早稲田大学審査学位論文 博士(スポーツ科学)
概要書
球技系競技における効果的なハーフタイム・
リウォームアッププロトコルの検討
The practical and effective protocol of half-time re-warm up in intermittent team sports
2019年1月
早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科 柳岡 拓磨
YANAOKA, Takuma
研究指導教員: 広瀬 統一 教授
本 論文 で は、 球技 系 競技 にお け る後 半開 始 直後 の高 強 度運 動パ フ ォー マン ス の維 持も し くは向上に効 果的な短 時間の ハーフ タイム・リウォームア ップ(RW)のプロトコ ルおよ び RWが高強度運動パ フ ォーマンスに 影響を与 えるメカニズ ムを明ら かにすること を目的に 、 3 つの研究を実 施した 。本論文 は以下の研 究 成果を基に執 筆された(第2 章:Yanaoka et al., J Sports Sci Med. 17: 269-278, 2018、第 3 章:Yanaoka et al., J Strength Cond Res. In Press.)。
1 つ目の研究( 第 2 章 )では、RWの運動時 間 に着目し、 最大心拍 数(HRmax) の 70%の 強度で 3 分間 (3 min RW) および 7 分間(7 min RW)のサイク リ ング運動を 行 う RWが 自 転車 運動 で 評価 する 間 欠性 スプ リ ント パフ ォ ーマ ンス に 与え る影 響 を検 討し た 。 健 康な 若 年成人男 性 13 名を対 象に 3 試行の 無作為化 交差試験を実 施した。本試験では、被験者 は 40 分間 の間 欠 性自 転 車運 動の 後、 異 なる 3 条件( ①安 静 座位 を 保つ コン トロ ー ル試 行 、②7 min RW 試行、③3 min RW 試行)の 15 分間 のハーフタイ ムを実施 し た。ハー フタイム 終 了 後、 間欠性ス プリント パフォーマン スを評価 するため に Cycling Intermittent-Sprint Protocol
(CISP)を 40 分間行 った。また メカニズ ム の検討として 、エネ ル ギー代謝 、外側広筋 の 筋 酸素動態を測 定した。CISP 中の 5 秒間 のス プリントにお ける仕事 量は、CISP 開始直 後 10 分間におい て 7 min RW試行、3 min RW 試行でコントロ ール試行 と比較し有意 な高値を 示 した(p < 0.05)。CISP 開始直後の 10 分間において、ス プリント 中の平均仕事 量とスプ リ ント後のアク ティブリ カバリー 中の 酸化ヘモ グロビン 濃度(Δoxy-Hb)の間 に正 の相関関 係 が認められ(r = 0.52, p < 0.05)、同時間帯 に おいて Δoxy-Hbは 7 min RW試行 、3 min RW 試 行でコントロ ール試行 と比較し有意 な高値を 示した(p < 0.05)。従 って、3 min RW は 7 min RW と同等の CISP 開 始後 10 分間の間欠性 スプリントパ フォーマ ンス向上効果 を有する こ とが 明ら か にな り、 活 動筋 にお け る酸 素利 用 性の 向上 が 本研 究に お ける 間欠 性 スプ リン ト パフォーマン ス向上 の メカニズムの 一つとし て考えられる 可能性が 示された。
2 つ目の研究(第 3 章)では 、RWの運動 強度に着目し 、最大 酸 素摂取量(VO2max)の 30%
(30% RW)および 60%(60% RW)の強度 で 3 分間の自 転車運動 を 行う RWが自転 車運 動 で評 価す る 間欠 性ス プ リン トパ フ ォー マン ス に与 える 影 響を 検討 し た。 健康 な 若年 成人 男 性 11 名を対象 に 3 試 行の無作為化 交差試験 を実施した。 第 2 章と 同様の 40 分間 の間欠 性 自転車運動の 後、異な る 3 条件(①安 静座 位を保つコン トロール 試行、②60% RW 試行 、
③30% RW 試行)の 15 分間の ハーフタイ ム を実施し、そ の後 CISPを用いて 間欠性ス プ リ ント パフ ォ ーマ ンス を 評価 した 。 ま た メカ ニ ズム の検 討 とし て、 エ ネル ギー 代 謝に 付け 加 えて、筋 活 動および 皮 膚温から推定 した 筋温 を測定した 。CISP 中 の 5秒間のス プリント に
おける仕事量 は、CISP 開始直後の 10 分間 において 60% RW 試 行、30% RW 試行でコ ント ロール試行と 比較し有 意な高値を示 した(p < 0.05)。CISP 開始直 後の 10 分間にお いて 、 表面筋電図の 筋放電量 は 60% RW試行、30% RW試行でコント ロ ール試行と比 較し有意 な 高値を示した (p < 0.05)。従って、30% VO2maxの強 度の RWは60% VO2maxの 強度の RWと 同等の CISP 開始 後 10 分間の 間欠性 スプリ ント パフォー マンス向 上効果を有す ることが 明 らか にな り 、筋 活性 の 向上 が 本 研 究に おけ る 間欠 性ス プ リン トパ フ ォー マン ス 向上 のメ カ ニズムの一つ として考 えられる可能 性が示さ れた。
3 つ目の研究( 第 4 章)では 、RWの構成 に着目し、同一 エネル ギー消費量で あると概 算 される 3 分×30% VO2max(3×30% RW 試行)および 1 分×90% VO2maxの強度 (1×90% RW 試行) でサイ クリング 運動を実施す る RW が自転車運動 で評価す る間欠性スプ リントパ フ ォーマンスに 与える影 響を検討した 。健康 な 若年成人男 性 12名を 対象に 3 試行 の無作為 化 交差試験を実 施した。第 2章と同様 の 40 分 間の間欠性自 転車運動 の後、異な る 3 条件( ① 安静座位を保 つコント ロール試行、 ②3×30% RW 試行、③1×90% RW試行)の 15分 間の ハーフタ イムを 実施し 、その後 CISP を用い て 間欠性 スプリ ントパ フォーマ ンスを 評価し た。 また メ カニ ズム の 検討 とし て 、 エ ネル ギ ー代 謝、 筋 活動 およ び 筋温 に付 け 加え て、 深 部体温を測定 した。CISP中の 5 秒間のスプ リントにおけ る仕事量 は、CISP 開始直後 の 10 分間におい て 3×30% RW 試行、1×90% RW 試行でコントロー ル試行と比較 し有意な 高値 を示した(p < 0.05)。CISP 開 始直後 の 10分間において、 表面筋電 図の筋放電量 は 3×30%
RW 試行でコ ントロー ル試行と比較 し高値を 示す傾向が認 められ(p = 0.06)、中央 周波数 は 1×90% RW 試行でコ ントロール試 行、3×30% RW試行と比較 し 有意な高値を 示した(p <
0.05)。従って、3×30% RWおよび 1×90% RWは同等 の CISP開 始後 10分間の 間 欠性 スプ リントパフォ ーマンス 向上効果を有 すること が明らかにな り、筋活 性の向上(3×30% RW 試行:筋放電 量の増加 、1×90% RW:動員 順序のより高 い運動単 位の動員増加 による周 波 数の 上昇 ) が本 研究 に おけ る 間 欠 性ス プリ ン トパ フォ ー マン ス向 上 のメ カニ ズ ムの 一つ と して考えられ る可能性 が示された。
第 2 章から第 4 章で 用いた 2 つの RW試行 間に全ての研 究で有意 な差が認めら れなかっ たことから、 本研究で 用いた全て の RW プロトコルは同 様の間欠 性スプリント パフォー マ ンス向上効果 を有する 可能性が示唆 され た。本研究で検討 した RWプロトコルで は、RWの ために確保で きる時間 によって、1 分 間・90% VO2maxもしく は 3 分間・30% VO2maxの 強度 で行う RWを使い 分け ることが推奨 されると 考えられる。