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では, 衛星リモートセンシングで得られたマルチスペクトル画像から算出した NDVI を可視化することで, 小麦の圃場内の生育ムラや倒伏状況の分析を行うことができる しかし, 衛星リモートセンシングで取得できるマルチスペクトル画像の地上解像度は数メートル程度であり, 稲の株と条間の土壌が同じピクセルに

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4.4 採用技術の選定 性能面では,どの描画技術を用いた場合でも,既存の Flexを用いたコンポーネントと同等の性能を確保でき る見込みを得た。SynViz S2は,クラウド環境での実行 もサポートしており,クライアントの環境は顧客により 様々であると想定できる。そのため,WebGLのようなハ ードウェアに強く依存する技術は採用しにくい。また, オブジェクトの選択や移動の際には,JavaScriptによる オブジェクトの状態制御が必要となる。SVGではオブジ ェクトの選択などの制御がブラウザ側で実行されるため, プログラムによる制御が困難である問題がある。そこで, 今回のSynViz S2のWeb標準技術への移行では,Canvas を採用することとした。

5. おわりに

Flexと比較し描画性能が低いとされるWeb標準技術 への移行可能性を早期に明確化するために,移行後の性 能を見積もる方法を確立した。これにより,課題であっ た定量的な性能見積もりと採用すべき技術の選定を可能 とした。 SynViz S2のガントチャートはWeb画面でもデスクト ップ製品と同等の操作性と表現力を兼ね備えている。こ れを下支えしていたFlash Playerが2020年でサポート を終了することを受け,Flash Playerに代わるWeb標準 に準拠した新たな共通基盤および可視化コンポーネント の試作評価を進めている。試作の中では,Flash Player で実現できていた水準のUIや機能,性能要件をWeb標準 技術に移行しても満たせるかどうかを検証し,概ね課題 が解決できる見通しが立った。 今後は,試作を通して得られた知見を活かし,2020年 末までに可視化コンポーネントとしてガントチャート, リソースグラフの製品化を図る。製品化した可視化コン ポ ー ネ ン ト は ,SynViz S2の新基盤として適用し, SynViz S2の事業拡大に貢献する。SynViz S2に限らず, ガントチャートやリソースグラフをSynシリーズ製品な ど他のHSE製品にも適用していく。さらに,散布図やグ ラフなどの描画が可能な新たな可視化コンポーネントを 開発し,生産計画,需要予測,在庫管理など幅広く製品 に提供していくことを検討している。 参考文献

1) Flash & The Future of Interactive Content, https://blogs.adobe.com/conversations/2017/07/ad obe-flash-update.html, Accessed 2017/9.

2) Extending User Control of Flash with Click-to-Run, https://blogs.windows.com/msedgedev/2016/12/14/ edge-flash-click-run/#TAWwIWpwTXPYOCih.97, Accessed 2017/9.

3) The Chromium Projects Flash Roadmap, https://sites.google.com/a/chromium.org/dev/flash -roadmap, Accessed 2017/9. 4) 山本, 他, "HTML5 Canvas および SVG における自 動選択アルゴリズムを用いた描画パフォーマンスの 最適化",オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) 2014-AVM-84(6), pp.1-2, 2014. 5) SVG と Canvas: どちらを選ぶか, https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/gg193983 (v=vs.85).aspx, Accessed 2017/9. 6) Flash・Unity・openFrameworks の計算速度比較, http://b.i-tach.com/?p=835, Accessed 2017/9. 7) 内海, 他, Web 標準技術による Web UI コンポーネン トの実現に向けた描画性能の見積による実現可能性 の検討, 第 16 回情報科学技術フォーラム講演論文集. 8) ヤコブ・ニールセン,"ユーザビリティエンジニアリ ング原論",東京電機大学出版局,p.107, 2002. [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 内海 宏律 2006 年入社 ビジネスインキュベーション部 研究開発グループ Web システムおよびソフトウェアコ ンポーネントに関する研究開発 hironori.utsumi.zc@hitachi-solution s.com [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 太齋 真吾 2002 年度入社 第一パッケージ開発部 第一グループ 自社パッケージ製品開発 shingo.dasai.dc@hitachi-solutions.c om [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 石倉 直弥 2009 年度入社 ビジネスインキュベーション部 研究開発グループ Web システムおよびソフトウェアコ ンポーネントに関する研究開発 naoya.ishikura.kk@hitachi-solution s.com

高解像度マルチスペクトル画像による水稲の

生育状況の分析

Analysis of Paddy Rice Growth Using High-resolution Multispectral Image

国内の水稲栽培では生産性を向上するため水田の大区画化が進められている。 しかし,収穫量や品質にばらつきが発生するため,その原因である生育ムラの 低減が課題となっている。その解決には,圃場内の詳細な生育状況のマップが 必要となる。本研究では,このマップを作成するため,ドローンで撮影した地 上解像度5cm 程度の高解像度のマルチスペクトル画像から,圃場内の撮影地点 ごとに水稲の植生指数を算出し,それを圃場全体に補間することで圃場全体の 植生指数を推定するマッピング手法を考案した。北海道士別市で2016 年の 7 月と8 月に撮影された水田のマルチスペクトル画像に本手法を適用し,撮影角 度による見かけ上のムラの発生を回避しつつ, 植生指数による生育マップを作 成できることを確認した。 飯塚 新司 宗形 聡 齋藤 邦夫 妹尾 裕之 三枝 昌弘 高田 哲哉 Iizuka Shinji Munakata Satoshi Saito Kunio Seo Hiroyuki Saegusa Atsuhiro Takada Tetsuya

1. はじめに

大区画化された水田では,整備前の元の区画ごとに土 壌成分に違いがあったり,土地の高低差により水はけに 違いがあったりする。そのため,圃場内の稲が均一に育 たずに生育ムラが発生することがある。生育が早まった 稲や遅れた稲では,収穫した米に被害粒や未熟粒が多く 含まれ,品質が低くなる。これにより,圃場全体で米の 収穫量と品質が低下し,生産者の収入減少につながって いる。このため,水田の大区画化では生育ムラの低減が 課題となっている。この課題に対応するための農業管理 手法として,精密農業がある1) 。精密農業ではリモート センシングなどを利用して圃場内の農作物の詳細な生育 状況を把握し,生育マップを作成する。生育マップをも とに圃場内の場所ごとに施肥量を設計し,可変施肥機を 使用して施肥を行う。このような一連の管理により圃場 内の生育ムラを低減する。 リモートセンシングで取得したマルチスペクトル画像 で農作物の生育状況を精度よく定量化するには,植生部 分と土壌部分の画像を分離し,植生部分の画像データか ら生育状況を数値化することが望ましい。水稲の場合, 株間や条間は数十cm 程度のため,植生部分の分離には 地上解像度 5cm 程度の高解像度画像が必要となる。 本研究では,北海道士別市の国営農地再編整備事業に おけるICT農業推進事業の一環として,既存のマッピン グ手法の問題点を検討し,それらを解決するマッピング 手法を考案した。ドローンで撮影した地上解像度5cm程 度の高解像度のマルチスペクトル画像から,水稲の生育 マップを作成する実証実験を行った。

2. 既存のマッピング手法とその課題

2.1 既存手法 リモートセンシングによる植物の生育状態の測定では NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)2)

いう植生指数がよく用いられる。NDVI は近赤外線と可 視光のバンドを含むマルチスペクトル画像から以下の計 算式でピクセルごとに算出される。ここで𝜌𝜌𝜌𝜌NIR(𝑝𝑝𝑝𝑝)と 𝜌𝜌𝜌𝜌R(𝑝𝑝𝑝𝑝)はそれぞれピクセル𝑝𝑝𝑝𝑝における近赤外線と可視光 赤のバンドの反射率である。 NDVI(𝑝𝑝𝑝𝑝) =𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌𝜌NIR(𝑝𝑝𝑝𝑝) − 𝜌𝜌𝜌𝜌R(𝑝𝑝𝑝𝑝) NIR(𝑝𝑝𝑝𝑝) + 𝜌𝜌𝜌𝜌R(𝑝𝑝𝑝𝑝) リモー トセンシングに よる生育マ ッピングでは, NDVI をピクセルごとに算出し,適切な色付けで画像化 して生育マップを作成する。国内では衛星リモートセン シングを用いる方法が実用化されている。(株)日立ソリ ューションズのGeoMation 農業支援アプリケーション3)

(2)

では,衛星リモートセンシングで得られたマルチスペク トル画像から算出したNDVI を可視化することで,小麦 の圃場内の生育ムラや倒伏状況の分析を行うことができ る。しかし,衛星リモートセンシングで取得できるマル チスペクトル画像の地上解像度は数メートル程度であり, 稲の株と条間の土壌が同じピクセルに混在する。そのた め,生育ムラが株の粗密によるものか,個々の稲の生育 状態の違いによるものか,区別できない4) 。近接リモー トセンシングでは地上解像度 5cm 程度のマルチスペクト ル画像が得られるため,植生部分と土壌部分のピクセル を分離できる。そのため,稲の生育状態に基づいた生育 ムラの判断や生育マッピングが可能となる。可変量施肥 では稲の生育状態を圃場内で均一にすることを目的に施 肥量を設計するため,精密農業には近接リモートセンシ ングがより適しているといえる。 ドローンによる近接リモートセンシングを用いる生育 マッピング5) では,まず SfM(Structure from Motion)

という技術で複数の撮影画像からカメラの撮影位置を推 定して,対象圃場の三次元モデルを生成する。次に三次 元モデルをもとに撮影画像を合成し,それを平面に射影 する。これにより対象圃場全体のオルソモザイク画像を 作成する。最後にオルソモザイク画像の各ピクセルに対 してNDVI を算出して生育マップを作成する。国外では この技術を用いたソフトウェアやサービスが,麦,トウ モロコシ,ワイン用ブドウなど様々な農作物の生育マッ ピングに用いられている。 2.2 既存手法の課題 本研究では,ドローンによる近接リモートセンシング で取得した地上解像度 5cm 程度のマルチスペクトル画像 を用いて,オルソモザイク画像を合成してNDVI を算出 する既存手法による生育マッピングを検証した。これに より明らかになった既存手法の課題を以下に述べる。作 成した生育マップを図 1 に示す。分析対象としたのは, 図中に示す圃場1と圃場2である(4.1 節参照)。 既存手法による生育マップの一部を拡大したものを図 2 に示す。植生部分と土壌部分が数ピクセル間隔で混在 しており,図2 左の撮影地点付近よりも,図 2 右の撮影 地点から離れた場所の方が,黄緑色の植生部分がより多 くなっている。生育マップを縮小すると,この違いは図 1 に見られるような撮影地点を中心とした斑点状のムラ となって見える。 図1 既存手法による生育マップ (上:7月26日,下:8月24日) 図2 既存手法による生育マップの一部 (左:撮影地点付近,右:撮影地点から離れた場所) 図3 に示すように,空撮した写真では撮影角度により 条間の土壌の写り方に違いがある。そのため,撮影地点 の近くと撮影地点から離れた場所とでは,植生部分と土 壌部分の見かけ上の割合が変化し,撮影地点から離れる ほど植生部分の割合が大きくなって見える。 図3 撮影角度による条間の写り方の違い 圃場1 圃場2

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では,衛星リモートセンシングで得られたマルチスペク トル画像から算出したNDVI を可視化することで,小麦 の圃場内の生育ムラや倒伏状況の分析を行うことができ る。しかし,衛星リモートセンシングで取得できるマル チスペクトル画像の地上解像度は数メートル程度であり, 稲の株と条間の土壌が同じピクセルに混在する。そのた め,生育ムラが株の粗密によるものか,個々の稲の生育 状態の違いによるものか,区別できない4) 。近接リモー トセンシングでは地上解像度 5cm 程度のマルチスペクト ル画像が得られるため,植生部分と土壌部分のピクセル を分離できる。そのため,稲の生育状態に基づいた生育 ムラの判断や生育マッピングが可能となる。可変量施肥 では稲の生育状態を圃場内で均一にすることを目的に施 肥量を設計するため,精密農業には近接リモートセンシ ングがより適しているといえる。 ドローンによる近接リモートセンシングを用いる生育 マッピング5) では,まず SfM(Structure from Motion)

という技術で複数の撮影画像からカメラの撮影位置を推 定して,対象圃場の三次元モデルを生成する。次に三次 元モデルをもとに撮影画像を合成し,それを平面に射影 する。これにより対象圃場全体のオルソモザイク画像を 作成する。最後にオルソモザイク画像の各ピクセルに対 してNDVI を算出して生育マップを作成する。国外では この技術を用いたソフトウェアやサービスが,麦,トウ モロコシ,ワイン用ブドウなど様々な農作物の生育マッ ピングに用いられている。 2.2 既存手法の課題 本研究では,ドローンによる近接リモートセンシング で取得した地上解像度 5cm 程度のマルチスペクトル画像 を用いて,オルソモザイク画像を合成してNDVI を算出 する既存手法による生育マッピングを検証した。これに より明らかになった既存手法の課題を以下に述べる。作 成した生育マップを図 1 に示す。分析対象としたのは, 図中に示す圃場1と圃場2である(4.1 節参照)。 既存手法による生育マップの一部を拡大したものを図 2 に示す。植生部分と土壌部分が数ピクセル間隔で混在 しており,図2 左の撮影地点付近よりも,図 2 右の撮影 地点から離れた場所の方が,黄緑色の植生部分がより多 くなっている。生育マップを縮小すると,この違いは図 1 に見られるような撮影地点を中心とした斑点状のムラ となって見える。 図1 既存手法による生育マップ (上:7月26日,下:8月24日) 図2 既存手法による生育マップの一部 (左:撮影地点付近,右:撮影地点から離れた場所) 図3 に示すように,空撮した写真では撮影角度により 条間の土壌の写り方に違いがある。そのため,撮影地点 の近くと撮影地点から離れた場所とでは,植生部分と土 壌部分の見かけ上の割合が変化し,撮影地点から離れる ほど植生部分の割合が大きくなって見える。 図3 撮影角度による条間の写り方の違い 圃場1 圃場2 植生部分の割合は稲の生育状況と関係があり,既存研 究では草丈や茎数などの推定に用いられている6) 。しか し,既存手法では図2 のような各地点の植生部分の割合 の違いが,生育状況の違いによるものか,撮影角度の違 いによる見かけ上のものか,を判別することができない。 これはオルソモザイク画像を作成するとき,同じ地点を 撮影した複数の写真を合成する際に撮影角度の情報が失 われるからである。その結果,既存手法では施肥量の設 計に必要な稲の生育状況の把握が困難となる。地上解像 度 5cm 程度の高解像度で水稲を撮影したため,このよう な課題が生じたと考える。

3. マッピング手法の提案

2.2 節の課題に対応するため,空撮した写真から撮影 地点近くの画像を抽出して植生指数を算出し,圃場全体 に補間するマッピング手法を提案する。植生指数を算出 する際に植生部分と土壌部分を分離することで,稲の生 育状態をより正確に把握できるようにする。提案手法の フローを図4 に示す。 図4 提案手法のフロー (手順1)写真中央部の画像を抽出する。抽出画像の形 状は,水稲の条の方向に依存しないようにするため,写 真の中央を中心点とした円とする。円の半径は,円内の ピクセルにおける近赤外線のピクセル値のヒストグラム をもとに決定する。円の半径を小さくしてもヒストグラ ムの形状が変化しなくなるような半径のうち,十分大き な半径を選択することで,土壌の写り方が均一な写真中 央部の画像を抽出することができる。本研究では,写真 の中央を中心とし,写真の縦方向のピクセル数の1/4 を 半径とする円で抽出した。 (手順2)手順1で抽出した画像から,植生部分と土壌 部分のピクセルを分離する。近赤外線バンドのピクセル 値のヒストグラムにおいて,植生部分と土壌部分は別々 のピークを持つ。そこで,ヒストグラムの高さが極小と なるときの近赤外線のピクセル値を閾値として,植生部 分と土壌部分の画像を分離する。このような閾値の選定 法をモード法7) という。モード法による閾値の例を図5 に示す。閾値を示す縦線の右側が植生部分,左側が土壌 部分として分離される。 図 5 モード法による植生部分と土壌部分の閾値 (手順3)植生指数NDVI を以下で算出する。ここで, Nveg は手順2で抽出した植生部分のピクセル数である。 NDVI =N1 veg � NDVI(𝑝𝑝𝑝𝑝) 𝑝𝑝𝑝𝑝: 植生部分のピクセル (手順4)手順3で算出した撮影地点ごとのNDVI を補 間して,圃場内の各地点におけるNDVI の値を推定する ことで,圃場全体の生育マップを作成する。本研究では Akima の補間法8) を用いた。NDVI の値を推定する地点 は,圃場内の1m 間隔のメッシュ上にある各点とした。 (手順5)手順4で算出した補間値の推定誤差を評価す るため,leave-one-out クロスバリデーションを行う。ま ず評価用の撮影地点を1 箇所選び,評価用の撮影地点に おけるNDVI の値と,残りの撮影地点のデータから計算 した補間値との差を,その地点の推定誤差とする。これ

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を評価用の撮影地点を変えながら繰り返し,推定誤差の 分布と,その分散の推定値σ�を得る(図 6)。 図6 クロスバリデーションによる推定誤差の評価 推定誤差が撮影地点によらず独立に分散σ�2の同一の 正規分布に従うと仮定し,異なる2 地点の補間値X,Yに対 して|X − Y| > 1.96√2σ� が成り立つとき,この 2 地点の生 育状況に違いがあると判断する。

4. 提案手法の評価

4.1 対象圃場とドローンによる空撮 撮影対象とした圃場は北海道士別市上士別町の水田約 24ha である。このうち分析対象としたのは,図 1 に示 す,育苗した苗を定植した水田 3.8ha(圃場1)と,直 接播種した直播の水田 3.4ha(圃場2)である。いずれ も圃場整備により大区画化された水田で,圃場1では 21a 前後の 18 区画が 1 区画に整備されていた。 使用したドローンは固定翼型のsenseFly eBee RTK, 使用したカメラは近赤外線と可視光赤のバンドを含むマ ルチスペクトルカメラCanon S110 NIR である。画素数 は4,048×3,048 ピクセル,撮影時の焦点距離は 35mm フィルム換算で24mm であり,広角で撮影した。飛行高 度は約130m,地上解像度は約 4.6cm である。 撮影日は2016 年 7 月 26 日と 8 月 24 日,撮影時刻は 午後4 時である。写真は JPEG 形式で RGB の 3 バンド となっており,R と G にはそれぞれ可視光の赤と緑,B には近赤外線の画像が撮影される。オルソモザイク画像 の 作 成 に は SfM ソ フ ト ウ ェ ア Pix4Dmapper Pro (Version 2.1.52)を使用した。 4.2 提案手法による生育マップ 士別市のドローン撮影画像に提案手法を適用した結果 を示す。手順4の補間により推定された生育マップ上の 各点におけるNDVI の統計量を表 1 に記す。最大値と最 小値の差が1.96√2σ� より大きければ,圃場内に生育ムラ があったと判定する。圃場1では,NDVI について 7 月 26 日と 8 月 24 日ともに生育ムラが認められた。特に NDVI の差が大きかった 8 月 24 日の生育マップをもと に施肥量を設計することで,登熟期の生育ムラを低減し, 収穫量や品質を向上できる可能性があると考える。圃場 2については,生育ムラは認められなかった。 提案手法による生育マップを図7 に示す。図 1 の既存 手法による生育マップと比較して,撮影角度の違いによ って生じたと見られる斑点状のムラはない。また,既存 手法では図2 のように土壌部分と植生部分が混在してい るが,提案手法では手順2により土壌部分を除いた植生 部分のみから算出したNDVI のマップとなっている。 表1 生育マップにおける植生指数(NDVI)の統計量(太字:差> 1.96√2σ�) 圃場 圃場1 圃場2 撮影日 7 月 26 日 8 月 24 日 7 月 26 日 8 月 24 日 撮影地点数 19 22 15 16 植生指数 (NDVI) 最大 0.463 0.375 0.441 0.333 最小 0.408 0.162 0.318 0.205 差 0.055 0.213 0.123 0.128 1.96√2σ 0.049 0.200 0.139 0.128 図7 提案手法による生育マップ(左から圃場1の7月26日と8月24日,圃場2の7月26日と8月24日の生育マップ)

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を評価用の撮影地点を変えながら繰り返し,推定誤差の 分布と,その分散の推定値σ�を得る(図 6)。 図6 クロスバリデーションによる推定誤差の評価 推定誤差が撮影地点によらず独立に分散σ�2の同一の 正規分布に従うと仮定し,異なる2 地点の補間値X,Yに対 して|X − Y| > 1.96√2σ� が成り立つとき,この 2 地点の生 育状況に違いがあると判断する。

4. 提案手法の評価

4.1 対象圃場とドローンによる空撮 撮影対象とした圃場は北海道士別市上士別町の水田約 24ha である。このうち分析対象としたのは,図 1 に示 す,育苗した苗を定植した水田 3.8ha(圃場1)と,直 接播種した直播の水田 3.4ha(圃場2)である。いずれ も圃場整備により大区画化された水田で,圃場1では 21a 前後の 18 区画が 1 区画に整備されていた。 使用したドローンは固定翼型のsenseFly eBee RTK, 使用したカメラは近赤外線と可視光赤のバンドを含むマ ルチスペクトルカメラCanon S110 NIR である。画素数 は4,048×3,048 ピクセル,撮影時の焦点距離は 35mm フィルム換算で24mm であり,広角で撮影した。飛行高 度は約130m,地上解像度は約 4.6cm である。 撮影日は2016 年 7 月 26 日と 8 月 24 日,撮影時刻は 午後4 時である。写真は JPEG 形式で RGB の 3 バンド となっており,R と G にはそれぞれ可視光の赤と緑,B には近赤外線の画像が撮影される。オルソモザイク画像 の 作 成 に は SfM ソ フ ト ウ ェ ア Pix4Dmapper Pro (Version 2.1.52)を使用した。 4.2 提案手法による生育マップ 士別市のドローン撮影画像に提案手法を適用した結果 を示す。手順4の補間により推定された生育マップ上の 各点におけるNDVI の統計量を表 1 に記す。最大値と最 小値の差が1.96√2σ� より大きければ,圃場内に生育ムラ があったと判定する。圃場1では,NDVI について 7 月 26 日と 8 月 24 日ともに生育ムラが認められた。特に NDVI の差が大きかった 8 月 24 日の生育マップをもと に施肥量を設計することで,登熟期の生育ムラを低減し, 収穫量や品質を向上できる可能性があると考える。圃場 2については,生育ムラは認められなかった。 提案手法による生育マップを図7 に示す。図 1 の既存 手法による生育マップと比較して,撮影角度の違いによ って生じたと見られる斑点状のムラはない。また,既存 手法では図2 のように土壌部分と植生部分が混在してい るが,提案手法では手順2により土壌部分を除いた植生 部分のみから算出したNDVI のマップとなっている。 表1 生育マップにおける植生指数(NDVI)の統計量(太字:差> 1.96√2σ�) 圃場 圃場1 圃場2 撮影日 7 月 26 日 8 月 24 日 7 月 26 日 8 月 24 日 撮影地点数 19 22 15 16 植生指数 (NDVI) 最大 0.463 0.375 0.441 0.333 最小 0.408 0.162 0.318 0.205 差 0.055 0.213 0.123 0.128 1.96√2σ 0.049 0.200 0.139 0.128 図7 提案手法による生育マップ(左から圃場1の7月26日と8月24日,圃場2の7月26日と8月24日の生育マップ)

5. おわりに

本研究では,ドローンで撮影した地上解像度5cm 程度 の高解像度のマルチスペクトル画像から水稲の生育マッ プを作成する検証を行った。既存手法の場合,撮影角度 の違いにより土壌部分の写り方に違いがあり,生育状況 の把握が困難になるという課題があることが分かった。 その課題を解決するため,撮影地点ごとのNDVI を圃場 全体に補間する手法を考案した。提案手法により,撮影 角度の違いによる見かけ上のムラの発生を回避しつつ, 植生部分のみのNDVI で生育マップを作成できることを 確認した。提案手法による生育マップが実際の生育状況 をどの程度正確に反映しているのか,推定精度の検証が 今後の課題である。 国内の農業では,担い手の減少と高齢化に伴い,農地 の集約化や生産性の向上を目的とした圃場の大区画化が 進んでいる。その中で,高解像度リモートセンシングに よる生育マップと可変施肥を組み合わせた精密農業への ニーズが今後増大していくと考える。これまでも(株)日 立ソリューションズ東日本では,GeoMation 農業支援ア プリケーションを用いた衛星リモートセンシングによる 生育マップの可視化を,生育ムラの分析ソリューション として提供してきた。今後は,本研究の成果である高解 像度リモートセンシングによる生育マップ作成技術を活 用し,GeoMation の適用領域を精密農業向けソリューシ ョンへと拡大することを検討している。ソリューション 化に向け,提案手法を実際の生産現場に適用して,生育 ムラの低減や生産性・品質の向上が実現できることを検 証することが必要である。このようなPoC 活動を通して 精密農業向けソリューションを確立し,農業分野での事 業拡大に貢献していく。 参考文献 1) 澁澤:精密農業,朝倉書店,2006 年 2) H. G. Jones,他:植生のリモートセンシング,森北 出版,2013 年 3) 株式会社日立ソリューションズ:GeoMation 農業 支援アプリケーション http://www.hitachi-solutions.co.jp/geomation_far m/(2017 年 8 月閲覧) 4) 瀬下,他:UAV リモセンの農業への活用研究,写 真 測 量 と リ モ ー ト セ ン シ ン グ ,Vol.55,No.1, pp.38-41 (2017.3) 5) 濱,他:小型 UAV と SfM-MVS を使用した近接画 像からの水稲生育モニタリング,水文・水資源学会 誌,Vol.29,No.1,pp.44-54 (2016.4) 6) 石井,他:マルチスペクトルイメージングセンサを 用いた生育診断システムの構築(第1 報)画像処理 法の確立及び水稲センシング,農業機械学会誌, Vol.68, No.2, pp.33-41 (2006.3)

7) P. K. Sahoo, 他 : A survey of thresholding techniques, Computer Vision, Graphics, and Image Processing, Vol.41, Issue 2, pp.233-260 (1988.2)

8) H. Akima: Algorithm 761: Scattered-data surface fitting that has the accuracy of a cubic polynomial, ACM Transactions on Mathematical Software, Vol.22, Issue 3, pp.362-371 (1996.9)

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[顔写真 (jpg ま た は bmp)] 飯塚 新司 2008 年入社 ビジネスインキュベーション部 統計,数理モデル,機械学習を用いた データ分析技術の研究開発 shinji.iizuka.zt@hitachi-solutions.c om [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 宗形 聡 2003 年入社 ビジネスインキュベーション部 数理モデルや機械学習を用いた意思 決定支援技術,データ分析技術の研究 開発 satoshi.munakata.tu@hitachi-soluti ons.com [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 齋藤 邦夫 1992 年入社 ビジネスインキュベーション部 自社パッケージ製品・ツールの研究・ 開発 kunio.saito.uh@hitachi-solutions.co m [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 妹尾 裕之 1992 年入社 北海道ソリューション部 JA,NOSAI,自治体などへの圃場管 理地図システムなどのソリューショ ン提供 hiroyuki.seo.ev@hitachi-solutions.c om [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 三枝 昌弘 2008 年入社 北海道ソリューション部 JA,NOSAI,自治体などへの圃場管 理地図システムなどのソリューショ ン提供 atsuhiro.saegusa.ra@hitachi-solutio ns.com [顔写真 (jpg ま た は bmp)] 高田 哲哉 1986 年入社 北海道ソリューション営業部 JA,NOSAI,自治体などへの圃場管 理地図システムなどのソリューショ ン提供 tetsuya.takada.yw@hitachi-solution s.com

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