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ヤシガニ資源の保全にむけて(日本におけるヤシガニ研究の現在)

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Academic year: 2021

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20: 93-95 (2011)

ヤシガニ資源の保全にむけて

O n the preservation o f c o c o n u t c r a b resources

諸喜田茂充

l

Shigemitsu Shokita

. は じめ( =

ヤシガニ Birgus latro (Linnaeus, 1767) と関わった のは, 1967年に琉球水産研究所の分室に相当する 石垣島の風光明婦な 川平湾の入口にある八重山水産 模範養殖場に赴任した際に,場内周辺や湾口の離れ 小島に夜な夜な出現し,捕獲したものを川平集落出 身の職員が味噌汁やサラダなどに料理したのを食べ て,運悪く中毒した苦い体験からはじまる. 中毒 は,食べて約2時間後頃から吐き気,頭痛,倦怠 感,腹痛などが起こり,やがて下痢がはじまった 石垣島では,かつてヤシガニ中毒で死亡者も出た という. 中毒するものは,川平集落の人達による と,焼いても赤くならなく青っぽい個体とか,ハス ノハギリ Hernandia nymphaeifolia Kubitzkiなどの毒 のある実を食べた個体であるとか,民間に伝承され ている また,中毒個体は,限られた地域に出現 しそこからは捕獲しないようにしているという. 地域住民は中毒しないものを珍味で重要なタンパク 源にしてきたという. 近年,宮古島諸島や八重山諸島に観光客が増える につれて,ヤシガニを捕らえて珍味食材として利用 している. 商業ベースでヤシガニを捕獲するので, 資源、が減少し年々小型化しているという ヤシガニ 資源量は,過剰捕獲や生息域の開発などで減少して いるので,環境省,沖縄県,鹿児島県レットデータ 1 ( 財) 沖縄科学技術振興センター/ 琉球大学名誉 教授 干900-0029沖縄県那覇市旭町112- 18

Okinawa Science and Technology Promotion Center/ Professor Emeritus, University of the Ryukyus, 11 2一18 Asahi, Naha, Okinawa 11 2-18, Japan

E-mail: shokitas @khaki.plala.or.jp

Carcinological Socie砂 o fJ a p a n ブックにおいて「絶滅危倶II類」に,それぞれラ ンクづけられている そこで,ヤシガニ資源保全の必要性が生じている ため,日本甲殻類学会第

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回琉球大学大会でシン ポジウム開催が企画された. 4 名の演者がヤシガニ 研究の現状などについて講演されたので,それぞれ にコメントし保全のあり方などについて述べたい. 園 演 題 に 対 す る 感想 演 題 lの藤田喜久の「ヤシガニと人々の暮ら し

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: インドー西太平洋の諸国では,ヤシガニが食用 や様々なグッズの素材として利用されている パヌ アツではコインや皮財布などに,沖縄では陶器・T シャツ・版画などに,それぞれデザインされ利用さ れている 藤田氏はヤシガニと人間との関わりにつ いて講演された 沖縄島では,ヤシガニは一般に食 用に供されない 理由は,かつて人が死ぬと海岸縁 の岩陰や洞窟に風葬する風習があり,死体をヤシガ ニが食べるのではないかと懸念されたようである. 演題2の浜崎活幸の「ヤシガニの初期生活史一餌 育によるアプローチ

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: 甲殻類のゾエア幼生飼育に 定評のある浜崎氏は,実験室内での幼生飼育を行 い,メガロパの習性や陸域へ移行する環境条件を調 べ, 1週間ほどで貝殻を背負い上陸することなどが 明らかになった. また,島々のヤシガニ個体群の遺 伝的集団構造を明らかにすることで,その利用や保 全のあり方が分かると示唆している 野外でのヤシ ガニ資源が減少していく現状下で,放流等の増殖の ために,稚ガニの量産化技術の解明も必要である

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寅題 3 の藤田喜久の「小さなヤシガニはどこにい る ?

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・海に放されたゾエア幼生が変態してグラウ コトエ幼生 ( メガロパ) になり,上陸する際は一時 日本甲殻類学会 Sympos;um Report

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期貝殻をシェルターに利用しているが,脱皮成長し ていくうちに貝殻からでて生活するようになる. こ の小型ヤシガニ個体がどこ で生活するか不明な点が あったが,海岸の転石地帯に生息していることが分 かった ヤシガニを保全するには ,飛沫帯の転石環 境が破壊されないように保護する必要を力説され た 小型ヤシガニが棲みそうな自然海岸は,多くの 島で護岸工事やリゾート開発等で少なくなってい る. 演題4 の松崎章平の「希少生物に対する水族館の 役割: 海洋博公園のヤシガニについて」 沖縄美ら 海水族館のある公圏内には,ヤシガ、ニが出現しその 生態調査を行った結果,抱卵個体が発見されている ので,幼生が近海で育ち公園内に上陸している可能 性が述べられた 水族館の役割は,生物の展示にと どまらず,希少種の増殖や保全にも目を配るように なったようで,大変好ましいことである ヤシガニ を室内で水槽に入れて観賞させることも大事と思う が,野外で昼間でも見られるように,一定場所を 囲ってヤシガニ牧場をつくるのも一考に値する

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寅題 5 の 佐 藤 琢 の 「 ヤ シ ガ ニ の 資 源 管 理 繁 殖 生態からのアプローチ」 生物資源を利用する際に, 大きい個体や雌雄のいずれか選択的に利用すること がある 水産資源保護のために, 小型個体は捕獲せ ず,大型個体 (成体) を優先して漁獲する体長制限 の規定がある 先島( 宮古諸島と八重山諸島) や太 平洋諸国で捕獲され売られているヤシガニは,ほと んど大きな雄個体である . 例えば,多くの島艇から なるパヌアツでは,人口の多い島やその周辺の島々 のヤシガニはほとんど取り尽くされ,辺郡な小さな 島々から 小型飛行機で大裂の雄のみが運ばれてい た佐藤氏がいう「大型雄選択利用j で,野外で丈 夫な雄が少ない状態で健全な繁殖ができるのか大い に懸念される 繁殖に影響のない雄の捕獲体長を決 め,徹底させる必要を痛感する。 以上. 4方の講演内容を極簡単に要約し,私見を 述べてみた . ヤ シガニ養殖は可能か? ( 卒論) ; 田内. 1990 (卒論) ;諸喜田 ・田内. 1996; 田内・諸喜田 ・小西. 1996] 種苗生産試験は,小 規模の室内水槽でゾエア幼生を飼育し,グラウコト エ( メガロパ) まで数十 数百個体が得られた 若 い個体や成体の餌は,野園芋,キピナゴ,コイ用飼 料などをよく食べた 成長は遅いことが明らかに なった. Fletcher (1 988. 1993) によると 600gにな 2 kg以上になるの に 30 年以上, 寿命は約50年と推定されている 種苗量産化は難 しく,成長が遅いとなると,養殖するには採算が取 れなく,不向きのような気がする 琉球大学現役時代に,ヤシガニを養殖したいと相 談に来る個人や企業体が数件あった . これ らの中に は,台湾資本を利用して,金武町の億首川右岸の土 地に養殖場を造成し,事業をはじめた 事業を始め る前に相談に来たので,種苗生産や養殖技術が確立 されていない現状下では,養殖は難しいと話した が,結局,事業を開始して失敗に終わ った . ヤ シガニ牧場情想→呆全に向けて ヤシガニは沖縄先島地方や太平洋諸国では,普か ら食用や装飾用に細々と捕獲されてきたが. 20世 紀後半から観光客が増加するにつれて,商品価値が 高くなり乱獲されるようになった. グアム島では観 光客向けにヤシガニ料理を出し始めてから,島内の 個体が乱獲されて少なくなり,隣の島々から取り寄 せるようになったようだが,これらの島々も間もな く減少していったと云う 1989年 4 月に JICA が企画した南太平洋 4 カ国の 水産増養殖の現状調査を行う機会があった( 諸喜 田. 1991 ) 南北に多くの島々からなるパヌアツの ヤシガニ調査をすることができた. ヤシガニは,首 都ポートピラのあるエフェテ島はじめ周辺の島々で は乱獲されて激減していた. ホテルや食堂で利用す るヤシガニは,北西部にある小さな島々からなる辺 部なトレス諸島から小型機でエスピリツ・サント島 に運ばれ,そこからエフェテ島などの消費地に送ら れていた( 図 1). 捕獲されたヤシガニは,ココナツの業で作られた ヤシガニ養殖が可能かを卒論生達と種苗生産試験 篭に生きたまま詰められて運ばれていた トレス諸 や飼料および成長等について調べた[ 玉城. 1974 島では,島民がココナツの実を割って要所要所にお 94

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C a n僧r20(2011)

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図1 . バヌアツのヤシガニ 上,小型飛行機でトレス 諸島から空輸されたヤシガニ,中,大型雄個 体,下,エスピリツ・サント島のホテルが購入 した大型雄個体. いて,夜間見回って捕獲するようである . 一通り, 保 護 の た め に 甲 長9 c m以 下 の も の は 捕 獲 禁 止 に なっているが,出荷するヤシガニは 1 - 2 k gの雄で 占められていた. 多くの雌は体長制限に引っかかる

.--園

圃・

・圃

ヤシガニ資源の保全にむけて ので,捕獲されないようになっているが,実際は自 家用に利用されているとのこと 調査時点で,資源 の多い島でも年間約 25 % も減少してい るとのこと で, 22年たった現時点 (2011 年) では辺部な島々 も減少していることが懸念される では,なぜ大々的にヤシガニを捕獲すると資源更 新が遅れるのか. パヌアツのように,大型雄のみが 市場に出回ることから,天然では優秀な遺伝子を持 つ雄が不足し,遺伝子の劣化し た個体が生まれる可 能性がある それに伴って,繁殖力の弱体化が起こ ると考えられる. また ,成長が遅い資源を取り続け ると,新たな資源加入が減少し結果として激減あ るいは絶滅へとつながる ヤシガニを保全するには,商業ベースでの捕獲禁 止,体長制限の見直し,繁殖期の捕獲禁止,メガロ パの量産技術を開発し成長させた小型個体の放牧, 等々が考えられる. ヤシガニを珍味として利用する には,細々と家庭用に小規模に捕獲することが望ま しい 観光立県を目 差 している沖縄では,海岸近くでヤ シガニ牧場を作り観光資源に利用すると ,資源の増 強と保全につながると恩える . 文 献

F1etcher, W . J., 1988. Coconut crab ecology in Vanuatu. S P C/lnshore Fish. Res./ W P . 7, 5 pp.

Fletcher, W . ,.J 1993. Coconut crabs. In: A. Wrigh,.t & L Hill (eds.), Nearshore marine resources of the South Pacific. I C O D, Canada, pp. 643-681 玉城幸輝, 1974 ヤシガニの相対成長と産卵生態及び 食性. 琉大理学部卒論 諸喜田茂充・田内裕之, 1996. ヤシガニの脱皮習性 Cancer, 5: 7-9 諸喜田茂充, 1991 . 南太平洋バヌアツのヤシガニ. Cancer, 1: 3-7 田内裕之, 1990 ヤシガニBirgus latro ( L . ) の種苗生産 と成体飼育. 琉大理学部卒論. 田内裕之・諸喜田茂充- 小西光一, 1996. ヤシガニの 餌料と成長 C ancer,5: 卜6.

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参照

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