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銅めっきなしマグ溶接ソリッドワイヤ「SE ワイヤ」

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Academic year: 2021

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(1)

Conventional Cu-coated Wire Longi. Dir.

Distribution

Longi. Dir.

Distribution

Distance  mm 0

1.5 1.0 0.5 0.0

500 1 000 1 500 2 000 2 500 3 000 3 500 4 000 4 500 5 000

Probability

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

1.5 1.0 0.5 0.0

SE Wire

Contact Electric Resistance of Wire Surface  Ω

Distance  mm 0

1.5 1.0 0.5 0.0

500 1 000 1 500 2 000 2 500 3 000 3 500 4 000 4 500 5 000

Probability

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

1.5 1.0 0.5 0.0

まえがき=近年,溶接材料の技術課題の中心は高能率化

・自動化などによる溶接のコストダウンであった。これ にともない,造船・橋梁でのフラックス入りワイヤや鉄 骨・自動車・建機でのソリッドワイヤなど,各産業にマ グ溶接ワイヤの適用が定着化してきた。 21 世紀を迎え,

世界的に地球環境維持・改善に対する取組みが高まるな か,溶接材料に対する技術課題も「環境」が一つのキー ワードとなってきている。

当社では,これを背景として新しく銅めっきなしマグ 溶接ソリッドワイヤ「SE ワイヤ」を開発した。SE ワイ ヤは,ワイヤの高品質性として優れたワイヤ送給性とア ーク安定性を有するとともに,銅めっき処理工程を省略 できることから地球環境負荷低減に貢献する。さらに,

優れたアーク安定性は溶接時のスパッタとヒュームの発 生を低減できるなど,溶接作業環境の改善にも貢献する。

本稿では,SE ワイヤの環境に対する優れた特性を中心 として報告する。

1.SE ワイヤの基本特性

マグ溶接ソリッドワイヤはワイヤ表面に銅めっきを施 すことが一般的である。いっぽう,フラックス入りワイ

ヤは世界的に見て,銅めっきを施していないタイプのも のが大半である。元来,ワイヤ表面の銅めっきは給電チ ップでの通電を容易にすることや,製造面での伸線性の 確保の点から施されている。しかしながら,廃棄物の低 減やエネルギ削減の観点,さらには有害物質の管理の面 などからも,銅めっき処理はワイヤの製造工程から是非 とも省略すべき工程である。

SE ワイヤ は「Smooth」と「Ecology」を 追 求 し た マ グ溶接ソリッドワイヤである。「Smooth」とは優れたワ イヤ送給性とアーク安定性を意味し,これらの特性は今 なおマグ溶接ソリッドワイヤにもっとも求められている ワイヤ品質である。写真 1にワイヤの外観を示すが,SE ワイヤの第一の特徴は銅めっきがないことである。第 1 図に,従来の銅めっきワイヤと SE ワイヤについて,ワ イヤ表面に微小電流を通電したときのワイヤ長手方向の 接触電気抵抗を測定した結果を示す。銅めっきワイヤの 抵抗値は非常に低い値と比較的高い値で分布しているの に対し,SE ワイヤの抵抗値は高い値で安定している。

これは,銅めっきワイヤの表面はミクロ的に見ると,め っき地の裂け目や鉄地の露出した部分が存在しているの に対し,SE ワイヤの表面は全面鉄地であり,しかも製

■ 特集:環境との共生・調和 材料編 FEATURE : Ecological Materials

(論文)

銅めっきなしマグ溶接ソリッドワイヤ「SE ワイヤ」

輿石房樹

溶接カンパニー・技術開発部

Non-copper-coated Solid Wire for MAG Welding SE Wire

Fusaki Koshiishi

A non-copper-coated solid wire for MAG welding SE wire, with good arc stability and excellent wire feed- ability, was developed. Through spectroscopic analysis and high-speed photographic observation it was clearly verified that droplet transfer was very stable. The stable droplet transfer of non-copper coated wire was proven to reduce the generation of spatters and fumes in welding, thereby greatly improving the weld- ing operation environment.

第 1 図 ワイヤ表面の接触電気抵抗測定結果 Fig. 1 Contact electric resistance of wire

surface

(2)

0 10

5

0 100

50

0

1.0 Time  s

Tip Resistance NFeeding Resistance N

Conventional Cu-coated Wire

2.0 0 10

5

0 100

50

0

1.0 Time  s

SE Wire

2.0 (Diameter.φ1.2mm,  Wire Type : YGW15,  Shielding Gas : Ar+20%CO2,

Welding Current : 300A,  Welding Torch : 6m×1turn)

0 ms 2.2 ms 4.4 ms

0 ms 0.9 ms 1.8 ms

SE Wire (SEA-50S) Conventional

Cu-coated Wire (YGW15)

(Diameter.φ1.2mm,  Wire Type : YGW15, 

  Shielding Gas : Ar+20%CO2, Welding Current : 260A)

SE Wire Conventional

Cu-coated Wire

造工程において非常に均質に仕上げられているためであ る。

第 2 図に,6m トーチをもちいた送給系において,溶 接時のワイヤ送給性を調査した結果を示す。従来の銅め っきワイヤは給電チップでの抵抗力が高く,全体の送給 抵抗力も高くなっているのに対し,SE ワイヤは給電チ ップでの抵抗力がいちじるしく低く,送給抵抗力も低く なっている。このような SE ワイヤの優れた送給性は,

第 1 図に示したワイヤ表面の高位安定した接触電気抵抗 が,給電チップでの給電安定性を維持し,チップ融着を 低減していることから生まれている。これらの詳細につ いては,別報においてすでに報告している1)

優れたワイヤ送給性にならぶもう一つの SE ワイヤの 特長は優れたアーク安定性,つまり溶滴移行の安定性で ある。これについては,次章において詳細に述べる。

第 1 表に示すように,現在 SE ワイヤシリーズとして,

軟鋼および 490N/mm2級高張力鋼用マグ溶接ソリッド ワイヤの汎用 4 品種,SE-50(YGW11),SE-50T(YGW12), SEA-50S(YGW15),SEA-50(YGW16)を揃えている。

主な適用業種としては,SE-50 は鉄骨・建機,SE-50T は 自動 車・製 缶,SEA-50S は 建 機・産 機,SEA-50 は 産 機

・自動車などである。

2.溶滴移行の安定性

溶接作業は「じん肺作業」の一つに指定されるなど 3 K 職場として認識されている。溶接材料開発の面からの 脱 3K への取組みとしては,スパッタの低減ならびにヒ ュームの低減が古くからの課題であり,これまでに多く の研究・開発がなされている2)〜4)。マグ溶接ソリッドワ イヤにおいては,スパッタ・ヒュームの低減ともアーク 安定性の向上,つまり溶滴移行の安定化がもっとも重要

な技術要素である。以降,SE ワイヤの代表として Ar+

CO2高電流用の YGW15 タイプワイヤを中心に,溶滴移 行の安定化ならびにスパッタ・ヒュームの低減について 述べる。なお,以下の試験に供している YGW15 タイプ の銅めっきワイヤならびに SE ワイヤの化学組成は同一 のものである。

2.1 溶滴移行性の評価

溶滴移行とは,消耗電極式のアーク溶接において,ア ーク空間を通って電極先端から母材側へ溶融金属が移行 する現象である。この溶滴移行は溶接ワイヤの化学組成

・ガス組成・溶接電流によって変化する。マグ溶接ソリ ッドワイヤの場合,比較的低い電流の溶滴移行は電極先 端の溶滴と母材との短絡をともなう短絡移行となり,比 較的高い電流においては短絡をともなわない自由移行と なる。とくに Ar 主体のシールドガスの場合の自由移行 は溶滴が小粒であるスプレー移行となる。

写真 2に高速度カメラによる YGW15 タイプワイヤの

Trade Name

Classification

(JIS Z3312) Shielding Gas Application

SE-50 YGW11 CO2

Welding of Mild Steel and 490N/mm2High Tensile Steel by Higher Welding Current

SE-50T YGW12 CO2

Welding of Mild Steel and 490N/mm2High Tensile Steel by Lower Welding Current

SEA-50S YGW15 Ar+CO2

Welding of Mild Steel and 490N/mm2High Tensile Steel by Higher Welding Current

SEA-50 YGW16 Ar+CO2

Welding of Mild Steel and 490N/mm2High Tensile Steel by Lower Welding Current

第 2 図 ワイヤ送給性試験結果 Fig. 2 Test results of wire feedability 写真 1 SE ワイヤの外観

Photo 1 Appearance of SE wire

写真 2 溶滴移行の高速度写真

Photo 2 High speed photograph of droplet transfer 第 1 表 SE ワイヤシリーズ

Table 1 Series of SE wire

(3)

100 50 0

−50

−1000

20 50 100 150 200 250 300 350 400 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

Spectrum : Fe I (370.925nm) Conventional Cu-coated Wire (YGW15)

Time  ms

Frequency  Hz Frequency  Hz

Frequency Analysis

Intensity  arb. unit

100 50 0

−50

−1000

20 50 100 150 200 250 300 350 400 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

Spectrum : Fe I (370.925nm) SE Wire (SEA-50S)

Time  ms

Frequency Analysis

Intensity  arb. unit

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2,  Welding Current : 260A)

0 350

300

250

200

150 10 20

CO2 Content in Ar Gas  vol%

30 40

Conventional Cu-coated Wire

(YGW15)

SE Wire (SEA-50S)

Transition Current to Spray Transfer  A

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2)

Conventional Cu-coated Wire

(YGW15)

SEA-50S

SEA-50S

200 50 45 40 35 30 25 20 15

250 300 350 Welding Current

a)Applicable Current Range b)Spatter Generation

Arc Voltage  V

400 450 500 200 250 300

Welding Current  A 350 Conventional Cu-coated Wire

(YGW15) 600

400

200

0

Spatter Generation  mg/min

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2)

溶滴移行観察結果を示す。電流は 260A であり,従来の 銅めっきワイヤでは短絡移行とスプレー移行の境界に近 い電流である。写真 2 からわかるように,従来の銅めっ きワイヤの溶滴は大きくなる傾向があり,微小な短絡が 発生する場合がある。それに対し,SE ワイヤの溶滴は 非常に小粒であり,短絡のないスプレー移行となってい る。

溶滴移行特性をさらに定量的に評価するために,分光 法により鉄の発光スペクトルの強度変化の測定ならびに 周波数解析をおこなった。この分光法は,スプレー移行 のような短絡をともなわない溶滴移行の定量的評価に適 している。その結果を第 3 図に示すが,従来の銅めっ きワイヤの溶滴移行周期は 200Hz 付近を中心に鈍いピ ークがあるのに対し,SE ワイヤの溶滴移行周期は 300Hz 付近に鋭いピークがある。つまり,SE ワイヤの溶滴は 小粒でかつきわめて規則的であることがわかる。

第 4 図に Ar ガス中の CO2ガスの比率を変化させてス プレー移行となる臨界の電流について調査した結果を示 す。CO2ガスの比率の低下とともにスプレー化電流が低 下する傾向が認められるとともに,従来銅めっきワイヤ と比較して SE ワイヤのスプレー化電流は 30A 程度低下 している。このスプレー化電流の低下は,SE ワイヤの 溶滴移行が規則的でかつ小粒化しやすいことに起因して いる。

SE ワイヤの溶滴移行の規則性は,前章で述べたワイ ヤ表面の高位安定した接触電気抵抗からくるチップ給電 安定性により,ワイヤの溶融がきわめて安定しているた

めである。また,溶滴が小粒化する理由としては,溶滴 の表面張力が関与している5)。つまり,銅めっきがない ことにより溶滴への酸素の侵入が容易になり,溶滴の表 面張力を低下させているためと推測される。

2.2 スパッタの低減

第 5 図に YGW15 タイプワイヤの溶接特性として,良 好な溶接が可能な電流範囲とスパッタ発生量の測定結果 を示す。従来の銅めっきワイヤと比較して,SEA-50S は 適用可能な電流範囲が下限および上限とも広くなってい る。下限が広がることは前節で示したスプレー化電流が 低下することに起因しており,上限が広がることは優れ たワイヤ送給性に起因している。

スパッタ発生量に関しても,従来の銅めっきワイヤと 第 3 図 溶滴移行の分光法解析

Fig. 3 Spectroscopic analysis of droplet transfer

第 4 図 スプレー移行電流

Fig. 4 Transition current to spray transfer

第 5 図 SEA-50S の溶接特性 Fig. 5 Weldability of SEA-50S

(4)

3 000 2 500 2 000 1 500 1 000 500 0 100 200 0

Welding Current  A

300 400 150 200 250 300 350

SEA-50 SEA-50

Welding Current  A a)Applicable Current Range b)Spatter Generation

Arc Voltage  V

Conventional Cu-coated Wire

(YGW16)

Spatter Generation  mg/min

Conventional Cu-coated Wire

(YGW16) 50

40

30

20

10

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2)

Conventional Cu-coated Wire

(YGW15)

Conventional Cu-coated Wire

(YGW15) SEA-50S

SEA-50S

200 200 250 300 350

600

400

200

0

6 5 4 3 2 1 0

Total Fume Generation  mg/min Cu Fume Generation  mg/min250

Welding Current  A Welding Current  A 300 350

a)Total Fume Generation b)Cu Fume Generation (Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2)

500

400

300

200

100

0 Conventional DC Arc Welding

Pulsed Arc Welding Spatter Fume SEA-50S

Spatter Generation and Total Fume Generation  mg/min

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2,   Welding Current : 280A)

比較して,SEA-50S は少なくなっている。これまでは,

マグ溶接ソリッドワイヤのスパッタ低減化といえば,使 用するシールガスや電流条件に応じたワイヤ組成の最適 化をおこなってきた。しかしながら,SE ワイヤでは銅 めっきなしをベースとしたチップ給電安定性からスパッ タ低減化を実現した。第 6 図に YGW16 タイプワイヤの 溶接特性を示すが,YGW15 タイプワイヤと同様に,従 来の銅めっきワイヤと比較して,SEA-50 は広い電流範 囲でスパッタの低減化が達成できている。

2.3 ヒュームの低減

第 7 図に YGW15 タイプワイヤのヒューム発生量とそ のなかに含まれる銅ヒューム発生量を測定した結果を示 す。従来の銅めっきワイヤと比較して,SEA-50S の溶接 時のヒューム発生量は少なくなっている。マグ溶接ソリ ッドワイヤの溶接時のヒューム発生の機構としては,溶 滴移行に際して高温の金属蒸気がアークの中から吹き出 され,蒸気全体が急速に酸化をともないながら冷却固化 してヒュームが発生する6)。したがって,SEA-50S の場 合,溶滴移行が規則的でかつ小粒化されていることによ り金属蒸気の吹き出し量が少なくなり,ヒューム発生量 が低減していると推測される。

SEA-50S の銅ヒュームに関しては,銅めっきがないこ とにより発生量が皆無に近くなっている。日本産業衛生 学会では,今のところ銅の許容濃度に対する勧告はない が,ACGIH-TLV(米国産業衛生専門家会議による許容 濃度)では 0.2mg/m3,OSHA-PEL(米国の労働省労働 安全衛生局による許容暴露限界)では 0.1mg/m3と,非 常に低い濃度で銅の濃度を管理するように勧告されてい る。実際には,防塵マスクなどの呼吸用保護具やヒュー ム吸引装置の使用などによる適切な対策をおこなえばこ の許容濃度を超えることはないが,銅ヒューム発生が皆 無に近い SE ワイヤはヒュームの低害化が図れている。

2.4 ヒューム・スパッタのさらなる低減

パルスアーク溶接7)やシールドガス組成との組合せに よっても溶滴移行の安定化を図ることができる。第 8 図に SEA-50S の溶接にパルスアーク溶接を適用したと きのスパッタ発生量とヒューム発生量を調べた結果を示 す。通常の直流アーク溶接にくらべて,パルスアーク溶 接ではスパッタ・ヒュームとも低減化が達成できてい

る。これは,パルスアーク溶接との組合せにより,同電 流条件においてさらに溶滴が小粒化できているためと考 えられる。

また,第 9 図に SEA-50S をもちいて Ar ガス中の CO2

ガスの比率を変化させたときのヒューム発生量について 調査した結果を示す。CO2ガスの比率の低下とともにヒ ューム発生量が少なくなっている。このように,SE ワ イヤと溶接法(溶接電源)やシールドガスとの組合せに よりさらなる溶接作業環境の改善が可能となる。ただし,

第 6 図 SEA-50 の溶接特性 Fig. 6 Weldability of SEA-50

第 7 図 ヒューム発生量と銅ヒューム発生量

Fig. 7 Total fume generation and Cu fume generation

第 8 図 スパッタ発生量とヒューム発生量に対するパルスアーク 溶接の効果

Fig. 8 Effect of pulsed arc welding on spatter generation and total fume generation

(5)

0 10 500

400 300 200 100

0 20

CO2 Content in Ar Gas  vol%

30 40

SEA-50S

Total Fume Genetation  mg/min

(Diameter.φ1.2mm,  Shielding Gas : Ar+20%CO2 Welding Current : 280A)

Solid Waste Life Cycle Assessment Calculation (Value of Cu-coated Wire : 1)

CO2 Gas Emission Energy Consumption Conventional Cu-coated Wire SE Wire

1

0.8

0.6

0.4

0.2

0

パルスアーク溶接の適用やシールドガス組成の変更は,

母材への溶込みや耐気孔性などに影響を及ぼすため適用 範囲の確認が必要である。

以上のように,SE ワイヤは,その溶滴移行の安定性 からスパッタ・ヒュームの低減が可能であり,溶接作業 環境の改善に大きく寄与する。

3.地球環境への対応

地球環境の観点から,溶接材料の開発においても,エ ネルギ消費の低減,廃棄物の削減,リサイクルの推進,

CO2排出の低減など環境維持・改善に努めていかなけれ ばならない8)。製品の地球環境への負荷を評価する手法 として,ライフサイクルアセスメント(以下 LCA)が ある。LCA は原料の調達・製造・使用・廃棄に至るす べてのプロセスにおいて定量的な評価をおこなうもので あり,今後は LCA を意識した製品設計が重要となって くる。SE ワイヤは,銅めっき処理工程を省略化するな ど,「Ecology」を追求した製品であり,この LCA に優 れている。

第 10 図に,従来の銅めっきワイヤと SE ワイヤに関 して,LCA の比較をおこなった一例を示す。銅めっき ワイヤと比較して,SE ワイヤの LCA は固形廃棄物,CO2

排出,エネルギ消費のいずれの点においても勝っており,

地球環境への負荷が非常に小さいマグ溶接ソリッドワイ ヤといえる。他の溶接材料と比較した場合でも,溶接ス ラグを固形廃棄物として考慮すると,被覆アーク溶接棒 やフラックス入りワイヤは廃棄物の点で劣ってくること になる。SE ワイヤは全溶接材料のなかで,もっとも地 球環境に優しい溶接材料といえる。

地球環境の面からは,溶接材料の包装材料のリサイク ルも重要な課題である。具体的には,大容量のペールパ ック容器(100〜400kg のワイヤを収める円筒形容器,JIS Z3391)やプラスチックスプールが対象となり,ペイル パックに関しては回収・再利用が進んできているが,プ ラスチックスプールに関しては大きな問題となってい

る。欧州においては,脱プラスチック化として鋼製スプ ール(バスケットスプール)の使用が増加してきており,

国内においても検討が始まっている4)。総合的には,包 装材料も含めた取組みが今後の課題である。

むすび=SE ワイヤは,溶滴移行の安定性によりスパッ タ,ヒュームの低減化が達成でき,溶接作業環境の改善 が図れるマグ溶接ソリッドワイヤである。また,銅めっ き処理をおこなわないことなどから地球環境負荷低減に も貢献する。

SE ワイヤは,すでに鉄骨・建機・自動車などの各種 産業において実用化されており,ワイヤ送給性や低スパ ッタ・低ヒュームの面で高い評価を受けている。とくに ロボット溶接においては,銅めっきくずに起因していた 給電チップでの融着が激減するなど,稼働率向上に大き く寄与している。また,ISO14000 シリーズやグリーン 調達の面からも SE ワイヤに対する関心が寄せられてい る。

SE ワイヤは,高品質な溶接特性から溶接のトータル コストダウンを果たし,溶接作業環境改善も含めた環境 対応型の溶接材料として,広く適用されていくことが期 待される。

1 ) 清水弘之:R&D 神戸製鋼技報,Vol.50, No.2(2000), p.15.

2 ) M. Ushio : Transaction of JWRI, Vol.19, No.1(1990), p.1.

3 ) 黒川剛志ほか:R&D 神戸製鋼技報,Vol.45, No.1(1995), p.17.

4 ) 菅 哲男:溶接学会誌,Vol.67, No.8(1998), p.38.

5 ) 横田泰之ほか:溶接学会全国大会,第 67 集秋,(2000), p.372.

6 ) 菅 哲男ほか:溶接学会論文集,Vol.2, No.2(1984), p.221.

7 ) 松縄 朗:溶接学会誌,Vol.53, No.6(1984), p.285.

8 ) B. Pekkari:溶接学会誌,Vol.68, No.8(1999), p.47.

第 9 図 ヒューム発生量に及ぼすシールドガス組成の影響 Fig. 9 Influence of shielding gas composition on total fume

ganeration

第10図 マグ溶接ソリッドワイヤの LCA 計算の一例

Fig. 10 Example of life cycle assessment calculation for MAG welding solid wires

Table 1 Series of SE wire
Fig. 4 Transition current to spray transfer
Fig. 7 Total fume generation and Cu fume generation
Fig. 10 Example of life cycle assessment calculation for MAG welding solid wires

参照

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