C A N C E R 12 (2003), p.23-25
左右が逆転したタラバガニの再記録
本 尾 筆者は先に左右が逆転した雌のタラバガニを報 告した (本尾, 2002). そしてその後も類似奇形 個体に関心を持 っていたところ ,今回新たに同様 奇形の雌1
個体を入手したので,その概要を報告 する . 材料と方法 奇形雌タラバガニは2002年12月29日,金沢市郊 外の「生き生き魚市j で売られていた5 匹の中か ら見つけたものである . 水槽中で生きているカニ をその場で ,4,000円で購入 し,家に持ち帰 って 観察し ,生鮮状態で計測した. なお,庖員によれ ば,カニは北海道から送られて来たものである . 測定部位を図1 に示した. その際,長さには O.l m m まで読み取れるノギスを用い,体重測定 には便宜的にクッキング ・スケールを使 った. な お,掌節幅とは,掌節高に対して直角に測 った, 線を含まない最大幅である . 観察結果 と考察 表1 に測定結果を示した . 進んで= 黒褐色を 呈 していた. 外卵塊は6 個即ち, いわゆる腹部右側の5個と左側の1個から成って いた . これらは十分に成熟したものであ ったが, 附属する左右位置は正常抱卵個体に比べて逆で あった. これは図2 に示すように腹部の左右逆に なった形態に対応したものと 言 える . ま た,胸部 にはオレンジ色の卵巣が充満し ていて,外卵の鮮 化が間近に迫っていたことを伺わせていた. これ らのことから ,この雌ガニは正常な生殖活動即ち , 普通の個体と同様の交接を経て,抱卵・解化そしHiroshi M O T O H : A fur出er case of reversed asym-m etry凶the red king crab,
Paralithodes
camtschat-t C U S 洋 てその後の産卵が可能であ ったものと思われる . なお,上記のように,販売していた庖 員 はこ のカニも含めてすべてが北海道から送られてきた “北海道産" と 言っ ていたが,現在,我が国の漁 業規則により抱卵タラバガニは漁獲禁止にな って おり,このことから同雌は恐らくロシア産であ っ て,北海道の業者を経て水産流通に乗 ったものと 思われる. 勿論,ロシアでも抱卵雌は漁獲禁止の 図1 錨脚の測定部位 (本尾‘ 2002 より ) 表1 タラバガニの部位測定結果 (単位m m,gr) 測定都位 左右逆転雌 (抱卵) 甲長 (額角 含 まず) 114.9 甲幅 (競合 まず) 128.6 体重 1,380 右主甘脚の全長 167.6 ク 掌節長。
掌節高 21.6 ク 掌節幅 15.8 ク 指節長 左紺脚の全長 174.9。
掌節長 65.1。
掌節高 33.2。
掌節幅 22.5 ク 指節長 40.024
左右が逆転したタラバガニの再記録本 尾 建前がとられている訳で あるが,これは多分に昨 今のマスメディアも 指摘するように,このカニは 密漁に依った公算が大 きいと思 われる. 最後に,タラバガニ科のカニ類の左右逆転の例 としては倉田 (1959),Campodonico (1978),渡 部 (1996),Z
ak1
an (2000),本尾 (2002) があり, 事例としては決して多くはない . 同科の仲間では 左右逆転現象は実際珍しいことなのか,あるいは “現場" ではかなりの高い頻度で生じていること なのかについては ,漁業による漁獲圧の影響有無 や資源生態との 関連も 含めて興味が持たれること である . 今後も更に事例 を集めて ,左右逆転の成 因を検討していきたいと思っている . 洋 25 文 献Campodonico, G. ,.1 1978. U n caso de inversion en la asimetra abdominal de las hembras de Paralithodes granulosa O acQuinot) (Deαpoda, A nomura, uthodidae) A nales del Instituto de la Patagonia, 9: 231-232.
倉 田 博,1959. 左右が逆転したハナサキガニ . 北水 試月報,16(3) : 14-17. 本尾 洋, 2002 左右が逆転したタラバガニ .Cancer, (11) : 11-13. 渡部 元, 1996. タラバガニはホンヤ ドカリと本 当に 近 縁 か ? イガグリガニ,エゾイバラガニ,コフキ エゾイバラガニに見られる左右逆転奇形.Cancer, (5) : 11-14.
Zaklan, S. D., 2000. A case of reversed a s y m metry in Lithodes maja (Linnnaeus, 1758) (Decapoda, A nomura, U出odidae).Crustaceana, 73(8): 1019-1022.