腫瘍血流遮断剤による放射線治療後の癌再発要因除
去の研究
著者
堀 勝義
<はしがき> 放射線療法の治療成績を上げるには治療後の再発防止が重要であるoそのためには、再発を 促進する要因を分析し、それを除去する必要があるoこの研究にあたり、照射後の腫療微′J、循環 機能の改善、特に増量する腫癌血流(TBF)が癌の再発要因という仮説を立てたo死を免れた癌 細胞は、血液から豊富な栄養と酸素を得ることにより増殖する力を回復するからであるo我々は、こ れまでの研究で、combretastatin化合物AC7700(AVE8062)がTBFを不可逆的に遮断し、癌 細胞-の栄養供給を断つことにより、腫癌増殖、転移を著明に抑制し、延命をもたらすことを報告 してきたoもし、増量するTBFが再発要因という仮説が正しいならば、照射後にTBFを遮断すれば、 癌の再増殖は抑制されるはずであるoこの可能性に言及するには、放射線照射後のTBFの変化 を解析し、AC7700ノが鹿 剋ヒ後のTBFを遮断できるのかどうかを確かめる必要がある0本研究では、 生体顕微塵観察、血流測定、血管透過性、クリアランス、腫疹問質液圧測定を経目的に行うことに より、照射後の腫療微′J、循環の機能変化を体系的に把握することができたoそして、その循環機能 ■.がAC7700で破綻し、癌の再発が強力に抑制されることを動物実験で証明したo 研究組織 研究代表者:堀勝義(東北大学加齢医学研究所助教授) (研究協力者:及川弘子、古本祥三) 交付決定額(配分額)金額単位:円 直接経費 亊I ィニ N 合計 平成17年度 テs テ 0 テs テ 平成18年度 テc テ 0 テc テ 総計 テ3 テ 0 テ3 テ 研究発表 (1)学会誌等 HoriK:Antineoplasticstrategy:irreversibletumorbloodnowstasisinducedbythe combretastatinA-4derivativeAVE8062(AC7700).Chemotherapy51:357-360,2005 HoriK:Cancertherapybymeansofirreversibletumorbloodflowstasis:starvation tacticsagainstsolidtumors.GeneTherMolBiol9:203-216,2005 (2)口頭発表 堀勝義、古本祥三:放射線照射後腫療血流遮断による癌再発抑制の実験研究. 第65回日本癌学会学術総会.2006年9月(横浜)
本田芳雄、古本祥三、堀勝義、吉岡孝志、山浦玄悟、石川洋一、岩田錬:腫療血
管標的薬剤AVE8062により誘発される腫療低酸素状態の評価.第127回日本薬 学会. 2007年3月(富山)
Furumoto S, HoriK, Honda Y, Yoshioka T, Yamaura ら Ishikawa Y, Kubota K,
Fukuda H, Kudo Y, Iwata R: Assessment of tumor hypoxia induced by vascular
targeting therapy. SNM'54thAmual Meeting. Washington DC, 2007 (June)
堀勝義、古本祥三:腫蕩血流速断による放射線療法効果増強の実験的研究.第66 回月本癌学会学術総会. 2007年10月(横浜) (発表予定)
放射線照射後の腫痩血流遮断による癌再発抑制の実験的研究
堀 勝義1、古本祥三2 1東北大学加齢医学研究所・腫虜循環研究分野、 2東北大学先進医工学機構・高度情報通信 要約 放射線と腫虜血流(TBF)速断との組合せが、放射腺療法の治療成績 向上につながる根拠を示すために、腫蕩微小循環に関係するパラメータ (TBF、腫療血管から腫虜組織-の物質移行性、クリアランス、腫疲サイズ、 腫癌問質液圧)のⅩ線照射後(10Gy)の縫目的変化を解析し、照射後に TBF遮断剤AC7700(10 mg/kg)を静脈内投与した時の効果を検討した。吉 田腹水肉腫LY80と吉田腹水肝癌AH109A皮下移植腫虜のTBFは、いずれ も照射2日儀から有意に増量し始め、3, 4日後、照射前の2-2・5倍になった。 静脈内投与したFITCデキストラン(m.W. 4,000)の血管外移行は、照射前に は腫虜よりもinterface(腫虜と正常の境界領域)で有意に高かったが、照射3 日以後、腫蕩組織-の移行性は著しく高まり(蛍光強度の上昇と組織内濃 度がピークに達する時間の短縮)、腫虜とinterfaceとの差はなくなった。 FITC デキストランの腫疲組織からのクリアランス(半減期)は、照射1日後から有意 に速くなり、4日後に最大となった。腫虜問質液圧は腫蕩サイズの縮小とほぼ 平行して低下した。照射3, 4日後にTBFが著明に増量する最大の要因は、こ の圧力低下により、腫癌血管-の圧迫がとれたことであると思われる。 AC7700は照射後のどの時点からでも、この増量したTBFを完全に遮断した。 遮断されたTBFは、6時間の経過観察中回復しなかった。 LY80の皮下移植 腫蕩モデルを用いた治療実験では、照射とAC7700との併用群が、照射単独 群、AC7700単独群に比べ、腫蕩増殖と再増殖を有意に抑制した。一方、 10Gy照射したLY80細胞を腹腔内に移植した腹水癌モデルには、 AC7700に ょる治療効果増強は認められなかった。このことは、固形腫虜で示された併 用効果は、 AC7700の癌細胞-の直接作用によるものではなく、 TBF遮断/腫 療血管破断を介した間接作用によるものであることを示している。照射後括 性化する腫療循環機能を破綻させることが、癌の再増殖を抑制するために重 要である。序文
放射線療法の治療成績を上げるには、放射線を癌組織に集中させること、 そして、治療後の再発を防止することが重要である。前者の対策は、治療機 ′ 器、コンピュータのハードウエア、およびソフトウエアの技術革新により、近年、 著しく進歩しつつある(1, 2)。そして、その進歩により、放射線が当たる正常 組織の領域が少なくなってきたことから、一回に照射する線量が多くなる傾向 にある。そこで、高い照射線量が腫療血管、腫疲血流(TBF)、酸素分圧にど のような影響を及ぼすかという問題が再び重要な研究課題になってきている。 一方、後者の対策のためには、再発を促進する要因を分析し、それを除去す る研究が必要である。 zywietzらは(3)、固形腫癌に分割照射をすると、45Gyまでは腫癌血管の endothelial liningが維持されるが、それ以上になると、内皮の萎縮や細胞接 触の弛み、細胞質の空胞の増加、およびbasal laminaの破壊を伴った血管 壁の崩壊が観察されるようになり、 75Gyで腫虜血管は完全に壊死になること を観察している。そして、この腫蕩血管の障害の程度と酸素供給の減少とがき わめてよく相関することを報告している(4)。一般に、照射線量が極端に高くな い限り、照射後にTBFが増量すること(5-8)、および再酸素化が起こることを 示す報告が多い(9-12)。ここで我々は照射後の腫虜微小循環機能の改善、 特に増量するTBFが癌の再発に大きく寄与する因子であるという仮説を立て た。死を免れた癌細胞は、血液から栄養と酸素を得ることにより増殖する力を 回復するし、活力を取り戻した癌細胞がリンパ管、血管に入れば、所属リンパ 節転移や血行性転移の生じる確率が高まるからである。 我々は、これまでの研究で、 combretastatin化合物 AC7700 (AVE8062) がTBFを不可逆的に遮断し、癌細胞-の栄養供給を断つことにより、腫癌増 殖、血行性転移、リンパ節転移を著明に抑制し、延命をもたらすということを 報告してきた(13-19)。もし、増量するTBFが放射線治療後の再発要因とい う仮説が正しいならば、照射後にTBFを遮断すれば、癌の再増殖は抑制され るはずである。この可能性に言及するには、TBFが放射線照射後のどの時点 でどのように変化するのかを解析し、そして、実際に、AC7700が照射後に変化するTBFを遮断できるのかどうかを確かめる必要がある。 放射線照射による腫虜血管の構造と機能変化については、これまでにも 種々の癌細胞、手法を用いて解析されてきた(20)。本研究では、生体顕微 鏡観察、血流測定、血管から腫療札織-の物質移行、クリアランス、腫虜問 質液圧の測定を、同じ腫虜系で経目的に行うことにより、照射後に誘導される 腫虜微小循環の機能変化を体系的に把握する。そして、その循環機能が AC7700で完全に破綻し、それによって癌の再発が抑制されることを証明する。 本研究の目的は、放射線照射後にTBF遮断を行うことが、癌治療の成績向 上につながることについての実験的根拠を提供することである。
材料と方法
ラットと癌細胞 すべての実験で、7, 8 週齢の雄ドンリュウラット(220-250g)(crj- Donryu; Nippon CharlesIRiver, Yokohama, Japan)を用いた.ラット
は空調、温度制御(24士1℃)の効いたSPF環境下で飼育し、餌と水は自 由に摂取させた。照明は12時間のサイクルで点滅した(午前7時点灯、午後 7 時消灯)。生体観察用透明窓を装着したラット、血流測定用電極を留置し たラット、および問質液圧測定用di机sionchamberを皮下に挿入したラットは、 それぞれ個別のケージで飼育した。治療実験用担癌ラットは、通常、 1ケージ (容積30×40×25 cm3)あたり3頭で飼育した。 用いた癌細胞は吉田腹水肉腫LY80と吉田腹水肝癌AH109Aである.こ れらの細胞は腹腔に移植した場合、腹水を誘導し、それに浮遊して増殖する。 両細胞共に腹腔内移植で継代され、維持されている。 動物実験の倫理 本研究で行ったすべての動物実験は、我々の研究所の動 物実験倫理委員会で承認された。動物の飼育は日本政府が制定した法律 (No. 105)と注意書(No. 6)に従い、実験は東北大学医学部が作成した動 物実験のガイドラインに従った。 麻酔 すべての実験は麻酔条件下で行った。ラットに25 mg/kgのベントパル
ビタールナトリウム(Tokyo Kasei Kogyo Co., Tokyo, Japan)を筋肉内注射し た後、そのラットを34.5℃の温熱板(MATS-SPA, Tokai HIT Co., Tokyo,
Japan)の上に寝かせ、吸入麻酔剤エンフルラン(Ethrane, Abbot
Laboratories, North Chicago, IL, USA)で麻酔状態を維持した。キャリアガス (空気)に対するエンフルランの割合は、小動物用吸入麻酔装置(21)を用 いて1%に維持した。血流測定と生体観察は吸引ダクト付き恒温箱(25℃)の
中で行い、小動物用の体温計(PTC-201; Unique Medical Co., Tokyo,
Japan)で直腸温をモニターした。 Ⅹ線照射 照射には実験用照射装置(日立MBR1520R-Ⅹ線照射装置)を 用いた。照射条件は、管電圧150 kV,管電流 20 mAであり,フィルターに は厚さ0.1 mmCu+0.5mmAlを用い、 1 Gy/minの線量率で照射した(22)。 照射野は4cmx3cmの面積に絞り、腫癌以外の部分を厚さ2mmの鉛版で 被った。線量計は透明窓あるいは腫虜に並べて置き、照射線量をモニターし た。本実験で用いた線量は主として10Gy、一部の実験で20Gyであり、いず れも1回で照射した。 TBFの測定 TBFは水素クリアランス法により測定した(15, 18).測定原理 はAukland et al. (23)らによって報告されている。血流測定用アンプ (PHG-201; Unique Medical)を用い、以下の手順で測定を行った。 ①癌細 胞を皮下に移植して作った固形腫虜に、径 8叫m のワイヤ型水素電極
(TOG205-103; Unique Medical)を挿入する。また、尻尾に近い背部の皮下 組織に棒型Ag/AgCl不関電極(TT-98012; Unique Medical)を挿入する。
②キャリアガス(空気l liter/min)に対する割合が9 %の水素ガスをラットに吸 入させる。 ③水素が組織に飽和した時に吸入を停止し、 washout curveから水 素の組織内半減期を求め、それに基づき絶対血流量(ml/min/100g tissue) を算出する。 固形腫虜では、表層から5 mmまでの領域で、TBFがかなり均質であること を確かめているため(unpublished data) 、皮下移植腫虜のTBFを測定する場 合には、電極挿入部位を腫虜表層から3 mmの深さに統一して行った
腫蕩内-の電極の留置 X線照射後のTBFを同一部位で経目的に測定す る実験では、水素電極を腫虜内に留置した。電極留置法は他に詳述してい る(24)。 ′ 腫疲サイズの測定 皮下移植腫虜の場合、腫蕩サイズは(7T/6)×axbxcで算出 した。ここでa,b,Cはそれぞれ腫癌の長径、短径、高さである。径18mmの穴 を持つアルミニウム枠をラット背部に装着し、そこに腫虜を移植した場合、腫 癌は穴いっぱいに拡がった後、厚みを増す方向に発育する。そこでこの場合 には、サイズは腫虜の厚さで評価した(24)。 ラット透明窓 腫虜血管の生体観察と、蛍光色素の腫療組織内移行の計測 には、サンドイッチ式のラット皮下透明窓を用いた。それは皮下組織を支える ための一組のチタン製フレームと、径10 mmの透明プレートとで成り立ってい る。本実験では、透明プレートに、組織反応を引き起こさない無蛍光石英ガラ スを用いた。透明窓の装着法は他に詳述している(25)。 生体顕微鏡観察所見の撮影と記録 透明窓内の微小循環は生体顕微鏡
(Eclipse E800; Nikon Co., Tokyo, Japan)を用いて観察した。レンズは10倍 の按眼レンズ(CFI UW; Nikon)と、2, 4, 10, 20倍の対物レンズ(CFI Plan
Flour; Nikon)を用いた。透過光で観察する場合、光源は12-V 100-Wのハ ロゲンランプである。カラー映像はCCDビデオカメラ(CS-900; Olympus Co., Tokyo, Japan)、およびデジタルカメラ(DS-一il; Nikon)で撮影した。映像は テレビモニター(PVM-14M4J; Sony Corporation, Tokyo, Japan)上に映し出 し、同時に、 S-VHSビデオレコーダー(sv0-2100, Sony Corporation)で、
ビデオテープに記録した。
物質の腫疲組織内移行の解析 物質移行解析のためのトレーサーには、分 子量4,000のFITC-dextran (Wako Pure Chemical Industries, Ltd,, Osaka,
の水銀ランプに切り替えた。 FITC-dextranを尾静脈からbolus one shotで投
与し、透明窓内の腫虜血管から漏れ出る蛍光物質を、primary filter
(420-490 nm) 、 dichroic interference mirror (505-nm), barrier filter
(520-mm)を通した落射蛍光で捉えた。蛍光の映像はsilicone-intensified (SIT)ビデオカメラ(C2400-08, Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)
で撮影し、ビデオテープに記録した。蛍光の経時的変化を効率よく解析する ために、記録時に、撮影時刻を画像上にsuperimposeした。ビデオテープの アナログ映像はビデオキャプチャ(PC-MDVD/U2; Btrffalo Inc., Nagoya, Japan)でデジタル化し、これをDVDに記録した。
DVD に記録した映像を経時的にコンピュータにダウンロードし、関心領域
の蛍光強度の時間的推移をImage J (free software)で計測した。関心領域
は、蛍光色素静脈内投与6-10秒後の画像(蛍光色素が血管のみに分布) を参照し、血管を外した組織領域を透明窓一個あたり5-10領域選んだo関 心領域のサイズは一領域あたり100ピクセルである。 物質の組織移行性とクリアランス 物質の組織移行性を評価するために、蛍 光強度の最大値(Cmax)と、最大値に達するまでの時間 Tcmaxを、パラメータと して測定した。 CmaxはFITCデキストランを投与する前のバックグラウンドの輝 度に対する増加率で示した。また、物質のクリアランスは蛍光強度の半減期 (T-/2)で評価した。蛍光色素の組織内濃度は、組織から指数関数的に減衰 することが確認されたためである。これらのパラメータの照射による変化を、経 目的に解析した。 腫疹問質液圧の測定 照射による腫虜問質液圧の変化は diffusion chamber法(26)により測定したo腫癌が取り込んだdiffusion chamber(ポア サイズ0.45 pm)内の液圧を、腫虜問質液圧と定義した。圧トランスデューサ
(TNFIR; Spectramed Medical Products, Singapore)を介した動ひずみ計 (6M82; NEC-Sanei Co., Tokyo, Japan)でその圧を測定した。
素医薬研究所(Ajinomoto Co., Pharmaceutical Research Laboratories, Kawasaki, Japan)によって開発され(27, 28)、我々がその強いTBF遮断作 用を証明した物質である(14, 16-19)。 AC7700は2000年に味の素から提供 されたもの(シリカゲル入りの密閉容器に入れ冷蔵保存)、および我々が実験 室で合成したものを用いた。構造分析および力価検定により両者は同一物質 であることが確かめられている。使用直前に0.9% NaCl溶液に溶かし(10 mg/ml) 、その溶液を、インフュージョンポンプ(Compact syringe pump; Harvard Apparatus, South Natick, MA, USA)を用いで、尾静脈から1分間
に0.15 mlの速度で注入した。本実験で用いたAC7700の用量は10 mg/kg であった。 照射後 AC7700 投与によるTBF の変化 照射後に増量するTBF を、 AC7700が遮断するかどうかを確かめるために、 10 Gy照射2時間後、2, 3, 4 日後にそれぞれ10 mg/kgのAC7700を静脈内投与した。 AC7700投与前、 投与後10,30分,1時間、以後1時間毎に6時間まで、経時的にTBFを測 定した。また、透明窓を用いて、10Gy照射2時間後のTBF遮断を生体顕微 鏡下で観察した。
治療実験
I)皮下腫蕩 皮下腫癌の治療実験にはLY80担癌ラットを用いた。担癌ラッ トを、第1群、0.9%NaCl投与群(-コントロール);第2群、Ⅹ線照射+0.9% NaCl投与群;第3群、10mg/kgAC7700単独投与群;第4群、Ⅹ線照射 +long/kgAC7700併用群の4群に分けた。 10Gy照射と20Gy照射の2つ の実験を行った。両実験共に、各群の動物数はそれぞれ6頭であり、癌細胞 移植後12 日目に治療を行った。そして、治療後の腫疲サイズと体重の変化 を毎日計測した。また、同時に膜嵩部axillaryと鼠膜部inguinalのリンパ節 転移の有無をチェックした。 2)腹水癌 腹水腫癌の実験にもLY80細胞を用いた。LY80細胞を腹水中 に持つドナーラットから癌細胞を採取し、それを2つに分けた。一方は非照射 であり、もう一方には10Gy照射をした。それらの細胞をラット腹腔中に移植し(350万/rat)、以下の4群に分けた。第1群、非照射LY80細胞i.p.移植ラッ トに0.9% NaClをi.V.投与;第2群、非照射LY80細胞i.p.移植ラットに10 mg/kg AC7700をi.V.投与;第3群、 10Gy照射LY80細胞i.p.移植ラットに 0.9% NaClをi.V.投与;第4群、 10Gy照射LY80細胞i.p.移植ラットに10 mg/kg AC7700をi.V.投与。処置後、担癌ラットの経過観察により、放射線お よびAC7700の直接効果を判定した。この実験のエンドポイントは、貧血が出 はじめ、幸丸を包んでいる皮膚が黒ずんできた時とした。経験的に、この状態 になると、ラットは長く生きないことがわかっているからである。 組織標本 透明窓を用いた実験では、実験終了後、エーテル麻酔下で透明 窓を注意深くはずし、その組織(厚さ約150pm)に15%ホルマリン溶液を滴下 して固定した。ルーチン化した一連のプロセスを経て、パラフィンに包埋した組 織から厚さ4pmの切片を作成し、H&E染色を行ったo固形腫癌の組織標本 も同じプロセスで作成した。 統計解析 すべての計測結果はmeans土SDで示した。照射後のTBF、腫蕩 サイズ、腫療問質液圧の縫目的変化、および治療実験における腫虜サイズ
の縫目的変化の群間の有意性は、 repeated measure ANOVAで検定した。 FITC-dextranの移行性とクリアランスの実験で、 tumorとinterface間の有意性 の検定にはunpaired t-testを用いた。また、照射後の各パラメータの値を照射 前の値と比較した場合には、 paired ∫-testで検定した。担癌ラットのサーバイパ ル、腫虜再増殖、リンパ節転移成立の群間における有意性の検定には Kaplan-Mayer法を用いたoいずれの実験においてもP < 0・05の場合を有意 差ありと判定した。
結果
1.X線照射後のTBFと腫疲サイズの変化 図1aとlbは、10Gy照射、20Gy照射、および非照射のLY80の同一部位 のTBFと腫癌サイズの縫目的変化を示す。図lcとldは10Gy照射をしたAHIO9Aの変化である。 LY80に10Gy照射をした場合、照射前と比べ、TBFは2日後から有意の 増加を示し、腫癌サイズは3日後から有意の縮小を示した。20Gy照射では、 照射前と比べ、TBFは3日後から有意の増加を示し、腫虜サイズは4日後か ら有意の縮小を示した。照射後に誘導されるTBFの増量は、 10Gy照射でも 20Gy照射でも、4日後がピークであり、両者の最大血流量値には有意差はな かった(P - 0.3596)。また、腫療縮小の経過にも両者の間で有意差はなかっ た(P-0.1316)。非照射の場合には、TBFは増加することはなく、腫虜体積の 増加に伴って減少した。AHIO9A-の10Gy照射では、TBFは2-4日後の間 で有意に増加し、腫疲サイズは4日以後に有意に縮小した。 いずれの場合においても、腫療血流の増量は腫虜サイズの縮小に先行し た。 2. X線照射後のFITCデキストランの組織移行性とクリアランスの変化 10Gy照射前、照射1日後、4日後、6日後に、静脈内授与したFITCデキ ストランの組織-の移行、クリアランスの生体顕微鏡所見を図2に示す。図3 は、腫癌内(n- 5)、および腫癌と皮下組織インターフェイス(n- 5)におけ る組織内濃度の経時的、縫目的変化の定量結果である。また、腫虜とインタ ーフェイスにおける蛍光強度の最大値 cmax、最大値に達するまでの時間 TCmax、およびクリアランスを示す蛍光強度の半減期 Tl/2の綴目的変化を Table lにまとめた。 10Gy照射前のCmaxは、インターフェイスの方が腫虜よりも有意に高かった (p - 0.0130).インターフェイスのCmaxは照射後も有意の変化を示さなかった が(p>0.05)、腫虜内では、照射前と比べ、Cmaxは3日後から有意の上昇を 示した(P-0.0283)。その時点で、腫虜とインターフェイスのCmax間に有意差 はなくなった(P- 0.2496)o lOGy照射前のTCmaxは、腫虜の方がインターフェイスよりも有意に速かった (p - 0.0203)。インターフェイスのTCmaxは、照射前と比べ、 3日後から有意に 速くなり(P-0.0030)、腫疲内のTCmaxは4日後から有意に速くなった(P-0.0309)。照射6日後には、腫癌とインターフェイスのTCmaxに有意の差はなく
なった(P-0.1114)。 Tl/2は、照射前も照射後も、腫虜とインターフェイス間で有意差はなかった。 いずれの領域でも、Tl/2は照射1日後から有意に短くなり、照射4日後に最も 短くなった。 ′ これらのパラメータの分析により、 10Gy照射3,4日後に腫虜微小循環機能 が著しく活発になることが示された。照射6日後の腫癌では、無処置の腫癌と 比べ(図 4d)、癌細胞の大半は変性していたが、腫蕩血管は多数観察された (図 4C)。屠殺前に行った生体観察は、それらの血管の循環機能はきわめて 活発であることを示した。 3. X線照射後の腫坊間質液圧の変化 10Gy照射、非照射におけるLY80の腫蕩問質液圧、腫癌サイズの縫目的 変化を図5に示す。照射群では、照射前の腫癌サイズは15.5土0.8 mm、腫 蕩問質液圧は11.6士2.2mmHg(n-4)であった。照射1日後、2日後は、腫
虜は照射前と比べて有意に増大したが(day 0 vs day 1,P- 0.0054; day 0 vsday2,P-0.0330)、3日以後は縮小に転じた(dayOvsday3,P=0・0426; dayOvsday4,P-0.0053)(図5b)。問質液圧は、照射2日以後、照射前と 比べて有意に低下した(day 0 vs day 2, P- 0.0374; day 0 vs day
3,P-0.0413;dayOvsday4,P-0.0165)(図5a). 一方、非照射群の腫虜では、腫癌問質液圧は腫疾サイズの増大と共に上 昇し続けた。 4.X線照射後AC7700静脈内投与によるTBF遮断 10Gy照射2時間後に10mg/kgのAC7700を静脈内投与し、経時的に生 体観察を行った所見を図6に示す。照射前(a)に比べ、照射2時間後には、 腫疲血管の血流速度が速くなり、部分的に血流が停止していた領域に血流 が再開通した(b)。この腫癌血流の増量により、ドレナ-ジ(bのarrow)の径が 照射前と比べて著しく拡大した。この時点でAC7700を静脈内投与すると、 30 分後にTBFは著しく低下し、2時間後には完全に停止した(C)。AC7700投与 27時間後の生体観察所見がdに示される。腫癌が選択的に壊死になってい
る。屠殺前にFITCデキストラン(mw 4,000)を投与したところ、腫虜には全く 到達せず、腫虜循環が完全に破綻していることが確かめられた(e-i)。 10Gy照射2時間後、2日後, 3日後, 4日後に、10mg/kgのAC7700を 静脈内投与した時のTBF変化を図6jに示す。AC7700投与前のTBFは、 それぞれ29.3土15.9(n-8),46.1土8.3(n-6),40.7土4.4(n-6),49.7土 4.1(n-6)ml/min/100gであり、2-4日後のTBFは2時間後のTBFよりも有 意に増加していた(いずれもP<0.05)。 AC7700を環与すると、照射後の経過 時間にかかわらず、すべての例で、TBFは30-60分でほぼゼロにまで低下し、 6時間の経時的測定中回復しなかった。また、照射2-4日後にAC7700で誘 導されるTBF遮断の経時的変化には群間の有意差はなかった(day2vsday 3,P-0.2693;day2vsday4,P-0.7621;day3vsday4,P-0.1931). 4.治療効果 1)皮下腫疲 LY80皮下担癌ラットに10Gy照射をした時の腫虜増殖抑制効果と、体重 -の影響を図7aと7Cに示す。移植12日目(治療開始時)の腫療サイズは、 0.9%NaCl溶液投与群(第Ⅰ群)が2.09土0.47 cm3(n-6)、 long/kgAC7700 単独投与群(第ⅠⅠ群)が2.07土0.46 cm3(n- 6)、 10Gy照射+ 0.9%NaCl溶 液投与群(第ⅠⅠⅠ群)が2.lo主o.44 cm3(n - 6)、10Gy照射 + 10 mg/kg AC7700投与群(第IV群)が1.91土0.48 cm3(n - 6)であり、どの2群間にも有 意差はなかった(いずれの群間でもP> 0.05). 治療後、放射線とTBF遮断併用群は、TBF遮断単独群、照射単独群に 比べ、有意の腫虜増殖抑制効果を示した(第II群 vs第IV群, p < 0.0001; 第ⅠII群 vs 第IV群, p < 0.0001)。また、腫癌が再増殖するまでのmedian regrowth timeは、第ⅠⅠ群が4.5日、第ⅠⅠⅠ群が6日、第ⅠⅤ群が11.5日であり、併 用群は単独群に比べ、有意に再増殖の時期を遅らせた(第ⅠⅠ群 vs 第ⅠⅤ群, p- 0.0010;第III群vs第IV群, p- 0.0035)o治療後18日までの経過観 察で、第ⅠⅠ群と第ⅠⅠⅠ群では、それぞれ6頭中6頭すべてに腫蕩再増殖が起こ ったが、第ⅠⅤ群では6頭中2頭に再増殖は起こらなかった。第ⅠⅠ群と第ⅠⅤ群で、 治療4日後までに約13%の体重の減少が見られたが、第ⅠⅤ群でその回復が 著しかった。
成立するまでの日数のメディアンは、治療後20日までのKaplan-Mayer plotで、 第Ⅰ群が4日、第ⅠⅠ群が8日、第ⅠⅠⅠ群が8日、第ⅠVが8.5日であった。第ⅠⅤ群は 第Ⅰ群に比べて転移の成立を遅らせたが(p - 0.0200)、第HI群との間には有 意差はなかった(P - 0.6242)oまた、第I群、第II群では6頭中すべてにリンパ ′ 節転移が成立したのに対し、第ⅠⅠⅠ群では6頭中l頭、第ⅠⅤ群では6頭中2頭に 転移が生じなかった。 図7bと7dは、 LY80皮下担癌ラットに20Gy照射をした時の腫疲増殖抑制効 果と、体重-の影響である。移植12日目(治療開始時)の腫虜サイズは、 o・9-%NaCl溶液投与群(第Ⅰ群)が1・55土0・49cm3(n-6)'、 long/kgAC7700 単独投与群(第ⅠⅠ群)が1.86士0.39 cm3(n- 6)、20Gy照射+ 0.9%NaCl溶 液投与群(第ⅠⅠⅠ群)が1.94士0.32 cm3(n - 6)、20Gy照射 + 10 mg/kg AC7700投与群(第ⅠⅤ群)が1.97土0.34 cm3(n - 6)であり、どの2群間にも有 意差はなかった(いずれの群間でもP> 0.05)0 20Gy照射では、第ⅠⅠⅠ群も著明な腫虜増殖抑制効果を示したが、第ⅠⅤ群 の効果は第III群よりも有意に強かった(増殖抑制効果, P< 0.0001;再増殖 遅延効果,P-0.0296)0 2)腹水癌 10Gy照射したLY80細胞、あるいは非照射のLY80細胞をラット腹腔内に移 植し、 0.9%NaCl溶液、あるいは10 mg/kg AC7700を静脈内投与した時の Kaplan-Mayer plotを図8に示す。 10Gy照射群と非照射群との間には有意差 があったが(第I群 vs 第III群, 0.0061;第II群 vs 第IV群, p-0.0498)、AC7700投与群と非投与群との間には有意差はなかった(第Ⅰ群 vs #II#,P-1.0000; #III# vs # IV#,P-0.2935).
考察
本研究で、我々は、固形腫癌に放射線を照射すると、3,4日後にTBFが著 しく増量し、腫虜微小循環機能が活性化されることを、病態生理学的手法を 用いて明らかにした。また、AC7700を静脈内投与すると、照射後のどの時点 からでも増量したTBFを完全に遮断することができた。そして、この遮断で腫 虜の循環機能を喪失させることが、放射線療法の効果増強につながることを 明瞭に示した。 照射数日後にTBFが増量することはこれまでにも報告されているが(5-8)、 その増量が起こる理由についてはあまり深く追求されてこなかった。本研究の目的のひとつは、放射線照射によるTBF増量の微小循環メカニズムを明らか にすることであった。 我々ははじめに2種類の腫虜で同一部位のTBFを経目的に測定し、それ が放射線照射でどのように変化するのかを調べた。照射をしなければTBFが ′ 自然に増量することはなかった。一方、照射をすると、 1日後にはTBFはそれ ほど大きく変化しなかったが、3, 4日後になると著しく増量した。腫虜血管ネッ トワークの発育は照射で促進されることはなく、むしろ停止したことから(data not shown)、この増量は腫虜血管新生によるものではないことは明らかである。 同羊時期に、腫虜血管から組織-の物質の移行性、クリアランス、腫虜サイズ、 腫疲問質液圧が、いずれも照射前と比べて大きく変化しており、これらのパラ メータが連動してTBF増量の方向に作用していることが強く示唆された。 一部の例外はあるが(29)、一般に、腫疲問質液圧は腫疲増殖に伴って上 昇する(26, 30-34)。その圧が腫虜血管を圧迫することによりTBFが低下し、 その低下が酸素、栄養の供給不足を招く。腫療内に低酸素細胞、および壊 死が生じてくる理由のひとつに、この病態生理学的プロセスがあると考えられ ている。 照射3,4日後にTBFが著しく増量する現象には、これとは逆のプロセスが働 いていると思われる。すなわち、腫虜縮小、問質液圧の低下、腫疹血管圧迫 解除と続く一連のプロセスである。 本研究では、TBFの増量は腰痛縮小に先行した。放射線照射により、崩 壊した癌細胞の腫虜からの離脱が始まるが、その離脱がかなり進んだ時点で はじめて腫虜縮小が起きるものと思われる。そして、ひとたび腫癌が縮小し始 めるとメカニカルな圧迫がとれ、問質液圧が下がり、TBFが増量する。増量し たTBFにより cell debrisの排出は促進され、血管圧迫がさらに緩和される。 その結果、 TBFがさらに増量するというpositive feedbackが起こるものと思わ れる。このpositive feedbackが起こるには、腫疲循環機能が停止することなく 働き続けることが重要である。 16.5Gy照射2時間後にTBFが20-30%低下する という報告があるが(35)、本研究の10Gy照射では、 2時間後にTBFが約20% 増量するのが観察された(図5)。また、照射1日後にダメージを受けた癌細胞 が膨化し、一時的に腫虜サイズが大きくなった場合でも、TBFは照射前と比 べて低下しなかった。 LY80細胞のほとんどが変性する20Gy照射でも、腫疲循環はむしろ活発に 機能していた。このことは、内皮細胞の方が癌細胞よりも放射線に強いことを 示している。この感受性の差が、腫療循環が維持される理由である。そして、
上に述べたpositive feedbackで腫疲循環が活発になることにより、より多くの 好中球やマクロファージが病巣に運びこまれ、死滅した癌細胞のdebrisを腫 虜外に排出するスカベンジャー機能が促進されるものと思われる。腫虜循環 機能の活性化は、化学療法で腫虜縮小効果があった時(24)、および拒絶 ′ 反応で腫虜が退縮している時にも見られ(unpublished data)、おそらく同じ 機序が働いているものと推定される。この循環機能が停止すると、腫虜縮小 に要する時間が著しく長くなることを観察しており(24)、両者に密接な関係が あることが強く示唆される。 照射後に腫療血管透過性が克進することはよく知られている(36, 37)。そ れは放射線が新生血管内皮細胞に傷害を与える(38)結果と思われる。本研 究でも、照射3, 4日後に腫療血管の透過性が著しく克進した。それにもかか わらず、問質液圧が低下したのは、腫虜内に水の貯留が起こっていないこと を示している。照射により腫蕩問質液圧が低下することは、Rhoら(39)、Znati ら(29)も報告しており、特に、Znatiらは、問質液圧の低下は腫癌が縮小す る前に起こることに注目している。我々もまたそれを確認した。この現象には、 本研究で明らかにされた照射1日後にクリアランスが速くなることが関係してい ると考える。クリアランスの冗進は腫虜のconductivityの克進を意味するからで ある。 腫癌循環機能の活性化は酸素分圧にも影響する。放射線照射を行うと、 通常、24-72時間後に固形腫虜内で再酸素化が起こるという報告が多い (9-12)。腫虜内酸素分圧は癌組織に運ばれる酸素量と、癌細胞によって消
費される酸素量との"収支" (income and expenditure)で決まると考えられて いる(9, 12)。もしそうならば、照射後に起こる再酸素化は、癌細胞の死滅に より酸素消費量が少なくなることと、本研究で示したTBFの増量でより多くの 酸素が腫癌に運ばれることとが合わさった現象と解釈することができる。 図9a-Cに本研究の前半の結果を要約する。照射後、上に述べたプロセス を経て増量したTBFが、照射で生き残った癌細胞に十分な栄養と酸素を与 え、癌細胞は再び増殖の勢いを取り戻す、と我々は考える。 次に、本研究のもうひとつの目的は、照射後に増量するTBFを遮断するこ との治療上の意義を明らかにすることであった。腫虜微小循環の活性化は、 腫蕩縮′J、効果に寄与するが、同時に、傷害を受けた癌細胞の回復も促進す る。我々は照射後にTBF遮断を行えば癌の再増殖を抑制できると考えた。 LY80担癌ラットを用いた治療実験では、照射と血流遮断の併用が、照射 単独、血流遮断単独よりも、癌の増殖および再増殖を有意に抑制した。リン
パ節転移が成立するまでの日数のメディアンは、治療群の間で有意差はなか った。しかし、コントロール群、血流遮断単独群では6頭中すべてにリンパ節 転移が成立したのに対し、照射単独群では6頭中1頭、併用群では6頭中2頭 に転移が生じなかった。 LY80は増殖速度が速く、しかも移植後の比較的早 ′■ 期に95%以上の確率でリンパ節転移を引き起こす(unpublished data)。この 癌細胞の性格を考慮すると、治療実験の結果は注目に値する。 一方、 in vitroで癌細胞に照射し、それを腹腔内に移植した実験において は、放射線の効果には有意差があったが、 AC7700の効果には有意差はなか っを。このこと子羊、固形腫虜で見られた再増殖抑制効果は、AC7700の癌細 脂-の直接効果ではなく、 TBF遮断を介したものであることを示している。 近年、放射線と血管破断剤(コンプレタスタチンA-4リン酸体、zD6162)と の併用が治療効果を高めるという研究がいくつか報告されている(40-43)。こ の併用効果の理由として、血管破断剤が主として低酸素領域の多い腫疲中 心部の攻撃に威力を発揮し、放射線は酸素分圧の高い周辺部で奏功する ためと説明されている(40, 41)。本実験で用いたAC7700は腫療血管破断剤 に分類されているが(44-47)、この薬剤は投与直後のTBF遮断作用とその持 続作用がきわめて強力であり(14, 16-19)、血管破断は血流速断の結果であ る。これまでに報告されている腫虜血管破断剤の多くも、 tubulin重合阻害効 果と共に、作用の強弱はあるにしても、 TBFを低下あるいは停止させる作用を 持っている(48151)o 我々の併用治療実験は、 AC7700が放射線によって改善される腫虜微小 循環機能を破壊し、その結果、生き残った癌細胞が栄養を断たれ、腫虜の 再増殖が抑制されることを示した(図9)。放射線と腫疲血管破断剤併用によ る治療効果増強には、これまでに考えられている作用メカニズムと、本研究で 述べた作用メカニズムの両方が働いていると考えられる。 最後に、術前照射にTBF遮断を併用するメリットについて述べる。臨床で は、癌を掃出しやすくするために、外科手術の前に放射線照射で癌を小さく するという、いわゆる術前照射が行われることがある。しかし、本研究の結果で も明らかなように、照射後にTBFが著しく増量するため、同時に腫虜周辺部の draining vesselの血流も増加する。したがって、その時期に手術を行えばかな りの出血を伴うことが予想される。本研究は、AC7700は照射後のどの時点か らでも増量したTBFを遮断できることを示した。癌の摘出手術を行う前に AC7700でTBF遮断を行えば、出血、癌細胞播種のリスクを下げることができ るかもしれない。
結論として、照射後に増量するTBFが癌の再発因子であることが強く示唆 された。このTBFを遮断し、腫癌循環機能を破綻させることが、癌の治療効果 増強のために必要である。我々は、本研究で行ったトランスレーショナルリサ ーチが臨床に役立つと信じている。 ′■
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図表の説明 図1. X線照射後のTBFと腫癌体積の変化 a,LY80のTBF変化; ち,腫癌サイズの変化 .,10GyをdayOに照射(a-6); ・,20GyをdayOに照射(n-6); ・,非 照射(n-5). *,P<0.05(vsdayO,以下同じ); **,P<0・005; *,P< 0.05; **,P<0.01■; *,P<0.05; P<0.001● C,AHl_09AのTBF変化; d,腫癌サイズの変化 ?,10GyをdayOに照射(n-9). *,P<0.05; **,P<0・001 図2. X線照射前後におけるFITCデキストランの組織移行 用いた癌細胞はLY80 FITC-dextran (mw 4,400)を静脈内投与し、組織-の移行性を経時的に撮 影した.最上段の数値はFITC-dextran i.V.後の時間(see). a-e,照射前; f-j,10Gy照射1日後; k-0,4日後; p-t,6日後・ 照射前にFITC-dextranをi.Y.し、 3時間後に10Gy照射を行った。照射前は 腫癌内の血管よりも、腫癖と正常のinterface(腫療周辺500 pm以内の領域) で血管透過性が高いが、照射後、経目的に腫療内の血管透過性が克進し、 interfaceとの差がなくなることに注目. 図3. X線照射前後におけるFITCデキストランの組織内濃度の推移 癌細胞はLY80.図2の組織内濃度変化を定量化したものである. a,照射前;b,10Gy照射1日後; C,照射4日後; d,照射6日後・ ●,腫療内(n-5); ■,腫癌と正常のinterface(n-5)・ 図4. 10Gy照射6日後の腫療組織像 癌細胞はLY80. a,照射6日後の生体観察所見; b, aと同一部位の組織像; C, bの口の領 域の強拡大; d,非照射のコントロール.a,bのbarは500pmであり、C,dの barは50Llm. H&E染色. Cで明らかなように、 10Gy照射により、ほとんどの癌
細胞が変性しているが、出血はなく、循環機能が保持されている腫療血管が 多数存在している。 図5. X線照射後の腫疲問質液圧の変化 a,LY80の腫癌問質液圧の変化; b,腫癌サイズの変化 ●, 10GyをdayOノに照射(n-4);0,非照射(n-5) *,p<0.05(vsdayO);**,P<0.01; ***,P<0.001 図6. X線照射後AC7700静脈内投与によるTBF遮断 a-i,生体観察所見.癌細胞は吉田腹水肉腫LY80
a,照射前; b,10Gy照射2時間後; C,AC7700(long/kg)i.V.2時間後; d, AC7700 i.V. 27 時間後; e, FITC-dextran (mw 4,000) i.V.前; ∫,
FITC-dextran(mw4,000)i.V.6秒後; g, 11秒後; h,3分後; i, 15分後. j,TBF変化. △,10Gy照射2時間後(n-8); 0,照射2日後(n-6); ●,照射3日後 (n-6);ロ,照射4日後(n-5).いずれもOminでAC7700(long/kg)を i.V.した. AC7700は、照射後の経過時間にかかわらず、 TBFを完全に遮断し た. 図7.放射線照射とAC7700併用の固形腫癌に対する効果 吉田腹水肉腫LY80を皮下に移植し12日後に治療. aとCの放射線量は10Gy、bとdの線量は20Gyである.aとbは腫療サイズ の変化. Cとdは担癌ラットの体重変化.
0,0.9%NaCl群(n-6); ●, long/kgAC7700群(n-6); ●, 10Gy+0.9%
NaCl群(n-6); ●,10Gy+long/kgAC7700群(n-6)
第ⅠⅤ群で腫癌増殖、再増殖抑制効果が著しい.
図8.腹水中の癌細胞に対するAC7700の効果
癌細胞は吉田腹水肉腫LY80.薬剤はi.V.投与.
与)(n-6); -,第ⅠⅠ群(非照射細胞を腹水中に持つラットに対し10 mg/kgAC7700をi.V.投与(n-6);背叫,第ⅠII群(10Gy照射細胞を腹水 中に持つラットに対し0.9%NaClをi.V.投与)(n-6); -,第IV群(10Gy 照射細胞を腹水中に持つラットに対し1amg/kgAC7700をi.V.投与) (n-6). AC7700の効果が認められないことに注目. 図9.本研究のまとめの模式図 腫癌組織(a)に放射線を照射すると、癌細胞は損傷を受け、大部分は変 性・死滅する.しかし、極端に高い線量でない限り、腫癌血管は拡張し、循環 機能は保持される(b).死滅した癌細胞が腫癌から排出されると、問質液圧 が低下し、腫療血管-の圧迫がとれ、腫療血流が著しく増量する(C).増量 した腫癌血流が豊富な酸素と栄養を運び、死滅を免れた癌細胞が再び増殖 を開始する(d).一方、放射線照射後に腫癌血流遮断を行うと、かろうじて生 き残っていた癌細胞が、栄養供給を断たれ、腫癌血管と共に完全に壊死とな る(e).
表1. X線照射後腫癌微小循環パラメータの変化
Day最大蛍光強度(Cmax)最大蛍光強度到達時間(Tcmax)クリアランス(Tl/2)
(ratio) (min) (min)
Tumo r Interfac e T um o r Int erfac e Tumor Interfac e
0 3.1±0.4 3.8±0.3† 7.0±2.7 12.0±2.7† 1 3.3±0.2 4.2±0.3T†† 3.4±0.9 10.8±1.5†TT 3 3.9±0.2* 4.1±0.3 4.0±1.2 6.4±2.1… 4 3.9±0.1* 3.8±0.5 3.0±0.0* 5.0±1.0…,TT 6 3.9±0.1* 3.9±0.7 3.4±0.9* 4.2±0.4*** 28.0 ± 2.2 34.1 ± 6.5 22.3±1.0** 24.3±1.3*,† 21.8 ± 1.2* 23.2 ± 0.8* 17.4±0.5*… 17.7±0.4** 0.4±0.5*** 20.1 ± 1.1**
Tumor blood flow (ml/min/1 00 g) H X il 層 化 Day 4 5 a
図2
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