現状と課題
4 農林水産業とのふれあい、地産地消の推進や食文化の継承と振興
1) 農林水産業の体験機会の創出 消費者をはじめ、小中学生に対する農業・林業・水産業さらには農村・漁村 等の果たしている役割について理解を促すため、「地元で生産された農産物を 使った料理教室」や「地域に伝わる伝統料理に関する料理教室」など、農漁業体 験教室の開催を通じた農林水産業の体験機会を創出します。 農林水産業と食育の絆は強く、本市農林水産物等の農林水産資源を生かし、生 産・流通・販売の連携の仕組みを構築し、一体となって地産地消を推進していく ことをはじめ、沿岸地域や中山間地域に古くから伝わる食文化の継承を通じた食 育を推進していく必要があります。 現在の本市農林水産物を取り巻く情勢は、東日本大震災、そして福島第一原子 力発電所の事故の影響により、大変厳しい状況が続いております。消費者が安心 して、農業・農産物、水産業・水産物への理解を深めるため、体験を通した、幅 広い食農教育の展開や漁業に触れる機会、消費者と生産者の交流の場等を創出し ていくことは大変重要です。 核家族化が進行する中で加工食品、外食等の利用が増加しており、親から子、 孫へ、食文化を継承する機会が減少するとともに、本市の各地域において継承さ れてきた伝統料理や行事食等の食文化が消失しつつあります。 伝統料理や行事食などの体験を通じて、食事のあいさつや食具(箸)の使い方 などの食文化を後世に伝える取り組みが必要になっています。食育推進のための取り組み
● 伝統料理教室(じゅうねんぼたもち作り) ● 伝統料理教室(さんまのぽうぽう焼き作り)(1) 農林水産業の体験・交流活動の推進
2) 農林水産業の理解の促進 小学生における総合的な学習の時間の活用等、さまざまな機会をとらえ、本市 の農林水産業の理解を促進するとともに、農林水産業の重要性等について市民の 理解を深めるための食農教育の機会の創出に努めます。 3) 消費者と生産者の交流の場の創出 農産物等の直売施設に対する支援や、農林水産業の現場からの情報発信に努 め、消費者と生産者の交流の場の創出に努めます。 4) 教育ファーム(※1)の推進 食に関する関心や理解の増進を図るためには、農林水産物の生産に関する体験 活動の機会を提供することが重要です。 自然の恩恵や食に関わる人々のさまざまな活動への理解を深めるとともに、 「食」についての意識を高めることを目的として、学校・JA・地元受入農家等 との連携のもと、「農業ふれあい講座」や「田んぼの学校」などの農林漁業体験 学習の取り組みを推進します。 ● 稲刈り ● 脱穀 (※1)教育ファーム: 自然の恩恵や食に関わる人々のさまざまな活動への理解を深めること等を目的と して、農林漁業者などが一連の農作業体験等の機会を提供する取り組みのこと。 具体的には、 ① 農林漁業者など実際に業を営んでいる者による指導を受け、 ② 同一人物が同一作物について2つ以上の作業を年間2日間以上行うこと。
農林水産業の体験・交流活動の推進に向けて、
市民一人ひとりが取り組みましょう
例えば ● 農林水産業を体験してみましょう。1) 直売施設のPR機会の創出 地産地消の原点である「顔の見える農林水産業」のさらなる推進を図るため、 市内直売所等の活動状況をまとめた普及啓発冊子の作成・配布、さらには、ホー ムページへの掲載など、あらゆる機会を通じて本市農産物等直売施設のPRを図 ります。 2) 市産品のPRと地産地消の推進 本市農林水産物に対する親和性向上を図るため、各種イベントや「いわきブラ ンド農産品通信」などの情報誌を活用した農林水産物や農産加工品の紹介、さら には市内消費者、量販店等への本市農産物の魅力発信を積極的に実施し、地産地 消の推進を図ります。 また、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の農林水産物へ の影響により、本市農林水産物を取り巻く社会情勢は、ますます厳しいものと なっていることから、消費者の信頼回復に向け、モニタリング検査の継続と迅速 な結果公表に努めるとともに、ウェブサイト「見せます!いわき情報局」をはじ めとする各種広報媒体を活用した情報提供や、多種多様なイベントの開催を通じ た、正確な知識とその理解を深める機会の提供など、風評払拭に向けた取り組み を積極的に実施しながら、地産地消の推進を図ります。
(2) 地産地消の推進
● ウェブサイト「見せます!いわき情報局」 ● いわきブランド農産品通信 ● 産地訪問バスツアー3) 若い世代への日本型食生活の定着化 栄養バランスのとれた米を中心とした日本型食生活の定着を目指し、「いわき 産農林水産物を使った料理教室」等、調理技術講習会の開催をはじめ、「いわき 市農林水産業情報センター」や「見せます!いわき情報局」などのホームページ を活用したレシピ集の掲載などを通じて、若い世代を中心に日本型食生活に対す る理解を促進する機会を創出します。 4) 旬の食材の安定的な供給 季節を感じ、また、地産地消を一層推進するため、一番おいしい時期に収穫 される“旬”の食材が安定的に供給できるような仕組みや技術等の構築について調 査・研究を進めます。 いわき産農産物に対する風評の払拭や、農産物の安全に対する取り組みを全 国にPRすることを主な目的として誕生した「いわき農産物マスコットキャラ クター『アグリン☆ファイブ』」。市内外のさまざまなイベント等に参加し、 いわきの美味しい農産物の魅力を全国に発信しています。
『アグリン☆ファイブ』
『アグリン☆ファイブ』
いわき農産物
マスコットキャラクター
いわき農産物
マスコットキャラクター
1) 地域の人材の活用による伝統料理の継承 地域の人材(農林業者・漁業者)の指導による地産地消を基本とする伝統料 理・行事食教室を開催し、食の楽しさや旬の豊富な食材、食文化の理解を促進し ます。また、地域の特性を活かした伝統食を味わう機会を設けるとともに、優れ た伝統料理は、地域の拠点施設でのメニュー化等を検討します。 2) 人材の育成等 地産地消を基本とする伝統食を継承するため、地域の伝統食や行事食に精通 した人材の発掘に努めるとともに、その料理のレシピや歴史などを調査し、ま た、その料理が調理できる人材の育成に努めます。 3) 日本型食生活の継承 「食育インフォメーション」や「食育教室」等を通じて、食事バランスガイド を普及するとともに、食に関する各種団体等と連携・協力しながら、健康的で栄 養バランスが優れ、地域で生産される豊かな食材を活かした日本型食生活をあら ためて見直し、継承する取り組みを推進します。
(3) 食文化の継承と振興
生きのよい鰹をいわきでは昔から刺身で食べていましたが、豊富に捕れる鰹を長 期にわたって食べるために考えられた調理法が、切り身を焦げ目がつくぐらい焼き、 しょうゆを煮立てた汁に漬けた「焼きびたし」でした。近年は油で揚げてから漬け 込む「鰹の揚げびたし」もあります。 いわきでは鰹は 6 千年前の縄文時代から食されていて、市内各所の貝塚から、 多数の鰹の骨が出土しています。 かつお かつお伝統食「鰹の焼きびたし」
伝統食「鰹の焼きびたし」
食 育 一 口 メ モ
地産地消の推進に向けて、市民一人ひとりが取り組みましょう
例えば ● 直売施設に行ってみましょう。 ● 「旬」の食材を食べて季節を感じましょう。 ● 地域の食材を探してみましょう。4) 子どもたちへの食文化の継承 学校、幼稚園、保育所では日本型食生活の良さ、伝統料理や行事食、地産地消 などを理解できる機会を設け、子どもたちが食の伝統を守り伝えていこうとする 心が育つよう支援します。 その際、本市と特に交流のある秋田県由利本荘市(親子都市)、宮崎県延岡市 (兄弟都市)やオーストラリア・タウンズビル市(国際姉妹都市)、中国・撫順市 (友好都市)など、他の地域や外国の異なる文化の違いを認め、互いに尊重する 心が育つよう配慮します。 また、長い歴史の中で築き、継承してきたさまざまな食文化を、給食の準 備、片付け等を通じて体感することで、あいさつなどの習慣や、食具(箸)の使 い方、気持ちよく食事するためのマナーが形成できるよう支援します。 これらの取り組みは、食育だより等を通して、家庭への普及啓発を図ります。
食文化の継承と振興に向けて、
市民一人ひとりが取り組みましょう
例えば ● 地域行事・季節行事に参加してみましょう。 ● いわきの地域でどんなものが食べられていたか調べてみましょう。 ● 伝統料理を食べてみましょう。日本には、1 年を通じていろいろな行事があります。市内でもその特別な行事の ハレの日には、その一つひとつに家族の健康や幸せを願う意味がこめられている、 行事食が食されてきました。 家族や地域の絆を深め、季節を味わう行事食を楽しみましょう。