はじめに
12 年前,関学に赴任しまして,あっとい う間に定年退職の年になります.限られた時 間ですが,最終のチャペルのメッセージとし て皆さんに話をしたいと思います.
きょうは,時代の変化に求められる力とい うテーマで進めていこうと思います.今の時 代の変化はすごく激しいです.どこまで激し いかというと,今,IT とグローバル化の進 化に伴って,恐らく 10 年ぐらいで昔の 50 年ぐらいほどの変化をしている時代です.そ んな中で,最近よく耳にするのは,2030 年には現在の 40% の職業がなくなるという ことです.かなり厳しく聞こえるけれども,
実は,振り返って考えれば,20 世紀後半に 入ってから,職業の消滅がすでに現れてきま した.20 世紀初期から登場したタイピスト という職業は女性に活躍の場を提供してきま した.しかし,80 年代パソコンの登場によ って,この職業は消えてしまいました.電話 の交換手という職業が女性の職業として大き な雇用がありましたが,80 年代から,携帯 電話の登場に伴い,激減し,21 世紀に入っ てから消えてしまいました.まだかなり専門 的な技術が求める職業にも,この現象も現れ てきました.無線に関わる仕事が 90 年代か
ら,衛星通信の普及に伴い,今はなくなって しまったという状態です.これから,IT の 技術以外は,どのような職業が淘汰されうる か,予測し難いぐらいですが,どのような業 種も淘汰される可能性があると言っても過言 ではない時代かなと思います.
では,激動な時代の中,若者にとっては何 が重要かというと,まず,時代の変化の方向 をきちんと洞察する力,それからそれに適応 する知識と能力を身に付けたら,時代の変化 の流れに乗って成長できるのではないかと思 います.そうしないと,変化の流れに淘汰さ れる可能性があると思います.
グローバル化についてしゃべると時間がな いから,今日は日本社会にはこれからどのよ うな変化がありうるかにかかわる話をしまし ょう.いかなる変化にも必ずリスクが伴うと 同時に,チャンスも絶対にあると忘れないで ください.ここでは,日本にどのような変化 があるか,変化は若者にとってどのようなチ ャンスがあるのか,それからそれに適応する ために求められる力は何かということについ て話しましょう.
働き方の変化に求められる力
まずは雇用の形態について考えてくみまし 2021. 12. 16(木)
時代の変化に求められる力
陳 立 行
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ょう.日本では第 2 次戦争が終わってから 今までは新卒採用がメインです.しかし,時 代の激動に対して,企業には即戦力が求める ために,私の予測ですが,これからは恐らく 新卒採用は 5 年以内でなくなるのではない かと思います.その代わりに,即戦力がある 人を中間採用がメインに転換する可能性は十 分にありうると思います.これに伴い,今ま では皆さんは会社に雇用されている雇用の形 式も,今後は多様化すると思います.会社で ずっと雇用されるのではなく,自分で起業す ることや,個人事業などいろいろな契約に基 づいて働く可能性も出てきました.その結 果,労働市場はかなり柔らかくなります.こ のような変化の中に,若者にとってはどのよ うなリスクがあるか,どのようなチャンスが あるかと考えると,リスクとは,努力がしな いと不安があります.チャンスとは,自己発 見の可能性があると思います.自己発見とい うのは,もし終身雇用だとすれば,ずっと一 つの会社の中に,個人の能力よりも会社の ニーズに合わせて自分を調整するということ をいいます.今後,自分はどこに,自分の能 力を最大限に発揮できるかについて発見する 可能性がありえます.もし現在の会社とミス マッチがあれば修正する可能性があるという ことです.そこでやりたいことに挑戦できま す.
これはいいことに聞こえるけれども,そこ には求める力を備えなければなりません.つ まり,特定な会社に合わせる力ではなく,特 定の技術を用いて,その技術を求める会社に 即戦力を提供することです.もちろん,会社 にとっては,即戦力を持つ人間には,それを 展開する創造力を求めます.
これからは働き方も変わります.今までは
会社に出勤して,働いていますが,今後,先 ほど言った多様化,在宅勤務,在宅と会社の 両方のハイブリッドのような働き方一般的に なると思います.これには何のチャンスがあ るかというと,一つは,自分の長所を生かせ る仕事を見つける可能性があります.もう一 つは,人生の段階に応じて働くことも可能で す.例えば女性にとっては結婚,育児のよう な段階では在宅の勤 務 を,仕 事 を 選 ん で,
ワーク・ライフ・バランスを取れやすくなり ます.育児を完了してからフルで会社に通え るというような選択も可能です.それにはど のような力が求められるかというと,まずは チームワークの力以外は,1 人で仕事をでき ることで,何か困ることが遭ったら,他人を 頼らずに独自に対応できる力が求められてい ます.
競争相手の変化に求められる力
次は,競争の相手の変化です.今後見えな い競争相手は益々増えます.これまでは,自 分の競争の相手は日本の国内だけにあること が多いですが,これからはもっとグローバル に,自分の見えないところに自分と同じよう な仕事,同じような技能を持っている人が,
競争相手がいることについて皆さんは認識し たほうがいいです.
これは聞いていると厳しいと思われるけれ ども,別の意味で,自分の能力を最大限に生 かせる職場,働く場所の開拓は可能です.最 近よくいわれているのは,日本の給料は先進 国の中でかなり低くなっているけれども,力 があれば,外国でも働くことも可能です.日 本ならば初任給ですが,2 年前私がヨーロッ パにいた時は,仕事をベースにして 20 代前 98 Ⅶ.定年退職者による最終チャペル講話
半の若者は,年収 8 万ユーロ以上ぐらいの 給料はごく普通です.これはチャンスとして とらえるのでしょうね.
もちろん,全ての人にはこのようにできる と私は考えにくいです.これができるには自 分の職業と関連領域に関わる情報の収集力が 必要不可欠です.その中に,自分がどのレベ ルの能力を持っているか,客観的に自分に対 する判断と関連事業,関連領域の判断の能力 が求められると思います.もしその力がなけ れば,グローバル労働市場と自分とがリンク せず,そのチャンスを逃す可能性が高いで す.
家族生活の変化に求められる力
最後になると,社会がこのように激しく変 化する中,私たちの家族生活も変わらないわ けがありません.まず家族の多様化です.日 本では家族の他の国と比べると多様化はそれ ほど進んでいません.なぜならば,日本は結 婚以外の家族は法的に認めていないからで す.しかし,今後,未婚のママなどの単身家 族は言うまでもなく,別の形の家族も認める ようにならざるを得ない時期になります.
そうならば,男性でも女性でも,1 人で結 婚せずに,仕事をしながら子どもを養育する という可能性があります.多くの日本人は他 の国と比べると,家族を守りながら伝統を守 る習慣が根強くあります.けれども,今まで の日本はよく言われる両親と 2 人の子ども という標準家族で,お父さんは稼いでいる,
お母さんは育児後パートをやっているという 家族のイメージは,これからは変わると思い ます.
大体,皆さんの親ならば,50 代ぐらいに
な る と,お 父 さ ん は 1 馬 力 で 800 万 や 1,000 万以上ぐらいは稼いでいるというこ とは,今まで日本の中流階級のイメージです ね.これから企業の賃上げの圧力と労働力の 不足により,夫婦で共働き,子どもが大学に 行くときは,2 人で 1,000 万ぐらい稼ぐよ うな時代にはなるでしょう.
そうならば,チャンスは何かというと,今 まで家庭は女性に任せて,男性は会社で全心 身で働くことによって,家族にいろいろな問 題が現れてきました.これからは男性も女性 も一緒に,ワーク・ライフ・バランスが実現 できる可能性があるのではないかなと思いま す.男性にとっても,実は育児は人生の成長 につながる楽しいこともあります.育児は大 変なことがあれば,楽しいこともあります.
最も重要なことは限られている育児の時間の 中,人生経験をエンジョイするチャンスで す.けれども,会社のためにそのようなこと を全部奪われてきたことが現状です.
家族の変化に適応するために求められる力 は,仕事と家事を両立する力です.つまり,
家族への気配り,家事をできる力です.特 に,男性,これから家事,料理が好きという 程になれば,奥さんと家庭の中のコミュニ ケーションがうまくとれるし,いわゆるワー ク・ライフ・バランスの両立の可能性が高く なると思います.
最後になりますが,これからの日本の社会 は皆さんの好き嫌いと関係なく,変わってい きます.そのために皆さんはこのような求め られる力を備えるならば,将来は,人のため に,家族のために,自分のために役立つでき るのではないかなと,私のメッセージです.
皆様の幸せの人生をエンジョイできること を祈っております. (社会学部教授)
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