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平成30年度国家公務員一般職(大卒程度)一般論文試験【行政区分】

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Academic year: 2021

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平成30年度 国家公務員一般職(大卒程度)

一般論文試験【行政区分】

我が国の生産年齢人口は1990 年代をピークに減少を続けており、今後も減少が続くと推 計されている。この生産年齢人口の減少に伴う生産力の低下によって、我が国の社会経済に 大きな影響を与えることが懸念されている。 このような状況に関して、以下の問いに答えなさい。 (1) 生産年齢人口の減少による生産力低下に影響されることなく、中長期的に経済成長を 実現していくために解決すべきと考える課題を、以下の図①、②を参考にしながら、二つ述 べなさい。 (2) (1)で挙げた二つの課題を解決するためには、それぞれどのような取組が必要となるか。 あなたの考えを具体的に述べなさい。

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3 <解答例> (1) 少子高齢化の進行により生産年齢人口の減少が生じているが、これによる生産力低下 に影響されることなく、中長期的に経済成長を実現していくために解決すべき課題として、 私は女性が働きやすい社会をつくることと実質労働生産性を向上させていくことの二つに 取り組まなければならないと考える。これは「女性が輝く社会」「働き方改革」を推進しよ うとしている日本社会全体の喫緊の政策課題であると同時に、生活に直接結びついた極め て身近な問題でもある。 まず、図①にみられるように、我が国における年齢階級別労働力人口比率によれば、女性 の場合、以前よりは底が浅くなったとはいえ、欧米諸国ではみられないM 字カーブを今な お描いており、妊娠・出産・育児によってキャリア中断することが多い我が国の女性の状況 を如実に示しているといえる。実際、こうした女性の中で就業希望者は 300 万人を超える とされ、我が国最大の潜在力を持つといわれている。労働力の確保という点では、高齢者と 外国人労働力の活用も政策課題として取り組まれているが、女性労働力の活用を最優先に 考えざるを得ないであろう。なぜなら、婚外子が非常に少ない我が国においては、女性の社 会進出に伴う晩婚化・未婚化が少子化に直結しており、さらにこうしたM 字カーブ社会の 現状が「産みたくても産めない現実」を表していて、少子化を余儀なくしていると考えられ るからである。もちろん、結婚や出産は個人や家庭の価値観に属することであるから、行政 がこれを積極的に奨励することはできないが、そうしたいと願う人々に対して様々な支援 を行うことは行政の責任といえるだろう。 そして、図②にみられるように、先進国の中では決して高くない実質労働生産性の向上が 必要不可欠である。これは人口減少が必ずしも生産力減少につながらないことを考えてみ ても、重要な課題であることは間違いないといえる。しかし、我が国では、今まで過重労働 や人格否定などのパワハラによって健康を害したり、自殺に追い込まれるケースも多々あ り、実質労働生産性向上の妨げとなっていた現状がある。この背景には、残業代が貴重な収 入源になっていたり、長年にわたり続く終身雇用と年功序列という日本型労働慣行が転職 のしづらさや賃金の不均衡をもたらしたという現実も無視できないが、労働市場の変化や 賃金体系の変化が生じている今、実質労働生産性の向上に本格的に取り組むべき時機が到 来したと考えるべきだろう。 (2) 女性が働きやすい社会をつくるために、我が国ではすでに育児・介護休業法における 所得保障の拡充、勤務時間の短縮化・弾力化、待機児童解消に向けた保育所用地の確保、認 定こども園や企業内保育所の拡充など多様な保育サービスの充実、地域全体が多種多様に 子育てに関わっていく体制づくりなどが取り組まれている。私はこれらの施策に加えて、公 的インフラを活用した半官半民の大規模保育施設をつくり、災害シェルターも兼ねて、職 住・育住近接型社会をつくることが必要だと考えている。公的インフラとは都道府県庁や市 区役所、町村役場、公立病院、公立学校、図書館、公営住宅などの公的機関の持つ土地・建

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4 物であり、これらの高層化・地下化を進めて保育施設・防災拠点を確保するとともに、運営 は民間に委託するということである。そして、そこではたらく公務員のみならず、近隣の 人々も活用していけば、職住近接型社会は難しいまでも職育・育住近接型社会の実現となり、 仕事と育児の両立がよりしやすくなるだろう。さらに一定の容積以上の高層マンションに 保育施設を作ることを推進し、住民及び近隣の人々の利用を可能にすれば、少子化対策とし てはさらに強化されるだろう。保育施設の併設を地域貢献とみなしてマンションの固定資 産税を減免するなどの措置も取ることができれば、需要の多い地域では、子どもをもたない 世帯の人々の理解も得られやすい。 また、実質労働生産性の向上のためには、政府・企業によって残業の制限、セクハラ・パ ワハラ防止、育児・介護における所得保障、賃金上昇などが真剣に取り組まれており、これ らの施策は人材の定着度を高める上でも重要である。その一方で企業に最も重くのしかか るのが人件費であるという現実もあるため、人材の流動性を高める施策にも真剣に取り組 まざるを得ないと私は考えている。すなわち、兼業禁止規定の緩和と解雇要件の緩和である。 現在でもすでに、届出制で会社や上司の許可のもとに兼業をしている人も少なからず存在 する。今後、より広く残業を制限する以上、何らかの収入を確保する道を開く必要があろう。 労働市場における人手不足が深刻になりつつある中、情報管理義務や守秘義務に対する罰 則を徹底して、就業の多様化に道を開く必要があるといえるだろう。また、終身雇用と年功 序列という日本型労働慣行が崩れつつある中、一定の所得保障や職業訓練支援・教育支援を 行った上で解雇要件を緩和することができれば、会社のリストラクチャリングもしやすく なり、そこにセーフティネットとしての公的支援も加えれば、安心して離職・転職できる社 会となるだろう。より安全で健全な労働環境を選べるようにしていくことは行政の責任で あると考える。

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5 <解説> 国家公務員一般職の論文試験では、平成26 年度ではグローバル化、少子・高齢化などが 進展する社会で活躍する人材育成に照準を当て、「今日の社会の変化とその背景」と「それ に対応するため、育成を図るべき能力」及び「そのような能力を培うために初等中等教育に おいてどのような取組が必要か」を論じさせていた。平成27 年度では「言葉や言葉の使い 方に対する社会全体の関心」、「言葉や言葉の使い方に関する社会全体の知識や能力」が以前 より低下していると思われる中、「言葉の意味の変化、新しい言葉の出現、言葉の消滅が起 こる原因及び影響」として考えられるものを挙げた上で、「言葉の果たす役割」を踏まえ、 「言葉についての関心を喚起し、理解を深めるための施策」を論じさせていた。平成28 年 度では「20 歳代~30 歳代を中心とした若い世代の現在の食生活」の問題点・課題を踏まえ た上で、「若い世代が食育に興味を持つようになるための施策」を論じさせていた。平成29 年度は「我が国が観光立国の実現を推進する必要性や意義」を踏まえた上で、「観光立国の 実現を推進するために我が国が行うべき施策」を具体的に述べさせるという出題であった。 こうした流れの中で、平成30 年度では「生産年齢人口の減少による生産力低下に影響され ることなく、中長期的に経済成長を実現していくために解決すべきと考える課題」を二つ挙 げさせ、それらを解決するためにはそれぞれどのような取組をしていくべきかを具体的に 述べさせている。いずれにしても、現代社会の変化や現状を踏まえ、その分析をした上で、 こうした状況に対する取組や施策を論じさせるという基本的な構図は変わっていない。し かも、今年度は「女性が輝く社会」「働き方改革」を政府が強力に推し進めようとしている 中での出題であり、今日の政策課題をどれだけ正確に理解し、当事者意識を伴った具体的な 考えを持っているかが問われているといえよう。

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