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運動のイメージに影響する認知的要因の研究

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(1)

運動のイメージに影響する認知的要因の研究

煙山千尋・清水安夫

はじめに

近年, 運動技能学習の成果を高め, スポーツ競技のパフォーマンスを向上させる方法の一つと して, イメージ・トレーニングが注目されている. イメージ (心像:

) とは, 「感覚刺激 が存在せずに感覚経験に類似して生起し, 心理的効果をもたらす心理過程」4)を意味し, また,

「人が心の中に抱く絵のようなものであり, 視覚的なものに限らず, 五感それぞれに, またそれ らの統合されたものとして存在する同様のもの」21)と説明されている.

これらの概念を踏まえ, イメージ・トレーニングとは, 「頭の中で運動や技術や動作を思い浮 かべ, 動作のタイミングや順序, 実際の運動場面で起こりうる状況を想定して, あらかじめリハー サルを行なうことで注意集中状態の再現性を高め, ピークパフォーマンスを導く方法」7)と定義さ れている. つまり, イメージ・トレーニングとは, 身体的な活動を伴わずにある場面の状況を思 い浮かべ, その内的な体験を繰り返しコントロールすることで, 望ましい心理状態を作りあげる ことにより, 運動学習の促進や競技パフォーマンスを向上させるための心理的技法であると考え られる.

一般的に, 運動スキルの獲得や習得には, 身体的なトレーニングや実技の練習が不可欠である.

その一方で, 実際には身体を動かさず, 運動している場面を思い描くことにより技能の向上を図 るイメージのトレーニングは, 実際の運動場面に関連した手続きを得るという点で重要であると 考えられる.

現在に至るまで, イメージ・トレーニングがスポーツの競技パフォーマンスや運動スキルの向 上に寄与するという数多くの研究が報告されている. 例えば,

2)は, イメージ・

トレーニングとパフォーマンスとの関係を記述した研究を収集し, それらを統計的手法 (メタ分 析) によって解析した結果, イメージ・トレーニングがパフォーマンスの向上に有効であること を明らかにしている. また,

3)は, 大学生男子卓球選手に対して, リラクセーション技法 を用いたイメージ・トレーニングを実施し, パフォーマンスの向上が認められたことを報告して

キーワード

運動のイメージに影響する認知的要因の研究

(2)

いる.

さらに, イメージ・トレーニングの効果を左右する重要な媒介変数には, イメージの明瞭性と 統御可能性があることが示唆されている13,22). イメージの明瞭性とは, 描いたイメージが現実 体験と同様にはっきりと鮮明であるかということであり, イメージの統御可能性とは, 描いたイ メージをいかに操作・変換できるかを指す. このイメージの明瞭性と統御可能性は, イメージの 想起に先立つ前提条件であることが実証されており20), この 2 つの次元から, イメージを捉え る必要性が高いと考えられる. イメージの明瞭性及び統御可能性とパフォーマンスの関連性につ いては, 岡部・清水が16), 運動イメージの明瞭性と統御可能性が, 運動パフォーマンスに関連 することを示唆している. また, 高い競技レベルの選手ほど, イメージの明瞭性及び統御可能性 に優れていることが報告されている5,11,17).

さらに, 安藤・清水は1), 「サッカー版イメージの明瞭性テスト」 を作成し, イメージの明瞭性・

統御可能性と関連する要因として, 判断能力, 意思決定力といった認知的な能力が重要であるこ とを指摘し, それらの関連性を検討している. また, ビデオを用いて認知的トレーニングの効果 を検証した研究18)においては, 判断力, 予測力等の認知力とイメージ能力との関連が指摘され ている. とりわけ, ボールゲームにおいては,常に敵と味方の位置を把握し,自分自身の移動可能 な空間や距離を瞬時に判断しながら,ボールと他のプレイヤーとの移動位置を推測したプレーが 必要となる6). そのため, イメージ能力と関連する, 空間認知, 記憶, 状況判断や意思決定に関 する認知力も, イメージ能力と同様に運動スキルの習得や競技パフォーマンスの向上に寄与する 重要な要因であると考えられる.

以上のことを踏まえると, 空間認知, 記憶, 状況判断力や予測力, 意思決定力等の認知力が, イメージの明瞭性, 統御可能性に与える影響を検討することにより, イメージ能力を高めるため に必要な認知的要因が特定され, より有効なイメージ・トレーニングの方法の提案が可能になる と考える. 将来的には, 体育授業における運動スキル学習の促進や, スポーツ競技パフォーマン スを向上させる一助となると考えられる.

そこで, 本研究では, 空間認知, 記憶, 状況判断力や予測力, 意思決定力等の認知力が, イメー ジの明瞭性, 統御可能性に与える影響の検討を行うことを目的とした. 目的の遂行に際し, まず, 基本的な属性によりイメージ能力や認知力に差が見られるか検討をするために, イメージの明瞭 性・統御可能性, 認知力の性差及び競技年数の差の検討を行った.

方 法

. 調査対象者

調査対象者は, 東京都内

大学の大学生40名 (男性21名, 女性19名, 平均年齢20.25歳,

) であった.

(3)

. 調査日

2006年 7 月20日の講義内を利用して実施された.

. 調査内容

) 運動イメージの明瞭性テスト

運動イメージの明瞭性を測定する尺度として, 「

(以下

テストⅢと表記する)」)を使用した.

テストⅢは, 西田他)が作成した

テスト の改訂版であり, 内容が具体的に実際の運動場面に近い動作に設定されると共に, 原版の尺度 から項目数が削減されている. 本テストは, 運動についてのイメージをどれだけ鮮明, 且つ明 確に捉えることができるかを測定することが可能であり, 「他者の視覚イメージ」 12 項目,「自 己の運動イメージ」 12項目の 2 因子24項目で構成されている. 前者は, 視覚を通して他者が行っ ている動作を 「見ているイメージ」 であり, 後者は, さまざまな感覚を総動員して自分が動作 を 「遂行しているイメージ」 である. 各項目への回答は, 「0:全くイメージができない」−「

: 実際の経験と同じくらい極めて鮮やかである」 の 5 件法で求めた.

2) 運動イメージの統御可能性テスト

運動の統御可能性を測定する尺度として, 「

(以下

テストと表記する)」)を使用した.

テストは, 運動についてのイメージを意図した方 向にどれだけ操作・変換することができるかを測定することが可能である. 本テストは, 問題 ごとに, 基本姿勢 (閉眼状態で気をつけの姿勢) をイメージとして描くことから始まり, その後, 身体部位をイメージの中で指示された方向に変化させる内容を含んだ言語教示 (表 1) に従っ て順次イメージを付加, 変換, 再構成し, 最終イメージまでに

段階の変化をさせる. 動作の 教示文を読み上げた後に,5 枚の写真を解答肢として

ソフト(

; 以下

と表記)

を用いてプロジェクターからスクリーンに投影し, その中から変換後の イメージの正解を 1 枚選択するものである (図 1). 解答画面が投影されている時間は,

秒間 に統一した. なお, 身体部位の変化は, 1 つの教示につき 1 つの変化に設定した. 解答肢中の

枚の誤ったポーズは, 頭, 腕, 胴, 足のそれぞれの誤りを, 例えば頭と腕, 腕と足といった ように 2 箇所を組み合わせて作成されている. 問題数は全部で20問あり, 上半身 (10問), 全 身 (10 問) の 2 領域から構成されている. 正解の写真を選択した場合にのみ 1 点が加算され, 誤答及び解答していない場合は 0 点とし, 合計20点満点で得点化を行った.

) 認知力テスト

本テストは, 日本版

成人知能検査 (

))及 び, 日本版

Ⅲ知能検査 (

))にお

(4)

ける, 動作性下位検査の 「積木模様」, 「迷路」 及び, 言語性下位検査の 「数唱」 を参考に作 成されたものであり, 視覚認知, 空間認知, 情報処理等の一般的な基礎認知力を測定する検 査内容に準拠して作成した. なお, 全てのテストは,

で作成された.

(1) 空間認知テスト

本テストでは, 直方体上のブロックが積み重ねられた画面が15秒間, プロジェクターから スクリーンに投影される (図 2). 調査対象者は, そのブロックの数を記憶し, 15秒後に映し 出される 5 択の解答画面の中から, 記憶したブロックの数と同じだと判断した番号を必ず選 択するように指示された. 各問題の解答画面が投影される時間は 5 秒間であり, 5 秒後に次 の問題へ移る. 全20問で構成され, 前半の10問は静止状態のブロックが提示され, 後半の10 問はスライド画面上を移動するブロックが提示される. 正答は 1 点, 誤答及び解答していな い場合は 0 点として得点化した.

(2) 短期記憶テスト

本テストでは, 5−10桁の数字が 2−5 秒間, プロジェクターからスクリーンに投影され 1. 足先を閉じて, 気をつけの姿勢をとって下さい

2. 左腕を前に 90 度動かして下さい 3. 左腕を左に 90 度動かして下さい 4. 右腕を前に 90 度動かして下さい 5. 右腕を上に 90 度動かして下さい

表 1テストの教示文の例

図 1

テストの解答肢の例

(5)

る (図 3). 調査対象者は, その数列を記憶し, 3 秒後に映し出される 5 択の解答画面から, 記憶した数列と同じだと判断した番号を必ず選択するように指示された. 各問題の解答画面 が投影される時間は 5 秒間であり, 5 秒後に次の問題へ移る. 全20問で構成され, 前半の10 問は静止状態の数列が提示され, 後半の10問はスライド画面上を移動する数字・数列が提示 される. 正答は 1 点, 誤答及び解答していない場合は 0 点として得点化した.

(3) 経路推測テスト

本テストでは, 迷路の画面が, 3 秒間プロジェクターからスクリーンに投影される(図 4). 前半の 5 問は, 1 つのゴールに対してスタートが 4 つ (−) あり, その中の 1 つのみがゴー ルに

り着くことができるという内容であり, 後半の 5 問は, 1 つのスタートに対してゴー ルが 4 つ (−) あり, 1 つの経路のみがゴールに

り着くことができるという内容の全10 問で構成されている. 調査対象者は, スライド上の

から, ゴールに

り着くことが できるスタート及び, スタートから

り着くことができるゴールを

の 4 択の解答画 面から必ず選択するように指示された. 各問題の解答時間は 5 秒間であり, 5 秒後に次の問 題へ移る.正答は 1 点,誤答及び解答していない場合は 0 点として得点化した.

4) 調査方法

調査は, スクリーンの設置できる教室にて質問紙を用いた集合調査法にて実施した.

図 2. 空間認知テストの問題例

図 3. 空間認知テストの問題例

(6)

テストⅢは, 調査実施者による強制速度法にて実施された. また, スライドを用いる

テスト, 認知力テストは, 調査実施者の教示, 解説の下, 調査協力者がスライドの操作を行 い実施した. 調査対象者の着席位置において不均等が起こらないように配慮し, 対象者がス クリーンの画面の正面に着席するように調整し, 距離や角度等を可能な限り統制した.

) 分析方法 (

) 性差の検討

性別によるイメージの明瞭性, イメージの統御可能性, 認知力の差を検討するために,

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を従属変数と する, 女性と男性の比較を

検定にて行った. 分析は統計ソフト

を用いた.

(

) スポーツ競技年数の差の検討

スポーツ競技年数の違いによるイメージの明瞭性, イメージの統御可能性, 認知力の差を 検討するために,

テストⅢの合計得点及び各因子(他者の視覚イメージ・自己の運動イメー ジ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の 得点を従属変数とする, スポーツ競技年数長期群(10年以上)とスポーツ競技年数短期群 (10 年未満) の比較を

検定にて行った. 分析は統計ソフト

を用いた.

(

) 認知力とイメージの明瞭性・統御可能性との関連性の検討

イメージの明瞭性, イメージの統御可能性への認知力の影響を検討するために,

テ ストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テストの得点 を従属変数とし, 認知力テストの各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を独立変 数とする重回帰分析を行った. さらに,

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イ メージ・自己の運動イメージ),

テストの得点を従属変数とし, 認知力テストの合計得点

を独立変数とする単回帰分析を行った. 分析は統計ソフト

を用いた.

図 4. 経路推測テストの問題例

(7)

結 果

. 性差の検討

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を従属変数とする, 女性と男性の比較を行った.

検定の結果, すべての従属変数において性別の有意な差は認めら れなかった (表 2).

. スポーツ競技年数の差の検討

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を従属変数とする, スポーツ競技年数長期群 (10年以上) とスポーツ競技年数短期群 (10年未満) の比較を行った.

検定の結果, すべての従属変数においてスポーツ競技年数による有意な差は認められなかった (表

).

スポーツ競技年数 スポーツ競技年数

値 長期群 (

=22) 短期群 (

=18)

テストⅢの合計得点 74.64 (15.30) 70.83 (14.52) -0.51

他者の視覚イメージ得点 41.68 ( 7.06) 40.50 ( 8.23) 0.67 自己の運動イメージ得点 32.95 ( 9.77) 30.33 ( 8.49) -0.93

テストの合計得点 15.55 ( 2.20) 15.28 ( 2.32) 0.29 認知力テストの合計得点 52.50 ( 3.76) 50.94 ( 4.86) -0.42 空間認知テスト得点 12.50 ( 1.97) 11.18 ( 3.44) -0.89 短期記憶テスト得点 17.55 ( 1.63) 17.11 ( 1.94) -0.96 経路推測テスト得点 7.14 ( 1.55) 6.78 ( 1.40) 1.65 ( ) 内は, 標準偏差 表 3 スポーツ競技年数の差の検討

男子 (

=21) 女子 (

=19)

テストⅢの合計得点 72.81 (18.09) 73.05 (10.80) -0.51 他者の視覚イメージ得点 40.10 ( 8.90) 42.32 ( 5.67) 0.67 自己の運動イメージ得点 32.71 (10.23) 30.71 ( 8.05) -0.93

テストの合計得点 15.52 ( 2.29) 15.32 ( 2.21) 0.29 認知力テストの合計得点 51.52 ( 3.82) 52.11 ( 4.88) -0.42 空間認知テスト得点 11.81 ( 1.66) 12.58 ( 3.55) -0.89 短期記憶テスト得点 17.10 ( 1.87) 17.63 ( 1.64) -0.96 経路推測テスト得点 7.33 ( 1.56) 6.58 ( 1.30) 1.65 ( ) 内は, 標準偏差 表 2 性差の検討

(8)

. 認知力とイメージの明瞭性・統御可能性との関連性の検討

イメージの明瞭性, イメージの統御可能性への認知力の影響を検討するために,

テスト

Ⅲの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テストの得点を従属変 数とし, 認知力テストの各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を独立変数とする重回 帰分析を行った. その結果,全ての従属変数に有意な決定係数 (

) は認められなかった[

テ スト (

()

), 他者の視覚イメージ (

()

), 自己の運動イメー ジ (

(

)

),

テスト (

(

)

)] (表

).

また, 同様に,

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テストの得点を従属変数とし, 認知力テストの合計得点を独立変数とする単回帰分析を行っ た. その結果,

テスト, 自己の運動イメージ,

テストに有意な決定係数 () が認め られた [

テスト (

(

)

), 他者の視覚イメージ(

(

)

), 自己の運動イメージ (

()

),テスト(

()

)] (表 5).

考 察

. 性差の検討

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を従属変数とする,

標準偏回帰係数 (β)

テストⅢ 他者の視覚 自己の運動

テスト

イメージ イメージ

空間認知テスト得点 0.35 0.28 0.33 0.18 短期記憶テスト得点 -0.16 -0.06 -0.21 -0.30 経路推測テスト得点 0.22 0.09 0.28 0.16

() 0.14(0.37) 0.08(0.28) 0.15(0.39) 0.10(0.32)

表 4 認知力の各テストとイメージの明瞭性・統御可能性との関連性

テストⅢ

標準偏回帰係数 (β)

テストⅢ 他者の視覚 自己の運動

テスト

イメージ イメージ

経路推測テスト得点 0.37* 0.31 0.34* 0.50**

() 0.13(0.37)* 0.09(0.31) 0.12(0.34)* 0.25(0.50)**

表 5 認知力テストの合計得点とイメージの明瞭性・統御可能性との関連性

<,

テストⅢ

(9)

性差の比較を行った.

検定の結果, すべての従属変数において性別の有意な差は認められなかっ た.

このことから, 男女間にイメージの明瞭性, イメージの統御可能性, 認知力の差がないことが 示された. そのため, イメージ・トレーニングや認知力を高めるトレーニングを行う際には, 男 女に分類せず, 同様のプログラムを行うことが可能であることが示唆された. また, この結果よ り, 本研究における今後の分析は, 男女を分けずに混合で行うこととした.

. スポーツ競技年数の差の検討

テストⅢの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テスト, 認知力テストの合計得点及び各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測) の得点を従属変数とする, スポーツ競技年数長期群 (10年以上) とスポーツ競技年数短期群 (10年未満) の比較を行った.

検定の結果, すべての従属変数においてスポーツ競技年数による有意な差は認められなかった.

この結果は, 大学生の運動部員と非運動部員とのイメージ能力の比較を行った研究)や, 運動 経験の豊富な者の方が,実際の運動に近いイメージを描く能力に優れているという研究の結果) とは異なる結果であった. 同様に, 競技スポーツにおける認知技能においても, 十分に経験を積 んでいる熟練選手の方が優れていること,,)や競技歴の長さの影響を受けやすいこと), が報 告されており, 本研究の結果は, 先行研究による仮説が支持されない結果となった.

これは, 本研究対象者の運動経験が全体的に長いことが要因の一つであると考えられる. 本研 究対象者のスポーツ競技年数の平均は, 11.05 (

) 年と長く, また, 対象者のほとんどが 複数の競技を経験しており, 運動経験が豊富であったと考えられる. そのため, 運動経験を基に, 明瞭なイメージを描き, それを自由にコントロールすることや, 空間認知や短期記憶, 判断力, 意思決定力等を総合した認知力が, 平均的に高い集団であったことが予想される. また, 調査対 象者数が40名と少なかったことも考慮すると, 今後は, 調査対象者数を増やして, 再度, 同様の 分析を行い, スポーツ競技年数によるイメージ能力や認知力の差及び, 運動経験のある者とない 者のイメージ能力や認知力の差を併せて検討する必要があると考える.

. 認知力とイメージの明瞭性・統御可能性との関連性の検討

イメージの明瞭性, イメージの統御可能性への認知力の影響を検討するために,

テスト

Ⅲの合計得点及び各因子 (他者の視覚イメージ・自己の運動イメージ),

テストの得点を従属変 数とし, 認知力テストの各テスト (空間認知・短期記憶・経路推測)の得点を独立変数とする重回帰 分析を行った結果, 全ての従属変数に有意な決定係数(

) は認められなかった. しかし, 同様 の従属変数に対して, 認知力テストの合計得点を独立変数とする単回帰分析を行った結果,

テスト, 自己の運動イメージ,

テストに有意な決定係数 (

) が認められた.

この結果から, 空間認知力, 短期記憶力, 判断力, 意思決定力等の認知的側面の個別の能力よ

(10)

りも, それらを総合した能力が, イメージを鮮明に描き, それらをイメージの中で自由に動かせ るために重要であることが示唆された. このことから, 競技力の向上や運動実技の習得を目的と したイメージ・トレーニングを実施する際には, 総合的な認知力を高めるための方法を用いるこ とが有効であると考えられる.

例えば, 下園他は), ラグビー選手を対象として, ビデオ映像を用いて勝敗に大きく関わる決 定場面を見せ, その後の効率的な動きを予測し, 得点に結びつく判断を高めるための認知的トレー ニングを行っている. この認知的トレーニングでは, 決定場面での予測力や判断力が問われるだ けでなく, ビデオ画面を空間的に把握する力や, 一時的なフォーメーションを記憶し, 味方や対 戦相手の位置を把握する力, その後に自身の移動すべき経路を選択する意思決定力等の総合的な 認知力をトレーニングすることが可能であると考えられる. 以上のような, 認知的側面の総合的 なトレーニングにおいては, 決定場面の状況を鮮明にイメージし, そのイメージをコントロール する必要があることから, イメージの明瞭性及び, 統御可能性が向上することが推測される. 以 上のことを総合すると, スポーツ競技パフォーマンスの向上やスポーツスキルの習得を促進させ る目的としたイメージ・トレーニングを実施する際には, 総合的な認知力を高めるトレーニング を併用し, イメージの明瞭性や統御可能性を高める働きかけを行うことが, 有効であると考えら れる.

. 今後の課題

本研究の調査対象者数は, スポーツ経験者が多く, スポーツ経験年数が比較的長いことから, 本研究で得られた結果に一定の偏りがあると考えられる. また, 調査対象者数が40名と少なく, 異なるスポーツ経験年数の集団間のデータ解析にも限界がある. そのため, 今後は, 調査対象者 数を増やし, スポーツ経験年数に偏りがないように考慮することにより, 運動イメージと運動ス キル, パフォーマンスとの関連を検討したい.

さらに, 今後は, 本研究を基礎とし, 空間認知や短期記憶力, 意思決定力, 判断力等の認知力 を向上させる要素を含んだイメージ・トレーニングを実施し, その効果を実証したいと考える.

また, パフォーマンス変数とイメージの明瞭性, 統御可能性, 認知力との関連性を検討すること により, より有効なイメージ・トレーニングの開発を行いたい.

謝辞

調査を実施するにあたり, 多大なご尽力を頂いた安藤勇介氏に感謝申し上げます. また, 快く 調査を引き受けてくださった調査対象者の皆様に厚く御礼申し上げます.

引用・参考文献

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(11)

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24)

(

) (

)

参照

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