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中国:“新常態”(ニューノーマル)における石油消費構造の変化

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1 更新日:2016/3/28 調査部:竹原 美佳

中国:“新常態”(ニューノーマル)における石油消費構造の変化

 エネルギー消費構造の変化 経済“新常態”、エネルギー効率向上、環境政策によりエネルギー消費構造は変化(石炭消費の伸 びが鈍化し、非化石エネルギーによる代替が進展)  石油消費構造の変化 石油消費は 2010 年頃まで軽油が牽引していたがその後はガソリン・ジェット燃料等の輸送燃料が牽 引。産業牽引から個人消費牽引型へと移行。石炭に比べ“新常態”(経済減速や産業構造調整)の 影響が小さい。  石油需給の中期見通し 石油需要はガソリン・ジェット燃料等の輸送燃料や国家石油備蓄の積み増し等により今後も一定の 伸びが見込まれる。供給は低油価による国有石油企業の投資縮小や成熟油田の減退により伸びが 鈍化、需給ギャップは拡大する見通し。  石油調達、消費構造の変化 精製処理能力は過剰だが、政府は国有石油企業の独占打破、環境負荷軽減の観点から独立系精 製事業者に原油輸入ライセンスを付与、原油輸入が増加する可能性。独立系精製事業者の調達行 動に要注目。 イランの制裁解除により中東高硫黄原油の中国向け供給の競争激化へ。ロシアの供給拡大に対し アフリカ低硫黄原油の原油が輸送コストなどの面で劣勢に立たされる可能性。 はじめに.中国の経済“新常態”:量から質への転換 中国の経済成長は 2010 年をピークにそれまでの 10%以上の高成長から 7%前後に減速、2015 年は 6.9%であった。中国政府はこの経済成長の減速を経済“新常態(New Normal)“と称している。“新常態” の特徴として経済の高成長から中高成長への移行の他、重工業からサービス産業、投資主導から消費 主導への経済・産業構造調整があげられる。2015 年の GDP(実質)は 6.9%増の 67 兆6708 億元(約10.41 兆ドル)であったが、2 次産業のシェアは 2000 年の 45.4%から 2015 年に 40.5%に減少している一方で、3 次産業のシェアは 39.8%から 50.5%に拡大している。とはいえ、これらの構造調整には時間を要するため 世界経済やエネルギー消費への影響が懸念されている。 政府は 2016 年 3 月の全国人民代表大会(全人代)において今後 5 年の目標を示している。李克強首 相は政府活動報告(施政方針演説に相当)において 13 次五か年計画<2016~2020 年>の最終年にあた

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2 る 2020 年に GDP と所得水準を 2010 年比で倍増(2020 年の GDP を 92 兆 7000 億元≒1,620 兆円以上 とする)、同目標実現のため期間中の GDP 成長率について年平均 6.5%以上の中高成長を維持するとし た。また産業構造について「産業の最適化、高度化」を図るとしている。鉄鋼や石炭などの過剰設備(生 産能力)の解消や利益を出せない“ゾンビ企業”の淘汰などによる産業の最適化(“供給サイドの改革”) を行うとともに産業の高度化に向けた行動指針“中国製造 2025”(2015 年策定)1 に基づき“品質強国”、 “製造強国”作りを急ぐとしている。 1. エネルギー消費構造の変化 (1)経済“新常態”、エネルギー効率向上、環境政策によりエネルギー消費構造に変化 中国のエネルギー消費は経済の高成長に伴い 2000 年の石油換算10.3 億トン(以下 toe)から 2015 年 には 30.1 億 toe と約 3 倍増加した(図1)。 1,029 3,010 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500

エネルギー消費推移(2000~2015年)

百万トン (石油換算) 図 1:エネルギー消費の推移 中国能源統計年鑑等に基づき作成 1 「中国製造 2025」に関する通知(2015 年 5 月 8 日、国務院【2015】28 号) http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-05/19/content_9784.htm

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3 しかしエネルギー消費の伸びは 2000~2010 年の年平均 9%から過去 3 年間(2013~2015 年)は年平 均 2.3%に鈍化、2015 年については前年比 0.9%の伸びにとどまった(図 2)。2011 年をピークに減速して おり、特に 2013 年以降の減速が顕著である。電力についても同様で 2000~2010 年の年平均 11.8%から 過去3 年間(2013~2015 年)は年平均4.5%に鈍化、2015 年は前年比0.7%の伸びにとどまっている。なお、 経済成長率に比べ電力消費の伸びが小さいのは電力消費の 72%を占める 2 次産業、なかでも電力多消 費産業の構造調整(経済“新常態”)の影響を強く受けているためである。電力消費に占める 2 次産業の 電力消費(2015 年 1-11 月)は前年同期比 1.1%減だが、3 次産業は 7.3%増加している。 電力・エネルギー消費構造のいずれも経済“新常態”だけではなく、過去 10 年来政府が取り組んでき たエネルギー効率向上、環境・排出抑制、2013 年頃から取り組みが強化された大気汚染改善政策により 変化した。 1次エネルギー, 0.9% GDP , 6.9% 電力, 0.70% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16% 18% 中国のGDPとエネルギー消費の対前年成長 (2000~2015年,%) エネルギー GDP 電力 図 2:中国の GDP とエネルギー消費の対前年成長 中国能源統計年鑑等に基づき作成 政府は 11 次五か年計画期(2006~2010 年)以降それまでのエネルギー大量生産・消費型の発展から 持続可能な成長へと政策を転換し、段階的にエネルギー効率向上、環境・排出抑制政策を進めてきた。 エネルギー効率向上については、11 次五か年計画以降 GDP1 万元創出あたりのエネルギー消費(消費

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原単位)削減目標(11 次五か年計画は 20%前後、12 次五か年計画<2011~2015 年>は 2010 年比で 16% 削減する目標を設定した(表 1)。エネルギー消費は 2010 年の 14.7 億トン標準炭(以下 tce、<石油換算 約 10.3 億トン;以下 toe>)から 2015 年には約 3 倍の 40.3 億 tce(約 30.1 億 toe)に増加したが、消費原 単位は 2005 年を基準年として 0.98 から 2015 年の 0.65(エネルギー消費効率は 34%向上)となり、政府は 目標を達成した(図 3)。なおエネルギー消費原単位は 13 次 5 か年計画においても 15%削減する目標が 設定されている。 環境・排出抑制政策については、水力、原子力、風力などの非化石エネルギー消費の比率拡大目標 (2015 年に 11.4%、2020 年に 15%)を設定している(表 1)。非化石エネルギーの比率は 2000 年の 7.3%か ら 2015 年には 11.7%に増加、政府は目標を達成した(図 4)。また、発電電力量に占める非化石エネルギ ーの比率は 2010 年の 19%から 2015 年(1-11 月)は 25.4%(内訳は水力 18.1%、風力 3.2%、原子力 3%、そ の他 1.1%、発電電力量計 13,025 億 kWh)に拡大した(図 5)。なお、2015 年 6 月に政府が国連 UNFCCC に提出した気候対応計画<INDC>によると、非化石エネルギー消費の比率は 2030 年に 30%に拡大する 目標が設定されている。 表 1:エネルギー効率向上、排出抑制政策 12次五か年計画 (11~15年)目標 13次五か年計 画(16~20年) 目標 エネルギー 効率向上政 策 GDP単位あたり エネルギー消 費削減 16%削減(拘束性) 達成 15% 環境・排出抑 制政策 非化石エネル ギー比率拡大 11.4%(拘束性) (達成,11.7% ) 15% 中国政府発表に基づき作成 拘束性指標とは達成しなければ罰則がある指標。拘束性の他に政策遂行の結果予測される“予測性指 標”が存在。例えば環境・排出抑制政策に伴い天然ガスの利用拡大 2015 年 7%(予測性:未達 5.9%)

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5 0.98 0.65 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 0 5 10 15 20 25 30 35 石 油 換 算 億 ト ン GDP単位あたりエネルギー消費(2005~2015年) 一次エネルギー消費 (左軸、石油換算億トン) 原単位 (右軸、石油換算トン/万元) 図 3:GDP 単位当たりエネルギー消費 中国能源統計年鑑等に基づき作成 69% 69% 64% 22% 17% 18% 2% 4.0% 5.9% 7.3% 9.4% 11.7% 2000年 2010年 2015年 中国のエネルギー源別消費(2000・2010・2015年) 石炭 原油 天然ガス 非化石 18% 19% 25% 0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 2000年 2010年 2015年1-11月 発電電力量に占める非化石比率 (2000、2010年、2015年1-11月) 火力 非化石 億kWh 図 4:中国のエネルギー源別消費に占める非化石エネルギー比率(2000、2010、2015 年) 図 5:中国の発電電力量に占める非化石エネルギー比率(2000、2010、2015 年) (2)12 次五か年計画期のエネルギー源別消費増減 12 次五か年計画期(2011~2015 年)のエネルギー源別の消費の増減を見ると、エネルギー毎に違い が生じている。エネルギー消費は期間中累計485 百万toe 増加した。石炭消費は累計191 百万toe 増え

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6 ておりエネルギーの中でもっとも伸びが大きい。しかし 2012 年以降経済“新常態”、環境・排出抑制政策 により消費の伸びが鈍化しており、非化石エネルギーによる代替が進展している。非化石エネルギーは 環境・排出抑制政策の後押しでほぼ一貫して伸びている、期間中累計 115 百万 toe 増加、石炭に次ぐ伸 びである。石油消費は 2013 年以降伸びが鈍化しており、天然ガスや非化石エネルギーによる代替が進 展していたが 2015 年は油価の低迷により需要が刺激され、増加に転じた。期間中の伸びは累計 103 百 万 toe である。天然ガスは期間中累計 77 百万 toe 増加したがエネルギーの中で伸びがもっとも小さい。 天然ガスは環境・排出抑制政策により非化石エネルギー同様利用促進が図られているが、2014 年以降 伸びが鈍化した。石炭と同様経済の減速による産業需要が低迷したことに加え、硬直的な統制価格によ り油価の急落・低迷に対し価格競争力が低下したことが主な要因と思われる。 -50 0 50 100 150 200 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

エネルギー源別消費増加(2011~15年,百万toe)

石炭 石油 天然ガス 非化石エネルギー 図 6:12 次五か年計画期のエネルギー源別消費増減(2011~2015 年、百万 toe) 中国能源統計年鑑他に基づき作成 2.石油需給の現状 世界的な供給過剰により原油価格低迷が続いているが、2015 年の世界の石油需要は価格低迷で需 要が刺激されたことにより前年比で日量 170 万バレル増加した。中国の石油消費も経済減速、構造調整 下ではあるが油価低迷により国家備蓄や輸送燃料(ガソリン・ジェット)等の需要が伸びたことにより増加

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7 した。IEA によると 2015 年の中国の石油消費量は前年比 5.4%増(日量 57 万バレル増)の日量 1,118 万 バレルで、世界の消費の伸びの 3 割強を占めた。 中国海関統計によると、中国の 2015 年の原油輸入量は前年比 8.8%増の日量 671 万バレルで原油輸 入額は合計約 1,345 億ドル(前年比 41%減、939 億ドル減)、平均輸入価格は 54.9 ドル/バレルで同 46% 減、47 ドル/バレル減であった。中国は消費の 6 割を輸入する石油の純輸入国だが、原油少量を輸出 しており、原油純輸入量は同8.1%増の日量665 万バレルである。また、原油に加えガソリンや軽油などの 石油製品を合わせた石油の純輸入量は同 5.9%増の日量 653 万バレルである、輸入依存度は 61%であ る。 図 7:中国の石油消費、国内供給の推移(1990~2015 年) IEA にもとづき作成、2016 年は見通し (1)国家石油備蓄への備蓄による需要の増加 中国政府は国家石油備蓄の詳細を明らかにしていないが 2014 年以降部分的に情報公開を行ってい る。2014 年 11 月に国家統計局は国家備蓄基地 4 基地の備蓄量を 1,243 万トン(9,074 万バレル)と公表 した。2015 年 12 月には 8 基地の備蓄量を 2,610 万トン(約 1 億 9053 万バレル)と公表した(図 8)。した がって、2014 年 11 月以降 1,367 万トン(9,979 万バレル≒日量 27 万バレル)が備蓄された計算となる。

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8 ただし国家能源局幹部の発言として 2012 年に一部(日量10 万バレル程度)を備蓄済みとの発言があり、 詳細は不明である。ともかく現在の備蓄量約 1.9 億バレルは 2015 年の純輸入量である日量 665 万バレ ルの 29 日分(約 1 か月分)に相当する。 2016 年は現在建設中の遼寧・錦州および広東・恵州備蓄基地への備蓄が行われる可能性がある。2 基地のタンク容量は合計3,780万バレルあり、日量10 万バレル程度の備蓄が行われる可能性がある。13 次五か年計画では 2 期国家備蓄の建設を進めるとあり、備蓄量や完成時期は明確ではないが、仮に 5,000 万トン(3.65 億バレル、現在の純輸入量 55 日分)を 2020 年までの 5 年で目指す場合、残り 1.7 億 バレル(年平均約 3,500 万バレル、日量 10 万バレル相当)の備蓄需要が生じる計算となる。また民間備 蓄についても検討が行われている。基地建設には数年の時間を要するため日量 10 万バレルの需要が 毎年発生するとは限らないが、当面一定の備蓄需要が存在することは確かである。 国家石油備蓄の他に原油と石油製品(ガソリン・軽油・ジェット燃料)の商業在庫が存在する。商業在庫 量は公開されていないが、新華社が大手 2 社(Sinopec・PetroChina)の商業在庫について前月からの変 動割合を公表している。2015 年下期の原油商業在庫は平年を下回る水準で推移し、石油製品商業在庫 は、上期は平年より高水準であったが下期は平年並みから平年を若干下回る水準で推移した。2015 年 末の原油と石油製品の在庫は日量 0.6 万バレル程度の増加で推計 3 億 8000 万バレルであった(2015 年の石油純輸入量日量 653 万バレルの 58 日分に相当する)。

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9 図 8/表 2:中国の国家備蓄基地(操業・建設中) 国家石油備蓄基地 事業者 貯蔵容量 (万バレル) 備蓄量 (万バレル) 1期(完了) 鎮海(浙江省) Zhenhai(Zhejiang) Sinopec 3,276 2,759 舟山(浙江省) Zhoushan(Zhejiang) Sinochem 3,150 2,905 黄島(山東省) Huangdao(Shandong) Sinopec 2,016 1,825 大連(遼寧省) Dalian(Liaoning) CNPC 1,890 1,584 1期計 10,332 9,074 2期(構築中) 蘭州(甘粛) Lanzhou(Gansu) CNPC 1,890 備蓄完了 独山子(新疆) Dushanzi(Xinjiang) CNPC 1,890 備蓄完了 天津(Tianjin) Sinopec 2,016 備蓄完了 舟山(浙江省)二期 Zhoushan(Zhejiang) Sinochem 1,890 備蓄完了 黄島(山東)二期 Qindao(Shandong) Sinopec 2,016 備蓄完了 錦州(遼寧) Jinzhou(Liaoning) CNPC 1,8902016年完成予定 恵州(広東) Huizhou(Guangdong) CNOOC 1,8902016年完成予定 2期計(2015年 11月現在) 13,482 9,979 (2)石油消費:産業牽引型から消費牽引型へ 中国において過去 10 年の石油消費のけん引役は軽油であった。軽油消費は 2012 年頃まで経済・製 造業の発展に伴う物流規模の拡大によりが堅調に増加していた。 能源統計年鑑によると、貨物の道路輸送はトンキロベースで 2000 年の 6,129 億トンキロから 2014 年に は 7 倍の 6 兆 1017 億トンキロに増加した。軽油の消費量は 2000 年の 6,806 万トン(日量 139 万バレル) から 2014 年には 2.5 倍の 17,165 万トン(日量 351 万バレル)に増加した(図 9)。年平均日量 15 万バレ ルの増加である。同じ時期に石油消費は年平均日量 41 万バレル増加しており、同時期の石油消費の増 加の 4 割が軽油であったことがわかる。 ① 石油消費のけん引役は個人消費(ガソリン)にシフト しかし近年石油消費のけん引役はガソリンにシフトした。ガソリンを1とした場合のガソリンと軽油の消 費比率は 2000 年の 1:1.71 から 2014 年には 1:1.55 とガソリンの比率が増えた。ガソリン消費はマイカー 需要の高まりとともに伸びている。能源統計年鑑によると、自家用車の保有台数は 2000 年の 625 万台か ら 2014 年には 20 倍の 1 億 2339 万台に増加した。ガソリン消費量は 2000 年の 3,505 万トン(日量 81 万 バレル)から 2014 年には 2.8 倍の 9776 万トン(日量 226 万バレル)に増加した(図 10)。特に 2010 年以

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10 降のガソリン消費は年平均 705 万トン(日量 16 万バレル)増加している。同時期の軽油の伸びは 617 万ト ン(日量 13 万バレル)であり、消費の伸びはガソリンの方が高い。 6,129 61,017 139 351 0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 軽油消費と貨物道路輸送(2000年・2005~2014年) 貨物道路輸送(左軸、億トンキロ) 軽油消費 (右軸、万b/d) 図 9:軽油と貨物道路輸送(2005~2014 年) 能源統計年鑑に基づき作成 112 226 0 50 100 150 200 250 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ガソリン消費と自家用車保有台数(2005~2014年) 自家用車保有台数(左軸、万台) ガソリン消費 (右軸、万b/d) 図 10:ガソリン消費と自家用車保有台数(2005~2014 年) 能源統計年鑑に基づき作成

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11 ② 大型車(SUV)の販売が 2015 年の石油消費を牽引 中国汽車工業協会によると 2015 年の自動車販売台数は 2,115 万台で前年比7.8%増加したが、伸び率 は 2013 年の 15.7%をピークに鈍化している。乗用車の販売は対前年で 5%減少し、その他の販売も伸び 悩んでいる(多目的車 MPV は伸びが 4 分の 1 に減少し、軽バンは前年比 17.5%減少)。しかし SUV の販 売が前年比倍増と好調で特に上半期のガソリン(石油)消費を牽引した。補助金を追い風に新エネルギ ー車(電気自動車<EV>とプラグインハイブリッド<PHV>を指す)の販売台数は 33 万台(内訳は EVが前年 比 4.5 倍の 24.7 万台、PHV は前年比 1.8 倍の 8.4 万台)と躍進しているが、石油消費への影響は当面限 定的である。 -100 -50 0 50 100 150 200 250 2012年 2013年 2014年 2015年 自動車販売台数増減(2012~2015年、万台) 乗用車 MPV(多目的車) SUV 軽バン(交差型) 56% 10% 29% 5% 自動車種別販売比率(2015年) 乗用車 MPV(多目的車) SUV 軽バン(交差型) 2015年販売台数 2,115万台 図 11:自動車販売比率ならびに販売台数増減(2012~2015 年) 中国自動車工業協会(CAAM)に基づき作成 2.今後の石油需給見通し 中国は旧正月にあたり工場が休んだりするため、年初の石油需給は1月と 2 月を合わせて比較する方 が市場のトレンドを反映できる。2016 年1・2 月の原油輸入量は日量 712 万バレルで前年同期の 662 万 バレルに比べ 7.4%、日量 49 万バレル増加した。2015 年 12 月の日量 782 万バレルを下回るが比較的高 い水準で推移している。2015 年は油価低迷による国家備蓄や輸送燃料需要の増加で需要が伸びたが、 2016 年以降は経済減速の影響で 2015 年に比べ需要の伸びは鈍化するという見方が多い。 (1)IEA の石油中期見通し IEA は 2 月 22 日に中期オイル・マーケット・レポート(MTOMR2016)を発表した。2021 年までの中国の

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12 需給に関する同機関の見通しは以下の通りである。 2015 年の需要は 5.4%(60 万バレル/日)増加し日量 1,120 万バレルであった。経済の構造調整が進 行しているが、消費者による(ガソリン・ジェットなど)軽質製品需要が増加したため需要の増加は同機関 の前回(15年2月)見通しを上回った。しかしこの増加ペースは経済減速や株式市場の低調により長続き せず、2021 年までの需要は年 30~40 万バレル/日程度にとどまる。 2015 年の生産は日量 11 万バレル増加の日量 430 万バレル。低油価、投資削減、汚職取り締まりキャ ンペーンにも関わらず増産した要因は CNOOC(海洋)の生産開始によるもの。しかし今後の増産は主 に(同国中西部オルドス堆積盆地の)長慶(Changjing)、延長(Yanchang)によるが増産幅は限定的である。 むしろ大慶など成熟油田の減退が大きい。 2021 年の需要は 2015 年比240 万バレル増の日量1,360 万バレル(年平均3.3%、日量40 万バレル増)。 生産は 2015 年比日量 20 万バレル減の 410 万バレル/日(年平均 0.8%減、日量 3 万バレル減)であり、 2021 年の需給ギャップは 2015 年比 260 万バレル増の日量 950 万バレルとなる。 0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1,000.0 1,200.0 1,400.0 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021

中国の石油需給

需要 生産 万b/d 図 12:中国の石油需給見通し(2015~2021 年) IEA に基づき作成 (2)主要石油製品需要見通し(試算) CNPC 傘下のシンクタンクである CNPC 経済技術研究院によると消費の 6 割を占める主要石油製品 (軽油、ガソリン、ジェット燃料)の 2015 年の消費は軽油が 0.8%増の 403 万バレル、ガソリンは 10.1%増の 269 万バレル、ジェット燃料が 17.2%増の 60 万バレルであった。同期間は 2016 年の消費の伸びについ

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13 て軽油を 0.4%増、ガソリンを 7.4%、ジェット燃料を 12.2%と見ている。軽油は石炭同様“新常態” (経済減 速や産業構造調整)の影響は免れないが、個人消費主導のガソリンやジェット燃料は石炭に比べ“新常 態”の影響が小さい。 同期間の 2016 年の消費見通しをもとに、2017 年以降も同じ伸びが続くと仮定し 2021 年までの需要を 試算したところ、年平均成長(2016~21年)はガソリンが年平均7.4%、日量25万バレルの増加、軽油は同 0.4%、日量 2 万バレルの増加、ジェット燃料は同 12.2%、日量 10 万バレルの増加となり合計で日量 37 万 バレルの増加となる。この実消費日量年平均約 40 万バレルの増加に加え、備蓄需要年平均日量 10 万 バレルを合わせ日量 50 バレル程度の需要が当面見込まれる(図 13)。2015 年の日量 57 万バレル増加 に比べ若干の鈍化にとどまる見通しである。 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年

主要石油製品需要試算(2014年~2021年)

ガソリン 軽油 ジェット燃料 図 13:主要石油製品需要見通し試算(2014~2021 年) 「2016 年石油、原油、ガソリン・軽油、ジェット燃料需給予測」(2015 年国内外油気行業発展報告 p106)に 基づき試算、2017 年以降は 2016 年の対前年伸び率で固定) 石油需要は今後も一定の伸びが期待できるが、余剰の軽油輸出が増加する可能性がある。2014 年以 降軽油の輸出(主にシンガポールならびに東南アジア向け)が増加している。軽油は生産を抑制してい るが余剰分が国内市場ではさばけないのでマージンは低くとも当面軽油の輸出拡大が続き、アジアの 軽油市況が軟化する可能性がある。

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14 200 400 600 800 1,000 1,200 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2013年 2014年 2015年 図 14:軽油輸出(2013~2015 年) 新華社 China OGP 等に基づき作成 (3) 低油価の石油・天然ガス供給への影響 中国の石油生産は主に国有石油会社 3 社(PetroChina、Sinopec、CNOOC)が行っている。2015 年は 低油価で 3 社ともに投資を削減した。陸上生産は減少したが、海洋の生産開始で全体では微増であっ た。 3 社の 2015 年 1~9 月の業績報告によると PetroChina の上流投資額は前年同期の約 302 億ドルに比 べ 21.7%減の 237 億ドルで CNOOC は同約 119 億ドルから 35.7%減の 77 億ドルであった。Sinopec は未 公表だが 2014 年の上流投資額は約 130 億ドルであった。2015 年の 3 社の投資額が 2014 年の約 660 億ドルから約 2 割減少したとすると、125 億ドル減少の 535 億ドル程度となる。 同時期の PetroChina の国内生産は原油が 1.5%減の日量 222.1 万バレル、天然ガスが 1.7%増の 7,795MMcfd、国内計 0.3%減の 352 万 boed であった。Sinopec の国内生産は原油が 4.3%減の日量 81.5 万バレル、天然ガスが 0.1%減の 1,942MMcfd であった。CNOOC は原油が 28.9%増の日量 26.2 万バレ ル、天然ガスが 257.9MMcfd、国内計 28.2%増の 305 万 MMboe であった。 2016 年に 3 社はさらに Capex を抑制(10~20%)し、生産は 2~5%減少する見通しである。投資額を 2015年比2割減とすると2014年の投資額に比べ230 億ドル減の約430 億ドル、生産量は同20万boed 減の 615 万 boed 程度にとどまる可能性がある。 PetroChina は国内生産を前年比3%減少する方針を表明している。生産開始から 50 年以上経過した 大慶油田等コストが高く収益性の低い成熟油田の生産を抑制するとしている。Sinopec は国内生産を 同 4.8%減少する方針である。勝利油田等コストが高く収益性の低い成熟油田の生産を抑制する。

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CNOOC は 2016 年の投資を少なくとも 11%削減し 91 億ドル以下とする計画であり、生産は同 2~5%減 少の見通しである。これは 2012 年以来の低さでピークの 2014 年に対し 44%の縮小となる。

表 3:国有石油企業 3 社売上・投資・生産(2015 年 1~9 月)

PetroChina

Sinopec

CNOOC

売上

2,089億ドル

25.6%減

2,460億ドル

27.4%減

187億ドル

33.4%減

投資

237億ドル

21.7%減

-

77億ドル

35.7%減

国内生産

原油千b/d

天然ガスmmcfd

2,221

(1.5%減)

7,795

(1.7%増)

815

(4.3%減)

1,942

(0.1%減)

262

(28.9%増)

258

(24.2%増)

各社業績報告に基づき作成 4.石油調達、消費構造の変化 (1)独立系製油所への輸入ライセンス付与による輸入増加の可能性 2015 年末までに中国の精製処理能力は日量1,426 万バレルに増強されている。精製処理能力の 7 割 は国有大手石油企業が占め、3 割は山東省などに位置する独立系精製事業者である。製油所の稼働率 は中国全体で 8 割を下回る状況(国有大手の製油所稼働率は約 8 割、独立系は約 3 割)で少なくとも日 量 200 万バレルの過剰状態とみられる。2016 年は新規で日量 60 万バレル追加、日量 42 万バレルが順 次廃止され、処理能力は差し引きで日量 18 万バレル増加し日量 1,446 万バレルとなる見込みである。 PetroChina 24% Sinopec 41% CNOOC 4% その他 31% 精製処理能力 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 千バレル/日

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16 図 15:精製処理能力と処理量 BP 統計ならびに各社年報に基づき作成 精製処理能力はすでに過剰だが、政府は 2015 年に独立系精製事業者に自社製油所での精製を目 的に原油を輸入することを認可する方針に転じた。政府の非国有への原油輸入ライセンス付与の目的 は国有企業の独占打破、環境負荷軽減、効率向上が目的である。小規模精製事業者は国有石油企業を 通じ原油を調達するか、あるいは硫黄分を含む重油を加工し軽油などを生産していたが、直接原油を輸 入することが可能となった。原油輸入枠は合計日量 100 万バレルを超えており、独立系製油所による原 油輸入が増加する可能性がある。産油国は新たな供給先として独立系精製事業者の動向に注目してい る模様である。例えば独立系精製事業者は小規模で東明(Dongming)以外は 1 社では VLCC の全量受 入は不可能で、過去数か月間はロシアの ESPO カーゴ(中小型タンカー主体)を調達していたが、オマ ーンは追加負担なしで複数の港に立ち寄ることなど柔軟な対応を示しており、オマーンからの調達が増 えているという。また 2016 年2 月29 日東明石化、天弘化学、匯豊石化などの独立系精製事業者16 社が 山東省済南市で中国(独立製油所)石油調達連盟を設立、共同調達などを検討している模様である。 参考:独立系精製事業者の原油輸入ライセンスと割当量取得の基本条件と申請の流れ  基本条件  トッパー1 基あたりの処理能力が 200 万t/年(4 万バレル/日)以上あること  国 5 基準(ユーロⅤ相当、硫黄含有 10ppm 以下)のガソリン・軽油が生産できること  製油所の高度化(老朽ユニットの廃棄)  一定の貯蔵インフラの保有  ガソリン・軽油の品質向上/低硫黄化(国 5 基準)  申請の流れ 独立系精製事業者は必要書類を国家発展改革委員会(NDRC)に申請し中国石油化学工業協会 (CPCIF)がこれを評価し現地調査を行う。同協会は現地調査実施後 7 日以内に評価結果を公表する。 NDRC が原油輸入割当量を付与する。精製事業者は同割当量を上限として商務部に原油輸入ライセン スを申請、承認を得る。各社がその年の原油輸入割当量上限(quotas)を決められておりこの割り当て量 は翌年に持ち越すことはできない。しかし翌年の割り当て量が付与される前に原油の調達(予約)を行う ことができる。割り当て付与前にカーゴが届いた場合は保税倉庫に貯蔵する。

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17 表 4:独立系精製事業者の原油輸入枠 企業 輸入枠 (万トン/年) 輸入枠 (万b/d) 取得時期 1 山東 東明石化 (Dongming) 750 15 2015年5月 2 遼寧 盤錦北方 (Panjin Beifang) 700 14 2015年6月 3 山東 中化弘潤 (Sinochem Hongrun) 530 11 2015年7月 4 山東 墾利石化集団 (Kenli) 252 5 2015年7月 5 山東 利津石油化工廠 (Lijin) 350 7 2015年7月 6 山東 東営亜通石化 (Yatong) 336 7 2015年7月 7 寧夏 宝塔石化 (Baoda) 616 12 2015年8月 8 山東 京博石油化工 (Jinbo) 331 7 2015年10月 9 山東 寿光魯清石化 (Shuguang) 258 5 2015年10月 10 山東 天弘化学 (Tianhong) 440 9 2015年10月 11 山東 匯豊石化 (Huihong) 416 8 2015年10月 12 山東 東営斉潤化工 (Dongying Jirun) 220 4 2015年11月 13 山東 海右石化 (Haiyou) 320 6 2015年11月 14 陝西 陝西延長 360 7 2016年1月 合計 5,879 118 中国石油化学工業連合会等に基づき作成 (2)原油輸入主要相手国のシェア攻防 2015 年の原油輸入相手先(地域別)はアフリカが縮小、ロシア・中央アジア(ロシア)および南米(ベネ ズエラ・ブラジル)が拡大。中東はクウェート、オマーン、イラクが拡大した。 2015 年の原油輸入量 671 万バレル/日における地域別の輸入比率は中東 51%、アフリカ 19%、ロシア・中央アジア 14%など前年と 大きな変化はない。輸入量ベースでは中南米からの調達が対前年で約1,000 万トン(日量約20.4 万バレ ル)増加した。特にブラジルとベネズエラからの調達が拡大した。ついで中東からの調達が同 960 万トン (日量 19.2 万バレル)増加した。クウェート、オマーン、イラクからの調達が拡大している。ロシア、中央ア ジアからの調達は同約 1,020 万トン(日量約 20.4 万バレル)増加した。長期売買契約の増量に伴いロシ

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18 ア原油の調達が増加したことによる。一方、アフリカからの調達は 360 万トン(日量約 7.2 万バレル)減少 した。アンゴラから、ナイジェリア、コンゴ共和国からの調達が一様に減少した。 アジア・太 平洋 3% 中東 51% アフリカ 19% ロシア・中 央アジア 14% 欧米・ 中南米 13% 4.6 19.2 -7.2 17.3 20.4 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 アジア・太平洋 中東 アフリカ ロシア・中央アジア 欧米・中南米 地域別原油輸入対前年増減(2013~2015年、万b/d) 2013年 2014年 2015年 図 16:地域別原油輸入比率と輸入対前年増減(2013~2015 年) China OGP に基づき作成 原油の上位輸入相手国 6 カ国(サウジアラビア、アンゴラ、オマーン、ロシア、イラク、イラン)の顔ぶれ は 2014 年と変わらないが様相は変化している。首位のサウジアラビアからの原油輸入は 2014 年に前年 比 8%減の 4,966 万トンで首位は維持したものの 1998 年以来初めて減少に転じていた。2015 年は 1.8% 増の 5054万トンで首位は維持したが、輸入全体に占める比率は前年の 16%から 15%に落ちた。アンゴラ を抜き 2 位に浮上したのはロシアだ。ロシアからの輸入は長期契約の増量により前年比 11%増の 4,243 万トンに増加した。同国の輸入全体に占める比率は 11%から 13%に上昇した。アンゴラの輸入は 4.8%減 の 3871 万トンであった。イラクからの輸入は権益原油の輸入が増加したことや、売買契約が増量したこと で 12%増加し、オマーンを上回った。イランからの輸入は欧米の同国への核開発に対する制裁が始ま った 2012 年以降 2 割程度減少していたが、2014 年に制裁前の水準である 2,746 万トンに戻った。しかし 2015 年の輸入量は 3.1%減の 2,662 万トンにとどまった。2016 年はイランの制裁が解除されたことで中東 の高硫黄原油の中国向け供給の競争が激化すること、また低硫黄原油においてもロシアの原油供給拡 大に対しアフリカの原油が輸送コストなどの面で引き続き劣勢に立たされることが予想される。

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19 0 20 40 60 80 100 120 中国の主要国からの原油輸入推移(2005~2015年) サウジアラビア アンゴラ ロシア オマーン イラク イラン 万b/d 図 17:主要国からの原油輸入推移(2005 年~2015 年) China OGP に基づき作成

表  3 :国有石油企業 3 社売上・投資・生産(2015 年 1~9 月)

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