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長期欠席と不登校の背景因子

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 不登校は文部科学省(以下文科省)によって長 期欠席のカテゴリーの元で「何らかの心理的、情 緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、

登校しないあるいはしたくともできない状況にあ るため年間30日以上欠席した者のうち、病気や 経済的な理由による者を除いたもの」と定義され

(文科省;不登校問題に関する調査研究協力者会 議 2003)、学校基本調査により集計されている。

 文科省が2013年8月に公表した平成24年度学 校基本調査年次統計速報値によると、長期欠席は

小 学 校53,916人(0.8 %)、 中 学 校121,345人

(3.42 %)、 う ち 不 登 校 は 小 学 校21,175人( 

0.31%)、中学校91,079人(2.56%)となっている。

全児童・生徒数に占める不登校の比率は平成19年 度に中学校2.91%、小学校0.34%を示して以降、

微減の傾向にあるが、年間30日以上の長期欠席 児童/生徒の発生率は平成3年度小学校0.71%、

中学校1.97%から、平成24年度の0.8%、3.42%

と増加したままであり、特に中学校は高止まり状 態にある。長期欠席の内不登校の占める割合は、

小学校39%、中学校75%となっており、対策の確 立は引き続き大きな問題である。

 わが国における不登校研究は1960年代に始ま り、第1期、「本人及び家庭に要因を求める時期」

第2期、「学校に要因を求める時期」第3期、「要 因 の 特 定 が 不 可 能 と な る 時 期 」( 花 谷・ 高 橋、

   Through interviews with student counseling teachers at middle schools, this study sought to clarify  the risk factors for school absenteeism and school non-attendance in terms of individual, family, and  school aspects. Results indicated that 1) there is a close relationship between parenting ability, i.e. 

inability to control oneʼs child, and the child not attending school due to delinquency or truancy, 2) the  problem of parenting ability may be related in part to school non-attendance due to an intellectual/

developmental disability or people-related anxieties/neuroses, 3) student counseling teachers tended  to  have  difficulty  deciphering  school-related  factors  for  non-attendance,  and  4)  interviews  did  not  reveal many family-related or school-related factors for school non-attendance due to people-related  anxieties/neuroses. The current findings suggest every child is potentially susceptible to developmental  issues. The current results were discussed from the perspective of preventing school absenteeism.

-G[YQTFU㧦risk factor, school absenteeism, school non-attendance, individual, family, school

*  やぐち きよし  文教大学人間科学部

** こしば たかこ  宮城学院女子大学

長期欠席と不登校の背景因子

−相談担当者への聞き取り調査から−

谷口 清

 小柴 孝子

**

The risk factors for school absenteeism and school non-attendance: 

According to interviews with student counseling teachers

Kiyoshi Yaguchi and Takako Koshiba

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ワーカーの配置等様々な対策が講じられてきた が、発生予防という観点からの効果は限定的であ る。学校での対策は、どうしても2次予防(早期 発見、早期対応)、3次予防(学校復帰への働き かけ)に焦点化される。不登校の発生要因に働き かける一次予防の観点からの取り組みは、学校の みでは不可能だからである(大対、大竹、松見  2007)。

 一次予防の観点から不登校の発生予防をはかる ためには、背景要因(危険因子)の把握が欠かせ ない。すなわち 「どの子にも起こりうる」 ことを 前提としながら、どのような要因が重なり合った 場合に不登校や長期欠席に陥りやすいか、何を きっかけとしているかなど、実状を精確に把握す ることが求められる。不登校に陥りやすい要因を リスクファクターとして把握し、その濃淡に応じ た支援、対応策を確立することが重要である。し かし、これまで必ずしも文科省分類に示される不 登校の背景にどのような要因が潜んでいるか、さ らにはその分類や集計の妥当性については必ずし も充分に検討されてこなかった。

 われわれは長年教育相談に関わり、不登校児童 生徒やその保護者並びに担当教員との接点から不 登校の経緯・背景を知る機会に恵まれてきた。し かしながら個別的接点のみでは必ずしも要因の全 体像やその関係を総合的には把握し難い。すなわ ち、要因間の関係を構造的に把握するためにも長 期欠席児童・生徒の的確なアセスメントを踏まえ た全数調査が望ましいと思われた。そこで我々は A市教育委員会の協力を得、効果的不登校対策の ための基礎資料を得ることをめざし、市内中学校 に在籍する長期欠席生徒に関し、教育相談担当教 員等を対象に聞き取り調査を行い、背景要因の分 析を試みた。

 具体的には個々の長期欠席生徒に関して欠席に 関連する情報を収集し、背景要因をさらに詳細に 分析するために聞き取りのためのチェックリスト

(文末資料)を作成した。新たに作成したチェッ クリストは、多くの不登校事例等に接してきたわ れわれが、これまでのケースファイルを分析して 関連する用語・項目を抽出し、対象生徒の背景要 因の特定を図ろうとして構成したものである。

2004)と考え方が変化している。第1期では母 子分離不安などの親子関係に要因を求め、その対 応策も精神医学における治療が中心であった。第 2期(1970年代から1980年代前半)は、学校要 因へと研究の主軸が変化し(保坂 1995)、子ど ものニーズに合わせた対応策が検討されるように なった。第3期(1980年代後半から現代)では、

発生要因に社会要因も加わり「不登校はどの子に も起こりうる」(文科省2003)との見方を踏まえ、

教育現場における対応や援助に重きが置かれるよ うになった(花谷・高橋 2004)。

 不登校の背景として指摘されてきた要因を具体 的にみると、本人要因としては無気力、学習意欲 の低下、耐性がなく未成熟、過剰適応、学校へ行 く義務感の希薄化等の問題、家庭要因として放任・

過干渉等家庭の教育力の低下、一部保護者の意識 の変化など、学校要因としてはいじめ、暴力等を 含む「学校の荒れ」、教師の指導スタイル、など があげられてきた(杉山他編 2001)。

 先に挙げた、不登校の3要因はそれぞれ関連し ている。例えば学校要因の友人関係で何をいじめ と感じるか(あるいは実際のいじめ場面での対処 技能)は本人の耐性、感受性,さらにはコミュニ ケーション能力が関係してくる。いじめ等「学校 の荒れ」は不登校増に直結するが、「荒れ」に対 する抵抗力の喪失を意味する無気力、耐性がなく 未成熟等の個人要因は家庭の教育力の低下、保護 者の意識の変化等の家庭要因と結びついている可 能性がある。本人の社会的能力のありようはそれま での子育ての結果だからである。しかし、既に生じ たいじめ、不登校を本人や家庭のせいにすると問 題解決につながらないだけでなく、有害な影響を 残すことから、タブーであった。

 学校は子ども達にとって社会そのものであり、

仲間と調和し、社会を構築する力を養う経験の場 と理解すると、学校からの退避にほかならない不 登校・長期欠席は社会性を獲得する機会そのもの の喪失を意味し、本人に社会的自立への大きな困 難をもたらすことになる(桑代、郷間、森下  2002)。従って不登校を含む長期欠席は発生予防 という観点からの取り組みが重要である。これま で、スクールカウンセラーやスクールソーシャル

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服装、振る舞いなどに逸脱傾向が見られるか、登 校しないことに後ろめたさを感じていないと判断 されるケースである。知的障害・発達障害系は、

これまでにそのような診断・評価を専門・相談機 関で受けたり、教育相談担当者の見方を裏付ける 事実が確認できる例である。

 学校要因については部活、クラス等で対人関係 のトラブル、不調のエピソードがきっかけとなっ ていることが語られたケースを対人関係とし、学 習上の躓きと見なされている例を低学力要因とし た。なお、教師とのトラブルが報告された例は1 例のみであったが、そのまま教師との関係と分類 した。

 家庭要因について、単親とは家族構成における 一人親家庭を指し、養育能力とは規則正しい生活 習慣を確立できず、子どもに支配・統制が充分に及 ばない家庭、家庭不和は両親もしくは嫁・姑など長 期的に家族関係が不安定なエピソードが示された ケース、経済困難とは生活保護や准要保護,あるい は学校納付金の遅滞などがあるケースである。

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ಽ㘃ߩᲧ₸ߣ⡞߈ขࠅ⺞ᩏߦࠃࠆਇ⊓ᩞⷐ࿃ߩ․ᓽ㧕  20xx年度A市内中学生の欠席状況一覧生徒の内 訳は、男女比で58%対42%と男子がやや多く、

学年別では1年生16%、2年生30%、3年生54%

となっている。文科省分類の欠席理由では病気・

けが(A:34%)、いわゆる不登校(C:30%)、

そ の 他(D:36 %) が3分 し、 経 済 的 理 由(B)

は存在しなかった。また、欠席理由Cの内訳では 意図的拒否は認められず、学校生活は1%、無気 力は2%であった。

 聞き取り調査による背景要因を分類して集計し たところ、個人要因では、怠学・非行系が最も多 く36%、対人不安・神経症系が26%、知的障害・

発達障害への言及のあったものが9%、個人要因 への言及の無かった空欄ケースが29%であった。

学校要因についてみると、空欄(学校要因を認め ない)が61%と過半数であり、教育相談担当と して学校要因を認めにくい傾向が示された。その

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1) 調査対象:A市内全中学校(12月期までの欠 席状況一覧生徒、当該年度30日未満の生徒を 含む)。ただし、調査時間の関係で1年生、2 年生を中心に聞き取りを行った。

2) 調査期間:20xx年2月〜3月

3) 調査項目:本人(以下個人)、学校、家庭に 関する聞き取り項目計22項目(文末チェック リスト)

4) 調査方法:相談室訪問による教育相談担当教 諭等からの聞き取り、あわせて前年度の相談 室訪問調査資料等を適宜参照し補足した。

5) 分類と集計:欠席状況一覧資料(文科省分類 による欠席理由等)と聞き取られた資料を匿 名化し、その上で聞き取り項目をカテゴリー 分類、その頻度ならびに相互関係を集計し、

検討した。カテゴリー分類は匿名化された長 期欠席生徒を個々にアセスメントして行った。

背景については、教育相談担当者により長期 欠席と関連すると考えられて述べられた個人、

学校、家庭の各側面に関する事項を、個人に ついては対人不安・神経症系、非行・怠学系、

知的障害・発達障害系の3つのカテゴリーに、

学校については対人関係、低学力、教師との 関係のカテゴリーに、家庭については,単親、

養育能力、家庭不和、経済困難のカテゴリー に分類して、それぞれの件数を集計した。

 各要因は相対的に独立して存在し、その相互作 用の結果として欠席(不登校)に至るとの考え方 から、聞き取り調査結果の集計は個人要因、学校 要因、家庭要因毎に行い、その相互関係の検討を 行った。個人・学校・家庭いずれも背景として言 及がなかった場合は空欄(当該要因無し)とし、

反対に要因を超えて複数のカテゴリー分類に該当 すると捉えられた場合は按分して複数に集計した。

 個人要因の内、対人不安・神経症系と見なされ たケースは対人関係に不安、恐怖を示すエピソー ドがあり、拒食や頭痛・腹痛などの心身症状を示 すケース等である。級友との接触を拒んだり、引 きこもり傾向を示す例もある。非行・怠学系とは

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けがとその他に教師への反発を除く各要因が認め られること、複合に低学力要因が関与しているこ とが示されている。

 文科省分類と家庭要因の関係(図3)では、病気・

けが並びにその他に全ての家庭要因が分布してい ることは同様であるが、病気・けがに家庭要因の不 存在を示す空欄が多いのに対し、その他では単親 や養育能力不足のケースが多くなっていることが特 徴である。不登校分類では複合に養育能力の問題 が多く、不安情緒で家庭要因空欄、遊び・非行で 養育能力不足の要因が相対的に多くなっている。

㧟㧚୘ੱⷐ࿃ޔቇᩞⷐ࿃ޔኅᐸⷐ࿃㑆ߩ㑐ଥ  背景要因間の関係をみると、家庭要因と個人要 因間の関係(図4)では、対人不安・神経症系の 要因を持つケースは家庭要因空欄の場合が多い。

怠学・非行系の要因を持つケースは養育能力の問 題と見なされていることが多い。知的障害、発達 障害系のケースでは相対的に養育能力不足の家庭 と見られているケースと重なる。

 学校要因と個人要因の関係(図5)では、学校 要因に空欄(学校要因の存在を推定できないケー ス)が多く、また教師への反発も1ケースのみの ため、対人関係と低学力についてのみ特徴を見る ことができる。対人関係要因は対人不安・神経症 系で相対的に多い。また低学力は怠学・非行系に 多く、対人不安・神経症系のケースも存在する。

ほか、低学力が多く(27%)、対人関係は11%、

教師との関係が指摘されたのは1件のみであっ た。学校嫌いの背景に本人にとっては友人関係や 教師との関係の困難が存在することが推測される ものの、教師の視点からはこれらが捉えにくいこ とが示された。家庭要因については養育能力に疑 問を呈するケースが最も多く36%、単親家庭の 記載が18%、家庭不和と経済困難がそれぞれ9%

と7%であり、家庭要因に関する指摘の無かった ケースが30%あった。

㧞㧚ᢥ⑼⋭ಽ㘃ߣ୘ੱⷐ࿃ޔቇᩞⷐ࿃ޔኅᐸⷐ࿃ߩ㑐ଥ  図1に文科省分類と個人要因の関係を3次元グ ラフにより示した。以下の3次元グラフでは頻度 は相対化されて示されている。

 病気・けがカテゴリーでは対人不安・神経症系 の例が多く、その他では怠学・非行系と個人要因 の記載のない空欄が相対的に多い。他のカテゴ リーでは複合に怠学・非行系が多く、また遊び・

非行は全て怠学・非行系の要因と分類された。不 安・情緒カテゴリーは当然のことながら対人不安・

神経症系の要因が相対的に多いが、知的障害、発 達障害系の要因を抱える例もあり、個人要因が空 欄になっているケースも認められる。

 文科省分類と学校要因の関係(図2)について みると、学校要因の介在を想定しない空欄がいず れのカテゴリーにも認められること、また病気・

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あると理解している。不登校は自我形成過程の困 難の現れである。前思春期から遊びの延長として 現われるいじめ、からかいはコミュニケーション 関係におけるヘゲモニー(優位性)争いの現れで、

感情の引き込み、引き込まれ(同調)の力関係の なかで現れる。そこで傷つきを体験した子どもは 意志決定の境界が侵害される感情から逃げるため に、同世代とのコミュニケーション関係を拒絶す る。ここに不登校の本質がある。

 学校という場は個人にとっては勉学、友人関係

(先輩・後輩を含む)、教師等大人との関係の3要 素からなり、それぞれは教室や部活という場・機  家庭要因と学校要因間の関係(図6)について

みると、家庭要因、学校要因それぞれに空欄(要 因を認めない)ケースが多く、また、家庭要因(福 祉的要因)の多くが学校要因の低学力に結びつい ていることが示されている。

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 本研究では不登校の発生予防を図る上で、背景 要因(危険因子)の正確な把握が不可欠との視点 で調査を行った。報告者は不登校を含む中学生の 長期欠席の背景には個人と学校の間の緊張関係が

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理由が特定できない者」などとされている。家庭 要因で単親や養育能力の頻度が高くなっているの は,保護者に子ども監護の余裕がない、あるいは 教育への理解が十分でない結果であることを示し ている。その他の個人要因で怠学・非行系の頻度 が高いのは、欠席理由が複数にわたるためと考え られる。

 個人要因と家庭要因間の関係では、対人不安・

神経症系と怠学・非行系に対比的特徴が認められ た。家庭の養育能力の低下が逸脱行動に結びつく ことは広く指摘されているが、対人不安・神経症 系については学校・家庭間の連携は維持されてい る例が多く、今回の調査では必ずしも家庭要因の 背景をうかがい知ることはできなかった。Prino  and Peyrot(1994)は5歳から8歳の子どもの行動 特性に対する虐待の影響を検討し、身体的虐待群 は攻撃行動が、無視群は引きこもりが、正常群は 向社会的行動が、他の2群より有意に多くなるこ とを観察している。中学生の不登校傾向と幼少期 の両親への愛着との関連を調査した五十嵐・荻原

(2004)は、対人不安(内閉、自信のなさ)は母 親との情緒的関係、遊び・非行(攻撃)は両親と の情緒的関係があることをみている。ここから、

今回対人不安・神経症系の家庭背景が浮かび上が らなかった理由として、1)親が気づかないまま の子どもへの心理的距離をとること(結果として の無視)により、本人の意志決定の機会を失し、

自己効力感や基本的信頼が充分に形成されず、人 への無意識的警戒から内閉的行動、あるいは対人 不安をもたらしている、2)親や教師が気づかな い友人とのトラブルやいじめの後遺症として対人 不安・神経症的行動になる(本間 2000)、のい ずれかの可能性がある。

 上記1)に関連する事例を紹介する。小学校1 年生男児で、学校が怖いと登校しぶりがあり、頭 痛、だるさ、微熱、過敏性腸症候群などの心身症 状を伴い、母親が同伴登校している。本人は、① 給食時間内に食べきれず残すといけないと教えら れているのに残すことに耐えられない、②予告無 く、不審者対応の訓練があって怖い思いをし、そ の後本当にそんなことがあったらどうしようと不 安になっている、③忘れ物をしていないのに、指 会を通して関係が取り結ばれる。人とのやりとり

や勉学に関する力は家庭環境を含むそれまでの成 育経験を通して形成されており、特に対人関係を 取り結ぶ基礎的力は素質的にも環境的にも家族の 影響力が大きいことは言うまでもない。即ち本人 の素質やそれまでの成育経験を通して培われた対 人関係能力を超えるストレスが、学校という場で 本人に加わった場合、本人は適応機制として学校 や対人関係を避ける,即ち不登校を含む長期欠席 事態に至ることになる。もちろん適応機制がひき こもる(内向)方向ではなく、攻撃的方向(外向)

に出た場合は非行・怠学系の現れ方となる。いず れも本人は無自覚のままではあるが、本人に新た に感じられてきた自我(自己)を守るための行動 に他ならない。

 本研究の結果を次のようにまとめることができる。

1. 子どもに支配・統制が及ばないなどの家庭の 養育能力と非行・怠学系不登校との間に密接 な関係が伺われた。

2. 家庭の養育能力の問題は知的障害・発達障害 系や対人不安・神経症系の一部とも関連してい る可能性が示された。

3. 教育相談担当者は不登校の背景に学校要因を 読み取りにくい傾向がある。

4. 対人不安・神経症系の家庭要因・学校要因は 空欄が多く、その背景は必ずしも明確ではな かった。すなわち発達途上の問題としてどの 子にも起こりうる可能性が示された。

 本研究における文科省の分類と3要因間の関係 では、相対的に病気・けがとその他の比率が高く なっている。病気・けがは個人要因、学校要因、

家庭要因とも空欄(当該要因無し)が相対的に多 いが、個人要因で対人不安・神経症系の頻度が高 いことが特徴的であった。これは病気・けがは家 庭要因、学校要因の背景を持つと見なされる例は 少なく、対人不安・神経症の現れとして腹痛や自 律神経症状などの心身症状が現れ、その診断・治 療のために通院がなされると病気と分類されるこ とを示している。

 その他は文科省の例示では「保護者の教育への 考え方や無理解、無関心などの家庭の事情、病気 と不登校など、欠席理由が2つ以上有り、主たる

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感を育めるようにすることが重要である。その際、

大対ら(2007)による3水準モデルは重要な視 点を提供していると思われる。

 本人の弾力性要因としては知的障害・発達障害 等による対人関係困難が先ず第1に挙げられる が、不登校に占めるその比率は必ずしも大きいも のではない(図1,図4)。不登校・長期欠席の事 例を詳細にみていくと知的障害・発達障害とは明 らかには判定されないものの、個別的課題の遂行 に部分的に困難を抱えるなどのいわゆる境界級の 子ども達が浮かびあがってくる。これらの子ども 達は教師達からは目立たないまま、他の優秀な子 ども達と同様の成果を期待されて日々困難な課題 に向き合っている。このような日常ストレスを背 景に友人関係における些細な行き違いをきっかけ として登校意欲が減退し、欠席にいたる経緯は充 分に推測しうることである。対人不安・神経症系 の不登校事例にこのようなケースが多数含まれて いる可能性がある。

 背景ストレスとして家庭不和や経済困難は常に 指摘されるところであるが、あわせて親の離婚や 死別などの喪失体験も本人には重くのしかかって いたりする。また学校の荒れや落ち着かない教室、

過重な学習課題などを含む教師の指導力の問題は 背景ストレスとして早くから指摘されてきた。こ れらの側面に日常的に着目し、家庭と協力しなが ら予防的配慮に努めることが、長期欠席発生率の 低減に効果的と思われる。

 本人の登校に家庭の協力が得られず、家庭が学 校からの働きかけを拒んでいるようなケースで は、その他や複合に分類されることが多い。従っ て不登校対応の効果判定は狭義の不登校の発生率 のみではなく、長期欠席発生率の動向を踏まえて 行われる必要がある。

 本報告では長期欠席の要因として家庭環境等の 福祉的要因に目を向けることの重要性を指摘し た。但し、本報告は長期欠席生徒のデータのみを 分析したものであり、家庭的要因を抱えつつも明 るく中学校生活を楽しんでいる生徒の実体を踏ま えていない。即ち一方的なものである。他方、本 調査を通して、不登校を含む長期欠席生徒の実情 把握が学校ないしは教員によってばらつきがある 示されたものがすぐに見つからないと忘れ物をし

たでしょうと叱られるのではないかと怖い、と 言っている。本人は一人っ子で母親は母子分離で きていない。母親は周りが見えない性格で、おしゃ べりが始まると止まらない。学校とも意志疎通が 上手にできていない。子どもの応答をゆっくり待 つことができず、過干渉的に育ててきた可能性が うかがわれる。子どもの内面をうかがうより先に 自分の思いが先行してしまう親と推測される。こ の場合、子どもは自分の思い、感情は放置された ままになるので、結局放任、無視と同じ結果にな る。母親は一所懸命で、放任しているとは全く考 えないが、子どもの感情への同調、同期がなされ ていないので、子どもは他者との感情の共有体験 が乏しいままに育ち、結果として他者の感情変化 への感受性は育っていない。その結果新しい環境 では接触してくる相手に対する基本的信頼が育た ず、不安、怖れが先行するものと思われる。これ はマイルドな愛着障害と見なさざるをえない。

 対人関係能力については幼児期早期の愛着関係

(アタッチメント)を基盤に内的作業モデルによ り人への信頼感が醸成され、人への距離の取り方 並びに自己の意志決定の有効性の感覚(自己効力 感)を獲得、自尊感情(プライド)を得て成長す るものととらえられている(林 2010)。

 思春期における不登校の背景に幼児期以来の育 ちの要因を想定することは当然のことである。近 年虐待を含め、家庭の養育困難が子の適応障害に 結 び つ く こ と は 広 く 知 ら れ つ つ あ る( 杉 山  2008)。家庭に居場所がなくイライラを解消した い子どもは、友人や甘えられる大人を求めて目立 ちたいがために逸脱行動にはしり、また力の弱い 子どもを巻き込んでいじめグループを形成し、そ こに居場所を見つけたりすることがある(非行・

怠学系)。

 不登校の発生を予防する上では先ず第1に子ど も達のストレス耐性やストレスに対する弾力性

(レジリエンス)を育成し、第2に学校や家庭に おける背景ストレス(家庭不和や荒れる学校、過 重な課題賦課など)を低減・除去し、第3に家庭・

学校に子ども達の居場所を作って子ども達が豊か なコミュニケーション能力と自尊感情、自己効力

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傾向と幼少期の父親および母親への愛着との関 連.教育心理学研究 52,264−276.

桑代智子・郷間英世・森下一(2002) 不登校を 経験した成人の対人関係について−バウムテス トによる検討−.教育心理学研究 50,345

−354.

大対香奈子・大竹恵子・松見淳子(2007) 学校 適応アセスメントのための三水準モデル構築の 試み. 教育心理学研究 55,135−151.

杉山登志郎(2008)子どものトラウマと発達障害.  

発達障害研究 30,111−120.

杉山登志郎・小枝達也・宮本信也・長尾圭造編

(2001) 学校における子供のメンタルへルス 対策マニュアル ひとなる書房

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 本調査はA市教育委員会の長期欠席生徒実態把 握の一部として行われたものです。本調査にご協 力いただいたA市教育委員会担当者各位、各校校 長を初めとする管理者並びに教育相談担当教諭、

相談員の皆様に感謝いたします。

ことを感じた。今後不登校・長期欠席対応には、

担任による家庭訪問を含め、家庭状況の的確な把 握と保護者との信頼関係の確立、円滑な意思疎通 が鍵となろう。

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花谷深雪・高橋智(2004).戦後日本における「登 校拒否・不登校」問題のディスコース:登校拒否・

不登校の要因および対応策をめぐる言説史. 

東京学芸大学紀要.第1部門,教育科学,55:

241−259.

林もも子(2010)思春期とアタッチメント み すず書房

本間友巳(2000) 中学生の登校をめぐる意識の 変化と欠席や欠席願望を抑制する要因の分析. 

教育心理学研究 48,32−41.

保坂亨(1995) 学校を欠席する子どもたち−長 期欠席の中の登校拒否(不登校)とその潜在群

−. 教育心理学研究 43,52−57.

五十嵐哲也・萩原久子(2004) 中学生の不登校

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 中学校の教育相談担当教諭への聞き取り調査により、不登校を含む長期欠席生徒の背景要因の検討を行っ た。その結果

1. 子どもに支配・統制が及ばないなどの家庭の養育能力と非行・怠学系不登校との間に密接な関係が伺わ れた。

2. 家庭の養育能力の問題は知的障害・発達障害系や対人不安・神経症系の一部とも関連している可能性が 示された。

3. 教育相談担当者は不登校の背景に学校要因を読み取りにくい傾向がある。

4. 対人不安・神経症系の家庭要因・学校要因は空欄が多く、その背景は必ずしも明確ではなかった。これ らのケースについてアタッチメント形成との関連を考慮した。

これらの結果を長期欠席の発生予防の観点から考察した。

(9)

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参照

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