論文内容要旨
論文題名 Clinical characteristics and prognostic factors of pneumonia in patients with and without rheumatoid arthritis
(関節リウマチ患者における市中感染型肺炎の臨床的特徴と予後因子 の検討)
掲載雑誌名 PLOS ONE Vol.13 No.8 e0201799 2018年
専攻名 内科系内科学(呼吸器アレルギー内科学分野)(藤が丘病院)
若林 綾
内容要旨
【背景】関節リウマチ(RA)患者では RA を合併していない患者と比較し て,肺炎の発症ならびに肺炎による死亡が多いことが報告されているが,
RAに合併した肺炎について検討された報告はない.本研究ではRAに合併 した肺炎の臨床的特徴,予後因子について検討した.
【方法】対象は2002 年 1月から 2011年 12 月の間に単一の呼吸器専門施 設で診療された市中感染型肺炎患者 1549 例のうち、RA に合併した 71 例
(RA群)について,RAを合併していない肺炎(non-RA群)と後ろ向きに 比較検討した.患者それぞれについて患者背景,重症度,転帰,原因微生 物を後ろ向きに調査した.予後因子は単変量解析と多重ロジスティック回 帰分析を用いて解析した.
【結果】RA群は平均年齢71.0±8.9歳,女性は 54.9%,喫煙者は
40.9%,呼吸器疾患合併は 71.8%であった.女性,非喫煙者,呼吸器疾患
合併はnon-RA群と比較してRA 群で有意に多かった.
RA群のうち呼吸疾患合併の有無で比較すると,呼吸器疾患を有する群 は男性,高齢者が有意に多く,MTX,生物学的製剤の使用は少ない傾向に あった.重症肺炎と非重症肺炎で臨床的特徴に有意差は認めず,死亡例 にステロイドあるいは免疫抑制剤の使用が多かった.
原因微生物はRA群では肺炎球菌,緑膿菌,インフルエンザ菌の順に多 く,non-RA群では肺炎球菌,インフルエンザウィルス,マイコプラズマ
の順であった.緑膿菌,インフルエンザ菌,モラクセラならびに複数菌 感染はRA群で有意に多かった.緑膿菌,インフルエンザ菌,モラクセラ に感染した全例で呼吸器疾患を有していた.
肺炎の重症度は二群間で有意差はなかったが死亡率はRA群で有意に高 かった.死亡例では全例呼吸器疾患を合併していた.多変量解析では高 齢,RA,重症肺炎,HCAPがRA群における死亡の独立した危険因子であ ることが示された.
【考察】今回我々の検討で,RA患者ではRA を合併していない患者と比 較して患者背景および原因微生物に相違があること,死亡率は有意にRA 群で高いこと,RA自体が RA患者の肺炎死亡の独立した予後因子である ことが明らかとなった.
以前より,肺の構造破壊,喫煙歴,心血管疾患の合併が緑膿菌,イン フルエンザ菌,モラクセラ感染のリスク因子として同定されている.本 研究ではこの3菌種はRA 群で有意に多く,また感染例は全例呼吸器疾患 を合併していた.このことよりRA 群における呼吸器疾患合併の多さが原 因微生物の差異に関与していると考えられた.
RA患者では肺局所の免疫能低下を有しており,呼吸器疾患を合併する ことにより肺構造の破壊に伴う肺機能の低下が加わる.さらに疾患や肺 機能低下に伴う身体活動性の低下が肺炎死亡に影響したと考えられる.
RA患者の肺炎死亡率が高いこと,ならびにRA自体が死亡のリスク因子 となりうる理由として,呼吸器疾患合併による肺機能の低下が影響して いると推察された.
【結語】RA患者の肺炎を診療する際には,合併する基礎疾患を考慮して 治療にあたる必要がある.