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(1)

<研究ノート>大学生活の過ごし方と大学進学動機が キャリア意識に与える影響

著者 田澤 実, 梅崎 修

出版者 法政大学キャリアデザイン学会

雑誌名 生涯学習とキャリアデザイン

巻 17

号 2

ページ 37‑46

発行年 2020‑03

URL http://doi.org/10.15002/00023235

(2)

37

1 問題と目的

 日本経済団体連合会(2018)は、定例記者会 見において2021年度以降に入社する学生を対象 とした採用選考に関する指針を策定しないと発表 した。この会見では、日本の学生の学修時間が世 界的に見て不十分であること、そして、これまで 企業から学生にどのような勉強をしてほしいのか といった具体的な事柄について社会全体に十分に 伝えてこなかったことなどが企業側の反省点であ ることなどが語られた。

 このような動向を受け、日本私立大学連盟

(2019)は、「学修経験時間」(授業等の学修時間 をはじめとした、留学やインターンシップ、課外 活動等の学生が多様な経験を積む時間のこと)の 確保を前提とした学生の自由で主体的な選択を可 能とするために、新たな就職・採用の方法と、質 の高い大学教育を大学と企業の双方の理解によっ て実現する必要性を提言した。この提言では、学 生の履修科目や成績等の「学修成果」の情報が、

学生個人の知的関心や達成努力の実績を証明する 貴重な行動データであることが強調されており、

企業が大学の学修成果を信頼し正当に評価する必 要性を述べている。

 学業成績と就職活動の結果の関連については、

内定獲得(田澤・梅崎, 2013;平尾・梅崎・田澤,  2018)、内定獲得時期の早さ(濱中,  2007)、内

定先満足度(田澤・梅崎,  2013)、企業の志望順 位(梅崎,  2004;田澤・梅崎,  2013)、就職活動 の自己評価点(永野, 2004)など複数の指標から 検討がなされており、両者に正の関連があること が指摘されている。

 しかし、「学修経験時間」の中身を検討する際 には、学業成績のみならず複数の指標を設けるこ とが必要になるであろう。そこで本研究では、ま ず、課外活動等も含めて、大学生活の過ごし方に 注目する。また、多様な経験を積む時間に関連す るものは、学生自身が持つ価値観であろう。そこ で、もうひとつの指標として大学進学動機を扱う。

なお、本研究では、就職活動の結果の代理指標と して、キャリア意識に注目する。

 本研究の目的は、大学生活の過ごし方と大学進 学動機がキャリア意識に与える影響を明らかにす ることである。

2 方法

(1)調査時期

 2013年12月から2014年1月であった。就職 活動の開始時期に該当する。

(2)対象者

 就職活動の情報サイトのモニター登録者のデー タを用いた。全対象者は大学3年生2,395名であっ

〈研究ノート〉

大学生活の過ごし方と大学進学動機が キャリア意識に与える影響

法政大学キャリアデザイン学部准教授

 田澤 実

法政大学キャリアデザイン学部教授

 梅崎 修

(3)

38

たが音楽、美術、医学、薬学、神学を専門分野と する大学および学部等に所属する者を分析の対象 から除外し、最終的に2,229名(男性:821名、女性:

1,408名)のデータを以降の分析で用いた。

(3)調査項目

 ①大学生活の過ごし方

 溝上(2009)の17項目について一部表現を修 正し、最終的に15項目を設けた(Appendix参照)。

1週間に費やす時間数を6件法(「(1)全然ない」

「(2)1時間未満」「(3)1〜2時間」「(4)3〜5時間」

「(5)6〜10時間」「(6)11時間以上」)で尋ねた。

同尺度は以下の3つの因子を見出している。

● 『授業外学習・読書』(項目例:「授業の ための本(新書や専門書など)を読む」)

● 『インターネット・ゲーム・マンガ』(項 目例:「インターネットサーフィンをす る」)

● 『友人・クラブサークル』(項目例:「異 性の友達と交際する」「同性の友達と交 際する」)

 ②大学進学動機

 本研究では、高校生に対してではなく、大学3 年生に対して大学進学動機を尋ねることにする。

これは、事実として入学時にどのような大学進学 動機を持っていたのかという視点ではなく、学業 に関連したイベントについて3年次まで経験した 時点において、自分がどのような動機を持って大 学に入学してきたと捉えているのかという過去の 振り返りを含んだ視点になる。このような視点は、

過去の出来事に対する意味づけの変容を組み込ん だ形での検討を可能にするメリットがあることが 半澤(2006)によって指摘されている。すなわち、

学生自身が大学での学びをどのように捉えている のかについて示す指標になると考えられる。

 具体的には、栗山・上市・齊藤・楠見(2001) の大学進学動機の尺度を用いた。「全くそう思わ ない」「あまりそう思わない」「どちらともいえな

い」「ややそう思う」「とてもそう思う」の5件法 で尋ねた。同尺度は以下の5因子を見出している。

● 『社会的地位』  ( 項 目 例:「 就 職 後,

より高い役職に就くため」)

● 『得意分野』  (項目例:「得意とす ることを追求するため」)

● 『無目的・漠然』 (項目例:「他にやり たいことがないので」)

● 『資格・専門』  (項目例:「進学しな いと希望の職業の資格が取れないため」)

● 『エンジョイ』  (項目例:「青春をエ ンジョイするため」)

 ③キャリア意識

 下村・八幡・梅崎・田澤(2013)によるキャ リア意識の発達に関する効果測定テスト(キャリ ア・アクション・ビジョン・テスト:CAVT)を 用いた。梅崎・田澤(2013)によれば、CAVT はオリジナル版の使用のみならず、語尾などに一 部修正を加えた使用についても認めている(いわ ゆるCAVT意欲版およびCAVT達成版)。本研 究ではCAVT達成版を用いた。5件法(「かなり できている」〜「できていない」)で尋ねた。同 尺度は以下の2因子から構成されている。

● 『アクション』(項目例:「学外の様々な 活動に熱心に取り組む」)

● 『ビジョン』(項目例:「将来のビジョン を明確にする」)

 ④属性

 性別などを尋ねた。なお、本研究では大学の種 類によって影響の仕方が異なる可能性を考慮し て、「国公立大学」「主要私立大学」「その他」に 分類する。平尾・梅崎・田澤(2019)は、難関 校として一般に認識されている大学には「首都圏 の早慶上智,東京六大学,GMARCH,関西の関 関同立,中部地区および九州地区の有名私学(南 山,西南学院)」が含まれると述べている。本研

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39 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響

究ではこれらに含まれる私立大学を「主要私立大 学」と分類し、これらの私立大学でも国公立大学 でもない大学を「その他」と分類した。度数は国 公立大学666校、主要私立大学404校、その他1,155 校であった。

3 結果

(1)大学生活の過ごし方

 溝上(2009)は、一週間に費やす時間数を分析し、

『授業外学習・読書』『インターネット・ゲーム・

マンガ』『友人・クラブサークル』の3因子を見 出した。「大学の授業や実験に参加する」の項目

がこれら3因子のどこにも表だって寄与しなかっ た理由として「昨今の学生はどんなタイプの学生 でも、けっこうな時間数を授業に費やす」と解釈 している。

 本研究では、通学にかかる時間も同様に説明が 可能であると判断し、大学の授業や実験にかかる 時間と、通学にかかる時間を除いた13項目に対 して因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行っ た。その結果、およそ先行研究と同様の構造が得 られた。「マンガや雑誌を読む」「娯楽のための本

(小説・一般書など)を読む」「ゲーム(ゲーム機・

コンピュータゲーム ・ オンラインゲーム)をする」

などに負荷量が高い因子を『ゲーム・マンガ』と、

表 1 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(国公立)

タイトル(柱)

生涯学習とキャリアデザイン - 5 -

表 1 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(国公立)

国公立

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -0.58 0.41 -.10 -1.27 0.29 -.22***

授業外学習・読書 0.65 0.34 .12 1.47 0.30 .25***

友人・クラブサークル 1.04 0.40 .17** 1.20 0.30 .19***

大学進学動機

得意分野 0.30 0.42 .06 -0.20 0.31 -.04

社会的地位 -0.38 0.42 -.08 -0.12 0.28 -.02 無目的・漠然 -2.12 0.42 -.36*** -1.37 0.32 -.26***

資格・専門 -0.13 0.36 -.02 0.69 0.25 .13**

エンジョイ 1.92 0.53 .35*** 0.98 0.35 .17**

R2 .24*** .22***

基準変数:アクション

** p <.01, *** p <.001

国公立

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -0.01 0.45 .00 -1.00 0.35 -.15**

授業外学習・読書 1.49 0.37 .25*** 1.77 0.36 .26***

友人・クラブサークル -0.31 0.44 -.05 0.68 0.36 .09 大学進学動機

得意分野 0.51 0.46 .09 0.44 0.37 .08 社会的地位 0.13 0.46 .02 0.59 0.33 .10 無目的・漠然 -2.31 0.46 -.36*** -1.47 0.38 -.24***

資格・専門 0.09 0.40 .01 0.82 0.29 .13**

エンジョイ 0.99 0.58 .17 -0.35 0.42 -.05

R2 .24*** .20***

基準変数:ビジョン

** p <.01, *** p <.001

男性(n248) 女性(n418

男性(n248) 女性(n418

(5)

40

「大学で授業に出席する(実験なども含む)」「授 業に関する勉強(予習や復習、宿題・課題など)

をする」「授業とは関係のない勉強を自主的にす る」などに負荷量が高い因子を『授業外学習・読 書』と、「友達と遊ぶ」「デートなど交際をする」「ク ラブやサークル活動、部活動をする」などに負荷 量が高い因子を『友人・クラブサークル』と命名 した。なお、本研究で設けた「パソコンやスマー トフォンでインターネットやSNSをする」の項 目については、『インターネット・ゲーム・マン ガ』に該当する因子よりも『友人・クラブサーク ル』に該当する因子への因子負荷量が高かった。

 以降の分析では、溝上(2009)と同様に、大 学生活の過ごし方の3因子の得点(因子得点)を 用いる。

(2)大学進学動機

 因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行っ た。その結果、先行研究とおよそ同様の構造が得 られた。それぞれ『得意分野』『社会的地位』『無 目的・漠然』『資格・専門』『エンジョイ』因子と 命名した。以降の分析には大学進学動機の5因子 の得点(因子得点)を用いる。

表 2 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(主要私立)

《掲載文の種類》

Lifelong Learning and Career Studies - 6 -

表 2 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(主要私立)

主要私立

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -0.90 0.57 -.14 -0.71 0.38 -.13 授業外学習・読書 1.46 0.47 .25** 1.22 0.41 .22**

友人・クラブサークル 1.07 0.56 .16 0.41 0.41 .07 大学進学動機

得意分野 -0.64 0.55 -.12 0.54 0.45 .11

社会的地位 -0.45 0.53 -.08 -0.01 0.43 .00 無目的・漠然 -2.29 0.53 -.39*** -1.49 0.45 -.29**

資格・専門 0.04 0.45 .01 0.21 0.36 .04 エンジョイ 2.51 0.65 .45*** 1.45 0.56 .27*

R2 .27*** .22***

基準変数:アクション

* p <.05, ** p <.01, *** p <.001

主要私立

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -0.81 0.62 -.12 0.50 0.44 .08 授業外学習・読書 1.10 0.52 .18* 0.42 0.48 .07 友人・クラブサークル 0.76 0.61 .11 0.13 0.48 .02 大学進学動機

得意分野 0.06 0.60 .01 1.14 0.52 .20* 社会的地位 0.22 0.58 .04 0.67 0.50 .12 無目的・漠然 -2.32 0.58 -.38*** -1.31 0.52 -.22* 資格・専門 -0.07 0.49 -.01 0.75 0.41 .12 エンジョイ 1.10 0.72 .19 0.06 0.65 .01

R2 .18*** .18***

基準変数:ビジョン

* p <.05, *** p <.001

男性(n180) 女性(n224

男性(n=180) 女性(n=224)

(6)

41 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響

(3)キャリア意識

 CAVTの下位尺度ごとにα係数を算出した。

その結果、『アクション』がα=0.80、『ビジョン』

がα=0.89と十分な値が得られた。

(4) 大学生活の過ごし方と大学進学動機が キャリア意識に与える影響

 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア 意識に与える影響を明らかにするために、CAVT の下位尺度(『アクション』『ビジョン』)を目的 変数、大学生活の過ごし方の因子得点(『ゲーム・

マンガ』『授業外学習・読書』『友人・クラブサー

クル』)と大学進学動機の因子得点(『得意分野』『社 会的地位』『無目的・漠然』『資格・専門』『エンジョ イ』)を説明変数とする重回帰分析(強制投入法)

を大学の種類(「国公立大学」「主要私立大学」「そ の他」)および性別(男性、女性)ごとに行った(表 1、表2、表3)。

 概して、授業外学習・読書にかける時間が多い ことは、キャリア意識のアクションとビジョンに 正の影響を与えており、ゲーム・マンガにかける 時間が多いことは、キャリア意識のアクションと ビジョンに負の影響を与えていた。友人・クラブ サークルにかける時間が多いことは、キャリア意

表 3 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(その他)

タイトル(柱)

生涯学習とキャリアデザイン - 7 -

表 3 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響(その他)

その他

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -1.18 0.29 -.22*** -1.21 0.22 -.22***

授業外学習・読書 1.62 0.34 .26*** 1.38 0.25 .22***

友人・クラブサークル 1.11 0.34 .17** 1.36 0.22 .21***

大学進学動機

得意分野 0.22 0.35 .04 -0.01 0.24 .00

社会的地位 0.72 0.33 .13* -0.14 0.23 -.03 無目的・漠然 -1.91 0.35 -.34*** -1.31 0.25 -.25***

資格・専門 -0.05 0.29 -.01 0.31 0.19 .06 エンジョイ 0.96 0.41 .16* 1.11 0.30 .20***

R2 .28*** .21***

基準変数:アクション

** p <.01, *** p <.001

その他

B SE B β B SE B β

大学生活の過ごし方

ゲーム・マンガ -0.59 0.30 -.11 -0.56 0.25 -.09* 授業外学習・読書 1.45 0.35 .22*** 1.25 0.29 .18***

友人・クラブサークル -0.33 0.36 -.05 0.51 0.26 .07 大学進学動機

得意分野 0.86 0.37 .16* 0.52 0.28 .09 社会的地位 0.94 0.34 .16** 0.75 0.28 .13**

無目的・漠然 -2.19 0.37 -.37*** -1.49 0.29 -.25***

資格・専門 -0.13 0.30 -.02 0.19 0.22 .03 エンジョイ 0.11 0.42 .02 0.06 0.35 .01

R2 .28*** .15***

基準変数:ビジョン

** p <.01, *** p <.001

男性(n393) 女性(n762

男性(n393) 女性(n762

(7)

42

識のアクションに正の影響を与えていた。

 また、就職活動開始時期において、概して、青 春をエンジョイするために大学に進学したと捉え ていることは、キャリア意識のアクションに正の 影響を与えていた。大学に進学した理由として、

進学しないと希望の職業の資格が取れないと捉え ていることは、国公立大学の女性の場合にのみ、

キャリア意識のアクションにもビジョンに正の影 響を与えていた。得意とすることを追求するため に大学に進学したと捉えていることは、主要私立 大学の女性およびその他の大学の男性の場合にの み、キャリア意識のビジョンに正の影響を与えて いた。就職後、より高い役職に就くために大学に 進学したと捉えていることは、その他の大学の男 性の場合、キャリア意識のアクションにもビジョ ンにも正の影響を与えており、その他の大学の女 性の場合、キャリア意識のビジョンに正の影響を 与えていた。そして、すべての大学の種類および 性別において、他にやりたいことがないために大 学に進学したと捉えていることは、キャリア意識 のアクションにもビジョンにも負の影響を与えて いた。 

4 考察

 本研究の目的は、大学生活の過ごし方と大学進 学動機がキャリア意識に与える影響を明らかにす ることであった。

(1)各尺度の構成

 大学生活の過ごし方については、一週間に費や す時間が先行研究とほぼ同様の『ゲーム・マンガ』

『授業外学習・読書』『友人・クラブサークル』と いう3つのまとまりがみられた。

 大学進学動機については、大学3年生に対して 尋ねたため、事実として入学時にどのような大学 進学動機を持っていたのかという視点ではなく、

学生自身が大学での学びをどのように捉えている のかという視点と解釈した。先行研究とほぼ同様 の『得意分野』『社会的地位』『無目的・漠然』『資

格・専門』『エンジョイ』という5つのまとまり がみられた。

 キャリア意識については、先行研究と同様に『ア クション』『ビジョン』という2つのまとまりが みられた。

(2) 大学生活の過ごし方がキャリア意識に 与える影響

 田澤・梅崎(2013)は、キャリア意識のアク ションとビジョンは内定獲得に正の影響があるも のの、第一志望や内定先満足にはビジョンのみが 正の影響があり、かつ、アクションは早期離職防 止に負の影響があり、ビジョンが早期離職に正の 影響があることから、アクションのみが高くビ ジョンが低い場合は、内定時には関心が薄れてい る企業や働き続けることが困難な企業に就職して いる可能性を示唆した。このことは、アクション とビジョンは内定獲得にポジティブに影響するも のの、初期キャリアとして複数の指標を考慮すれ ば特にビジョンを高めることが重要になることを 物語っている。この点を踏まえて、以降に本研究 の結果について解釈を加えていく。

 概して、授業外学習・読書にかける時間が多い ことは、キャリア意識のアクションにもビジョン にも正の影響を与えていた。日本の大学制度は単 位制度を基本としており、1単位は、教室等での 授業時間と準備学習や復習の時間を合わせて標準 45時間の学修を要する教育内容をもって構成さ れている(文部科学省,2005)。単位制度の実質 化を問う際に授業外学習や読書にかける時間は重 要な指標となる。これらに多くの時間をかけるこ とが学生のキャリア意識に正の影響を与えること を示したことは本研究の意義である。

 溝上(2009)は、遊びや対人的な活動に多く の時間を費やすことに特徴がみられる学生タイプ と、授業に出席しつつ授業外学習や読書もおこな い、さらには遊びや対人的な活動にも多くの時間 を費やす「よく遊び、よく学ぶ」活動性の高い学 生タイプが大学生活を最も充実させていることを 示した。そして、両タイプの違いについて、知識

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43 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響

や技能が身についており、将来展望を持っている と判断できるのは、「よく遊び、よく学ぶ」活動 性の高い学生タイプであることを示した。本研究 で示された、友人・クラブサークルにかける時間 が多いことが、キャリア意識のアクションにのみ 正の影響を与えていたという結果は、このような 学生のタイプの違いから説明できるのかもしれな い。

 また、溝上(2009)は、インターネット、ゲー ム、マンガに多くの時間を費やすことに特徴がみ られる学生タイプは、いろいろな人との出会いに 価値を見出すような学習動機(交友志向)や、日 常生活で見たり聞いたりしたことについて学ぶこ とに価値を見出す学習動機(経験関与的課題志向)

が他のタイプと比較して低いことを明らかにし た。本研究で示された、ゲーム・マンガにかける 時間が多いことは、キャリア意識のアクションと ビジョンに負の影響を与えていたという結果は、

このような学生が、学びに対してネガティブな姿 勢を示しているだけでなく、将来に向けて、積極 的に行動することや、やりたいことを明確にする ことに対してもネガティブな姿勢を示しているこ とを明らかにしたといえる。 

(3) 大学進学動機がキャリア意識に与える 影響

 就職活動開始時期において、概して、青春をエ ンジョイするために大学に進学したと捉えている こと(『エンジョイ』)は、キャリア意識のアクショ ンに正の影響を与えていた。この結果は、上述の ように、アクションとビジョンは内定獲得にポジ ティブに影響するものの、初期キャリアとして複 数の指標を考慮すれば特にビジョンを高めること が重要になることを物語っていることと合わせた 解釈が必要になるであろう。

 また、概して、大学に進学した理由として、進 学しないと希望の職業の資格が取れないと捉えて いること(『資格・専門』)、得意とすることを追 求するために大学に進学したと捉えていること

(『得意分野』)は、概して、キャリア意識に対す

る正の影響が限定的と解釈できた。

 それに対して、他にやりたいことがないために 大学に進学したと捉えていること(『無目的・漠 然』)は、すべての大学の種類および性別において、

キャリア意識に負の影響を与えていた。栗山ら

(2001)は、進学動機において目的が漠然として いる高校生は、何を重視して決定していいのか分 からず、入学試験に直接的に影響する自分の成績 や偏差値などの「合格可能性」のみを考慮し、妥 協点を探る方略をとっていることを示唆した。本 研究は、大学3年生を対象にしているため、大学 入学時においてこのような進学動機であったかど うかについては不明である。入学後に変容してい る可能性があるためである。しかし、大学3年生 の就職活動開始時期において、学生自身が大学で の学びをどのように捉えているのかと解釈をすれ ば、少なくとも、大学としては、学生に他にやり たいことがないために大学に進学したと思わせ続 けることを避けなくてはならないといえよう。

(4) 大学生活の過ごし方と大学進学動機の 双方の視点から

 近年、大学では3つのポリシー(「ディプロマ・

ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)」「カリキュ ラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」「ア ドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」)

が公開されている。中央教育審議会大学分科会大 学教育部会(2016)によれば、これらの公開は、

大学だけでなく、入学希望者や学生にとっても大 きな意義がある。具体的には、入学希望者にとっ ては、「当該大学でどのような教育研究が行われ ているのかをあらかじめ認識し,入学後の学修方 法・学修過程や卒業までに求められる学修成果に ついてあらかじめ見通しを持ち,学びたい内容に 照らして大学を選ぶことが可能(p4)」となり、

学生にとっては、「自らの学ぶ教育課程の目標や 構造などを十分に理解した上で,個々の学修活動 に自覚的に取り組むことで,学問に主体的に向き 合い,より密度の濃い学修成果を得ることが可能

(p4)」となる。

(9)

44

 全国大学生活協同組合連合会(各年度)によれ ば、学生生活の重点は、90年代後半までは、豊 かな大学生活が重視されていたが、近年では、勉 強や研究を第一においた生活が重視されている傾 向がある。このような学生の志向性も考慮すれば、

大学にできることは、まずは学業に対するアプ ローチであろう。たとえば、佐藤(2010)が指 摘するように、カリキュラム・ポリシーは3つの ポリシーの中でも最も表現が困難であるが、カリ キュラム・マップとカリキュラム・ツリーを用い て具体的に図示化は可能である。各科目が、卒業 までに身につけるべき能力のどの項目と関連する のか理解しながら授業を受けることや、カリキュ ラムの全体像を俯瞰し、履修の計画を立てやすく することなどは、授業外学習や読書をすることに ついての動機づけを高めたり、「他にやりたいこ とがないために大学に進学した」というような考 えを変えるきっかけとなるかもしれない。

引用文献

中央教育審議会大学分科会大学教育部会(2016)

『「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・

ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カ リキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの 方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及 び運用に関するガイドライン』

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佐藤浩章(2010)「第1回 組織体制づくりとめざ すべき人材像の策定(学士課程教育体系化のス テップ - 3つのポリシーの策定と一貫性構築)」

『Between』2010年春

下村英雄・八幡成美・梅崎修・田澤実(2013)「キャ リア意識の測定テスト(CAVT)の開発」梅崎 修・田澤実(編)『大学生の学びとキャリア―

入学前から卒業後までの継続調査の分析―』法 政大学出版局 pp. 17‒40.

田澤実・梅崎修(2013)「初期キャリアの決定要因

−全国の大学4年生の継続調査−」梅崎修・田 澤実(編)『大学生の学びとキャリア−入学前  から卒業後までの継続調査の分析−』法政大学 出版局 pp.59-76.

(10)

45 大学生活の過ごし方と大学進学動機がキャリア意識に与える影響

梅崎修(2004)「成績・クラブ活動と就職−新規大 卒市場におけるOBネットワークの利用−」松 繁寿和(編)『大学教育効果の実証分析−ある  国立大学卒業生たちのその後−』日本評論社  pp.29-48.

梅崎修・田澤実(編)(2013)『大学生の学びとキャ リア―入学前から卒業までの継続調査の分析

―』法政大学出版局

全国大学生活協同組合連合会(各年度)『学生の消 費生活に関する実態調査』

Appendix

本研究で用いた「大学生活の過ごし方」の項目

1.  大学で授業に出席する(実験なども含む)

2.  授業に関する勉強(予習や復習、宿題・課題な ど)をする

3.  授業とは関係のない勉強を自主的にする

4.  通学にかかる時間

5.  クラブやサークル活動、部活動をする 6.  コンパや懇親会などに参加する 7.  アルバイトをする

8.  友達と遊ぶ

9.  デートなど交際をする 10. テレビをみている

11. パソコンやスマートフォンでインターネットや SNSをする 

12. ゲーム(ゲーム機・コンピュータゲーム ・ オン ラインゲーム)をする

13. 勉強のための本(新書や専門書など)を読む 14. 娯楽のための本(小説・一般書など)を読む 15. マンガや雑誌を読む

※溝上(2009)の17項目について一部表現を修正 したものである。

※「全然ない」「1時間未満」「1〜2時間」「3〜5時間」

「6〜10時間」「11時間以上」の6件法。

(11)

46

TAZAWA Minoru UMEZAKI Osamu

Influence of College Life Perspective and Motives for Continuing Education at a University on Career consciousness

 The purpose of this study was to clarify the  effect of College Life Perspective and Motives  for  Continuing  Education  at  a  University  on  Career consciousness. A questionnaire survey  was  conducted  on  2,229  university  3rd  year  students  who  are  looking  for  a  job,  asking  them  about  how  they  spend  their  university  life,  their  reasons  for  going  to  university,  and  their  career  consciousness.  Multiple  regression  analysis  was  carried  out  using  career consciousness as an explained variable  and  College  Life  Perspective  and  Motives  for  Continuing  Education  at  a  University  as 

explanatory  variables.  In  general,  more  time  spent  on  extracurricular  study  and  reading  had  a  positive  impact  on  career  action,  and  more time spent on games and comics had a  negative  impact  on  career  action  and  vision. 

More time spent with friends and circles had  a  positive  impact  only  on  career  actions.  In  addition,  the  perception  that  they  entered  university without any purpose had a negative  impact  on  the  actions  and  visions  of  their  careers.  Finally,  consideration  is  given  from  the viewpoint of career education.

参照

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