の場合 よりも高まっている様子が推察される。ゆえに,
特にオンライン授業でのグループワーク等にお いては,適切に設定していく必要性があるとい えよう。
5. オンラインでの RP における言語的および非 言語的要因に関する影響
言語的要因に関しては 8 割強,非言語的要因 に関しては 8 割弱の学生が,大きな問題を抱え ず,RP に臨んでいた様子がうかがえた。具体 的な点としては,後述の自由記述の考察とも重 なるが,言語的要因に関しては,「周囲の話し 声や音に気を取られずに集中できる」,「相手の 話が聞き取りやすい」などが,非言語的要因に 関しては, 「相手の表情をしっかり見える」, 「対 面よりも緊張が緩和される」などの利点があげ られていた。1. の考察などとも同様に,学生は オンラインの環境を適宜受け入れ,適応しつつ あった様子がうかがえる。その一方,言語的要 因に関しては,「相手の声の量や質が異なって くる」,「回線に不具合があると会話が展開しに くい」などが,非言語的要因に関しては,「オ ンラインでは相手の感情や様子,空気が感じに くい」,「一緒にその場にいる安心感が共有でき ない」,「相手の動作が読みにくい」,「細やかな 気持ちの機微を感じ取るのが難しい」などの課 題があげられた。特に非言語的要因に関し,3 割弱の学生からの反応ではあったが,オンライ ンでの RP の難しさが把握された。カウンセリ ングにおける非言語的要因からのアセスメント が重要であることは言うまでもない。酒井ら
(2020)は、オンライン面接を電話相談と比較し,
「相談者の顔が見え、時には身振り手振りといっ
た動きもわかる」という利点をあげ、今後の選
択肢のひとつとなることを提唱している。上記 の課題を踏まえながらも,教育相談の実践にお いては,柔軟に対応していくことが求められる。
6. オンライン RP におけるメリットとデメリッ ト(自由記述)
RP に関わらず,学生はオンライン授業に対 し,落ち着いた環境で,周囲の影響なく学びに 取り組めていた様子が把握された。しかしその 反面,RP はリアルタイムでの実施となるが,
通信環境の影響を大きく受けること,リアルな 雰囲気の読み取りにくさが課題として改めて浮 き彫りとなった。しかし今後,教職志望学生が 教職に就く場合,オンラインによる児童・生徒 へのサポートも視野に入れるべきケースの増加 も十分に考えられる。前述の谷田ら(2013)が 指摘するように、不登校や引きこもりのケース に対しては、有効なサポートの一策となろう。
デメリットの改善のみならず,そのメリットに も目を向けていきたい。
〔まとめ〕
学生と教員,両者にとって初めての試みであ り,多くの課題があげられながらも,学生は適 宜,オンライン授業およびそこでのグループ ワーク等を受け入れ,新たな学習環境に適応し ていった様子が把握された。RP に関しては,
通信環境による影響の大きいこと,リアルなら ではのアセスメントが困難な部分のあることが 課題としてあげられた。しかし,各回の学生か らのリアクションフォームからは概ね肯定的な 見解が得られており,オンライン授業において も,RP を体験したことには、基本的なカウン
セリング技術の習得に,ある程度の効果があっ たと判断できる。経験の蓄積により,アセスメ ント力が向上すれば新たな課題の発生も予想さ れるが,初めて教育相談を学ぶ観点からは,有 意義な取り組みであったといえよう。この社会 情勢を否定的にとらえるだけではなく,現在の 状況下で可能な取り組みの検討を最優先として いきたい。また、メンバーの固定により、RP へのモチベーションの向上等が読み取れたが、
社会人基礎力の育成も含め、今後の実践におい ては、ある程度の回数を重ねつつも、適宜メン バー構成を変更するなどの工夫も必要とされる だろう。
加えて,実践を進めつつ,アイスブレイキン グの導入が効果的であった点は随所で確認さ れた。学生自身もこれらを肯定的に受け止め,
RP を含むグループワークに取り組むことがで きていた。リアルなコミュニケーションが困難 な状況であるからこそ,丁寧に導入していきた い取り組みである。
なお,不登校や引きこもりのみならず,今後 の教育現場が関わるべき問題には,オンライン によるアプローチが功を奏する場合もあろう。
オンラインによる面接も,ひとつの方法として 経験し,習得していくことには意義があるとい える。今後の不登校などへの支援において,教 育相談等の見地から,さらなる実践の蓄積や発 展が期待される。
ただ,RP のみならず,長時間のオンライン
授業には配慮すべき点もあげられる。京都芸術
大学(2020)の調査においては,7 割以上の学
生が目や身体の疲労を感じているとともに,約
6 割が課題の量が多いととらえている現状が示
されている。オンライン授業の内容や方法,お よび通信環境のみならず,学生の実態を踏まえ つつ,授業を提供していく必要がある。授業者 たる教員が看過してはならない要因といえよ う。
〔引用文献〕