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インドネシアにおける教師および生徒の体育授業に対する意識 [ PDF

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問題と目的 1999 年 11 月にベルリンで行われた世界学校体育サミ ットで、体育をカリキュラムから削減した国や授業時間 数を削減した国がみられるようになったことが報告され ている。また、1990 年代~2000 年代にかけて、世界全体 で体育は削減傾向にあった1) そのため、2003 年 11 月に採択された国連総会決議で は、2005 年をスポーツと体育の国際年とし、教育、健康 開発及び平和を促進する上で、国際社会の理解を高める ことを呼び掛けている2) このような状況の中、日本による海外体育・スポーツ 支援の動きが見受けられるようになった。文部科学省で は、2020 年東京オリンピック、パラリンピックに向けた 国際貢献策として「スポーツ・フォー・トゥモロー」を 発表している 3)。これは、我が国の学校体育の教育課程 やスポーツ政策の実績を生かし、国際協力機構(JICA) の青年海外協力隊等と連携を図りながら、開発途上国に 対し、学校体育カリキュラム・教材の策定支援やスポー ツイベントの開催支援などを推進するものである。 そこで本研究では、体育授業の非実施率が高い地域で あるアジアに属し、開発途上国のインドネシア(ジョグ ジャカルタ州)の学校体育に焦点をあてる。 第1章 インドネシアにおける体育を取り巻く環境 目的 インドネシアの体育を取り巻く環境について、調査す ることを目的とする。 方法 1.先行研究によるインドネシアの教育事情を確認 2.現地調査 インドネシアの高校に対して、聞き取り調査及び体育施 設に関する調査を行った。調査対象校は、ジョグジャカ ルタ州にある、都市部校、中間校、田舎校、被災地校の 4 つの高校を選定した。調査は 2013 年 12 月に都市部校、 中間校、田舎校に調査を実施し、2014 年 8 月に被災地校 の調査を実施した。 3.インドネシア学習指導要領(体育)を翻訳 結果 1.先行研究によるインドネシアの教育事情 1)教育制度 教育制度は、6-3-3-4 制であり、2 期制である。小中学 校は義務教育で、無償化されている。小学校と中学校卒 業時には、統一国家試験が実施され、合格できなければ 留年する4) 2)貧困と教育機会 開発途上国であるが、表 1 より、就学率が高いことが 確認できる。しかし、義務教育を満足に受けていない児 童は、290 万人にのぼる。これは、貧困によるものであ り、所得階層による、親の教育観・勤労観、コミュニテ ィの状況、家族の人数、交通網、学校へのアクセスが、 大きく子どもたちの就学事情に影響をしている事が指摘 されている4) 2.現地調査 全ての学校において、用具は不足し、劣化が激しいも のばかりであった。体育施設においては、都心から田舎 になるにつれ、体育を実施できる敷地が広い傾向にあっ た。 3.学習指導要領(2006)の翻訳 インドネシアの体育における学習指導要領5)では、体 育は単に体を動かす、スポーツ競技を実施すればよいも のではなく、身体的効果に加え、道徳性、民主的態度、 マナー等の心理的成長を目的として明記してある。その 他にも、各運動領域で取り扱う内容や各学期(セメスタ ー)で取り扱う内容と到達目標が明記されていた。また、 学習指導要領は改定されており、改定後には、これまで

インドネシアにおける教師および生徒の体育授業に対する意識

キーワード:開発途上国,体育,授業評価尺度 行動システム専攻 吉嶋 哲也 表1 インドネシア就学状況 教育統計ハンドブック2007 年度版(Buku Satu 2007/2008)

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の認識能力面に偏った教育の反省から、体育は総合教育 に不可欠と明記してあり、体育を軽視していない事が窺 える。 第 2 章 高校における課程(普通科・スポーツ科)別に よる体育授業に対する意識 目的 学習指導要領(体育)の目標には、心理的成長が掲げ られている。それらの内容が授業で獲得されているもの であるか、質問紙を用いて確認する。また、スポーツ科 と普通科の生徒で体育授業に対する意識の違いについて 検討する。 方法 1)対象者:スポーツ科 1 校、普通科 3 校の高校生 390 名 (男子 203 名、女子 187 名、うち 4 名年齢不明、平均年 齢 16.96±.91 歳)とした。 2)調査項目:授業評価尺度(高田ほか,2000)を使用し た。これは、体育授業において存在する授業内での目標 を評価するための尺度であり、情意目標、運動(技能) 目標、認識目標、社会的行動目標の下位尺度から構成さ れている。情意目標とは、運動やスポーツに対する愛好 的態度や興味、関心、意欲、肯定的な価値観を意味する ものである。運動(技能)目標とは、個人的、集団的な 運動技能の向上および運動や技能の習熟を示すものであ る。認識目標は、めあてを持つ、知識を生かす、工夫す る、新しい発見をすることを意味する。社会的行動目標 は、運動・スポーツの規範的内容やルールを守るといっ たことである。 以上の 4 因子、各 5 項目、計 20 項目で構成されてい る。回答は、「はい」「どちらでもない」「いいえ」の 3 段階評定法で求めた。分析には各因子の合計得点を算出 した。 3)統計処理:SPSS.Ver.20 授業評価尺度の各因子合計得 点を従属変数、課程(普通科・スポー ツ科)×性(男 子・女子)を独立変数とした二要因分散分析を行った。 結果 分析の結果(表 2)、認識目標において交互作用が有意 であった(F(1,441)=4.41, P<.01)。そこで、単純主効果 の検定を行った結果、スポーツ科の男子と女子は、普通 科の男子と女子に比べて有意に得点が高く、普通科の男 子は女子に比べて得点が高いと示された。 情意目標は、課程(F(1,441)=20.42, P<.01)と性(F (1,441)=9.01, P<.01)において有意な主効果が示され、 スポーツ科は普通科に比べて得点が有意に高く、男子は 女子より得点が高いことが示された。 運動目標は、課程(F(1,441)=45.37, P<.01)と性(F (1,441)=20.42, P<.01)の主効果が有意であり、スポー ツ科は普通科に比べて得点が有意に高く、男子は女子よ り得点が高いことが示された。 社会的行動目標は課程(F(1,441)=5.63, P<.01)が有 意な主効果を示しており、スポーツ科は普通科に比べて 得点が有意に高かった。 考察 1)体育施設環境及び授業時間 体育を実施する場所は、都市部では狭く、田舎に行く につれて広くなる傾向にある。対象のスポーツ科がある 高校は中間地域にあり、調査を実施した中では、校庭が 1 番広く体育館も有している。そして、体育の時間は、 他校は 90 分であるが、スポーツ科がある学校は135 分(普 通科も含む)である。それに加えスポーツ科のみ、1 回 155 分の専門種目練習を、週に数回、体育授業として実 施している。スポーツ科の生徒は、運動・スポーツに肯 定的な考えを有して入学していると考えられ、そのよう な生徒に、十分な時間と活動場所が与えられていること が、全ての目標において、スポーツ科の生徒が普通科の 生徒より有意に高いことに影響したと考えられる。 2)体育の二極化傾向の可能性 日本では、学校外での運動・スポーツ経験が、子ども の体育授業に対する態度に影響を及ぼし、情意目標、運 動目標、認識目標において、運動部活動に所属する生徒 表   スポーツ科と普通科における各目標に関する二要因分散分析(被災地を除く) スポーツ科 普通科 主効果 交互作用 男子 女子 男子 女子 課程 性 M SD M SD M SD M SD 情意目標 14.13 (.88) 13.92 (.98) 13.67 (1.17) 13.13 (1.41) 18.92

**

6.92

**

1.37 運動目標 14.76 (.49) 14.62 (.83) 14.03 (1.15) 13.35 (1.49) 51.40

**

8.65

**

3.79 認識目標 14.11 (.98) 14.00 (1.16) 13.03 (1.68) 12.03 (1.89) 64.03

**

8.55

**

5.44

*

社会的行動目標 14.69 (.55) 14.84 (.37) 14.48 (1.20) 14.57 (.71) 5.46

*

1.27 .10 M :平均値  SD : 標準偏差 **P<.01, *P<.05 2

(3)

の方が有意に高いとある。さらに、「運動に興味を持ち、 活発に運動する者とそうでない者」との二極化傾向が、 部活動参加によって拍車がかかり、小学校時の「運動の 習い事経験」が中高生に持ち越され、それまでの体育授 業で改善されていない6)とある。 このことから、インドネシアにおいても「活発に運動 する者とそうでない者」の二極化が起こり、小学校から の体育授業において、「活発に運動しない者」への指導改 善がなされていない可能性がある。 3)社会的行動目標について この目標のみ、男女の有意差が無い。日本においては、 社会的行動目標は女子が有意に高い事例がある 7)。今回 の調査では、有意差はないものの、回答は女子が男子を 上まっており、女子の特性がインドネシアでも見られた。 第 3 章 地域別による体育授業に対する意識 目的 地域格差によっては、学校間格差が生じることが考え られるため、学校が設置されている地域において、体育 授業に対する生徒の意識を検討することを目的としてい る。 方法 1)調査対象:第 2 章の対象 3 校+被災地 1 校の高校生 445 名(男子 217 名、女子 228 名、うち 4 名年齢不明、平均 年齢 16.83±.93 歳)とした。 2)調査項目:第 2 章と同様 3)統計処理:授業評価尺度の各因子の合計得点を従属変 数、地域(都市・中間・田舎・被災地)×性(男子・女 子)を独立変数とした二要因分散分析を行った。 結果 分析の結果(表 3)、情意目標は、交互作用が有意であ った(F(1,437)=4.98, P<.01)。単純主効果の検定を行っ た結果、女子は、田舎、中間、被災地、都市の順で得点 が高い。男子は、被災地、中間、田舎、都市の順で得点 が高かった。 運動目標は、地域(F(1,437)=19.09, P<.01)と性(F (1,437)=19.45, P<.01)において、有意な主効果が示さ れ、中間、田舎、被災地、都市の順で得点が高く、男子 は女子に比べて得点が高いことが示された。 認識目標は、地域(F(1,437)=15.17, P<.01)と性(F (1,437)=15.75, P<.01)において、有意な主効果が示さ れ、中間、田舎、被災地、都市の順で得点が高く、男子 は女子に比べて得点が高いことが示された。 考察 1)施設環境との関係 運動目標、認識目標は、中間、田舎、被災地、都市の 順で有意に回答が高いと示された。これは、体育授業時 の活動場所と関係があると考えられる。都心部から田舎 に行くにつれ、体育を行う敷地は、広がる傾向にある。 活動場所が広ければ、授業時に行う内容は多様化が可能 である。全ての学校で、用具は乏しい状況にあり、用具 や環境が整っていない場合は、十分な活動場所の確保が 重要となる。 2)人間関係構築期間との関係 日本の研究で、男子は、「できる」「わかる」に関心を 持って学習しているが、女子は「友人と仲良く、楽しく 体育をすること」を望んでいるとある7) 田舎において、限定的な中学校からの入学の可能性が あり、人間関係構築期間が長いことが、情意目標におい て交互作用が示されたと考えられる。逆に、すべての目 標において、都市部が最下位の回答である。都市部は、 高校数が多く、1 つの高校に多くの中学校からの流入が 見られる。この要因として、ジョグジャカルタ州には学 区制が存在しないことが挙げられる。このことから、学 校内における人間関係が、体育授業に対して積極的に取 り組む事に寄与し、良好な人間関係を構築できている田 舎の学生が、体育授業に対する意識が高いことが考えら れる。 表3  学校設置地域による男女別の各目標に関する二要因分散分析 都市 中間 田舎 被災地 主効果 交互作用 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 M SD M SD M SD M SD M SD M SD M SD M SD 情意目標 13.64 (1.17) 12.80 (1.51) 13.96 (.99) 13.19 (1.27) 13.73 (1.21) 13.94 (1.16) 14.00 (1.47) 12.83 (1.22) 4.43** 22.82** 4.98 * 運動目標 13.70 (1.22) 12.64 (1.60) 14.53 (.85) 13.91 (1.37) 14.36 (.98) 14.02 (1.05) 14.21 (1.19) 13.90 (1.26) 19.09** 19.45** 1.84 認識目標 12.40 (1.75) 11.56 (2.08) 13.87 (1.22) 12.69 (1.89) 13.42 (1.56) 12.80 (1.61) 12.64 (1.28) 12.39 (1.48) 15.17** 15.75** 1.27 社会的行動 目標 14.44 (1.03) 14.42 (.91) 14.61 (.72) 14.58 (.60) 14.56 (1.53) 14.88 (.33) 14.36 (1.15) 14.63 (.77) 1.97 2.06 1.19 M :平均値  SD : 標準偏差 **P<.01,*P<.05 表3 学校設置地域による男女別の各目標に関する二要因分散分析

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第4章 生徒及び教師による体育授業に対する意識 目的 授業の条件を作り出すのは教師(高橋, 2003)であり、 その条件を作り出す教師が持つ体育に対する意識は、 生徒の意識に影響を与えると考えられ、教師と生徒の 意識を比較する。 方法 1)調査対象:第 2 章と同じ高校生 390 名(男子 203 名、 女子 187 名、うち 4 名年齢不明、平均年齢 16.96±,91 歳) とその学校に勤務する体育教師 8 名(男性 7 名、女性 1 名) 2)調査項目:「授業評価尺度」を教師に対して使用。 3)統計処理:生徒(都市・中間・田舎)×教師を独立 変数とした一要因分散分析を行った。 結果 生徒と教師を独立変数とした一要因分散分析を行った 結果、情意目標において有意に教師が高い得点であった (F(1,396)=4.29, P<.05)ことが確認された。 考察 情意目標においてのみ、教師は生徒より有意に高い回 答であった。職業として体育教師を選択しており、体育 に対する肯定的な価値観を有していると考えられる。 研究の展望 1.学習指導要領との関係 学習指導要領(体育)の目的には、認識目標(めあて を持つ、知識を生かす、工夫する、新しい発見がある) に該当する目標は存在せず、学習指導要領(体育)の背 景に、「批判的思考力、推論能力が必要」と記されている だけである。そのため、認識目標は、生徒及び教師とも 最下位の回答である。今後、この部分に焦点があたるこ とになれば、日本で行われている「課題解決学習」、「体 育理論」は有効に活用できる。これは、議論好きのイン ドネシア人の気質に合っており、有効な効果が望める。 しかし、インドネシアでは教師に対する研修不足が指 摘されている(JICA 理数科教育プロジェクト, 2005)た め、導入する際には、研修の実施が成功のカギとなると 考えられる。 2.インドネシアにおける今後の体育 高橋(2003)は、「説明責任が果たせない教科は授業時 数が削減されるか、選択教科となるか、あるいは学校か ら排除されるか。」と指摘している8)。開発途上国におい ては、国の産業発展を考えた場合、学校では理数科目や 外国語が重視される傾向がある。PISA 調査(国際的な学 習到達度調査, 2009)において、インドネシアは低迷して いる(読解力 57 位、数学的リテラシー61 位、科学的リ テラシー60 位/65 カ国中)。このことは、体育が削減さ れる可能性を残していると考えられ、体育の説明責任が 求められる可能性がある。 主要引用文献 1)ICSSPE 編(2002)世界学校体育サミット.杏林書院: 東京, pp.8-20. 2)国際連合広報センター(2004)プレスリリース 04/077-J.http://www.unic.or.jp/news_ press/features_ backgrounders/1006/(参照日 2014 年 11 月 11 日) 3)文部科学省スポーツ・青少年局(2014)平成 26 年度 概算要求主要事項.http://www.mext.go.jp/component/ b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/08/30/ 1339149_01.pdf(参照日 2014 年 10 月 1 日) 4)日本貿易振興機構(2011)BOPビジネス潜在ニーズ報 告書.http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000761/ idn_edu_work.pdf(参照日2013年6月6日)

5)NASIONAL REPUBLIK INDONESIA . PERATURAN MENTERI PENDIDIKAN (2006) NOMOR 22 TAHUN 2006 TENTANG STANDAR ISI UNTUK SATUAN PENDIDIKAN DASAR DAN MENENGAH

DENGAN RAHMAT TUHAN YANG MAHA ESA MENTERI PENDIDIKAN NASIONAL.

6)鐘ヶ江淳一他(2005)学校階梯による体育授業に対す る態度の検討.近畿大学九州短期大学研究紀要, 35: 39-49. 7)清水康太(2009)体育授業における生徒の学習目 標に対する意識とその実施状況に関する検討.愛 知教育大学保健体育講座研究紀要, 34:39-41. 8)高橋健夫(2003)体育授業を観察評価する.明和 出版:東京, p.1. 情意目標 運動目標 認識目標 社会的行動 目標 図2 各目標の平均値と検定結果(生徒と教師) *P< .05 * 回答 平均値

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