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「地域推計と世帯推計の統合に関する研究」 

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金  政策科学総合研究(政策科学推進研究)事業 分担研究報告書

 

人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と  次世代将来推計システムに関する総合的研究 

 

「地域推計と世帯推計の統合に関する研究」 

 

研究分担者  鈴木透(国立社会保障・人口問題研究所) 

研究要旨: 

  地域別の人口と世帯を同時に将来推計する動的モデルがいかなる ものになるべきか考察した。地域間移動と状態間推移が独立であれば

、移動率と推移率を配置して推移確率行列を構成できる。現実には移 動と推移は独立でなく、実例を第7回世帯動態調査(2014年)によっ て例示した。また人口動態統計と国勢調査から地域別の状態間推移確 率を求める際の問題点、および配偶関係間推移が与えられた場合の条 件付状態間推移確率の地域差に関する問題を検証した。

 

A.研究目的 

  国立社会保障・人口問題研究所の世帯数 の将来推計では、全国版は動的な世帯推移 率法を用いているが、都道府県版は静的な 世帯主率法に依拠している。都道府県別世 帯推計に世帯推移率法を適用する場合に生 じる方法論的問題点について考察した。 

 

B.研究方法 

  地域間移動と状態間推移が独立であれ ば、移動確率と推移確率の乗じた確率を推 移確率行列に配置すればよい。配偶関係間 推移を例に、2地域、4状態(未婚、有配偶、

死離別、死亡)の推移確率行列を具体的に 例示した。

  第7回世帯動態調査(2014年)を用いて、

都道府県間移動と配偶関係間推移が独立か 否かを検証した。また、移動と推移の従属 性が転出元・転入先の組合せに対し対照的 か否かも検証した。

  都道府県別の配偶関係間推移確率を設定 する場合の問題点について考察した。届出

遅れや年齢・配偶関係不詳があっても、そ うした欠損に地域差がなければ、各都道府 県の全国値に対する格差を用いて仮定値を 設定できる。この仮定が妥当か否か検討し た。

  配偶関係間推移が与えられた場合の状態 間推移確率に地域差がなければ、全国に関 する条件付推移確率を都道府県別の配偶関 係間推移確率行列に一律に適用すればよ い。この仮定が妥当か否かについても検討 した。

C.研究結果

  2 地域、4 状態(未婚、有配偶、死離別、

死亡)で地域間移動と状態間推移が独立の 場合、2 種類の移動確率、4 種類の配偶関 係間推移確率(初婚確率、再婚率、死離別 確率、初婚・死離別確率)と 3 種類の配偶 関係別死亡確率を配置し、7×7 の推移確率 行列を構成できる。しかし第 7 回世帯動態 調査の集計結果から、都道府県間移動と初 婚が強く結び付いていることが示された。

(2)

 

また、大都市中核(東京都、大阪府、愛知 県)への転入よりそこからの転出の方が初 婚との結び付きが強かった。結婚解消(離 婚または配偶者の死亡による)確率と移動 の結びつきは弱く、独立と仮定して良いか もしれない。再婚と移動の結びつきは、初 婚と同じと仮定してよいだろう。それでも 初婚と移動の結びつきは複雑で、都道府県 の組合せごとに移動と初婚の関連度は異な り得る。十分な経験的根拠をもって、すべ ての転出元−転入先の組合せ別に初婚の相 対リスクを特定するのは、きわめて困難で ある。

  2015 年国勢調査で女子の年齢別配偶関 係不詳割合を計算したところ、東京都と沖 縄県で全く異なるパターンが観察された。

このような配偶関係不詳の年齢パターンの 違いは、不詳の者の真の配偶関係の分布に 地域差があることを示唆する。したがって、

単純な比例配分による補正は誤った結論を 導く可能性が高い。

  未調整の初婚ハザードをみると、東京都 は全国値より晩婚、沖縄県は早婚であるこ とが確認された。従って全体の比例ハザー ド係数に加え、水平方向のシフトに関する パラメタも必要となることがわかる。沖縄 県の年齢パターンは平滑化が必要だが、20 代前半にみられる不自然な膨らみは婚外出 生や婚前妊娠に関する異質性の結果かも知 れず、ならしてしまってよいものか疑問が 残る。

  配偶関係間推移が与えられた場合の条 件付確率の例として、未婚→未婚が与えら れた場合の非世帯主から単独世帯主への 推移(結婚前の離家)と、未婚→有配偶が 与えられた場合の世帯主への推移につい て考察した。第 7 回世帯動態調査の集計に よると、結婚前離家には明らかな地域差が あり、女子では関東・近畿で離家経験割合 が低かった。過去 5 年間に結婚した男子の

調査時点での世帯主率は、東北・北陸で低 かった。したがって全国の条件付確率を一 律に適用するのは妥当でない。結婚時の親 との同居に関する地域差に加え、結婚時は 新居制でも高齢の親と同居する確率の地域 差、高齢夫婦のみの世帯(エンプティ・ネ スト)へ移行するタイミングの地域差等々、

多様な地域差が考えられる。

 

D. 考察 

  仮に動的モデルによる地域別人口・世帯 の同時推計が実現した場合、政策的な利用 価値は大きい。まず、現在の人口・世帯推 計では得られない地域(都道府県)別の配 偶関係別人口や配偶関係間推移数が得られ る。地域別の晩婚化・未婚化や離婚の増加 は、有配偶女子人口の減少を通じて、地域 人口の減少を強く規定する。男女・年齢別 の離婚数や離別人口が得られれば、女世帯 主世帯と子どもを含む貧困世帯の発生メカ ニズムがより詳細に把握でき、児童福祉政 策に有益だろう。類型別世帯数のストック に加え、フローも得られるのも大きな利点 である。たとえば特定期間に独居に移行す る高齢者数と独居から脱出する高齢者数が 得られれば、よりきめ細かな支援が可能だ ろう。

  移動と状態間推移の関連が定量的に示せ れば、応用範囲は広いだろう。未婚者の離 家や親元への戻り、初婚時の移動に関する 統計資料は、地方再生の施策に有益な示唆 を与えるだろう。結婚解消時、退職時の移 動や高齢者の呼び寄せ移動に関する資料 も、経済・福祉政策と広く関連するだろう。

たとえ将来推計が可能なほど広範で詳細な 資料が得られなくても、移動と世界形成・

解体の関連に関する調査研究の蓄積は、幅 広い政策分野に有意義な貢献を果たすだろ う。 

 

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E.結論

  地域別人口推計と世帯推計を同時に行う モデルには、多くの方法論的問題が立ちは だかることになる。現状では地域別人口・

世帯の同時推計モデルを構築するには、非 情に強い仮定を置かざるを得ず、きわめて 不満足なものしか構築できないだろう。 

 

F.健康危険情報      なし 

 

G.研究発表  1.論文発表     なし

2.学会発表

鈴木透「地域別人口推計と世帯推計の 統合の可能性」日本人口学会 2016 年度第 1 回東日本地域部会,札幌市 立大学(2016.11.20)

 

     

H.知的財産権の出願・登録状況      なし 

(4)

 

 

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