新中央固咎館1回顧と展望 て飛躍的に増えたことである︒一日平均︵平日︶五ー六千人Jの七月で入館者は開館以来延ベ一五0
万人を超えた︒
新 中 央 図 書 館 回 顧 と 展 望
総合学術情報センターが昨年四月に開館してから早くも一年半がたった︒会議場では国際会議をはじめ各種の学会 や研究集会が次々と開かれ︑連日学内外の多数の研究者で賑わっている︒またセンターの中核ともいうべき新中央図 書館も順調な歩みを続けてきた︒新図書館の船出は無事成功したと言ってよいであろう︒
この間︑海外からの訪問者をふくめ六千人にものぽる多数の見学者が来訪したが幸いにも多くの方々から
﹁素晴
らしい﹂
固書館であるとのお褒めの言葉を項いてきた︒だが︑何よりも嬉しいことは︑
利用者が旧図書館時代に比べ
﹁WI
N
﹂利用されている︒また本の利用もEシステムも全面的に稼働しフルに
ることはできないが︑
飛躍的に増えたことは間違いない︒実際︑
開架式になったので正確に把握す
一般図書の貸出冊数をみても旧図書館の場合と比べ
て十数倍近くに増えている︒恐らく︑日本でも最も利用度の高い図書館の一っになったと言えるであろう︒
こうして︑新しい図書館は︑学習のための豊かな空間としても研究のための基
地としても着実にその役割を果たし
つつある︒赤いトンガリ帽子をいただき巨大な建物をもつ総合学術情報センタ
ーは︑早稲田の新しいシンボルとして
野 日
洋
‑ 1‑
なら
ない
︒
着実な歩みをしるし始めたのである︒
ところで︑新図書館と
国
際会議場を建設する際の碁本的な
コンセプト
は次のようなものであった︒図書館は学習機 能と研究機能を兼ね備え︑
研究の面では︑学術資料を収集・整理・保存し︑学内の研究者に提供する︒研究者はこれ らの資料を用いて学術情報の生産を行い︑
である︒この甚本的な考え方は︑
その成果を会議場で発表し︑
嵩等教育には言うまでもなく優れた図書館が不可欠であり︑
それをまた図書館に蓄積してゆくというもの 図書館と教育・研究との結びつきをより密接にするとともに︑資料を収める図書館 と研究者および発表の場を有機的に結びつけるという来るべき大学図書館の在り方の一端を示そうとしたものに
他
よく図書館は大学の心臓であり象徴であるとも言われ るが︑新図書館の建設は︑図書館のルネサンスを意味するばかりでなく︑第二世紀に向かって歩み始めた早稲田大学 の新たな心臓の誕生を意味している︒
振り返ってみると︑新中央図書館を含む総合学術情報センタ
ー
の建設が構想されたのは︑今から十数年も
前
の昭
和
五二年のことであった︒その後さまざまな経過をへて新図書館の建設が計画されるにいたったが︑
その始まりは︑昭 和五九年︑この年の百周年総合計画審議会の答申が︑新中央図書館を総合学術情報センタ
ー
の中枢的機能を担うもの と位置づけ︑﹁研究会議施設﹂を併設した︑来たるべき第二世紀の早稲田大学を象徴する
﹁世紀の大殿堂
﹂とも言うべ
き規模と機能をもつ新中央図書館の建設を提言した時であったと言えよう︒こうして建設計画が本格的に推進される ことになったのであるが︑
出現したのである︒
それから六年の歳月をへて︑大学図書館としては東洋一とも言える新図書館の雄大な姿が もっとも︑この間︑建設にいたる道は必ずしも平坦であったとは言えない︒﹁基本計画書
﹂ ﹁ 基本設計書
﹂をめぐっ
ー 2‑
新 中 央 図 咽 館 ー 回 顧 と 展 望
てさまざまな議論があったし︑野球部の聖地ともいうべき﹁安部球場﹂に建設が決定される際にも︑
ではなかったからである︒幸い関係各方面の深いご理解をえて﹁安部球場﹂
その敷地から出土した古代遺跡の学術調査のため︑建設はほぼ一年間の中断のやむなきにいたった︒しかし︑
たさまざまな困難を乗り越え待望の大図書館の建物を建設することができたのであって︑
骨子は︑昭和五七年に第︱二代館長に就任された濱田泰三教授のもとで︑
ング・グループによって作られたものである︒さらに図書館では︑
一︑ 新
しい 異論がないわけ
の跡地に建設することが決定されたが︑
こうし
またこの間︑図書館も総力をあげて建設計画に取り組んできたことは言うまでもない︒新中央図書館の建設計画の
図書館内に設けられた三一にのほるワーキ
昭和六二年から︑前館長奥島孝康教授のもとで︑
新中央図書館の運営と内部設備を中心とする実施計画を立てるために八つのワーキング・グループを設け︑詳細な実
施計画を検討してきた︒しかも︑これらワーキング・グルー
プには館員のほとんどが参
加した︒したがって新しい圏
書館は︑館員の方々の真摯な検討と熱
心な努力の結晶でもある︒
ところで︑建設にさいし新図書館の基本的なイメージとしてあげられたのは︑次の七つの点であった︒
早稲田のシンボル︒二︑
六 ︑
﹁活性化﹂
志向
︒七
︑
しく思っている︒
「第二•五世代」
の図
書館
︒
﹁新しい図書館員像﹂
三 ︑
﹁オー
プン
﹂志向︒四︑﹁利用﹂志向
︒五
の追
求
﹁シンプル﹂志向︒
である︒このうち︑﹁第ニ・五世代﹂の図書館については若干
の説明が必要であろう︒すなわち︑第一世代の図書館とは︑かつての保存中心の図書館であり︑第二世代の図書館が
それはニューメディアやニューテクノロジーに支えられた図書館でなければならない︒しかし︑ 伝統を継承するとともに新しい情報化社会に適応しながらこれを発展させてゆく図書館であるとすれば︑第三世代の
そうした高度に技術
化された第三世代の図書館に一気に進むことはむずかしい︒そこでわれわれは︑時代の最先端をゆく機器と設備をそ ︶れを私どもは心から嬉
‑ 3
―
なえながら︑
まず第二世代と第三世代の中間を目指し︑
また︑﹁オープン﹂志向や﹁利用﹂志向が︑
から
︑
それを起点にさらに前進してゆこうと考えたのである︒
図書館の原点にたちもどって︑
開かれた︑利用中心の固
書館への
脱皮を目指すものであることも
言う
までもないであろう
︒事実
︑新図書館で は︑貴重書をのぞいて図書のほとんどを自由に閲覧できる開架式とした︒また︑新収図書の分類を
NDC
に改
めて
︑ 学習
・ 研究の両面で現在の学問的状況に対応できる体制を整える
一方︑新たに開発した
オンライン総合図書館システ
﹁WINE
﹂の整備とオンライン端末の適正な配置に努めた
︒そ して
︑
レファレ
ンス部門を大幅に拡充したほか︑
ほとんど全ての館員が何らかの形で利用者 収蔵資料と利用者を結ぶ接点に重点的に館員を もっとも︑こうした努力の結果は実際に運用してみなければ分からないことばかりである︒昨年四月の開館以来わ れわれは新体制を定着させるべく全力をあげて努力してきたのであるが︑幸い大きなトラプルもなく 拡大をはかり開かれた図書館となったが︑
するサ
ー
ビスの点でも蔵書の管理についても
ほぽ順調に運
この
一年を振り返ると︑反省すべき点がない
わけではない︒利用の その反面︑館内の静粛さが若千失われたからである︒また︑利用者にたい
さらには利用者のマナーの点でも問題がないわけではない︒これら の点については︑利用者の要求を的確に把握しそれに応えうる方法を模索する一方館員や利用者の自覚をうながし ながら︑改善の努力を重ね︑貴重なわれわれの財産を守ってゆくために努力してゆかねばならないと思っている︒
ところで︑今後館として取り組むべき課題は極めて多いが︑碁本的には︑次の諸点を重点的に考えてゆきたいと思
その第一は︑学習図書館としての機能を果たすために必要な学習図書の充実であり︑学習空間の整備である︒学生 っ
てい る︒
営することができたと自負している︒もちろん 配置するなどして︑利用者サービスの向上をはかった︒ と接するようにするため
ム
︶れまでの保存管理を中心とする図書館
‑ 4 ‑
る ︒
新中央図咆館1回顧と展望 した状況にも対応してゆかねばならないであろう︒ 諸君の多様なニーズに応えなが
ら ︑
第二
は︑
分館や学部の学生読書室とも連携を強めつつ︑教育支援のための体制を整えてゆ
研究のための資料の一層の充実である︒言うまでもなくわが図書館には︑すでに質の高い誇るべき大量
の蔵書が収蔵されている︒これらの収集には︑歴代館長をはじめとする館員の長い歳月をかけた努力の他︑先輩諸先
生や
︑
庫文
世の篤志家の厚意に負うものが多い。国宝二点•重要文化財四点をはじめとして、洋学文庫、服部文庫、西垣
小寺文庫︑柳田文庫︑卿翁文庫︑大隈文書荻野研究室収集文書などのコレクションはこうした努力と厚意に
よるものである︒これに加えて私どもは︑この数年来︑優れた資料の収集に全力をあげて努めてきた︒伊地知文庫や
コルヴェア文庫杉捷夫文庫︵仮称︶︑桂川今泉文庫︑和田繊維文庫︑風陵文庫などがそれである︒また︑早稲田関係
者の著書を集めた﹁稲門ライプラリー﹂の構築にも努力している︒そこで︑これらの特徴を生かしながら蔵書の充実
をはからねばならない︒その上︑近年新しい学問の進展に伴って情報収集の領域が拡大し多様化しつつあるが︑そう
また︑質の高い学術情報を収集するためには収書方針の見直しと収集体制の確立が必要となる︒根本的な収書方針
の策定は︑遡及入力がほぼ完成した段階でおこなうことになろうが︑図書館の特色をなすコレクションの充実と︑や
や弱体な外国図書の充実に力を入れながら︑当面は二
0
0
万冊規模の図書館に発展させるべく努力したいと思ってい第三の重要な課題は︑資料保存の問題であり︑利用と保存をいかに両立させてゆくかという問題であろう︒すでに
われわれは明治期資料マイクロ化事業を手がけてきたが︑危機に瀕しているのは明治期の資料ばかりではない︒した
がって︑保存のための努力をその後の時代にも拡大してゆかねばならない︒特に︑戦中︑戦後間もなくの資料の劣化 かねばならない︒
‑ 5 ‑
めの開発に努めてゆくつもりである︒ が
著し
く それらの保存にも力を入れてゆかねばならないのである︒先にも述べたように︑新図書館は利用中
心の図
書館へと脱皮した︒しかし︑利用すればするほど本は傷む︒利用と保存の問題は極めて困難な問題を含んでいるが︑
これに今後精力的に取り組んでゆかねばならないと考えている︒
の幅広い学術情報を提供するため﹁
WINE﹂
の開
発や
︑ 第四の問題は︑遡及入力の推進と図書館システムの整備である︒われわれは︑情報の一元化を目指し︑正確で高度
収蔵する和書・洋書および雑誌の遡及入力に努めてきた︒
既に遡及を完了したデータ数は約四
0
万にのぽる︒大正期以後の和書の遡及入力は来年四月に完了し︑今後は︑
期以前の図書や貴重書・外国図書の遡及入力に並行して︑文学部戸山図書館の蔵書の遡及入力をおこなう予定であり︑
さらには本部キャンパス内の各箇所にある図書の遡及入力に着手することになろう︒また各分館はもとより全学の各 図書室や研究室を結ぶネットワークの整備に全力をあげて取り組むとともに︑利用者の情報検索機能を向上させるた 第五は︑優秀な人材の育成とサービスの向上である︒人材の育成は︑
明治
図書館にとっても最大の課題であるばかりで なく最も難しい問題の︱つであろう︒しかも︑大学図書館の機能が大きく変わりつつある︒これからの図書館員には︑
書誌的知識に加えて︑ますます学術専門知識や技術的知識︑
さらには豊富な経験やセンスが要求されよう︒大学図書 館にはどんな人材が必要か︑これからの情報化時代に対応できる人材はどうしたら育成できるかを考えながら
︑この
問題に対処していかねばならない︒人材の育成には︑図書館学の習得︑勉強会や正規のコ
ー
スによる専門的知識の学 習︑外国を含む外部での研修
日常業務などをフルに活用するとともに︑これらを組織的に結びつけて︑育成を効果 的活発に展開してゆくつもりであるが︑このことは必ずやサービスの質的向上にもつながるに違いない︒
第六に必要なことは館蔵資料の公開である︒先にも述べたように︑
わが図書館には数々の貴重な資料が蓄積されて
ー 6ー
新中央図得館1回顧と展望
画展示にも力を入れてゆくことも考えている︒
一方では︑学術情報の
︶れからは新収の賞重な資料を次々に展示してゆくとか︑テーマ別の企
いる︒これを広く公開し利用に供してゆくことも今後の重要な課題であろう︒すでに﹁館蔵査料影印叢書﹂
着手
し︑
また
︑
の刊行に
ここ数年いくつかの展院会を開催してきた︒新図書館には常設の展示場や
A
Vホールその他が設けら
れている︒これらの施設を利用して恒常的な資料の展示や視聴覚資料の公開を計画している︒すでに︑会議場で開か れた学会関係の展示会などをおこなったが︑
後最
に︑
これからの大学図書館にとって重要と思われる点を四つ挙げておこう︒
その︱つは︑情報化時代に対応しうる学術情報の収集と整理︑その利用に必要な体制を築いてゆくことである︒そ のためには︑情報関連の技術や新たな形態の多様な資料の収集にも力を入れてゆかねばならないであろう︒もっとも 真に知るに値するもののみを選択してゆかねばならないという非常に難しい問題を含んでいるが︒またそれと同時に︑
新図書館は︑情報基地として︑情報システムセンターとも協力しながら︑
全学の学術情報の一元化に努めるとともに︑
外部にも開かれた情報ネットワークの整備を更に前進させてゆかねばならないであろう︒
二つ目は︑他大学の図書館との交流であり︑相互協力を一層押し進めることである︒今日 急激な増大︑図書や雑誌の価格の高騰があり︑他方では︑学問分野の流動化︑境界領域の学問の発展︑専門分化の進 展などがあるが︑こうした様々な要因によって︑個々の大学図書館では︑その大学の研究者が求める学術資料を十分 に揃えることが不可能になっている︒研究者のニーズを満たすためには︑資料の分担収集や相互貸借をはじめ︑
さま
ざまな形態の広範囲の協力関係を組んでゆかねばならなくなっている︒早稲田大学図書館では︑これまでも慶應義塾 大学の図書館をはじめ多くの大学図書館との間で資料の相互貸借を行ってきた︒しかし︑学術情報の今後の急速な発 展を考えると︑
ますます多くの大学図書館間とのネットワークの整備が必要となるであろう︒そこで︑国立・公立・
‑ 7 ‑
目下進行しつつある情報化時代に対応できる機能をも果たしうる図書館を目指して︑学内外︑さらには世界の大学図
書館とも手をたずさえ︑真に﹁学術情報センター﹂の名に相応しい新たなライブラリー像を求めて前進してゆくこと
である︒つまり︑壮大な建物に相応しい内容を充実させ︑情報基地として︑ニ︱世紀における教育・研究体制をいか
にサポートしてゆくか︑これが新中央図書館の最大の課題となろう︒ 要するに 先進的に取り組んでゆきたいと考えている︒ 私立の区別を超えて︑これに大胆に取り組んでゆかねばなるまい︒
︵のぐちょうじ 三つ目は図書館の社会化である︒大学の使命は近年極めて複雑かつ多様になっている︒大学は研究者を接成するば
かりでなく︑大量に社会に貢献しうる人材を養成しなければならなくなっている︒その上︑大学が地域社会のなかで
果たすべき役割もますます大きくなりつつある︒生涯教育もその︱つであろう︒現在当図書館は︑早稲田の学生や教
員の必要にこたえるのが精一杯であるが︑将来はこの問題にも真剣に取り組んでゆかねばならないであろう︒
四つ目は︑国際化である︒今や学術情報収集の点でも図書館システムの点でも︑大学図書館は世界のさまざまな図
書館や情報センターと提携せざるをえなくなっている︒世界各地の大学図書館との交流を深めながら︑情報の交換に
一方では従来の図書館の持つべき機能を完全に果たしながら︑他方では︑電子メディアの発展をふくむ
図書
館長
︶
‑ 8ー