「エイジング・イン・プレイス」の可能性を探る : 古き日本のインフォーマル・ケアと新しい24時間ケ ア
著者 松岡 洋子, 落合 明美
雑誌名 東京家政大学生活科学研究所研究報告
巻 36
ページ 55‑59
発行年 2013‑07
出版者 東京家政大学生活科学研究所
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009937/
「エイジング・イン・プレイス」の可能性を探る
―古き日本のインフォーマル・ケアと新しい
24時間ケア―
松 岡 洋 子*1 落 合 明 美*2
Potentiality of Ageing in Place in Japan Japanese Informal Care in Old Age and
New 24 hour community-based care
Yoko MATSUOKA, and Akemi OCHIAI
1. 背景と目的
「エイジング・イン・プレイス(地域居住)」とは「住み 慣れた地域でその人らしく最期まで」暮らし続けることを 目指すものであり、施設入所の反対概念として1990年代 に現れた。1960年代は施設の時代であったが、1973年の オイルショックを経て経済的負担の多い施設建設を継続で きなくなり、またQOLの視点からも、必ずしも施設が高 齢者のウェルビーング(幸福)を向上させるものでないこ とが明らかにされ、その代替を模索する中から生まれたも のである1)。
そして、エイジング・イン・プレイスを推進する手法と して着目されているのが「住まいとケアの分離」理論であ る2)。施設に固定化された住まい機能とケア機能を分離し て、地域でより多くの高齢者が共有できるものにする、と いう考え方である。住まいにあたるのが高齢者住宅であ り、ケアにあたるものが24時間在宅ケアである。
1990年代より世界的な潮流となっている「エイジン グ・イン・プレイス」の動きは日本でも例外ではなく、本 研究では24時間ケアに焦点をあてる。日本では、2012 年4月から施行された介護保険法改正では、定期巡回・
随時対応型訪問介護看護という新しい類型の24時間在宅 ケアが登場し、地域包括ケアの中核となることが期待され ている3)。
一方、高齢者は「虚弱になっても、今の家で暮らし続け たい」と望んでいることも明らかである。また、古くから
「畳の上で死にたい」というのは日本人共通の願いである。
しかし、医学の進歩によって、1970年代に人間の死に場は 自宅から病院へと変化した。こうした意味において、エイ ジング・イン・プレイスは、古きよき日本の「家族に囲ま れながらの畳の上での死(在宅死)」を支えるものであると
も言える。異なるのは、かつての在宅死は家族介護(イン フォーマル・ケア)が主体であったが、現代では介護保険 から提供される定期巡回・随時対応型訪問介護看護が家族 介護に代わるサービスとして登場していることである。ま た、隣人からの支援などの地域の資源も異なるであろう。
本研究では、エイジング・イン・プレイスを可能にする 要素として、日本において新しく始まった「在宅24時間 ケア(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)」と、古き良 き日本の知恵としての「インフォーマル・ケア」との2つ の柱を設定し、両者の機能を明らかにすることを通じて、
これからの日本の高齢者介護について考えていきたい。
本年度は、新規スタートした「定期巡回・随時対応型訪 問介護看護(定期巡回ケアと略す)」を対象として、事業 の実態、可能性・課題を明らかにすることを目的とした。
2. 調査デザイン 1) 情報収集法・分析法
定期巡回ケアは、介護保険法改正により平成24年4月 からスタートした新しいサービスである。平成24年11月 時点で、125事業所が指定を受けてサービス提供している。
本研究では、在宅24時間ケア研究所より情報を得て、
その中でも事業展開をスムーズに行っている事業所を紹介 していただき、その中より4事業所、1自治体を選択して、
以下の内容・手法で情報収集を行った。
i) 事業展開の実態(オープンデータ、事業所資料)
ii) この事業の可能性・課題(事業責任者、計画作成 責任者、ヘルパーへの半構造的インタビュー)
また、可能性・課題の分析方法には「絶えざる比較法
(メリアム、2004)」を採用した。インタビュー許可を得 て録音しテープ起こししたものとメモを使って「可能性」
「課題」という軸を設定して要素を抽出した。インタビュー 時、同行調査時のメモもフィールド・ノーツとして活用し た。この手法を選んだ理由は、スタートしたばかりのサー ビスであるので、評価尺度も特徴を規定する基準も存在し
*1 東京家政大学(Tokyo Kasei University)
*2 一般財団法人 高齢者住宅財団(Foundation for Senior Citizen’s Housing)
松岡洋子 落合明美 ないため、その評価尺度を探るための探索的調査が必要で
あったからである。
2) 調査対象
調査対象は、以下のとおりである。
A事業団(北海道S市)
B社会福祉法人(大分県N市)
C株式会社(愛知県G市)
D社会福祉法人(鹿児島県K市)
E自治体(神奈川県)
3. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業の実態(全国 的傾向)
最新の調査より、定期巡回ケアの実態を素描してみよう4)。 三菱UFJ総合研究所が2012年5月に行った調査である。
まず、利用者が10人以下の事業所が大半で、まだまだ 規模の経済性を発揮するところまで到達していないという のが現状である。また、利用者の50%は要介護1〜2で、
軽度者が中心であった。また、事業所には、地域へサービ スを提供するものとサービス付き高齢者向け住宅にサービ ス提供するものがあるが、訪問の回数は前者「2.3〜3.2 回」、後者「6.3〜10.5回」であり、随時コールの回数は それぞれ「6.9回」「15.9回」であった。
このサービスの利用に至らなかった理由として、「既存 サービスからの切り替えが困難(54.3%)、施設等に入 所・入居した(37.1%)、家族の同意が得られなかった
(28.6%)、担当ケアマネが不要と判断(20.0%)、利用前 に逝去(17.1%)」などが挙げられ、新しい制度だけに浸 透しにくい理由が明らかにされた。
4. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業の実態(調査 対象事業所)
次に調査対象事業所の実態について記述する。
1) A事業団(北海道S市)
〈概要〉
A事業団は、S市(人口190万人)の第三セクター的 な位置づけである。
事業団そのものが在宅サービスを中心としてサービス提 供しており、平成10年より24時間ホームヘルプサービ スを開始している。地域包括支援センターも4カ所の委 託を受けており、在宅生活を支えるボランティアセンター を運営している。ケアマネージャー120人、ヘルパー 900人を擁する大組織である。
〈定期巡回ケアのシステム〉
チーム運営方式で行っており、センターの下に2〜4
チームが配置されている。1チームは1人のリーダーとヘ ルパー10人(非常勤)からなり、S市の6地区を担当し ている。定期巡回ケアの利用者は現在22名である。
介護と看護の一体的運営については、連携の難しさを痛 感しており、模索の途上にある。定期巡回ケアのみではな く、指定訪問介護(介護保険法)・障害者訪問介護(自立 支援法)も提供しているため、スタッフは制度ごとに分け ず、また新しく専任スタッフを雇用することなく統合的に 行っている。「そうしなければ運営できない」とのことで あった。
2) B社会福祉法人(大分県N市)
〈概要〉
特別養護老人ホーム、ケアハウス、高齢者住宅などを運 営する社会福祉法人である。「アメニティ、ヒューマニ ティ、ローカリティ」をかかげ、地域をみつめ「在宅生活 の充実」が法人の理念である。特別養護老人ホームの今後 の存在意義を厳しく追及し、厚生労働省の老健局研究事業 でも、日本の特養を代表して他の2法人とともに参加し ている。
在宅ケアについては、平成2年にヘルパー84人体制を 整えるほどに充実しており、訪問看護は平成9年に始め た。平成18年介護保険法改正で開始された「夜間対応型 訪問介護」では、100人の利用者を集めたことで全国的に も注目を集めた。
〈定期巡回ケアのシステム〉
市内の人口集積地(北部)を担当している。東西南北 10 km圏内(6万世帯)を7チームでカバーしている。1 チームの構成は、サービス提供責任者1人とヘルパー10 人である。
3) C株式会社(愛知県G市)
〈概要〉
社会福祉法人が包括的な地域ケアを推進するために立ち あげた株式会社である。
その法人は、特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問 介護、高齢者住宅などを展開している。JR駅前の高層タ ワービルの1フロアを使って、創設した地域ケアの拠点 は全国的にも話題になった。上層階には、高齢者優良賃貸 住宅、分譲マンションがある。
〈定期巡回ケアのシステム〉
巡回型のサービスを、定期巡回・随時対応型訪問介護看 護ではなく、指定訪問介護の「身体0」を使って提供して いる。定期巡回ケアの報酬が包括式(要介護度ごとに報酬 が決まっていてどれだけサービスを提供してもその報酬は 変わらないシステム)であるのに対して、「身体0」では
サービスメニューごとに加えていく加算方式である。C株 式会社では、包括方式に妥当性はないとして、G県と協 力して「地元方式」を模索している。
利用者は80人と、全国の他組織と比べてもかなり多い。
これは、タワービルの高優賃の住人も利用していることが 理由として挙げられる。利用者が多いため、訪問しては事 務所に帰るという「単発帰還型巡回」ではなく、一度出か けると数軒を巡回して帰るという「複数連続型巡回」を 行っていた(夕方)。
C株式会社では、包括報酬に懐疑的である理由として、
依存的な日本にはなじまない、包括報酬で何度でも呼ばれ ると職員としても続かない、という点を挙げている。しか し同時に、定期巡回・随時対応型訪問介護看護も提供し て、このサービスがどのような層に、どのような場面で有 効であるかを探っている。従来の指定訪問介護とは二律背 反のものではなく、利用者やその状況に合わせて使い分け ていくものである、との認識に立っている。
4) 社会福祉法人(鹿児島県K市)
〈概要〉
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービスを はじめ、小規模多機能居宅介護など地域密着型サービスも 積極的に展開し、24時間巡回型サービスのモデル事業に も参画している。
〈定期巡回ケアのシステム〉
平成25年3月からサービスを始め、3月末時点ですで に11名の利用者にサービス提供している。スタッフは、
ケアマネ、PT、ベテランヘルパーを含む専属職員を5名 配置して、拠点事務所については市の補助を受けて新しく 建物を建てるなど、意欲的なスタートを切っている。アル コール中毒の息子と同居の利用者宅では、息子さんからの 要求が強く従来の訪問介護では事業者が続かなかった。定 期巡回ケアではサービス提供が終われば退去するのが基本 であるのでスムーズに退去することができ、このことが サービスの継続にも結び付いている。利用者は順調に増え ているが、地方都市であるので移動距離の長さが今後の課 題であるとのことであった。
5) 自治体E市(神奈川県E市)
E市は、自治体として市内を18地区に分割し、定期巡 回・随時対応型訪問介護看護サービスの提供事業者を公募 によって決定して推進している。「公募指定制」と呼ばれ るこの手法は、神戸市(兵庫県)などでも開始されている。
〈概要〉
D市は人口370万人の政令指定都市である。24時間巡 回ケアのモデル事業の成果を受け、平成24年度18事業
者(利用者160人)、平成25年度27事業者(利用者620 人)、平成26年度36事業者(利用者960人)を目標とし て事業者を公募する予定である。現在、18事業者が各区 を担当する形で事業展開している。E市としては、良質事 業者を育成し、悪質事業者を駆逐する観点から自治体が リードして公募指定性を進めていく計画である。
〈定期巡回ケアのシステム〉
モデル事業(平成23年9月〜平成24年3月末)では、
市内の社会福祉法人が参加し実践していた。離れて暮らす 家族からの安心感の声が強く、定期巡回ケアは24時間を 意識したケアプラン作成の重要性を指摘している。随時対 応は、本人・家族にとっての不安感の解消という大きな意 義を指摘している。
5. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の可能性と課題 事業所へのフィールド調査から得られた結果を、絶えざ る比較法によって分析した結果をまとめよう。
1) 定期巡回ケアの可能性
まず、可能性について、利用者・職員・地域の側面から まとめる。
〈利用者に関する側面から〉
「生活が見える」
まず、利用者の「生活が見える」という利点がある。指 定訪問介護では、週に2回程度の訪問であったものが、
定期巡回ケアでは毎日複数回の訪問なので、生活の全体像 や一日の流れが見えてくる。「できる」可能性のあること がこんなに多くあるのか、同時に「できない」こともある ことが見えてくる。
アセスメントの重要性
1日の暮らしの全体像や流れが見えてくるので、1日の 生活を踏まえたアセスメントが可能となる。例えば、居宅 サービスのケアプラン時のケアマネジャーによるアセスメ ントでは、実際の生活の現場を見るわけではなく、本人・
家族から伝聞の形で聞く。これに対して、定期巡回ケアで は現場職員が実際に生活をともにしたアセスメントが可能 となるのである。
変化即応介入が可能
毎日複数回訪問なので、脱水などの変化を即キャッチで き、即対応できる。同時に、その情報はケアマネに伝え て、ケアプランの修正にもつながる。
予測型介入
1日の動きが見えてくると「先を読む」ケアが可能とな る。予測型ケアで、状態の悪化を予防するケアが可能なの である。
できることが増加=自立支援
松岡洋子 落合明美 1日の流れを踏まえてケアプランを立てられ、その変化
を日々追うことができる。そのなかで微妙な変化も捉える ことができるため、利用者が「自分でできること」を発見 する機会も増える。逆に、できないで困っていることもよ く見えてくるため、両者を踏まえて臨機応変の対応が可能 であり、自立支援につなげることが可能となる。
「自宅生活継続の自信がついた」
以上のようか経過を経て「自宅生活継続の自信がついた」
という利用者が多いことを、職員を通じて確認できた。
〈職員に関する側面から〉
新人でもスタート可能
短時間訪問なので、新人でもスタートすることができ る。従来の指定訪問介護の場合は滞在時間が長いため、コ ミュニケーション能力など、ある程度の経験を積まなけれ ばできない要素が多かった。しかし、必要なケアをして次 の利用者宅へ向かうことが基本であるため、必要以上のコ ミュニケーション能力は求められない。この点でも、新人 でも比較的スタート可能なサービスである。注意が必要な のは、このサービスが機械的に決められたサービスのみを 提供するものではない、という点である。
ムダな滞留時間がない
従来の指定訪問介護では30分〜1時間刻みのサービス 提供であったため、仕事が終わっても利用者宅を退去する ことができなかった。これはいわば、ムダな時間であり、
定期巡回ケアではそうした時間がなくなり、限られた資源 を有効に使うことができる。
ムダな待機時間がない
小刻みに訪問できるため待機のムダな時間がなく、限ら れた資源を有効に使うことができる。
〈地域・家族の側面から〉
家族の協力
サービス提供の現場に同行させていただいて感じたこと は、独居の高齢者でも家族が近くにいる場合は、食事を保 存容器に詰めて届けるなど、家族の協力が比較的よく見ら れ、それが独居生活を支える上で非常に重要であることを 確認した。そして、その多くは仕事を持つ子供たちであ り、仕事と両立しながら、定期巡回ケアを活用して自らも 親の暮らしを支えている姿であった。従来の指定訪問介護 であれば、週に数回の訪問であるため、食事を届けるのみ の支え方では老親の在宅生活を支え切れない。定期巡回ケ アでは独居高齢者の暮らしも支えることができ、家族から の支援がより豊かな暮らしの下支えになるのである。
家族の安心感
家族の安心感が強く、とくに子供が老親と離れて暮らし ている場合、家族の安心感はとくに高い。
2) 定期巡回ケアの課題
次に、課題について、サービス提供の実践側面から、当 該サービスへの参入側面からに分けて述べる。
〈実践にあたっての課題〉
医療・看護など連携先の不足
在宅医療の重要性を理解し、情熱をもって取り組むドク ターがまだまだ少ない。また、訪問看護師も少なく、介護 と看護の一体的運営が掲げられているにも関わらず、連携 先が見つけづらい、見つけて契約したとしても実際の連携 がむずかしいなどの問題があった。
従来型ケアプランとの不整合
定期巡回ケアでは、毎日どんどん情報が入って来る。変 化への対応についても、現場での即座の判断が求められる ケースが多い。情報はケアマネージャーにフィードバック し、ケアプランの変更を依頼したりするが、一部ではケア マネージャーが現場の動きについていけていないケースも ある、との話であった。
規模の経済性が発揮できない
始まったばかりで、利用者が急速に伸びるようなサービ ス体系でもない。良さが口コミにのってじわじわと広がっ て行くようなタイプのサービスである。そこで、複数連続 型巡回などの効率のよいサービス提供ができる状況ではな く、まだまだ規模の経済性を発揮できていない状況であ る。しかしながら、「新規の利用が多い」「病院の医療ソー シャルワーカーからの紹介が多い」など、利用は着実に伸 びている。
移動距離、駐車場問題
現在、当該サービスには移動距離コストが反映されてい ない。移動距離コストには、移動にかかる時間の人件費だ けでなく、車両コスト、ガソリンコスト、駐車場コストな どが含まれる。今後改善が望まれる課題である。
深夜シフトの人材難
時間帯専属体制をとっている事業所は少なく、全員が交 代で深夜のサービス提供を行っている。深夜勤務が終了し た次の日は休みとなるため、これまで参加していた地域に おけるサービス担当者会議などに出られなくなり、業務に 支障がでている事業所も見られた。十分な人員体制がとれ るよう、介護報酬の再考なども望まれる。
包括報酬の合理性・非合理性
依存的でどんどん注文を出す日本人にはなじまない制度 である、とする事業所がいた。
〈参入にあたっての課題〉
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、平成24年11月 時点で125事業所、平成25年1月時亭で160事業と着実 に増えている。しかし、まだまだ少ないのが現状である。
そこで、参入にあたっての課題についてもまとめたい。
まず、このサービスをイメージでとらえて、24時間の 負担の大きさを敬遠する傾向にあることが挙げられる。ま た、深夜の随時対応への負担感を嫌悪する傾向、ケアマ ネージャーの当該サービスについての理解と認知が不足し ていることも挙げられる。
6. 考 察
利用者の満足度は高く、徐々に利用者が増えてきている ことから、今後地道に伸びていくことが予想される。日本 におけるエイジング・イン・プレイスのケア機能の基盤と して、今後の浸透が期待されるところである。
しかし各事業所の利用者数は少なく、合理的運営はこれ からの課題である。また、熱意ある事業所が「施設のみで はこれからの超高齢社会は存続できない。地域ケアを今の うちから育てなければいけない」という思いでミッション を感じ、推進しているケースが多かった。ケアマネー ジャーをはじめ、このサービスの意義をより多くの法人、
事業者が理解することが望まれる。実際に公募指定制を始 めている自治体もあり、今後の大きな方向性となっていく であろう。
可能性としては、このサービスを開始したことで「生活 が見えてきた」という評価は複数の事業所で聞くことがで きた。このことは、それらを受けてのキメ細かなアセスメ ントとプランによって、「できない」不便を支援しつつ
「できる」ことを増やす真の意味での自立支援を可能とす るサービスであることを示している。また、「変化即介入」
「予測型介入」という概念は、在宅のみならず、また介護 のみならず看護も医療も含めた「21世紀型ケア」のあり 方を示唆するものであるとも言える。
また、温故知新の観点からはインフォーマル・ケアの一 部として「家族機能」の面で有用な示唆を得ることができ た。かつては、家族は在宅介護を一手に引き受けていた
が、介護保険が整備され、定期巡回ケアなどが開始された 現在では、家族は別居していていても介護が必要な親とよ き関係を継続できることが理解できた。保存のきく食事を 届けたり、仕事が終わってからの訪問、休日の外出など、
新しい関係性が生まれていた。住宅を整備し、地域に24 時間ケアを整備すれば、同居しなくても介護を必要とする 老親を支えることができるのである。このことは、家族と いう普遍的なる「温故」が、現代においてはその関わり方 を変化させつつその重要性をいよいよ増していることを示 唆している。
次年度も、定期巡回・随時対応型訪問介護看護という サービス形態について調査し、インフォーマル・ケアとの 関連について考察していきたい。
調査対象先の選定に大いなる援助をくださいました一般 社団法人24時間在宅ケア研究会(時田 純理事長)の種 田 聖様、調査にご協力くださいました法人、会社、自治 体の方々に心よりの御礼を申し上げます。
この調査研究は、東京家政大学生活科学研究所の「総合 研究プロジェクト温故知新」の助成を受けて行われたもの です。記して感謝の意を伝えます。
文 献
1)松岡洋子(2007).『デンマークの高齢者福祉と地域居住』新 評論
2)松岡洋子(2011).『エイジング・イン・プレイスと高齢者住 宅:日本とデンマークの実証的国際比較研究』新評論 3)林田貴久(2012).「24時間定期巡回・随時対応型サービスモ
デル事業でみえてきたもの」『ふれあいケア』201/6, p. 18–21 4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2013).『実践から
見えてきた定期巡回・随時対応型訪問介護看護』