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前田憲孝 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成20年 2月

前田憲孝 学位論文審査要旨

主 査 林 一 彦 副主査 井 藤 久 雄 同 池 口 正 英

主論文

CYR61 down-regulation correlates with tumor progression by promoting MMP-7 expression in human gastric carcinoma

(ヒト胃癌におけるCYR61の発現低下は、MMP-7の発現を促進して腫瘍進展に関与する)

(著者:前田憲孝、尾崎充彦、庄盛浩平、稲葉愛子、木谷憲典、池口正英、井藤久雄)

平成20年 Oncology 掲載予定

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学 位 論 文 要 旨

CYR61 down-regulation correlates with tumor progression by promoting MMP-7 expression in human gastric carcinoma

(ヒト胃癌におけるCYR61の発現低下は、MMP-7の発現を促進して腫瘍進展に関与する)

CYR61(cysteine-rich 61)はCCN(CYR61/CTGF/NOV)ファミリーに属する分泌蛋白の一つで、

腫瘍形成に関与している。分泌されたCYR61が細胞表面のインテグリンに結合することによ り細胞内にシグナルが伝達され、細胞の増殖、生存、分化、遊走などの応答が得られる。CYR61 のこれらの働きは、組織あるいは腫瘍によって異なることが報告されている。ヒト胃癌組織 を用いたプロテオーム解析により、癌部において発現低下する蛋白としてCYR61を同定した。

そこで本研究では、ヒト胃組織標本におけるCYR61蛋白発現、ヒト胃癌組織標本における CYR61蛋白発現と臨床病理学的因子との関連、ヒト進行胃癌組織ならびに胃癌細胞株におけ るCYR61蛋白発現とMMP-7発現との関連を検索した。

方 法

CYR61の胃組織における発現を、正常胃粘膜、腸上皮化生、腺腫33例、腺癌127例において 検討した。癌腫127例について、CYR61と臨床病理学所見の比較を行った。また、進行胃癌78 例においてはCYR61とMMP-7の発現を免疫組織学的手法に検索した。

ヒト胃癌細胞株7株を用いたウェスタンブロット法によって、CYR61とMMP-7の発現を比較、

検討した。

結 果

CYR61発現細胞は正常細胞ならびに癌細胞において、大部分がセロトニン産生細胞と一致 していた。CYR61の発現は、正常胃粘膜、腸上皮化生、腺腫では全例に認められた。腫瘍細 胞の2%以上にCYR61発現が見いだされる症例を陽性とすると、腺腫33例では全例、早期胃癌 では49例中43例(87.8%)、進行胃癌では78例中19例(24.4%)が陽性症例であり、三者間 には有意差が認められた(P<0.001)。

胃癌におけるCYR61の発現は、組織型(P<0.05)、深達度(P<0.001)、リンパ管浸潤(P<0.001)、

血管浸潤(P<0.001)、リンパ節転移(P<0.001)、臨床ステージ(P<0.001)において低下 していることが有意差をもって示された。さらに、進行胃癌78例における免疫組織学的検索 により、CYR61の発現とMMP-7の発現に統計学的逆相関が認められた(P<0.001)。ウェスタ ンブロット解析では、CYR61とMMP-7の発現に逆相関があり、MMP-7が発現していたMKN45と

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3 KATO-ⅢではCYR61は発現していなかった。

考 察

CYR61発現細胞は、正常粘膜だけではなく、腫瘍細胞においてもセロトニン産生細胞と一 致したことから、CYR61とセロトニンは内分泌細胞であるEC細胞から分泌され、胃粘膜およ び腫瘍細胞の増殖、分化に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。

CYR61の免疫組織学的検索ならびに臨床病理学的因子との関連についての検索結果から、

CYR61の発現の低下が癌細胞の浸潤に関与している可能性が示唆された。ヒト胃癌細胞の浸 潤に関与する因子の中で、胃癌細胞自身が発現すること、胃癌細胞の浸潤能に関与すること、

組織学的深達度と相関し、特に胃癌先進部において発現が亢進すること、MMPの中で最も胃 癌の予後と相関することなどが報告されていることからMMP-7に着目し、CYR61とMMP-7の発 現について検索した結果、CYR61とMMP-7の発現に逆相関が認められた。このことからヒト胃 癌におけるCYR61蛋白の発現の低下は、MMP-7の発現を促進することにより癌の浸潤に関与し ている可能性が示唆された。しかしながら、CYR61がMMP-7の発現を調節する機序については 詳細は明らかになっておらず、今後さらに検索を進める必要がある。

結 論

ヒト胃粘膜におけるCYR61発現細胞は主にセロトニン産生細胞である。ヒト胃癌における CYR61蛋白の発現低下は、MMP-7の発現を促進することにより癌の浸潤能に関与し、癌の進展 と関連している可能性が示唆された。

参照

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