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ライフステージにおけるウィメンズヘルスと骨盤底リハビリテーション

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 691 ~ 692 各年代のウィメンズヘルスと骨盤底リハビリテーション 頁(2015 年). 691. 大会シンポジウム 1. ライフステージにおけるウィメンズヘルスと骨盤底リハビリテーション* 関 口 由 紀 1)2) 重 田 美 和 1). 20 ~ 40 歳代のウィメンズヘルスサポート. 更年期のウィメンズヘルスサポート. 20 歳を過ぎ,性交を開始した女性は,子宮癌検診を行うべ. 更年期は,閉経前後の 40 歳後半~ 50 歳半ばまでのことをい. きである。子宮頸がんワクチンは,50 歳未満で複数のセック. うが,この時期には女性ホルモンの減少による体と精神の変化. スパートナーがいる人,または今後複数のセックスパートナー. が起こる。この時期に起こる数々のトラブルを更年期障害と呼. ができる可能性のある人は,接種したほうがよい。子宮頸がん. ぶが,具体的には,この時期に起こるほてり・のぼせ・発汗・. 検診は,20 歳以上は,公的検診で 2 年に一回受けることが可. 不快感・冷え・動悸・頭痛・腰痛・めまい・不眠・不安・うつ. 能である。その間でも不正出血があれば,その都度婦人科を受. 気分・イライラ・便秘・排尿障害・不正出血等をさす。更年期. 診することが望まれる。. 障害の治療としては,内服剤や貼付剤による女性ホルモン補充. さらに 40 歳をすぎたら,子宮体癌と卵巣癌を早期に発見す. 療法に加えて,抗うつ剤,安定剤,漢方薬などが用いられるが,. るために,公的な子宮頸がん検診を受ける際や別に機会をつ. さらに代替治療(鍼灸治療,アロマセラピーなど)も効果を発. くって,コストをかけても経膣超音波検査を受けたほうがよい. 揮する。. だろう。. この時期から気をつける必要があるのが,生活習慣病であ. 30 歳を過ぎたら少なくとも乳がんの自己検診の習慣をつけ. る。40 歳を過ぎると,遺伝的素因のある高脂血症,糖尿病,. たほうがよい。乳がんの発生部位は,乳房の外側や上側に多い. 高血圧の兆候がでてくる。閉経し女性ホルモンが低下すると,. ことを認識して触診を行うことが大切である。触診を兼ねて乳. それぞれの症状はさらに悪化する。放置すると動脈硬化が進行. 房は,素手に石鹸をつけて毎日洗うようにする。そして乳房の. し,60 歳以降に狭心症,心筋梗塞,脳梗塞などの発症の原因. 状態が,いつもと違えば,乳腺外来を受診する。乳がんの家族. となる。. 歴がある場合は,30 歳になったら年 1 回超音波検査を受けた ほうがよい。さらに乳がんの家族歴の有無にかかわらず,40. 円熟期のウィメンズヘルスサポート. 歳を過ぎたら公的検診を利用して,2 年に 1 回マンモグラフィー. 55 ~ 75 歳の時期は,女性にとって生殖を終了し,月経のト. 検査を受けるようにこころがける。さらにこのうちの 2 回に 1. ラブルから解放され,自由を謳歌できる楽しい時期であるとと. 回は,有料でも乳房超音波検査を受けたほうがよい。. もに,来たるべき高齢期を健康に過ごすための大切な準備期と. 最後に 20 ~ 40 代から,女性が気をつけたほうがいい疾患に,. も考えられる。この時期は,乳房・子宮以外の臓器の悪性腫瘍. 甲状腺疾患がある。甲状腺が機能亢進状態になると,やせ・イ. の発症が増加する時期であるため癌検診の習慣化が必要であ. ライラ・手の震えなどの症状が出現するようになるし,甲状腺. る。また皮膚の老化を防ぐために紫外線対策をしたり,うつ状. の機能低下状態になると,肥満,むくみ,倦怠感,抑うつ状態. 態にならないようにメンタルヘルスに気をくばる必要もある。. などが起こるが,多くの甲状腺疾患の患者が,神経症や自律神. また引き続き生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症)の治療. 経失調症と診断されているともいわれている。若年であって. を続行する必要がある。さらに 75 歳以上になっても,痛みな. も,採血の際には,TSH(甲状腺刺激ホルモン)の測定を行う. く動ける肉体を維持するために,骨密度管理がかかせない。. べきである。. 女性ホルモン値が低下する更年期以降は,急速に骨密度が低 下することが知られている。骨粗鬆症の診断は,腰椎 X 線で. *. Women’s Health During Life Stage and Pelvic Flour Rehabilitation 1) 女性医療クリニック LUNA グループ・LUNA 骨盤底トータルサ ポートクリニック (〒 231–0861 神奈川県横浜市中区元町 2–96 鈴音ビル 1 ~ 2F) Yuki Sekiguchi, MD, CEO, Miwa Shigeta, PT: Women’s Clinic LUNA group, LUNA Pelvic Flour Total Support Clinic 2) 横浜市立大学大学院医学部・泌尿器病態学講座 Yuki Sekiguchi, MD, Visiting Professor: Department of Urology Yokohama City University Graduate School of Medicine キーワード:ウィメンズヘルス,ライフステージ,骨盤底リハビリ テーション. 骨粗鬆症化を認めるか脆弱骨折がある場合,または腰椎骨密度 値が,YAM(young adult mean)の 70%未満である場合に骨 粗鬆症と診断される。生活習慣や環境を中心に考えた骨粗鬆症 の危険因子は,栄養不足,塩分過多,運動不足,多量の飲酒, 喫煙,日照不足,やせすぎなどである。 まとめると女性のアンチエイジングに必要なことは,血管を守 る・骨を守る・癌を早期に発見する・うつ状態にならないように 気をつける・皮膚の老化を防ぐ・筋肉量を維持することである。.

(2) 692. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 骨盤底リハビリテーション. 再度来院した患者に,主訴やニードなどを詳しく問診する。ま た,骨盤内の立体模型を用いて,簡単な解剖と骨盤底筋群の役. 女性の健康を守り,QOL を維持する運動とは,体幹トレー. 割について,さらに患者の症状に合わせたトレーニングの意義. ニング,有酸素トレーニングそして骨盤底筋トレーニングであ. について説明し,腟内診を伴う指導であることに同意を得る。. る。骨盤底は上部から臓側骨盤隔膜,骨盤隔膜,尿生殖隔膜の. 腟内診しながらのトレーニングは,通常 10 ~ 15 分ほどかかる。. 三層構造になっており,骨盤底トレーニングの対象となる骨盤. その後,骨盤底機能の評価結果の説明と,それに合わせたホー. 隔膜(骨盤底筋群)は前部が恥骨尾骨筋,恥骨直腸筋,後部が. ムプログラムの作成をし,生活指導なども含めたトータルアド. 腸骨尾骨筋,尾骨筋から構成され,前方部分は水平で,中央部. バイスを行い,次回の予約を行う。個別指導の平均回数は,全. 分は垂直方向の漏斗状をしている。尿失禁治療を革新的に変化. 体で 2.6 ± 0.9 回で,ほとんどの患者が,月 1 回~ 2 ヵ月に 1. させた TVT(Tension Free Vaginal Tape)手術の開発者のひ. 回のトレーニングを,3 ~ 4 回受けて,トレーニング修了とな. とりである P.P.PETROS は,TVT 手術の開発根拠であるイン. る。現在の年間延べ実施人数は,約 1,900 名となっている。. テグラル理論(1993 年)で,骨盤底には,重要な 2 つの役割. 筋力低下・筋弛緩タイプの疾患に対するアプローチとして. があるとしている. 1). 。それは,骨盤内臓器の支持(障害される. は,筋固有感覚,骨盤底筋群の分離運動の促通と運動学習. と骨盤臓器脱となる)と排泄を司る骨盤底機能(障害されると. (motor learning)を行う。まずは,症状と照らし合わせ,筋力. 尿失禁,頻尿,排尿困難,骨盤痛が生じる)である。この 2 つ. の評価とそれに対する筋力強化を行うが,速筋系・遅筋系の運. の役割をもつ女性の骨盤底であるが,分娩・加齢・遺伝・女性. 動機能評価とそれに対する筋力強化や,骨盤底筋群の浅層筋と. ホルモン不足・便秘・喫煙・慢性肺疾患等でダメージを受け弛. 深層筋の評価,呼吸と姿勢の評価と指導を行った後,漸増的筋. 緩してしまうことが知られている。この弛緩を予防・改善する. 力強化(経腟触診による抵抗運動,腹圧をかけた PFMT) ,ダ. のが,骨盤底筋トレーニングと呼ばれる骨盤底筋群のリハビリ. イナミックな運動・動作との組み合わせ(ピラティス,ボディ. テーションである。. ワークなどの動きを取り入れた応用運動)へと発展させていく。. 骨盤底筋トレーニングが有効な女性泌尿器科疾患. 一方筋緊張亢進または疼痛タイプの疾患に対するアプローチ としては,骨盤後傾位等のリラクゼーションポジションの学. 骨盤底筋トレーニングに関しては,腹圧性尿失禁で特にエビ. 習,PFM 筋収縮後の弛緩重視練習,PFM マッサージおよびス. デンスが集積されているが,過活動膀胱,骨盤臓器脱,膀胱痛. トレッチング,収縮と弛緩の協調運動練習,経腟的または外陰. 症候群 / 間質性膀胱炎,女性性機能障害等のすべての女性泌尿. 部からの自己による PFM マッサージとストレッチングなどの. 器科疾患に効果があり,その治療のベースとなる。. 指導などを行っている。. 腹圧性尿失禁の症状は,くしゃみ,咳,大笑い,立ちあがっ た拍子,重いものを持ち上げたとき,小走りなどである。. ウィメンズヘルス分野での理学療法士の活躍. 過活動膀胱の症状は,水道で手を洗ったり,外出から帰って. 国際理学療法学会の 2008 年の調査では,骨盤底障害の患者の. きたときなどに突然急にオシッコがしたくなる。トイレに間に. 管理として,欧米 13 ヵ国ですべての医師が骨盤底を専門とする. あわず失禁してしまうこともある。その結果頻尿となっている. 理学療法士に紹介すると回答している。さらに Lancet(2013 年). 人が多いというものである。. には,骨盤底筋訓練は理学療法士による直接指導が有効である. 骨盤臓器脱は,どの臓器が脱出してくるかで,さらに膀胱. ことが,骨盤臓器脱に対してリーフレットを渡すのみと比較し. 瘤・子宮脱・直腸瘤・小腸瘤・膣断端脱などに細分化される。. た多施設ランダマイズコントロールスタディーの結果として報. 間質性膀胱炎は,慢性骨盤痛症候群のひとつである。膀胱鏡. 告されている 3)。. 等の検査を施行しなくても,抗コリン剤や抗菌剤に反応しない. 一方日本では, 「内診行為は,保助看法(昭和 23 年法律第. 頻尿が 3 ヵ月以上続いており,膀胱部の不快感や痛みがある場. 203 号)の第三条で規定する助産であり,助産師または医師以. 合は,間質性膀胱炎として保存的治療や内服薬などの侵襲性の. 外の者が行ってはならない」という厚生労働省医政局看護課の. 低い治療が開始される。これらの女性泌尿器科疾患は,筋力低. 意見をもとに,現在理学療法士による経膣触診で骨盤底筋を触. 下・筋弛緩タイプの骨盤底機能障害と筋緊張亢進・疼痛タイプ. 知したうえでの正確な骨盤底筋トレーニング指導(けっして子. 骨盤底機能障害に分類され,骨盤底リハビリテーションの方法. 宮には触っていない)を,厳密にいうと非合法だと主張する意. が異なる。. 見がある。この医療後進性を,解消するため法律的な整備が,. 個別骨盤底筋トレーニング指導の実際 わずか数分で説明できる骨盤底トレーニングであるが,正確 に選択的に骨盤底トレーニングを行うことはかなり難しい 2)。 そのため LUNA 骨盤底トータルサポートクリニック・骨盤底 リハビリテーション部門では,理学療法士による個別骨盤底ト レーニング指導を行っている(自由診療:30 分 5,400 円税込 2015 年現在)。 個別骨盤底トレーニング指導の前には,医師が書面にて個別 指導の説明を行い,同意を得る。その後理学療法士は,予約で. 早急に望まれる。. 文 献 1) Petros P:The Female Pelvic Floor Function, Dysfunction and Management According to the Integral Theory 3rd edition. Springer, 2010, p. 14. 2) 関口由紀(監修):女性外来の骨盤底筋トレーニング.宝島社,東 京,2014,pp. 34–39. 3) Hagen S, Stark D, et al.: Individualised pelvic floor muscle training in women with pelvic organ prolapse (POPPY): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2014; 383: 796–806..

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