自由変数連続化による離散評点
BCCモデル計算の高速化
日大生産工
(院
)○吉村 彩 日大生産工
(院
)茂木 渉
日大生産工 篠原 正明
1.はじめに
離散評点BCCモデルによる効率性計算においては,存在性 項目として追加された出力項目 に対する評価値 が自由 変数であり,正値,零値,負値のあらゆる値をとることができ
る
[1].従って,例えばy0 u0
} 3 , 2 , 1 , 0 { }, 2 , 1 , 0 { }, 1 , 0
0 ={ ± ± ± ± ± ±
u
などと正負値を許容した離散評点に,それ以外の評価値
,については,例えば あるいは などと正値あるいは非負値のみを 許容した離散評点に限定し,それらの離散評点組合せを列挙し て,評価組合せパタン毎に絶対効率値,相対効率値を計算し,
DMU別にすべての組合せパタンの中での最大相対効率値を
計算する[2].
) ,..., 1
(i s
ui = vi(i=1,...,m) {0,1,2} }
3 , 2 , 1 , 0
{ {1,2,3}
文献[2]の離散評点
BCCモデルにもとづく計算効率値と,従来のBCCモデルである連続評点
BCCモデルとの計算効率値とを比較した結果,
BCCモデルの2つの計算効率値はCCRモデル
の
2つの計算効率値と比較すると誤差が大きいことが判明した.この原因としては,ⅰ
)BCCモデルにおいてはCCRモデルに自由変数 が付加された,ⅱ
)自由変数の変動域が広い,ⅲ
)自由変数 による包絡の幾何学的形状
[3]などの理由により,自由変数 の離散化が不十分であることが考えられる.そこ で,出力項目の1 つである存在性項目に対する評価値,自由変 数 のみを離散変数でなく連続変数として扱う. を連続変 数として扱うことは,離散評点値候補数を無限大にすることを 意味する.これにより自由変数 の不十分な離散化に対処す るアプローチを提案する.
u0 u0
u0
u0
u0 u0
u0
2.
変化による相対効率値最大化問題の
2変数LP問題への帰着
u0
と
vを固定した下で, の相対効率値を とし,
変化時最大値 を求める数理計画問題を以下に考察
する.
u DMUk Rk
u0 k
u R
0
max
u
と
vを固定した下で, の絶対効率値
は
(1)式で与えられる.) ,..., 1 (
DMUj j= n
Aj
) ,..., 1
T (
0 0 T
n y j
A u
j j j
j + =
=
x v y
u (1)
但し,
y0j =1 (j=1,...,n),は固定された評価列ベクトル,
は可変の自由変数である.
v u, u0
) ,..., 1
T (
0 T
T
n u j
A
j j j
j = +
=
x v x v
y
u (2)
DMUk
の相対効率値 は
(3)式で与えられる.Rk
} { max j
j k
k A
R = A (3)
u0
b a
Aj = j + j
とすると, は次式で与えられ る.
0 , 0 >
> j
j b
a
j j
aj
x v
y u
T T
= (4)
j
bj
x vT
= 1 (5)
ここで, だが,
が成立すると仮定している. 変化時 最大化問 題は次式となる.
0 x 0 y 0 v 0
u≥(>) , ≥(>) , j≥ , j ≥ uTyj >0,
Txj >0
v u0 Rk
} {
maxmax
0 0
0 a bu
u b a
j j j
k k
u +
+ (6)
分母と分子に
t>0を乗じ,
tu0 =sと置くと,
sも自由変数 である.
Discrete-scoring BCC Model with Free Variable u0
Aya YOSHIMURA , Wataru MOGI and Masaaki SHINOHARA
} {
maxmax
0 0
0 a t btu
tu b t a
j j j
k k
u +
+ (7)
} {
max max
,
0 a t b s
s b t a
j j j
k k s
t +
+
> 自由
(8)
問題(8)は次の問題(9)〜
(12)と等価である.目的関数:
zk =akt+bks→max (9)制約条件:
max{ajt+bjs}=1j
(10)
s
:自由変数 (11)
>0
t (12)
>0
t
を で置換すれば,問題
(9)〜(12)は次の問題(13)〜(15)の2変数LP問題となる.
≥0 t
目的関数:
zk =akt+bks→max (13)制約条件:
ajt+bjs≤1(j=1,...,n) (14)
≥0
t (15) (14)式のj
番目の制約式「
ajt+bjs≤1」を図
1に示すが,以 下の切片,勾配を持つ.
t
切片
j j
aj u y x v
T
1 T
=
= (16)
s
切片
jb1j =vTx
= (17)
勾配
jj j
b
a =−uTy
−
= (18)
又,図
2には の場合のすべての制約条件式による 実行可能域例を示す.
5 ,
5 =
= k
n
s
t s
切片
=vTxjt
切片
j j
y u
x v
T T
=
勾配
=−uTyj0
図
2.1.
2変数
LP問題の第 制約条件式
s
t
0
① ②
③
④ max
5 5 5
→ +
=
s b t a z
⑤
a b
c
d
図
2.2.2変数LP問題の実行可能域例図
2において,k=5としているため目的関数
z5=a5t+b5sの等高線は第5 制約式(等号
)⑤と平行である.3.2変数LP問題の解法アルゴリズム
2変数LP問題(13)〜(15)は単体法などで解くことが可能であ
るが,ここでは(表計算に直接組込むため
)陽な形で求解するアルゴリズムを与える.基本的な考え方は単体法と同じである.
初期点は原点
Oで,次に凸な実行可能域の外辺
s軸に沿って,
最初の制約式との交点(図
2の
a)まで進む.次に,その制約式の辺に沿って最初の制約式との交点
(図2のb)まで進む….制約式の勾配と目的関数の勾配の値の大小関係から目的関数が 最大と判断できた交点でアルゴリズムは停止する.以下に
2変数
LP問題(13)〜(15)(目的関数 )を解くアルゴリズムを記述する.
zk
1. s
軸上(
t=0)のs切片値 の最小値を与える制約式 番号を とする.
xj
vT
} ,...,N N
) 1 (
p ={1,2
.
N j
p(1) argminj vTx
= ∈
k
p u y
y
uT (1) ≥ T
) 1 ( p N N
(19)
イ
)(20)
ならば,
(21)
として停止.
0
),
1 (
T =
= t
s v xp
2. ← −
N
個の連立方程式
j
, (22)
) 1
1 ( ) 1
( t+b s=
ap p ajt+bjs=1 (j∈N)
の交点の
t座標は次式で与えられる.
) 1 ( )
1 (
) 1
) (
), 1 ( (
p j j p
p j
b a b a
b j b
p
t −
= − (j∈N) (23)
N
個の交点の中で でかつ を選ぶ.
0 ) ), 1 ( (p j ≥ t
) ), 1 ( ( mint p j
) ), 1 ( ( min arg ) 2
( t p j
p = j∈N (≥0) (24)
ロ)
(25)ならば,
k
p u y
y
uT (2) ≥ T
) 1 ( ) 2 ( ) 2 ( ) 1 (
) 2 ( ) 1 (
p p p p
p p
b a b a
a s a
−
= − ,
) 1 ( ) 2 ( ) 2 ( ) 1 (
) 1 ( ) 2 (
p p p p
p p
b a b a
b t b
−
= − (26)
として停止.
3. N←N−p(2) 4. N
個の連立方程式
, (27)
) 1
2 ( ) 2
( t+b s=
ap p ajt+bjs=1 (j∈N)
の交点の
t座標は次式で与えられる.
) 2 ( )
2 (
) 2
) (
), 2 ( (
p j j p
p j
b a b a
b j b
p
t −
= − (j∈N) (28)
N
個の交点の中で でかつ
を選ぶ.
)) 2 ( ), 1 ( ( ) ), 2 (
(p j t p p
t ≥
) ), 2 ( ( mint p j
) ), 2 ( ( min arg ) 3
( t p j
p = j∈N (≥t(p(1),p(2))) (29)
ハ
)(30)
ならば,
k
p u y
y
uT (3)≥ T
) 2 ( ) 3 ( ) 3 ( ) 2 (
) 3 ( ) 2 (
p p p p
p p
b a b a
a s a
−
= − ,
) 2 ( ) 3 ( ) 3 ( ) 2 (
) 2 ( ) 3 (
p p p p
p p
b a b a
b t b
−
= − (31)
として停止.
) 3 ( ) 2 ( ), 2 ( ) 1 ( ), 3
( p p p p
p N
N← − ← ←
と
して4.へ.
〔アルゴリズム記述終了〕
(
コメント
1) s軸 も制約式の中に入れれば,より統一 的なアルゴリズムの記述が可能と思う.
) 0 (t=
(コメント2) (20),(25),(30)の判定において,等号が成立する場
合は,注目交点から次の交点の辺に対する領域で与えら れる.
(コメント3) s
と
tが求まれば, により自由変数
の値が定まる.
2つの交点
(と
(の辺が最適解
の時は
(コメント2),「t s
u0 = / u0
) ,1
1 t
s s2,t2)
2 2 1 1
0 t
s t
s ≤u ≤ 0
DMUデータ
」の形で
uは上限,
下限制約下の区間で与えられる.
4.表計算による例題
以下の表4.1.2 入力2出力のDMU データを,表計算によっ て解いた結果を示す.なお,今回用いたデータは参考文献[4]
(表1.5
病院の例)で用いられていたものである.
表
4.1.2入力2出力のDMUデータ
DMU x1 x2 y1 y2
1 38 284 250 120
2 53 306 260 147
3 50 268 250 100
4 30 244 190 100
5 31 206 152 80
ここでは,評価ベクトル
u,
vを
u=(1,1),v=(1,1)とし,目的関数を
z1=a1t+b1k→maxTx
j j,b
yj T
xj
T j,bj
DMU vTx
とする.
1.
はじめに,各々の ,
v,
aを求める.
yj
uT j
表4.2.
u,
v,
aの結果
j uTyj aj bj
1 322 370 1.149068323 0.00310559
2 359 407 1.133704735 0.002785515
3 360 420 1.166666667 0.002777778
4 274 190 0.693430657 0.003649635
5 237 152 0.641350211 0.004219409
表4.2より
s切片値
vの最小値を与える制約式番号を求
め、第
1端点とする.xj T
t座標 tp(1)= 0
表4.3.第1端点
s切片の 最小値 を与える 制約式番号
p(1)= 5
s座標 min(vTxj)=sp(1)= 237 ap(1)= 0.641350211 bp(1)= 0.004219409
表4.3より,
vの最小値を与える制約式番号 が
DMU 5
となり, となる.
xj
T p(1)
237 min
arg ) 1
( = T =
∈ j
N j
x v p
ここで, なので,次のステップ
に進む.
152
T 370
) 1 (
Typ ≥u yk≠ ≥ u
2. DMU 5
以外のDMUと,目的関数の交点の 座標を求め
る.
t
表
4.4.DMUと目的関数の 座標tDMU tk tk>tpi 1 0.389908 0.389908257
2 0.478431 0.478431373
3 0.458955 0.458955224
4 0.973684 0.973684211
5 #DIV/0! -
表
4.4より,交点の中で かつ を選
ぶ.
0 ) ), 1 ( (p j ≥
t mint(p(1),j) s
切片値 の最小値を与える制約式番号を求め、
第
2端点とする.
xj vT
表
4.5.第2端点t座標 min(tk)= 0.389908257
s切片の 最小値 を与える 制約式番号
p(2)= 1
s座標 min(vTxj)=sp(2)= 177.733945 ap(2)= 1.149068323 bp(2)= 0.00310559
表
4.5よりが
DMU 1となり, =322となる.ここで, なので,
) 2 (
p j
N j
p(2) argminvTx
= ∈
370
T 370
) 2 (
Typ ≥u yk= ≥ u
) 2 ( ) 3 ( ) 3 ( ) 2 (
) 3 ( ) 2 (
p p p p
p p
b a b a
a s a
−
= − ,
) 2 ( ) 3 ( ) 3 ( ) 2 (
) 2 ( ) 3 (
p p p p
p p
b a b a
b t b
−
= −
として停止する。
表
4.6.第
2端点の
s座標,
t座標,
u0の値
s= 177.733945 t= 0.3899082569 u0= 455.8352941
表4.6より,s=177.733945 ,
t=0.3899082569となり,より,
=455.8352941となる.ここで,(コメント
2)の等号が成立しており,このは上限を与えて
いる.
t s
u0= / u0
u0
同様に,目的関数を
z2 =a2t+b2k→max,…
5 max
5
5=at+bk→
z
とした時の全てのパターンを計算 し,各々の
u0を求める.
図
4.1は今回用いたDMUデータの線形計画問題をグラフ化
したものである.
-100 0 100 200 300 400
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
DMU1 DMU2 DMU3 DMU4 DMU5
図
4.1.2変数LP問題のグラフ5.おわりに
自由変数 を連続変数として扱うアプローチ法を提案した.
u0
今回は評価ベクトルを
u=(1,1),v=(1,1)としたが,違う値を用いた時とではどの程度結果が変わってくるかを考察し たい.また,交点が3 本以上の直線で決まる場合は退化で,各々 の傾きを調べ,その傾きが一番小さいものを選ぶようにしなけ ればならない.この場合を考慮して作り直す必要がある.
DMUデータを増やし,そのBCCモデルの効率値と,本論文
のアルゴリズムで求めた を用いた
BCCモデルの効率値が 一致するかの検証が今後の課題である.
u0
参考文献
[1]
篠原正明・大澤慶吉・鈴木洋臣:BCC モデルのCCRモデ ルに基づく解釈,第
35回日本大学生産工学部学術講演会 数理情報部会 講演概要,pp121-122 (2002.12)
[2]
金子隆史・大久保智弘・大澤慶吉・篠原正明:離散評点
BCCモデルの試み,第
39回日本大学生産工学部 学術講演会 数理情報部会 講演概要,pp41-44 (2006.12)
[3]
大久保智弘・大澤慶吉・篠原正明:性能低下傾向にある生 産活動群の効率性評価についての考察,第
40回日本大学生産工学部 学術講演会 数理情報部会 講演概要,
pp91-94 (2007.12)[4] 刀根薫:経営効率性の測定と改善〜包絡分析法DEAによる