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環境汚染物質の除去を指向した機能性素材の開発

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 曾 根 弘 昭

学 位 論 文 題 名

環境汚染物質の除去を指向した機能性素材の開発 学位論文内容の要旨

  かつての我が国は鉱工業・産業技術の発達と共に,水質,大気及び土壌において甚 大な環境汚染が発生していた。それに対して政府が様々な法を制定し,対策を講じた ことによって,環境への負荷は最低限に抑えられつっある。様々な施策や,環境汚染 防止技術の発達により,事業所からの汚染に基づく国内における公害問題はほぽ解決 したが,生活環境における有害物質の問題が深刻化している。政府は現在,これらに 対応すべく,様々な方面から対策を練っているが,むしろ科学技術,特に新規機能性 材料の面からも,汚染問題に対応した科学技術を発展させる必要にせまられている。

  本申請者はこれらの現状を鑑みて,有害物質に対する環境浄化・環境修復技術に幅 広く興味を抱き,研究を行ってきた。そこで,新規ナノ素材であるカーポンナノチュ ー ブ(CNTs)お よび 吸 着場を内 包したポ リウレタ ンフオーム 複合材料(PUCF)に着 目 し , そ れ ぞ れ の 特 性 を 活 か し た 汚 染 除 去 素 材 の 開 発 を 目 指 し た 。   本論 文におけ る第2章で は,高結晶 性CNTsの親和 性を利用 した芳香 族VOCsの吸 着 除 去 につ い て述 ぺ る 。CNTsは 単 層CNTs (SWCNTs)およ び 多層CNTs (MWCNTs) に分類されている。CNTsの表面は,sp2混成軌道から成る六員環の連なったハ二カム 状の構造を持っためCNTsは芳香族化合物と強く結合する。この性質を利用したCNTs による芳香族化合物の吸着研究は多く報告されているが,吸着メカニズムに関する知 見は今まで無かった。本研究にいては,化学的気相成長法(いゅ法),具体的には触 媒前駆体であるフェロセンとトルエンとを反応容器に入れ,水素を通じながら1200℃ で 反 応 さ せ てas‑grownのSWCNTsとMWCNTsを 得 た 。as‑grown CNTsに は ア モ ルフ ァスがCNT結晶の外皮にあるため,それを更に高純度アルゴン雰囲気中2600℃ で 30分 反 応 さ せ る 事 に よ っ て ア モ ル フ ァ ス を 除 き , 高 結 晶 度MWCNTs (HC‑MWCNTs)を 得た 。 こ れら3種 類 のCNTsを そ れ ぞれ 充 填し た 吸 着カ ー トリ ッ ジを作製し,23種VOCsを含む気体をモデルサンプルとして用いて,吸着実験行った。

そ の 結果 ,MWCNTsは 芳 香族 化 合物 を 選 択的 に 吸 着し,特 にHC‑MWCNTsの芳香 族 選択性及び吸着量の大きさが顕著に現れた。また,選択性の順番は,p‑ジク口口ベン ゼン>D.キシレン>m‑pヰシレン>トルエン>ベンゼンであり,この選択性をフロン テイ ア軌道理 論を用い て考察した 。フ口ンテイア軌道の相互作用は,それぞれの LUMO及 びHOMOの エ ネル ギー準位 の差が小 さい組み 合わせが, より安定 な反応中 間 体 を 形成 す る。 即 ち ,LUMOの エ ネル ギ ー が小 さ い芳 香 族VOCsはCNTsの 兀 電 子を受け取り易いため,CNTsへ高選択的に吸着されると予測された。更に,高結晶 性 単 層カ ー ボン ナ ノチ ューブを 用いて同 様の検討を 行った。SWCNTsはMWCNTsと 比較 すると, 構造がシ ンプルであ り,理論計算や実験結果によって,MWCNTsとよ り も 遙か に 多く の 物性 情報が報 告されて いる。理論 計算によ るSWCNTsのHOMOは 約‑5.0〜‐3.4 eVであり,本研究で用いた2nmのSWCN′rsのバンドギャップは0.5 eV で あ る 。 ゆ え に ,SWCNTsのHOMOとVOCsのLUMOが 相 互 作 用 す る と 予 測 し て

‑ 206

(2)

解 析 を 行 っ た 結 果 , 実 験 的 に 得 ら れ た 選 択 性 と よ く 一 致 し た 。   第3章には,ポリウレタン・アルギン酸複合発泡体を用いた鉛(II)イオンの選択吸 着について述べる。アルギン酸はD.マンヌロン酸とL.グルロン酸が1,4結合した高分 子であり,そのナトリウム塩水溶液は2価陽イオンによって錯形成し,高分子のゲル を形成する報告例は,多岐に渡るイオンに対して報告されてきた。特に,カルシウム やバリウムと架橋されたピーズを用いた研究報告が多い。しかし,これらは機械的強 度が弱く,乾燥後の利用は難しい等の問題点があった。それゆえ,機械的強度を増す ためにセルロースをはじめ,様々な複合材料に組み込まれてきた。本研究においては,

R‑NCOの官能基を持っイソシアネートをあらかじめポリオールで変性・高分子量化さ れたプレポ1」マーとアルギン酸ナトリウム水溶液をハンドミキサーで撹拌する事によ っ て反 応させることによって,機械強度および安定性が共に高いALG/PUCFを作製 することができた。更に,PUFに内包されたアルギン酸量を測ったところ,反応もし くは水洗浄による損失が見られなかった。ALG/PUCFを用いた吸着実験を行った結果,

モ デ ル イ オ ン に 対 す る 結 合 性 を 示 唆 す る 親 和 定 数 は ,Pb2+>Cd2+>Ca2+ 冫 C02+>Mn2+>Mg2+となった。また,Pb2+吸着後のALG/PUCFをェネルギー分散型X線 分 光 法(EDS)に て 分 析 を 行 っ た と こ ろ , 鉛 特 有 の ピ ー ク が 確 認 さ れ た 。   第4章には,二重螺旋構造を保持したDNA‑ポリウレタンフオーム複合材料の開発 に つい て述 べる 。DNA‑PUCFの合 成は ,ALG/PUCF同 様に 行い ,著 しく機械的強度 の 強 いDNA吸 着 素 材 を 得 た 。 こ の と き ,1%DNA水 溶 液 か ら 作 製 し たDNA‑PUCF に 含ま れるDNA量 は, 約0.6%で あっ た。DNAには,塩基対間に平面構造を持つ有 機物を平行挿入するインターカレーションという特異的な吸着作用がある。PUFに内 包されたDNAの二重螺旋構造が保持されている事を,インターカレーションの指標 物 質で もあ る臭 化エチ ジウ ム(EtBr)を用 いて 確認 した 。そ の結 果,DNA‑PUCFに よって,インターカレーションによる吸着が可能であることが示唆された。更に,銀 イオンの吸着実験を行った結果,カドミウム,銅及びマンガンと比較しても,5倍以 上の吸着量を得ると共に,化学量論的な考察によってもDNA構造が保持されている 可能性が高い。

  本研究では,CNTs,アルギン酸およびDNAの特性を最大限に活かした吸着材料を 開発した。具体的には,CNTsを吸着材に用いた吸着における芳香族化合物の吸着に 対する選択性を論じることによって,新規ナノ炭素素材の環境分野への応用について の可能性を追求した。また,PUFに機械的強度の弱い吸着剤の特性が保持されたまま に内包される特徴を生かし,アルギン酸及びDNAを内包させた新規吸着素材を開拓 した。本研究で得られた知見と成果は,環境分析および環境浄化に貢献できる新規ナ ノ材料の開発・利用法に応用可能である。即ち,利用が困難な素材を安易かつ有効利 用可能とすることは,新規環境浄化材料の開拓に大いに貢献するものであり,更には,

環境科学に大きく寄与するものであると確信する。

207

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

環境汚染物質の除去を指向した機能性素材の開発

  

かつて の我が 国は鉱工 業・産 業技術の 発達と共 に,水 質,大気 及び土壌において甚大な環 境汚染 が発生 いた。そ れに対し て政府 が様々な 法を制 定し,対 策を講じたことによって,環 境への 負荷は 最低限に 抑えられ つっあ る。様々 な施策 や,環境 汚染防止技術の発達により,

事業所 からの 汚染に基 づく国内 におけ る公害問 題はほ ぼ解決し たが,生活環境における有害 物質の 問題が 深刻化し ている。 政府は 現在,こ れらに 対応すべ く,様々な方面から対策を練 ってい るが, むしろ科 学技術, 特に新 規機能性 材料の 面からも ,汚染問題に対応した科学技 術を発展させる必要にせまられている。

  

本 研 究 は, 新 規 ナノ 素 材 であ る カ ー ボン ナ ノ チュ ー ブ

(CNTs)

お よ び吸 着 場 を内 包 した ポ リウ レ タ ンフ オ ー ム複 合 材 料(PUCF)に 着 目し , そ 捫ぞ わ の 特陸 を 活 かし た 汚 染除 去素 材の開発を行った。

  

学 位 論 文 に お け る 第

2

章 で は, 高 結 晶性

CNTs

の 親 和性 を 利 用し た 芳 香族

VOCs

の 吸 着 除 去 に つ い て 述 べ る 。

CNTs

は 単 層

CNTs (SWCNTs)

お よ び 渉 層

CNTs (MWCNTs)

に 分 類 さ れて い る 。CNTsの 表 面 は,

sp2

混成 軌 道 から 成 る 六員 環 の連なっ たハ二 カム状の 構造を 持 った め

CNTs

は 芳香 族 化 合物 と 強く結合 する。こ の性質 を利用し たCNTsによ る芳香族 化合 物の吸 着研究 は多く報 告されて いるが ,吸着メ カニズ ムに関す る知見は今まで無かった。本 研 究に い て は, 化 学 的気 相 成 長法

(CVD

法 ),具体 的には 触媒前駆 体であ るフ工口 センと ト ル エン と を 反応 容 器 に入 れ 水 素を 通 じ な がら

1200

℃ で 反応 さ せ てas‑grownの

SW

)NTs

MWCNTs

を 得 た 。

As‑grown CNTs

に は ア モ ル フ ァ ス が

CNT

結 晶 の 外 皮 に あ る た め , そ れ を更に 高純度 アルゴン 雰囲気中

2600

℃で30分 反応さ せる事に よって アモルファスを除き,高 結 晶 度

MWCNTs (HC‑MWCNTs)

を 得 た 。 こ れ ら

3

種 類 の

CNTs

を そ れ ぞ ゎ 充 填 し た 吸 着 カ ート リ ッ ジを 作 製 し,

23

種VOCsを含む気 体をモ デルサン プルとし て用い て,吸着 実験行 っ た 。 そ の 結 果 ,

MWCNTs

は 芳 香 族 化 合 物 を 選 択 的 に 吸 着 し , 特 に

HC‑MWCNTs

の 芳 香 族 選択Jl生 及び吸 着量の大きさが顕著に現れた。また,選択性の順番は,p‑ジク口口ベンゼン>

D

・キシレン>皿心 .キシレン>トルエン>ベンゼンであり,この選択性をフ口ンティア勃道理

208

志 夫

明 逸

文 信

克 俊

(4)

論 を 用 い て 考 察 し た 。 フ 口 ン テ イ ア 軌 道 の 相 互 作 用 は , そ れ ぞ れ の

LUMO

及 び

XOMO

の エ ネ ル ギー 準 位 の 差が 小 さ い組 み 合 わせ が , より 安 定 な反 応 中 間体 を形 成する。 即ち,

LUMO

の エ ネ ル ギ ー が 小 さ い 芳 香 族

VOCs

CNTs

の 兀 電 子を 受 け 取り 易 い た め,

CNTs

へ 高 選択 的 に 吸 着さ れ ると 予測され た。更 に,高結 晶性単層 カーポ ンナノチ ューブ を用いて 同様の 検討 を 行 っ た 。

SWCNTs

MWCNTs

と 比 較 す る と , 構 造 が シ ン プ ル で あ り , 理 論 計 算 や 実 験 結 果 に よ っ て ,MWCNTsと よ りも 遙 か に多 く の 物性 情 報 が報 告 さ れて い る 。 理論 計 算 によ る

S WCNTs

HOMO

は 約 ・

5

O

〜 .

3

4eV

で あ り , 本 研 究 で 用 い た

2nm

SWCNTs

の バ ン ド ギ ャ ッ プ は

0.5 eV

で あ る 。 ゆ え に ,

SWCNTs

HOMO

VOCs

LUMO

が 相 互 作 用 す る と 予 測して解析を行った結果,実験的に得られた選択陸とよく一致した。

  

学位 論 文 第3章には, ポリウ レタン・ アルギン 酸複合 発泡体を 用いた 鉛(H)イオン の選択 吸着 につい て述べる 。アル ギン酸はD‑マンヌ口ン酸とL一グル口ン酸が1,

4

結合した高分子であ り , その ナ ト リ ウム 塩 水 溶液 は

2

価陽 イ オンによ って錯 形成し, 高分子 のゲルを 形成す る報 告 例 は, 匆 岐に 渡るイオ ンに対 して報告 されてき た。特 に,カル シウム やパリウ ムと架 橋さ れ た ビー ズ を用 いた研究 報告が 多い。し かし,こ れらは 機械的強 度が弱 く,乾燥 後の利 用は 難し しゝ等 の問題点 があっ た。それ ゆえ, 機械的強 度を増すためにセル口ースをはじめ,様々 な 複 合材 料 に 組 み込 ま れ てき た 。 本研 究に おいて は,R‑NCOの官能 基を持っ イソシア ネート を あ らか じ めポ リオール で変性 ・高分子 量化され たプレ ポリマー とアル ギン酸ナ トリウ ム水 溶 液 をハ ン ドミ キサーで 撹拌す る事によ って反応 させる ことによ って, 機械強度 および 安定 性 が 共 に 高 い

ALG/PUCF

を 作 製 す る こ と が で き た 。 更 に ,

PUF

に 内 包さ れ た アル ギ ン 酸量 を 測 った と こ ろ ,反 応 も しく は 水 洗浄 に よ る損 失 が 見ら れ な かっ た。

ALG/PUCF

を用い た吸 着実験を行った結果,モデルイオンに対する結合性を示唆する親和定数は,Pb2、′

C

12

十冫Ca2 り 曲 め,

Mn2

Mg

計 とな っ た 。ま た ,

P

b2

十吸 着 後 のALG/

PUCF

をェネル ギー分 散型X線分 光法(EDS)にて分析を行ったところ,鉛特有のピークが確認された。

  

学位 第

4

章 には , 二 重螺 旋 構 造を 保 持し た

DN

ハ ポリウレ タンフ オーム複 合材料の 開発に つ し ゝ て 述 べ る 。

DN

PUCF

の 合 成 は ,

AI

PUCF

同 様 に 行 い , 著 しく 機 械 的強 度 の 強い

D NA

吸 着 素 材 を 得 た 。 こ の と き ,

1

DN

K

溶液 か ら 作製 し た

DN

A

HJCF

に含 ま れ るDNA量 は , 約O.

6

% であ っ た 。DNAには , 塩 基対間 に平面 構造を持 つ有機 物を平行 挿入する インタ ー カ レ ー シ ョン と い う 特異 的 な 吸着 作 用 があ る 。

PI

皿 に 内包 さ れ たDNAの 二重 螺 旋 構造 が 保 持 され て いる 事を,イ ンター カレーシ ョンの指 標物質 でもある 臭化エ チジウム (EtBr)を 用 し ゝて 確 認 し た。 そ の 結果 ,

DNAlPUCF

に よっ て , イン タ ー カ レーシ ョンによ る吸着 が可 能 で ある こ とが 示唆され た。更 に,銀イ オンの吸 着実験 を行った 結果, カドミウ ム,銅 及び マ ン ガン と 比 較 して も ,

5

倍 以 上 の吸 着 量 を得 る と 共に , 化 学量 論 的な考察 によって も

DNA

構造が保持されている可能性カ滴しゝ。

  

本研 究 で 得られ た知見と 成果は ,環境分 析およ び粟境浄 化に貢献 できる 新規ナノ 材料の 開 発 ・ 利用 法 に 応 用可 能 で ある 。 審 査委 員 一 同は , こ れら の 成 果を 高く 評価し, また研 究者

  

として誠実かつ熱心であり,.大学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者

  

が 博 士 鰯 謝 評 博 め の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

209

参照

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