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雑誌名 福井大学大学院工学研究科附属繊維工業研究センタ

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(1)

ポリビニルエーテルポリオールの合成とそれによる 新規ポリウレタン材料の開発

著者 橋本 保, 徳永 理子, 漆? 美智遠, 阪口 壽一

雑誌名 福井大学大学院工学研究科附属繊維工業研究センタ

ー年報

巻 4

ページ 4

発行年 2011‑07

URL http://hdl.handle.net/10098/3700

(2)

福井大学大学院工学研究科附属

繊維工業

研究センター年報

Annual Report of Research Center for Fiber and Textile Graduate School of Engineering, University of Fukui

2010

Vol. 4

Vol.42010

福井大学大学院工学研究科附属

繊維工業研究センター年報

表紙  11.7.26  10:09 AM  ページ1

(3)

目 次

1.巻頭言 ・・・・・ 1

2.22 年度の活動 ・・・・・ 2

(1)講演会等の開催

(2)研究活動

(3)研究助成

(4)委員会等

3.研究成果報告

(1)プロジェクト研究報告 ・・・・・ 3

(2)若手兼任教員研究費助成による研究報告および一般報文 ・・・・・ 20 アルミナ / シリカナノファイバーの形成と特性

瀬戸幹太・中根幸治・荻原 隆・小形信男 ・・・・・ 21 コロイド結晶ゲルの固定による構造発色フィルムの調製と

歪みセンサーへの応用

廣垣和正・神野裕幸・田畑 功・久田研次・堀 照夫 ・・・・・ 26

4.兼任教員研究活動一覧 ・・・・・ 31

5.兼任教員および運営委員会等の名簿 ・・・・・ 42

あとがき ・・・・・ 43

(4)

1.巻 頭 言

センター長 末 信一朗

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は未曽有の大震災を引き起こし、特に東 日本太平洋沿岸には大津波による甚大な被害をもたらしました。お亡くなりになられた方々に哀 悼の意を表すとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

このような時期ではありますが、平成23年度より繊維工業研究センター長を仰せつかりました。

これからは震災からの復興や防災研究に本センターがどのように貢献し取り組んでいくことがで きるかということも課題としていきたいと考えております。また、今回の震災を機に従前からの 課題であったエネルギー・環境問題のみならず科学技術と自然との調和や日本人のライフスタイ ルの在り方そのものまでが大きく見直しを求められています。その中で「繊維」が果たす役割は 極めて大きいものがあると思います。従来より、本センターでは、「高機能・環境対応の繊維材料 および環境に優しい繊維加工法」を重点研究テーマとして設定していましたが、平成22年度より 新たにナノファイバーの創成と応用をもうひとつの重点テーマとして掲げ若手教員への助成や兼 任教員の各プロジェクト研究を支援することになりました。また、昨年度から引き続いてファイ バーアメニティ工学専攻と本センターが一体化した形での福井大学における繊維に関する教育・

研究の在り方について若手教員を中心に熱心に議論を行ってきました。こうした取り組みの成果 は少しずつですが挙がってきており、例えばファイバーアメニティ工学専攻では平成23年度より 教員構成もより繊維に特化した教育・研究に対応した体制へとシフトすることになりました。さ らに本センター兼任教員も大部分を占める材料・化学・バイオ系の教員に加えて、繊維に関わる あらゆる周辺分野からの参画も見られるようになりました。

このような取り組みの積み重ねにより本センターにおける繊維科学の研究成果が産業界に応用 されこれからの新しい時代を開いていくと確信しておりますので、どうぞ皆様方のご支援、ご鞭 撻をよろしくお願いします。

(5)

2.22 年度の活動

(1)講演会等の開催

講演会等の活動として、以下の

3

件の活動を行った。

ア.International Symposium on Advanced Fiber/Textile Science and Technology (ISAF) 2010 in Fukui(共催)

11月15日~17日 福井大学

イ.講演会「医療機器における繊維・高分子材料」(共催)

23年3月7日 福井大学 ウ.繊維工業研究センター発表会

23年3月7日 福井大学

(2)研究活動

研究活動として、プロジェクト研究を行った。

・ポリビニルエーテルポリオールの合成とそれによる新規ポリウレタン材料の開発

・リビング重合法を用いた種々のブロックコポリマーおよび繊維状集合体の合成

・オキシエチレン鎖を含むポリビニルエーテル架橋膜の合成と二酸化炭素分離

・福井特産天然ファイバーの新展開

・リパーゼの高機能化を目指したエラープローンPCRによるリパーゼ変異体の取得

・塩を溶解した有機溶媒中でのポリアミドの修飾反応と応用

・電子線グラフト重合法を用いる高効率レアメタル吸着繊維の創製

・超臨界二酸化炭素を用いた金属複合化による導電性繊維の調製

・キトサンナノファイバーsheetの構造と性質

・有機-無機ハイブリッドを前駆体とした遷移金属化合物ナノファイバーの形成

・フッ化アルキル基を含むハイパーブランチポリマー/ポリウレタンナノファイバーマットの作 製およびその構造と特性

・溶融混練によるポリプロピレン/気相成長炭素繊維系複合体の機械的特性に及ぼす電子線照射 の影響

・ポリエチレン/気相成長炭素繊維系複合体の溶融押出特性

・導電性布帛を電極層として利用した高分子アクチュエータの創製

・高速気流中における糸挙動モデルの提案

・ヤーンサクションガンの形状・寸法がガン内の空気流と糸吸引力に及ぼす影響

(3)研究助成

繊維工業に関する試験研究を推進するため、次の2件の研究課題に対し研究費の一部を助成した。

平成 22 年度研究課題および研究担当者一覧

番 号 研 究 課 題 研究担当者 1 自己組織化を利用した不織布作製に関する研究 植松 英之 2 CFD技術を用いた高速気流中糸挙動の予測法の開発 太田 貴士

(4)運営委員会等

運営委員会

7月 13日 (火)13:30- 工学部多目的会議室

2月 24日 (木)13:30- 工学部建築建設工学科会議室 幹事会

6月 22日 (火)16:30- 材料開発工学科会議室 8月 2日(月)13:00- 工学部多目的会議室 10月 26日 (火)11:00- 材料開発工学科会議室

2月 2日(水)14:45- 同上

(6)

3.研究成果報告

(1) プロジェクト研究報告

(7)

[1]ポリビニルエーテルポリオールの合成とそれによる新規ポリウレタン材料の開発 工学研究科 橋本 保,徳永理子,漆﨑美智遠,阪口壽一 1.緒言

ポリウレタンは複数個のイソシアナート基を有する分子と複数個のヒドロキシ基を有する 分子(ポリオール)との反応により合成され,様々な用途に用いられている。ポリウレタン の性質や機能を大部分決定づけるのは原料ポリオールであるので,高性能,高機能のポリウ レタンを開発するためには新規のポリオールの開発が重要である。

本研究では,新型ポリオールとして,腕鎖の末端にヒドロキシ基を持つ星型ポリビニルエ ーテルを合成することを検討した(Scheme 1)。星型ポリマーとは,中心核から放射状に高 分子鎖(腕鎖;Arm)を有する分

岐高分子である。このような星型 ポリマー構造をポリオールに応用 すると,ポリオール1分子に多く のヒドロキシ基をもつ多官能性ポ リオールが比較的簡便に合成でき ると期待される。さらに,この多 官能性ポリオールを用いると,容 易に架橋ポリウレタンを合成でき る。

2.実験

疎水性の側鎖を有するn-ブチル ビニルエーテル(NBVE)または 親水性の側鎖を有する2-メトキシ エチルビニルエーテル(MOVE)

を,2-アセトキシエチルビニルエ ーテルの塩化水素付加体(1)を塩 化亜鉛と組み合わせて開始剤とし て用い重合し,生成したリビング ポリマーに架橋剤としてジビニル エーテル(CHDVE)を加え反応さ せ星型ポリマーを合成した。その 後,開始末端部分のエステル基を 加水分解しヒドロキシ基に変換し,

多官能性星型ポリビニルエーテル

ポリオール(star-PNBVE-OH,star-PMOVE-OH)を合成した。

3.結果と考察

LALS-GPCより求めたstar-PNBVE-OHのMn(絶対分子量)は49900となり,アセチル化 法によるヒドロキシ含量より求めた腕鎖1本の分子量を用いてArm数を求めると23であっ た。同様に求めたstar-PMOVE-OHのMnは51400,Arm数は26であった。これらの星型ポ リオールとジイソシアナート(TDIまたはMDI)を反応させポリウレタンを合成した(Scheme 2)。親水性ポリマーセグメントを有するstar-PMOVE-OHから合成したポリウレタン膜は,

室温では水を吸い込み膨潤するが,67℃に加熱すると水を放出する温度応答性を示した。

Scheme 1. Synthesis of multifunctional star-shaped poly(vinyl ether) polyols.

CH2 CH OR

Crosslinking

Hydrolysis H2O/NaOH CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

Cl

CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

CH2 CH OR

CH2 CH OR

Cl ZnCl2 n-1

CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

CH2 CH OR

CH2CH OR H2C CH

O O

HC CH2

CH2 CH O

O HC CH2

CH2CH2

HO O CH

CH3 CH2 CH

OR CH2 CH

OR Monofunctional Initiator

CH2 CH O

O HC CH2 O

O O

O O

O O

O

O

O O

O ZnCl2 in Toluene, at -30oC

CH2CH2

O O CH

CH3 CH2 CH

OR CH2 CH

OR C

H3C O

Living Polymerization

CHDVE

star-PNBVE-OCOCH3, star-PNBVE-OH : R = CH2CH2CH2CH3 star-PMOVE-OCOCH3, star-PMOVE-OH : R = CH2CH2OCH3

n-1

n-1

n-1

Scheme 1. Synthesis of multifunctional star-shaped poly(vinyl ether) polyols.

CH2 CH OR

Crosslinking

Hydrolysis H2O/NaOH CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

Cl

CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

CH2 CH OR

CH2 CH OR

Cl ZnCl2 n-1

CH2CH2 O C H3C

O

O CH CH3

CH2 CH OR

CH2CH OR H2C CH

O O

HC CH2

CH2 CH O

O HC CH2

CH2CH2

HO O CH

CH3 CH2 CH

OR CH2 CH

OR Monofunctional Initiator

CH2 CH O

O HC CH2 O

O O

O O

O O

O

O

O O

O ZnCl2 in Toluene, at -30oC

CH2CH2

O O CH

CH3 CH2 CH

OR CH2 CH

OR C

H3C O

Living Polymerization

CHDVE

star-PNBVE-OCOCH3, star-PNBVE-OH : R = CH2CH2CH2CH3 star-PMOVE-OCOCH3, star-PMOVE-OH : R = CH2CH2OCH3

n-1

n-1

n-1

Scheme 2. Synthesis of poly(vinyl ether) polyurethanes.

CH2CH O

OCH CH2 l m

Heating

CH2CH2O CH CH3

CH2 CH OR

CH2 CH OR N

C O

H O

CH3 N C O H O CH2CH2

HO O CH

CH3 CH2 CH

OR CH2CH n-1 OR

N C O

CH3 N C O +

N C O CH2

N C O

CH2 CH2CH2 O CH CH3

CH2 CH OR

CH2CH OR N C O

H O N

C O

H O

or

or

MDI TDI

star-PNBVE-OCOCH3, star-PNBVE-OH : R = CH2CH2CH2CH3 star-PMOVE-OCOCH3, star-PMOVE-OH : R = CH2CH2OCH3

n-1

n-1

(8)

[2]リビング重合法を用いた種々のブロックコポリマーおよび繊維状集合体の合成

工学研究科生物応用化学専攻 ○杉原 伸治・池田 功夫 シェフィールド大 Steven P. Armes

1. 諸言

精密重合法の一つであるリビング重合法は,繊維表面等の改質のための高密度表面グラ フト重合等へ応用が可能であり,高付加価値のある繊維材料構築のための重要な技術の一 つである。一方,リビング重合法によって機能性高分子材料を合成する技術も更なる検討 が必要であり,その重合手法を生かす方法論が求められている。本研究では,生体膜構成 成分であるリン脂質(ホスホリルコリン基)を有するバイオミメティックモノマーMPCを 用い,①バイオミメティックナノケージの合成および②ナノ繊維状のウォームおよびベシ クルのワンポットリビングラジカル重合法にて検討した。

2. 実験方法

① 2-(dimethylamino)ethyl methacrylate (DMA) お よ び 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphorylcholine(MPC)をポリエチレンオキシド(PEO)マクロ開始剤より逐次重合し,

PEO-DMA-PMPCトリブロックコポリマーを合成した。ワンポットにて集合体を簡単に得

るために,9:1 イソプロピルアルコール(IPA)/水混合溶媒中で,Cu(I)Br およびビピリジ ンを用いた原子移動ラジカル重合系にて40 ℃で合成した。得られたABCトリブロックコ ポリマーは,本溶媒中にてMPCをコア,DMAを内部シェル,PEOを外部シェルとするオ ニ オ ン ミ セ ル を 形 成 す る た め , 内 部 DMA シ ェ ル だ け を 選 択 架 橋 可 能 な 1,2-bis(2-iodoethoxy)ethaneを用い,5日間架橋反応を行い,シェル架橋型(SCL)ミセル を得た。得られたSCLミセルを透析することで,目的のナノケージを得た。

② PMPCの水溶液特性を生かし,①とは逆にPMPCを分散安定剤(シェル)として用い

る重合をRAFT(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer)重合系にて行った。

3. 結果と考察

MPCをコアとするミ セルの合成は,右図に示 すスキームに従い行っ た。ABC トリブロック 合成段階のATRPでは,

40 ℃にて通常のATRP 条件で重合が進行し,逐 次モノマー添加後も重

合がスムーズに進行した。架橋後に得られたシェル架橋型ミセルを透析しIPAを除去した ところ,内部が水で満たされた人工リポソーム型ナノケージが得られた。これらの構造は,

AFMによって詳細に検討した。②ついては,研究報告会にて発表する予定である。

Fig.1 One-pot synthesis of shell cross-linked micelles at 10 wt. % solids using a PEO-PDMA-PMPC triblock copolymer.

(9)

[3]オキシエチレン鎖を含むポリビニルエーテル架橋膜の合成と二酸化炭素分離

工学研究科 阪口壽一,岩瀬篤哉,橋本 保

1. 緒言

オキシエチレン鎖を有するポリマー膜は二酸化炭素の溶解度が高いため窒素との高い選択透 過性を示し、二酸化炭素分離膜としての応用が期待できる。オキシエチレン鎖を有するビニルエ

ーテル[MEEVE]のホモポリマーはガラス転移温度(Tg)が低く、単独では製膜することができない。

そこで架橋部位を有するビニルエーテルモノマー[VEEM]をコモノマーとして共重合し、製膜後 に架橋することによるオキシエチレン鎖を有するポリビニルエーテル膜の合成を検討した。

2. 実験

重合はトルエン溶媒中、乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤にはイソブチルビニルエーテル酢酸付

加体(IBEA)/Et1.5AlCl1.5を用いて行った。ポリマー架橋膜は、ポリマーのジクロロメタン溶液をシ

ャーレにキャストし、室温で乾燥させた後、50 °Cに加熱することにより調製した。

3. 結果と考察

カチオン共重合の結果を表1に示す。MEEVEとVEEMの仕込み比に対して生成したコポリマ ーの組成比はMEEVEが高くなった。熱架橋前後のポリマーのIRスペクトルを図1に示す。重 合により得られた直後のコポリマーは1600 cm-1付近にC=C

由来の吸収が見られたが熱架橋後には1600 cm-1の吸収は減 少した。このことから熱によりアクリレート部位が反応し架 橋したと考えられる。

コポリマー膜の CO2透過係数と CO2/N2選択性を表1に示す。

いずれのポリマー膜も CO2/N2選択性が37以上と高い値を示 した。特に、高いオキシエチレン含有率の膜は選択性が 50 以上であった。オキシエチレン鎖が CO2に対して高い親和性 を持つため、そのオキシエチレン鎖を多く有するほど CO2/N2 選択性は上がったと考えられる。透過係数(P)はオキシエチレ ン含有率の増加に伴い、大きく増加した。これは架橋点が少 なくなるにつれ、ポリマー鎖の運動性がより高くなりガスの

Scheme 1. Synthesis of poly(vinyl ether)s bearing oxyethylene units by cationic copolymerization

Figure 1. IR spectra of copolymers before and after cross-linking.

Table 1. Results of copolymerization a) and CO2 permeability feed ratio

MEEVE : VEEM time, h conv., % b) MEEVE VEEM

composition ratio c)

MEEVE : VEEM Mn Mw/Mn PCO2,

barrer d) PCO2/PN2

1 : 1 9 82 80 1.4 : 1 72,000 1.61 3.7 37

2 : 1 7 81 79 3.3 : 1 78,000 1.40 46 58

4 : 1 6 89 87 5.4 : 1 59,000 1.46 120 56

a) In toluene at 0 °C; [M]total, 0 = 1.2 M, [IBEA] = 1.0 mM, [Et1.5AlCl1.5] = 20 mM. b) Measured by GC. c) Determined by 1H NMR. d) 1 barrer = 1×10-10 cm3(STP)×cm / (cm2×s×cmHg).

(10)

[4] 福井特産天然ファイバーの新展開

○ 工学研究科 生物応用化学専攻 寺田 聡、 産学官連携本部 柳原 佳奈、

繊維工業研究センター 佐久間 紹子 1.緒言

動物細胞の培養では培養液に牛胎仔血清(FBS)など何らかの哺乳動物由来因子が生理活 性因子として添加されており、BSEやウイルス等の人畜共通感染症が懸念される。そこでこ れら因子を含まない培養が望まれていることから、本研究では哺乳動物以外に由来する因 子として,福井特産の天然ファイバーに着目した。一つは、絹タンパク質セリシン加水分 解物で、一つは、栽培植物であるラッキョウ由来のフルクタンとである。

2.実験方法

ラッキョウから、異なる方法で3種類のフルクタンを調製した。このフルクタンを10 μg/mlの濃 度でASF104無血清培地(味の素)に添加し、ハイブリドーマ2E3-O細胞を24穴プレート(住友ベーク ライト)に1.6×104 cells/mlの密度で播種し、4日間培養した。1日ごとに生細胞数をトリパンブル ー染色法を用いて血球算定盤で計数し、それぞれ比較した。次に、限外濾過膜(分画分子量10,000)

を用いてフルクタンを2つに分画した。残留したものと透過したものをそれぞれ、高分子フルクタン、

低分子フルクタンと命名し、比較した。

3.結果・考察

異なる方法で調製した3種類のフルクタンを用いて細胞の増殖を比較したところ、フルクタン① と②に増殖促進の効果が見られ、③には見られなかった (図1) 。このことより、フルクタンは調製 方法が異なると細胞の増殖効果が相違すると思われる。さらに、上で述べたように、フルクタンの 分子量は幅広い。このことから、分子量によって細胞増殖効果が異なるのではないかと考えられた ため、高分子(分子量 1万 以上)と低分子(分子量1万 以下)に分画することで、細胞の増殖作用を 比較した。ここでは特に、細胞増殖の効果が見られたフルクタン②に着目した 。図2に示されるよ うに、高分子と低分子フルクタンはほぼ同等な増殖促進の効果がみられた。以上のことから、フル クタンは分子量に関係なく、増殖促進に対して効果があると思われる。今後、細胞増殖をより促進 させるために、フルクタンをどのように調製すべきか、検討する。

(11)

変異株

相対活性

変異株

相対活性

Fig.1 各変異体の脱アセチル化活性

K169I V318A

触媒ドメイン リド ドメイン

K169I V318A

触媒ドメイン リド ドメイン

K169I V318A

触媒ドメイン リド ドメイン

Fig. 2 ROL変異体の変異導入点 [5] リパーゼの高機能化を目指したエラープローン PCR によるリパーゼ変異体の取得

末 信一朗、吉村英晃、黒田浩一、植田充美 1. 緒言

現在、アセテート繊維ではアルカリ減量加工が用いられているが、廃液の環境負荷の問題などか ら、環境にやさしい酵素などの生体触媒による減量加工法が模索されている。これまでに、我々は、

エステラーゼの一種であるリパーゼによってアセテート繊維の脱アセチル化反応を行った後、セルラ ーゼにより加水分解する方法を検討してきた。しかし、既存のリパーゼは脱アセチル化活性が低いた めリパーゼとセルラーゼを組み合わせた減量加工の実用性は低かった。そこで、脱アセチル化反応 を効率よく行うため、エラープローンPCR法を用いてRhizopus oryzae(クモノスカビ)由来のリパー ゼ(ROL)の遺伝子レベルでの改変を試みた。ROLをコードしたProROL遺伝子配列中へランダム な変異を導入し、さらに細胞表層工学を用いることでハイスループットなスクリーニングを行い、セル ロースアセテート(CA)に対する脱アセチル化活性のより高い変異体の取得を目指した。

2.実験方法

Pro ROL遺伝子を鋳型としてエラープ ローン PCR を行うことでランダムに変異 が導入されたインサート(断片)を得た。こ れを酵母細胞表層提示プラスミドである pWIFS のベクターをライゲーションする ことで ROL 変異体表層提示プラスミドを 構築し、変異体ライブラリーを取得した。

次にp-nitrophenyl acetateを基質とし

て用いた一次スクリーニングを行い、さらに基質として粉砕処理を施したセルローストリアセテートを 用い、酵素反応で生じた遊離の酢酸を、HPLCにて検出することで二次スクリーニングを行った。

3.結果と考察

得られた1500株の変異体の1次・2次スクリーニングを行った結果、WT(野生型)よりも高い活性を示 した変異体酵母11株を得た(Fig. 1)。中でも、No. 383はWTに対して1.7倍と最も高い脱アセチ ル化活性を示した。このNo.383 の変異部位の確認を行ったところ、2 ヶ所にアミノ酸残基の置換が みられた。そこでROLと99%の相同性をもつRNLの

三次元立体構造を基にpymol を用いてROL の三次 元構造を予測した。No.383 の変異導入部位は、ROL の触媒部位とは隔離されており、変異と機能向上との 相関を論じるのは困難であった。次にクイックチェンジ 法によりK169IとV318Aの変異をそれぞれ一つずつ WT へ導入し、どちらの変異が活性に影響を与えてい るのかを検討した。その結果、WT よりもすべての変異 体においてWTよりも高い活性がみられ、No. 383は二 つのアミノ酸変異による相補的な相加効果から脱アセ

チル化活性の上昇につながったと考えられた。今後は、得られたNo, 383をもとに二次エラープロー ンPCRにより脱アセチル化活性の高い変異体酵母の取得を目指していく。

Lid

(12)

[ 6 ] 塩を溶解した有機溶媒中でのポリアミドの修飾反応と応用

工学研究科 ○池田功夫、栗山 亘、碓井章史、杉原伸治 1.緒言

四級アンモニウム塩のフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を溶解したジメチルスルホキシド

(DMSO)が室温でセルロースを、加熱下でケブラーを溶解し、これらの高分子の化学修飾が均一系で 行えることをここ数年報告してきた。

今回はケブラー以外のポリアミド、すなわち、ナイロンやメタ型アラミドについて本溶媒への溶解性 や反応性を検討した結果を報告する。またケブラー溶液の応用として、他の高分子溶液との混合で複合 繊維の作製を試みた。

2.実験方法

ナイロンとして6と66、アラミドとしてケブラーとメタ型のコーネックスを用いた。塩としてTBAF のほかに塩化リチウムと塩化カルシウムを用い、溶媒にはDMSOのほか、N-メチルピロリドン(NMP) とジメチルアセトアミド(DMAc)を用いた。ポリアミド(PA)のアルキル化はPAを各溶媒に溶解し、

水素化ナトリウムとの反応でアミド基をNa化し、次いで種々の臭化アルキルを40℃で反応させて行っ た。ε-カプロラクトン(CL)のグラフト重合もアルキル化と同様の条件で行い、ホモポリマーはアセ トンによるソックスレー抽出で除去した。反応度の測定は窒素分析で行った。ケブラーと他の高分子と の複合繊維は混合溶液を注射器で水中に押し出すことで作製した。

3.結果と考察

5%LiCl/NMP、5%LiCl/DMAc、5%CaCl2/NMP、10%TBAF/DMSOの4種の溶液に対する各 種PAの溶解性を80℃の加熱下で調べたところ、ナイロン6とコーネックスで溶解性が大きかった。

溶解PAについて、アリル化などのアルキル化を行い反応性を調べたところ、ナイロンに比べアラミド の反応性が大きかった(表)。溶剤としてはTBAF/DMSO系が最も適していた。CLのグラフト重合も 同様であり、アラミドでのグラフト率は50-60%であった。

ケブラーと他の高分子を種々の比率で混合し作製した複合繊維の強伸度を図に示した。混合する高分 子として、セルロース、PVA、ナイロン6 を用いたが、混合により強力、伸度ともケブラーより低下し た。特にセルロースの混合で低下の度合いが顕著であった。しかし低下の程度が許容範囲であれば、本 法で複合繊維の調製が可能である。

Alkylation of polyamides in TBAF/DMSO

R Nylon 6 Conex Kevlar

C4H9

C8H17

C12H25

C16H33

C22H45

Benzyl Allyl

0 0.01 0.02 0.11 - 0 0.2

0.12 0.11 0.16 0.32 0.21 0.45 0.63

0.40 - 0.41 - 0.36 0.49 0.77

Kevlar: 2200 mN Kevlar: 48%

K, Kevlar ; N, Nylon 6 ; A, PVA ; C, Cellulose

Strength and elongation of conjugated Kevkar

(13)

7

]電子線グラフト重合法を用いる高効率レアメタル吸着繊維の創製

工学研究科 ○堀 照夫,廣垣和正,久田研次,酒井智貴,田畑功 1. 緒言

レアメタルは自動車、IT 部品等の製造に不可欠であるが、世界的な需要の高まりにより 価格が高騰し、また生産は少数の国の独占状態にあり、安定供給が問題視されている。

我々は、工場排水や海水などから効率良くレアメタルを回収できる繊維状吸着材の創成 を目指している。吸着性能の付与には電子線照射グラフト重合法を用いた。

2. 実験および結果 2-1 試料

繊維材料としてはソフィスタ(クラレ㈱)の不織布を用いた。この繊維はエチレンとビ ニルアルコールのランダム共重合体であるエバールを鞘、PET を芯とした芯鞘複合繊維であ り、PET 部が繊維強度を確保し、エバール部は容易に電子線グラフト重合できる。

グラフト用モノマーとしては金属イオンを吸着できるアクリル酸を用いた。

2-2 電子線グラフト重合

電子線グラフト重合は前照射法で行った。まず、

所定量の繊維材料をポリエチレン袋に入れて窒素 通気をすることで、酸素を除去した。その後、密 閉したまま袋ごと電子線を照射することでラジカ ルを発生させた。試料を取り出し、アクリル酸溶

液に浸漬させ、所定条件でグラフト重合を行っ

Fig.1 グラフト前、(左)、後(右)の繊維断面

た。 最後に試料に残った未反応モノマー、ホモ

ポリマーを洗浄により除去した。FT-IR 測定結果、アクリル酸グラフト試料では 1700cm⁻付 近に C=O の伸縮振動ピークが検出されたこと、カチオン染料の吸着等で確認した。

グラフト前後の繊維の SEM 観察の結果、PET 部はほとんど変化なく、エバール部分の厚み が大きくなり、この部分が主にグラフト重合されていることが明らかとなった(Fig.1)。

2-3 金属イオン吸着

グラフト率に対する電子線照射線量の影響 を調べた結果、50kGy から 250kGy までは線量 とともにグラフト率は増加し、300kGy ではグ ラフト率は低下した。

また、モノマー濃度が上がるとグラフト率は 増加したが、モノマー濃度が 20%以上のときは 布帛の状態を保てなくなりゲル化した。

170%グラフトした試料を用いサマリウム

Fig.2 グラフト率のモノマー濃度依存性

Sm イオンの吸着性を調べた。Sm イオンの

分析はキシレノールオレンジ水溶液を用 い、呈色させ、比色分析法により行った。

浴比 1:50 で 10ppm 水溶液を吸着させ たところ、10 時間で浴中の約 95%のサマ リウムが吸着できた。また浴比は 1:10000 で最大吸着量を求めたところ、pH6.63 で

は処理布 1kg で 77g の Sm が吸着できた。

本研究はクラレ㈱との共同開発である。 Fig.3 グラフト不織布の Sm 吸着

0 20 40 60 80 100

0 5 10 15 20 25

Sm z (%

)

吸着時間(h)

AAグラフト不織布 未処理

(14)

[8] 超臨界二酸化炭素を用いた金属複合化による導電性繊維の調製

工学研究科 廣垣和正,恒川泰伸,田畑 功,久田研次,堀 照夫 1. 緒言

ナノファイバーは,従来からの繊維と比べて圧倒的に大きな表面積を持ち,その布帛は吸湿性や フィルター性などの機能・性能が飛躍的に向上すると期待されている.近年,エレクトロスピニング法 に代表されるナノファイバーの紡糸法が盛んに研究され,その実用化が始まろうとしている.ナノファ イバーの実用化には,用途に応じた機能加工が不可欠であるが,樹脂加工やめっきなど繊維表面 を加工剤で被覆する従来からの方法では,ナノファイバーの特徴である小さな繊維径を損ねる.本 研究では,繊維の重要な機能加工のひとつである導電加工として,めっきや樹脂加工と比べ繊維径 に及ぼす影響が小さい,繊維内部への後加工による金属複合化を検討した.

2. 実験方法 超臨界二酸化炭 素(scCO2)を媒体と し,繊維に有機金属 錯体を注入する.注 入した錯体に水素を 作 用 さ せ 還 元 分解 し,遊離した金属を 繊 維 内 部 に 析 出 さ

せる.これにより,繊維に金属を複合化して導電性を付与する.ナノファイバーは入手が困難であっ たため,そのモデルとして汎用のナイロン-6 繊維を用い,金属複合化により繊維に導電性が付与で きるか検討した.繊維への錯体の注入は,scCO2 を媒体に用い,錯体量 100%owf,浴比 1:250,

120℃,25MPa,15h の条件で行った.錯体の還元分解は,錯体量の 10mol 当量の水素を用い,

120℃,0.5MPa,3h の条件で行った.金属を複合化した繊維の導電性は,布帛の体積抵抗率から

評価した.繊維の金属複合化構造は,繊維断面の顕微鏡観察および,X線光電子分光法(XPS)を 用いた元素分析により評価した.

3. 結果と考察

金属を複合化した布帛の写真および,体積抵抗率,重量増加率を図 1 に示す.布帛は,金属を 複合化することで変色し,特に二種類の錯体を1:1で混合して処理したとき,金属光沢のある銀色を 呈した.錯体を単独で用いた布帛と比べ,混合して用いた布帛は低い体積抵抗率を示し,その値は 102Ω・cmのオーダーであった.また,錯体を混合して用いた布帛は,単独で用いたものと比べて重 量増加率が大きく,XPSにより求めた錯体の還元分解率も高かった.錯体を混合することで,錯体の 繊維への注入量が増加し,さらに水素処理による還元分解が促進された.錯体を混合して用いた布 帛の断面観察および,XPSによる深さ方向の元素分析から,繊維内部に金属が複合化されているこ とを確認した.金属の複合化率は,繊維表面近傍では10atomic%であり,繊維内部に向かって緩やか に減少した.以上より,scCO2 を用いた金属複合化により,繊維に導電性を付与できた.今後は,繊 維の金属複合化構造を制御し,より高い導電性の付与を目指すと共に,本研究で開発した技術をナ ノファイバーに適用していく.

未処理 錯体A 錯体B 錯体A+B

≧1015Ω・cm ≧1015Ω・cm 1.65×1010 Ω・cm 4.07×102 Ω・cm

― 2.8 wt% 0.5 wt% 9.8 wt%

図1 各種錯体を用いて金属複合化したナイロン布帛 上段から,写真,表面抵抗率,錯体注入後の重量増加率

(15)

[9] キトサンナノファイバーsheet の構造と物性

福井大学大学院工学研究科 ○桜井謙資,岸田友貴

1)

緒言

我々はキトサン

(CS)

、ポリエチレンオキシド

(PEO)

から

CS/ PEO

複合ナノファイバ ー

(NF)

シートを電界紡糸法で製作し, 創傷治癒効果のある医用材料になることを報告し てきた.本研究では

CS/PEO

複合

NF

シートについて材料的観点から研究した.特に

NF

の配向、

NF

のシートの含水性、みかけの弾性率等について検討した.

2)

実験方法

紡糸溶液

:CS

を酢酸水溶液に溶解し,さらに

PEO

を加え紡糸溶液を調製した。

CS/PEO

の混合割合は

10/2, 8/2, 6/4, 4/6 2/8, 0/10

6

種類とした。回転コレクターを もつ電界紡糸装置を用いて、

NF

シートを作製した。

NF

のモルフォロジーや結晶配向 を

SEM, WAXD

で観測した。また、

NF

シートの含水度,弾性率、

FT-IR

測定を行った。

3)

結果と考察

Fig.1

CS/PEO(2/8)

の回転数

(a)500rpm, (b)3000rpm

で集積し た

NF

SEM

写真を示す。直線的 で綺麗な

NF

が作製された。

高回転数の

(b)

では繊維が配向して いる。繊維直径は約

220nm

である。

(2/8)NF

シートの

30

℃における 貯蔵弾性率は回転数が上がるにつ

れて増加した。

NF

の繊維配向によると考えられた.

NF

シートの含水度は

CS

の混合割合が減るにつれ減少した。

SEM

観察から含水度 の高い

NF

シートは含水前後で形状変化が少なかった.ナノ繊維間の空隙が含水量に直 接関係している.

CS/PEO(8/2) NF

シートの高い創傷治癒効果について既に報告している.主な要因は

CS

の創傷治癒特性によることは言うまでもないが,

NF

のよる莫大な比表面積,すな わち有効な反応場が非常に大きいこと,さらに本研究で明らかにした

NF

シートの高い 含水度,すなわち,保水性能が非常に大きいことも一因と考えられる.

(a)500rpm

Fig.1 SEM観察 CS/PEO(2/8)

(16)

[10] 有機-無機ハイブリッドを前駆体とした遷移金属化合物ナノファイバーの形成

工学研究科 ○中根幸治,中西啓祐,松岡祥平,荻原 隆,小形信男 1. 緒言

無機繊維の製造方法には,有機-無機ナノ複合体を熱処理して形成する方法がある(前駆体法).

前駆体法により形成される無機繊維は,炭化ケイ素繊維が市場にあるのみであるが,航空・宇宙 産業や原子力産業の発展に伴い,更に高性能な無機繊維が必要とされている.

21 世紀に入り,エレクトロスピニング(ES)法で形成された有機‐無機ハイブリッドナノファイ バーを熱処理して金属酸化物ナノファイバーを形成する報告が増加している1) .しかし金属炭化 物や窒化物のナノファイバーの形成はこれまでに報告例がみられない.高融点で高弾性率の遷移 金属炭化物・窒化物ナノファイバー不織布を形成できれば,高性能フィルターとしてや原子力施 設の第一構造材として等,過酷な条件下での利用が期待できる.

以上のことから,本研究ではESを用いて有機-無機ハイブリッド前駆体ナノファイバーを作製 し,これを窒素やアルゴン雰囲気下で熱処理することにより遷移金属(チタン)炭化物および窒 化物ナノファイバーを形成することを検討した.

2.実験

10~15wt%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液に乳酸チタン(TL)を溶解させて紡糸液を調製した.

ESによりPVA-TLハイブリッドナノファイバー不織布(前駆体)を形成した.管状炉を用いて窒素

(あるいはアルゴン)雰囲気中で前駆体の熱処理を行い残存物を得た.

3.結果と考察

Figure 1に前駆体ナノファイバーを窒素雰囲気中で熱処理

(1200℃,5時間)した残存物のSEM像を示す.熱処理後の残 存物は前駆体ナノファイバーの形状を反映した繊維径300 nm前後のナノファイバーであることがわかる.

Figure 2に窒素雰囲気中,各温度5時間熱処理して得られ

たナノファイバーのWAXD曲線を示す.1000~1100℃で窒 化チタン(TiN)のピークが現れ,1200℃ではTiNのピークが 大きくなり結晶が成長していることがわかる.X線光電子分 光スペクトルにより,1000℃以上の熱処理により窒素原子が ナノファイバー中に導入されたことを確認した.

炭素存在下でのTiN生成反応式は,2TiO2 + 4C + N2 → 2TiN + 4COが考えられ,Gibbsの自由エネルギー変化と温度 の関係から熱力学的予想生成温度を1190℃と算出した.本 実験では,TiNの生成開始温度は予想温度より低い1000℃ であった.これはPVAとTLが分子レベルでハイブリッド 化されているために低温で反応が進んだことが考えられる.

発表ではアルゴン雰囲気中で熱処理した結果についても 述べる.

参考文献

1) I. S. Chronakis, Journal of Materials Processing Technology, 167 (2005) 283–293.

Figure 1 前駆体熱処理後(N2, 1200℃, 5h)の SEM 像

10 20 30 40 50 60 70 80

500℃

700℃

800℃

900℃

1000℃

1100℃

1200℃

600℃

2θ(deg)

Intensity/arb.unit

●▲

■■

■:TiN

▲:TiO2 ルチル

●:TiO2 アナターゼ

Figure 2 前駆体熱処理後(N2, 5h)

の WAXD 曲線

(17)

[11] フッ化アルキル基を含むハイパーブランチポリマー/ポリウレタンナノファイバー マットの作製およびその構造と特性

○小形信男、森 貴郁、中根幸治、荻原 隆 1)緒言

現在、水蒸気は通すが水滴は通さない微多孔を有し撥水性のあるシート状材料としてゴアテッ クスがあり、医療からレジャーと幅広い分野で利用されている。本研究の最終目的は、撥水性が ありさらに伸縮性に富むシート状材料を開発する事である。そこで、本研究では、溶媒型静電紡 糸法でフッ化アルキル基含有ハイパーブランチポリマーを含むポリウレタン(PU)ナノファイバー の形成を試み、その構造と特性を評価した。

2)実験方法

2-1 ポリウレタンナノファイバーマットの形成 N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒とし、ポリ ウレタン(PU)20wt%溶液を作製、そしてハイパーブラ ンチポリマー(日産化学社製ハイパーテック FF1)を PUに対して0,1,5,10wt%添加し、計4つの紡糸溶液を 調整した。

調整した紡糸溶液をFig.1の実験装置を用いて紡糸条件、印加電圧Hv=30kV、針先からコ レクターまでの距離Cd = 25cm,押出速度Fr = 1.0ml/hで紡糸を行った。

2-2 ポリウレタンナノファイバーマットの撥水性と撥油性の評価

マット上に水滴およびヘキサデカンを滴下し,その5秒後の接触角を測定した。

2-3 ポリウレタンナノファイバーマットの水蒸気透過性の評価 JIS L 1099 A-2法(ウォーター法)を用いて水蒸気透過度を求めた。

2-4 ポリウレタンナノファイバーマットの耐水圧の評価

PU+FF1 0wt%試料は、JIS L 1092 7.1.1 A法(低水圧法)で、さらに耐水性の高いPU+FF1 1,5,10wt%試料はJIS L 1092 7.1.2 B法(高水圧法)を用いて耐水圧を測定した。

3)結果と考察

Fig.2は得られたFF110wt%PUナノファイバーマットを示す。各試料で600~800nmのナ ノファイバーマットが得られた。

Fig.3 は FF1 0wt%,5wt%PU ナノファイバーマットの水の接触角を示し、Fig.4 は FF1

0wt%,5wt%PUナノファイバーマットのヘキサデカンに対する接触角を示す。FF1の添加量

の増加に伴い、水の接触角およびヘキサデカンの接触角、耐水圧が向上した。また,高い水の 接触角を有するにも関わらず、FF1を添加させても高い水蒸気透過性を示した

D=0.710μm σ=0.330μm

Fig.1 静電紡糸装置図

Fig.2 PU ナノファイバーマット Fig.3 対水接触角 Fig.4 対ヘキサデカン接触角

(18)

[5] 溶融混練によるポリプロピレン/気相成長炭素繊維系複合体の機械的特性に及ぼす電子線照射の影響 工学研究科 ○田上秀一,鈴木健夫,Jittiwat Nithikarnjanatharan,植松英之,家元良幸 1.はじめに

ナノオーダのフィラーの一種である気相成長炭素繊維(VGCF)をプラスチック中に含有させる と,材料の強度増加や熱伝導性の向上が期待でき,得られた複合体に電子線照射を行うとさらな る機能発現が期待されるが,それに関する研究例が少ない。本研究では,溶融混練によりポリプ ロピレン(PP)と気相成長炭素繊維(VGCF)を複合化し,得られた成形物に電子線照射を行い,

その機械的特性に対する効果を検討した。

2.実験

マトリックス材料にはEPR(エチレンプロピ レンコポリマー)成分が約15%含有しているポ リプロピレン(住友化学製AZ564,以下PPと 表記)を選び,気相成長炭素繊維には市販のも の(昭和電工製VGCF-S,以下VGCFと表記)

を選択した。また,PPとVGCFとの親和性を 向上させることをねらいとした添加剤として マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成製 U-mex 1010,以下MA-PPと表記)を用いた。

これらの材料を,Table 1に示す配合比で二軸 押出機(25mm同方向回転型,L/D = 10.5)に て溶融混練し,複合体を得た。複合体成形物に 電子線照射を施し,評価した。

3.結果と考察

Fig.1 は,各複合材料の初期弾性率,降伏応

力と吸収線量との関係を示した図である。Fig.

1 (a)に示す初期弾性率は,VGCFの添加と共に 増加する。加えて,初期弾性率は添加剤である

MA-PP の添加と共に増加する。電子線照射の

影響に焦点を絞ると,初期弾性率は全体的に吸 収線量と共に増加する。また,Fig. 1 (b)に示す 降伏応力はVGCFの添加と共に増加するが,

照射線量による値の増減の影響はVGCFの添 加により抑えられる傾向を示した。

電子線照射処理を行うと材料の温度上昇が 起きるが,今回の場合では高々20℃であるので,

電子線照射処理による材料の結晶化度が上昇 したことは考えにくい。また,VGCFを添加す ることによりPPまたはPP/MA-PPの初期弾性 率および降伏応力からの増加分は,一部を除き 吸収線量にほぼ依存しないことから,電子線照 射によるPPまたはMA-PPとVGCF間の架橋 反応は起きていないと判断できる。よって,電 子線照射によりPPの非晶部分においてPP中 のゴム成分とMA-PP成分の架橋反応が起きた ことが,Fig.1 に示す複合体の引張特性と照射 線量との関係を示す要因と推察される。

以上より,電子線照射処理による架橋反応が 期待される材料を添加あるいはグラフト化す ることで,PP のような電子線照射に弱い材料 でも,電子線照射による複合体の物性向上が期 待でき,VGCFの添加で複合体の物性がさらに 向上する可能性が示された。

Table 1 Compounding ratios in this study

Case Matrix polymer

VGCF

VGCF contents (wt%) PP MA-PP

1 100 0 0 0

2 90 10 0 0

3 100 0 2 1.96

4 90 10 2 1.96

Fig.1 Tensile properties as a function of irradiation dose for various PP/VGCF-S composites. (a) Young’s modulus, (b) Yield stress

1200 1400 1600 1800 2000 2200

0 20 40 60 80 100 120

PP

PP/MA-PP PP/VGCF

PP/MA-PP/VGCF

Young's modulus (MPa)

Irradiation Dose (kGy)

(a)

26 28 30 32 34

0 20 40 60 80 100 120

PP

PP/MA-PP PP/VGCF

PP/MA-PP/VGCF

Yield stress (MPa)

Irradiation dose (kGy)

(b)

[12]

(19)

[13] ポリエチレン/気相成長炭素繊維系複合体の溶融押出特性

工学研究科 ○植松英之,堀澤信介,田上秀一,家元良幸 1.緒言

高分子の成形加工において重要なことは、材料を流動させながら用途に応じた形状にす ることである。材料が受ける流れは、せん断流れと伸長流れに分けられ、目的とする製品 の形状、寸法を満足するためには、流れを考えた流動制御が必要となる。また近年、付加 価値の高い製品開発が行われており、用途に適した物性、機能性がプラスチック製品に求 められる。そのため、機能を有する材料を高分子に複合化させた材料開発が行われている。

従って、高分子を主原料とした複合体の流動特性に関する研究が必要となる。本研究では、

高分子と比較して強度や熱伝導などが高いカーボンナノチューブが、フィルム、ボトル成 形などのベースとなる押出特性に及ぼす影響について検討する。

2.実験方法

マトリクスとなる高分子にMFR が0.9g/10minの高密度ポリ エチレン(PE)を用いた。カーボンナノチューブとして繊維径

が150nm、平均繊維長が8μmの気相成長炭素繊維(VGCF)を

用いた。2軸押出機を用いてPEとVGCFを溶融混練した。PE に対して VGCF を 1.0、3.0、5.0wt%添加した試料を作製した。

Fig.1 に示す流路から押出した際の押出物(PE、PE/VGCF)の

直径d を計測し、表面、外観などを観察した。ダイの直径 d0と 押出物の直径dの比(d/d0)をスウェル比と定義して、各押出速 度とスウェルの関係を検討した。

3.結果と考察

Fig.2 に各みかけのせん断速度 におけるスウェル比を示 している。 の増加と共に PE のスウェル比が増加した。

PE/VGCFにおいても同様に、 の増加と共にスウェル比が増

加したが、VGCFの添加と共に PEのスウェル比は小さくな った。つまり、VGCF を添加することでPE のスウェルを抑 制できることが判明した。

流路を流れる溶融体には、せん断応力が発生するのと同時 に流動方向と平行及び垂直な方向に応力(法線応力)が発生 する。また、Fig.1に示す流路では、ダイ入口において伸長流 れが発生する。つまり、ダイ出口では、材料に働くせん断応 力、法線応力、伸長応力が複合的に緩和しながら流動する。

せん断粘度を検討した結果、VGCF の添加が PE のせん断応力、法線応力差にほとんど影 響しないことが確認された。これらの結果より、PE に分散する VGCF 近傍で伸長流れが 抑制されることによってスウェルが減少したと考えられる。

4.結言

ナノオーダーの大きさである繊維を少量添加することによって、高分子の分子量や構造 を変えることなくスウェルが効果的に制御できることが明らかになった。

γ&ap

γ&ap

γ&ap

γ&ap

d sample

die

d0

Fig.1 Schematic diagram of our extruding system.

Fig.2 Swell ratio plotted against apparent shear rate for PE and PE/VGCF melts.

1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

100 101 102 103 PE

PE/VGCF 1wt%

PE/VGCF 3wt%

PE/VGCF 5wt%

Swell ratio

Apparent shear rate γap (1/s) T = 200oC

(20)

[15] 高速気流中における糸挙動モデルの提案

工学研究科 太田貴士 1. 緒言

エアサクションガンは,円管内を流れる高速気流と糸の間に働く摩擦力により,糸を吸引する.

このとき,円管内で,高速気流に旋回成分を与える操作が施されていて,そのような操作のパラ メーターは,経験的に決められているようである.高速気流中糸の挙動の物理的な知見に基づい て,機器の性能を向上させる余地があると考えられるが,現在のところ,糸の挙動のメカニズム は明らかになっていない.そこで,流体力学的な観点から本現象のメカニズムを説明するための 基礎研究として,気流から流体力学的な作用を受ける糸の挙動を表現するモデルを提案する.さ らに,数値シミュレーションで糸周りの流れの様子を再現して,そのモデルに必要な情報を得る.

2.高速気流中糸の挙動モデル

円管内を流れる高速気流中の糸の挙動を考えるために,図1 のような状況を想定する.糸は,速さ 0で円管に吸引されて,

円管内を流速 の気流とともに移動している.円管内の糸は,

螺旋状になっていて,一定の回転角速度 で回転している.さ らに,図のように,回転角度 を定義して,ある位置 における 螺旋形状の半径を ,糸の張力を とする.このとき,流体力学 的な摩擦力とその他の力の釣り合いから考えて,各位置におけ る糸の張力 と半径 は,以下のように表される.

= 2 ( )

0

2

, = ⋅ (0 ≤ ≤ )

=

0 , =

/ + 0

ここで, は糸の線密度, は糸の直径, は糸の長さによる位置, は各位置における糸の傾き 角である.また, ( )は,位置 の糸要素が気流から受ける摩擦応力である.

3.数値シミュレーションによる軸方向糸周りの高速気流の様子

糸が気流から受ける摩擦力を見積もるために,糸を想定した円柱周りの軸方向に沿う流れを数 値シミュレーションで再現した.実際の条件にあわせるために,糸直径と一様流速に基づくレイ

ノルズ数 = 756.8,マッハ数 = 0.1706

を設定した.図 2 に壁面摩擦係数 の変化を 示す.流れに従って境界層が発達しているが,

平板境界層が乱流に遷移する臨界レイノルズ 数を越えても,糸周りの流れでは,層流の特 徴が維持されている.したがって,上のモデ ル中の摩擦応力は,層流を想定することにな る.今後,糸挙動モデルによりエアサクショ ンガンの吸引性能を向上させるために,糸周 りの高速気流が層流に維持される原因と乱流 遷移の実現可能性を調べる必要がある.

Fig.1 気流中の糸挙動モデルの設定

Fig.2 軸方向円柱周り流れの壁面摩擦係

Figure 1. IR spectra of copolymers before and  after cross-linking.
Table 1    Compounding ratios in this study
Fig. 1    Scheme of the method to prepare the structural colored film.

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