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可視光応答型光触媒による室内空気質の改善効果に関する研究

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原稿受理 平成 31 年 2 月 28 日 Received February 28,2019 研究論文

可視光応答型光触媒による室内空気質の改善効果に関する研究

-前橋市複合施設における長期実測調査の分析-

藤澤星

,三田村輝章

**

Field Survey for the Improvement Effect of Indoor Air Quality

by Visible Light Responsive Photocatalyst

-Analysis of long-term Measurement Result in the Complex Facility-

Sei Fujisawa

*

, Teruaki Mitamura

**

This study is field survey to make clear the improvement effect of Indoor Air Quality by Visible Light Responsive Photocatalyst in a real environment condition, which is in a lobby area of the complex operated by Maebashi City. Measurement of IAQ is basically to compare some indicators, for example concentration of VOC and fungi in the air, ATP check

on the wall, between with VLRP in 9th floor and without it in the 8th floor. As a

result, decreasing concentration of VOC and fungi in the air et al. by VLRP effect for a day was not confirmed. However, Mann-Whitney U test showed that concentration of formaldehyde and acetaldehyde between groups which are with VLRP and without it are statistically significant, and RLU data on the wall by ATP check as well. This shows that other factor, for example air ventilation and temperature, would more dominant IAQ than VLRP effect, but RLU data on the wall with VLPR is evidence about the improvement effect by VLRP effect. So this analytical finding suggests that an analysis in long term would be better than it in short term about improvement effect generated by VLRP.

Key words: Photocatalyst, Field Survey, VOC, ATP Check, Air Quality 1 はじめに 可視光応答型光触媒は,その酸化分解力による有機物 分解効果が注目され,建築分野においても活用が進めら れている1)2).特に可視光応答型光触媒の「抗菌・抗ウィ ルス効果」は感染症リスク低減などへの適用・応用を目 的とした研究,現場への適用が進められてきたが,性能 や効果が判りにくいという問題は解消されていない. そのような光触媒効果や性能の不明瞭さを背景に,光 触媒工業会による「PIAJ 認証制度3)」によって様々な効 果が数値化され,光触媒製品の性能を比較することがで きるようになった.しかし,その測定方法はあくまでも 実験室での高濃度・高照度環境下における性能評価であ り,それを低濃度・低照度である実環境に適用した場合 の性能を保証する訳ではなく,更に実環境において光触 媒効果を長期間に渡って実測調査した研究事例4)は少な い. 以上より,本研究は実空間における可視光応答型光触 媒による室内空気質の改善効果を定量化することを目的 として,通年で不特定多数の利用者が滞在する前橋市内 の複合施設において,約 2 年間(2014 年度~2015 年度) の長期的な定点測定を実施し,その結果を分析した. 2 実測調査の概要 2・1 複合施設と測定場所の概要 測定を実施した施設は,群馬県前橋市にある市営の複 合施設である.建物は鉄筋鉄骨コンクリート構造及び鉄 骨構造で,地上 12 階・地下 1 階建てである.1992 年に 開館して,建築後 27 年が経過しており,2015 年には設 備の老朽化を背景とした「ESCO(Energy Service Company)事業」を開始し,空調熱源などの改修・高効 率化が図られている. 筆者はこの市営複合施設の環境改善(主にタバコ臭) を目的として,2013 年 11 月に 9 階ロビーの天井・壁面 に可視光応答型光触媒5)を施工した.採用した光触媒は

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Table1 Measurement Date and Conditions. Date Air Conditioning Mesurement Timing Sunshine hour* 1st 2014/8/29 1.7h 2nd 2014/9/8 1.6h 3rd 2014/10/25 9.6h 4th 2014/11/27 5.0h 5th 2015/2/20 7.3h 6th 2015/3/30 11.3h 7th 2016/1/22 ON 9.4h

*Japan Meteorological Agency

ON Morning Daytime Evening OFF Morning Daytime 酸化チタンのみで構成されており,紫外線域に加えて蛍 光灯や LED からの可視光域(波長 400nm~500nm)で の反応が強化されているため,室内環境においても高い 光触媒効果を発揮することができる. Fig.1 に,9 階ロビーの平面図・光触媒施工場所などを 示す.光触媒は西側と東側の壁面(西側:20.30m2,東 側:19.65m2)および天井面(77.19m2)に施工してい る.宴会場・会議室がある 8・9 階ロビーは南面にガラ ス窓があり,天井高に違い(8 階 4m,9 階 3m)はある ものの,構造はほぼ似通っている. 2・2 各測定方法 2・2・1 測定概要 光触媒施工済の 9 階ロビーと光触媒未施工の 8 階ロビ ーの各測定データを比較・分析することによって,光触 媒による空気室改善効果を定量化する.Table1 に測定時 期・条件を示す.なお,第 6 回(2015 年 3 月 30 日)か ら第 7 回(2016 年 1 月 22 日)の間に測定を実施してい ないのは,前述の ESCO 事業で 8・9 階ロビーにおいて も工事が実施されており,測定結果への影響を考慮して 測定を控えていたためである. 測定項目は,室内温湿度,壁面・天井面の照度・紫外 線量,化学汚染物質濃度(カルボニル化合物,VOC), 浮 遊 真 菌 ・ 総 バ ク テ リ ア 濃 度 , ATP ( Adenosine Triphosphate)拭き取り検査,パネルによる臭気測定で ある. 2・2・2 温湿度・照度測定 室内温湿度は,小型温湿度データロガー(T&D 製, TR-72U)を床上 1.0m 付近と空調の吹出口に設置した. 照度・紫外線量は,小型照度・紫外線量データロガー (T&D 製, TR-74Ui)を窓面から 2.0m 付近における 壁面(床高さ 1.5m)と天井面に機器を設置して,いず れも 15 分間隔でデータを記録する. 2・2・3 各空気質測定 化学汚染物質濃度,浮遊真菌・バクテリア濃度の測定 は,2014 年 8 月~2015 年 3 月の間に合計 6 回実施し, 第 1 回~第 3 回では,朝(7 時頃),昼(11 時頃),夕(15 時頃)の 3~4 時間間隔でそれぞれ 3 回,第 4 回以降で は,朝(9~10 時頃),昼(13~14 時頃)のそれぞれ 2 回実施した.1 日の中で複数回測定したのは,時間の経 過に伴い,朝から夕方に掛けて,光触媒効果によって空 気質指標が改善するという仮説を検証するためである. 化学汚染物質濃度は,カルボニル化合物は捕集剤とし て DNPH カ ー ト リ ッ ジ ( ジ ー エ ル サ イ エ ン ス 製 , InertSep mini AERO)を,VOC は活性炭チューブ(柴 田科学製,チャコールチューブ・スタンダード型)を用 いて,ミニポンプ(柴田科学製,MP-Σ30)により流量 0.5ℓ/min で 60 分間空気の捕集を行い,捕集剤に吸着し た化学物質濃度を分析する.浮遊真菌濃度は PDA 培地 を用い,エアーサンプラー(Merck 製,MAS-100Eco) により 50ℓ/min で 1 分間空気を培地に吹き付けた後,イ ンキュベーターにて 25℃の環境下で 5 日間培養後,コロ ニー数をカウントする.総バクテリア濃度はミニポンプ (柴田科学製,MP-Σ500N)によりポアサイズ 0.45µm のメンブレンフィルタ(柴田科学製,マイクロチェック Ⅱ)に流量 4ℓ/min で 40 分間空気をろ過させた後,液体 培地(柴田科学製,総バクテリア用)を注入し,インキ ュベーターにて 33℃の環境下で 2 日間培養後に,コロニ ー数をカウントする. 2・2・4 ATP 拭き取り検査 光触媒は有機物である ATP を分解するため,壁面の ATP 量は光触媒有無によって影響を受けると考えられ る.ATP 拭き取り検査は,ATP の発光量を示す RLU (Relative Light Unit)という単位で ATP 量を表すた め,RLU 値が大きいことは生物のエネルギー源となる ATP 量が大きいことを示す.現在は感染症や食中毒予防 として,食品加工工場や病院などでの洗浄や手洗い教育 ツールとして応用されることが一般的であるが,建築分 野においては清掃前後の表面汚染度調査研究 6)にも利用 されている. 2013 年 11 月の施工直後から 2018 年 12 月まで,ルミ テスターPD-20(キッコーマンバイオケミファ製)によ るロビー壁面に対する ATP 拭き取り検査を定期的に実 施している.9 階ロビーは四隅(南東,南西,北東,北 西)の合計 4 箇所,8 階ロビーは南側ロビー四隅(南東, 南西,北東,北西)と西側ロビー2 点(南,北)の合計 6 箇所を測定ポイントとしているが,それぞれのポイン トで拭き取る場所は毎回完全に一致していない.また, EV Banquet Hall Cloak room EV EV EV 8,300 7,500 9 ,3 0 0 2 ,0 0 0

N

Stairway Curtain Glass Window Coating Photocatalyst on Wall and Ceiling Lobby Area

(3)

全ての測定作業は筆者が実施している. なお,2015 年 7 月から 2016 年 12 月までは 1 回/月の 頻度で測定を実施していたが,2016 年以降は 1 回/2~3 ヶ月に測定頻度を下げている. 2・2・5 パネルによる臭気測定 人間が感じる臭いを定量化するために,日本建築学会 規準 7)に基づく被験者(パネル)実験を,2016 年 2 月 16 日に 1 回だけ行った.パネルは前橋工科大学の学生 12 名で,男女比は 5:1 である.なお,学会規準において はパネルの基本要件を定めているが,あくまでも試験的 な実施という位置付けのため,適切なパネル選定・訓練 は行っていない. 評価方法は入室法とし,12 人のパネルを 2 班に分け, 午前(10 時~),午後(15 時~)の 2 回,8 階・9 階ロ ビーをそれぞれ交互に訪れた.各ロビーへは,1 階から エレベータを利用し,直接各階に入室した.評価尺度は 「6 段階臭気強度」と「9 段階快・不快強度」の両方と して,エレベータから入室後,ロビー中央にて回答用紙 に記入し,記入が終わるとエレベータにて退室した.な お,連続して 8・9 階を訪問・回答するのではなく,1 階ロビーにて 10 分間の休憩を挟むことで,バイアスを 回避した. ちなみに,「容認性」の回答も回収しているが,学会 基準ではパネル人数 60 人以上,検査回数 1 回が推奨さ れており,本研究ではその基準を満たしていないため, あくまでも参考データとして取り扱う. 3 測定結果と考察 3・1 壁面・天井照度 Fig.2 に,9 階の東西壁面と天井の平均照度を示す.本 項においては,10:00~17:45 までの 8 時間分のデータを 利用している.なお,光触媒工業会では,様々な部屋や 空間の代表的な照度をガイドライン 8)として設定してい る.このガイドラインでは,壁面や天井面などの間接的 に証明があたる場所として 200lx が設定してあり,より 高性能で弱い光でも効果を発揮する光触媒製品のターゲ ット照度としている. Fig.2 より,平均値としては第 2 回の天井面以外は 200lx を超えており,光触媒工業会のターゲット照度を 満たしている.また,東西面と比較すると,天井面の照 度 が 低 い こ と が 判 る . な お , 4 回 目 の 東 面 平 均 値 が 3,276lx と高くなっており,センサーに直射日光が当た っていた時間があったのではないかと推測される. また,Fig.3 に各回の照度分布を示す.上段が東面・ 中段が西面,下段が天井面である.Fig.3 より,2 回目は 曇っているために照度が低い時間が多いが,それ以外に ついてはガイドライン標準照度である 1,000lx を超える 時間帯が多く,光触媒反応に十分な照度が確保できてい ることが判る. 3・2 化学汚染物質濃度 Fig.4 に化学汚染物質濃度(カルボニル化合物,VOC) の測定結果を示す.上段が 8 階(光触媒未施工)で,下 段が 9 階(光触媒施工済)の結果である.Fig.4 より, 光触媒の有無によって,各物質の合計値においては,明 確な濃度差や変化を確認することはできない. このため,個別の化学汚染物質に着目し,厚生労働省 による指針値が設けられ,比較的高い濃度が検出された 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 1st 2014/8/29 2nd 2014/9/8 3rd 2014/10/25 4th 2014/11/27 5th 2015/2/20 6th 2015/3/30 A v e . i ll u m in a n ce [l x ]

East Wall West Wall Ceiling 3,276

Fig.2 Average Illuminance in 9th Floor.

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 1st 2014/8/29 2nd 2014/9/8 3rd 2014/10/25 4th 2014/11/27 5th 2015/2/20 6th 2015/3/30 il lu m in an ce [ lx ] 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 il lu m in an ce [ lx ] 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 il lu m in a n ce [ lx ] Average Median 75% 25% Min Max East Wall West Wall Ceiling

Fig.3 Inter-Quartile Range of Illuminance

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0 50 100 150 200 250 300 0 50 100 150 200 250 300 R a ti o o f E a c h D e n s it y t o M o rn in g o n e [ % ] D e n si ty [µ g /m 3] Unidentified Aldehydes Ketone Alcohol s Ester Halogen

Terpenoid Aromatic Hydrocarbon

Aliphatic H ydrocarbon Ratio of Each Density to Morning One

0 50 100 150 200 250 300 0 50 100 150 200 250 300 M or n in g ・ i 7 :4 0 ・ j D a y ti m e ・ i 1 0 :5 5 ・ j E v en in g ・ i 1 5 :0 0 ・ j M or n in g ・ i 7 :1 8 ・ j D a y ti m e ・ i 1 1 :0 0 ・ j E v en in g ・ i 1 4 :4 4 ・ j M or n in g ・ i 7 :1 9 ・ j D a y ti m e ・ i 1 1 :0 2 ・ j E v en in g ・ i 1 5 :0 0 ・ j M or n in g ・ i 9 :0 3 ・ j D a y ti m e ・ i 1 2 :4 6 ・ j M or n in g ・ i 9 :3 4 ・ j D a y ti m e ・ i 1 3 :1 1 ・ j M or n in g ・ i 1 0 :3 6 ・ j D a y ti m e ・ i 1 4 :5 4 ・ j M or n in g ・ i 1 0 :2 1 ・ j D a y ti m e ・ i 1 5 :0 0 ・ j 1st (2014/8/29) 2nd (2014/9/8日) 3rd (2014/10/25) 4th (2014/11/27) 5th (2015/2/20) 6th (2015/3/30) 7th (2016/1/22) R a ti o of E a ch D en si ty t o M or n in g o n e [% ] D e n si ty [µ g /m 3 ] 393 329 WITH PC (9thFl.) WITHOUT PC (8thFl.)

Fig.4 Density of Chemical Substances with and without Photocatalyst.

0 5 10 15 20 25 WITHOUT PC WITH PC D en si ty o f F or m a ld eh y d e [µ g /m 3] Average Median 75% 25% Min Max P<0.05

Fig.5 Inter-Quartile Range of Density of Formaldehyde with and without photocatalyst.

0 5 10 15 20 25 WITHOUT PC WITH PC D en si ty o f A ce ta ld eh y d e [µ g /m 3] Average Median 75% 25% Min Max P<0.01

Fig.6 Inter-Quartile Range of Density of Acetaldehyde with and without Photocatalyst.

(5)

y = 1.39 x - 18.88 R² = 0.62 y = 0.57 x - 3.81 R² = 0.38 0 5 10 15 20 25 15 18 21 24 27 30 D e n si ty o f F o rm a ld eh y d e [µ g /m 3] Temprature [℃] Witout PC With PC

Fig.7 Scatter Graph of Density of Formaldehyde and Indoor Temperature

with and without Photocatalyst.

0 5 10 15 20 25 WITHOUT PC WITH PC D e n si ty o f A ce ta ld eh y d e [µ g /m 3] Average Median 75% 25% Min Max P<0.01

Fig.6 Inter-Quartile Range of Concentration of Acetaldehyde with and without Photocatalyst.

-0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 120 240 360 480 600 720 R a ri o o f I/ O D e n si ty o f fu n g i in t h e A ir [ µ g /m 3]

Density of Fungi in the Air Ratio of I/O

-0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 120 240 360 480 600 720 M or n in g ・ i 8 :0 0 ・ j D a y ti m e・ i 1 1 :3 0 ・ j E v en in g ・ i 1 5 :1 5 ・ j M or n in g ・ i 8 :1 5 ・ j D a y ti m e・ i 1 1 :0 8 ・ j E v en in g ・ i 1 5 :0 5 ・ j M or n in g ・ i 7 :2 5 ・ j D a y ti m e・ i 1 1 :0 0 ・ j E v en in g ・ i 1 5 :0 0 ・ j M or n in g ・ i 9 :1 2 ・ j D a y ti m e ・ i 1 2 :5 7 ・ j M or n in g ・ i 9 :5 5 ・ j D a y ti m e ・ i 1 3 :1 5 ・ j M or n in g ・ i 1 0 :4 2 ・ j D a y ti m e ・ i 1 5 :0 0 ・ j M or n in g ・ i 1 0 :3 9 ・ j D a y ti m e ・ i 1 5 :0 9 ・ j 1st (2014/8/29) (2014/9/8日)2nd (2014/10/25)3rd (2014/11/27)4th (2015/2/20)5th (2015/3/30)6th (2016/1/22)7th R a ri o of I /O D en si ty o f fu n g i i n t h e A ir [ µ g /m 3] 760 WITH PC (9thFl.) WITHOUT PC (8thFl.)

Fig.8 Density of Fungi in the Air with and without Photocatalyst. 4 種類の物質(ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド, トルエン,キシレン)と TVOC の濃度を,統計学的検定 によって分析することにした.各物質の全測定データを 光触媒あり(9 階ロビー)・なし(8 階ロビー)に分けて, それぞれの測定値群の有意差をマン・ホイットニーの U 検定によって検定した.その結果,ホルムアルデヒドは 5%有意,アセトアルデヒドは 1%有意であることが証明 された.Fig.5 にホルムアルデヒドのデータ分布図を, Fig.6 にアセトアルデヒドのデータ分布図を示す.Fig.5 と Fig.6 より,どちらも光触媒ありの方が光触媒なしよ りも平均値が低いことが判る.つまり,光触媒有無によ って濃度差が生じていると考えられる. しかし,揮発性物質である VOC 濃度は気温依存性が あるため,8・9 階ロビーの気温との関係を確認する必要 がある.気温と各濃度の相関係数を算出すると,ホルム アルデヒドは 8 階光触媒なし 0.79(R2 =0.62),9 階光触 媒あり 0.62(R2 =0.38)であり,アセトアルデヒドは 8 階光触媒なし 0.46(R2 =0.21),9 階光触媒あり△0.16(R2 =0.03)となり,ホルムアルデヒドの方が相関は高い. Fig.7 に,ホルムアルデヒドの 8・9 階の気温と濃度の散 布図を示す.Fig.7 より,近似直線の傾きは 8 階光触媒 なしの方が大きく,特に 25℃~27℃の濃度分布に差が生 じていることが判る.つまり,気温が高い状態において, 光触媒によってホルムアルデヒド揮発量が抑えられてい る可能性が示唆された. 3・3 浮遊真菌・総バクテリア濃度 Fig.8 に,浮遊真菌濃度の測定結果を示す.上段が 8

(6)

0 50 100 150 200 250 0 50 100 150 200 250 R a ti o of E a ch D en si ty to M or n in g on e [% ] D en si ty o f B a ct er ia in t h e A ir [ µ g/ m 3]

Density of Bacteria in the Air Ratio of Density to Morning one

0 50 100 150 200 250 0 50 100 150 200 250 Mo rn in g ( 8: 00 ) Da y ti me ( 11 : 30 ) Ev e ni ng ( 15 : 15 ) Mo rn in g ( 8: 15 ) Da y ti me ( 11 : 08 ) Ev e ni ng ( 15 : 05 ) Mo rn in g ( 7: 25 ) Da y ti me ( 11 : 00 ) Ev e ni ng ( 15 : 00 ) Mo rn in g ( 9: 12 ) Da y ti me ( 12 : 57 ) Mo rn in g ( 9: 55 ) Da y ti me ( 13 : 15 ) Mo r ni ng ( 10 : 42 ) Da y ti me ( 15 : 00 ) Mo r ni ng ( 10 : 39 ) Da y ti me ( 15 : 09 ) 1st (2014/8/29) 2nd (2014/9/8日) 3rd (2014/10/25) 4th (2014/11/27) 5th (2015/2/20) 6th (2015/3/30) 7th (2016/1/22) R a ti o of E a ch D en si ty to M or n in g on e [% ] D en si ty o f B a ct er ia in t h e A ir [ µ g/ m 3] WITH PC (9thFl.) WITHOUT PC (8thFl.)

Fig.9 Density of Bacteria in the Air with and without Photocatalyst. 階(光触媒未施工)で,下段が 9 階(光触媒施工済)の 結果である.なお,I/O 比は外気中の真菌濃度に対する 比率であり,1.0 が外気と等しいことを示す.Fig.8 より, 8・9 階共に同様の濃度・I/O 比変化となることが多く, 光触媒有無によって明確な濃度差を確認することはでき ない.浮遊真菌濃度は外気導入や換気状況によって影響 を受けると考えられるため,外気の浮遊真菌濃度との相 関係数を算出してみたが,8 階 0.48(R2 =0.23),9 階 0.75 (R2 =0.56)と,光触媒施工済である 9 階の相関関係の 方が強い結果が得られた.また,化学汚染物質と同様に, マン・ホイットニーの U 検定によって検定したが,光触 媒有無による有意差は確認できなかった.よって,浮遊 真菌濃度は光触媒ではなく,換気回数などの他ファクタ ーに依存していると考えられる. Fig.9 に,総バクテリア濃度の測定結果を示す.な お,第 7 回目は測定自体を実施しなかった.Fig.9 より, 総バクテリア濃度も浮遊真菌濃度と同様に光触媒有無に よる差異は特に確認できず,U 検定においても有意差は 確認できなかった.平均濃度は 9 階ロビー(光触媒施工 済)の方が大きくなっており,人間の滞在時間や人数に 依存している可能性があるが,明確な分析を実施するこ とはできなかった. 3・4 ATP 拭き取り検査 Fig.10 に,ATP 拭き取り検査の測定結果を示す.上段 が 8 階(光触媒未施工)で,下段が 9 階(光触媒施工済) の結果である.まず,9 階は 2013 年 11 月~2015 年 6 月までの測定結果であり,9 階の起点となる 2013 年 11 月のデータは光触媒施工前で,1,500~2,300 となってい る.それが,約 1 ヶ月が経過した 2014 年 1 月には全て の測定ポイントにおいて 500 を下回っており,多少の上 下はあるものの,2015 年 6 月まで安定的に約 500 以下 を示している.つまり,9 階では光触媒によって壁面の ATP が分解されて,その状態が長期間に渡って維持され ていることが判る.

(7)

また,2015 年 7 月以降は,光触媒施工済の 9 階だけ でなく,光触媒未施工の 8 階においても ATP 拭き取り 検査を実施した.Fig.10 に示している測定結果はこの 2015 年 7 月~2016 年 12 月までのデータであるため,9 階データとは時期が一致していない.8 階は全体的に RLU 値が高く,1,000~2,000 で推移しつつ,2,000 を超 える RLU 値が測定されることもある. 化学汚染物質や浮遊真菌同様に,8 階と 9 階を比較す ることによって,光触媒有無による RLU 値への影響を 定量化する.2015 年 7 月~2018 年 11 月までの測定デ ータを光触媒あり(9 階ロビー)・なし(8 階ロビー)に 分けて,それぞれの測定値データの有意差を,マン・ホ イットニーの U 検定によって検定した.その結果,1% 有意であることが証明され,壁面 ATP 量は光触媒有無に よって明確な差があることが判った.Fig.11 に,光触媒 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500

Nov. Jan. Feb. Mar. Apr. May Jun. Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. Jan. Feb. Mar. Jun.

R L U [-] 2013年 2014年 2015年 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000

Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. Jan. Mar. May Jun. Aug. Oct. Dec.

R L U [-] SE. SW. NW. NE. 2015年 2016年 WITHOUT PC (8thFl.) WITH PC (9thFl.)

Fig.10. Measurement Result of ATP Check for about One-Half Year with and without Photocatalyst.

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 WITHOUT PC WITH PC L R U [-] Average Median 75% 25% Min Max P<0.01 13,596

Fig.11 Inter-Quartile Range of ATP Check with and without Photocatalyst.

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有無の RLU 分布図を示す.Fig.11 より,平均値で光触 媒あり 500,光触媒なし 2,252 となっており,光触媒に よって約 75%低下している.四分位数範囲においても, 光触媒ありの方が範囲が狭く,安定的に光触媒効果が発 揮されていることが判る. 3・5 臭いに関するパネル実験 Fig.12 に,6 段階臭気強度尺度の回答結果を示す.上 段が 8 階(光触媒未施工)で,下段が 9 階(光触媒施工 済)の結果である.数字が小さいほど臭いを感じていな いということであり,「無臭(ゼロ)」の回答数は 9 階の 方が多いが,「楽に感知できる臭い(3)」の回答数が 8 階よりも多いこともあり,回答のばらつきは大きい. Fig.13 に,各階の臭気強度平均値を示す.エラーバーは 標準偏差である.Fig.13 より,午前中は 8 階の方が臭気 強度は高いが,午後には 9 階との差は無くなっている. しかし,標準偏差は午前・午後共に 9 階の方が大きく, 9 階の臭いに対する評価が別れていることが判る. Fig.14 に 9 段階快・不快強度尺度の回答結果を示す. 数字が大きい方が快適さを示し,8・9 階共に「快でも不 快でもない(ゼロ)」の回答が多いが,「やや不快(-1)」 の回答数は 9 階の方が多い.Fig.15 に,各階の快・不快 強度指数の平均値を示す.エラーバーは標準偏差である. Fig.15 より,9 階の方が午前・午後共に平均値が小さく, 標準偏差も大きいことが判る.つまり,快・不快強度は 9 階の方が,若干ではあるが,評価は悪い. 以上より,臭気に対する評価は個人差があり,同じ臭 いに対しても感じ方や評価が分かれてしまっていると考 えられる.誰もが危険を感じる様な臭い(例えば硫黄) や濃度の高い強烈な臭いであれば,評価は収斂するだろ うが,今回の様な低濃度かつ様々な物質が混じり合った 複雑な臭いの評価は難しく,評価が分かれてしまうと考 えられる. なお,「容認性」の回答については,全員が午前・午 後共に「容認できる」と回答している. -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 AM PM Total od or in te n si ty WITHOUT PC WITH PC

Fig.13. Average and SD of odor intensity with and without Photocatalyst.

0 2 4 6 8 10 N u m b er o f C h ec k AM PM 0 2 4 6 8 10 ・ ウ ・ L ・ ・ ・ チ ・ ニ ・ エ ・ m ・ ナ ・ ォ ・ ・ ・ L ・ 「 ・ ・ ・ 「 ・ L ・ 「 ・ y ・ ノ ・ エ ・ m ・ ナ ・ ォ ・ ・ ・ L ・ 「 ・ ュ ・ 「 ・ L ・ 「 ・ ュ ・ ・ ・ ネ ・ L ・ 「 0 1 2 3 4 5 N u m b er o f C h ec k WITHOUT PC (8thFl.) WITH PC (9thFl.)

Fig.12 Result of Odor Intensity by Questionnaire.

0 2 4 6 8 10 N u m b er o f C h ec k AM PM 0 2 4 6 8 10 ・ ノ ・ [ ・ ノ ・ s ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ノ ・ s ・ ・ ・ s ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ s ・ ・ ・ ・ ・ ナ ・ ・ ・ s ・ ・ ・ ナ ・ ・ ・ ネ ・ 「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ノ ・ ・ ・ ノ ・ [ ・ ノ ・ ・ -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 N u m b er o f C h ec k WITHOUT PC (8thFl.) WITH PC (9thFl.)

Fig.14. Result of Amenity Intensity by Questionnaire.

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-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 AM PM Total a m en it y in te n si ty WITHOUT PC WITH PC

Fig.15. Average and SD of Amenity Intensity With and without Photocatalyst.

4 まとめ 本研究では,実空間における光触媒効果による空気質 改善効果を明らかにすることを目的に,前橋市内の複合 施設において各種測定を実施し,その結果を分析した. 分析を通じて,以下の示唆を得ることができた. ① 時間の経過に伴い空気質指標が改善する,という仮 説については,朝に対する割合が上昇する測定日が 多いこともあり,この仮説を証明することはできな かった.その理由として,揮発性物質である VOC は気温との相関が強いことや,換気などの影響が考 えられるが,本研究の範囲内では明確な原因を特定 することはできなかった.よって,現場調査では短 時間の変化を捉えることは困難であり,より長期的 な評価の方が適切である可能性が高い. ② 光触媒あり・なしの比較において,化学汚染物質の うちホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの濃度差 が,マン・ホイットニーの U 検定において 1%と 5% 有意差が証明された.しかし,浮遊真菌・総バクテ リア濃度においては明確な差を確認できなかった. 長期的な調査によってサンプル数を増加させ,統計 的分析を行うことで,光触媒効果と考えられる有意 差を証明することができた. ③ 壁面表面の平均 RLU 値は,光触媒ありの方が△75% 以下の数値となっており,U 検定においても 1%有 意差が証明された.光触媒効果によって壁面の ATP 量が減少し,かつその状態が長期間継続しているこ とを確認できた. ④ 本研究で照度の測定対象としている壁面・天井面は, 光触媒工業会ガイドラインが壁面・天井面照度とし ている 200lx を大幅に超え,室内標準照度としてい る 1,000lx を平均値としてほぼ満たしていることが 確認できた. ⑤ 臭いに関するパネル実験においては,9 階(光触媒 あり)の方が臭気強度尺度,快・不快強度尺度共に, 評価結果の標準偏差が大きくなっており,理由は明 確ではないが,より評価の分かれる臭いであったこ とが推測される. 今後は長期的評価を前提とした調査方法,評価基準な どを確立し,より衛生面や臭いに対してより配慮する必 要がある他施設において,光触媒効果の実測を行う予定 である.また,可視光応答型光触媒は基本的には照度が 低い屋内にて利用されることが前提であり,屋内光環境 の分析を行うことで,光触媒効果が確実に発揮される室 内設計などに応用することを目指し,研究開発を実施す る予定である. 謝辞 本研究は,2014 年「地域活性化研究事業」,2015 年度 「公募型共同研究事業」として実施された.また,前橋 テルサにおける実測調査では,一般社団法人前橋市まち づくり公社まちづくり推進課の皆様に多大なご協力を頂 戴した.ここに記して謝意を表します. 参考文献 1) 三木慎一郎ら, 可視光応答型光触媒の室内環境想定条件に おけるホルムアルデヒド低減性能評価法の検討(化学物質 濃度低減対策(2),環境工学Ⅱ), 日本建築学会大会学術 講演梗概集, 2005, 955-956(2005). 2) 絹川謙作ら, 可視光応答型光触媒による感染リスク低減の 検討:第 2 報 付着含ファージ飛沫に対する可視光応答型 光 触 媒 の 抗 フ ァ ー ジ 効 果 ( 感 染 リ ス ク 低 減 (2),環 境 工 学 Ⅱ,2012 年度大会(東海)学術講演会・建築デザイン発表会), 日本建築学会学術講演梗概集, 815-816 (2012). 3) 光触媒工業会, 光触媒製品性能判定基準, http://www.piaj.gr.jp/roller/contents/entry/20090121. 4) 三田村輝章ら, 光触媒作用による室内空気質の改善効果に 関する検証 -複合施設を対象とした実測結果-, 日本環 境管理学会研究発表会, 13-16 (2015). 5) 株 式 会 社 鯤 コ ー ポ レ ー シ ョ ン , 製 品 ラ イ ン ナ ッ プ , http://www.saga-kon.co.jp/sagancoatlineup.html. 6) 緒方壮行ら, ATP 測定法による病室における清掃前後の環 境 表 面 汚 染 度 実 測 調 査 , 日 本 建 築 学 会 環 境 系 論 文 集 , 81(726), 723-729 (2016). 7) 日本建築学会, 日本建築学会環境基準 AIJES-A007-2010 室内の臭気に関する臭覚測定法マニュアル(2010). 8) 光触媒工業会, 可視光の照度に関するガイドライン(2017).

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