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国際家族法研究会報告(第18 回) 準拠外国法の内容の不明徐瑞静一はじめに外国法の調査が不可能とは 法定手続及び方法を駆使しても 依然として外国法の内容が確定できないという意味である 外国法調査の失敗の認定問題については 次のように 若干の問題点に注意する必要がある まず 外国法の調査が不可能な状況

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準拠外国法の内容の不明《国際家族法研究会報告(

第18回)》

著者名(日)

徐 瑞静

雑誌名

東洋法学

55

1

ページ

193-202

発行年

2011-07

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000824/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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《国際家族法研究会報告(第 18回) 》

準拠外国法の内容の不明

  瑞静 一   はじめに   外国法の調査が不可能とは、法定手続及び方法を駆使して も、依然として外国法の内容が確定できないという意味であ る。外国法調査の失敗の認定問題については、次のように、 若干の問題点に注意する必要がある。まず、外国法の調査が 不可能な状況であるか否かについては、裁判所の職権によっ て認定しなければならない。大陸法系であっても、英米法系 であっても、同様である。次に、外国法調査の失敗は、外国 法を調査しないことと同一に解してはならない。また、外国 法調査の失敗は外国法の欠缺と異なる意味を有する。いずれ かの外国法の内容を調査した後に、当該外国法が事件に関す る問題を規定していないことが判明したとき、そこには、外 国 法 規 の 欠 缺 が 存 在 す る。 こ れ は、 外 国 法 の 調 査 問 題 と 違 い、外国法調査の失敗ではないため、その他の解決方法を考 慮しなければならない。外国法規の欠缺に関する問題は、外 国法が事件に関連する問題について規定していないことであ る。それに対して、外国法調査の失敗というのは、外国法が 当面の事件についていかなる内容を規定しているか分からな いということであり、これら二つの問題は異なる意味を有し て い る (山 田 鐐 一『国 際 私 法(第 三 版) 』(有 斐 閣、 二 〇 〇 四 年) 一 三 四 頁 参 照) 。 従 っ て、 こ れ ら 二 つ の 問 題 が、 本 来、 適 用 す べき外国法によって事件を審理できないという結果のみを見 て、同様な問題であると混同して、全く同様に対処すること は妥当でない (山田・前掲書同頁参照) 。   なお、裁判所が外国法を調査する職責を避けるため、調査 の失敗を理由にして、内国法を代替適用することになれば、 当事者又は裁判所にとって、難儀な外国法の適用問題を免れ る方法となる虞がある。しかし、この場合であっても、国際 私法の強行性を前提とする牴触法的処理が一貫として行われ て い る こ と が、 「任 意 的 牴 触 法 の 理 論」 の 援 用 と は 異 な っ て い る 点 で あ る (拙 稿「中 華 民 国 国 際 私 法 の 強 行 性」 東 洋 法 学 五四巻三号三四一頁以下参照) 。 二   外国法調査の失敗の場合の処理   外国法調査の失敗についての処理としては、主に、次に掲 げるいくつかの方法がある。内国法を推定的または代替的に 適 用 す る 方 法 (内 国 法 適 用 説) 、 当 事 者 の 請 求 な い し 抗 弁 を 却 下 す る 方 法 (請 求 棄 却 説) 、 本 来 的 に 適 用 す べ き 外 国 法 と 類 似 す る か、 又 は、 近 似 す る 法 を 適 用 す る 方 法 (近 似 法 説) 、 条 理 に よ る と す る 方 法 (条 理 説) 、 同 一 問 題 に つ い て 用 意 さ れ た 他 の 連 結 素 に よ っ て 確 定 さ れ る 法 律 を 適 用 す る 方 法 (補 助 連 結 説) 、 一 般 法 律 原 則 を 適 用 す る 方 法 (一 般 法 律 原 則 説) が

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それらである (山田・前掲書一三四頁以下参照) 。   それでは、諸国法は如何なる方法を採用しているか。外国 法 調 査 の 失 敗 に 関 す る 問 題 に つ い て、 例 え ば、 日 本、 ド イ ツ、アメリカ、英国等のように、何ら立法規定を設けていな い国も少なくない。それに対して、規定を有する国々の国際 私法ないし民事訴訟法は、その中で、外国法調査の失敗の処 理につき、次のような方法を規定している。 ⑴   ま ず、 内 国 法 を 適 用 す る 方 法 で あ る。 多 数 の 国 々 が こ の ような方法を採用している。 例えば、 タイ国際私法 (一九三九 年) 第 八 条、 ア ラ ブ 首 長 国 連 邦 の 国 際 私 法 に 関 す る 規 定 (一 九 八 六 年) 第 二 八 条、 ト ル コ 国 際 私 法 及 び 国 際 訴 訟 手 続 法 (一 九 八 二 年) 第 二 条 第 二 項、 モ ン ゴ ル 民 法 典 (一 九 九 四 年) 第 四 二 五 条 第 四 項、 チ ュ ニ ジ ア 国 際 私 法 典 (一 九 九 八 年) 第 三 二 条 第 四 項、 ポ ー ラ ン ド 国 際 私 法 (一 九 六 六 年) 第 七 条、 ハ ン ガ リ ー 国 際 私 法 (一 九 七 九 年) 第 五 条 第 三 項、 ル ー マ ニ ア 国 際 私 法 (一 九 九 二 年) 第 七 条、 ベ ラ ル ー シ 共 和 国 民 法 典 (第 一 九 九 九 年) 第 一 〇 九 五 条 第 四 項、 オ ー ス ト リ ア 連 邦 国 際 私 法 法 規 (一 九 七 八 年) 第 四 条 第 二 項、 ス イ ス 連 邦 国 際 私 法 (一 九 八 七 年) 第 一 六 条 第 二 項、 リ ヒ テ ン シ ュ タ イ ン 国 際 私 法 (一 九 九 六 年) 第 四 条 第 二 項、 ロ シ ア 連 邦 民 法 典 第 三 部 (二 〇 〇 一 年) 第 一 一 九 一 条 第 三 項、 ス ロ ベ ニ ア 共 和 国 国 際 私 法 及 び 訴 訟 法 (一 九 九 九 年) 第 一 二 条 第 四 項、 カ ザ フ ス タ ン 民 法 典 (一 九 九 九 年) 第 一 〇 八 六 条 第 四 項 が そ れ を 定 め て い る。 セ ネ ガ ル 家 族 法 (一 九 七 二 年) 第 八 五 条 第 二 項 も、 外 国 法が証明できない理由か、当事者が拒絶する場合には、セネ ガル法を適用しなければならないと定めている。ケベック民 法 典 (一 九 九 一 年) 第 二 八 〇 九 条 の 規 定 は、 カ ナ ダ の そ の 他 の州ないし地域及び外国国家の法律を「既知の事実」と見做 しており、当該外国法の内容を調査できない場合には、裁判 所がケベックの現行法を適用することとなる。 ⑵   次 に、 同 一 問 題 に つ い て 用 意 さ れ た そ の 他 の 連 結 素 に よって決定された法、または、密接関連法を適用すると同時 に、内国法をもって補充する方法である。例えば、イタリア 国 際 私 法 (一 九 九 五 年) 第 一 四 条 第 二 項 の 規 定 に よ れ ば、 当 事 者 の 協 力 の 下 に、 裁 判 官 が 外 国 法 を 調 査 で き な い 場 合 に は、同一問題について用意されたその他の連結素による法を 決定しなければならない。その他の連結素がなければ、イタ リ ア 法 を 適 用 す る。 北 朝 鮮 渉 外 民 事 関 係 法 (一 九 九 五 年) 第 一二条の規定によれば、ある外国法を準拠法として決定した が、当該外国法の内容を調査できない場合には、当事者と密 接な関連性のある国家の法または北朝鮮法を適用する。 ⑶   さ ら に、 比 較 的 に 適 切 な 法 を 適 用 す る 方 法 で あ る。 ポ ル ド ガ ル 民 法 典 (一 九 六 六 年) 第 二 三 条 第 二 項 の 規 定 に よ れ ば、外国法の内容を調査できないか、または、連結素の欠缺 によって準拠法の根拠を確保できない場合には、相対的に適 切な法を適用にする。

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  以上において取り上げた諸国立法をみると、イタリア国際 私法およびポルトガル国際私法を除き、その他の国家ないし 州 は 殆 ど 完 全 に 一 致 し た 処 理 方 法 を 採 用 し て い る。 す な わ ち、外国法が調査できない場合には、内国法を適用するとい う方法がそれである。当該規則は簡単、明瞭であり、多数の 国家が採用しているものであるが、それは、外国法調査の失 敗の処理問題について、理論的な意味及び実践の検討を行う 価値がないと考えている。 三   内国法適用の妥当性の検討   内国法を適用する方法は、英米法系の国々の広い範囲にお いて認められてきたが、このような方法については批判が多 い。外国法を内国法と同様と推定し、その両者が一定の近似 性を有するという理由は、実際には、往々にして証明される ことができないか、または、正反対な状況であることが証明 される結果になることがある。また、内国法を類推適用する ことの大きな欠点は、外国法を内国法と同一であるとする根 拠に欠けており、独断的ないし強行的に適用しようとする印 象を持たれることである (山田・前掲書一三五頁参照) 。   一方、外国法の内容を調査できない場合に、内国法を代替 適用することは、内国法を適用する点において同じな立場で あるが、両者の理論根拠には、大きい違いが存在している。 内国法を類推適用する理由は、内国法を外国法と同様と考え るからである。それに対して、代替的に内国法を適用する立 場の根拠は、①外国法の内容を証明できなかった場合、裁判 所にとって、熟知している内国法が当然に唯一の適用できる 法になる。しかも、法律の欠缺があるという理由により、当 事者の訴訟を却下するとか、または、その他の代替方法を有 しない状況下においては、内国法の適用は仕方のない選択と なる。②裁判所の目的である公正および正義を維持するため には、当面の事件に適切な法が欠缺しているとしても、審理 を断ることはできない。そうすると、最も良い対応方法は内 国法による救済を行うこととなる。③外国法を調査するため には、時間および費用が掛かるため、それを考慮すると、当 事者が往々にして証明を行わないとか、または、外国法を充 分に証明しないことには、むしろ、内国法を適用することに よって事件を審理することを望んでいるという意味が含まれ ている。それゆえ、内国法を代替的に適用するのは、当事者 の黙示意思の尊重であるとも考えられる。 四   フランス法の概観   フランスの司法慣例においては、外国法の内容を調査でき ない場合、代替的にフランス法を適用する。それとして、次 のような二つの判例がある。先ず、一九七〇年六月二二日の Budot v. Collet 判決 (

Journal du droit international 1972, p.311.

において、パリ大審裁判所は、交通事故による損害賠償請求

事件を次のように裁決した。事故の発生地アンドラにおいて

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故 に 関 す る 損 害 賠 償 の 特 殊 規 定 も 設 け ら れ て い な い。 し か し、裁判所は、アンドラ法がローマ法及び教会法を継受して いることから、ローマ法及び教会法上、加害者が責任を負う と認定し、相手に賠償を支払うべきと判断した。裁判所は、 ア ン ド ラ 法 に つ い て 問 わ ず、 代 替 的 に フ ラ ン ス 法 を 適 用 し た。 ま た、 一 九 七 一 年 一 一 月 二 五 日 の Zikman v. Lopato 判 決 ( Revue critique de droit international privé (以下、 RCDIP と す る) 1973, p.499. ) に お い て は、 ア メ リ カ 人 と ポ ー ラ ン ド 難 民との間の罰金責任の負担について、ポーランド難民が来た 満州は、当時は、ロシア軍に支配されていて、丁度、日本が 満州から軍隊を引き揚げ、中国軍もまだ進駐していない空白 の時期であったため、本件の法的責任が発生した当時、当地 において有効な法を調査することは極めて困難であった。そ こで、裁判所は再びフランス法を適用することとした。以上 の二つの事件について、学説からは、隣国アンドラ法を調査 できなかった場合に、フランス法を代替適用したことは正義 原則に違反していないが、満州事件にける法律適用問題に関 しては、フランス法を代替的に適用することは、満州におい て完全に異なる法文化が実施されていたことに鑑みて、その 妥当性に疑問が抱かれている。より近時、一九九三年一一月 一六日の Amerford 判決 ( Bulletin civil I, No.405, 294. ) におい て、フランス破棄院は、外国法を調査できないか、または、 外国法を調査する費用が当事者の請求額に比して高額である 場 合 に は、 裁 判 所 は、 フ ラ ン ス 法 を 代 替 適 用 す る こ と に よ り、事件を裁決しなければならないと判示している。すなわ ち、破棄院は、明確に、当事者が自由処分の権利を有する事 件において、外国法の適用を求める当事者が外国法の内容を 調査する責任を負い、それに反すれば、裁判所はフランス法 を適用することによって事件を裁決することになると言う内 容 を 表 明 し た ( Sofie Geeroms, Foreign law in civil litigation, 2004, p.205. ) 。   フランス裁判所はあまり外国法を適用しようとしていない ようであり、外国法を調査できないときには、フランス法を 適用する伝統を築いている。一九七一年一〇月一九日の破棄 院 判 決 ( RCDIP 1972, p.70, 72. ) に お い て、 破 棄 院 は、 控 訴 院 が外国法の資料欠缺を理由としてフランス法を適用した裁判 を支持している。 一九八〇年代、 破棄院は、 外国法に関連する 特別な資料ではなく、一般的資料が欠缺する場合には、フラ ンス法を代替適用することを合理的と考えている。一九八二 年 六 月 一 五 日 の 破 棄 院 判 決 ( RCDIP 1983, p.300, 302. ) は、 当 事 者 が ユ ダ ヤ 法 の 一 つ の 特 別 な 条 文 を 証 明 で き な か っ た 事 件に関するものであり、また、一九八〇年一〇月二二日の破 棄 院 判 決 ( PCDIP 1981, p.94. ) は、 控 訴 院 が ア ル ジ ェ リ ア 離 婚法の一般内容の資料の欠缺の場合に、フランス法を適用し て 事 件 を 判 断 し て い る。 従 っ て、 フ ラ ン ス 破 棄 院 は、 「特 別 に 援 用 さ れ た 外 国 法 の 規 定 を 証 明 で き な い 問 題」 と、 「外 国

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法がその一般内容において欠缺する問題」とを区別し、前者 の状況においては、証明できない問題を挙証責任を負う当事 者に帰属させつつ、合理的にその主張を斥ける理由へ導き、 その後の状況については、証明を提出できない場合に、裁判 所所在地法を外国法に代替して適用している。なお、破棄院 はこのような区別を行っているが、実際には、最終的な結果 は殆ど同じである。例えば、上述した一九八二年の判決にお いて、控訴院は、ユダヤ法の特別な条文を証明できなかった ことを理由として、当事者の請求を却下しているが、フラン ス法上においてもこれに関連する規定はないから、フランス 法 が 適 用 さ れ た と し て も、 最 終 的 に 請 求 を 却 下 す る 結 果 と な る も の で あ っ た ( G ee ro m s, o p. cit ., p .20 6 e t s eq . ) 五   ドイツ法の概観   ドイツにおいては、裁判所が外国準拠法を調査できない場 合には、同じように、ドイツ法を代替的に適用する。同様な 取扱い方法は、外国法から論議が派生する場合、及び、外国 最高司法機関がいまだに当該法律について確定な内容を決め て い な い 場 合 に も 適 用 さ れ て い る。 ド イ ツ 連 邦 最 高 裁 判 所 は、 一 九 七 七 年 一 〇 月 一 六 日 の 判 決 ( BGHZ 394, S.69, S.387. ) において、便宜さを顧慮して、外国法を調査できない場合に は、ドイツ法を適用して事件を裁決しなければならないと判 示した。また、ドイツ連邦最高裁判所は、一九八一年の 判決 ( NJW 1982, S.1215. ) に お い て、 同 様 に、 ト ル コ 法 を 調 査 で き ない場合に、当該事件にドイツ法を適用しなければならない と判示した。すなわち、当該事件の母子の住所が共にドイツ と関連性を有することに鑑み、ドイツ法を適用して事件を裁 決するのが最も妥当であると指摘した。連邦最高裁判所の判 断は下級裁判所においても支持を得ているようである。例え ば、 一 九 八 四 年 の シ ュ ツ ッ ト ガ ル ト ( Stuttgart ) 高 等 裁 判 所 判 決 ( IPRspr. 1984, Nr. l. ) に お い て は、 裁 判 所 が 親 子 関 係 に 関するトルコ法を調査できないため、ドイツ法を適用して事 件を裁決した。しかし、このような処理方法をめぐり、外国 法の規定を調査できない場合には、裁判所に対し、公平な考 慮に基づいて事件を裁定するような裁量権を与えることが、 一方的に内国法を代替適用するよりも妥当であると指摘され ている (

Geeroms, op. cit., p.207.

) 。 六   英国法及びアメリカ法の概観   英国において、内国法を代替適用する案例はあまり多くな い。最近の一つの事件は二〇〇二年一〇月二五日の Shake v. M oh am m ed A l-B ed ra w i 判 決 ( 42 C .A . 2 00 2 [ 20 03 C h.3 50 . ) で ある。ペンシルベニア法の証拠が欠缺していたため、下級裁 判所がペンシルベニア法を英国法と同様と推定して英国法を 適用して事件を裁決した。上訴人は上訴審においてペンシル ベ ニ ア 州 法 が 英 国 法 と 同 じ で あ る こ と に つ い て 疑 問 を 抱 い て、上訴裁判所は当該事件の問題について外国法の調査失敗 後には英国法を適用すべきかということに帰着した。最終的

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に、上訴裁判所は、両者は類似していると仮定する必要がな く、 外 国 法 を 適 用 し な け れ ば な ら な い と 指 摘 し た ( Geeroms,

op. cit., p.210 et seq.

) 。   アメリカ連邦裁判所は幾つかの事件においてアメリカ法を 適用することによって外国法の調査不可能問題を救済してい る 。 例 え ば 、 B an qu e L ib an ais e p ou r L e C om m er ce v . K hr eic h 事件 ( 915 F. 2d 1000, 1006 ( 5th Cir, 1990 ).) において、第五巡 回裁判所は、上訴人がアブダビ法に関する証拠を再度提出す る要求を斥けて、連邦地域裁判所によるアメリカ法を適用す る決定を支持した。当該判決から見れば、連邦地域裁判所は 内国法を推定適用したのではなく、内国法を代替適用したも のである。その理由は、テキサス州法が代替適用されて、内 容が決められる。カリフォニア証拠法典中の一つの条文は、 明確に、裁判所は、外国法を調査できない際または公正な目 的を求めて、カリフォニア法を適用する権利を有するとして いるが、しかし、この前提がアメリカとカリフォニアの憲法 を違反してはならないと決めている。ある場合に、内国法を 直接適用することについて、当事者は内国法を適用すると同 じとして黙認している。例えば、外国法が大陸法系に属する 場合のように、内国法を適用することが往々にして内国法を 外国法と同様とすることに失敗した場合に、外国法を適用す ることが直接に外国法を適用することと同じと考える。彼ら の出発点は内国法が当該事件を支配するという考え方である (

Geeroms, op. cit., p.209.

) 。 七   代替適用された外国法の価値   国際私法は外国法を適用するのみではなく、その規範の目 的として正確に内国法または外国法の適用を選択することで あるから、内国法の適用は除外されていない。例えば、内国 法 が 事 件 と 密 接 な 関 連 性 を 有 し て い る な ら ば、 衝 突 規 則 に よって内国法が適用されるのも適切なことと考えられる。そ のゆえ、内国法が補充的な性質を有し、外国法を調査できな い場合に、内国法を補充的に適用するのが適切であると考え られる。   純粋な理論に基づけば、外国法の調査失敗後、内国法を代 替適用する結論を得るのはなかなか難しいことである。外国 法と関連性を有する手続的規定については、単純に一つの理 論に基づいて推論を行うことは好ましくなく、訴訟効果及び 手続の便宜の立場から考える必要がある。外国法の調査につ いては、裁判所と当事者とが協力し、できる限り各種の資料 を収集することにより、外国法調査の失敗の可能性を減らす べきである。その以外に、外国法調査の失敗について厳格に 検証して、外国法の適用範囲を最少限度まで縮少すべきであ る。外国法調査の失敗が認められた場合であっても、裁判所 は内国法によって事件を審理しなければならない。現在の状 況の下において、内国法を代替適用する方法よりも良い選択 余地がないため、多数の国々及び地域はこのような措置しか

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講じることができない。 八   外国法調査の失敗後のその他の処理方法 ( 1 )近似法の適用   外国法の内容を調査できない場合であっても、裁判所は当 事者の訴訟請求または抗弁を任意に却下してはならないと考 えられている、また、当該事件に内国法を適用してはならな いとすれば、本来適用すべき外国法と類似している法を適用 しなければならない。例えば、オーストラリア法が英国法を 起源としているため適用すべきオーストラリア法を調査でき なかったときは、裁判所が比較的に熟知している英国法を適 用することによって事件を裁決する。適用すべき現行規範が 不明である場合に、旧法が証明されたならば、旧法を適用し て事件を審理することも良いと考えられる、例えば、裁判官 が ボ リ ビ ア 法 に 関 す る 規 定 を 調 査 で き な か っ た と き は、 一八三〇年のボリビア民法典に関する規定を適用すれば良い と考えられる。   但し、いまだにこの方法を採用した立法は確認されていな い。 一 九 七 八 年 の ス イ ス 連 邦 国 際 私 法 草 案 第 一 五 条 第 三 項 は、 こ の よ う な 内 容 を 規 定 し て い た。 す な わ ち、 「外 国 法 の 内容を調査できない場合には、裁判官は最も近似している法 律を考慮する。最も近似している法律がない場合には、スイ ス 法 を 適 用 す る。 」 と す る も の で あ る。 し か し、 一 九 八 七 年 に正式に成立したスイス連邦国際私法第一六条は、裁判官が 近似法を考慮することを可能とする内容の規定を最終的に削 除している。   一方、司法実践において、ドイツ及び日本の裁判所がこの ような立場を採用していた。エクアドル人がその父親の遺言 によって父親に対する遺産遺留分権を剥奪された事件におい て、ドイツ裁判所は、当時、第一次世界大戦が終了したばか りで、アクアドル民法典を調査できないため、チリ民法典を 見本として倣ったエクアドル民法典と類似しているチリ民法 典 を 適 用 す る こ と が 法 廷 地 法 (ド イ ツ 法) よ り も 正 確 な 解 決 方 法 に 近 づ く も の で あ る と 考 え て い た。 一 方、 日 本 に も こ の 方法を採用している判例がある。養子縁組申立に関する東京 家 庭 裁 判 所 昭 和 三 八 年 六 月 一 三 日 審 判 (家 裁 月 報 一 五 巻 一 〇 号一五三頁) は、 「準拠法として指定された外国法の内容が不 明の場合には結局法例の準拠法指定の趣旨に添ってその内容 探求すべく、それにはまず準拠法国の全法秩序からその内容 を推測すべく、若しそれが不可能ならば従前に施行されてい た法令とか政治的経済的或は民族的に近似する国家の法秩序 から準拠法の内容を推測すべきである。 」と判示した。   このような方法は、外国法の調査を失敗した後、本来適用 すべき法と近似している法を適用し、訴訟請求または抗弁を 却下するとか、推定的または代替的に内国法を適用する問題 を克服し、外国法の適用問題の欠点を排除して、国際私法の 基本理念に適合して、公正な結果を得られると考えられる。

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しかし、その最大の難点は、いかにして近似法を判断するか が非常に困難な問題であり、その基準を判断するのが難しい ことである。現行法を調査できなかったときは、旧法を適用 するという考え方もあるが、しかし、新法と旧法とは大きな 差異がありうることに加えて、旧法は一般的に多くの欠点を 有するため、例えば、旧法を適用して事件を裁決したら決し て妥当な判決が得られないと考えれる。従って、外国法を調 査できない場合に、その起源となる国家の法を適用すること ができるが、諸国の法律には差異があり、全体的に類似して い る 英 米 の 法 律 で あ っ て も 一 致 し な い こ と が 少 な く な い か ら、一つの具体的問題の規定についてまったく反対の規定を 設けている可能性がある。これらの状況に通じて、裁判官に 大きな自由裁量権を与えたならば、同一事件について異なる 判決を生じる可能性があり、司法の公正及び予測可能性に影 響を与える恐れがある。その外、内国法の適用や訴訟の却下 の方法と比べて、近似法を適用する方法は客観性を欠くとも 考えられる。 ( 2 )一般法理の適用   近似法の適用によって外国法を調査できないか、または、 それが欠缺している場合には、法理によって判決しなければ ならない。これは解釈学における法律の不備に関する通常の 補充方法の国際私法への応用と考えれる。一般法理は、諸国 の 民 法 や 学 説 に お い て 異 な る 意 味 を 有 し て お り、 例 え ば、 オーストリア民法は自然法原理と呼び、イタリア民法は法の 一般原則と呼び、ドイツ学説は法律の自由精神によって得ら れた原則と呼んでいる。裁判官が事件を裁決する際には、当 該抽象的原則について解釈を行い、これをもって事件を判決 するための根拠として具体化しなければならない。ここにお いて疑問となるのは、それが法廷地の法理であろうか、それ とも、当該外国の法理であるかという点である。   アメリカ連邦裁判所がこのような方法によって外国法調査 の失敗問題を処理している。特に海商法事件においてこのよ うな解決方法が常に見られている。日本においても学説及び 判例がこの取扱い方法を支持している。例えば、大阪地方裁 判 所 昭 和 三 九 年 三 月 一 七 日 判 決 (判 例 タ イ ム ズ 一 六 二 号 一 九 七 頁) に お い て、 こ の よ う な 内 容 が 指 摘 さ れ て い る。 後 見 人 の 本国法である北朝鮮法の内容が不明である場合に、法理によ り、近似社会である韓国の法を適用することが認められてい る。 東 京 地 方 裁 判 所 昭 和 四 一 年 一 月 一 三 日 判 決 (家 裁 月 報 一 九 巻 一 号 四 三 頁) は、 親 子 関 係 不 存 在 確 認 事 件 に お い て、 明確に、母の夫の本国法である北朝鮮法が不明である場合に は、法理を適用して事件を審決しなければならないと判示し ている。   このような解決方法の欠点としては、裁判官に過大な自由 裁量権を与えて、司法の公正及び判決の調和に影響する恐れ があることが考えられる。

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( 3 ) 同一問題のための他の連結素の適用による法   この方法は、本来適用する外国法が調査できない場合に、 当該法律関係のその他の連結素によって確定された法による という意味である。例えば、一つの権利侵害事件において、 権利侵害の結果発生地の法を調査できないときは、権利侵害 行為地の法を適用しなければならない。また、行為地の法も 調査できないときは、被害者の常居所地法を適用するという 方法である。また、人の国籍を調査できないときは、その住 所地法を適用することが認められる。   イタリア、ポルトガル等は、この方法を採用している。例 え ば、 イ タ リ ア 国 際 私 法 (一 九 九 五 年) 第 一 四 条 第 二 項 の 規 定 に よ り、 「当 事 者 の 協 力 に よ っ て も、 裁 判 官 が 外 国 の 制 定 法を調査できない場合には、その者は同一問題のために用意 されたその他の連結素によって確定した法を適用しなければ ならない。その他の連結素がないときは、イタリア法を適用 す る。 」 と 定 め ら れ て お り、 ポ ル ト ガ ル 民 法 典 (一 九 六 六 年) 第 二 三 条 第 二 項 の 規 定 に よ り、 「外 国 法 の 内 容 を 調 査 で き な いとき、または、連結素の欠缺のために準拠法の選定根拠を 確 定 で き な い 場 合 に は、 代 替 適 用 し て い る 法 を 適 用 す る。 」 と定められており、マカオの法がポルドガルに属するため、 そ の 民 法 典 第 二 二 条 第 二 項 も こ の よ う な 内 容 を 規 定 し て い る。 す な わ ち、 「適 用 す る 外 国 法 を 調 査 で き な い 場 合 に、 補 充的に適用する準拠法を適用する。事実要素を確定できない か、または、法律要素によって指定した法を適用する場合に は、 同 じ 方 法 を も っ て 取 り 扱 わ な け れ ば な ら な い。 」 と 定 め られている。以上のような方法により、適用する法と事件と が密接な関係を確保することができることとなり、これは国 際私法理念にも適っている。しかし、その不備な点として、 特に契約事件、権利侵害事件における連結点が多いため、各 連結点によって確定した準拠法を確実に調査するための手続 があまりにも煩雑であり、費用も高額で、内国法を適用する ような簡易性も有しないため、適用される可能性が低くなる ことである。しかも、事件の判決結果にも大きな不確定性が もたらされると考えられる。 ( 4 )一般法律原則の適用   一般原則の概念について、いまだに統一な解釈がなく、国 際司法裁判所規則第三八条第一項が規定する「一般法律原則 は 明 文 を も っ て 諸 国 に 承 認 さ れ た 場 合 に」 と い う こ と の 意 味、性質については争いがあり、主要な淵源は国際条約及び 国 際 習 慣 で あ る。 国 際 商 事 紛 争 に 適 用 さ れ る 一 般 法 律 原 則 は、国際法の一般法律原則と基本的に同じである。現在、公 認された一般法律原則としては、主に、約定を必ず遵守する 原則、公平原則、信義誠実原則等がある。一般法律原則が適 用される事件については、大体、一方の当事者の国家の商事 契約であり、特に石油や投資契約に関する約款に多く規定さ れている。一般に異なる国家間の自然人と法人との間にはあ

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ま り 見 ら れ な い。 こ こ に お い て 取 り 上 げ る の は、 リ ビ ア の 一 九 六 五 年 の 法 令 中 の 次 の 規 定 で あ る。 す な わ ち、 「経 済 特 許協議については、国際私法と一致するリビア法原則の適用 に よ っ て 解 釈 を し な け れ ば な ら な い。 」 こ の よ う な 法 律 原 則 がなければ、一般法理原則によって適用することになる。国 際 法 廷 に お い て 適 用 さ れ た 規 則 を 含 め て 適 用 す る こ と に な る。国家を一方の当事者として発生した民商事争議はあまり 訴訟方式をもって解決されることはなく、大体、仲裁解決に よって解決されており、従って、訴訟となった事例はあまり なく、仲裁を受けるのが通常と考えれる。 九   結び   以上から見れば、外国法調査の失敗問題を解決する方法は 多くあるが、多数の国家の立法及び司法実践においては、そ れ ぞ れ の 理 由 が あ る が、 内 国 法 を 適 用 す る 姿 勢 に 傾 い て い る。例えば、外国法と内国法との類似が英米法系の諸国にお いては普遍的に見られたが、ひと度、外国法を調査できない と、英米裁判所は、内国法及び外国法の内容上の相似するこ とにより、内国法によって事件を審理するようになる。これ は外国法の調査責任と関連しているから、証明責任を負う当 事者が外国法を証明できないとき、内国法を代替適用するこ とを意味する。当然に、外国法は内容的に明らかに内国法と 異なっており、裁判所がこのような代替適用を行うことは妥 当でない。しかし、英国の学者は依然として外国法を内国法 と相同するとしており、それについて多くの批判を受けてい る。大陸法系国家は、理論上及び実際上の需要に基づいて、 内国法を代替適用する方法を取ることが多い。フランス、ド イツがそのような対応を実施している。それ以外に、幾つの 裁判所は訴訟請求を棄却している。しかし、現在、このよう な 対 応 を し て い る の は ア メ リ カ 等 の 少 数 の 裁 判 所 だ け で あ る。なお、英国裁判所は、外国法の適用を依頼した当事者が 策 略 的 に 外 国 法 の 証 明 を 拒 絶 し た 際 に、 こ の よ う な 方 法 を もって対応している。 (東洋大学大学院博士後期課程)

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