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研究論文 ********** ********** Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 36, No. 2 空調システムを統合化した電気自動車 AI-EV (Air-conditioner Integrated Electr

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 36, No. 2

空調システムを統合化した電気自動車

AI-EV (Air-conditioner Integrated Electric Vehicle)

柴 田 晟 司 郎 * ・ 中 川 二 彦 * Seishiro Shibata Tsuguhiko Nakagawa (原稿受付日2014 年5 月14 日,受理日2015 年2 月20 日)

1.緒言

我が国の政府は2013年末にCO2排出量の削減目標を下 げ,2020年までに2005年比で3.8%削減する新たな目標を 発表した.その一方で,2013年度の貿易収支は,輸入総額 85兆円うち化石燃料の輸入総額が28兆円に達し,赤字額 が14兆円に拡大した1).このことは,CO2排出量を削減す る目的だけでなく,経済性も含めて輸入エネルギーを国全 体として削減していく必要があることを示している.

この解決策のひとつとして,太陽光発電(以下,PV と記 す)と電気自動車(以下,EVと記す)を組み合わせて,PV電 力を EVの動力源として使うだけでなく,家庭や工場など のエネルギー源としても効率よく利用するスマート PV &

EV システムを提案し,大きな効果が得られることを明ら かにしている2) 3)

このスマートPV & EVシステムを広く普及するために は EVの普及が重要になる.しかし,従来のEVは,航続 距離が短く,高価な蓄電池の搭載に伴う高価格および電池 が切れたときに有効な充電策が無いなどの課題がある.そ こで,これらの課題を解決するために,EVでは約3割の 電力が消費されている空調機に着目した.すなわち,空調 機を小型エンジンで駆動するとともに,空調負荷が低い時 の余力を用いて発電を行うことにより,従来のEVやハイ ブリット車(以下,HV と記す)などと全く異なるコンセ プトを持つAI-EV (Air-conditioner Integrated Electric Vehicle) を提案する.これにより,先に述べたEVの課題を解決で きるが,その一方で小型エンジンの燃料に化石燃料を使用 すると,EVに比べてCO2排出量の増加が懸念される.

本研究では,EV の課題を克服する革新的コンセプトの AI-EVを提案するとともに,スマートPV & EVシステムを 適用したコミュニティ全体における省エネルギーやCO2排 出量の削減効果をガソリン車,HV,EVおよびAI-EVで比 較した.また,AI-EVの自動車としての性能を検討した.

2.PVとEVの複合システムとAI-EV 2.1 スマートPV&EVシステム

スマートPV & EVシステムでは,PV電力を系統へ逆潮 流するのではなく,PVの電力を直流のまま直接EVに充電 し,EV を電力の貯蔵,輸送および平準化の媒体として使 用することで,PVの電力を効率よく利用する.本システム では,PVを設置する費用は,PVの導入により削減される 燃料費である.つまり,EV を通勤に用いる場合には,通 勤手当を財源にしてPVを勤務先に設置し,EVで通勤する 勤務者にPV電力を現物で支給する.このため,PV設置に 新たな財源を必要としない点がひとつの特徴である.PVか らEVへ充電した電力はEVの動力源に使われるとともに 家庭へ供給する.また,EV への充電後に発生する余裕電 力(単位時間あたりのPV発電量-EV充電量で定義する)

は勤務先で使用する.このように,スマートPV&EVシス テムは経済性のあるCO2排出量の削減ができる.このシス テムの適用拡大にはEVの普及が重要になるが,そのため には,EVに解決すべき課題がある.

ガソリン車とEVのエネルギー消費を比較した例を図 1 に示す4).図 1より,EVではガソリン車に比べ,熱損失が 減少してエネルギー効率が上がるため,車両全体で消費す るエネルギーに占める空調動力の割合が,ガソリン車に比 べて高くなる.この結果,搭載する蓄電池の実効容量の約 3割が空調に使われており,表 1に示すように,EVはガソ In order to expand the natural energy and the energy conservation, "The Smart Photovoltaic power generation (hereinafter referred to as PV) and Electric Vehicle (hereinafter referred to as EV) system" has been proposed and the effect has been clarified. However, the Smart PV and EV system has some problems to become common. It’s necessary to solve EVs problems which are short cruising range, high cost of storage battery and risk of dead battery. Therefore, Air-conditioner Integrated Electric Vehicle (hereinafter referred to as AI-EV) which has a greatly improving the mentioned above three performances has been proposed.

In this paper, the authors have studied the total energy consumption of the Smart PV and EV system in the case of using Gasoline Engine Vehicle, Hybrid Vehicle, EV and AI-EV. As a result, AI-EV can reduce CO2

emissions by 20% almost the same as EV in the Smart PV and EV system. In addition, AI-EV is able to gain the cruising range more than twice as long as EV with the same battery capacity.

*岡山県立大学 情報工学部 情報システム工学科

〒719-1197 岡山県総社市窪木111 E-mail : [email protected]

**********研究論文

(2)

リン車やHVに比べ,航続距離が短く,燃料が切れた時の リスクが大きいこと,また,蓄電池の容量増加に伴う高い 車両価格などが課題になっている.

図 1 ガソリン車とEVのエネルギー消費

表 1 EVの特徴

2.2 AI-EV (Air-conditioner Integrated Electric Vehicle) EV の課題を解決するために,空調機の動力システムに 着目し,これをEVの動力システムと統合して,EVのエネ ルギー消費および供給媒体としての高効率化が図れる

AI-EVを提案する.AI-EVは,図 2に示すように,自動車

を単なる移動機器ではなく,電力の貯蔵,輸送および需給 平準化の媒体と考えた,従来の自動車とは全く異なるコン セプトの車両である.図 2より,AI-EVの具体的な仕組み は,燃料を用いて小型エンジンを一定回転で駆動し,その 動力でヒートポンプ式の空調機の圧縮機を直接駆動させる.

これにより,空調で消費する電力を燃料で代替し,更に,

空調負荷が低いときには小型エンジンの余力を用いて自家 発電を行う.その結果,電池が切れても自ら充電でき,ま た,航続距離の延長が可能になる.更に,空調圧縮機のエ ンジン駆動と自家発電により,高価な蓄電池の搭載容量を 削減できるため,車両コストを下げることも可能になる.

AI-EVの主たるエネルギー源はPV電力であるが,空調

機の負荷が低い時の余力で発電も行うため,災害時などに は,発電した電力を充電して,福祉施設や病院などに供給 することもできる.なお,AI-EVの小型エンジンには様々 な燃料の使用が考えられるが,使用する燃料によって,経 済性やCO2の削減効果が異なることから,これらは電力消 費と併せて一元評価する必要がある.

図 2 AI-EVの概略図 2.3 家庭のエネルギー需要

2011 年における岡山県の一般家庭で使用しているエネ ルギー別CO2排出量の内訳を図 3に示す5) 6)

図 3 岡山県の一般家庭におけるCO2排出量

これより,家庭からのCO2排出量の55%が電力,45%が ガソリンなどの化石燃料であり,家庭からのCO2排出量を 削減するためには,電力と化石燃料の両方を削減する必要

がある.CO2排出量の25%を占めるガソリンは,EVを導入

して電力へ代替すれば,PVや風力などの電力を活用できる.

灯油,都市ガスおよびLPGは,暖房,給湯器および厨房な どの燃料として使用されており,ヒートポンプ式の空調機 や給湯器,電磁調理器などの導入で電力へ代替可能である.

このため,勤務先のPVなどからEVに充電した電力を家 庭に供給すれば,家庭に大きなPV や高価な蓄電池を設置 しなくても,家庭で消費するエネルギーを自然エネルギー で代替し,CO2排出量を削減できる.なお,本論文では,

ガス燃料と灯油を除く,家庭の電力消費55%と,ガソリン

25%のうち通勤で消費される22%(約9割)を対象とした.

空調 走行用 蓄電池

モータ

小型 エンジン

圧縮機 発電機

化石燃料

電力系統 充電

PV

6424 kg-CO2/世帯 13%

ガス 7%

灯油 ガソリン

(通勤以外の用途)

ガソリン

(通勤用途)

22%

55%

3% 電力

ガソリン車 EV

5%

空調

その他

走行 熱損失

10%

23%

62%

13%

26%

60%

現 状

ガソリン車 HV EV 消費エネルギー量

加速性能 航続距離 静粛性 環境性能

ランニングコスト イニシャルコスト 燃料喪失時リスク エネルギー輸送 災害対応 将

〇 ◎ ×

△ ×

×

〇 〇

〇 ◎

×

〇 ◎

×

×

×

× 〇

× 〇

(3)

検討にあたって,上記で述べた家庭のように,燃料と電 力のどちらを使っても良い場合には,エネルギー効率や経 済性を考慮し,化石燃料,バイオマス燃料,系統電力およ び PV 電力(風力を含む自然エネルギー)の中で有利なエネ ルギーを使用すれば良いことから,燃料と電力を一元的に 評価する必要があり,それが可能なHEXモデルを用いた.

3.検討方法 3.1 HEXモデル

HEXモデルは,図 4に示すように,対象地域をHEX (正 六角形)に分割し,HEX 毎に,電力と燃料種類毎のエネル ギー収支を計算し,地域全体のエネルギー収支を求める.

図 4 HEXモデル

HEX毎のエネルギー収支は,「EVなどの流入・流出に 伴うHEX内のエネルギー変化量EFijmt」と「HEX内で発生・

消費・貯蔵に伴うエネルギー変化量ESijmt」の合計である.

このため,時刻TtおけるHEX( i , j )のエネルギー総変化量 は式(1),(2)で表される.将来において,HEX 内で化石燃 料を使わずに,全てを電力で賄うようなエネルギーシステ ムを設計する場合でも,式(2)を用いることで,化石燃料を 電力で代替した場合を求めることが容易にできる.

(1) (2) ただし,

i :対象地域のx軸方向のHEX位置 j :対象地域のy軸方向のHEX位置 m:エネルギーの種類(n4:8)

m = 1:電力,2:ガソリン,3:軽油,4:灯油,

5:重油,6:LPG,7:LNG,8:都市ガスなど t :経過時間列の位置

Tt:tに相当する経過時間

Et:時刻Ttにおけるエネルギー総変化量

EFijmt:流入・流出に伴うHEX内のエネルギー変化量 ESijmt:HEX内で発生・消費・貯蔵に伴うエネルギー

変化量

Cm :各燃料の電力代替係数

広範囲の地域は連続する複数の HEX の集合体として表 現され,対象地域全体のエネルギー総変化量は式(3)で表さ れる.また,該当地域内のエネルギー需要はあらゆる時間 帯において満足される必要があることから,Eijt EAreatの 制約条件は式(4)になる.

(3) (4) ただし,

n1 :対象地域のx軸方向のHEX個数

n2 :対象地域のy軸方向のHEX個数

EAreat :時刻Ttにおける対象地域全体のエネルギー

総変化量

本論文ではHEXモデルを用いて,スマートPV & EVシ ステムを適用したコミュニティ全体のエネルギー収支を求 めた.なお,本報では基礎式のみを示すので,詳細は先行 文献を参照していただきたい7)

4.シミュレーション条件

岡山県立大学とそこへ通勤する職員の実績値を基に検討 した.具体的な内容は以下の通りである.

4.1 PVの条件

PVは通勤車を日中駐車する勤務先に設置した.PVパネ ルの設置面積はEV 1台分の駐車スペースである12.5m2/台 を基準とした.PVの発電量は,天候,季節および日内変動 の全てを考慮するため,2011年の1年間に亘る1時間毎の 日射量実績データを用いた8).PVモジュールの条件を表 2 に示し,PV発電の基礎式を式(5)~(7)に示す9)

表 2 PVの条件

(5) (6) (7) ただし,

QPVt :PV発電量 [kWh]

(i+2j+1) 1

2 4 3 5

6 4

5

1 6 2

3

(i+4j+1) (ij+1)

(i+3j) (i+1j)

(i+1j+2) (i+3j+2) (i+2j+1)

1 2 4 3 5

6 4

5

1 6 2

3

(i+4j+1) (ij+1)

(i+3j) (i+1j)

(i+1j+2) (i+3j+2)

K P C 

KPT

K' K 

PV t

PVt C Q A

Q   S

4

1 m

mt m t

n ij

ij C E

E

mt mt

mt ij ij

ij EF ES

E  



1

1 2

1 t t

Area n

i n

j

Eij

E

0 ,

0 Areat

tE

Eij

PV

係数

日射量年変動補正係数 0.97 経時変化補正係数 0.95 アレイ負荷整合補正係数 0.94 アレイ回路補正係数 0.97 パワーコンディショナー実行効率 0.88 温度補正係数(年間平均) 0.97

最大出力 240 W

単位面積あたりの出力 190 W/m2 モジュール面積 1.26 m2

KPT K’

(4)

C :補正係数 [-]

QSt :単位面積当たりの日射量 [kWh/m2]

APV :PV設置面積 [m2]

P :モジュール変換効率 [-]

K :年間総合設計係数 [-]

K' :基本設計係数 [-]

KPT :温度補正係数 [-]

4.2 EVの条件

4.2.1 充電と家庭への電力供給方法

EVは通勤用途とし,PVの電力は直流のままEVの蓄電 池へ直接充電する.EVへの充電時間は8時30分~17時 30分とし,満充電になるまで充電する.ただし,雨天など の理由でPVの発電量が少なく,16時30分までに往復通勤 に必要な充電が完了しない場合は,通勤に最低限必要な電 力を系統から充電する条件にした.

EVは帰宅後,電池残量に余力がある場合には,EVから 家庭へ電力を供給する.帰宅後,EV が家庭に電力を供給 する際の条件を式(8)に示す.式(8)を満たさない場合は家庭 に電力を供給しない条件とした.

(8)

ただし,

:EVが保有する電力量 [kWh]

:EV蓄電池の最大容量 [kWh]

:EV蓄電池の使用限界率 [-]

:通勤に必要な電力 [kWh]

4.2.2 走行に必要なエネルギー

EVは勤務先と自宅の往復通勤のみに使用し,通勤距離 は岡山県立大学へ通勤する職員の実績平均値28km/日を用 いた.なお,EVの諸元を表 3に示す.これより,一日あ たりの走行消費電力は,3.1kWh(=28km / 9.1km/kWh)となる.

表 3 EVの諸元

4.2.3 空調に必要なエネルギー

自動車に必要な冷暖房能力は自動車室内の熱収支に基づ き評価した10).空調機はヒートポンプ式とし,そのCOPは,

冷房時=2.8,暖房時=3.1を用いた.空調の使用条件として,

外気温が15℃より低い場合は暖房,25℃より高い場合は冷 房を使用し,15℃~25℃では空調を使用しない条件とした.

なお,車室内の目標温度は,暖房時を18℃,冷房時を25℃

とした.

2004年式のムーブでの実測結果から,必要な最大空調負 荷は6kWであることが分かった11)

最大空調負荷から,空調圧縮機の駆動に必要な最大動力 は式(9)で計算でき,WAmax=2.2kWが得られた.

(9) ただし,

WAmax:空調圧縮機の駆動に必要な最大動力 [kW]

Qnmax:最大空調負荷 [kW]

4.3 AI-EVの条件 4.3.1 小型エンジンの条件

空調圧縮機の駆動に必要な2.2kW以上の動力は,排気量 120CCの小型エンジンで得ることができる.例えば,富士 重工の汎用エンジンは,回転数3600rpmで出力2.6kWである.

シミュレーションにおいて,出力特性はこのエンジンと同 じとした.なお,エンジンを一定回転で駆動することから,

エンジンの熱効率は37.6%とした12).また,動力伝達効率 95%,発電機本体の効率(AC⇒DC変換を含む)は90%,すな わち,エンジン余力で発電する際の発電効率は32.1%とし た.

4.3.2 空調と発電のハイブリッドシステム

EVに搭載した空調機の消費電力量の変化例を図5に示す.

図5は外気温32℃,相対湿度60%,日射量0.8kW/m2の場合に おける車室内温度の時間変化と空調負荷,圧縮機の仕事の 関係であり,車室内の温度が冷房目標温度に近くなるのに 伴い,空調圧縮機の必要動力が減少し,発電可能なエンジ ン余力が増加することが分かる.

図5 空調圧縮機に必要な動力とエンジン余力の変化

また,図6に,朝夕の通勤時間帯において,1年間通勤し た場合の一日あたりの月別平均空調消費電力量(kWh/日)を 示す.朝夕の通勤時間は,出勤が8:00~8:30,退勤が17:30

~18:00であり,外気温度,湿度および天候は2011年の1年

t limit

max M hij

V   

t

hij

limit

COP

max/

max n

A Q

W

Vmax

M

EVの電力消費率 9.1 km/kWh

電池容量 24 kWh

モーター効率 (DC⇒AC変換を含む) 90 %

充放電効率 94 %

電池の使用可能範囲 20~100 % 1.5

2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0

15 20 25 30 35

空調機負荷 40

車室内温度 車内構造物温度

圧縮機仕事 エンジン出力

温度[℃]

エネルギー[kW]

0 300 600 900 1200 1500

時間 [sec]

動力余力⇒発電

(5)

間(8760h)に亘る1時間毎の実績値を用いた.図6より,8月 の真夏と1月の真冬において空調での消費電力量が多いこ とが分かる.

図6 一日あたりの月別平均空調消費電力量

AI-EVの発電量は,上記で述べた空調機動力の負荷変化

に基づき,式(10)を用いて算出した.

(10) ただし,

:AI-EVでの発電量 [kW]

:エンジン出力 [kW]

:空調必要能力 [kW]

:発電機効率 [-]

なお,EVと比べて,AI-EVに追加される機器の重量は,

小型エンジンが15kg,発電機(インバータ付き)が20kg,燃 料とそのタンクが15kg(燃料充填量10kg)の合計で50kgと し,一方,取り除かれる機器の重量は,空調用のモータ,

インバータの合計で20kgとすると,増加重量は,差し引き 30kgとなる.この重量の増加を考慮し,AI-EVの電力消費 率は,8.9 km/kWhとした.なお,AI-EVに搭載する小型エ ンジンの燃料はLPG を想定し,LPGタンクの容量は 24ℓ とした.また,蓄電池諸元やその他の条件は表 3に示した EVの諸元と同じとした.

5.AI-EVの評価

5.1 社会システムとしてのAI-EVの価値 5.1.1 消費エネルギー量

スマートPV&EVシステムにおいて,ガソリン車,HV,

EVおよびAI-EVの各車両が1年間の走行と空調で消費する エネルギー量を図7に示す.図7において,ガソリン車の燃 費を12.6km/ℓ,HVの燃費を27.1km/ℓとした.これより,EV はガソリン車に対して83%の消費エネルギー量を削減でき,

AI-EVも,ガソリン車に対してほぼ同等の80%の消費エネル ギー量を削減できることが分かった.この効果はHV車より も大きい.この理由は,EVやAI-EVはガソリン車やHVに比

べて車両のエネルギー効率が高いためである.

なお,本検討では,自動車とPVを組み合わせた社会シス テムの効果を検討するため,走行で燃料を使う車両効率の 高い自動車の代表例としてHVを比較対象とした.

図7 車両単体の走行と空調による消費エネルギー量

5.1.2 車両単体のCO2排出量

各車両が空調を稼働しつつ,1年間に亘って走行した場合 のCO2排出量を図8に示す.

図8 車両単体の走行と空調によるCO2排出量 図8より,EVとAI-EVのCO2排出量は,ガソリン車に比べ,

それぞれ97%と94%の削減効果であり,大差ないことが分 かった.これらはHVと比べても1.8倍の削減効果であり,

AI-EVの燃料にLNGやバイオマスエタノールなどを使用す れば,削減効果は更に大きくできる.なお,CO2排出係数

G A

E

G W W

Wt( tt/COP)

t

WG

冷房 暖房

月 0.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

電力量[kWh/day]

0.9

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

EV AI-EV

Gasoline HV Vehicle

消費エネルギー[GJ/year]

△51%

19.1

9.4

3.0 2.8

0.3 0.1

△83% △80%

化石燃料 PV 電力系統

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6

EV AI-EV

HV Gasoline

Vehicle

CO2排出量[t-CO2/year]

△51%

1.45

0.71

0.05

0.06 0.03

△94%

ガソリン LPG 電力系統

△97%

t

WE t

WA

G

(6)

には,ガソリン2.62 kg-CO2/ℓ,LPG 3.48 kg-CO2/kg,系統電 力0.657 kg-CO2/kWh (2011年中国電力公表値) を用いた.

5.1.3 スマートPV&EVシステム全体としてのCO2排出量 ガソリン車やHVを用いた現状のシステムと,スマート PV & EVシステムでEVやAI-EVを各々使用した場合にお ける,自動車,家庭および大学を含むコミュニティ全体で のCO2排出量を比較した.その結果を図 9に示す.図 9よ り,スマートPV & EVシステムは,PV電力を電動移動機 器へ供給し,通勤で余ったPV由来の電力を家庭へ供給で きるうえ,電動移動機器に供給した残りのPV 余裕電力を 大学で消費する.このため,現状のガソリン車を用いたシ ステムに対して,CO2排出量は,電動移動機器から家庭へ 供給する電力で4%,大学へのPV電力供給で4%,電動移 動機器の燃料転換で13%削減される.そして,AI-EVは,

空調機の動力に化石燃料を用いても,EVとほぼ同様のCO2

削減効果が得られる.この理由は,従来のEVのように系 統電力で空調圧縮機を駆動する場合,受電端での発電効率

36.8%,AC⇒DC変換効率90%(充電器),蓄電池の充放電効

率94%,モータ効率90%(DC⇒AC変換を含む)および動力

伝達効率 95%とすると,化石燃料の利用率は 26.6%(=

0.368×0.9×0.94×0.9×0.95)であるのに対して,AI-EV のよう

に熱効率 37.6%の一定回転小型エンジンで空調圧縮機を駆

動する場合には,化石燃料の利用率が35.7 %(=0.376×0.95) と高いためである.なお,本報では天候,気温,時間帯毎 の消費エネルギーなどを 2011 年の実績値で解析した結果 を示したが,2010年における実績値でも同様の結果が得ら れた.

図 9 コミュニティ全体のCO2排出量

本検討では,図 3に示したように,通勤用途でのCO2排 出量のみを対象としたが,通勤以外の用途での消費エネル ギーは,全走行エネルギーの約1割であり,その全てが買

い物や送迎用途とするとPV電力で賄え,また,AI-EVで の発電効率が系統電力の発電効率(受電端)と大差ないこと から,その比率次第で,系統から充電する既存のEVに相 当する以上の効果が期待できる.

5.2 自動車としてのAI-EVの利点

EV の動力源は蓄電池に蓄えられた電力のため,空調機 で電力を使用すると航続距離が短くなる.一方,AI-EVは 空調機を小型エンジンで駆動し,更に空調負荷が低い時に 動力余力を使って発電するため,使える電力に余裕ができ,

航続距離が延長する.そこで,夏期,冬期,春秋期におけ

るAI-EVとEVの航続距離を検討した.検討では,季節条

件として,夏期は外気温 32℃で相対湿度 60%,日射量

0.8kW/m2,冬期は外気温 5℃で相対湿度 80%,日射量

0kW/m2,春秋期は空調を稼働しないとした.

AI-EVに搭載する小型エンジンは,富士重工製の汎用エ

ンジンの性能を基にして,排気量120CC-出力2.6kWと排 気量160CC-出力3.7kWの2ケースで検討した.なお,EV

とAI-EVの蓄電池の条件はこれまでの検討と同じく,電池

容量は24kWh,充放電効率は94%および電池使用可能範囲

は20~100%とした.

夏期と冬期におけるAI-EVとEVの航続距離を比較した 結果を,それぞれ図 10と図 11に示す.図 10と図 11より,

空調機駆動と発電用に 120CC の小型エンジンを搭載した

AI-EVはEVに比べて,市街地走行を想定した平均走行速

度30km/hにおいて,航続距離が夏期は1.9倍,冬期は2.1 倍と飛躍的に延びることが分かる.その一方で,平均走行 速度が速くなるのに伴い,航続距離の改善率が小さくなる.

例えば,平均走行速度100km/hでは,夏期,冬期ともに1.2 倍程度に落ちる.この理由は,平均走行速度の増加に伴い,

蓄電池の電力を使い切るまでの時間が短くなることで,発 電⇒充電できる時間が短くなるためである.

図 10 夏期におけるEVとAI-EVの航続距離比較

20 30 40 50 60 70 80 90 100

100 200 300 400 500

0

航続距離[km]

50 150 250 350 450

平均走行速度 [km/h]

AI-EV (160CC) EV

AI-EV (120CC)

相対湿度 60.0 % 32.0 ℃ 外気温度

日射量 0.8 kW/m2

0 2 4 6 8 10

12 △7%

△21% △20%

CO2排出量[t-CO2/year]

PV+EV PV+AI-EV Gasoline HV

Vehicle

6.9 3.6 1.5

6.9 3.6 0.7

6.4 3.1

6.4 2.9 0.3

ガソリン LPG 家庭電力 大学電力

(7)

図 11 冬期におけるEVとAI-EVの航続距離比較

なお,エンジンの排気量を120CCから160CCに大きく した場合には,空調機駆動時の発電余力が増加するため,

空調負荷が最も大きい夏期でも航続距離は245km となり,

120CC搭載時の1.4倍,EVの2.6倍になる.

また,空調負荷が小さい春秋期の航続距離の比較を図 12 に示す.これより,春秋期では,小型エンジンの出力を全 て発電に回すことができるため,平均走行速度30km/hでは 既存のガソリン車と同等の約390kmの航続距離が得られる ことが分かる.

図 12 春秋期におけるEVとAI-EVの航続距離比較

なお,通勤や日常生活での自動車利用に着目し,市街地 を走行する平均走行速度 30km/h における航続距離を比較 した結果を表 4に示す.ここではLPGの搭載量(24ℓ)を考慮 し,AI-EVの最大航続距離を530kmとした.表 4より,夏 期のEVの航続距離は空調を稼働しない春秋期よりも70km 短い.一方,AI-EVは空調機を小型エンジンで直接駆動す るため,空調機での消費電力を削減できるうえ,空調負荷

が低いときには小型エンジンの余力を用いて自家発電する ため,電動の空調機を搭載するEVと比較して,市街地走 行では航続距離の大幅な延長が図れることが分かった.

表 4 市街地走行時(平均走行速度30km/h)の航続距離

なお,AI-EVシステムは,エンジンと空調機を直結運転 するため,空調機の稼動に蓄電した電力を使うレンジエク ステンダー(以下,REと記す)に比べて,原理的に優れた 仕組みと言える.その理由は,空調機で消費する電力に相 当する充放電量(電池容量が同じ場合には充放電回数)を 3 割削減することができ,蓄電池の延命化を図れるためであ る.更に,REで発電した電力を用いて空調圧縮機を動かす 場合の化石燃料の利用率は25.8%(=0.376(エンジン効率)×

0.95(発電機への動力伝達効率)×0.9(発電機効率+AC⇒DC 変換効率)×0.94(蓄電池の充放電効率)×0.9(DC⇒AC 変換 効率+モータ効率)×0.95(モータからの動力伝達効率))とな り,空調機の効率に大きな差が生じる.また,冬期の暖房 時,AI-EVは空調機の負荷に合わせて,エンジン排熱を空 調機で利用することができるが,発電を目的としたREで は,エンジン排熱を利用し尽くす有効な手段がない.この ため,REシステムで空調機負荷に合わせて排熱を利用する 仕組みを考えると,AI-EVと同じ仕組みになる.以上のこ とから,AI-EVシステムの方が優れた機能を有していると 言える.

また,AI-EVに搭載するエンジンの排気量はガソリン車 の1/10で,その小売価格は約5万円であることから,同じ 蓄電池容量を搭載するEVに対する価格アップは僅かであ る.むしろ,今回の検討では蓄電池の容量を24kWhとした が,AI-EVは自家発電の機能を活用して蓄電池の容量を削 減できるため,使用条件によって最適な容量を選択すれば,

EVと比べて車両価格を抑えられる.

AI-EVは高速走行時の航続距離の延長幅が小さいなどの

課題はあるが,エンジン排気量の最適な選択,一定回転下 でのエンジン高効率化,空調機COPの向上,小型エンジン 排熱や未燃排ガスの活用など,更なる高性能化への改善余 地が多く残っており,これらは今後の開発課題である.

6.結 言

EVの課題を克服する革新的コンセプトのAI-EVを提案 するとともに,スマートPV & EVシステムを適用したコミ ュニティ全体における省エネルギーやCO2排出量の削減効

単位[km]

夏期 冬期 春秋期

EV AI-EV

[120CC] AI-EV [160CC]

95 140 165

180 295 390

245 530 530 AI-EV (160CC)

EV

AI-EV (120CC)

相対湿度 80.0 % 5.0 ℃ 外気温度

日射量 0.0 kW/m2

20 30 40 50 60 70 80 90 100

平均走行速度 [km/h]

100 200 300 400 500

0

航続距離[km]

50 150 250 350 450

空調 OFF

20 30 40 50 60 70 80 90 100

平均走行速度 [km/h]

100 200 300 400 500

0

航続距離[km]

50 150 250 350 450

AI-EV (160CC) EV

AI-EV (120CC)

(8)

果をガソリン車,HV,EVおよびAI-EVで比較した.また,

AI-EVの自動車としての性能を検討した.その結果,以下

のことを明らかにした.

・AI-EVは,一定回転の小型エンジンで空調機を駆動する とともに,空調負荷が低下した時の余力を用いて発電す るハイブリッドシステムを搭載する.これにより,EV の最大の利点である高エネルギー効率を維持しつつ,そ の欠点である短い航続距離,高価格および電池切れ時の リスク対策などの課題を全て解決できる.

・AI-EVを用いたスマートPV&EVシステムは,システム 全体の CO2排出量をガソリン車を用いた場合に対して

20%削減でき,EVを用いた場合の21%の削減と殆ど同じ

効果が得られる.

・AI-EVは排気量120CCの小型エンジンを搭載する場合,

市街地の走行に相当する平均走行速度30km/hにおいて,

航続距離をEVの2倍以上に延長できる.また,160CC のエンジンを搭載する場合は2.6倍以上に延長できる.

参考文献

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2) 古瀬典弘, 中川二彦, 篠原幸一; HEX モデルを用いた PV と EV 複合システムの設計法, 化学工学論文集 Vol.38, No.6, (2012), 415-423

3) 中川二彦, 満本祐太; PVとEVを用いた双方向エネル ギーシステムの評価, 日本エネルギー学会誌 第93巻,

第8号, (2014), 716-724

4) Nissan Motor Co.,Ltd.; Nissan LEAF PRESS INFORMATION, (2010), 14-15,

http://www.nissan-newsroom.com/COMMON/PRODUCT S/ZEROEMISSION/LEAF/PDF/ZE0-101203.pdf 5) 総務省; 家計調査, (2011)

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7) 古瀬典弘, 中川二彦; 電気自動車を用いた再生可能電 力の有効利用方法のHEXモデルによる評価, エネルギ ー・資源学会論文集Vol.34, No.4, (2013), 18-26 8) 気象庁; 気象統計情報, (2011),

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 9) SANYO Electric Co.,Ltd ed.; SANYO HIT photovoltaic

module HIT-N240SE10, (2010), 1-2, http://www.galileo -energy.be/public/uploads/files/Sanyo%20HIT240.pdf 10) Yu Notoji and Tsuguhiko Nakagawa; A Novel Concept

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合化した電気自動車, 2013年度日本機械学会年次大会 講演論文集, (2013), PDF S081013

12) New Energy and Industrial Technology Development Organization; NEDO海外レポート No.991, (2006), 5-6, http://www.nedo.go.jp/content/100106982.pdf

参照

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