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食文化の継承のための活動137 第 3 節専門調理師等の活用における取組 第 3 節専門調理師等の活用における取組 食事作法や伝統的な行事食等 我が国の豊かな食文化を普及 継承していくためには 高度 な調理技術を備えた専門調理師等を活用しながら 料理教室や体験活動 各種行事等を推進する必要があります

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第1節

ボランティア活動等における取組

食生活が多様化する中で、地域の郷土料理や伝統食等の食文化を大切にし、次の世代へ継承 を図るため、地域の食生活改善推進員等のボランティアによる食文化の継承に関する活動が行 われています。一般財団法人日本食生活協会では、全国の食生活改善推進員により全国の郷土 料理と食文化に関する情報を収集し、平成 15(2003)年には「長寿日本・伝承の味~郷土料 理と食文化~」を編へん纂さんしています。各道府県では、地域の食生活改善推進員協議会と協働しな がら、郷土料理や食文化の伝達を行っています。 また、郷土料理や食文化の継承の手段の一つとして、食生活改善推進員が地域において開催 する「おやこの食育教室」などで子供とその保護者と一緒に郷土料理をつくる体験学習が行わ れています(事例:食生活改善推進員による食文化継承の取組 参照)。

第2節

学校給食や行事、シンポジウム等における取組

1

学校給食における伝統的な食文化を継承した献立の活用

郷土料理や行事食等の地域に根ざした伝統的な食文化は、その土地の産物を使って独自の料 理法で作られ、食べ継がれてきたものであり、これらを学校給食の献立として提供すること は、子供たちが地域の自然や文化、産業等に関する理解を深める上で有効な手段となります。 現在、各地において学校給食の献立に郷土料理、行事食等が取り入れられています。 また、日本の食文化についての理解を深めるとともに、住んでいる地域の食文化が他の地域 と比べどのような特徴を持っているかを知る観点から、他地域の郷土料理やそれらに使用され ている地場産物等を学校給食の献立に活用することも有効です。

2

行事やシンポジウム等における我が国の伝統ある食文化等の紹介や体験の盛り込み

国民の各種文化活動を全国規模で発表、交流することを目的として毎年開催している国民文 化祭において、地域の食文化等に関する行事を実施しています。平成 27(2015)年 10 月 31 日~ 11 月 15 日に鹿児島県で開催された「第 30 回国民文化祭・かごしま 2015」では、食に 関する事業を鹿児島県内各地で開催しました(事例:地域の食文化の継承(第 30 回国民文化 祭・かごしま 2015)参照)。

食文化の継承のための活動

第 2 部

第 6 章

章 食文化の継承のための活動 136

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第3節

専門調理師等の活用における取組

食事作法や伝統的な行事食等、我が国の豊かな食文化を普及、継承していくためには、高度 な調理技術を備えた専門調理師等を活用しながら、料理教室や体験活動、各種行事等を推進す る必要があります。 内閣府認定公益社団法人全日本司厨士協会は、各地の保育所・幼稚園・小学校での親子料理 教室などのイベント開催や東日本大震災の被災地や各地の福祉施設での継続的な慰問活動な ど、総合的な食育の推進・普及を実施しています。また、世界のシェフ団体と連携し、毎年 10 月 20 日をシェフズディとしており、平成 27(2015)年には本年のテーマ「Healthy Kids - Healthy Future」に沿った活動を各地で開催しました。 人材育成においては、若手の調理師を対象とした料理コンテストを各地で実施し、調理技術 の向上のみならず、地産地消食材を使用するなど、広く日本における西洋料理の発展、食生活 改善やその進展に寄与し、青年司厨士フォーラムや若い調理師対象の勉強会を多数開催すると ともに、公邸料理人の育成のためにもその情報提供とともに和食団体との共催で講習会を開催 するなど、多方面での食育推進に力を入れています。さらに、航空自衛隊の目黒基地内での調 理スタッフとの意見交換会や協会会員が在籍する大型ホテルでの調理場見学会などを開催し、 相互の食育への理解を進めています。今後は、世界のシェフ団体 World Association of Chefs Societies(世界司厨士協会連盟)の加盟国の日本代表として、平成 28(2016)年度は 9 月に ギリシャ共和国での 105 か国の加盟国が集まる世界会議への参加、さらに、10 月にはドイ ツ・エアフルトで開催される Culinary Olympics(世界料理オリンピック)にナショナルチー ムを編成しての参加を予定しています。これらの活動は、会報誌やインターネットを通じて広 く調理師及び専門調理師の皆様にも情報を伝える予定です。 公益社団法人日本調理師会では、食を通じて親子の心の触れ合いを図り愛情を深めるととも に、地産品を主な食材とした手作り弁当により子供の味覚を育み、もって食育の推進に寄与す ることを目的に、平成 27(2015)年度に「第 6 回全国こどものための愛情弁当コンテスト」 を開催しました。本コンテストには、全国から、育ち盛りの子供たちに食べさせてあげたい地 域の特産品を用いたお弁当レシピが多数寄せられました。 また、東海三県(愛知県、岐阜県、三重県)の各調理師会による合同展の他、千葉県、長野 県の調理師会において地産の食材を使った伝統的な日本料理や郷土料理を主とし、その他西洋 料理・中国料理等の部門を含めた料理コンクールを開催し、日本古来の伝統料理の伝承や地産 地消の推進について広く普及啓発しています。 こどものための愛情弁当コンテスト最優秀作品 郷土・ヘルシー・創作部門 日本調理師会長賞千葉県調理師会料理コンクール 第

章 食文化の継承のための活動 137 第 3 節 専門調理師等の活用における取組

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第4節

情報の発信

日本の食文化について解説したガイドブックの作成及び配布や、「日本全国こども郷土料理 サミット」の開催など、日本食文化の理解醸成を推進しました。 さらに、国産農林水産物の消費拡大に向けた優良な取組を顕彰する「フード・アクション・ ニッポン アワード」において、地域の食文化を保護し継承していく取組や食文化を活用して 地域の活性化を促している取組等を表彰しました。

子供たちに対する調理師による「つくる」ことを通じた食育の推進

内閣府認定公益社団法人 全日本司厨士協会 全日本司厨士協会総本部では、一般社団法人ニュートリション運動推進会議子どもの健康づくり委 員会と共催し、東京都荒川区の小学校 5 年生 148 名を対象に、会長及び副会長による特別講演会と 東京地方本部の協力により 4 クラス同時の体験授業を行いました。 東京地方本部では、東京都豊島区の勤労福祉会館にて東日本大震災の影響で豊島区に避難されてい る被災者の方々に昼食会「第 6 回としま地域交流のつどい」を開催しました。 関東総合地方本部では、千葉県富津市にて小学校 6 年生 46 名を対象に、シェフ 17 名が参加し、砂 糖を使わないデザートの料理体験を行いました。メニューはフルーツポンチです。スイカ、梨、キウ イフルーツの甘さとミネラルウォーター、メープルシロップを使いました。生徒は興味津々で、我先 にと調理をしたがる姿勢が印象的でした。 北関東地方本部では、昭和 45(1970)年から続く高崎市の児童養護施設への慰問活動を行い、ク リスマスの食事会を通して食事の素晴らしさを伝えています。 また、西日本地方本部では、熊本市の保育園で園児 108 名分の料理を提供し、シェフと一緒にバ ター作り体験やケーキのデコレーション体験を行いました。料理を作る人や生産者への感謝の気持ち を忘れずに「ありがとう」「いただきます」をきちんと言いましょうとシェフから園児に話をすると みんな一生懸命聞いていました。 クッキングデモンストレーションの様子 千葉県富津市の小学校での砂糖を使わないデザート作り体験授業

事 例

章 食文化の継承のための活動 138

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食生活改善推進員による食文化継承の取組

一般財団法人 日本食生活協会 ①ふるさと料理教室の開催(静岡県協議会) 幼児と保護者、小・中学生を対象に、今年は「だし」に ついて学ぶこととし、だしの取り方、だしの色々な違いに ついて体験しました。種類や効果、そして郷土料理の歴史 や文化などにも触れ、いままでに知らなかっただしについ て学習しました。だしをしっかり取る事で「減塩」につな がり、それが健康的な食生活につながる事を多くの人々に 伝えています。 ②高校へ郷土料理出前講座(岐阜県瑞みず浪なみ市協議会) 瑞浪市協議会では毎年、市内の県立高校の家庭科教諭の依頼により、郷土料理を教えに出向いてお り、今年は「箱寿司」と「からすみ」に挑戦しました。次世代に地元の料理を伝えることは大切です。 瑞浪市は、食塩摂取量が高いこともあり郷土料理にも「減塩」という目線を取り入れ、高校生と減 塩について一緒に考えて未来へとつないでいます。 地元に伝わる箱ずし 和菓子「からすみ」 和菓子「からすみ」の実習風景 生活福祉科の生徒と共に

事 例

ふるさと料理教室 第

章 食文化の継承のための活動 139 第 4 節 情報の発信

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③食の魅力いっぱいの富山県(富山県協議会) 富山県は四方を山と海に囲まれているので山の幸、海の幸に恵まれ食べ物がとてもおいしいところ です。特に、「三世代ふれあいクッキングセミナー」では、三世代の同居率が高いこともあり、公民 館に三世代で集まってもらい長寿のための食事など健康によい食事の紹介や実習を行い交流を深めて います。 富山の料理一品 富山県の郷土料理 ④親子の食育教室でいわしの手開き体験(愛知県協議会) 親子の食育教室の実習では、ごはん食にもパン食にも合う、簡単でおいしい地元の食材を使って 3 つのグループに分かれて実習を行いました。今では親ともども経験のない「いわしの手開き」を子供 達に体験してもらいました。「気持ちが悪い」と言いながら恐る恐る手にする子もいましたが食べて みると「骨までパリパリで美味しい」と大好評でした。 いわしの手開きに挑戦 第

章 食文化の継承のための活動 140

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2015年ミラノ国際博覧会で日本の農林水産業や

食文化を世界に発信

イタリアで開催された「2015年ミラノ 国際博覧会」(以下「ミラノ万博」とい う。)は平成27(2015)年5月1日に開幕し、10月31日まで の184日間、万博としては初の「食」をテーマに開催されま した。我が国はミラノ万博を日本の農林水産業や食文化を世 界に発信する重要な機会と捉え、農林水産省及び経済産業省 を幹事省、国土交通省を副幹事省、独立行政法人日本貿易振 興機構(JETRO)を参加機関としてこれに参加しました。 日本館は、日本の農業、食と食文化、伝統文化について、最新のテクノロジーを駆使して展示を行 い、それぞれ、触って、動かして、あるいはスマートフォンにデータをダウンロードするなど、ただ 観るだけでなく、来場者に楽しみながら日本の農林水産業や食文化への理解を深めてもらえる場とし ました。また、「イベント広場」では、58の地方公共団体や各種団体の参加によって各地の特産物や 食文化等を紹介しました。三重県からは、県立相おう可か高等学校の生徒が実演を行い、魚をさばいたり、 だしを取る様子などを披露しました。また、福井県からは、小浜市が「キッズキッチン」を出展し、 イタリアの子供たちに和食の定番であるみそ汁やおむすび作りを体験してもらい、我が国の食育の取 組を世界にアピールしました。 三重県立相おう可か高等学校の生徒による 「にぎりずし」の実演 小浜市が出展した「キッズキッチン」 日本館は開催期間中に総来場者数の1割強に当たる228万人が来館し、最も人気のあるパビリオン の一つとなりました。また、博覧会国際事務局が主催し、優秀なパビリオンを決定する褒賞制度(パ ビリオンプライズ)において、日本館は展示デザイン部門で「金賞」を受賞しました。これは、5年 ごとに行われる大規模の博覧会において日本館として史上初の快挙です。

TOPICS

トピックス 行列の絶えない日本館 第

章 食文化の継承のための活動 141 第 4 節 情報の発信

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地域の食文化の継承 (第 30 回国民文化祭・かごしま 2015)

文化庁では都道府県等と共催で、国民の文化活動への参加意欲に応えるとともに、文化活動の水準 を高めるため、国民一般が行っている各種の文化活動を全国的規模で発表、競演、交流する場として 国民文化祭を昭和 61 年度から毎年開催しています。 平成 27(2015)年 10 月 31 日から 11 月 15 日までの 16 日間にわたり開催された「第 30 回国民 文化祭・かごしま 2015」では、鰹や本格焼酎、黒豚、お茶など、地元の食材を使った郷土料理を通 じ、鹿児島の豊かな食文化を紹介するイベントや交流会が開催されました。 これらのイベント等には、地元の子どもから大人までのほか、県内外からも多くの方々が来場し、 世代を問わず地域の食文化に触れ、その豊かさや良さ、大切さを学ぶ機会となるとともに、次代への 食文化継承につながる契機となりました。 県主催事業 ○ウェルカムイベント~ようこそ かごしま国文祭へ!かごしま魅力たっぷりフェスタ~(10 月 30 日・31 日 鹿児島市) 郷土料理のほか、地元食材を生かした新たな丼等が出展され、これまで地元に根付いてきた食文化 を再認識するとともに、新たな食文化等が創造される機会を提供し、2 日間で計 1 万 2 千人もの来場 者で賑わいました。 ○シンポジウム「温泉文化と食文化」(11 月 6 日 指宿市) 「健康」をキーワードに、温泉と食の魅力を、観光、おもてなしと併せて議論しました。会場内に 設けた「食のエリア」では、地元指宿市の特産加工品等の振る舞いにより、参加者へのおもてなしを 行いました。 ○暮らしと共生・生活文化のフェスティバル(11 月 14 日・15 日 鹿児島市) 鹿児島県商店街グルメ No.1 決定戦の地方大会をはじめ、鹿児島県の「本物。」の食材や新特産品な ど、鹿児島らしいうまかもんを提供しました。また、かごしま国文祭に合わせて開発された記念商品 も販売され、2 日間で 4 万 2 千人もの来場者で賑わいました。 市町村主催事業 ○国民文化祭 in いちき串木野「食の祭典」(11 月 7・8 日 いちき串木野市) 「食のまちづくり条例」を制定するなど、食育にも熱心に取り組むいちき串木野市では、同市出身 のイタリアンシェフを招き、料理の実演やトークショーなどを開催しました。この他、食に関するパ ネル展示や、健康レシピの紹介、食を中心として特産品販売を行い、2 日間で 8 万 7 千人を超える来 場者で賑わいました。

事 例

章 食文化の継承のための活動 142

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○「かつおと焼酎」食と文化の祭典 (10 月 31 日・11 月 1 日 枕崎市) 鰹節生産量日本一を誇る枕崎市から、和食の基本となる出だ汁しにちなんだ食文化と、焼酎にまつわる 文化を幅広く全国に向けて発信するため、出汁取り実演や講演会などを開催し、2 日間で約 1 万 4 千 人の来場者で賑わいました。 ○食の祭典 in 霧島 (11 月 7・8 日 霧島市) 霧島の食材を使った料理コンテスト、霧島千人鍋、黒豚の試食や黒酢ぶり料理等のワークショップ など、霧島の食文化を五感で楽しんでいただきました。2 日間で約 2 万 8 千人の来場者で賑わうとと もに、地元食材を後世に受け継いでいくことの大切さを認識できる貴重な機会となりました。 ○たるみずふれあいフェスタ 2015~食・焼酎・いで湯の郷~(10 月 31 日・11 月 1 日 垂水市) 垂水市の特産物である海山の食材や新商品、郷土料理等を試食しながら楽しいトークショーを展開 しました。また、ブリ・カンパチ、さやいんげんや焼酎、飲む温泉水、新開発した商品などを展示・ 即売することで垂水市の食の文化を全国に発信し、2 日間で 1 万人を超える来場者で賑わいました。 ○元気だ!そおグルメコンテスト (11 月 3 日 曽そ於お市) 曽そ於お市産黒豚等の食材を使用した、グルメコンテストを開催しました。また、料理研究家を招いて 曽於市の食材を使いながら、食についての講演、試食を行い、約 8 千人の来場者で賑わいました。 ○ゆるキャラ ® &大鍋フェスタ(11 月 8 日 さつま町) 地元さつま町の「ちくりん鍋」をはじめ、東北地方を含む全4団体の大鍋の魅力と味を堪能してい ただきました。それぞれの地域の食の文化を体験していただき、約 2 万人の来場者で賑わいました。 ウェルカムイベント シンポジウム「温泉文化と食文化」 /イタリアン料理の実演&トークショー国民文化祭inいちき串木野 「かつおと焼酎」食と文化の祭典 /出汁取り実演 食の祭典in霧島/豆腐作りワークショップ ゆるキャラ®&大鍋フェスタ 第

章 食文化の継承のための活動 143 第 4 節 情報の発信

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「和食」の日(11 月 24 日)のイベントについて

平成25(2013)年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され たことを契機として、和食文化の次世代への継承に向けた国民的な機運を醸成していくことが重要と なっています。「食」をテーマに開催された「2015年ミラノ国際博覧会」でも、日本館に総来場者数 の1割強に当たる228万人が来館するなど、「和食」の人気は世界に広がっていますが、その一方で 国内では、海外の食文化の流入や核家族化など社会情勢の変化等により、和食文化の存在感は薄れつ つあります。 こうした中、実りの秋の季節に和食文化の大切さを再認識するきっかけとなるようにと願いを込め て、「11月24日」が“い1 い1 日2 本食4 の日”、「和食」の日として制定され、様々なイベントが開催され ています。平成27(2015)年の11月24日は、和食文化の保護・継承に取り組む一般社団法人和食 文化国民会議により、和食の基本である「だし」が感じられる和食給食を提供する「だしで味わう和 食の日」の活動が行われ、全国から約2,000校の小学校等が参加しました。森山農林水産大臣も東京 都中央区立泰たい明めい小学校を訪問して、児童たちと一緒に和食給食をいただきながら、和食文化の大切さ を伝えました。 また、前日の11月23日には、国際連合大学(東京都渋谷区)にて「第3回 日本全国こども郷土料 理サミット」(農林水産省主催)が開催されました。全国の小学校から「調査・発表部門」及び「お えかき部門」に合計1,000件近くの応募作品が寄せられ、当日は全国の各ブロック代表の9名の小学 生がそれぞれのふるさとや家庭の郷土料理について発表を行いました。 今後も、家庭や学校、地域など様々な場で、日本人の伝統的な食文化である和食文化を次世代の子 供たちへ受け継ぐための食育活動が行われていくことが期待されます。

コラム

「いただきます」と発声する農林水産大臣と児童 第3回日本全国こども郷土料理サミット 第

章 食文化の継承のための活動 144

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第1節

リスクコミュニケーションの充実

1

リスクコミュニケーションの推進

平成 15(2003)年 7 月 1 日の食品安全基本法の施行により、有害な微生物や化学物質等の 食品に含まれる危害要因を摂取することによって人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある場合 に、その発生を防止し、又はそのリスクを適切なレベルに低減するための枠組である「リスク アナリシス」が導入されました。 リスクアナリシスは「リスク評価」、「リスク管理」及び「リスクコミュニケーション」の三 つの要素から成っています。この枠組に基づき、リスク評価機関である食品安全委員会と、リ スク管理機関である厚生労働省、農林水産省、消費者庁等が連携・協力して、食品安全行政を 展開しています。 このうち、リスクコミュニケーションについては、リスクアナリシスの全過程において、消 費者・生産者・食品関連事業者・行政等の関係者間での意見交換を行うとともに、パブリック コメント等を行うことにより公正性や透明性を確保し、国民の意見をリスク評価やリスク管理 措置の決定に反映させています。また、食品の安全性に関する国民の知識と理解を深めるた め、各種会合や資料を公開するほか、意見交換会の開催、意見・情報の募集、ホームページ、 メールマガジン、Facebook 等による情報発信等を行っています。

2

意見交換会

食品の安全性等に関するリスクコミュニケーションの取組の一つとして、消費者庁、食品安 全委員会、厚生労働省及び農林水産省等が連携して、消費者等を始めとする関係者間での意見 交換会を開催しています。 平成 27(2015)年度には、昨年度に引き続き、関係府省で連携し、平成 23(2011)年度 から重点的に取り組んでいる食品中の放射性物質対策に関する意見交換会を、地方公共団体の 協力を得ながら、全国各地で開催しました。 また、農薬について、消費者にその登録制度、基準設定の考え方や安全確保について理解を 深めていただくため、専門家や関係府省担当者から情報を提供し、生産者・消費者を交えて参 加者との意見交換を行う意見交換会「食品に関するリスクコミュニケーション―知ろう、考え よう、農薬のこと―」を関係府省で連携して開催しました。

食品の安全性等に関する

情報提供の推進

第 2 部

第 7 章

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 145

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夏場には、一般的な食中毒予防のポイントや牛肉・牛レバー・豚肉等の生食のリスクを消費 者に正しく理解していただくことを目的として、「食中毒予防に関する意見交換会~食中毒予防 のポイントを学ぼう~」を関係府省で連携して開催しました。また、冬場を前にして、流行が見 込まれるノロウイルスに焦点を当て、その特徴を理解し、食中毒を予防するためのポイントや適 切な手洗いの方法等について理解を深めていただくため、「食品に関するリスクコミュニケー ション~ノロウイルスによる食中毒を予防しましょう~」を関係府省で連携して開催しました。 いわゆる「健康食品」については、その安全性や、機能性等の特性を理解し、消費者に適切 に利用していただくことを目的とし、「食品に関するリスクコミュニケーション 健康食品の 安全性や機能性に関する意見交換会」を関係府省で連携して開催しました。 なお、意見交換会で使用した資料や議事録は、関係府省のホームページにおいて公開してい ます。 消費者庁では、地方公共団体や消費者団体等と連携しながら、消費者の身近なリスクと安全 について、消費者、事業者、専門家等の情報共有・理解促進のための意見交換を実施していま す。平成 27(2015)年度も引き続き、食品中の放射性物質に関するリスクコミュニケーショ ンに重点を置き、関係府省、地方公共団体等と連携し、消費者が正確な理解に基づき行動でき るよう、また、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害の防止の観点も踏まえ、意 見交換会等を実施しました。加えて、昨年度同様に、「コミュニケーター(地域において食品 中の放射性物質に関する正確な情報発信ができる者)」に対し、ウェブサイトを活用した情報 提供やメールマガジンの配信等の各種支援を行いました。 食品安全委員会では、毎年度策定する食品安全委員会運営計画に基づき、食品安全委員会が 行うリスク評価結果等への理解の促進等のため、食中毒、食品添加物、農薬等をテーマとして 取り上げ、地方公共団体とも連携しつつ、意見交換会を開催しました。また、食育の一環とし て消費者に対する食品安全教育のため、地方公共団体等への積極的な講師派遣、マスメディア や消費者などとの懇談会等を実施し、積極的な情報提供や意見交換に努めています。さらに、 いわゆる「健康食品」に関するメッセージを公表して、一般消費者を対象とした説明会を開催 しました(コラム:いわゆる「健康食品」に関するメッセージ 参照)。 意見交換会で使用した資料や議事概要は食品安全委員会のホームページにおいて公開してい ます。 厚生労働省では、消費者に食品の安全性確保について理解を深めていただくために、輸入食 品等についての意見交換会を開催するほか、地方厚生局及び検疫所において施設見学等を含む 意見交換会を開催しました。また、地方公共団体等が主催する意見交換会や講習会等の機会を 活用し、情報・意見の交換に努めています。また、「子ども見学デー」において、子供を対象 に食の安全について学ぶきっかけになるよう、食の安全に関するクイズや輸入コーヒー豆のサ ンプリング体験、手洗い方法や宇宙食の安全性等に関する講習等を実施しました。 農林水産省では、本省、地方農政局等において消費者との懇談会、消費者や事業者への説明 会等の開催を通じて、食品の安全確保に係るテーマや動植物の防疫等について積極的な情報提 供に努めています。 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 146

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意見交換会の様子 図表-72  平成27(2015)年度における意見交換会の主な開催テーマ ・食品中の放射性物質対策(消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省) ・農薬の必要性・安全性(消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省) ・ノロウイルス等による食中毒予防(消費者庁、厚生労働省) ・健康食品の安全性・機能性(消費者庁、厚生労働省、農林水産省) ・リスク評価結果等:食中毒・食品添加物・農薬、いわゆる「健康食品」(食品安全委員会) ・輸入食品の安全性確保(厚生労働省) ・HACCPに基づく衛生管理(厚生労働省) ・動物検疫(農林水産省) 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 147 第 1 節 リスクコミュニケーションの充実

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いわゆる「健康食品」に関するメッセージ

近年、いわゆる「健康食品」(以下「健康食品」という。)に関する情報がインターネット、テレビ、 マスコミ、書籍など、あらゆる媒体を通じて流通しています。このような中で、国民の半分程度の方 が「健康食品」を摂っています。一方、「健康食品」による健康被害が国内外で多く報告されています。 食品安全委員会は、平成27(2015)年6月、いわゆる「健康食品」に関する検討ワーキンググル ープを立ち上げて、科学的な観点から「健康食品」のリスクについて検討しました。要因ごとに科学 的事実を基に、「健康食品」による健康被害を避けるために、安全性の観点から国民が知っておくべ き事項を議論し、その結果を、同年12月8日、「報告書」として取りまとめるとともに、国民に向け て19項目からなる“いわゆる「健康食品」に関するメッセージ”、さらに、そのエッセンスを、食品 安全委員会委員長及びワーキンググループ座長から、「国民の皆様へ」(下記)として発信しました。 なお、平成28(2016)年1月28日、消費者を主な対象とした「いわゆる『健康食品』に関する説 明会」を開催し、メッセージの背景や内容の説明、質疑応答により、その理解の促進を図りました。 -国民の皆様へ- 「若さと健康を願うあなたに」、「△△の健康のための○○」といったキャッチフレーズを、毎日たくさ ん見聞きします。そして、医薬品のようにカプセルや錠剤の形をしたサプリメント、「健康によい」成分 を添加した飲料や食品など、さまざまな「健康食品」が売られています。今や国民のおよそ半分の方々 が、こうした「健康食品」を利用されているという調査もあり、「健康食品」市場が拡大しています。こ れは、健康で長生きしたいという古来変わらない人々の願望の表れでしょう。 「健康食品」がこのような願いに応えるものならばよいですが、残念ながら、現代でも「これさえ摂れ ば、元気で長生きできる」という薬や食品はありません。それどころか逆に、「健康食品」で健康を害す ることもあります。しかも、そのような情報は皆様の目に触れにくいのが現状です。消費者は、「健康食 品」のリスクについての情報を十分に得られないまま、効果への期待だけを大きくしやすい状態に置か れているといえます。 食品安全委員会ではこういった状況を憂い、幅広い専門家からなるワーキンググループを作り、「健康 食品」の安全性について検討しました。まず「健康食品」から健康被害が起こる要因を挙げ、次にその 要因ごとに、健康被害事例などを含めた文献などからの科学的事実を調べ、皆様に知っていただきたい 要点として取りまとめました。そうして作成した報告書からさらに抜粋して、皆様に向けて19項目のメ ッセージをまとめました。これらには「健康食品」で健康被害が出ることをなくしたいという本委員会 の願いを込めました。 その中でお伝えしたいことのエッセンスは次のとおりです。「健康食品」を摂るかどうかを判断すると きに、是非知っておいていただきたいことをまとめてあります。これらを読んで、「健康食品」について の科学的な考え方を持って、その判断をしてください。健康被害を避けるためにとても大切な知識です。 脇 昌子 佐藤 洋 いわゆる「健康食品」に関する検討ワーキンググループ座長 食品安全委員会委員長

コラム

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 148

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「健康食品」に関するメッセージのエッセンス

「健康食品」については、多くの人での何年にも及ぶ長期間の科学的研究が少なく、安全性や有効 性が確立しているとはいえません。「健康食品」を利用するかどうかはあなたの判断次第です。信頼 のできる情報を基に、あなた自身の健康に役立つ選択をしてください。 ※ ここでいう「健康食品」とは、「健康への効果やダイエット効果をうたって販売されている食品」を 言います。これには、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品も含まれます。また、 ここでは「サプリメント」とは、カプセル・錠剤・粉末・顆粒形態の「健康食品」を言います。 ■「食品」であっても安全とは限りません。 ・健康被害のリスクはあらゆる食品にあります。身近な「健康食品」にも健康被害が報告されていま す。 ・「天然」「ナチュラル」「自然」のものが、安全であるとは限りません。これは食品全般に言えること です。 ・栄養素や食品についての評価は、食生活の変化や科学の進展などにより変わることがあります。健 康に良いとされていた成分や食品が、その後、別の面から健康を害するとわかることも少なくあり ません。 ■多量に摂ると健康を害するリスクが高まります。 ・錠剤・カプセル・粉末・顆粒の形態のサプリメントは、通常の食品よりも容易に多量を摂ってしま いやすいので注意が必要です。 ■ビタミン・ミネラルをサプリメントで摂ると過剰摂取のリスクがあります。 ・現在の日本では、通常の食事をしていればビタミン・ミネラルの欠乏症が問題となることはまれで あり、ビタミン・ミネラルをサプリメントで補給する必要性を示すデータは今のところありませ ん。健全な食生活が健康の基本です。 ・むしろサプリメントからの摂り過ぎが健康被害を起こすことがあります。特にセレン、鉄、ビタミ ンA、ビタミンDには要注意です。 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 149 第 1 節 リスクコミュニケーションの充実

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■「健康食品」は医薬品ではありません。品質の管理は製造者任せです。 ・病気を治すものではないので、自己判断で医薬品から換えることは危険です。 ・品質が不均一、表示通りの成分が入っていない、成分が溶けないなど、問題ある製品もあります。 成分量が表示より多かったために健康被害を起こした例があります。 ■誰かにとって良い「健康食品」があなたにとっても良いとは限りません。 ・摂取する人の状態や摂取量・摂取期間によって、安全性や効果も変わります。 ・限られた条件での試験、動物や細胞を用いた実験のみでは効果の科学的な根拠にはなりません。口 コミや体験談、販売広告などの情報を鵜呑(うの)みにせず、信頼のできる情報(※)をもとに、 今の自分にとって、本当に安全なのか、役立つのかを考えてください。 ※ 食品安全委員会、医薬基盤・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」、厚生労働省 のインターネットサイトなど 〈参照〉 □食品安全委員会;「健康食品」に関する情報 https://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html □厚生労働省;「健康食品ホームページ」 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/ □国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所;「健康食品」の安全性・有効性情報 https://hfnet.nih.go.jp/

第2節

食品の安全性に関する情報提供

食品の安全性に関する情報については、消費者庁及び食品安全委員会が国民からの情報、食 品安全委員会及び厚生労働省(国立医薬品食品衛生研究所)が国内外の食品安全関係情報、厚 生労働省が食中毒や商品の回収情報等を収集し、必要に応じ、関係府省で随時共有を行ってい ます。 これらの情報を元に、消費者庁、消費者委員会及び食品安全委員会では、「消費者行政・食 品安全の総合案内」ホームページにより、一体的な情報提供を行っています。 (http://www.anzen.go.jp/) 消費者庁では、消費者の目線で消費者への分かりやすい情報提供に努めています。食品の安 全に関する注意喚起や回収情報等について、報道発表や地方公共団体への情報提供、消費者庁 ホームページほか、リコール情報サイトや消費者庁 Twitter 等を通じ、消費者に周知を図って います。 また、平成 23(2011)年度から重点的に取り組んでいる食品中の放射性物質については、 基準値や検査結果等、食品等の安全の問題を分かりやすく説明する冊子「食品と放射能 Q&A」を更新して提供しています。(http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/160315_food_qa.pdf) 食品安全委員会では、リスク評価に係る審議経過の透明性の確保と情報提供のため、食品安 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 150

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全委員会の会合や各種専門調査会を原則公開とし、議事録や配布資料を迅速にホームページ上 で公開しているほか、年 4 回発刊している季刊誌「食品安全」において、主なリスク評価結 果について図表を交えて分かりやすく説明しています。 (食品安全委員会ホームページに掲載。「食品安全」(http://www.fsc.go.jp/sonota/kikansi/kikansi.html)) 加えて、原則毎週メールマガジンを配信し、食品安全委員会や専門調査会の審議結果の概要 や開催案内等の食品の安全性に関する情報をタイムリーに提供するとともに、実生活に役立つ 情報、安全性の解説、Q&A 等を月 2 回、「読み物版」として配信しています。平成 27(2015) 年度は「読み物版」の総集編として、冊子「食べものについて知っておきたいこと」を発刊し ました。 (食品安全委員会ホームページに掲載。(https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/sousyuhen.html)) さらに、ソーシャルメディア(Facebook、ブログ)を活用し、食品の安全性に関して社会 的に注目されている事案等について、適時適切な情報発信を行っています。 また、食品安全に関する基礎的知識についての理解を促進するために、マスメディアや消費 者などとの懇談会や、一般消費者等を対象とし、委員が交代で科学的に食品安全について講義 する「食品を科学する―リスクアナリシス(分析)連続講座―」を実施しました。 さらに、国内外の食品の安全性に関する情報等を、データベースシステムである「食品安全 総合情報システム」に蓄積し、ホームページを通じて公開して、情報の共有と利便性の向上に 努めています。(http://www.fsc.go.jp/fsciis/) 一方、食品安全に関する論文、食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価の内容等を 国内外に広く発信するため、英文電子ジャーナル「Food Safety」を年 4 回発行しています。 厚生労働省では、食中毒や商品の回収情報等について、必要に応じ、随時、厚生労働省の ホームページ上で公開しているほか、食中毒統計を取りまとめて公表しています。 また、消費者が食品の安全性確保について正しい知識が得られるよう、リーフレットやパン フレット等の普及啓発資材を作成するとともに、ホームページにおいて、食品添加物、残留農 薬等の規格基準や監視状況を始めとする施策に関する情報のほか、家庭でできる食中毒予防等 についての情報発信を行っています。 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html) さらに、食中毒に特に注意が必要な時期には、インターネットテキスト広告等政府広報を通 じて、消費者への注意喚起を積極的に実施しています。 また、子供向けのページでは、食中毒予防に関するゲームや子供向けパンフレット等を教育 現場等で活用いただけるよう掲載しています。 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhinkodomo/index.html) 平成 27(2015)年度は、食肉等による食中毒予防について、リーフレットやクリアファイ ルを作成し配布するとともに、ホームページの充実を図りました。また、輸入食品の安全確保 に関するリーフレットを作成し配布するとともに、ホームページに掲載しました。 (http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/yunyusyokuhin.pdf) さらに、厚生労働省 Twitter により、有毒植物や毒きのこ、ノロウイルス等の食中毒予防の 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 151 第 2 節 食品の安全性に関する情報提供

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ポイントをツイートし、食中毒予防に関する注意喚起を行いました。 農林水産省では、消費者が健全な食生活を送るには、食品の安全性についての正しい知識を 持ち、適切に食品を選び、取り扱うことが重要であるとの観点から、ホームページやセミナー による情報提供を行っています。「安全で健やかな食生活を送るために」というページでは、 「健やかな食生活を送るためのポイント」、「新鮮でおいしい食品の選び方・家庭での取り扱い 方」など、消費者の日常生活に役立てていただけるよう情報を掲載しています。 (http://www.maff.go.jp/j/fs/index.html) また、加工肉の発がん性評価に関する正確な情報、カフェインの過剰摂取に関する注意喚起 など、社会的に関心の高いテーマについてタイムリーに発信しています。 (http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/wadai.html) 平成 27(2015)年度は、「家庭でできる食品安全」と題し、バランスの良い食生活の大切 さや食品中のアクリルアミドを減らす調理法などをテーマとしたセミナーを全国 4 会場で開 催しました。 さらに、メールマガジン「食品安全エクスプレス」(平成 28(2016)年 1 月末日現在の登 録者数:約 1 万 8 千人)において、農林水産省をはじめ関係府省による報道発表資料、意見・ 情報の募集、審議会、意見交換会等の開催情報等を毎日発信し、食の安全と消費者の信頼の確 保に関する情報を提供しています。 文部科学省では、食品については、出荷段階で検査が行われ、出荷制限等の措置が取られる こととなっていることを前提に、一層の安心を確保する観点から、学校給食の検査に関する事 業を実施しました。 消費者向けリーフレット ホームページ 「消費者行政・食品安全の総合案内」 「安全で健やかな食生活を送るために」ホームページ 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 152

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第3節

食品表示の適正化の推進

1

食品表示の一元化、表示制度の普及・定着

食品の表示は、消費者の権利として位置付けられた消費者の安全の確保や消費者の自主的か つ合理的な選択の機会の確保などを図る上で重要な役割を果たすものです。 これまでは、食品の表示について一般的なルールを定めている法律には、「食品衛生法」(昭和 22 年法律第 233 号)、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(昭和 25 年法律 第 175 号。平成 27 年 4 月 1 日より「農林物資の規格化等に関する法律」。以下「JAS法」と いう。)、「健康増進法」(平成 14 年法律第 103 号)の3法がありました。しかし、目的が異なる 3つの法律にルールが定められていたために、制度が複雑で、分かりにくいものとなっていまし た。「食品表示法」(平成 25 年法律第 70 号)は、上記3法の食品の表示に関する規定を統合し たもので、食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設するものです。法律の目的が統一 されたことにより、整合性の取れたルールの策定が可能となったため、消費者、事業者の双方に とって分かりやすい表示を実現することができるようになりました。 具体的なルールは、食品表示法に基づく食品表示基準に定められています。食品表示基準は これまで上記 3 法の下に定められていた 58 本の表示基準を統合するとともに、必要な見直し を踏まえて措置したものです。主な制度の変更点としては、①加工食品の栄養成分表示の義務 化、②アレルギー表示に係るルールの改善、③機能性表示食品制度の創設などがあります。 食品表示法に基づく新たな食品表示制度は平成 27(2015)年 4 月 1 日からスタートしたと ころであり、新たな食品表示制度の内容について、消費者、事業者への普及啓発を進めている ところです。なお、加工食品と添加物は 5 年、生鮮食品であれば 1 年 6 か月の間、以前の制 度に基づく表示を認めるという猶予期間を設けています。ただし、機能性表示食品制度につい ては、全くの新しい制度なので、猶予期間はありません。 また、消費者基本計画(平成 27 年 3 月 24 日閣議決定)において、インターネット販売等に おける食品表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示、遺伝子組換え表示の在り方な どの個別課題については順次実態を踏まえた検討を行うこととされています。これを受け、イン ターネット販売等における食品表示については、平成 27(2015)年 12 月から消費者庁に「食 品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」を設置し、インターネット販売での 食品に関する情報提供のあり方について検討を行っています。また、加工食品の原料原産地表 示については、平成 28(2016)年 1 月から、消費者庁と農林水産省が共同で「加工食品の原 料原産地表示制度に関する検討会」を設置し、今後の対応方策について検討を行っています。 さらに、平成 25(2013)年 10 月から翌年にかけて、ホテル・百貨店等が提供する料理の メニュー等の表示に関して、実際には、表示されていた食材と異なる食材が使われていた、い わゆる「食品表示等問題」について、消費者庁は、食品表示等問題関係府省庁等会議を開催し ての対策パッケージの取りまとめ、「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和 37 年法律第 134 号。以下「景品表示法」という。)違反が認められた事業者に対する措置命令、事業者の予見 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 153 第 3 節 食品表示の適正化の推進

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可能性を高めるためのガイドライン1の作成など、表示の適正化に向けた取組を行ったほか、 平成 26(2014)年度には景品表示法について、行政の監督指導態勢の強化のため調査権限を 事業所管大臣等に委任可能とする等の改正、不当な表示による顧客の誘引を防止するため、不 当な表示を行った事業者に対する課徴金制度を導入する等の改正が行われ、平成 28(2016) 年 4 月より施行予定となっています。 図表-73  食品表示法の概要

2

JAS規格の見直し等

JAS法では、JASマークについての制度が定められています。JASマークは、食品や 木材等の農林物資が、一定の品質を有していることなどを消費者等に示すものであり、農林水 産大臣が定める日本農林規格(以下、「JAS規格」という。)に適合しているものだけに貼る ことが認められています。JASマークを自らが製造・販売する製品に貼ることを望む事業者 は、農林水産大臣の登録を受けた第三者機関(登録認定機関)から認定を受け、JAS規格に 適合していることを検査等により確認した上で製品にJASマークを貼ることができます。 JAS規格については、従来、缶詰やハム等の加工食品の品質を確保するための規格が多く 定められていましたが、近年、消費者や事業者の多様なニーズに対応して、生産方法や流通方 法に着目した規格も定められてきています。具体的には、有機農産物や有機加工食品などに定 められている有機JAS規格、牛肉や豚肉などに定められている生産情報公表JAS規格、流 通の方法について定めた流通JAS規格があり、他にも熟成ハム類や地鶏肉、手延べそうめん 等について規格が定められています。 また、こうしたJAS規格について、消費者、事業者の多様なニーズに応えられるよう、透 明性の高い手続きによりJAS規格の制定と見直しを進めています。 1 消費者庁HP:http://www.caa.go.jp/representation/pdf/140328premiums_5.pdf 第

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 154

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機能性表示食品制度について

○機能性表示食品制度とは 機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品であり、制度 の主な特徴は、以下のとおりです。 ・疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者も含む。)及び授乳者を除く。)を対 象にした食品です。 ・生鮮食品を含め、原則全ての食品が対象となっています。 ・安全性及び機能性の根拠に関する情報、健康被害の情報収集体制などの必要な事項が、商品の販売前に、 事業者から消費者庁長官に届け出られます。 ・特定保健用食品とは異なり、国が安全性と機能性の審査を行っていません。 ・届け出られた内容は、消費者庁のウェブサイトで公開されます。 消費者は、商品の安全性や機能性がどのように確保されているのかなどについて、商品の情報を販売前に 確認することができます。また、消費者庁が中心となり、表示内容について、監視を行うこととしています。 図表-74  新たな機能性表示食品制度の創設 ○機能性表示食品制度施行後の状況 平成27(2015)年4月に制度が施行されて以来、平成27(2015)年度末の時点で273件の届出情報が公表 されています。平成27(2015)年9月には、初めての生鮮食品として、静岡県内の生産者団体が届け出た「み かん」、及び岐阜県内の企業が届け出た「もやし」に係る届出情報を消費者庁ウェブサイトに公表したところで す。また、本制度の検討過程において残された検討課題である、食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄 養成分(ビタミン・ミネラルなど)や、機能性関与成分が明確でない食品の取扱い等については、平成28 (2016)年1月から、消費者庁に「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」 を設置し、今後の対応方策について検討を行っています。 ○本制度を活用いただくために 消費者庁では、本制度についてより消費者や事業者の皆様に御理解いただけるよう、機能性表示食品制度 を含む新たな食品表示制度に関する説明会の開催や、機能性表示食品制度に関する消費者向けの普及・啓発 用の資料の作成などの取組を行っています。作成したパンフレットや届出件数は、消費者庁ウェブサイトか ら閲覧することができます。 ○機能性表示食品に関する情報 http://www.caa.go.jp/foods/index23.html ・パンフレット(消費者の皆様へ) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150810_1.pdf ・パンフレット(食品関連事業者の方へ) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150810_2.pdf

コラム

章 食 品 の 安 全 性 等 に 関 す る 情 報 提 供 の 推 進 155 第 3 節 食品表示の適正化の推進

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第1節

調査、研究等の実施

1

「日本人の食事摂取基準」の作成・公表、活用促進

国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的として国民が健全な食生活を営むことが できるように、「日本人の食事摂取基準」を策定し、5 年ごとに改定しています。日本人の食 事摂取基準(2015 年版)は、平成 27(2015)年度から平成 31(2019)年度まで使用する 予定です。食事摂取基準(2015 年版)では、高齢化の進展や糖尿病有病者数の増加等を踏ま え、生活習慣病の発症予防に加えて、重症化予防も視野に入れて策定を行い、エネルギーの指 標として目標とするBMI(Body Mass Index)の範囲を定めているほか、炭水化物、たんぱ く質、脂質、各種ビタミン及びミネラルといった栄養素を性・年齢階級別でどのくらい摂取し たら良いかについて定めています。食事摂取基準(2015 年版)の主な改定のポイントとして は、生活習慣病予防を目的とした目標量を充実させており、ナトリウム(食塩相当量)につい ては、高血圧予防の観点から男女ともに値を 2010 年版よりも低めに設定しています。

2

「日本食品標準成分表」の充実、活用促進

日本食品標準成分表は、戦後間もない昭和 25 年に初版を公表して以降、国民が日常摂取す る食品の成分に関する基礎データを提供することを目的として、食品数や成分項目の充実を図 るための改訂を重ねてきています。平成 27(2015)年 12 月に「日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)を公表し、五訂日本食品標準成分表以来、15 年ぶりに収載食品を拡充するとと もに、新たに炭水化物成分表編を作成するなどの改訂を行いました(トピックス:日本食品標 準成分表の改訂について 参照)。また、電子データを文部科学省ホームページで公開するほか、 検索が容易な「食品成分データベース」としても公開し、国民が利用しやすい情報として提供 しています。 (日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm) (食品成分データベースhttp://fooddb.mext.go.jp/)

3

国民健康・栄養調査の実施、活用

健康増進法(平成 14 年法律第 103 号)に基づき、国民の健康の増進の総合的な推進を図る

調査、研究その他の施策の推進

第 2 部

第 8 章

章 調 査 、 研 究 そ の 他 の 施 策 の 推 進 156

(22)

ための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするた め、国民健康・栄養調査を実施しています。 国民健康・栄養調査は、毎年 11 月に実施しており、身長、体重、血圧等の身体状況に関す る事項、食事の状況やエネルギー及び栄養素等摂取状況に関する事項、食習慣、運動習慣、休 養習慣、飲酒習慣、歯の健康保持習慣等、生活習慣の状況に関する事項について、把握し、解 析、公表しています。 平成 26(2014)年の調査では、所得格差を主要テーマとして実施しました(トピックス: 平成 26 年国民健康・栄養調査結果の概要 参照)。平成 27(2015)年の調査は、社会環境を 主要テーマとして実施しました。また、平成 28(2016)年の調査は、拡大調査を行い、都道 府県格差の把握を行う予定です。 国民健康・栄養調査の結果については、厚生労働省のホームページに掲載するとともに、国 立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のホームページにおいて、昭和 20 年代から実施 されてきた国民栄養調査の結果も併せて掲載するなど情報提供を行っています (http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html)。

4

農林漁業や食料の生産、流通、消費に関する統計調査の実施・公表

食育を推進する上で必要となる農林漁業の姿や食料の生産、流通、消費に関する基礎的な統 計データを広く国民に提供し、食育に対する国民の理解増進を図っています。主なものは次の とおりです。 〈1〉米や野菜等主要な農畜産物の生産や流通に関する調査、魚介等の水産物の生産や流通 に関する調査の実施・公表 〈2〉世帯及び外食における食品ロス等の実態を明らかにする調査の実施・公表 第

章 調 査 、 研 究 そ の 他 の 施 策 の 推 進 157 第 1 節 調査、研究等の実施

(23)

日本食品標準成分表の改訂について

平成27(2015)年12月、新しい日本食品標準成分表を公表しました。5年ぶり となる今回の改訂は、食品数の大幅な増加に加え、成分項目も増え、別冊も1冊 増えるという大幅なものです。 1 食品数の増加 今回の改訂では、15年ぶりに収載食品が増え、本編にあたる成分表2015年版では2,191食品が収 載されました。 主な新規食品は以下のとおりです。 (1)日本人の伝統的な食文化を代表する 食品 〔刺身〕まあじ、まだい、するめいか  など 〔天ぷら〕さつまいも、きす、バナメイ エビ など (2)健康志向を反映した食品 五穀、あまに油、えごま油 など (3)子供のアレルギー増加に配慮した食 品 米粉、米粉パン、米粉めん など (4)食べる機会が増えた食品 ベーグル、アンチョビ、にほんじか、モッツァレラ、バルサミコ酢、ビール風味炭酸飲料 など (5)調理後食品 とりのから揚げ、とんかつ、魚のフライ、肉・野菜等の焼き・ゆで・油いため など 特に、(5)の調理後食品は、加工食品の栄養表示の義務化を踏まえて、より正確な栄養計算が可能 となるよう収載を充実したものです。 2 別冊の充実 今回の改訂のもう一つのポイントは、別冊の「炭水化物成分表 編」が作られたことです。 現在の成分表では、炭水化物(可食部100g当たり)は、100gか ら水分とたんぱく質、脂質、灰分等を差し引いた「差引き法」で 計算しています(図表-76「差引き法」による炭水化物参照)。こ の方法は簡便なため、諸外国でも使われていますが、各成分の分 析誤差などがすべて炭水化物にしわ寄せされてしまいます。また、炭水化物を構成するでん粉、糖 類、食物繊維など、異なる栄養的価値を持つものが一緒にされてしまうという問題があります。 このため、食品成分委員会では、7年間かけて、食品の炭水化物組成に関する調査・研究を行いま した。主要な食品の分析に加え、類似食品の成分値や諸外国の成分表データを活用した推計、原材料 配合割合に基づく計算を行い、利用可能炭水化物と糖アルコール、有機酸の成分値を「炭水化物成分 表編」としてまとめました。利用可能炭水化物とは、炭水化物のうちヒトの酵素で消化可能で、吸

TOPICS

トピックス 図表-75  日本食品標準成分表の沿革 名 称 公表年 食品数 日本食品標準成分表 昭和25年(1950年) 538 改訂日本食品標準成分表 昭和29年(1954年) 695 三訂日本食品標準成分表 昭和38年(1963年) 878 四訂日本食品標準成分表 昭和57年(1982年) 1,621 五訂日本食品標準成分表 平成12年(2000年) 1,882 五訂増補日本食品標準成分表 平成17年(2005年) 1,878 日本食品標準成分表2010 平成22年(2010年) 1,878 日本食品標準成分表2015年版(七訂) 平成27年(2015年) 2,191 資料:文部科学省作成 図表-76  「差引き法」  による炭水化物

章 調 査 、 研 究 そ の 他 の 施 策 の 推 進 158

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収・代謝される成分であり、「炭水化物成分表編」では、でん粉とぶどう糖、果糖、ガラクトース、 しょ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース等を収載しています(854食品)。この利用可能炭水化物の合 計量は、従来、栄養指導の現場などで便宜的に使われてきた糖質(=炭水化物-食物繊維)とは強い 正相関があることが報告されていますが、より正確に含有量を捉えたものです。 一方、これまで成分表には「アミノ酸成分表」と「脂肪酸成分表」の2冊の別冊があり、それぞれ たんぱく質を構成するアミノ酸、脂質を構成する脂肪酸の組成を収載しています。 今回はこれらの別冊も同時に改訂し、新しい「アミノ酸成分表編」では337食品から1,558食品に、 「脂肪酸成分表編」は1,262食品から1,782食品に、収載食品数が増えました。これに伴って、本編に 収載のアミノ酸組成から計算したたんぱく質量や脂肪酸(飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽 和脂肪酸)、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量の情報も飛躍的に充実しました。 3 既存データの見直し 既収載食品の多くは、過去の成分表の収載値を引き継いでいます。しかし、時の流れとともに、分 析技術が進展していることに加え、原材料の品種や栽培方法(生産方法)、食品の製造方法などの変 化により、食品の成分値が変わることがあります。 例えばビタミンDは、従来の分析方法では、試料に由来する妨害成分の影響により分析値の信頼性が 低かったため、今回の改訂では、きのこについて、新しい分析方法で再分析を行い、収載値を変更しま した。この他の成分についても、収載値に疑義があった食品は、積極的に再分析をして見直しています。 また、米の水分値の見直し、ホイップクリームの成分値の計算に用いるグラニュー糖量の変更、ひじきの 製法別(ステンレス釜・鉄釜)の細分化など、収載値が現在の流通実態に即したものとなるよう努めました。 4 そう菜の計算 ライフスタイルの変化に伴って、外食、中食が増加し、家庭で食 材から調理する割合は年々減っています。また、平成32(2020)年 4月には加工食品の栄養表示が完全に義務化されることから、調理 した食品の栄養計算を正確に行うことが、一層重要になっています。 成分表2015年版では、新しい試みとして、家庭や事業所給食でよ く食べられるそう菜のレシピ(食材名、食材の重量、調理方法)を 収集し、成分表の収載値を活用して栄養計算をする手法を、実例と ともに解説しています。 そう菜のレシピは製品によって異なり、栄養計算の結果も違いま すので、食材の配合割合や成分値の計算結果は、平均と最大・最小 を収載しました。これにより、一般の消費者の方にとっては、普段購入される食品の成分について、 目安が得られることになります。 5 データファイルの公開 食品成分表は世界各国で作られ、オンラインで互いのデータを参照する取組が活発に行われていま す。日本の成分表も、今回改訂からPDFファイルに加えて、日本語版と英語版のデータファイルを 作成し、文部科学省のホームページで公開しています。 (http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm) 第

章 調 査 、 研 究 そ の 他 の 施 策 の 推 進 159 第 1 節 調査、研究等の実施

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平成26年国民健康・栄養調査結果の概要

「国民健康・栄養調査」は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基 礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにす るため、毎年実施しています。 平成25(2013)年度から開始している「健康日本21(第二次)」では、基本的方向の1つとして、 新たに「健康格差の縮小」を盛り込み、健康づくりとして、地域や社会経済状況の違いによる健康状 態の差を縮小することを目指すことを位置付けました。そこで、平成26(2014)年の国民健康・栄 養調査では、所得と生活習慣等に関する状況について把握しました。 〈所得と生活習慣等に関する状況〉 生活習慣等の状況について、所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して、穀類の摂取量が多 く野菜類や肉類の摂取量が少ない、習慣的に喫煙している者の割合が高い、健診の未受診者の割合が 高い、歯の本数が20歯未満の者の割合が高いなど、世帯の所得の違いにより差がみられました。 図表-77  所得と生活習慣等に関する状況 世帯所得 200万円未満 世帯所得 200万円以上~ 600万円未満 世帯所得 600万円以上 200万円 未満** 200万円以上~600万円未満** 割合または平均* 割合または平均割合または平均* 1.食生活 穀類摂取量(男性) 535.1g 520.9g 494.1g ★ ★ 穀類摂取量(女性) 372.5g 359.4g 352.8g ★ 野菜摂取量(男性) 253.6g 288.5g 322.3g ★ ★ 野菜摂取量(女性) 271.8g 284.8g 313.6g ★ ★ 肉類摂取量(男性) 101.7g 111.0g 122.0g ★ ★ 肉類摂取量(女性) 74.1g 78.0g 83.9g ★ ★ 2.たばこ 現在習慣的に喫煙している者 の割合(男性) 35.4% 33.4% 29.2% ★ ★ 現在習慣的に喫煙している者 の割合(女性) 15.3% 9.2% 5.6% ★ ★ 3.健診 未受診者の割合(男性) 42.9% 27.2% 16.1% ★ ★ 未受診者の割合(女性) 40.8% 36.4% 30.7% ★ 4.歯の本数 20歯未満の者の割合(男性) 33.9% 27.5% 20.3% ★ ★ 20本未満の者の割合(女性) 31.2% 26.5% 25.8% ★ ★ 資料:厚生労働省 国民健康・栄養調査(平成26(2014)年) 〈健診の受診に関する状況〉 ・健診を受診していない者では、健診を受診している者と比較して、男女ともに現在習慣的に喫煙し ている者の割合、運動習慣がない者の割合、血圧の平均値が高く、女性に関しては肥満者の割合も 高いという結果でした。 〈基本項目に関する状況〉 ・肥満者の割合、糖尿病が強く疑われる者の割合は、男女ともに増加せず推移し、収縮期血圧の平均値 は経年的にみて男女ともに低下傾向にあるなど、生活習慣病の予防対策に一定の効果がみられています。 一方で、喫煙している者の割合は平成22(2010)年以降男女とも減少しておらず、このうち、たば こをやめたいと思う者の割合が男性26.5%、女性38.2%にとどまるなど、引き続き対策が必要です。 国民健康・栄養調査では、引き続き実態の把握を行い、様々な取組の推進に役立つデータを発信し ていきます。

TOPICS

トピックス 第

章 調 査 、 研 究 そ の 他 の 施 策 の 推 進 160

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