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妊産婦のメンタルヘルスに関する縦断研究

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Academic year: 2022

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(1)

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)

分担研究報告書

妊産婦のメンタルヘルスに関する縦断研究

研究分担者 森  臨太郎(国立成育医療研究センター研究所成育政策科学研究部)

葛西  圭子(社団法人日本助産師会  専務理事)

研究要旨

妊産婦のメンタルヘルスは我が国の周産期医療の最重要課題であるにもかかわらず、

その実態解明と解決策は進んでいない。本研究では、世田谷区を例にとり、世田谷区 内に存在する分娩医療施設において一定期間内に分娩登録をした妊産婦に説明と同意 を得て登録し、そのメンタルヘルスを妊娠経過とともに縦断的に追跡する研究を立案 し、研究を開始した。現在登録数は 484名となり、順調に進捗している。来年度には 研究結果が判明し、日本にとって重要な妊産婦のメンタルヘルスの政策に資する情報 が得られると考えられた。

研究協力者:

掛江直子(国立成育医療研究センター研究 所)

竹原健二(国立成育医療研究センター研究 所)

立花良之(国立成育医療研究センター病院 こころの診療部)

小泉智恵(国立成育医療研究センター病院 こころの診療部)

三木佳代子(国立成育医療研究センター研 究所)

井富由佳(国立成育医療研究センター研究 所)

A. 研究目的

核家族化、女性の社会進出は妊産褥婦の ストレスを増強し、メンタルヘルスの問題 の発生につながることが危惧される。妊産 褥婦のメンタルヘルスの問題は、母親自身 の問題にとどまらず、母子間の愛着形成を 損なう可能性があり、子どもの発育・発達 にも大きな影響を及ぼす。しかし、現状で は、妊産婦を対象とした健診では、妊娠高

血圧症候群などの産科合併症の予防が主な 焦点になっており、妊娠中や出産後のメン タルヘルスのリスクアセスメント、および、

そのケア・サポートが十分であるとは言え ない。また、産後うつがこれだけ広く認知 され、大きな問題だと社会的にも認識され ているにも関わらず、産後の母親健診には 公的補助がないために、リスクの早期発見、

介入が難しくなっている。すでに「養育支 援訪問事業」で「特定妊婦」への支援事業 が構築されているが、特定妊婦の具体的な 抽出手段もなく、ほとんど活用されていな い現状もある。

そこで、本研究ではわが国の妊産褥婦の メンタルヘルスの実態と、そのリスク要因 を正確に把握し、ハイリスク者の早期発見 と適切な介入につなげるための体制づくり を目指して、前向きコホート研究を実施し たい。

本研究の主な目的は、以下の4つである。

①妊娠期から産後における妊産婦のメン タルヘルスのハイリスク者の割合を把握す ること

(2)

②妊娠中期の妊婦のメンタルヘルスの状 態が、産後のメンタルヘルスのリスクを予 測できるか検討すること

③妊産婦のメンタルヘルスのリスク因子 を探索的に検討すること

④妊産婦のメンタルヘルスが子どもへの 愛着や養育行動に及ぼす影響を検討するこ と

B. 研究方法

研究対象

世田谷区内にある分娩を取り扱っている すべての産科施設(15施設)を対象とする。

そのうち、協力が得られる施設が本研究の 調査協力施設である。世田谷区内には日本 産婦人科医会の世田谷支部および玉川支部 があり、すでに両支部長には本研究の実施 の了解を得るとともに、各支部内の産科施 設長に本研究への参加協力を呼び掛けても らっている。

2012年11月末(倫理委員会の承認取得 後)から2013年4月末に上記の調査協力施 設に妊婦健診のために訪れた妊婦で、その うち、妊娠20週未満であることと、その施 設に分娩の予約をしたことを満たした者が 本研究の対象者である。各調査協力施設の 合計で、対象者数が約1400件となることを 目標とする。

本研究では、対象者のリクルートを5-6 か月にわたり実施する。世田谷区民の年間 出生数は約6800人である。上記、リクルー ト実施期間に以下の分析の実施に耐えうる 対象者数を収集することができる。

健やか親子21のベースライン調査や中 間評価、その他の先行研究からから産後う つであると判定される(EPDS>9)産婦の割 合を15〜20%と見積もる。スクリーニング 時に得られる95%信頼区間において許容 する誤差を±5%、有意水準を0.05、調査期 間中に各調査協力施設において対象者にな り得る者のうち、本研究への参加に同意す

る者が80%、途中で脱落する者が20%と見 積もる。産後うつの実態の把握に必要な対 象者数は、産後うつと判定される産婦の割 合が15%の場合に307人、20%の場合に385 人、25%の場合に451人となる。

産後うつによる虐待行動のハイリスク者 の予測に関する解析に必要なサンプルサイ ズに関しては、産婦における産後うつと衝 動的な行動をとることの関連に関する先行 研究では、産後うつのハイリスク者が37%、

衝動的な行動をとることのハイリスク者が 28.7%であることが示されている。また、

産後うつのハイリスク者のリスク比が1.7 であることも示されている。調査期間中に 各調査協力施設において対象者になり得る 者のうち、本研究への参加に同意する者が 80%、途中で脱落する者が20%と見積もる。

その条件で、①有意水準を0.10、検出力を 80%にした場合、②有意水準を0.05、検出

力を80%にした場合、③有意水準を0.05、

検出力を90%にした場合に、必要になるサ ンプルサイズはそれぞれ526人、657人、

867人である。

研究期間

本研究の実施期間は倫理審査承認後

(2012年11月ごろ)から2014年3月まで とする。

研究方法

本研究では妊娠20週時のベースライン 調査に加え、分娩後入院期間中(産後数日)、

産後2週、1か月、2か月、3か月の5回の フォローアップ調査(追跡調査)の合計6 回の調査を実施する。対象者のリクルート は倫理委員会からの承認を得た後(おおよ そ2012年11〜12月)から2013年4月まで おこない、調査への参加協力が得られた対 象者について産後3か月までフォローアッ プを実施する。最終的な産後3か月時のフ ォローアップ調査(追跡調査)が終了する のは2013年12月、データの基礎的な解析 は2014年3月になる予定である。

(3)

対象者のリクルートは、本研究の調査協 力施設において、妊娠20週未満で、なおか つその施設での分娩を予約した妊婦に対し、

本研究の説明書を手渡し、本研究の主旨に ついて説明をする。その上で同意書を手渡 し、本研究への参加協力が得られる場合は 同意書に記入してもらう。記入された同意 書は各施設が一時的に預かり、定期的に郵 送にて研究事務局(当研究所内)に送付し てもらう(もしくは調査員が定期的にフィ ールドを回って回収をする)。同意書は事 務局に到着した順に研究IDを付与し、対象 者の照合表を作成する。

ベースライン調査は各調査協力施設にお いて、対象者が妊娠20週に達した最初の妊 婦健診時に実施する。各施設の待合室や調 査用のスペースなどでiPadを用いて質問票 に回答をしてもらう。iPadが故障している 場合や、同時期に複数名の対象者の調査を 実施しなければならなくなってしまった場 合などは、質問票に回答をしてもらう。各 調査協力施設のスタッフがiPadもしくは質 問票を対象者に配布する際に、研究IDを対 象者に知らせる。対象者が知らされた研究 IDを氏名に代えて入力・記載することで、

回答したデータは連結可能匿名化される。

iPad 内のデータおよび回答済みの質問紙は、

各施設を定期的に巡回する調査員が回収す る。

分娩後入院期間中、産後1か月のフォロ ーアップ調査では、健診時および入院期間 中(分娩後4〜5日目)に各調査協力施設に てiPadもしくは自記式質問票を用いて対象 者から回答を得る。ベースライン調査と同 様に、iPadが故障している場合や、同時期 に複数名の対象者の調査を実施しなければ ならなくなってしまった場合などは、質問 票に回答をしてもらう。各調査協力施設の スタッフがiPadもしくは質問票を対象者に 配布する際に、照合表を基に、対象者固有 の研究IDを対象者に知らせる。対象者が知

らされた研究IDを氏名に代えて入力・記載 することで、回答したデータは連結可能匿 名化される。iPad内のデータおよび回答済 みの質問紙は、各施設を定期的に巡回する 調査員が回収する。

産後2か月、産後3か月時の調査は、調 査員による電話での聞き取り、もしくは自 宅への質問票の送付にて調査を実施する。

なお、産後2週時の調査は調査協力施設に よって健診を実施している施設と、実施し ていない施設があるため、施設ごとに健診 時にiPadを用いた調査を実施するか、調査 員による電話もしくは質問票の郵送にする か、を決定することとする。なお、調査を 質問票の送付でおこなうか、電話による聞 き取りでおこなうかは、原則的には質問票 によるデータ収集を優先し、返送がない場 合や、対象者が電話による調査を希望した 場合に、電話による聞き取りを実施する。

フォローアップ調査およびベースライン 調査の実施時期や実施場所、実施方法につ いては表1のとおりである。

各調査時における質問内容は添付資料 のとおりである。質問項目および回答項目 の詳細は質問票を参照願いたい。なお、今 回の申請では、妊娠20週時のベースライン 調査と産後数日後のフォローアップ調査の 質問項目についてのみ申請をする。その後 のフォローアップ調査の質問項目について は、ベースライン調査のデータの収集状況 に応じて調整をした上で、後日、修正の申 請をする予定である。

本研究への参加に同意をした対象者は 同意書に分娩を予約した施設および氏名、

連絡先、出産予定日を記載する。調査員は 各調査協力施設から対象者の同意書を回収 した後に、ネットワークから独立したコン ピューターを用いて、対象者の一覧表を作 成する。その一覧表には入力する際に、順 番に研究用IDを付与する。対象者の一覧表 は国立成育医療研究センター研究所内にて

(4)

保管し、当該調査に関する連絡、質問票の 送付、電話調査の実施、さらに当該調査の 進捗状況の管理に用いられる。また、一覧 表から対象者連絡先を削除した研究IDと 氏名の照合表はそれぞれの施設にて保管し、

iPadでの調査ならびに調査票への記入を依 頼する際の研究IDの確認に用いられる。対 象者一覧表ならびに照合表は、いずれも各 施設において厳重に管理する。

ベースライン調査時のデータは基本的に は各調査協力施設において、対象者によっ てiPadに入力された質問項目への回答がネ ットワークを経由して、電子データとして 出力される。調査員は各調査協力施設内に 保管されている対象者の照合表をもとに、

収集されたデータに記載された研究IDを 確認した上で、国立成育医療研究センター 研究所に持ち帰る。

自記式質問紙を用いて回答されたデータ の場合は、調査員が各調査協力施設で質問 票を回収した際に、各調査協力施設内に保 管されている対象者の照合表をもとに、質 問票に記載された研究 IDを確認した上で、

国立成育医療研究センター研究所に持ち帰 る。調査員が持ち帰ったiPadおよび質問票 で収集されたデータは、ネットワークから 独立した国立成育医療研究センター研究所 内のコンピューター上でMicrosoft Excelに 入力をされる。

フォローアップ調査時のデータ収集方 法は①「各調査協力施設において対象者が iPadを用いて回答した場合」と、②「各調 査協力施設において対象者が自記式質問紙 に回答を記入した場合」、③「国立成育医 療研究センター研究所から対象者の自宅に 質問票を送付し、回答後に返送をしてもら う場合」、④「調査員が電話による聞き取 り調査をおこなった場合」の4つの方法を 予定している(図3)。①「各調査協力施 設において対象者がiPadを用いて回答した

場合」と、②「各調査協力施設において対 象者が自記式質問紙を用いて回答をした場 合」は、ベースライン調査時と同様の方法・

手順となる。③「国立成育医療研究センタ ー研究所から対象者の自宅に質問票を送付 し、回答後に返送をしてもらう場合」は、

対象者に質問票を送付する際にあらかじめ 研究IDを記入してから送付する。④「調査 員が電話による聞き取り調査をおこなった 場合」は、聞き取り時に調査員が対象者の 回答を手元のiPadに入力をしていく。その 際に、調査員がiPadに入力されたデータに 研究IDを付与し氏名の代わりとするため、

対象者の氏名は収集されない。

当該調査研究では、すべてのデータが研 究IDを用いて管理されていることから、そ れぞれの調査時のデータの連結、および調 査の実施状況の確認は、研究IDを用いてお こなう。

本研究では各調査時にEPDSなどのメン タルヘルスの状態についてデータを収集す る。収集されたデータは迅速に入力され、

そのデータをもとにEPDSなどのスケール のスコアを算出する。各スケールのスコア は調査員が各調査協力施設を訪問した際に、

スタッフに通知する。ハイリスク者に対し て何らかの介入を実施するかどうかの判断 は、各調査協力施設のスタッフがスケール のスコアも含めて包括的に判断をする。

データ解析

  本研究で得られたデータを用いて、主 に以下のような解析を実施する。

① ベースライン調査および各フォロ ーアップ調査時の EPDS のスコアを算出し、

EPDSのハイリスク者の割合と調査時期に よるスコアの推移を記述する。

② 産後のEPDSの得点を従属変数と し、妊娠期のEPDSの得点やその他のスケ ール、質問項目を独立変数とするロジステ ィック回帰分析をおこなう。

(5)

③ 産後の子どもへの愛着や養育行動 を従属変数とし、妊娠期のEPDSの得点や その他のスケール、質問項目を独立変数と するロジスティック回帰分析を実施する

(倫理面への配慮)

本課題に関して、成育医療研究センター 倫理審査委員会で審議し、承認を得た。

C. 研究結果

以下の4つの点が本研究の実施により、

得られることが期待される成果である。

① 妊娠期から産後にかけて、妊産婦 におけるメンタルヘルスのハイリスク者の 割合が把握できる。

② 妊産婦のメンタルヘルスのリスク 要因が把握できる。

③ 妊娠期の妊婦のメンタルヘルスと、

産後のメンタルヘルスの状態、親子関係な どの関連性について検討することにより、

産後うつや虐待といった産後のトラブルの 予防に向けた対策立案に役立てられる。

④ 世田谷区における妊産婦のメンタ ルヘルスの実態が把握され、妊産婦に対す る健診のあり方や、ハイリスク者に対する 保健行政機関や精神科医など、各種関連機 関との連携体制の構築のための基礎資料と なる。

世田谷区内で稼働している分娩施設のす べての施設から協力同意を得られた。

本研究においては、現在登録された妊産 婦は表1に示した。

D. 考察

妊産婦のメンタルヘルスの実情を把握し、

ハイリスク妊産婦のスクリーニング方法及 び、今後の介入方法に関しての端緒を得る ための研究計画を立案し、現在順調に施行 している。

E. 結論

妊娠判明時に登録し、初回の情報収集が 妊娠20週で幅があることと、実質的に1 2月開始となったことを考えると大変順調 に登録が増えており、このまま予定通り必 要登録数を達成できると考えられた。来年 度には研究結果が判明し、日本にとって重 要な妊産婦のメンタルヘルスの政策に資す る情報が得られると考えられた。

謝辞

  参加分娩施設および参加妊産婦に研究協 力に深謝します

引用文献・出典 なし

F. 研究発表  1. 論文発表

なし 2. 学会発表

なし

G. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得  なし

2. 実用新案登録  なし 3. その他  なし

(6)

世田谷区 同意書取得数 質問票回収数

ローズレディース 40 37

久我山病院 41 32

玉川病院 12 12

至誠会第二 34 22

自衛隊 22 10

田中ウィメンズ 13 0

杉山産婦人科 5 1

成育 78 35

成城マタニティ 7 0

成城木下 159 79

青木産婦人科 6 6

冬城産婦人科 8 0

東京マザーズ 60 18

合計 485 252

 

表1  2月14日時点での同意数と質問票回収数 

参照

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