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(1)

7 章 産業構造の高度化、直接投資と経済成長

はじめに

東アジアの多くの国では、1980 年代半ば以降、製造業を中心に対内直接投資が急増した。直 接投資は電気機械や輸送機械産業など途上国にとって比較的先端的な産業で特に活発であり、 後に見るようにアセアン諸国やシンガポール等の機械産業では今日、外資系企業の雇用が全雇 用の過半を占める場合も多い。第 6 章で示したように、当初、天然資源集約的な産業を中心と する途上国は経済発展につれ、単純労働集約的な産業、物的資本集約的な産業、さらには人的 資本集約的な産業へとその産業構造を高度化させてきた。過去15 年ほどの東アジア諸国では、 このような産業構造の高度化と分業構造の深化の上で、直接投資が中心的な役割を果たしたと 考えられる。 先進国と途上国間の技術格差を捨象し、途上国が生産技術を習得する過程を明示的に考慮し ない通常の貿易理論では、産業構造の高度化は途上国における物的資本や人的資本の蓄積の結 果自然に起きる現象であると見なされ (リプチンスキーの定理)、産業構造の高度化が経済成長 の促進や持続に特別な寄与をするとは考えられていない。しかし、先進国と途上国間で技術格 差が存在する現実の経済では、途上国が新たな産業を興すためには、生産技術、その産業に対 応した経営資源やノウハウ、産業基盤、等を必要とする。産業構造の高度化は要素賦存だけで なく、このような付加的な要因に依存すると考えられる。付加的な要因が満たされない国では 高度化が進まず、このためせっかく物的資本や人的資本が蓄積されても十分な報酬が払われず (この背後ではマクロ的な非効率性が生じる)、また低い報酬は物的資本や人的資本の蓄積を阻 害する働きをする。 Krugman (1994) をはじめとする Accumulationist 達は、アジアの成長が物的、人的資本を 中心とする生産要素の蓄積に依存しており、やがては資本の限界生産力逓減により行き詰まる と考えたが、彼らの議論のほとんどは生産要素の蓄積と外生的な生産性上昇が経済成長率を規 定するというSwan(1956)、Solow (1956) タイプの一部門成長モデルを前提とし、マクロデー タを使った実証分析のみに立脚している点で問題がある。経済は要素集約度の異なる多くの産 業によって構成され、また産業構造の高度化は内生変数であるというより現実的な視点に立て ば、資本の限界生産力逓減は産業構造高度化のスピードに依存しており、高度化に成功すれば 限界生産力逓減を通じた資本の蓄積率低下は緩やかに進むと考えられる。1) 先進国から途上国への直接投資は、先進国企業が生産技術や経営資源を途上国の直接持ち込 むため、途上国産業構造の高度化に大きく寄与すると考えられる。本章ではこのような問題意 識から、産業構造の高度化がリバース・エンジニアリングや研究開発等により内生的に行われ 1) この点で、我々の考え方は生産技術のキャッチアップ過程を重視する Assimilationist に近い。

(2)

るマクロモデルを構築し、直接投資等によって影響される産業構造高度化の難易度が、資本の 限界生産力逓減のメカニズムに影響することを通じて、経済成長の持続と均整成長における一 人当たり消費水準を左右することを示す。 本章の構成は次の通りである。まず第 1 節では、日本をはじめとした先進諸国の東アジアへ の直接投資を概観し、その特徴について議論する。第 2 節では産業高度化を内生化したモデル を提示する。第 3 節では、短期均衡において産業構造と要素価格がどのように決まるかを分析 する。第4 節では、経済成長と産業構造高度化の関係を分析する。最後に第 5 節では結論を述 べる。

1 節 東アジアへの直接投資

対東アジア向け直接投資は1980 年代半ば以降急増した。UNCTAD (1999) によれば、南・東 (日本を除く)・東南アジア向け直接投資残高は 85 年末の 1086 億ドルから、95 年末には 4094 億ドル、98 年末には 6568 億ドルへと、6 倍になった。主な受入国は 80 年代半ばまでは韓国 を除くNIEs が中心だったが、その後アセアン諸国、90 年代には中国と変化した。95 年以降 の投資額の実に半分は中国向けであった。 投資母国としては、Urata (1999) に報告されているように近年ではアジア域内での投資が増 えており (例えば香港、台湾等から中国向け)、またアジア通貨危機後、北米・欧州企業のこの 地域へのM&A 投資が急増したものの (UNCTAD 1998)、先進国としては基本的に日本が最も 重要な投資国であった。表.7.1 は東アジア、中南米、ロシア・中・東欧の 3 地域について、 日系、米系、ドイツ系現地法人の雇用者数を比較しているが、東アジアでは日本の重要度が高 いことがわかる。米国企業の対東アジア投資は日本のそれと比べて広義のサービス業向け投資 が活発であることを考慮すると、製造業に限れば日系現地法人の比重は表.7.1 が示す以上に 高い。 最貧国を除く途上国への直接投資が非常に活発に行われているという現象は、東アジアだけ で起きているわけではない。対内直接投資のGDP に対する比率を地域別に比較した表.7.2 か らもわかる通り、米国系、ドイツ系企業の投資がそれぞれ抜きんでている中南米、ロシア・中・ 東欧諸国においても、対内直接投資のGDP 比率が 20%を越える国がかなりある。しかしなが ら、地域によって直接投資の性格はかなり異なる。 たとえば米国の中南米に対する業種別投資残高をまとめた表.7.3.a が示すように、米国の場 合にはおそらくその比較優位が広義のサービス業にあることを反映して、直接投資の過半は金 融・保険をはじめとする非製造業向けであり、製造業向けは投資残高の四分の一に満たない。 また製造業の内訳を見ると食品加工、化学、輸送機械、その他製造業 (パルプ・木材、ゴム製 品、精密機械、繊維等) 等が中心である。これに対して日本の対アジア向け投資 (表.7.3.b) の 場合には、製造業向けが半分弱を占め、製造業の中でも電機、鉄・非鉄、一般・精密機械等が 大きな割合を占めるなど、業種の構成には大きな違いが見られる。なお、日本の値は大蔵省の 届け出ベース統計に基づいており、再投資収益を含まないなど性格が米国統計と異なる点に注

(3)

意が必要である。 製造業に対する米国の中南米向け投資と日本のアジア向け投資を比較すると、現地法人の販 売先も大きく異なっている。製造業を営む米系現地法人については、売上に占めるホスト国で の販売の割合が、在中南米現地法人の場合、製造業平均で76%、食料品で 88%、化学 92%、 産業用機械65%、電気機械 46%、また在アジア・太平洋現地法人 (在日を除く) の場合、製 造業平均で79%、食料品で 85%、化学 76%、電気機械 40%であるのに対し、日系現地法人に ついては在アジア現地法人の場合、製造業平均で58%、食料品で 80%、化学 71%、一般機械 43%、電気機械 40%と、全般に日系現地法人の方が米系現地法人と比較して現地向け販売の割 合が低く、輸出比率が高い。2) 以上の統計から、東アジアについては日本からの直接投資の比重が大きいこと、投資先産業 については日本の直接投資は米国のそれと比べて製造業、中でも電機や一般・精密機械等の割 合が大きい点で特色があること、現地法人の販売先については、日系現地法人は米系と比較し て概して現地販売比率が低く、輸出基地としての性格が強いこと、等が確かめられた。 なお、ドイツを中心とする対ロシア・中・東欧諸国向け直接投資については、米系、日系現 地法人と比べて利用できる統計に制限があるため厳密な比較はできないが、1990 年代に入り冷 戦構造の終結と東側諸国の西側市場経済への参加を契機に起きた比較的新しい現象であること、 旧東側諸国が国営企業を民営化する過程で旧国営企業の買収の形態で投資されたケースが多い こと、企業レベルのマイクロデータを使ったいくつかの実証研究によれば直接投資は買収した 旧国営企業の生産性上昇を通じてホスト国に寄与していること、等、日本および米国の直接投 資と異なった特徴を持っている。この問題については西村・渡辺・上垣(1998)が詳しい。 次に、東アジア諸国の製造業において外資系企業がどの程度のシェアーを占めているかを見 てみよう。本章末尾の参考資料「東アジア製造業における日系・米系現地法人労働者数のシェ アー」では、NIEs4 カ国・地域、アセアン 4 カ国、中国を対象に 1985-95 年について製造業 6 業種別に日系・米系現地法人労働者数と総労働者数を比較し、各産業における日系・米系のシ ェアーを算出している。参考資料の図.7 (参考) .1.a∼i にまとめたように、日系および米系 現地法人労働者のシェアーは電気機械や一般機械等で高い値になっている。特にシンガポール、 タイ、マレーシア等の電機産業については多国籍企業が創出したと言えるほど、日・米系のシ ェア−が高い。ただし、労働者の絶対数で見ると表.7 (参考) .3.a∼i に示したように、中国、 インドネシア等の大国においても多数の雇用が作り出されていることがわかる。たとえば、95 年において製造業全体で見て日系・米系合わせた労働者数が一番多い国は中国であった。 日系と米系を比較すると (図.7 (参考) .1.a∼i)、香港を除けば、日系のシェア ーの方が全 般に高く、しかもこの10 年間に日系の比重は増加傾向にあることがわかる。先にも述べたよ うに日系は電気機械などの機械産業において、また米系は化学産業においてシェアーが高い傾

2) 米系はU.S. Department of Commerce、U.S. Direct Investment Abroad、1994 Benchmark Survey、 Preliminary Results, 1997 による被過半所有現地法人に関する 1994 年の値、日系は通産省『第 27 回我

(4)

向がみられる。 先進国から途上国への直接投資は、先進国企業が生産技術や経営資源を途上国に直接持ち込 むため、途上国産業構造の高度化に大きく寄与すると考えられる。本節で見たように過去 15 年ほどの東アジア諸国では、このような産業構造高度化の上で、日本を中心とする先進諸国か らの直接投資が中心的な役割を果たした。特に日本の直接投資は電気機械等、比較的高度な産 業に集中している点、輸出基地としての性格が強い点、等から判断して、東アジアの産業の高 度化と分業構造の深化に大きく寄与したと考えられる。なお、確かに先進国では電機産業は技 術知識や人的資本について集約的な産業であるが、直接投資によってアセアン諸国等に移管さ れているのは比較的単純労働集約的な工程が中心であることに注意を要する。ただし、シンガ ポール等のNIEs に日系・米系企業が研究開発拠点や地域統合拠点を設立する動きが見られた り、国内企業が情報・通信機器生産を拡大し電機産業における外資系の比重が低下傾向にある 台湾のように (図.7 (参考) .1.a∼i)、産業基盤の整備につれより高度な工程の発展も進むと 考えられる。 "はじめに" でも述べたように、標準的な新古典派貿易論においては、産業構造高度化は物 的資本や人的資本の蓄積によって自然に引き起こされる現象であり、産業構造の高度化が経済 成長の促進や持続に特別な寄与をするとは考えられていない。しかし、先進国と途上国の間で 技術格差が存在する現実の経済では、途上国が産業構造を高度化することは困難な過程であり、 高度化に成功するか否かが、経済成長の過程を左右するのではないだろうか。このような問題 意識から、次節以降では産業構造の高度化を内生的に説明するモデルを構築し、産業構造高度 化に寄与する直接投資等の要因が経済成長にいかに寄与するかを考察することにする。

2 節 モデル

貿易論でよく知られているように、複数の産業が存在し国際貿易が行われている場合には要 素価格均等化のメカニズムが働く。しかし現実には各国が異なった財を生産したり、生産技術 が異なるため、要素価格は完全には均等化しないと考えられる。このような状況をモデル化す るため、われわれは各国がそれぞれ完全に異なった財の集合を生産するとする。 i 国が生産す る代表的な財をθ i 、生産可能な財の集合を[0、Θ1]で表わす。 分析の対象となる国 (自国と呼び、i =0 であらわす) は小国と仮定する。全世界の国の集合を 財と同じく実数の区間[0、I]で表わす。3) 説明を簡単にするため、以下ではしばらく当該国と海外の間に資本の移動はないものとし、 直接投資を含めた資本移動については後に議論する。 選好について以下の仮定をおく。各国消費者は同一の選好を持ち、その瞬時効用関数は次式 で表わされるとする。 3) このように財と国の集合をともに実数の区間で表わしたモデルとしてUnayama (1999) がある。

(5)

(1) Θ

( )

θ σ θ

}

σ 1 0 0    =ln

∫ ∫

x d di u I i c i i 同時点における消費財間の代替の弾力性は(1/1−σ)に等しい。σは 0<σ<1/2 を満たす とする。 C i x θθ 財の一人あたり消費量をあらわす。 i i Θ は i の関数だが、この関数は上式の 定積分が存在するための条件をみたすとする。瞬時効用関数が、(1)で与えられるとき、各財に 対する需要関数は以下のように非常に単純な形になる。 (2) c P p i i C

x

θ θ σ − −       = 1 1 ただし、 pθii 国企業が生産したθ財の価格を、 c は一人あたり実質消費支出を、また P は 次式で定義される消費財物価をあらわす。 (3)

}

σ σ σ σ θ θ − − − − Θ    =

1 1 0 0 p d di P I i i i c は家計一人あたり名目消費支出を P でデフレートした値であり、よく知られているように c ln は u に等しい。 c の水準は後述するように家計の異時点間の最適化行動により決まる。 消費の場合と全く同様に、物的および人的資本の蓄積にも各財が投入され、またその関係は すべての国で同一とする。ある国における物的資本 Z の蓄積は次式で規定される。 (4) θσ

θ

}

σ 1 0 0



=

Θ

x

d

di

Z

Z i i i I ここで、ドットアクセントを付けた Z はdZ /dtを、またxZθiは当該国で物的資本の蓄積のた めに投入される iθ 財をあらわす。 人的資本の蓄積についても同様に次式で規定されるとする。 (5)

{

Θ θσ

θ

}

σ 1 0 0

∫ ∫

=

x

d

di

H

I i H i i 消費の場合と全く同様に、物的・人的投資のために生じる各財に対する需要は次式で規定さ れる。

(6)

(6) Z P p i i Z

x

θ θ σ − −       = 1 1 (7) H P pi i H

x

θ θ σ − −       = 1 1 以下では、(3)式で定義される指数を規定するバスケットを価値の単位としよう。したがっ て、P=1が成り立つ。 次に、供給サイドをモデル化する。自国および外国の各企業は単純労働、実物資本、人的資 本の3 つの生産要素を使って、コブ・ダグラス型生産関数によって各自の財を生産するとする。 各財の生産は十分に多くの企業が行うため、企業はプライステイカーとする。 i θ 財生産におけ る単純労働、実物資本、人的資本の分配のシ エ ア を そ れ ぞ れ1−a

( ) ( )

θ ibθia

( )

θ ,i b

( )

θ でi あらわす。われわれは、θ 財を生産する企業の生産関数は次式で あ ら わ さ れ る と す る 。 i (8) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( ( ) ( )) ( ) ( ) ) ( ) ( ) ( ) ( 1 1 1 i a i i b i i b i a i i b i a i i i i a i i i

L

H

Z

A

Q

b a b a θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ − − + − − + − − = なお、以下では単純化のため技術進歩による生産性の上昇はないと仮定し、パラメーター A も 一定と仮定する。 一般に経済成長の過程では、天然資源集約的な財や単純労働集約的な財の生産から資本集約 的な財、さらには人的資本集約的な財へと比重が移っていくと考えられる。このことをモデル 化するため、財を適当に並びかえることにより、a

( )

θ ,i

b

( )

θ

i

θiの連続微分可能な関数で あ り 、 da

( )

θi /dθi θi=0 >0 、 任 意 の θ に つ い て db

(

θi

)

/dθi>0 、

( )

/ 0 2 2 < i i d a d θ θ

( ) ( )

{

a i +b i

}

/d i >0 d θ θ θ 、十分に高いθ のもとで、i da

( )

θi /i <0が成り立つ こ と を仮定す る。図.7.1 は関数a

( )

θ ,i b

( )

θ の形状を示している。 i 以下ではど の国でもθ の水準とi a

( )

θ ,i b

( )

θi の関係は同じとする。従って、 iΘ の水準は i 国がどの程度高度な財を生産できるかをあらわす。 次に、企業の費用最小化行動を考え よ う 。以下で は自国

(

i=0

)

で財θ0

(

θ0

[

0,Θ0

]

)

を生産 している企業を考える。表記を単純化するため自国をあらわす添文字0 は省略する。 自国の実質賃金率を w とし、生産コストが同一であるため価格が等しい物的資本と人的資本 の実質レンタルプライスをともに r とすると、企業の費用最小化条件より次式が成立する。

(7)

(9)

(

( ) ( )

)

( ) ( )

(

)

( ) ( )θ θ

(

( )

( )

)

( ) ( )θ θ θ ( ) ( )θ θ θ ( )θ θ ( )θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ a b b a b a b a L H Z b a b a b a A p L Q p + − − + − − − − = ∂ ∂ 1 1 1 w= (10)

( )

( ) ( )

(

)

( ) ( )θ θ

(

( ) ( )

)

( ) ( )θ θ θ ( ) ( )θ θ θ ( )θ θ ( )θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ a b b a b a b a L H Z b a b a Ab P H Q P 1 1 1 1 − − − + − − + − − = ∂ ∂ =r (11)

( )

( ) ( )

(

)

1 ( ) ( )

(

( ) ( )

)

( ) ( ) 1 ( ) ( ) ( ) ( )1 1 − − − + − − + − − = ∂ ∂ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ θ a b b a b a b a L H Z b a b a Aa P K Q P =r われわれのモデルでは実物資本と人的資本それぞれの蓄積に必要な財の組み合わせは同一と しているため、2 つの資本の価格はともに 1 となる。また 2 つの資本のレンタルプライスは自 国の実質利子率 r に等しい。このような関係のもとでは、Z とθ H の投入量の和を(広義の)資本θ と呼び、K とあらわす。生産関数は、次のように表現できる。 θ (12)

( )

( )θ

(

( )

)

α( )θ θ α( )θ θα( )θ θ θ α θ α L K A Q a − − = 1 1 1 ただし、 α

( )

θa

( )

θb

( )

θ の和を あ ら わ す。a

()

・ とb

( )

・ に関する仮定より

α

( )

θ

θ の 増加関数である。なお、当該企業の各資本に対する需要は次のとおり与えられる。

( )

( ) ( )

θ θ θ θ θ K b a a Z + = ,

( )

( ) ( )

θ θ θ θ θ K b a b H + = θ 財を生産する企業の平均可変費用および限界費用は次式であらわされることが簡単な計算 によってわかる。 (13) α( )θ θ θ = = ωA w MC AC ただしここで、ω はw / である。 r 企業はプライステイカーであるため、供給曲線は一定の限界費用に等しい。限界費用を需要 関数のθ 財価格に代入してθ 財の生産量をもとめると、

(8)

( ) ( )

di

H

K

L

c

A

r

w

Q

i i i i a a



+

+







=

− −

&

&

1 0 1 1 1 θ θ σ θ ここで、右辺の積分は世界全体の実質総支出をあらわす。小国である自国にとってこれは与件 であり、世界の平均的な人口成長率だけ成長していくとする。以下ではこれを D とあらわす。 当該企業の生産量は次式のように表現できる。 (14) ( ) ( ) D A r w Q a a θ θ σ θ − − −       = 1 1 1 当該企業の生産量と労働需要量の間には次の関係がある。 (15) θ

(

α

( ) )

θ ω α( )θ Qθ A L − − = 1 同じ賃金・資本のレンタルプライス比率ω の下では α が高いほど労働需要は少ない。なお、コ ブ・ダグラス型生産関数を仮定しているため、θ 財生産企業の資本労働比率kθ =Kθ /Lθは次 式をみたす。 θ

=

α

α

( )

( )

θ

θ

ω

1

k

3 節 短期均衡における産業構造と要素価格の決定

本節では、短期均衡を分析する。θ 財生産企業の労働需要をあらわす (15) 式に θ 財に対す る需要関数 (14) 式を代入し、θ について積分すれば、自国労働の需給均衡は次式であらわされ る。 (16)

(

( ) )

( ) D L d w A− − − − ∫Θ −α θ ωσα θ θ = σ σ σ σ 1 0 1 1 1 1 ただし、 L は自国の能率単位で測った労働賦存量をあらわす。自国の人口成長率は海外の平均 的なそれに等しく、従ってL /Dは一定値とする。 (16) 式と同様に、自国の (広義の) 資本の需給均衡式条件は次式であらわされる。

(9)

(17)

( ( ) )

( ( ) ) D L k d r A−− −− ∫Θ α θ ωσα θ θ = σ σ σ σ 1 1 0 1 1 1 ただし、 k は自国全体の資本労働比率K /Lをあらわす。 自国の要素賦存比率 k 、自国の労働賦存率と世界全体の総需要の比率L /D、および自国で 生産可能な財のバラエテイーΘが与えられた時、上の2 つの生産要素の需給均等条件で、自国 における要素価格 w 、 r が決まることになる。 補論1 で示すように、(16)、(17) 式より、均衡における r は k の減少関数、Θの増加関数で あることがわかる。以下ではこの関係を (18) r =r

(

k−,Θ+

)

とあらわす。Θの上昇は資本に対する需要を増加させるため資本収益率 r を上昇させる。 同様に、 w が k とΘに依存する関係を (19) w= w

(

k+,Θ

)

とあらわす。補論1 で示すとおり、 w は k の増加関数である。 次に、自国が生産可能な財の集合のボーダーΘの決定要因について考えよう。リバース・エン ジニアリングで他国の生産物から知識を得るにせよ、独自の研究開発で新製品を開発するにせ よ、自国が生産可能な財の種類を拡大するには一定のコストを要すると考えられる。企業にと って開発した財の生産から将来得られると予想される収益の割引現在価値が開発コストを上回 る場合に、開発が行われると考えられる。Grossman and Helpman(1991)が行っているように、 このような企業の最適行動は、製品差別化された財を生産するための知識の帰属価値に関する 動学式をモデルに導入することにより分析可能である。しかし、我々のように要素集約度の異 なる財を同時に分析対象とする場合には、数多くの帰属価格を考慮する必要があり、分析は非 常に複雑になる。 モデルを取り扱い可能にするため、以下では次の仮定を置く。分析の対象とする国では、特 許権制度等、技術知識の所有を保護する制度が確立していないため、新製品を開発した企業は 開発した当期のみは開発レントを得ることができるものの、来期には生産に関する技術・知識 ストックを他企業に習得され、開発レントは消えてしまうとする。従って、企業は新製品を開 発した当期のレントが開発コストを上回る場合にのみ、開発を行う。 開発当初のみ独占者である企業は限界費用の1/σ倍の価格をつける。このためθ 財の開発 によるネットの利益は、

(10)

(20) 1 1 1 1 (1 ( ) ) 1 ( )

(

θ,γ0

)

σ θ α σ σ θ α σ σ σ σ Γ −   −   − − − − − w r D DA とあらわされる。ただしDΓ

(

)

は当該国における新製品の開発コストをあらわす。Γ

(

)

は 財が高度になるほど上昇すると仮定し、 Γ=γ0 +γ

( )

θ ただし、 γ'

( )

θ >0 とする。われわれは世界の人口が増加し、世界の総支出 D が拡大するほど、新製品を開発す るコストDΓ

(

)

もこれに比例して上昇すると仮定している。 先にみたように、要素価格 r 、 w は k とΘの関数であった。従って、(20)式をθ 、 k 、Θ、 0 γ の関数として D

{ (

R θ,k

) (

−Γ θ,γ0

) }

であらわそう。 以下では、γ

( )

0 が十分に小さく、 γ

( )

θ θlim→∞ が十分に大きく、また、γ '

( )

θ が十分に大きいため、任意の k の下で、次の 3 式が成り立つと する。 R

(

0,k,0

)

− Γ

(

0,γ 0

)

>0 lim

{ (

Θ, ,Θ

) (

−Γ Θ, 0

) }

<0 ∞ → Θ R k γ

(

)

( )(

log log

) ( )

' 0 1 , − − Θ > Θ Θ − Θ α γ σ σ w r d d k R また補論2 で示すように、

{ (

, ,

) (

, 0

) }

<0 ∂ Γ − Θ ∂ θ γ θ θ k R

(11)

が成り立つ。従って、当期の企業による研究開発は R

(

Θ,k

) (

−Γ Θ,γ0

)

=0 を成り立たせるΘまでおこなわる。上式をΘについて解けば、自国で生産できる財のボーダー が得られる。この解Θは補論3 で示すように、 k の増加関数、γ の減少関数である。これを関0 数Θとして次式のようにあらわす。 (21) Θ =Θ

(

k+,γ−0

)

上式は自国の生産できる財のボーダーΘは、開発コストγ が低いほど高く、また k が蓄積さ0 れるほどΘも高くなることを意味する。開発コストが高いと、開発コストを含めた企業のレン トが低くなるため、企業の研究開発活動が抑えられ、Θが低くなる。一方 k が高まると資本の レンタルプライスが低下し、企業の開発レントが高くなるため、研究開発活動を活発にするこ とによって、Θが高くなる。

4 節 産業の高度化と経済成長

短期均衡に関する前節の考察をもとに、経済成長を分析しよう。 消費者の効用関数は次式であたえられるとする。 (22)

∞ ln

( ( ))

c t exp

( ( ))

β t dt 0 ただし、 c は自国一人当たりの実質消費額、β は時間選好率をあらわす。 自国の代表的家計が持つ一人当たりの物的資本と人的資本の和は k で表される。代表的家計 の予算制約は k に関する以下の動学式で表すことができる。 (23) kt = f

(

kt

(

kt,γ 0

))

ctnkt ここで、f

(

kt

(

kt,γ0

))

は、各財の生産量をあらわす(14)式右辺に各財の価格をあらわす(13) 式右辺を掛け、θ についてθ からΘまで集計した値を人口で割った自国一人あたり実質生産 額をあらわす。

(12)

(24)

(

(

γ

) )

(

(

γ

)

( )

(

γ

)

( ) σ θ σ θ α θ α d L D A k r k k w k k f t t t t t − − − Θ   Θ   ∫ = Θ 0 1 1 0 0 0 , , , , , (24)式における要素価格 r 、 w は、前節で見たように自国の資本労働比率 k と産業高度化 の程度Θの関数だが、内生変数であるΘは k と新製品開発コストを規定するパラメータγ に依0 存して決まった。したがって、自国の一人当たり生産額 f

(

)

は k とγ の関数であると考える0 ことができる。 新製品を当期開発した企業のみは独占レントが生じる。また新製品の開発のため費用が生じ る。しかしこれらの値はボーダーの産業のみで生じるため、Θが連続的に変化していく成長過 程ではマクロの生産額を表す(24)式と比べて次元の異なる微小な値であり、(23)式右辺で は明記していない。 自国の消費者の実質消費支出を自国をあらわす下付き添え文字 0 を省略してc とあらわし、t ハミルトニアンを、 Ht =u

(

ct

) (

exp −βt

)

λt

( (

F kt

(

k,γ0

) )

ctnkt

)

=0 で定義する。ポントリャーギンの最大化原理より、最適消費行動の必要十分条件は次の諸式で 与えられる。[詳しくはArrow and Kurtz(1970)]

(25) = '

(

) (

exp −

)

− 1=0 ∂ ∂ λ βt c u c H t t t (26)

( (

r k

(

k

) )

n

)

k H t t t t t t =− Θ − ∂ ∂ − = λ , ,γ0 λ (27) lim =0 ∞ → t t λ (28) lim ≥0 ∞ → t t t k λ 最適解の横断性条件(27)、(28)式が満たされていることは簡単に確認できる。 異時点間の消費の代替の弾力性が1 であると仮定したため、(25)、(26)式からλ を消去し た式は次のとおりあらわされる。 (29) r

(

k

(

k

) )

n c c t t t t + = Θ 0 , , γ β

(13)

ここで、(23)についてdk/dt=0、(29)についてdc/dt=0とおくことによって、均整成長を規 定する2 式が得られる。 (30)

(

(

) )

* 0 * * * , , k nk k f c = Θ γ − (31) r

(

k*,Θ

(

k*,λ0

) )

=n+β 長期均衡における一人当たり資本ストック * k は(31) 式で決まり、また長期均衡における 一 人 当 た り 消 費 * c はこのk と (30) 式 か ら 決 ま る 。 既 に 前 節 で 議 論 し た よ う に 、(31) 式左* 辺において産業高度化の程度

( )

Θ を与件とすれば、資本が蓄積され資本労働比率 k が上昇す るほど、限界生産性逓減により資本の収益率 r は低下していく。しかし一方では資本労働比率 の上昇は資本の収益率下落を通じて産業の高度化を促す。産業高度化は資本に対する需要を増 加させるため資本収益率の低下を抑制する働きをする。我々のモデルでは前者の効果は後者の 効果より大きく、したがって(31)式左辺は k の単調減少関数である。4)また生産関数がコブ・ダ グラス型であることより、十分に小さな * k のもとでは r はいくらでも大きく、十分に大きなk* のもとでは r はいくらでも小さくなる。したがって、(31)式を満たす資本労働比率の長期均衡 値 * k が存在し一意に定まる。このk のもとで(30) 式より長期均衡における一人当たり消費 水* 準 * c が定まる。

( )

r 関数の性質より、新製品開発コストのパラメーターγ が低いほど長期均衡における0 一人当たり資本ストック * k は高くなる。 当初経済が長期均衡にあったとして、それまで予想されなかった新製品開発コストの低下が 生じた(γ が低下)とき、何が起きるかを考えてみよう。図.7.2 はこのときの k と c の動学経路を0 示している。 新製品開発コストの低下は、それまでちょうど開発コストと開発レントが拮抗しその経済に とってボーダーであった産業において、開発レントが開発コストを上回る状況をつくりだす。 このため(21)式が示すように、自国産業のボーダーΘが上方へジャンプする(産業の高度化)。 瞬時的には開発コストは(24)式で表されるマクロの生産量と比較しても無視できない額にな る。5) 新製品開発コスト低下の影響はこれだけにとどまらない。産業の高度化(Θの上方ジャンプ) は(18)式が示すとおり、物的・人的資本に対する需要を高めることを通じて資本の収益率を 4) 補論 3 の分析から明らかなように、我々のモデルでは資本蓄積による産業の高度化は資本収益率が低 下して初めて起きる。したがって資本労働比率の上昇が産業の高度化と資本収益率の上昇を同時に生み出 すことはあり得ない。 5) 消費については時間を通じた平準化が行なわれるから、このときわずかに資本ストックが減少するこ とになる。しかし瞬時的なマクロ的に見て無視できない開発コストもストック量と比べれば次元の異なる

(14)

高くする。これは貯蓄を促し、一人当たり資本 k を次第に増加させていく。資本蓄積は(21) 式が示すように、開発レントを高めることを通じて産業の高度化を更に促進する。このような 産業高度化と資本蓄積の好循環は、経済が新しい長期均衡値に到達するまで続く。6) 優れた技術を持つ先進国企業が途上国に直接投資する場合には、先進国が既に開発した技術 や経営資源を途上国に持ち込むため、我々のモデルで言えば新製品開発のコストγ が低下した0 場合と同じことが起きると考えられる。直接投資によって、これまで見てきたような、産業構 造高度化と資本蓄積の好循環が促進されると考えられよう。 なお、直接投資は多くの場合、技術知識ストックや経営資源の移転だけでなく、資本移動も 伴う。資本移動が行われる場合には、経済成長が海外の資金によっても賄われるため、経済成 長はさらに加速されることになろう。

5 節 おわりに

この論文では、産業構造の高度化を内生化し、資本蓄積が資本集約的な財生産のレントを高 めることを通じて産業構造の高度化を誘発する効果と、産業構造の高度化が人的・物的資本に 対する需要を高めて資本収益率を支え、資本蓄積が限界生産力低下を通じて成長が行き詰まる メカニズムを抑制することを通じて、経済成長を持続させる効果の相互作用をモデルによって 分析した。直接投資は先進国企業の技術や経営資源のホスト国への移転を通じて、ホスト国に おける産業構造高度化と資本蓄積の好循環を促進する働きを持つと考えられることがわかった。 論文の最後に、残された課題について述べておこう。 第一に、我々はこれまで単純化のため資本移動は無いと仮定してきたが、我々のモデルに資 本移動を導入することはそれほど難しくない。この場合、興味深い現象が起きる。仮に完全な 資本移動によって各国の資本収益率 r が常に同一になるとすると、資本蓄積と経済成長は各国 の新製品開発コストに依存して決まることになる。γ が低く新製品が次々に開発される国では0 仮に資本労働比率が既に十分高くても資本に対する需要が旺盛で、資本流入による経済成長が 続くのに対し、γ が低い国では、仮に資本労働比率が低い途上国であったとしても資本の流出0 と経済の停滞が生じることになる。 第二に、我々のモデルでは資本収益率が低下して初めて新製品開発が誘発されるため、産業 構造高度化が資本の収益率を上昇させて資本蓄積を促し、資本蓄積が産業構造高度化を促進す るという好循環による、内生的成長現象は起きない。しかし、例えば小国の仮定を外し、経済 成長が(19)式の総需要

( )

D を高めることを通じて新製品開発のレントを高めると言ったメカ ニズムを導入すれば、内生的成長をもたらす新しいモデルが構築可能かもしれない。 第三に、実際に測定可能な産業構造高度化指標を作ることにより、実証分析を行うことが可 6) 0 γ が下落した当初において、消費の水準がそれまでより高くなるか否かはさまざまなパラメーターの 値に依存する。位相図は高くなる場合について描いている。

(15)

能かもしれない。その場合には旧社会主義国のように政府の介入によって産業構造高度化を無 理に進めた場合にはむしろ弊害が生じるというもう一つの重要な問題を考慮に入れる必要が生 じよう。

(16)

表. 7 . 1 日米独企業の発展途上地域及び移行経済地域での雇用者数 <1 9 9 6 年> (万人) 日系現地法人 米国系現地法人 ドイツ系現地法人 東アジア 150 94 18 中南米 15 153 28 ロシア・中・東欧 0.6 16 380 出所:通産省、『平成11 年版通商白書』 表. 7 . 2 対内直接投資の G D P に対する比率:地域別比較 <1 9 9 8 年末> (%) 東アジア 中南米 ロシア・中・東欧 中国 23.5 アルゼンチン 12.3 アルバニア 14.7 香港 54.6 ボリビア 35.7 ブルガリア 9.4 インドネシア 28.6 ブラジル 15.9 チェコ 22.8 韓国 3.5 チリ 33.3 エストニア 24.5 マレーシア 38.1 コロンビア 14.3 ハンガリー 34.7 フィリピン 10.2 エクアドル 23.4 ラトビア 23.0 シンガポール 81.6 ペルー 11.1 リトアニア 10.9 台湾 7.0 ベネズエラ 16.3 ポーランド 11.6 タイ 8.5 メキシコ 12.5 ルーマニア 10.4 ロシア 3.2 スロバキア 8.2

出所:United Nations Conference on Trade and Development, World Investment Report 1999: Foreign Direct Investment

(17)

表. 7 . 3 . a 米国の中・南米に対する業種別直接投資残高 <1 9 9 8 年末> 中南米およびカナダを除くその他西半球諸国向直接投資残高 (百万ドル) 全産業 196,655 卸売 7,997 石油 9,711 銀行 3,198 製造業計 48,008 金融(銀行を除く)・保険 98,845 食品 9,784 サービス 6,910 化学 12,250 その他非製造業 21,986 金属 2,403 一般機械 2,009 電気機械 3,089 輸送用機器 6,478 その他製造業 11,995

出所:U.S. Department of Commerce. Survey of Current Business, Vol.79, No.9, 1999.

表. 7 . 3 . b 日本のアジアに対する業種別直接投資残高 ( 大蔵省届出統計) <1 9 9 7 年度末> (10 億円) 合計 16,440 非製造業計 8,310 証券・債権 農・林業 96 製造業計 7,728 漁・水産業 97 食料 353 鉱業 2,118 繊維 748 建設業 242 木材・パルプ 180 商業 1,260 化学 1,192 金融・保険 1,316 鉄・非鉄 1,026 サービス業 1,554 機械 655 運輸業 409 電機 1,799 不動産業 903 輸送機 721 その他 321 その他 1,055 支店 387 不動産 10 出所:大蔵省、『財政金融統計月報』、No.560、1999 年 12 月

(18)

図. 7 . 1

(19)

参考文献

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(20)

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UNCTAD (1999) World Investment Report 1999, United Nations.

UNCTAD (1998) World Investment Report 1998, United Nations.

(21)

補論

1 .

r

関数と

w

関数の性質について

こ の 補 論 で は 、(18)式の関数r=r

(

k

)

が k の減少、Θ の増加関数であること、関数

(

Θ

)

=w k, w が k の増加関数であることを示す。 労働市場の需給均衡条件(16)式の左辺から右辺を引いた値を F と定義する。 (A1)

(

( )

( )

F

D

L

d

r

w

w

A

− Θ − − − −

α

θ

θ

θ α σ σ σ σ σ 1 0 1 1 1

1

同様に、資本市場の需給均衡条件(17)式の左辺から右辺を引いた値を G と定義する。 (A2)

( )

( ) ( )

G

D

L

k

d

r

w

r

A

− − Θ − − − −

α

θ

θ

θ α σ σ σ σ σ 1 1 0 1 1 1 (16)、(17)式を全微分すると、 (A3)      Θ − − Θ − − =             Θ Θ d G dk G d F dk F dr dw G G F F k k r w r w ただし、 F と G の各偏微分は次式で与えられる。

(

( )

)

( )

θ

θ

α

σ

θ α σ σ σ σ σ σ

d

r

w

w

A

F

w − Θ − + − − −

=

1 0 1 2 1

1

1

1

(

( )

) ( )

( )

0

1

1

1 0 1 2 1

<

+

− Θ − + − − −

α

θ

α

θ

θ

σ

σ

σα θ σ σ σ σ σ

d

r

w

w

A

(

( )

) ( )

( )

0

1

1

1

1 0 1 1 1 1

<

=

− Θ − − − − −

α

θ

α

θ

θ

σ

θ σ σ σ σ σ

d

r

w

r

w

A

F

r

(

( )

)

( )

0

1

1 1 1 1

>

Θ

=

Θ − − − − − Θ α σ σ σ σ σ

α

r

w

w

A

F

Fk =0

(

( )

) ( )

( )

0

1

1

1 0 1 1 1 1

<

=

− − − −−

Θ

α

θ

α

θ

θ

σ

σ

σ α θ σ σ σ σ

d

r

w

w

r

A

G

w

( )

( )

θ

θ

α

σ

θ α σ σ σ σ σ

d

r

w

w

r

A

G

r − Θ − − − − −

=

1

0 1 1 2 1

1

1

(22)

(

1

(

) )

(

)

( ) 0 1 1 0 1 2 1 <     −   −   + − − − − −

αθ αθθ σ σ σαθ σ Θ σ σ σ σ d r w w r A

(

)

( ( )) 0 1 1 1 1 1 >     = − − − − − − − σσ αΘ σ σ σ Θ A r α Θ wr G =− <0 D L Gk 以上より、 w r r w r k G F G F F G dk dw − = w r r w w k G F G F F G dk dr − − =

(

)

w r r w r r G F G F F G G F d dw − − − = Θ Θ Θ

(

)

w r r w w w G F G F G F G F d dr − − − = Θ Θ Θ ここでそれぞれに共通な分母FwGrFrGwは、下記より、符号が正に確定する。 FwGrFrGw=

(

)

        −           − − − − − 2 1 2 2 1 1 1 r w A σ σ σ σ

(

( ) )

( )

( )

( ) θ θ α θ θ α θ α σ σ Θ θ α σ σ Θ d r w d r w − −                     −     

1 0 1 0 1

(

( ) )

( )

( )(

θ α

( ) )

θ ( ) θ α θ θ α σ θ α σ σ Θ θ α σ σ Θ d r w d r w − −     −     − −

0 1 1

0 1 1

(

( ) )

( )

( )

( )              − −σ

α θθ

α θθ θ α σ σ Θ θ α σ σ Θ d r w d r w 1 0 1 0 1

(23)

われわれの仮定、σ <1/2のもとで、α

( ) (

θ > 1−α

( ) )

θ だから、第一項の半分は第二項よ り大である。また、第一項の半分は第三項より大である。従って、上式の符号は正である。 dk dw / については、分子の−GkFrが前述の議論より正であるため、全体の符号は正であるこ とがわかる。 dk dr / についても、同様に分子の−GkFwが正であるため、全体の符号は正であることがわか る。 Θ d dr / についても、以下のように分子−

(

FwGΘFΘGw

)

の符号は正が確定する。 −

(

FwGΘFΘGw

)

       −            = −− −1− −1 2 2 1 1 1 r w A σ σ σ σ

(

(

) )

(

)

( )

θ

θ

α

α

θ α σ σ α σ σ

d

r

w

r

w

− Θ Θ −









Θ



1 0 1

1

(

(

) )

( )

)(

( ) )

(

θ

α

θ

( )

θ

α

Θ

α

σ

θ α σ σ Θ Θ α σ σ

d

r

w

r

w

− −









1 0 1

1

1

( )

( )

)(

( ) )

(

( )            −       −σα Θ

αθ α θθ θ α σ σ Θ Θ α σ σ d r w r w 1 0 1 1 ここで、第一項と第二項については、σ <1/2の仮定の下で、α

( ) (

θ > 1−α

( ) ) ( )

θ α θ だか ら、第一項の半分は第二項より大である。また、第一項と第三項についても、

( )(

( ) )

( )

( )(

θ α

( ) )

θ ( ) θ α θ θ α α θ α σ σ θ α σ σ d r w d r w − Θ − Θ       − >       − Θ

1 0 1 0 1 1 が成立するから、第一項の半分は第三項より大である。従ってdr/dΘ>0が示された。

補論

2 . θの決定式について

この補論では、 R

(

Θ,k

) (

−Γ Θ,γ0

)

=0 をみたすΘが存在し、かつ一意に定まることを示す。

(24)

この命題が成立するための十分条件である次の3 つの条件が成り立つことを以下で示そう。 補題( I )

(

, ,

) (

, 0

) { (

, ,

) (

, 0

) }

(

, ,

)

<0 Θ ∂ Θ ∂ + ∂ Γ − Θ = Θ ∂ Θ Γ − Θ Θ ∂ Θ = Θ = θ θ θ θ γ θ θ γ R k R k k R 補題(II) Θ→0のときR

(

Θ,k

) (

>Γ Θ,γ0

)

が成り立つ。 補題(III) Θ→∞のときR

(

Θ,k

) (

<Γ Θ,γ0

)

が成り立つ。 補題( I ) について。 まず、第一項

{ (

R θ,k,Θ

) (

Γ θ,γ0

) }

/θ θ=Θについて調べる。 R

(

θ,k

) (

−Γ θ,γ0

)

(

Θ

)

( ( ) )

(

Θ

)

( )

(

γ γ

( ) )

θ σ σ θ α σ σ θ α σ σ σ + −    −    = − − − − − − 0 1 1 1 1 1 1 k , r k , w A よって、

{ (

) ( }

=Θ ∂ Γ − Θ ∂ θ θ θ θ ,, k R

(

)

( ( ) )

(

)

( )

( )(

)

( )

Θ = − − − − − −   −   Θ Θ = θ σ θ σα σ θ α α σ σ θ γ θ θ α ' log log , , 1 1 1 1 w r d d k r k w A

(

)

( )(

) ( )

− Θ Θ Θ − Θ = log log ' 1 , α γ σ σ w r d d k R 仮定よりこれは負であることがわかる。 つぎに、第二項R

(

θ, k,Θ

)

/Θについても,以下のとおり符号は負であることがわかる。 (A4)

(

)

( ) ( )      −        −   = ∂ Θ ∂ − Θ− − Θ − Θ = σ σα σ σ σα σ σ θ σ θ 1 1 2 1 2 1 1 1 È , k , r w A G F G F R w r r w

(

( ) ) (

( ) )

( ( ) )

( )

( ) ( ( ) )

(

( ) ( )

( )            −       −             Θ −      Θ − −      − Θ Θ − − − − Θ Θ − − −

αθ θ σ αθ αθ θ α α θ α σ σ α σ σ θ α σ σ α σ σ d r w r w d r w r w 1 0 1 1 1 0 1 1 1 1 1

( ) ( )

( ( ) )

(

( ) )

( ) ( ( ) )

(

( ) ( )

( )                             − Θ Θ − Θ Θ − − − − − Θ Θ −

d

r w r w r w r w σαθ σ α σ σ θ α σ σ α σ σ θ α θ α σ θ θ α α α 1 0 1 1 1 0 1 1 1 1 上式の最後の大括弧内のうちのこのうち−α

( )

Θ の項は負である。

(25)

次に最後の大括弧内の符号を確定するため、2 つの場合に分けて考える。 まず、α

( )

Θ >1−α

( )

Θ の場合には、

(

( ) )

( )(

( ))

( ) θ θ α θ α θ α σ θ α σ σ σ σ d r w r w − − Θ −     −     − 1

0 1 1 1

( )

( )

( )(

θ α

( ))

θ ( ) θ α θ α σ θ α σ σ α σ σ d r w r w −− −Θ Θ −     −     <

0 1 1 1 1 が成立する。 また、

Θ α

( )(

Θ 1−α

( ) )

θ dθ >

Θ α

( )(

θ 1−α

( ))

θ dθ 0 0 より、

(

( ) )

( )

(

α

( )) ( )

α θ ( ( ) ) θ α θ α σ σ α σ σ d r w r w − Θ Θ − − −     Θ −     Θ −

1 1 0 1 1 1

( )

( ( ) )

(

α

( )) ( )

θ α θ ( ) θ α θ α σ σ α σ σ d r w r w − − − Θ Θ −       −       Θ <

0 1 1 1 1 が成立する。

( )

θ α − 1 の項は絶対値が−α

( )

θ の項の絶対値を上回るから、(A4)式は負である。 次にα

( )

θ <1−α

( )

θ の場合にはα

( )

θ <1/2が成立するため、1−α

( )

Θ <1/2<σまた、

Θα

( )

θ >

Θ α

( )(

θ 1−α

( ))

θ 0 0 従って、1α

( )

Θ の項も負が確定する。従ってやはり(A4)式は負となる。 以上より補題(I)の第二項∂R

(

θ, k

)

/∂Θは負が確定する。 よって、補題(I)は示された。 補題(II)と補題(III)については、仮定より成立する。 以上より、Θの存在および一意性が示された。

補題

3 . ( 2 1 ) 式θ関数

Θ=Θ

(

k,γ0

)

の性質について

こ の 補 論 で は 、 R

(

θ k, ,Θ

) (

−Γ θ,γ0

)

=0 の 解 と し て 定 義 さ れ た(21) 式 の Θ 関 数

(

k,γ

)

Θ = Θ が、∂Θ/∂k >0,∂Θ/∂γ <0の性質をもつことを示す。

(26)

まず、Θと k の関係については、R

(

θ,k,Θ

)

−Γ

(

θ,γ0

)

=0を全微分すると、 + ∂ ∂ + ∂ ∂ dk k R d R θ θ ∂Θ Θ ∂ d R θ ∂ Γ ∂ − 0 0 0 = ∂ Γ ∂ − γ γ θ d d 従って、 Θ θ Θ θ Γ θ Θ =       ∂ ∂ + ∂ ∂ − ∂ ∂       ∂ ∂ − = R R k R dk d ここで、分母については、補論2 の議論により負である。分子についても、 ( ) ( )               − = ∂ ∂ Θ − − Θ−+ Θ = σ σ σα σ σα θ σ 1 1 1 2 1 1 r Lw k R

( )

(

( )

)

( )

( )

(

( )

)

( ) Θ = − Θ − Θ               − −       − Θ

θ θ α σ σ θ α σ σ θ θ α θ α σ θ θ α α d r w d r w 1 0 1 0 1 1 であり、σ <1より、符号は正に確定する。 Θとγ0の関係についても同様に、 Θ =       Θ ∂ ∂ + ∂ Γ ∂ − ∂ ∂ ∂∂Γ = Θ θ θ θ γ γ R R d d 0 0 このうち、∂Γ ∂γ0は仮定より正。分母は補論2 より正。従って、全体の符号は正であること がわかった。

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