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ア ポ ト ーシ ス 誘発

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 田 嶋 久 男

学 位 論 文 題 名

ア ポ ト ーシ ス 誘発 GAPDH の研究 : 遺伝子解析と抗痴呆薬の作用

学位論文内容の要旨

  アポトーシス(プログラムされた細胞死)は生理的な自 殺機構であり,RNA及び蛋白質のde novo合成が関与することが明らかとなっている.神経系においてアポトーシスは正常な分化に 必 須とされ,神経ネッ卜ワークの形成に不可欠の過程である.一方,正常なアポトーシス機構の 破 綻は癌・ウイルス感染・自己免疫疾患や神経変性疾患等の発症や病態進行に関わっている,グ リ セルアルデヒド‑3.リン酸脱水素酵素(GAPDH)はハウスキーピング遺伝子として知られる解 糖 酵 素で ある .こ れま で, 他の 蛋白 質との相互作 用など非解糖酵素としてのGAPDHに関する 少 数の報告が存在するが,中でも注目されるのはアポトーシスとの関連性である.近年,種々の 神 経 細 胞 死 モ デ ル 系 に お い てGAPDH mRNA発 現 が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ , 過 発 現 し た GAPDH蛋 白質 は主 に核 分画 に存 在 する こと が示 唆さ れた .し かし ,GAPDH発現 がアポトーシ ス を直接誘発するのか,未だ不明であった,

  本 研究 では ,GAPDHとア ポト ー シス との 関連 性に 着目 し,GAPDH発現がアポ トーシス誘発 の 直接の原因であるのか,アポトーシスの結果の現象であるのかを明らかにする目的で研究を進 め , 以 下 の 新 知 見 を 得 た . 併 せ て ,GAPDHを 標 的 と す る 創 薬 応用 の可 能性 を提 案し た.

L GAPDH過発現!三よ歪Z耋ヒー、:と丕

  大脳皮質由来神経細胞の5‑HT誘発細胞死は,de novo合成阻害薬で抑制されないこと,また,

ク ロマチン構造変化を起こさずに細胞質に空胞を生じることから,この細胞死はネクローシスで あ る こ と を 見 出 し た , こ の 時GAPDHの 過発 現は 観察 され ず,GAPDHアン チセ ンス オリ ゴヌ ク レオチドの導入によっても細胞死を抑制できなかったこ とから,GAPDHはアポトーシス特異 的 に 過発 現す ると 考え られ た. 本研 究では,アポ トーシス細胞で過発現するGAPDHのクロー ニ ン グを 試み ,そ の塩 基配 列か らヒ ト解糖酵素GAPDHと同一遺伝子であるであ ることを証明 し た(GenBank Acc. No.; AB017801).

  次 に ,GAPDH発 現 が ア ポ ト ー シ ス を 直 接 的 に 誘 導 す る の か を評 価し た,GAPDH cDNAを COS‑7細 胞へ 導入し,GAPDH自身が直接的にアポトーシスを誘発するこ,とを示 した,強制発 現 さ せたGAPDHの みな らず ,初 代 培養 神経 細胞 のア ポト ーシ スに おいても過発現したGAPDH

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は単量 体で核 ヘ移行し ており,GAPDH過 発現とそ れに続 く核移行 がアポ トーシス の初期過程 であることを示した.

2. GAPDH蛋白質cD拡整‑r及埜凝簒佐形底!三閏担歪領域

  過 発 現GAPDHの細 胞 内 局在 を 精 査す る た めに , 緑 色螢 光 蛋 白 質(GFP)とGAPDHの融 合 蛋 白質を 発現さ せたとこ ろ,細胞 質や核 に凝集体 を形成 すること を発見 した.種 々のGAPDH欠 失変異 体融合 蛋白質の 発現実験 からGAPDH蛋白質 の機能 ドメイン を解析 した結果 ,核移行と 凝集体 形成の 責任領域 は別であ って,62‑188が核移行に,1‑267が核凝集体形成に機能してお り,GAPDHによ る凝集体 形成と 高率な核 移行が細 胞死を 誘導することを示した.さらにGAPDH に結合 する薬 物の報告 から,ア ポトー シス初期 に見ら れるGAPDH核移行 を指標に 創薬応用で きる可 能性を 提案した .解糖酵 素GAPDHはホモ四 量体で 機能し, その活 性中心で ある149Cys と基質 結合部 位を含む149‑333が 解糖活性に重要とされるが,解糖活性と核移行・凝集体形成 は直接的には連動していなぃと考えられる,

3. GAPDH遺伝壬Z里垂ニ空ニ堕鰹蚯と拭癒墨墓Q佳用

  GAPDH過 発 現を 抑 制す るアン チセンス オリゴ ヌクレオ チドは ,アポト ーシス過 程のGAPDH mRNA過発現 部分を 抑制する が,basal以下には下げないことから,アポトーシス過程で活性化 さ れるGAPDH遺 伝子 プ ロ モー タ ー の 存在 を 考 えた . グ ノム ウ ォ ーキ ン グ によ ってGAPDHプ ロモー ター配 列のクロ ーニング に成功 した(Genbank Acc. No.; AB047299&AB 047300).種々 の長さ のプロモーターを連結したレポーターアッセイから,AB047299の翻訳開始点から上流.

154〜‑84にプロモーター活性を担うコア領域を見出した,コリンエステラ,ーゼ阻害作用を有する タクリンやドネペジルは用量に応じてコア領域の活性化を抑え,抗痴呆作用の発現に貢献してい る可能 性が考 えられた .同時に ,GAPDHプロモーターを標的とする創薬応用から新規の抗痴呆 薬開発が期待される.

生社経変性痣患とGAPDH堕閏連性

  パーキンソン病におけるレヴィ小体はQーシヌクレインが不溶性に凝集したものであり,蛋白 質のmisfoldingや凝集体形成は神経変性疾患の発症メカニズムのーっとされる.Q―シヌクレイ ンとGAPDHが共 発現する とレヴ ィ小体の 形成が促 進した .このレ ヴィ小 体様凝集 体はユビキ チン/プロテアソーム経路にコミットしており,患者脳で認めるレヴィ小体と同じく,amyloid 様の凝集体であることを証明した,

  また,マシャドージョセフ病患者の病態部位である橋核やアルツハイマー病患者の前頭前野の 神経細 胞核にGAPDH免疫 陽性シ グナルを 確認した ,病因 蛋白質が 異なる 疾病にも 拘らず,神 経 細胞 核 に アポ ト ー シス を 誘 発す るGAPDHの 陽性 シ グ ナル が 存 在す る こ とはGAPDHと これ ら神経変性疾患との関連性を裏付けるものと考えられる.

  上記 の 通 り, 本 研 究で はGAPDHと アポ ト ー シス に 着 目した研 究を行 い,GAPDH過発現 と それに続く核移行がアポトーシスを直接的に誘発することを示した.その際,活性化するプロモ     ―266―

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ーター領域を同定し,また,GAPDHによる凝集体の発見から神経変性疾患との関連性を証明し てきた.以上の事実から,過発現と核移行を指標に,GAPDHが抗痴呆薬の創薬標的になること を提示した,

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学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

野 村 靖 幸 有 賀 寛 芳 大 熊 康 修 平    敬 宏

     学 位 論 文 題 名

ア ポ ト ー シ ス 誘 発 GAPDH の 研 究 : 遺伝子解析と抗痴呆薬の作用

  グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド‑3‑リ ン 酸 脱 水 素 酵 素(GAPDH)は ハ ウ ス キ ー ピ ン グ 遺 伝 子 と し て 知 ら れ る 解 糖 酵 素 で あ り , ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 実 験の 内 標 と し て 多 用 さ れ て い る . こ れ ま で ,GAPDHと 神 経 細 胞 ア ポ ト ー シ ス と の 関 連 性 , 特 に , ア ポ ト ー シ ス 過 程 でGAPDH発 現 が 上 昇 す る こ と は 報 告 さ れ て い た が ,GAPDHが ア ポ ト ー シ ス を 直 接 誘 発 す る の か 不 明 で あ っ た . 今 回 , 申 請 者 は , ア ポ ト ー シ ス シ グ ナ ル が な く て も ,GAPDHを 過 発 現 さ せ る こ と に よ っ て ア ポ ト ー シ ス を 誘 発 で き る こ と を 証 明 し た . こ れ ま で のGAPDH と 神 経 細 胞 ア ポ ト ー シ ス の 研 究 は 初 代 培 養 神 経 細 胞 を 用 い た 細 胞 生 物学 的 な 解 析 が 主 で あ っ た が , 非 神 経 細 胞 を 用 い た 強 制 発 現 系 を 逆 用 し て ア ポト ー シ ス で あ る こ と の 証 明 と 高 感 度 の ア ポ ト ー シ ス 定 量 解 析 に 成 功 し て い る. 過 発 現 し たGAPDHが 単 量 体 で 速 や か に 核 移 行 す る こ と を 生 理 的 な ア ポ ト ー シ ス が 発 生 す る 初 代 培 養 神 経 細 胞 を 用 い た 系 に お い て 見 出 し て い る . また 申 請 者 は ,Green fluorescence protein (GFP)を 用 い たGAPDH融 合 蛋 白 質 が 凝 集 体 を 形 成 す る こ と を 発 見 す る と と も に ,GAPDH核 移 行 ・ 凝 集 体 形 成 の 責 任 領 域 を 見 出 し た . 一 方 , ア ポ ト ー シ ス シ グ ナ ル に 応 じ て 活 性 化 す るGAPDH 遺 伝 子 プ ロ モ ー タ ー を 単 離 し , 既 知 転 写 因 子 の 応 答 配 列 が な い こ と を報 告 し た .

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  GAPDH の病態生理学的な役割を明らかにするために,申請者はマシャド ージョセフ病患者の橋核やアルツハイマー病患者の前前頭皮質に存在する神 経細 胞の GAPDH 免 疫染 色性を 検討し,これらの領域の神経細胞核が陽性 であることを示した.病因蛋白質が異なる疾患の神経細胞核に共通して GAPDH が 存在 して おり ,これ ら神 経変 性疾 患の発 症や 病態 進展にGAPDH が関連している可能性を示唆した.またパーキンソン病ではa ―シヌクレイ ンを成分とする凝集体(レヴィ小体)が見られるが,申請者は過発現モデル 系を用いて,Q ―シヌクレイン単独の発現では生じないがGAPDH をともに 発現させたときにレヴィ小体に似た凝集体が初めて形成されることを見い出 した,変異体のみならず野生型Q −シヌクレインとGAPDH の共発現によっ ても凝集体が形成され,病因が不明である弧発型パーキンソン病に対する GAPDH の関わりを示した.

   さ ら に ,申 請 者 は GAPDH 核 移 行 や GAPDH 遺 伝 子 プ ロ モー ター に作 用 する CGP3466 やド ネベ ジル等 の薬 物を 見い 出した こと から ,GAPDH プロ モー ター の活 性化や GAPDH 核 移行の阻害は創薬研究に応用できることを 提示した.実際,臨床で使用される抗痴呆薬がプロモーター活性化を抑制し て お り , 新 規 の 抗 痴 呆 薬 の 探 索 に 有 用 で あ る こ と を 示 し て い る,

   以 上の 通り ,申請 者は GAPDH とアポトーシスに着目した細胞・分子生 物学的な研究を行い,GAPDH の過発現とそれに続く核移行がアポトーシス を誘 発す るこ とを証 明し た.その際に活性化するGAPDH 遺伝子のプロモ ーターの同定,GAPDH による凝集体の発見から神経変性疾患との関連性を     j   一

示し,GAPDH 過発現と核移行を指標にした創薬研究の方法論を提示してお

り,博士(薬学)の学位を受領するに十分な資質を有するものであることを

認めた,

参照

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