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者養成における読書教育の心理学的研究

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Academic year: 2021

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者養成における読書教育の心理学的研究

著者 平山 祐一郎

雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報

巻 4

ページ 41‑45

発行年 2017‑11‑01

出版者 東京家政大学教員養成教育推進室

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010127/

(2)

絵本への関与と絵本認知度の関係について

~保育者養成における読書教育の心理学的研究~

The Relationship between the Involvement with Picture Books and the Recognition Level of Picture Books

―A Psychological Analysis to Improve the Reading Education for University Students

Majoring in Early Childhood Care and Education―

児童学科 平山 祐一郎

1.目的

 平山(2008)は、2006年6月に東北・関東・中国地方の5大学・1短期大学の大学生1184名を対象に、

読書に関する調査を行った。その結果、大学生の読書動機に、「娯楽休養」、「錬磨形成」、「言語技能」、「影 響触発」の4因子を見出した。また、大学生の読書時間帯として、「ゆとり時間読書」、「すき間時間読書」

の2因子を見出した。

 平山(2015a)は、2012 年6月に、北海道・東北・関東・東海・関西・中国・沖縄の 11 大学の大学生 2169 名を対象に、平山(2008)と同様の調査を行った。平山(2008)が探索的因子分析によって見出し た大学生の読書動機の4因子と大学生の読書時間帯の2因子を、確認的因子分析によって検証した。大学 生の読書動機、そして大学生の読書時間帯ともに、見出された因子とそれを構成する質問項目が同じであ ることが確認された。また、1カ月に1冊も本を読まない人(学生)が全体に占める割合を不読率と呼ぶ が、その数値が、2006年調査時は33.6%、2012年調査時は40.1%であった。6年間で約6%の上昇である。

つまり、1年あたり1%ずつ読書離れが進んでいることが示された。

 平山(2015b)は、保育者の読書の経験や傾向が、保育現場における絵本の選択や読み方、保育への活 用の仕方に影響していると考えた。そこで、平山(2015a)の2012年の大学生読書調査のデータをもとに 検討を行った。保育系女子学生と非保育系女子学生、非保育系男子学生の3群を比較した。その結果、週 あたりの読書日数、1日の読書時間(分)、5月の読書冊数において、保育系女子学生は非保育系女子学 生よりも、読書量がやや少ないことが分かった。一方で、影響触発読書動機は、非保育系男子に比べて高 いことが分かった。

 平山(2016)は、平山(2008)や平山(2015a)、平山(2015b)の大学生読書調査に、「絵本関与」(絵 本との関わりや絵本への態度)の観点を加えることによって、保育系大学生の読書の傾向把握を試みた。

その結果、絵本関与に、「絵本志向」、「絵本経験」、「読み聞かせ志向」の3因子を見出した。そして、読 書の有無を独立変数として、絵本志向得点、絵本経験得点、読み聞かせ志向得点を比較した。すると、読 書をする学生は、読書をしない学生に比べて、絵本志向得点と絵本経験得点が高く出る傾向がみられた。

やはり、読書をしている学生は、読書をしていない学生よりも、絵本に気持ちが向き、また、絵本との接 触が多いのである。

 平山(2017)は、「絵本読書量を知ることができれば、将来、幼稚園や保育園、子ども園等に勤務する 可能性の高い保育者養成課程にある学生が、自身の絵本読書量を自覚して、勉学に励むことができる」と している。言うまでもなく、保育現場における絵本の有用性は高い。そのため、絵本をよく読み、絵本に ついてよく知っていればいるほど、よい保育ができる可能性が高まる。したがって、自分がどれだけ絵本 を読んでいるか(知っているか)ということを、客観的な基準によって判断できれば、保育者になるため

(3)

の日頃の勉学にも、具体的な目標と張り合いができるであろう。

 そこで、どれだけ絵本を読んでいるか、あるいはどれだけ絵本を知っているかということを、どのよう に判断すべきであるかという問題に解を与えるために、まず、平山(2016)が検討した、絵本にどのよう に関わっているかという「絵本関与」と絵本をどれだけ知っているかという「絵本認知度」の関係を把握 することを本研究では試みる。

2.方法

(1)調査時期  2016年12月

(2)調査対象

 保育系女子大学生4年生 182名

(3)調査手続

 ①調査実施者が、質問紙の配付、教示、質問紙の回収の全てを行った。

 ②教示は以下のように行った。

 「このアンケートは教育や研究にとって非常に重要なものです。回答結果は全て数値化され、統計的処 理をしますので、回答者が特定されることはありません。また、この結果は学会発表や報告書、あるいは 論文にて公表し、教育や研究に役立てる予定です。強制的な調査ではありませんが、ぜひ回答をしていた だき、ご提出いただければ幸いです。回答にあたっての注意事項です。全ての問題に回答してください。

必ず1つの質問につき1つの回答をお願いします。1問でも回答しなかったり、1つの質問に2つ以上の 回答をしたりしてしまうと、有効な分析ができなくなってしまいます。名前や学籍番号を記入しませんの で、成績等に影響する心配はありません。」

(4)質問紙の構成と回答方法

 ①「絵本への関与」の3得点を測定するための項目

 平山(2016)は保育系大学生がどのように絵本に関わっているかを調査し、それを「絵本関与」として そこに「絵本志向」、「絵本経験」、「読み聞かせ志向」の3つの因子を見出した。それぞれの因子を構成す る質問項目への評定値の合計得点を、ここでは「絵本志向得点」、「絵本経験得点」、「読み聞かせ志向得点」

とする。各因子は4項目ずつで成り立っているため、質問は12項目である。

 それぞれの質問項目に対して、回答者は「非常にあてはまる」を6、「わりとあてはまる」を5、「やや あてはまる」を4、「あまりあてはまらない」を3、「ほとんどあてはまらない」を2、「まったくあては まらない」を1とする6段階評定を行った。

 ②絵本認知度測定のための項目

 クレヨンハウス社のブッククラブ「絵本の本棚」(2016年版)の絵本のリストにある、年少向け、年中 向け、年長向けの絵本52冊の認知度を問うた。回答者は1冊ごとに、そのタイトルを見て、「非常によく 知っている」を6、「わりとよく知っている」を5、「やや知っている」を4、「あまり知らない」を3、「ほ とんど知らない」を2、「まったく知らない」を1とする6段階評定を行った。

 ③読書量測定のための項目

 マンガや雑誌や教科書を除いた読書量を把握するために、「1カ月間にあなたはだいたい何冊くらい本 を読みますか」と問うた。この「月間読書冊数」を尋ねる問いに対して、回答者は評定をするのではなく、

数値を記入することを求められた。

(4)

3.結果

(1)分析対象

 回収された質問紙のうち、無回答や回答の指示にそっていないもの(3名)を除くと、179名であった。

179名の回答を分析対象とした。

(2)「絵本への関与」の3得点の算出

 「絵本志向」、「絵本経験」、「読み聞かせ志向」の3因子を構成する質問項目の評定値をそれぞれ合計して、

「絵本志向得点」、「絵本経験得点」、「読み聞かせ志向得点」を算出した。各質問項目に対する6段階評定 の平均値と標準偏差を表1に示した。なお、「絵本志向」を構成する4つの質問項目の信頼性統計量

(Cronbach のアルファ係数)は 0.86 であった。「絵本経験」を構成する4つの質問項目の信頼性統計量

(Cronbachのアルファ係数)は0.83であった。「読み聞かせ志向」を構成する4つの質問項目の信頼性統 計量(Cronbachのアルファ係数)は0.84であった。

 「絵本志向得点」、「絵本経験得点」、「読み聞かせ志向得点」の平均値と標準偏差、そして、中央値と最 小値と最大値を表2に示した。

(3)絵本認知度の算出  ①絵本認知度A

 52冊の絵本のタイトル各々に対する6段階の評定により、絵本認知度を測定した。52冊すべての評定 値を合計したものを絵本認知度Aとした。

 ②絵本認知度B

 52 冊の絵本の中で、回答者集団にほとんどに知られていない絵本、あるいはほとんどに知られている 絵本があった。それらを除いた合計得点は、回答者間の絵本の認知度の差異を、より明瞭に反映すると考 えられる。それを絵本認知度Bとした。

 具体的には、回答者集団にほとんど知られていない絵本として、評定の平均値が2未満の絵本、ほとん どに知られている絵本として、評定の平均値が5以上の絵本を除いた。その結果、17冊の絵本が残った。

それらに対する認知度の合計が絵本認知度Bである。

 絵本認知度に関して、以上の2種類を求めた。平均値と標準偏差、そして、中央値と最小値と最大値を 表2に示した。

(4)月間読書冊数

 記入された1カ月間の読書冊数の平均値と標準偏差、そして、中央値と最小値と最大値を表2に示した。

(5)相関係数の算出

 絵本志向得点、絵本経験得点、読み聞かせ志向得点、絵本認知度A、絵本認知度B、月間読書冊数の各 指標間の相関係数を表3に示した。

4.考察

 絵本への関与と絵本認知度の関係を把握するために、表3の相関係数について考察を加えたい。

 まず、絵本認知度Aと絵本認知度Bに着目したい。52 冊すべての評定値を合計したものが絵本認知度 Aである。その52冊の中から、回答者集団ほとんどに知られていない絵本、あるいはほとんどに知られ ている絵本を除いた17冊の合計得点が絵本認知度Bである。絵本認知度Aに比べ、絵本認知度Bの方が、

絵本を知っているか否かの個人差をより明確に際立たせると予想された。

(5)

 絵本認知度Aと絵本認知度Bの相関係数は0.90と高かった。にもかかわらず、この2種類の絵本認知 度と、絵本志向得点、絵本経験得点、読み聞かせ志向得点との相関係数を見ると、3つすべてで、絵本認 知度Bの値が絵本認知度Aの値を上回っている。つまり、絵本志向得点や絵本経験得点、読み聞かせ志向 得点と鋭敏に反応しているのが絵本認知度Bであるとみなすことができるだろう。そこで、ここからは、

絵本をどれだけ知っているかという指標としては、絵本認知度Bを用いて考察したい。

 絵本が大好きで、絵本をもっと読みたいといった「絵本志向得点」と「絵本認知度B」では、0.50 の 相関を示している。やはり絵本に対して、そのような気持ちで関われば関わるほど、絵本をよく知ってい るといえるのである。また、子どものころに絵本によく接しているといった「絵本経験得点」と「絵本認 知度B」でも、「絵本志向得点」とだいたい同じ0.45の相関を示している。これも当然ながら、絵本に囲 まれ、よく触れ合っていればいるほど、絵本をよく知っているといえるのである。

 一方、絵本の読み聞かせが大好きで、読み聞かせをたくさんしたいといった「読み聞かせ志向得点」は、

「絵本認知度B」との相関係数が0.35で、絵本志向得点や絵本経験得点との相関に比べて、あまり高くない。

これは、絵本の「読み聞かせ」という行為に気持ちが向くことが、必ずしも絵本を知ることと関連しない ことの現れといえるのではないだろうか。やや踏み込んだ考察になるが、読み聞かせそのものに志向して しまうと、読み聞かせの定番の絵本が想起されやすくなるため、自覚的に絵本を広く知る努力をしない限 りは、絵本認知度が上がらないということではないだろうか。

 最後に絵本認知度と月間読書冊数の相関についてみてみたい。0.32 と高くはないが、関係はあるとい えよう。絵本を知っていることと日常の読書量は全く独立のものではない。ただし、現在、読書している ことが、絵本をよく知ることにつながるのか、絵本によく触れて育ってきたことが、現在の読書に影響し ているのか、原因と結果の関係はここでは述べることはできない。絵本に対する認知度と読書量指標をよ り精選し、また、工夫し、因果モデルで検討することによって、保育者養成における読書教育への示唆が 得られる可能性がある。

5.引用文献

平山祐一郎(2008).大学生の読書状況に関する教育心理学的考察 野間教育研究所

平山祐一郎(2015a).大学生の読書の変化 ―2006年調査と2012年調査の比較より― 読書科学, 56, 55-64.

平山祐一郎(2015b).保育系大学生の読書に関する分析 ―2012年大学生読書調査結果から見出される 読書の傾向について― 日本心理学会第79回大会発表論文集, 1112.

平山祐一郎(2016).保育系大学生の読書の傾向について ―「絵本関与」の観点を加えて― 

 日本教育心理学会第58回総会発表論文集, 245.

平山祐一郎(2017).読書量の測定方法に関する一考察 ―保育系大学生の読書教育に向けて―

 東京家政大学博物館紀要, 22, 53-62.

〔付記〕

 クレヨンハウス社のブッククラブ「絵本の本棚」(2016年版)の年少・年中・年長向けの絵本リストの 使用をお認めいただいたクレヨンハウス社に感謝いたします。

(6)

5

質問項目 平均値 標準偏差

[絵本志向]

私は絵本をもっと読みたい。 5.02 1.06

私は絵本についてもっと勉強がしたい。 4.48 1.32

私は絵本が大好きである。 4.58 1.09

私は絵本の読み聞かせについてもっと勉強がしたい。 4.60 1.19

[絵本経験]

私は子どものころ、よく絵本を読んでいた。 4.32 1.44 私が子どものころ、よく絵本の読み聞かせをしてもらった。 4.32 1.44 私には何回もくりかえし読んでいるお気に入りの絵本がある。 4.67 1.50

私はたくさんの絵本を持っている。 3.18 1.44

[読み聞かせ志向]

私は絵本の読み聞かせを子どもたちにするのが上手である。 3.17 1.10

私は絵本の読み聞かせが大好きである。 4.11 1.29

私は絵本の読み聞かせについてくわしい。 2.91 1.09

私は絵本の読み聞かせを子どもたちにたくさんしたい。 4.80 1.20 表1 3つの絵本関与得点を構成する質問項目の平均値と標準偏差

読書量

絵本 絵本 読み聞かせ 絵本 絵本 月間

志向得点 経験得点 志向得点 認知度A 認知度B 読書冊数 平均値 18.68 16.50 14.98 117.87 57.78 1.36 標準偏差 3.90 4.71 3.84 23.06 13.82 1.96

中央値 19 17 15 115 57 1

最小値 6 4 5 79 27 0

最大値 24 24 24 195 93 15

表2 各指標の基本統計量

絵本への関与 絵本認知度

絵本 読み聞かせ 絵本 絵本 月間

経験得点 志向得点 認知度A 認知度B 読書冊数 絵本志向得点 .39** .65** .41** .50** .26**

絵本経験得点 .37** .40** .45** .15*

読み聞かせ志向得点 .29** .35** .23**

絵本認知度A .90** .31**

絵本認知度B .32**

**は 1% 水準で、*は5%水準で有意 (両側)。

表3 各指標間の相関係数

参照

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