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(1)

2020年度 入学試験問題

( 6 0 分)

国 語 国 語

〔 注 意 〕

   

① 問題は

まであります。

② 解答用紙はこの問題用紙の間にはさんであります。

③ 解答用紙には受験番号、氏名を必ず記入のこと。

④ 各問題とも解答は解答用紙の所定のところへ記入 のこと。

⑤ 各問題とも特に指定のない限り、句読点、記号な ども一字に数えること。

   

西大和学園中学校

(2)
(3)

問題は次のページから始まります。

(4)

  次の文章は俳句の季語について説明した文章です。筆者はこれより前の部分で「俳句は人間と自然を切り離して考える世界に立って いるのではなく、むしろどんなに自然だけを

んでいても、実は作者の心という最も人間的な部分が

かくしん

にはある」と述べています。 これを読んで、あとの問いに答えなさい。

  赤い 椿

つばき

白い椿と落ちにけり    河

かわ

ひがし

へき

とう

  色 の コ ン ト ラ ス ト が 効 い た 写 真 の よ う な 俳 句 で す。 椿 は 花 ご と「

X

」 花 で、 一 片 ず つ「

Y

」 花 で は あ り ま せ ん。 大輪の花ですが、 牡

たん

のような色気も、白百合のようなきりっとした感じも、 薔

薇 のような洋風の、ゴージャスな感じもありません。 これら別の ゾクセイ を持つ大輪の花と比べた時、椿は「品格」の花だということに気づかされます。

  「この句はどこにある椿を詠んだのでしょうか?」とアンケートを取れば、大きな庭を持つお寺か、かつての武家 屋

しき

のような和風 の建築、それも格式のある建物を多くの人が想像するのではないでしょうか。それを読み解いた読者は、作者が思わず心 惹

かれた、椿 の 色 の 典

てん

さ ― ― そ れ は 木 に 咲 い て い る 時 で は な く、 点 々 と 花 ご と 色 を 交 え て「

X

」 時 に 感 ず る も の で、 こ の 句 の 舞 台 が 静 かな環境であることを連想させますが、それらを含めて椿の美に共鳴しているわけです。

  人間が前面に出ている俳句もあります。

   御

手 討

うち

の 夫

婦 となりしを 更

ころもがえ

衣    与

謝蕪 村

そん

  江

戸 時代、武家に 奉

ほうこう

公 する男女は、 恋

こい

をしてはいけない決まりでした。しかし、それでも 抑

おさ

えきれないのが恋の情というもの。ただ し、発覚すれば 殿

との

さま自ら成敗する、厳しいルールがありました。一夫多妻の時代、武家屋敷で「男」は殿さまだけでなくてはならな かったわけです。

  一 度 は 二 人 と も 死 を 覚

かく

し た と こ ろ、 お 殿 様 の 温 情 で、 (     ) ど こ か 別 の 場 所 で 新

婚 生 活 を 送 っ て い る の で し ょ う。 か つ て は 衣 類 は 女 性 が 仕 立 て る も の で し た。 1 夏 の 季 語「 更 衣 」 の 季 節 感 が こ こ で は 生 き て い ま す 。 冬 か ら 春 に か け て 着 用 し て い た 衣 を、 白 か、 あるいは 華

はな

やかな色の、しかも軽い材質の着物に 着

替 えるわけですが、そこには 新

しんせん

鮮 さと、初夏特有の生命感があります。 (     )、 命がけの危機を乗り 越

えて、今の幸せを感じるというドラマのような一場面を 象

しょうちょう

徴 し、実感を持たせるのが季語「更衣」でした。

(注3) (注1)

(注2)

(5)

   2 古池や 蛙

かわず

飛び込む水の音    松

まつ

しょう

  た だ の 古 い 池 で は あ り ま せ ん。 「 古 」 は「 故 」 に 通 じ、 か つ て は 人 が 住 ん で い た が、 今 は 誰

だれ

も 住 ん で い な い 家 の 池 の こ と で す。 そ ん な場所で、 蛙

かえる

が飛び込んだ音に耳を 傾

かたむ

けている人物は、相当 閑

ひま

な人ですね。

  単にすることがないというのではありません。心に 悩

なや

み事や迷う事もない、落ち着いた心でないと、こんな 状

じょうきょう

況 は 迎

むか

えられません。 その心の静けさの中に聞こえてきたのが、蛙の水に飛び込む音だったのです。その音は、作者の雑念のない心によってすくい取られた 音 だ っ た わ け で す。 ま た、 「 古 池 」 は 一 種 の「 死 」 の 世 界 で も あ る わ け で す が、 そ ん な と こ ろ に も 生 き 物 の 命 の 躍

動 を 聞 き 取 っ た と も 言えるでしょう。まさに作者の心が切り取った季語でした。

  和歌・連歌では蛙は鳴き声を 鑑

かん

しょう

するものでした。しかし、芭蕉の心は、この「蛙」に新しい連想を見出したという意味でも、実は カッキテキ であったわけです。

  季 語 は 決 し て、 た だ の「 自 然 」 で は あ り ま せ ん。

Z

結 果、 選 ば れ て き た 言 葉 だ っ た わ け で す。 こ う し た「 季 語」の説明を終えた後、学生諸君に感想・質問・意見はないか聞いてみます。そこで多く出てくるものは、誰がどうやって季語を認定 していくのですかという質問です。

  それは、多くの読者が名句だとして アイショウ するような句が詠まれた時、季語として定着します。そして、それを登録していっ たのが「 歳

さい

記 」なのだ、と答えることにしています。俳句/ 俳

はいかい

諧 の歴史の中では、まず江戸時代に 北

きたむら

村 季

ぎん

という 連

れん

師 でもあり、 俳 諧 作 者 で も あ り、 古 典 文 学 の 学 者 で も あ っ た 人 物 が 編 ん だ『 増

山 の 井

』( 一 六 六 七 年 刊 ) と い う 歳 時 記 に よ っ て、 基 本 線 が 出 来 ま し た。季吟は、和歌に通じ、連歌の本意も熟知していましたから、和歌・連歌以来の季の 詞

ことば

を 踏

まえた上で、俳諧が 開

かいたく

拓 した季語を加え て登録したのでした。芭蕉も、その俳歴の出発は、季吟の流れを 汲

むものでした。

  近 代 に な っ て か ら は、 3 高

浜 虚

きょ

の『 新 歳 時 記 』( 昭 和 九〈 一 九 三 四 〉 年 刊 ) が 大 き な 影

えい

きょう

力 を 持 っ て い ま す。 近 代 に な っ て、 新 し い季語を認定し、その弟子たちと詠んできた虚子は、その言葉と例句を登録し、その季節感を、簡にして ヨウ を得た、しかも情感の ある文章で解説しました。昭和三十年代に入って日本人の生活が、工業化によって大きく変化して以降、季語は、失われゆくかつての 日本人の生活に根差した季節感を見つめ直す色を帯びるようになりました。こうした名もなき日本人が営んできた生活文化を研究する のは、 柳

やなぎ

くに

や 折

おりくちしの

口信 夫

のような 民

みんぞく

俗 学者の役割でしたが、昭和三十年代以降の歳時記 編

へんさん

纂 に主たる役割を果たした 山

やまもとけんきち

本健吉 と、そ

(注4)

(6)

れをバックアップした 角

かどかわげんよし

川源義 が共に、折口の弟子であったのは象徴的です。

  俳 句 を 詠 む と い う こ と は、 そ の ま ま「 季 語 」 の 持 つ 情 感 に 共 鳴 す る こ と を 意 味 し ま す。 「 季 語 」 と い う レ ン ズ を 通 し て み た、 自 然 と 人間の営みを 描

えが

くと言い 換

えてもよいでしょう。そういう 行

こう

は、我々にどんな影響を与えるでしょうか?

  俳句を詠むようになると、花の名前や生き物の名前、それにその季節感を数多く知るようになります。今までは、ただ「きれいな花 だ な 」 と 思 っ て 通 り 過 ぎ て い た も の も、 「 あ れ は「 槿

むくげ

」 と い う の か、 白 も あ れ ば 底

紅 も あ る ん だ な、 夏 の 終 わ り か ら 見 か け る け ど 秋 の 花なんだなあ。そういわれてみるときれいだけど、ちょっと 寂

さび

しい感じもする花だよなあ」といった具合に、身近になります。

  自 然 に 関 心 を 持 つ だ け で な く、 そ こ か ら 情 感 を 得 る よ う に な る わ け で す。 芭 蕉 は、 そ の こ と を「 四

しい

を 友 と す 」( 「 笈

おい

の 小 文 」) と 言 い 表 し て い ま す。 友 達 で す か ら、 楽 し い、 嬉

うれ

し い、 悲 し い、 寂 し い 等 々、 い ろ い ろ な 情 感 を 共 有 し て く れ ま す。 (     ) 話 し か け た りはしませんが、関心を持って見るようになると、いっしょに笑ったり、泣いたり、 励

はげ

ましてくれたりします。

  さらに、俳句を詠むようになると、時間の流れが 違

ちが

って感じられます。何分刻みの時間に追われる世界とは別のものです。かつて時 間は、 「月日」と呼ばれたように、天体の運行に ソ って、 巡

めぐ

り来るものでした。 「一年」を計測する「 暦

こよみ

」は「 日

読 み」が語源であっ た と 言 わ れ る よ う に、 日 の 動 き を 観 測 し 計 測 す る こ と で、 四 季 の 循

じゅん

かん

を 誰 に も 確 認 で き る よ う 時 の 流 れ を 人

じん

的 に 区 切 っ た も の で し た。そこに「時計」のような機械で測った精密な時間感覚はありません。

  今日のように、電車や自動車や飛行機、それにインターネットを使って、正確に人・モノ・金を移動させる時代、学校や職場での時 間は、数字に刻まれたそれです。しかし、 休

きゅう

けい

時間や日曜日、それに夏休みには、時計を忘れた「時間」が流れます。俳句の「時間」 とは、まさにそういうものです。 (     )旅をしなくても、ちょっとした合間に心の「旅」をすることができます。

  今 や 人 間 は、 「 衛 星 」 と い う 名 の 人 工 の 天 体 を、 地 球 の 周 り に 打 ち 上 げ、 そ れ を 基 準 に グ ロ ー バ ル に 時 を 刻 む 時 代 に な り ま し た。 し かし、我々はそういう数字に支配される時間の中で暮らしていても、それだけで生きていくことはできません。時計が刻む時間感覚だ けで生きていく「ひずみ」を 癒

いや

す、めぐりくる「月日」や、新しい「年」が来ては古い年が過ぎ去ってゆく感覚、あるいは「友」とし て折々の「生」の情感に共鳴してくれる、 (     )絵や写真付きの日記の素材のような存在がもたらす「時間」 、それこそが「季語」 の「心」だったわけです。 ( 井

いのうえ

上 泰

やす

の文章による。井上泰至編『俳句のルール』所収。一部改変)

(7)

【語注】

  (注 コントラスト   …   色や形などの視覚的な差。

  (注 御手討      …   武士が家来などを 処

しょばつ

罰 すること。ここでは「御手討になるはずだった」という意味で用いられている。

  (注 奉公       …   主人に仕え、雑用などのさまざまな仕事を手伝うこと。

  (注 連歌師      …   複数人で一つの和歌を詠む「連歌」を専門に行う人。

問一       部 のカタカナを、それぞれ漢字に直しなさい( 楷

かい

しょ

で、ていねいに書くこと) 。 問二   (     )~(     )にあてはまる語としてふさわしいものを、次の中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさい。ただ し、同じ記号を二度以上用いてはいけません。

   ア   おそらく    イ   決

けっ

して    ウ   まさに    エ   まるで    オ   わざわざ 問三  

X

Y には動作を表す語が入ります。それぞれの空らんに入る語を、自分で考えて答えなさい。 問四       部 「夏の季語『更衣』の季節感がここでは生きています」とありますが、それはどういうことですか。その説明として 最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   「更衣」という語が持つ、夏という新しい季節が始まるという興奮した様子とそれまで着ていた衣は捨てられてしまうはかな さが「御手討…」の俳句が描いているこれから始まる新婚生活へのあこがれと不安とを表しているということ。

   イ   「 更 衣 」 と い う 語 が 持 つ、 春 ま で の 衣 か ら 夏 用 の 衣 に 着 替 え る と い う 気 持 ち の 切 り 替 え と そ の 夏 ら し い 生 き 生 き し た 様 子 が 「御手討の…」の俳句が描いている新しい生活をスタートさせる夫婦の活力にあふれた様子を表しているということ。

   ウ   「更衣」という語が持つ、人目につかないよう着ていた地味な衣から華やかな衣に着替えるという美しさと夏の生物たちは派 手な姿のものが多いという事実が「御手討の…」の俳句が描いている夫婦の姿の際立った美しさを表しているということ。

   エ   「更衣」という語が持つ、今後は寒さにたえなくて済むという安心感と夏になり活発になった他の生物におそわれるこわさを 「御手討の…」の俳句が描いているようやく幸せをつかんだ夫婦を待つ 辛

つら

い生活を表しているということ。

   オ   「更衣」という語が持つ、今までの衣を捨てるというめったにない体験であると共に前向きに生きようとする行為だという意 味が「御手討…」の俳句が描いている今までの辛い体験を忘れて今後の生活のことだけを考える姿を表しているということ。

(8)

問五       部 「古池や蛙飛び込む水の音」とありますが、この俳句について筆者はどのように考えていますか。その説明として最 もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   「 古 池 の …」 の 俳 句 の 季 語 は「 蛙 」 で あ り、 こ こ に は 当 た り 前 に く り 広 げ ら れ て い る 光 景 の な か か ら、 松 尾 芭 蕉 が 特 に 感 じ 入った部分が切り取られて表現されていると考えられる。

   イ   「古池の…」の俳句の季語は「蛙」であり、ここには 普

だん

あまり人の目にふれないものにも目を向けてしまうほど時間が余っ ている、ゆっくりとした時間が流れるさまが見て取れる。

   ウ   「古池の…」の俳句の季語は「蛙」であり、ここには人が注目しやすいところにあえて注目せずに、人と違ったことをしてや ろうという松尾芭蕉の野心が表現されていると感じられる。

   エ   「古池の…」の俳句の季語は「古池」であり、ここには当たり前にくり広げられている光景のなかから、松尾芭蕉が特に感じ 入った部分が切り取られて表現されていると考えられる。

   オ   「 古 池 の …」 の 俳 句 の 季 語 は「 古 池 」 で あ り、 こ こ に は 普 段 あ ま り 人 の 目 に ふ れ な い も の に も 目 を 向 け て し ま う ほ ど 時 間 が 余っている、ゆっくりとした時間が流れるさまが見て取れる。

   カ   「古池の…」の俳句の季語は「古池」であり、ここには人が注目しやすいところにあえて注目せずに、人と違ったことをして やろうという松尾芭蕉の野心が表現されていると感じられる。 問六  

Z

に入る語句として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   自然を守ることの大切さが認められた

   イ   人間がそこから情感をくみ取った

   ウ   その「自然」が強い季節感を持った

   エ   膨

ぼうだい

大 な時間をかけて成長を 遂

げた

   オ   それが人間から忘れ去られてしまった       部 「 高 浜 虚 子 の『 新 歳 時 記 』」 と あ り ま す が、 次 に あ げ る の は『 新 歳 時 記 』 に あ る 季 語 の 説 明 と、 同 書 に 掲 載 さ れ て い るその季語が使われた俳句の例です。それぞれ何という季語についての解説だと考えられますか、ひらがなで答えなさい。なお、 それぞれの にはその季語が入ります。また、引用にあたっては一部の表記を改めています。

(9)

     雛

ひな

まつり

にはなくてならぬ花である。 華

はな

やかではあるがどことなく 鄙

ひな

びた感じがする。

      古寺の に米ふむ男かな 芭蕉       菓

子 盆

ぼん

にけし人形や の花 其

かく

      咲けど茶店なければ人も来ず 香

こううん

雲      の 種 類 は 甚

はなは

だ 多 く、 何

いず

れ も 横 に 這

う。 海 に も 川 に も 山 に も 居 て、 山 や 河 の は 梅 雨 時 分 特 に そ の 出 歩 き がはげしいようである。 (後略)

      赤き 松をま は

(わ)

れば黒きかな 春

しゅん

みん

      その 泡

あわ

のなかに眼うごきもくづ 圓

えん

りょう

      逃

げてゆく 途

ちゅう

の穴に は ひ

(い)

る 何

ちょう

     秋 の 夜、 雷

鳴 な く 電 光 の み が 走 る こ と が あ る。 こ れ を い う の で あ る。 古 い 諺

ことわざ

に「 陽

炎 は 消 え て 明 る く、 は 消 え て くらし」とある。 があって 稲

いね

が実るという 俗

ぞくせつ

説 もある。

      やきの ふ

(う)

は東 け

(きょう)

ふ は西 其角       や堅田 泊

とま

りの 宵

よい

の空 蕪村       やあらぬ所の鳥おどし 月

げっ

けい

     陰

いんれき

暦 十二月のことであるが、今は一年の 終

おわ

りの月という意味で 陽

ようれき

暦 の十二月にも用いられている。 慌

あわただ

しい 歳

さいまつ

末 人事を象徴した 名である。

      たび寝よし宿は の夕月夜 芭蕉

      奈

良 に来て ともなき一日かな 一秋

      能を見て故人に 逢

(い)

し かな 虚子

問八   筆者は俳句を詠むことの効果をどのように考えていますか。本文全体をふまえて、八十字以内で説明しなさい。

(10)

問九   本文の内容としてふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   「赤い椿…」 「御手討の…」 「古池や…」という俳句が長い間人々に好かれ続けているのは、どの俳句も今までだれも思いつか なかった季語を作り出し、独特な情景を描いたからである。

   イ   工業化が進んだことで日本の人々は自然の存在を忘れかけていたが、高浜虚子が『新歳時記』という本を出版したことによっ て、現在まで続く自然を大切にする日本人の心は育まれた。

   ウ   時代が移り変わるにつれて、日本の人々はなかなか俳句を詠まなくなってきたが、近代以降の俳人たちが新しい季語を作り出 したことによって現在ではふたたび俳句が注目されている。

   エ   かつて人々は自然の天体を見て大ざっぱに時間というものを感じた生活をしていたが、現代の人々は人工衛星から送信される 情報をもとにした厳密な時間にしばられた生活をしている。

   オ   現代は技術の発展によって正確な数字を測ることができ、また人や物をより早く移動させられるようにもなった結果、グロー バルな社会を作り上げ、人々の心も豊かな時代となった。

(11)

問題は次のページに続きます。

(12)

  みのりは幼い

ころ

から

なり

のおばあちゃんの家によく通っていた。みのりの家族はおばあちゃんの家をインキョと呼び、おばあちゃんの 食事や

せんたくもの

濯物 をインキョに届けていた。ある日、みのりの弟が「おばあちゃんが、ひとりでしゃべってる」と言い始めたが、家族は弟

かんちが

いではないかと思っていた。次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

  おばあちゃんがひとりでしゃべってる、と、今度はお母さんがいいだした。 「聞こえてくるのよ、話し声が」 「ほらね、だからいったじゃん」

  弟はなぜか得意気だった。

  お父さんは、それでもまだ信じなかった。気のせいじゃないのか、などといっていた。でもその数日後、ガレージに車をだしにいく 時に、インキョの戸の向こうから聞こえてくる声に気づいた。

  ばあさん!   誰

だれ

としゃべってんだ!   お父さんは思わず声を 荒

あら

げた。思いきり開けた戸の向こうには、 窓

まどぎわ

際 に(     ) 座

すわ

ったおば あちゃんの後ろ姿があるだけだった。

  み の り も、 み ん な よ り 少 し 遅

おく

れ て そ の 声 を 聞 い た。 運

動 靴 を 洗 い に 外 の 水 道 へ 向 か う 途

ちゅう

、(     ) 気 に な っ て、 イ ン キ ョ の 前 で 足を止め、耳を 澄

ませた。すると聞こえた。

  ぼくちゃん……、ぼくちゃん……。

  それは、とてもやさしい、おばあちゃんの声だった。

  みのりに語りかける時よりも、 (     )やさしい。

  1 み の り の 首 筋 に 鳥

肌 が 立 っ た 。 お ば あ ち ゃ ん は、 お ば あ ち ゃ ん に し か 見 え な い 相 手 と 会 話 し て い る。 そ の 相 手 と い う の は、 お ば あ ちゃんにとって、きっと 誰

だれ

よりも、みのりよりも、大好きで大切な存在に 違

ちが

いない。

  五月に入って最初の土曜日。午後二時からおばあちゃんの誕生日会がひらかれた。お父さんの仕事と、みのりの部活動、両方休みな のはこの日のこの時間しかなかった。

  初めて家族全員がインキョに集まった。

  お母さんは、歯が 丈

じょう

でないおばあちゃんのために、プリンでできたケーキを買ってきた。モンブランが良かったとブツブツ文句を いっていた弟は、一番大きく切り分けられたのを自分の皿にとった。みのりにすすめられて、おばあちゃんは上にのったキウイをひと

(13)

かけら口にした。

  ケ ー キ を 食 べ た あ と は、 各 自 用 意 し て き た プ レ ゼ ン ト を お ば あ ち ゃ ん に 手

わた

し た。 お 父 さ ん は 新 し い ラ ジ オ、 お 母 さ ん は ス ト ー ル だ っ た。 み の り は ス ー パ ー お お は し の 化

しょう

ひん

売 り 場 で 見 つ け た、 つ げ の く し を プ レ ゼ ン ト し た。 何 も 用 意 し て い な か っ た 弟 は、 歌 を う た っ た。 幼

よう

えん

時 代 に ち び っ 子 カ ラ オ ケ 大 会 で 入 賞 し た こ と の あ る 弟 は、 「 ハ ッ ピ ー バ ー ス デ ー」 の 歌 を 熱 唱 し た。 弟 が う た い 終 え ると、おばあちゃんは静かに両手を合わせて目を閉じた。

   【中略】

  おばあちゃんの話す内容が、だんだん理解できなくなっていった。

  囁

ささや

いているようだった話し声は 次

だい

に音量を増していき、 突

とつぜん

然 怒

おこ

りだしたり泣きだしたり、大口を開けてわははと笑いだしたりもし た。 「おばあちゃんって、笑った顔がカエルみたいだね」 と、弟はのんきな顔をしていった。

  おばあちゃんは、 杖

つえ

を必要としなくなった。

  何も持たずに庭や家の周りを歩き回り、家族の知らないあいだに山の中にまで入っていった。 途

ちゅう

で何度も転び、転ぶたびに自分ひ とりで起き上がった。顔やひざから血を流しながら、でも、 (     )歩いて帰ってきた。 「おばあちゃんって、足悪いんじゃなかったの?」

  弟は不思議そうな顔をしていった。 「骨でも折られたら大変だわ……」

  弟の横で、お母さんはため息をついた。

  危険だからと、おばあちゃんが歩き回るのを、お母さんは何度も止めさせようとした。インキョの戸に 鍵

かぎ

をつけたり、つっかえ棒で 開かないように固定したり、時には 襟

えりくび

首 つかまえて、インキョの中に強制的に 連

れ 戻

もど

したり。

  不思議なことに、何をやっても、おばあちゃんはその 都

度 上手に 抜

けだすのだった。 「おばあちゃん、どんどん元気になっていくね」

  弟の発言に、お母さんはいっそう深いため息をついた。

  お 母 さ ん が 思 っ て い る ほ ど、 お ば あ ち ゃ ん の 足

腰 は a や わ じ ゃ な い の だ。 そ の こ と を、 み の り は よ く 知 っ て い る。 お ば あ ち ゃ ん は あ

(14)

の足で、迷子になったみのりを探しにきてくれたのだから。

  2 小学一年生の秋祭りの日 。あの時も、おばあちゃんは 杖

つえ

をついていなかった。

  あの日、やっとの思いで竹やぶから 脱

だっしゅつ

出 したみのりの目に、一番に 飛

び 込

んできたのは、一台の公衆電話だった。みのりは迷わずポ ケットから 財

さい

をだして、十円玉一枚を 硬

こう

投入口に入れた。

  公衆電話を使うのは初めてだった。知っている番号はひとつしかない。 震

ふる

える指で自分の家の電話番号を回した。

  呼びだし音四回でつながった。 「もしもし、お母さん?」

  みのりの声は、 涙

なみだ

で 震

ふる

えていた。 「もしもし、お母さん?」

  返事がなかった。もう一度 繰

り 返

かえ

した。 「お母さん……?」

  この時、ようやくみのりは、気がついた。お母さんもお父さんもいない。朝から弟を連れて病院にいっている。帰ってくるのは夜の 九時だ。

  3 一

いっ

しゅん

、 頭 が 真 っ 白 に な っ た 。 み の り の 口 か ら は 何 も 言 葉 が で て こ な か っ た。 耳 に く っ つ け た 受 話 器 の 向 こ う 側 か ら、 か す か な 息

遣 いが聞こえた。 「……みのりちゃん」 「おばあちゃん?」 「みのりちゃんかい」 「おばあちゃん」

  みのりはわんわん泣きだした。おばあちゃあああん、道が、わからなくなっちゃったんだよおおう。

  お ば あ ち ゃ ん が 迎

むか

え に き て く れ る ま で、 そ れ ほ ど 時 間 は か か ら な か っ た。 み の り の b つ た な い 説 明 だ け を 頼

たよ

り に、 お ば あ ち ゃ ん は 山道を下ってきてくれた。泣きながらお 腹

なか

にしがみついたみのりの背中を、おばあちゃんはやさしくなでた。

  あの晩、お父さんとお母さんは約束通り、夜の九時に帰ってきた。弟は、お母さんに 抱

かれてすやすや 眠

ねむ

っていた。

  寝

ず に 帰 り を 待 っ て い た み の り は、 車 が 敷

しき

ない

に 入 っ て く る 音 が 聞 こ え る と、 イ ン キ ョ の 木 戸 を ガ タ ガ タ と 開 け て、 「 お か え り な さ

(15)

い 」 と 声 を か け た。 お 母 さ ん は パ ジ ャ マ 姿 の 娘

むすめ

の 頭 を な で な が ら、 暗 が り の 中、 よ く 見 る と、 み の り の 顔 に 傷 が い く つ か つ い て い る のに気がついた。お母さんに聞かれたみのりは、今日、竹やぶに入って迷ったこと、公衆電話から電話をかけておばあちゃんに 迎

むか

えに きてもらったことを話した。お祭りにいこうとしたことは 黙

だま

っておいた。

  話を聞き終えると、お母さんは 恐

こわ

い顔をして、みのりに向かって同じ質問を 繰

り 返

かえ

した。 「電話にでた? おばあちゃんが?」

  みのりの後ろでは、夕飯を済ませて早々に 寝

てしまったおばあちゃんが、大きないびきをたてていた。

  最近はもう、 誰

だれ

も外のトイレを使わない。

  おばあちゃんは、どこからでも自由に出入りする。 玄

げんかん

関 から、勝手口から、お 風

呂場 の窓から、家の人がまだ気づいていない 隠

かく

し 扉

とびら

から。

  お父さんに 怒

おこ

られようと、お母さんに 腕

うで

をつかまれようと、 c おかまいなし だ。 「おばあちゃん、どんどん元気になっていくね」

  弟のいう通りだった。 4 自由になったおばあちゃんはたくましい 。   みのりはふと台所に目をやった。

  そこには冷蔵庫の 扉

とびら

を開けて、なかのものを物色しているおばあちゃんの後ろ姿があった。その小さな背中は、どう見ても、昨日よ り(     ) 伸

びていた。 (今村夏子『あひる』による)

(16)

問一       部 の本文中における意味として最もふさわしいものを、次の各群の中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさ い。

  「やわじゃない」

   ア   速く動かない    イ   堅くない    ウ   柔

じゅう

なん

さがない    エ   弱くない    オ   丈夫でない   「つたない」

   ア   つまらない    イ   上手でない    ウ   信用できない    エ   情けない    オ   さりげない   「おかまいなし」      ア   気にしない    イ   抵抗しない    ウ   何も言わない    エ   怒らない    オ   無視しない 問二   (     )~(     )にあてはまる語としてふさわしいものを、次の中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさい。ただ し、同じ記号を二度以上用いてはいけません。

   ア   もっと    イ   ふと    ウ   ちゃんと    エ   ピンと    オ   ちょこんと   問三       部 「みのりの首筋に鳥肌が立った」とありますが、このときのみのりの気持ちの説明として最もふさわしいものを次の 中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   おばあちゃんがめずらしく優しい声で話しているのを聞き、とても不気味に思っている。

   イ   おばあちゃんの声が、自分に話しかける時よりも優しい声だったので、いらだっている。

   ウ   おばあちゃんが自分には見えない何かを大切に思っていると確信し、恐ろしくなっている。

   エ   おばあちゃんの優しい声を聞いたことによって、秋祭りに体験した恐怖を思い出している。

   オ   おばあちゃんと会話する見知らぬ相手に、ただならぬ気配を感じて、嫌な予感がしている。 問四       部 「小学一年生の秋祭りの日」とあるが、その場面が実際に書かれているところを本文から探し、終わりの五字を抜き 出しなさい。 (句読点も一字と数えます) 問五       部 「一瞬、頭が真っ白になった」とありますが、この時のみのりの気持ちを四十字以内で説明しなさい。 問六       部 「自由になったおばあちゃんはたくましい」とはどういうことですか、六十字以内で説明しなさい。 問七   本文を通して、みのりの弟はどのような人物として描かれていますか。その説明として最もふさわしいものを次の中から一つ選 び、記号で答えなさい。

(17)

   ア   以前の自分の判断が正しく、母親が間違っていたことを指摘した後に、 「得意気」になっており、非常に負けず嫌いである。

   イ   他の家族がおばあちゃんにプレゼントを渡すなか、 「何も用意していなかった」ように、家族に対して反抗心を抱いている。

   ウ   これまでとは違うおばあちゃんの行動を気にかけることがなく、 「笑った顔がカエルみたい」と言う様子には、幼さがある。

    エ   「 不 思 議 そ う な 顔 」 を し 、 お ば あ ち ゃ ん を 心 配 す る 本 心 を 隠 し て 家 族 に 心 配 を か け な い よ う に す る 、 や さ し さ に あ ふ れ て い る 。    オ   母親の心配をよそに「おばあちゃん、どんどん元気になっていくね」と皮肉を言って、母親を落胆させる身勝手さがある。

問八   本文の説明として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

   ア   みのりの目線で語られることで、他の家族とは違うおばあちゃんへの思いが読み取れるようになっている。

   イ   みのりの家族とのやりとりを客観的に描き出すことで、読者がみのりの成長を読みとりやすくなっている。

   ウ   家族一人一人の心情を丁寧に描き出すことによって、物語にいっそうの厚みを持たせることに成功している。

   エ   物語を展開する中で回想と現実を行き来することによって、読者を幻想的な世界へと自然に引き込んでいる。

   オ   家族のおばあちゃんへの理解が深まることで、家族が抱える問題もだんだんと解決する仕組みになっている。

(18)

  あとの各問いに答えなさい。

(ⅰ)   次の各会話文を読み、文中の に入れるのにふさわしい四字熟語を考えて、漢字で答えなさい。

  1   Aさん   この研究者は若い 頃

ころ

にはなかなか成果が出ず、苦労が絶えなかったと聞いたことがあるわ。

    Bさん   でも、長い年月をかけて研究を続けて、ノーベル賞につながる発見をしたんだよね。

    Aさん   成功した研究者にもいろいろなタイプの研究者がいるけど、この人は だったんだね。

    Bさん   あきらめなければ夢はかなうのかもね。

  2   Aさん   久しぶりね、四月からは六年生になるのね。学校生活の調子はどう。

    Bさん   なんだか最近、勉強もクラブ活動もなかなかうまくいかないんだ。

    Aさん   そうなんだ、でも新しい学年になったんだし して、新しいことに挑戦してみたら。

    Bさん   そうだね。くよくよ考えずに行動してみるよ。

(ⅱ)   次の各会話文を読み、文中の に入れるのにふさわしい言葉をそれぞれ考えて、一つの慣用句を完成させなさい。

  1   Aさん   あれ、この本の表紙少し破れているじゃない。

    Bさん   うん、友達に貸してあげたら、返してもらうときに少し破れていたんだ。

    Aさん   そのことは友達にちゃんと伝えたの。

    Bさん   気づいて伝えようと思ったんだけど が と思って何も言わなかったんだ。

  2   Aさん   明日はピアノの発表会だね。

    Bさん   そうなんだ。少し 緊

きん

ちょう

してきたな。うまくできるかな。

    Aさん   大丈夫だよ。 演

えんそう

奏 の様子もだんだん に てきたって先生もほめてくれていたよ。

    Bさん   そうかな、なんだか自信がわいてきたよ。

    Aさん   よかった、練習の成果が出ればいいね。

(19)

(ⅲ)   次の文章は七つの段落で構成されています。段落AとBの間には五つの段落が入ります。あとのア~オの段落を正しく並べか え、文章を完成させなさい。 (A□□□□□B)

  A   「元号は日本だけの区切りですよね。だったら令和の時代といっても、意味ないのでは?」

  □     □     □     □     □     B  

30 年 と い う 時 間 は、 赤 ん 坊 が 大 人 に な る ま で の 時 間 に 相 当 し、 社 会 が 大 変 化 す る の に 十 分 な 長 さ で す。 平 成 の

ぼう

( 鈴 木 貴 博 『令和を君はどう生きるか』による)

すずたかひろ

変えてしまうことでしょう。 停 滞 の時代でした。令和の時代にも大きなうねりが起こることは 間 違 いなく、時代の激流は、いまの何もかもを飲み 込 み、大きく

ていたいちが

30 年 間 は 激 動 と   ア   近代の初めは明治ですし、大正はデモクラシーの時代と 捉

とら

えやすい。平成元年にはベルリンの 壁

かべ

が 崩

ほうかい

壊 し、東西冷戦が終わりま す。こんなふうに元号は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史を考えるうえでも役に立つものです。

  イ   昭和の前半は戦争の時代です。終戦は昭和

20 年ですが、その後も敗戦の苦しみが続きました。そして昭和

はない」という有名な一文が経済白書に書かれ、高度成長と 繁 栄 の時代に入っていくのです。

はんえい

31 年に「もはや戦後で   ウ   そう思うのも無理はありません。でも、元号ってけっこう便利なんですよ。

  エ   それだけではありません。たとえば昭和は大きく前半の約

30 年と後半の約

30 年に分けられます。

  オ   次の平成の時代も

30 年間でしたね。そして新天皇の御在位も同様の生前退位がご検討されればやはり

30 年前後でしょう。

( ⅳ )   「 け が の 治

りょう

を 終 え、 試 合 に し た。 」 の「 」 を 漢 字 で 書 く 場 合「 復 帰

0

」 と な り ま す。 例 え ば「 復 起

0

」 と 書 い て し まうと誤りとなります。では、なぜ「復 起

0

」と書くと誤りになるでしょうか、簡潔に説明しなさい。

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