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科学の哲学、哲学の科学 熊澤峰夫

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Academic year: 2021

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科学の哲学、哲学の科学

熊澤峰夫

東京工業大学地球生命研究所

137億年ほど前にできた宇宙の進化変遷の途上、46億年ほど前にできた太陽の惑星で 発生した生命の「生継」(生命DNAの再生産継続)と進化で、600万年ほど前にでき たヒト集団が、おそらく1万年くらいまえには「継承」(この世界についての情報取得 生産と継承)を望んでいるとの自己認識をもったのではなかろうか。科学が、自然認 識の機能を、後述の「2経路フィードバック情報系」としての明確な形になったのは、

後知恵で言って、わずか300年ほど前(ニュートン)にしか過ぎない。科学の近代以 降の実態を「自然認識と生命継承の機能」としてみると、次のようなことではないか。

(1)かっては、絶対的な神や真理の存在が尤もらしく見えたこともあったが、「科学」

と名付けた自然認識の方法を取得して、それ以前の見方は不適切だったと覚醒した。

(2)われわれヒト集団にとっては、経験的に習得した「論理真」は明快に定義でき るが、その確保にはヒト集団の曖昧な「望み」に気分的に寄り添う論理を要する。

(3)現在の「まだ生身の知的群生動物」であるヒト集団は、己の「生継と継承を望む」

という前提で、既得の知的資源の相互補完連携による「集団知」形成を図る。

ここでは、村上祐子氏提示の「理学系研究者育成にかかる科学基礎論研究者~科学哲 学者」の「役割と機能」を論じる目的で、まず私の科学についての見方を提示した。

こういう説明は、科学基礎論の研究者には、なじまないかも知れない。多くの科学哲 学系研究者が特に昨今想起するのは、科学者がある頻度で犯す不祥事対応で、その予 防や調教が念頭にあるのではないかと推理する。おそらく、科学者とその行動の適格 な観測記述とその動機、実態などの分析なしで、哲学研究の伝統に近い文献資料研究 で対処しようとしてきているのではないかと推理する。

理系研究者の育成問題以前に、理系の研究にも科学哲学的な要素が介入する必要が あると私は考えていたので、2010年ごろから戸田山和久氏とそのスクールの方々と私 の周辺の科学者達との共同勉強・研究をさせていただいて感謝している。でも連携研 究には「論理と心情の不整合」とでもいう事態にくたびれて休眠することになった。

冷静なはずの研究者においても、「心情」に沿わないことは、論理的に尤もと見えても

「納得」しない現象があるのだ。その反省と理由の分析の結果、「論理」と「心情」と いう独立 2 要素の相互関係の基礎研究から積み上げる重要性を確信した。この哲学 系・理学系連携のマネージメントを担当していた上野ふき氏(現在、中京大学機械シ ステム工学)は、「研究者の心情~マインドクライメート」(精神風土)の研究チーム を立ち上げ、すでに活動を開始している。「合意形成」はこの社会に決定的な重要性を もち、社会的にも喫緊の重要課題である。「論理」には研究の努力で対応できるが、「心 情」は科学の対象になじまないと見られてきた。しかしそういう問題を、科学で扱え るようにすることは最高の科学だと考えている。その手掛かりを上野氏は探りあてた と見ている。

(2)

科学の哲学: 科学とはどういうものか、その伝統的な哲学の論理を私はよくは理解で きないが、科学者には賛成してもらえそうな科学の説明(モデル)はできる。それは

「2経路フィイードバック演算子:dual Feedback Loop Operator=dFLO: 1)と でもいえる機能素子の莫大多数の「入れ子構造」が構成する複合的で巨大dFLO演算 子である。対象への介入(実験)も含む「観測ループの出力観測情報」と、それに整 合する可能性のある「作業仮設の論理的帰結というモデルリングループの出力」の比 較検討によって、その時点で①最も尤もらし対象のモデルと②その不確かさの二つを 同時抽出する。その不確かさを減らすために必要な情報を独立な2つのループに反復 フィードバックする。この逐次繰り返し刷新操作そのものが科学のモデルである。科 学を実質的に規定するのは、目標は現実的にはすでに自明とみて、現実的にはバラン スのとれた方法とその操作という知的労働が科学の科学~科学哲学なのであろう。

このdFLOは、ポパーの反証可能性を担保し、研究者の挙動を観測すると、パラダイ ムシフトと呼べる様態はフィードバックループの更新に遭遇する。この科学現象のモ デルでは、観測とモデリングという独立な2 要素の相互作用によって、科学の健全性 が担保される。おそらく「科学教育における科学哲学者への期待が薄い」のは、対象 の情報取得が文献(伝統的に質に欠損がある)だけを介していたので、不十分だとみ られていたからではなかろうか。

哲学の科学: 私は哲学に関する勉強をしたことがない素人であるが、科学哲学者との 交流経験を通して推理したことに基づいて意見を発信しておきたい。哲学は科学を生 み育てた母か祖母である。地球科学の研究者として、地球と生命の共進化研究にかか わってきた立場から、本要旨の最初に記したような世界観(~偏見)に立つ。したがって、

科学哲学の課題は「ヒト集団が物事をどう考えるのか?」という精神風土に依存する。

それは、「解りやすくて面白い科学論」が目標で、その私見の骨子を紹介する。

自然を理解する演算子としての科学研究のモデル: 原理的に可能な観測量の データ取得」と「それをもたらす過程の時間空間分布逆解析法」の整合的機能をもつ演算子」

観測ループ

モデリング ループ

本質に迫る観測データ取得介入と計測 の開発と運用

現時点における 対象の最善の理解

とその不確実さ

(作業仮設) その帰結と観測量とその予測誤差の評価 観測データとモデルの

帰結の整合性検討による 最適解とその誤差評価

当面の理解の刷新改善 戦略検討とその具体化

の具体的方法の検討 観測情報 介入実験

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