中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 修士論文
移動効用を考慮した駅構内における 人間の歩行シミュレーション
Simulation Model for Behavior of a Pedestrian in a Train Station Based on Utility Theory
入学年度
2002年
学籍番号
02N8100013E金 森 寛
Hiroshi KANAMORI指導教員 田口 東 教授
2004
年
3月
概要
2000
年
2月,高齢者や身障者が交通機関を使いやすくなるように関連施設の整備を 促す交通バリアフリー法案が制定され,駅構内にエスカレータやエレベータの設置が義 務付けられた.一方,大都市圏の鉄道駅の利用客による混雑は激しく,エスカレータの 設置が混雑により拍車をかけているという面もある.本研究では,性,年齢といった属 性別に駅構内の施設に対する移動効用を考え,電車を降りて改札口へ向かう乗客の移動 を動的な流れとしてとらえ,構内歩行シミュレーションモデルを構築する.そして,利 用者属性による移動施設の評価を考える.
まず,駅の設計図から乗客が移動する空間を定義し,通路リンク,改札リンク,階段 歩行リンク,エスカレータ歩行リンク,エスカレータ静止リンクから構成される移動ネ ットワークを作る.通路リンク以外のリンクは,混雑を表現するために,待ち行列を内 生したリンクを用いる.また,リンクコストとして,属性別の効用を用いる.乗客の移 動経路の選択には,各瞬間の移動効用を最大にするような経路を探索し,時々刻々と変 化するリンクコストに対して利用者を適応的に配分するという,動的利用者配分の考え 方を用いる.
対象として,都営三田線巣鴨駅を選び,朝のラッシュ時間帯の三田線下り方面(目黒 方面)行き電車
2本分の降車客に対してシミュレーションを行う.利用者のデータは平 成
12年大都市交通センサスから抽出する.まず,各利用者の乗車駅における各扉の混 雑と,降車駅の移動施設への利便性を考慮した効用関数を用い,効用理論によって巣鴨 駅までの各駅における各扉から乗車する人数を決定する.これより,巣鴨駅において各 扉から降車する人間の数と属性がわかる.次に,利用者の降車後の目的地を,交通セン サスの勤務地・就学地情報と電車利用情報を用いて決定し,前述の配分方法を用いて駅 構内の乗客の移動を計算する.このシミュレーションにより,混雑した状況における属 性の異なる利用者の各移動施設の利用状況がわかり,駅構内の各施設の混雑が定量的に 評価できた.
ここで考えた手法によって,駅構内にエスカレータやエレベータが設置された際の利
用者の行動を予測し,混雑を定量的に予測することができ,移動施設や改札の適切な設
置を考える有用な情報が得られる.この方法は,移動ネットワークの構築と駅利用者の
情報取得により,すべての鉄道駅において適用可能であると考えられる.
目次
第
1章
序論
... 11.1 研究背景...1
1.2 研究の目的...1
第
2章
歩行ネットワークモデル
... 32.1 都営三田線巣鴨駅について...3
2.2 鉄道駅の歩行ネットワーク...4
2.2.1 歩行者属性の設定...4
2.2.2 移動ネットワークの構築...4
2.2.3 ソースとシンク...6
2.2.4 リンクの種類...6
2.3 交通容量の設定...6
第
3章
利用客の乗車行動
... 83.1 利用客の定義と抽出...8
3.1.1 利用データ...8
3.1.2 利用客の抽出...9
3.1.3 利用客の目的地設定...9
3.2 利用客の乗車位置決定問題...10
3.2.1 利用する列車の決定...10
3.2.2 乗車する扉の位置の推定...11
第
4章 動的利用者配分問題
... 134.1 動学的なネットワーク・フローの表現...13
4.1.1 動的なネットワーク・フローを表現するための基本的変数...13
4.1.2 動的なネットワーク・フローが満たすべき物理的条件...14
4.2 リンク通過モデルとリンク旅行時間...15
4.2.1 待ち行列を内生したリンク...15
4.2.2 待ち行列を内生したリンクコスト関数...16
4.3 動的配分原則と定式化...17
4.3.1 DUO
の定義...17
4.3.2 Flow-Independent
な
DUO配分の解析
...184.3.3 Flow-Independent
な
DUO配分の解法アルゴリズム
...194.3.4 Flow-Dependent
な
DUO配分の解析
...20第
5章
移動効用の推定
... 235.1 効用理論...23
5.2 シミュレーションに用いる効用関数...24
第
6章
シミュレーション
... 276.1 シミュレーションの前提...27
6.2 シミュレーションのアルゴリズム...27
6.2.1 Flow-Independent
の場合の配分アルゴリズム...27
6.2.2 Flow-Dependent
の場合の配分アルゴリズム
...296.3 シミュレーションの設定...32
6.4 シミュレーション結果の可視化...32
6.5 解析(1)…移動施設別の利用人数...34
6.6 解析(2)…待ち行列人数の評価...38
6.7 解析(3)…交通容量の減少を考慮した場合の利用人数の変化...42
6.7.1 交通容量の減少原因...42
6.7.2 利用人数の変化...43
第
7章
結論
... 467.1 まとめ...46
7.2 今後の課題...46
謝辞
... 47参考文献
... 48付録
A降車駅別の移動施設への利便性について
... 52付録
Bラグランジュ乗数法と
Karush-Kuhn-Tuckerの定理
... 53付録
C属性別歩行速度と運動の非効率の度合い
... 57付録
D移動施設別の待ち行列人数
... 59付録
E時間帯別配分
... 63第 1 章
序論
1.1 研究背景
2000
年
2月,高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進 に関する法律(交通バリアフリー法案)が制定され,駅構内にエスカレータやエレベー タの設置が義務付けられた.一方,大都市圏の鉄道駅の利用客による混雑は激しく,エ スカレータの設置が混雑により拍車をかけているという面もある.
混雑が生じると,鉄道駅の利用者の行動に変化が現れる.混雑がない状況ならば,利 用者は自身の最も望む行動(例えば,「できるだけ楽に移動したい」,「健康を気遣って 少しでも動きたい」 , 「短時間で目的地に到着したい」など)が可能であり,その移動経 路を選択すると考えられる.しかし,混雑自体や,混雑により生じる移動時間の変化を 考慮に入れたとき,そのような経路をとらない場合がある.このことから,利用者の行 動の意思決定には,混雑を避ける傾向や,時間短縮を利得とする考えが作用していると 考えられる.
人間が感じる利得は,性別・年齢などの属性によって大きく異なる.例えば,
20代 の男性がエスカレータが併設された階段を利用するとき,階段には混雑が無く,エスカ レータには混雑があって明らかに余剰な移動時間がかかる状況であるならば,男性は多 少の疲労を感じようとも,混雑を避けて階段を利用するであろう.また,同じ混雑状況 下で,
70代の男性が移動する場合,移動により体感する疲労は
20代男性の疲労より大 きいことが知られており
[34],階段を移動する疲労と混雑から生じる移動時間の損失と を比較し,男性にとって移動時間の増加よりも階段を利用する疲労の方が利得が少ない のであれば,多くの時間を費やしてでもエスカレータを利用する.このように,人間の 行動は属性によって変化する.つまり,人間の行動を扱うには,属性の考慮が不可欠で ある.
1.2 研究の目的
過去に行われた歩行シミュレーションモデルの研究として,駅構内をメッシュで区切 ったネットワーク上に人間を離散的に移動させるモデルや,人間の流れを連続流と考え,
ネットワーク・フロー問題として考えたモデルがある.しかし,いずれも階段付近での 混雑や,エスカレータが併設されている場合の経路選択行動を細かく表現していない.
また,歩行シミュレーションにおけるネットワーク・フロー問題は,属性の重要性が認 識されながらも,属性を考慮したモデルはあまり提案されていない.
本研究では,性,年齢といった属性別に駅構内の施設に対する移動効用を考え,電車
を降りて改札口へ向かう乗客の移動を動的な流れとしてとらえ,構内歩行シミュレーシ ョンモデルを構築する.
対象として,都営三田線巣鴨駅を選び,朝のラッシュ時間帯の三田線下り方面(目黒 方面)行き電車
2本分の降車客に対してシミュレーションを行う.このシミュレーショ ンから,混雑した状況における属性の異なる利用者の各移動施設の利用状況を評価する こと,および駅構内の各施設の混雑を定量的に評価することを目的とする.これらのこ とから,駅構内にエスカレータやエレベータが設置された際の利用者の行動を予測し,
混雑を定量的に予測することができ,移動施設や改札の適切な設置を考える有用な情報
の提供が可能となる.
第 2 章
歩行ネットワークモデル
本章では,シミュレーションの対象とした都営三田線巣鴨駅を例として,移動ネット ワークを構築し,歩行シミュレーションモデルを説明する.
2.1 都営三田線巣鴨駅について
2004
年
3月現在,巣鴨駅は
JR山手線と都営地下鉄三田線が乗り入れている.三田 線は西高島平―目黒間を走行しており,平成
12年
9月
22日に改正された時刻表では 平日
190本の上り列車,
187本の下り列車が運行されている.車両編成は
6両編成であ る.
シミュレーションの対象である都営地下鉄三田線巣鴨駅は,多くの通勤・通学利用客 が
JR山手線への乗り換えに利用するため,都営三田線の駅の中でも混雑の激しい駅で ある.
図
2.1は都営三田線巣鴨駅構内の平面図である.線分の色の意味を表
2.1に示す.図
図
2.1都営三田線巣鴨駅構内の平面図
改札1
改札2
改札3
改札階
(地下
1階
)移動施設5
移動施設4
JR
山手線乗換
至 西高島平
移動施設2 移動施設3 移動施設1
至 目黒 ホーム階
(地下
2階
)表
2.1駅の中の要素と線分の色の対応 駅の中の要素 線の色
ホーム 赤
壁・柵など通行不能領域 青 階段・エスカレータ 緑 売店・その他障害物 紫
改札 橙
外への出口 ピンク は都営地下鉄巣鴨駅の
CADデータを利用して作成している.
都営三田線巣鴨駅は,地下
2階がホーム階,地下
1階が改札階である.ホーム階から 改札階への移動手段(移動施設
1〜
3) ,および
JR山手線の乗換出口への移動手段(移 動施設
4,
5)は,階段と,それに併設されたエスカレータである(
2004年
1月現在,
移動施設
1と
2の間にエレベータ設置工事も進められている) .また,移動施設
3のエ スカレータのみ,
1人乗り用であり,他の移動施設はすべて
2人乗り用である.改札は
3箇所存在するが,早朝の時間帯(始発から午前
6時半頃まで)以外,
JR山手線乗り 換えに最も近い改札(改札
3)は三田線に乗車する人のための専用改札となる.このた め,ホームから乗り換えに使用できる改札は実質
2箇所である.現実では,山手線に乗 り換える利用者の多くは,目黒方面側改札(改札
1)を利用している.
2.2 鉄道駅の歩行ネットワーク 2.2.1 歩行者属性の設定
本モデルでは,歩行者の属性に性と年齢を用いた.性は男女の
2種類,年齢は次の
9種類である.
・
10代
・
20〜
24歳
・
25〜
29歳
・
30代
・
40代
・
50代
・
60〜
64歳
・
65〜
69歳
・
70歳以上
以上の属性の組み合わせにより,
18種類の属性の歩行者を表現する.
2.2.2 移動ネットワークの構築
歩行シミュレーションでは,人間が歩行可能な面と,歩行不可能な面とに分ける必要
がある.その手順としては,地図データから歩行可能な面のみを抽出し,その面を用い
て人間の移動ネットワークを作成する
[12][17][37].図
2.2は都営三田線巣鴨駅の移動
ネットワークである.ネットワークのサイズは,ノードが
146,リンクが
207である.
また,図
2.3は
2.5次元データベースを構築して得られた巣鴨駅の立体図である.
図
2.2都営三田線巣鴨駅の移動ネットワーク
図
2.3都営三田線巣鴨駅構内の立体表示
2.2.3 ソースとシンク
ネットワーク・フローのソース(出発点)は,三田線車両の各扉である.
1車両に4 つの扉があり,三田線の車両編成は
6両編成であるので,
24ヵ所がソースとなる.
シンク(目的点)は,地上への出口,あるいは他路線への乗換の改札である.巣鴨駅 では,
JR乗り換え口を初めとする地上への出口
4ヵ所が該当する.
2.2.4 リンクの種類
鉄道駅構内における歩行者の移動を表すための移動ネットワークは,
・通路リンク
・改札リンク
・階段
(ST)リンク
・エスカレータ歩行
(ESW)リンク
・エスカレータ静止
(ESS)リンク
によって構成される.改札リンクは自動改札リンクと有人改札リンクの
2種類がある.
ESW
リンクはエスカレータを歩いて移動する人を表現するためのリンクで,
ESSリン クはエスカレータに立ち止まって移動する人を表現するためのリンクである.
全てのリンクに移動コストが設定されており,コストは属性ごとに異なる.また,経 路の効用は,リンクの効用の和である.
通路リンクは通過する人間による混雑の影響を受けないものとし,そのコストは一定 とした.一方,通路リンク以外のリンクは待ち行列が生成され,混雑による影響が存在 する.待ち行列を表現するために,通路リンク以外には待ち行列を内生したリンクを用 いる.待ち行列を内生したリンクの詳細は
4.2節で述べる.
2.3 交通容量の設定
ネットワークにおける混雑を表現するために,交通容量を設定する必要がある.交通 容量とは,交通工学の分野で生じた言葉である.
交通容量には,基本交通容量と可能交通容量との
2種類の定義が存在する.基本交通 容量とは,速度も間隔も理想的な状態で続けて通過したときの車の通過量である.可能 交通容量とは,割り込みや速度差など現実に起こりうる障害を考慮した,現実において 最大の通過量である.本研究において交通容量という語は,可能交通容量を指す.道路 の交通容量は通常,単位時間(普通は
1時間)あたりの通過台数を設定する.
本研究では単位時間を
1秒と設定した.また,
2.1.4で述べたように,改札や階段・
エスカレータ周辺においてのみ,混雑が生じる.そこで,改札やエスカレータの交通量 を実測し,交通容量を表
2.2のように設定した.
表
2.2a改札の交通容量
[人 秒
]改札の種類 容量
有人改札 1.3
自動改札 1.0
表
2.2bエスカレータの交通容量
[人 秒
]容量
ESS(1 人乗り) 0.5
ESS(2 人乗り) 0.7
ESW(1 人乗り) 1.0
ESW(2 人乗り) 1.3
エスカレータの交通容量は,
2人乗りの場合と
1人乗りの場合とでは異なる.
2人乗 りの場合,歩行帯と停止帯が常に存在するものと仮定し,交通容量を設定した.つまり,
交通容量は状況によって動的に変化することはなく,利用者全員がエスカレータを歩行 する場合であろうと,停止の交通容量は
0にはならない.
階段の容量は幅員を用いて算出した.階段
1と階段
2の幅員は,手すりを考慮した幅 員である.ここでは,人間が体を斜めにして通行するような行動は考慮しない.人間の 肩幅は属性に関わらず,ほぼ
45cmである.歩行するために最低限必要な領域として,
左右に
15cmの余裕を持たせて交通容量を算出した(表
2.3b).移動施設に付した番号 は図
2.1の移動施設番号と対応する.
表
2.3a階段の幅員
[mm]移動施設 幅員
階段 1 2350 階段 2 2350 階段 3 3120 階段 4 1778 階段 5 1965
表
2.3b階段の交通容量
[人 秒
]移動施設 容量
階段 1 3.13 階段 2 3.13 階段 3 4.16 階段 4 2.37 階段 5 2.62
第 3 章
利用客の乗車行動
この章では,シミュレーションに使用する利用客の定義と利用客の抽出方法について 述べる.また利用客の降車後の目的地や,乗車する列車および位置を決定する.
3.1 利用客の定義と抽出
本論文では,都営地下鉄三田線西高島平駅から同線西巣鴨駅までの間(以降対象駅間 という)の駅から,下り方面(目黒方面)行き列車に乗車し,巣鴨駅で下車する人間を,
利用客として定義する.
3.1.1 利用データ
利用客の抽出には,平成
12年大都市交通センサスの定期券データを利用した.大都 市交通センサスは,首都圏,中京圏,近畿圏の三大都市圏について,大量公共交通機関 の利用実態を把握することを目的に,
5年ごとに調査されているアンケートデータであ る.収録されている項目は以下のとおりである.
・識別コード ・鉄道駅までの利用交通手段
・事業者コード
・鉄道駅までの合計所要時間
・定期券発売所コード
・鉄道利用回数
・調査票番号 ・鉄道利用方法
・定期券別種別
・鉄道駅からの利用交通手段
・調査票記入の有無 ・鉄道駅からの合計所要時間
・性別
・降車時刻
・年齢
・勤務地・就学地の到着時刻
・居住地ゾーンコード
・前日の曜日
・勤務地・就学地ゾーンコード
・前日の帰宅のための乗車時刻
・出勤・登校しなかった日 ・前日の帰宅のための降車時刻
・フレックスタイム制の選択 ・前日の帰宅のための乗車駅コード
・コアタイムの開始時間
・前日の帰宅のための降車駅コード
・コアタイムの終了時間
・帰宅時刻
・住まいの出発時刻 ・拡大率
・乗車時刻
3.1.2 利用客の抽出
1
本の列車が巣鴨駅に到着した際,どの程度の人数の利用者が降車するのか算出する 必要がある.そこで,大都市交通センサスに収録されている項目のうち,
・乗車時刻
・鉄道利用方法(乗車駅コード・降車駅コード)
を用いて降車人数を調べた.対象駅間において都営三田線下り方面行き列車に乗車する
人数は
72,235人で,そのうち巣鴨駅で降車する人数は
13,987人である.
また,利用者の属性を考慮するために,性別,年齢の項目も同時に抽出する必要があ る.利用客
13,987人の内訳は,男性
7,387人,女性
6,583人,性別不明
17人であっ た.図
3.1は,利用者の性別年齢別人数を表す.
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
男性 女性
人数[人]
10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 不明
図
3.1利用者の性別年齢別人数 3.1.3 利用客の目的地設定
3.1.2
で抽出した利用客が,巣鴨駅に到着後,
4ヶ所存在する地上出口のうち,どの
出口を利用するか決定する.決定には,大都市交通センサスに収録されている項目のう ち,
・勤務地・就学地ゾーンコード
・鉄道利用回数
・鉄道利用方法
・鉄道駅からの利用交通手段
を利用した.図
3.2の赤文字は,現実の都営三田線巣鴨駅の出口表記である.
鉄道利用回数・鉄道利用方法の情報から,都営三田線巣鴨駅が勤務地・就学地の最寄鉄
A3 A2
A4 A1
図
3.2都営三田線巣鴨駅の出口表記
道駅であるか調べる.最寄駅でないならば,JR 山手線に乗り換える出口(A1)を利用
者の目的地とする.最寄駅ならば,勤務地・就学地ゾーンコード(以下ゾーンコード)
を調べ,各コードが対応する出口(表
3.1)を利用者の目的地とする.対応する出口は
[39]を参照した.ゾーンコードが表
3.1に対応しない場合,あるいはゾーンコードが不 明の場合は,ランダムに各出口を目的地として設定した.
表
3.1勤務地・就学地ゾーンコード対応表
勤務地・就学地ゾーンコード コード対象地域 出口
10507 千石 4 丁目,本駒込 6 丁目 A2
11614 西巣鴨 1〜4 丁目,巣鴨 4,5 丁目 A4
11615 巣鴨 1〜3 丁目,北大塚 1 丁目,南大塚 1 丁目 A3
11616 駒込 1〜7 丁目 A1
3.2 利用客の乗車位置決定問題
3.1
節で利用客の目的地を決定した.しかし,利用客が利用する列車,および利用す る車両の扉の位置も推定する必要がある.
3.2.1 利用する列車の決定
利用者が利用する列車は,大都市交通センサスの乗車時刻の項目と,平成
12年
9月
に改正された都営三田線の時刻表とを利用して決定した.ここで利用者は,乗車時刻の
直後に到着する列車に乗車すると仮定した.表
3.2は,利用者の乗車駅,降車駅,およ
び乗車する列車をそれぞれ区別し,対象駅間で乗車する利用者数を抽出した結果の一部
である.なお,高島平駅,志村坂上駅の添え字は,改札が複数個存在することを示して
いる.つまり,添え字のある駅は,利用者の目的により,異なる出口が利用される駅で
ある.他にも同様の駅の例として,神保町駅,日比谷駅,大手町駅などが挙げられる.
表
3.2ある列車における,乗車駅別,降車駅別の利用者数(一部)
乗車客数
サン プル 数
西高島平
新高 島平
高島平
1
高島平
2
西台
蓮根
志村三 丁 目
志村 坂 上
1
志村 坂 上
2
本蓮沼
板橋本町
西高島平 46 2
新高島平 127 2
高島平 1 125 4 14
高島平 2 29 2 14
西台 100 6 14
蓮根 106 5
志村三丁目 14 1
降車駅
乗車駅
3.2.2 乗車する扉の位置の推定
利用者が乗車する扉の位置を推定する.前提として,利用者は通勤・通学客であるた め,降車駅の構造はすべて既知であるとする.また,乗車駅では列車のいずれの扉にも 乗車可能とする.つまり駆け込み乗車のような状況は想定しない.
利用者の乗車位置の選択は,降車駅における階段やエスカレータなどの移動施設の位 置が強い影響を与えることが知られている
[6][19].そこで本研究では,利用者は降車駅 の移動施設に近い扉への乗車を望むと仮定する.また,途中駅で車両を移動しないもの とする.
利用者が乗車するとき,各扉には利用者の利得(効用)が存在する.利得は,降車駅 の移動施設から遠く離れることの負の効用や,利用者が乗る扉における混雑から感じら れる負の効用である
[15].混雑の不効用は,乗車駅における混雑だけでなく,降車駅で どの程度降りやすいか(混雑していないか)を考慮することもできるが,ここでは乗車 駅の混雑の不効用のみを考慮することとする.
ある乗車駅
aにおける扉 に乗るときの効用
i Uiaは
⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛
−
⋅ ⋅
⎟−
⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛ × −
−
= a
i a best i
a
i X
N X U i
SPEED CAP .
λ µ 0
5
とした.右辺第一項が降車駅の移動施設から離れることの不効用を示し,第二項が乗車 駅におけるその扉の混雑に対する不効用を示す.ここで, は利用者の降車駅の移 動施設に最も近い扉の番号を示す (付録
A参照).移動施設の位置は実測にて確認した.
また, は扉
iに乗車している人数を,
CAPは1つの扉を利用できる人数(容量)を,
は利用客の歩行速度をそれぞれ表す.
Nbest
Xi
SPEED λ, µ
は混雑不効用のパラメータであり,
5 3 22 0. , = .
= µ
λ
とする.なお,扉は三田方面から昇順に通し番号を付加した.
各扉の効用を算出し,効用理論に基づいて乗客を配分した結果が図
3.3である.効用 理論は第
5章で詳しく説明する.図
3.3は列車が巣鴨駅に到着した瞬間の各扉の乗車状 態である.
3と
12の扉は,
JR山手線への乗り換え,あるいは図
3.2の出口
A2の利用 者が最も便利だと感じる扉であるため,他の扉と比べて降車する人数が多くなっている ことがわかる.また,図
3.3では見られないが,図
3.2の出口
A3,
A4の利用者の場合,
最も便利だと感じる扉は
19となる.
図
3.3の巣鴨駅で下車する利用者の性別年齢別の割合を図
3.4に示す.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 扉番号
人数[人]
巣鴨以降の駅で下車する利用者 巣鴨駅で下車する利用者
図
3.3 乗車配分結果の一例(7時
50分巣鴨駅着の列車)
0 5 10 15 20 25 30 35 40
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 扉番号
人数[人]
50代女性 40代女性 30代女性 25〜29歳女性 20〜24歳女性 65〜69歳男性 40代男性 30代男性 20〜24歳男性 10代男性
図
3.4 巣鴨駅で下車する利用者の属性別人数(7時
50分巣鴨駅着の列車)
第 4 章
動的利用者配分問題
この章では,動学的なネットワーク・フローに関する説明と,シミュレーションにお いて経路選択の考え方の基本となる動的利用者配分問題について説明する
[11][24].
4.1 動学的なネットワーク・フローの表現
以降の文で示されるモデルは,方向付きリンクの集合 ,ノードの集合 ,および起 点・終点ペア(
ODペア)の集合
Wから構成される交通ネットワーク 上で定義 される.起点・終点はノードの集合 の部分集合であり,それらの部分集合を と書 く.起点はフロー(交通需要)の発生(“湧き出し”)があるノード,終点は集中(“吸 い込み” )があるノードである.また, に含まれない の要素は,フローが通過す るだけのノードである.集合 内の各ノードには までの整数の連番が振られてい るものとし,集合 内の各リンクは,そのリンクがノード
iからノード へ向かってい る場合, ( と示すものとする.また,ノード へ流入するリンクの上流側ノードの集 合を ,ノード
kから流出する下流側ノードの集合を と書く.
L N
[
N L G ,]
)
) )
N R,S
S
R, N
N 1
〜
NL j
j
i, k
Ik Ok
4.1.1 動的なネットワーク・フローを表現するための基本的変数
交通ネットワーク上のフローを表現するためには,起点(出発地)別/終点(目的地)
別/
ODペア別にフローを区別して考えなければならない.ここでは,終点別フローを 用いて記述する.本モデルではさらに属性(年齢・性)別のフローになることに留意し たい.ここではすべてのフローを同一属性として表記するため,属性記号は省略する.
各リンクにおけるフローの流入出状況を表す変数として,
( )
( )
i j(
Arrivalst d t
Aijd
へ流入した累積人数 までにリンク
時刻
をもつ歩行者のうち,
終点
,
=
( )
( )
i j(
Leavest d t
Ldij
から流出した累積人数 までにリンク
時刻
をもつ歩行者のうち,
終点
,
=
( ) ∑ ( ) ( ) ∑ ( )
∈
∈
≡
≡
S d
d ij ij
S d
d ij
ij t A t L t L t
A ,
と定義する.これらを,時間に関して連続で微分可能であると仮定する.また,これら
を時間微分して交通流率としたものを
( )
t dAijd( )
t dt ijd( )
t dLdij( )
t dt ij( )
t dAij( )
t dt ij( )
t dLij( )
t dtd
ij ≡ µ ≡ λ ≡ µ ≡
λ , , ,
と書く.次に,
ODペア間の動的な交通需要(
OD交通)を表すための変数として,
( )
t時刻
tまでに起点
oを出発し,終点
dに向かう車両の累積人 数
Qod =を定義する.
4.1.2 動的なネットワーク・フローが満たすべき物理的条件
動的な交通ネットワーク・フローは,以下の
(1)〜
(3)に述べられるような物理的条件 を満たさねばならない.
(1) 各ノードでのフロー保存則
ネットワーク上の各ノード
kでは,任意の時刻 において,フロー保存則
t :( )
−∑ ( )
+( )
=0,∑
L t A t Qkd tj d kj i
d
ik ∀k∈N,k≠d∈S,∀d∈S (4.1a)
が成り立たなければならない.ここで,
Aijd( )
t,
Ldij( )
tおよび
Qod( )
tが時間微分可能であ るならば,式
(4.1a)は
( )
−∑ ( )
+( )
=0,∑
t t dQkd t dtj d kj i
d
ik λ
µ ∀k∈N,k≠d∈S,∀d∈S (4.1b)
と等価である.
(2) 各リンクでの状態方程式
ネットワーク上の各リンク ( の状態を表す基本的変数は,そこに存在する人数であ り,以下の関係式で決まる.
)
j i,
( )
t A( )
t L( )
tXijd = ijd − dij ∀
( )
i,j ∈L,∀d∈S (4.2a)は時刻
tにリンク ( に存在する終点 をもつ人数である. , および
が時間微分可能であるならば,式
(4.2a)は
( )
tXijd i,j
)
d Aijd( )
t Ldij( )
t( )
t Qod( )
t( )
t( )
tX&ijd =λijd −µijd ∀
( )
i,j ∈L,∀d∈S (4.2b)と等価である.また,起点終点を区別しない人数 ( )
≡∑ ( )
d d ij
ij t X t
X
を定義すると,式
(4.2a),
(4.2b)
がすべての終点
dにおいて成立していることより,
( )
t A( )
t L( )
tXij = ij − ij ∀
( )
i,j ∈L (4.2c)( )
t( )
t( )
tX&ijd =µijd −λdij ∀
( )
i, j ∈L (4.2d)が成立する.
(3) 各リンクでの First-In-First-Out 条件
リンクの
First-In-First-Out(FIFO)条件とは,リンクから流出する順番は流入した順 番に等しい,ということである.
時刻 にリンク へ流入したフローがそのリンクを流出するまでにかかる通過所 要時間を と書くと,流入交通量と流出交通量は
t
(
i, j) ( )
tCij
( )
t L(
t C( )
tAijd = dij + ij
)
∀( )
i, j ∈L,∀d∈S (4.3a)という関係を満たさなければならない. , および が時間微分可能であるなら
ば式(4.3a)は,
d
Aij Ldij Qod
( )
t(
t Cij( )
t) (
dCij( )
t dt)
d ij d
ij =µ + 1+
λ ∀
( )
i, j ∈L,∀d∈S (4.3b)と等価である.式
(4.3b)を変形すると,
( )
t(
t Cij( )
t)
ij( )
t ij(
t Cij( )
t)
d ij d
ij µ + =λ µ +
λ ∀
( )
i, j ∈L,∀d∈S (4.3c)と等価である.つまり,流入率と流出率の比が終点によらず等しい.
本モデルにおいては,同属性の人間同士であれば,
FIFO条件が成り立つ.しかし,
属性が異なる場合,必ずしも
FIFO条件が満たされるわけではなく, 「追い越し」が発 生することに留意する.
4.2 リンク通過モデルとリンク旅行時間 4.2.1 待ち行列を内生したリンク
リンク旅行時間
Cij( )
tは式
(4.3a)より,
( )
t L( )
A( )
t tCij = dij−1 ijd − ∀d∈S
( )
A( )
t tLij ij −
= −1 (4.4)
と表せる.赤松ら
[4]のモデルにより,ネットワーク上の各リンクは,
(a)非渋滞領域で の自由歩行速度によるリンク出口までの移動を表す“自由歩行リンク”と,
(b)リンク 出口で生じる待ち行列を表す“待ち行列リンク”という
2種類のサブリンクから構成さ れていると考える.
(a)
の自由歩行リンクにおけるリンク流出率と旅行時間は,
(
t Cij)
ij( )
tij λ
µ + = (4.5a)
( ) の長さ 距離 属性別の歩行速度
リンク
i,j ( ) mCij= ij = (4.5b)
となる.
(b)
の待ち行列リンクでの待ち行列は,物理的な長さを無視した“
Point-queue (vertical-queue)”モデルで考える.待ち行列リンク ( )
i,jのサービス率には,その通路 から決まる所与の上限(以降,最大流出率という)
µijがある.このとき,リンク流出 率および旅行時間は,
( ( ) ) ( ) ( ) ( )
⎩⎨
⎧ > >
=
+ otherwise
or if
t
t t
t X C t
ij
ij ij ij
ij ij
ij λ
µ λ
µ µ 0 (4.6a)
( ) ( ) ( ) ( )
⎩⎨
⎧ > >
= otherwise
or if
0
0 ij ij
ij ij
ij ij
t t
X t
t X
C µ λ µ
(4.6b)
と表される.これは,待ち行列が存在せず,かつ流入率が
µijを超えない状態では,流 入フローは流入時と同一の流率で出ていく.しかし,そうでない場合,流出率は最大流 出率
µijとなる.
4.2.2 待ち行列を内生したリンクコスト関数
本研究では,平坦な通路(通路リンク)における混雑および待ち行列は考慮しない.
待ち行列リンクは,改札リンクと,エスカレータや階段など移動施設の通過リンクにの み存在する.
待ち行列を考慮したリンク
aのリンクコスト関数
Ca( )
tは式
(4.7)で表される.ここで,
リンクコストを更新してから次の更新を行うまでの間を,
1時間帯と呼ぶこととする.
( ) ( )
( ) ( )
{
a}
am a m a a
m a a
m
a x X x
t l
C α µ µ
β
− +
⎪⎭+
⎪⎬
⎫
⎪⎩
⎪⎨
⎧
⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝ + ⎛
= 0 max0, −1
1 CAP (4.7)
( )m
Ca :
時間帯
mにおける所要時間[s]
la :
リンク の長さ
a [m]:
自由旅行時間
[s/m]t0
β
α, : BPR
関数のパラメータ
(m) :
時間帯 における流入人数
[人
/秒
]xa m
:
リンク の交通容量
[人
/秒
]CAPa a
:
時間帯 における待ち行列人数
[人
]( )m
Xa m
µa :
待ち行列リンクの最大流出量
[人
/秒
]式
(4.7)の右辺第
1項は,走行リンクの所要時間である.第
2項は待ち行列リンクの
所要時間であり,この値が渋滞による待ち時間に相当する.
4.3 動的配分原則と定式化
本節では,4.1 節,4.2 節の条件に加えて,動的な経路選択と動的な配分原則を導入 し,固定需要型の動的配分モデルを考える.静的な交通配分モデルにおける最も基本的 な 配 分 原 則 は シ ス テ ム 最 適
(SO: System Optimal)配 分 と 利 用 者 均 衡
(UE: UserEquilibrium)
配分である.これらの配分原則を規範として,動的なネットワーク・フロ
ーの配分原則が作り出された.
SOに対応した原則として,動的システム最適
(DSO:Dynamic System Optimal)配分がある.また,UE
に対応した原則として,動的利用者 最適
(DUO: Dynamic User Optimal)配分と,動的利用者均衡
(DUE: Dynamic User Equilibrium)配分がある.
DSO
は,ある計画時間帯におけるネットワークシステム全体での総走行費用を最小 にするような時々刻々のフロー・パターンを求める配分原則である.つまり,システム 全体の効率性を追究したときの究極点である.この配分法では,システム全体の“効率 性”は最適化されるが,利用者間の“公平性”は保証されない.
DUO
は,各リンクまたはノードに存在するフローを, “瞬間的な最短経路”へ時々刻々 配分するものである.時刻 における“瞬間的な最短経路”とは,時刻 に実現してい るリンクコスト・パターン
t t
( ) ( )
{
Cij t ∀i,j ∈L} をもとに計算される目的地までの所要時間 が最小の経路である.ネットワーク上のリンクコスト・パターンは一定ではないため,
瞬間的な最短経路は時間の経過とともに変化する.
DUOでは,その変化にともない,
過去の決定とは異なった新たな瞬間的最短経路へ“適応的”に配分する.つまり,各瞬 間の状況についてのみ完全な情報を持つ各利用者が,時々刻々,将来の変化の先読みは せずに,“近視眼的”に意思決定を行うと考えた場合のフロー・パターンであるとみな すことができる.ただし,この逐次的な“最適”決定経路が事後的に見たときの“真の 最小所要時間経路”になっている保証はない.
DUE
は静的な利用者均衡配分原則を動的な場合へ自然に拡張したものである.つま り,全ての瞬間における全ての利用者が選択した経路が,事後的に見ても各自の真の最 短経路となっているようなフロー・パターンを求める配分法である.言いかえると,各 瞬間において,同一起終点をもつ利用者間では,いずれの経路を歩行する利用者も,結 果的には所要時間が同じになるような配分法である.
DUEは
DSOのようにシステム 全体での“効率性”が最適化されるわけではないが,利用者にとっては最も不満のない 結果となる.
本研究では,
DUOの考え方に基づいて利用者の移動する経路を決定した.以降の小 節で,
DUOに関して細かい定義や定式化を行う.
4.3.1 DUO の定義
DUO
には, 「利用者は,現在時点における瞬間の,目的地までの最短旅行時間経路を 選択する」という前提がある.そこで,
πid( )
tを時刻
tにおけるノード
iから目的地 ま での現時点瞬間の最短旅行時間と定義すると,
DUOは
d
( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( )
⎩⎨
⎧
≤
−
=
−
t C t t
t C t t
ij jd id
ij jd
id
π π
π π
) b . (
) a . (
8 4
8 4
と表すことができる.式
(4.8a)は時刻 にノード
iにいて目的地 をもつ利用者がリンク を利用する場合で,式
(4.8b)はその他の場合である.この条件は,時刻 にノード
t d
(
i,j)
t iにいて目的地
dをもつ利用者がリンク ( )
i,jを利用する場合,リンク ( )
i,jはノード から 目的地 までの最短経路上に存在することを示している.
i d
また,
DUOの定義は,
2種類考えられる.ある時刻における,あるノードから目的 地までの最短経路に単純に需要を配分する場合
(Flow-Independent)と,その時刻に読み 込 ん だ 交 通 量 が 旅 行 時 間 に 与 え る 影 響 を 考 慮 し な が ら 需 要 を 配 分 す る 場 合
(Flow-Dependent)がある.
Flow-Dependentな
DUO配分と
DUE配分は類似している が,
DUE配分は,実際に利用者が経験する旅行時間を均衡させるように配分するとい う点で,
Flow-Dependentな
DUO配分とは異なる.
シミュレーションでは
Flow-Independentな場合と,
Flow-Dependentな場合の
DUO配分を行った.以下にその解析を示す.
4.3.2 Flow-Independent な DUO 配分の解析
DUO
配分の定義より,利用者の経路選択は明らかに現在時刻瞬間のリンク旅行時間 に依存し,将来のリンク旅行時間とは独立である.よって,
Flow-Independentの場合 の
DUO配分問題は現在時刻によって分解できる.
現在時刻 において,すべてのリンク
t( )
i, jについて目的地別のリンク流入率 と 流出率 が,時刻 まで評価されているとする.ここで,現在時刻 における流 入率 を評価することを考える.
( )
t'd
λij
( )
t'd
µij t'<t t
( )
t'd
λij
現在時刻
tにおけるリンク (
i,j) からの総流出率
µij( )
tは,
Point-queueモデルを使用す るため,式
(4.6)のように一定となる.ここで,
t=t)+Cij( )
t)を満たすような
t)を用いて,
式
(4.3c)を書き直すと,
( ) ( ) ( )
∑ ( )
′
⋅ ′
=
d d ij d ij ij
d
ij t
t t
t )
) λ µ λ
µ
,
(4.9)となる.ここで
t'<tなので,目的地別のフロー流出率
µijd( )
tが求められる.ノード
iで は,交通量保存則が時刻
tにおいて満たされなければならないため,式
(4.1b)より
( ) ( )
∑
=j
id d
ij t q t
λ
,
ここで ( )
=( )
+∑ ( )
k d ki id
id t q t t
q µ
.
( )
t dQ( )
t dtqid = id
(所与)
d i N
i=1,2,L, , ≠
(4.10)
となる.上式の右辺は所与の量であり,左辺の目的地
dをもつ利用者についてのノード への総流入率 を求めることができる.しかし,目的地別の流入率 は評価 されていない.そこで,動的配分によって決定する.
i
∑ ( )
j d ij t
λ λdij
( )
t配分を行うためには,リンク旅行時間を評価しなければならない.これは式
(4.6)のよ
うに推定できる.利用者はこの推定値に基づいて,経路選択すると仮定する.このリン
ク旅行時間を用いて,各ノード
iから目的地
dまでの最短経路は簡単に見つけることが できる.
Flow-Independentな動的配分の定義によれば,ノード
iの総流入率 ∑ ( ) は,
j d ij t λ
目的地 までの最短旅行時間経路上のリンクにすべて配分される.仮にリンク がそ の最短経路上のリンクであったとすると,
d
( )
i,l∑ ( )
j d ij t
λ
はすべてリンク ( )
i,lに配分されるの で,
( )
=∑ ( )
j d ij d
il t λ t
λ
( )
t =0,d
λij j≠l
となる.以上のように,
λdij( )
tはすべてのリンク ( )
i,j,すべての目的地 について評価 できる.
d
4.3.3 Flow-Independent な DUO 配分の解法アルゴリズム
前小節の分析をふまえて,時間軸を離散化したアルゴリズムを示す.
まず,時間軸を
∆t単位の均等な小区間に分割する.リンク ( )
i,jからの流入率 と 流出率 は,時間 [ で一定値をとるものと仮定する.
( )
td
λij
( )
td
µij t,t+∆t
)
STEP1
リンク交通流率,累積交通量,リンク旅行時間,時刻を初期化する.
( )
dij(
0d
ij t λ
λ :=
) ,
t<0, ∀( )
i, j, ∀d,( )
ijd(
0d
ij t µ
µ :=
) ,
t<0, ∀( )
i, j, ∀d,( )
ijd(
0d
ij t A
A :=
) ,
t≤0, ∀( )
i, j, ∀d,( )
dij(
0d
ij t L
L :=
) ,
t≤0, ∀( )
i, j, ∀d,( )
ij(
0ij t C
C :=
) ,
t≤0, ∀( )
i,j,=0 :
t
.
となるように
( )i j Cij t≤min,
∆ ∆t
を設定する.
STEP2 リンク流出率µij
( )
tを式(4.5),式(4.6)より,
µijd( )
tを式(4.9)より算出する.
STEP3
µij
( )
tを用いて時刻 にリンクに流入した人の旅行時間
t Cij( ) (
t, ∀i,j) を式
(4.5), 式
(4.6)より推定する.
STEP4
時間 [
t,t+∆t) におけるノード
iの交通需要 ∑ ( )
⋅∆j d
ij t t
λ
を,式
(4.10)より推定す
る.
( )
t t( )
t t qid( )
t tk d ki j
d
ij ⋅∆ =
∑
⋅∆ + ⋅∆∑
λ : µ ∀i,∀d, i≠dSTEP5
に基づいて,ノード から目的地 までの最短経路を探索し,ノード の
交通需要
( )
tCij i d i
∑ ( )
⋅∆j d
ij t t
λ
を,ノード
iから出ている最短経路上のリンクに配分し,
( )
t t( )
i j dd
ij ⋅∆, ∀ , , ∀
λ
を求める.
( )
t t( )
t tj d ij d
ij ⋅∆ =
∑
λ ⋅∆λ :
,リンク ( )
i,jが最短経路上のリンクの場合
( )
t ⋅∆t:=0d
λij
,その他の場合
STEP6
傾きがそれぞれ
λdij( )
tと
µijd( )
tの直線によって,累積到着人数 を時刻 から まで延長する.
( ) ( )
⋅ dij ⋅d
ij L
A ,
t t+∆t
STEP7
時刻を とし,もしも時刻
tが計算対象時間内であれば
STEP2へ.そ
れ以外は終了.
t t t:= +∆
4.3.4 Flow-Dependent な DUO 配分の解析
前小節までの配分方法は,たとえあるノードから目的地までの所要時間が最短となる 経路と等しい所要時間の経路が複数存在する場合であっても,その中の
1つの経路上の リンクにすべての交通を配分する.つまり
All-or-Nothing法で配分している.これを 改良して,所要時間がいずれも等しく最短となる経路それぞれに交通を配分する際に,
交通量を配分した後も,瞬間の旅行時間が等しくなるように修正することを考える.す なわち,前小節
STEP5の配分を修正する.
時間 [
t,t+∆t) を考えると,
Cij(
t+∆t) は
Cij( )
tを用いて次のように表すことができる.
( ) ( ) ( )
( )
t dt dt t tC t t C
ij ij ij
ij ⋅ −
+
≅
∆
+ µ
λ (4.11)
時間 [
t,t+∆t) においては,
µij( )
tは より前の時刻において既に評価されている量なので,
リンク旅行時間
t
(
t t)
Cij +∆
は
λ( )
tのみの関数である.つまり,
(
t t)
C( ) ( )
tCij +∆ := ij λ
と表せる.したがって,時間 [
t,t+∆t) における動的最適条件は次のように表される.
[
最短経路原則
]( )
t{
Cij( ) ( )
t − id( )
t + jd( )
t =0d
ij π π
λ λ
} ,
( )
( )
t −( )
t +( )
t ≥0Cij λ πid πjd
,
(4.12)( )
t ≥0d
λij