理学療法 学 第14巻第 1号 5
〜
12頁 （1987年） 原著
変 股
症
，人
工
股 関
節
全 置
換
術
施 行
例
の
PT
期 間
に お
け
る
股 関
節 機
能
と
股 関 節 外 転 筋
々力 値
の推
移
＊．
野
々垣
嘉 男
＊＊浅 井 友 詞
＊＊石
田
利
人
＊＊小 島
泉
＊＊＊ 要 旨 変 形 性 股 関 節 症で人工股 関 節 全 置 換 術を施 行例における術 前， 術後の理学 療法 ブP グラム を設 定し， 股関節機能と股関節外転筋々力値の推 移を求め検 索し た。 当 院 整 形外科で変 股 症と診断，
入工 股 関節 全 置 換 術 （MUIIer型 ）を施 行された19例 を対象と し た。
全 例 女 性，
年 齢 （x）60．
1tw，
体 重 （X
）54．
1kg ，
身 長 （ エ51．
9cm
であっ た。 股 関 節 機 能 ：日整 会 判 定基準 （total）で は，
術 前 （天）30．
4点，
術 後 3週 （菊 63点，
6週 （R）73，
4点，
8週 （X）90．
8点 と著しい改 善 が 認め られた。
股 関 節外 転 筋々力 ：術 後 3週の術 側 筋 力 値は （幻63．
3kg，
6週 （幻 95・
1k9，
8週 （X）109・
9k9，
術後2〜
8週の 間にお け る股 関 節外 転 筋々 力値は，
日に術 側 1．
2kg，
非 術 側 0．
9kg の増 加であっ た。
ま た， 理 学 療 法プロ グラ ムに よ る経 過 日数と股 関 節外転筋々 力値には P。
1％で相 関 が認められた。 股 関 節外転筋々力 体重 比 ：術 前の術 側で の比は1．
18倍， 術後 4週1．
42
倍，
8週2．
白3倍と なっ た。
股 関 節 機 能 （total）と股 関 節外転 筋々力 値に は p＝
1％で相 関 が 認め ら れた。
キー
ワー
ド THR 股関節機能 股外 転筋々カー
は じ め に 入口の 高 齢 化と ともに変形 性 股 関 節 症で，
観血的治 療 を要 する症 例を取 り扱う機 会が多く なる傾 向にあ る，
変 形性 股関 節症 は疼痛や歩行，
ADL 障害を 生ずる。 変 形 性 関節症は個体の老 化を基 盤と し て，
関 節機購に生 力 学 的 な 不均 衡を相伴い，
漸次発症 し て慢 性に経 過 し て， 時には病勢は停止1〕し，
な ん らかの 有効 な治 療を 施行し ない と関 節は荒廃の一
途 を辿る2）。
近 年，
変 形 性 股 関節 症で関節 破 壊や臨床 所 見が著しい 症 例に，
人工関 節の開 発，
発展に よ り入工関 節 置換術が 積 極 的に施 行 される傾 向にある。
‡Hip
JQint
Functlon and Abductor Muscle FQrce duringPT
−
tralning with Total Hip Repracement for Osteoar−
thritis
＊ ＊名古屋市立 大学 医 学 部 付 属 病 院
リ
ハ
ビ リテー
シ ョン部Yoshio Nonogald
，
RPT，
Yozi Asai，
RPT，
KazutoIshida
，
RPT，
Nagoya City University Hospita1＊ ＊ ＊国 立
療 養 所 東 名 古屋病 院 付 属リハ ビリ テ
ー
ショ
ン学 院 Izumi，
RPT ：Higashi Nageya Nationai HQspital．
Schoolof Physieal and Oceupational Therapy
．
（受 付 日 昭 和61年 6月 4日） そこ で著 者らは
，
変 形 性 股 関 節症で人工股 関節 全 置 換 術の施 行 例に，
術前，
術後の理 学療法プロ グラムを設定 し，
股 関節 機 能 と股 関 節 外 転 筋々力 値の推 移を求め検索 を 行っ たの で報 告す る．
対 象 当院整 形外科で変 形 性 股 関 節 症 （以 下， 変 股 症とい う） と診 断 され，
人 工股 関節 全 置 換 術 （セラ ミッ クヘ ッF
M 田1er
型が過半数を占め る）を施 行さ れ た症例 を対象 と した。
内 訳は右 側置 換 術 7例（37％），
左側置換術12
例 （63
％ ）であっ た。
ま た股関節の レ線像分類 （日整 会判 定 ）3〕で は，
宋 期 関 節 艨 と一
部に進 行 期 関 節 像を認 め た ものである。
性別 は 全例 が 女性で，
年 齢は50〜
72歳，
平 均61．
1±7，
1tt，
，
身長は平 均151．
9± 6，
5cm，
体 重は平 均 54．
1±7，
2kg であっ た。
検
討 方 法 変股 症で人 工股 関 節 全 置 換 術の施 行 例に，
術前・
術後 の理 学 療 法プロ グラ ム を設 定し，
その 期 間 中にお ける股 関 節 機 能 （日整 会 判 定 基 準に 基づ く）4） と 等尺性 股 関節6 理学療法学 鍛 4巻 第1
・
号 入 院 ep．
1週 2週 3週 4週 5週 退院 オリ エンテー
ショ
ソ 股 関 節 機能評 価 M．
M．
T．
股 開節 外庶筋々力測足 体 重 心 測 定 松 葉梗・
3点 歩行 の 指 導 股 関 節 周 囲 筋・
下肢筋 筋 プ」強 イヒ訂rTma，
コ，
1 コ 1股 開節i
股 関 節 Rα ・．
・、．
i
l
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籥：
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哺 噌 柵 位 を訶l
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一
一
一
卩 l l 碁 「 階tW罪降IH［1蝋 T杖1匸変更 術 後評筋 名 占臓 冠f立大学 決学 部 整形 外 科・
リハ
ビ リ テー
ンゴン部 図 1 当院に おける変 股 症で人工 股 関 節 全 置 換 術 施 行例の術 前・
後，
理 学 療法プロ グラム 外転筋々力値を求め検索 とした。
人 工股 関 節 全 置 換 術の 理学 療 法プロ グ ラム は，
術前に オ リエ ン テー
シ ョ ン 及び 股関節機 能 評価等，
股 関 節周囲 筋，
特に股 関節 外 転 筋の筋 力 強化，
松葉 杖歩行 等の訓 練 指 導を図る。 術 後の 訓練は手術創に感染を起こ させ ない 様に注意する と共に，
股 関 節 脱臼 を防 ぐた め に，
股 関節 を軽度の屈曲・
外 転・
内旋 位 保 持 を2週間は行 う。
術後 は 3 日 目よ りROM （屈曲・
外転 ） 訓 練を開 催し，
5 日 目に は長 坐 位・
椅 子 位 姿 勢を許 す。
ア日 目 よ り立位保持 か ら松 葉杖（1／3荷 重 ）3点 歩 行 訓 練 を 行い，
抜糸後よ り 水 治 療 法を追 加 する、
3週 目 よ り1
／2 荷重，
4週 目 には 全 荷 重を許 す。
ま た ADL 訓練 （正坐， しゃがむ・
立ち 上 り動 作，
下 着・
ズ ボ ン・
靴 下 着 脱，
爪 切b
，
階 段 昇降，
入浴 動 作等） を 順 次に習 得させる。
6週 目に は松 葉 杖よ りT杖に変 更さ れて退 院と なる。
（図1） 股 関 節 外 転 筋々力 の 強 化 法は，
著 者らが 製 作した装 置5）で 等 尺 性 股 関 節 外 転 筋々力強 化の負 荷 （負 荷10sec
， 休息 10sec を各10回1
日／1回 を術 前，
術 後2週 目よ り 強 化 訓練と して， 本装置を多 用途 監 視記録装置 （日本光 電 社 RM−
150） に 歪 み 圧力 計 前増 幅 器 （AP −
620G）に接 続し た。
本 装 置で記録し て描かれた基線か ら頂 点を 最大 筋力値とし，
ま た各 被 検 者の測 定 位 置が異なる の で，
第 3挺子の式に より大 転 子 部の値に変 換し求めた。 ま た静 的 作 業量 （値）は高さ （力 ） と 距離 （時間 ）の積゜〕と し て プラー
ニー ・
メー
ター
（tamaya PIANIX 3）で 測定 を求めた。
これ らの値を YHP．
Portable
MAR −
97 にょり統計処 理 を求めてη 検 索しk
。
結 果1
股関 節 機 能 変 股 症の股 関節 機能を求め る た めに，
日整 会によ る変 股 症の臨 床 判 定基準に従っ て 求 めた。
a ） 疼 痛 ：股 関節の疼 痛を 5段 階に よ り区分し た判定 の結 果は，
術 前では平均7．9
±4．
2
点，
であっ た，
入エ 股 関節 全 置 換 術 後 3週 で 平均 34．
6
エ 4．
6点。
6週で 平 均 37
，
6± 2．
1点と著 明に疼痛が激 減し た のが認め ら れ た。
（図2 ） b）ROM ；股 関 節の可 動 域を屈 曲と外転によ る 区分 判定は， 術前で は股 関節屈曲は，
術 側 平 均5L3 ±14．
6D
， 非 術 側 平 均108±11．
2°
。
股関 節 外 転は術 側平均8．
8士・，1．
sa，
非術側平均27．3
±5．
3°
で， ROM 点 数では平均9、
7士2，
8 点であっ た。
術 後 3週 での術 側股 関節 屈 曲は平 均88．
2± 13．
4°
，
外 転平均25．
8エ 6．
2Dで，
ROM 点数に お いて は平 均／5．
6±2．
4点。
6週で股 関 節 屈曲平 均92．
8エ 12、
5°
，
外 転 平 均27，
6±5，
6° ，RQM
点数で は平均18．
26
± 2．
4点と な り，
人工股 関 節 置換術後に 著しい 関 節 可 動 域の増 加が 認め られた。
（図2（b）） c） 歩 行 能 力 ：歩 行 能 力を5 段階に区 分ecよ る判 定で は，
術 前の歩 行 能 力は平均5点 （屋内活 動は出 来るが 屋 外 活 動は困難 ）であっ た。
術 後の歩 行 能 力はプロ グラ ム で許す 範 囲に よっ て判 定を求めた。
従っ て術後1〜
6週 で は 5点と な り，
3〜
6 カ 月後には ほ と ん ど が 正常値 （20
点 ）の歩 行 能 力 が 得 られた。
（図2（c））d
）ADL ： 10項目の ADL を動 作が容 易・
困難・
不 能の 3 段階に よっ て判 定に よ る ADL は，
術 前の ADL は平均7，1
±2．1
点。
人工関 節 置 換 術3週 で平 均7．
8
±6，1
変股症， 人工股 関節全置換術施行 例の PT 期間における股 関 節 機 能と股 関 節外転筋々力値の推移
7
40点 302010 20点 10一
Pain一
術 前Ope 10 20 30 40 50 60 70 80H一
R．
0．
M．
一
術前Ope 10 20 30 40 50 60 70 80日 20点 1e一
歩 行 機 能一
術 前Ope IG 20 30 40 50 60 70 80日 20点 10一
A．
D．
し一
術 前Ope IO 20 30 40 50 60 70 80日N ＝
19 図 2 変股 症19例，
人工股 関 節 全 置換術施 行 前・
後 に おける股 関 節 機 能，
上よ りPain
，R ．
0．
M ．
，
歩 行機能，A ．
D ．
L ，
の推移を示す。 （（図の 上 よ り（a），
（b＞，
（c），
（d）を示 す ）100
点 50 点，
6週で平 均13．
9
±5．
9点，
8週 で平均17．
4
±3，
4点に 改善が認め られ耘 （図2ω ） e） 股 関節 総 合 機 能 ：股 関 節 機能を疼痛・
RQM・
歩 行 能力・
ADL の総合 機能で は，
術 前 平均30．
4
±7．
8点で， 人工関 節 置換術後3
週で 平 均63±3．
6点，
6週で 平 均 73．
4±4．
9点，
8週で平 均90．
8士3．
1点 とな り，
従っ て人 工 関節置換術 後の プロ グラム遂行， 経過と と もec股 関節 総合機能 改善の認め られ た。
（図3）ff
人工 股関節置換術PT
プロゲラ ム 遂行に お け る 股 関 節 外 転 節 節 力値変 股 症で人工股 関節傘置 換 術に よ る理 学療 法プn グラ ム 遂 行における
，
等 尺 性 股 関 節外転筋々 力 値の推 移を求 め た。
（図4 ） a） 術 前の訓 練と股 関 節外転筋々力 値 ：本症 例の術前 で の訓練期 間は平 均 7．
4
日で あった。 術前の訓練開 始 時 で の股 関節外転 筋々力値は，
術側平均56．
8±15．
2kg，
非 術側平均75．
9± 18，
5kg で， 術 側と非 術 側の筋力 値 差 は 19．
Ikg であっ た．
術 前の訓 練に よ る股 関 節外転筋々力 値は，
術 側 平 均63．
8±15．
3kg， 非 術 側 平 均82．
3±20．
4kg とな り，
術側で平 均 7kg，
非 術 側で平 均6．
4kg
の筋 力 上昇が認められた。
b） 術後訓練と股 関 節 外転筋々力値 ；人 工関 節 置 換 術 後の PT プロ グラム 遂行に おける
，
股 関節 外転 筋々力 値 を求め る ため に，
手術に よる軟 部 組 織の修 復 期よ り，
股 関 節外転 筋に等尺性筋 力 負 荷を行い推 移を求めた。
本 症 例における術 後の訓練期 間は平 均61．
6日であっ た。人エ 関 節 置換術後2週で の股 関節 外 転 筋々力値は
，
術 側の平均41，
1±12kg，
非術側の平均8L7 ±11，
6kg
であ一
総 合 機 能一
図3
変 股 症ユ9
例，
人工股 関 節 全 置 換 術 施 行 前・
後における股 関 節 機 能 （total＞の推 移を 示 す。
8
理学療 法学 第14巻 第1号一
術 側一
kg150 100 50 股 関 節 外 転 筋々力 術 前Ope 経過日数 10 20 30 40 50 60 70 80 90日一
非術側一
90k5 ユ 10G 50 股 関 節 外転筋々力 術 前Ope 10 20 30 40 50 60 70 SO 90目 経 過口数 図 4変 股 症19例
，
人 工股 関 節 全 置 換 術施行 前・
後にお ける各 症 例 の術 側，
非術 側の等 尺 性股関節外 転 筋々力負荷に よる筋 力 値 の推 移 を示 す。
っ た。
3週 （1／2荷重 期 ）で の術 側：tz
均63．
3
土10．
9kg，
非 術側平均 81．
7±11．
6 kg。 4週 （全 荷 重 期 ）の 術 側 平均 76．
9± 11kg，
非 術 側 平 均91．
7±10 kg。
6週 （松 葉 杖よ りT
杖 歩 行 期 ）では，
術 側の 平 均95．
1土12kg，
非 術 側 平 均 111±13、
1kg
と な り ，8
週の 術側平均工09±16．
7kg，
非 術 側の平均124．
3±12．
8
kg
と な り，
人工関 節 置 換 術の28 週 の間1こお け る，
股 関 節外転 筋々 力の変化は， 術 側 平均 1．
2kg ／日， 非術 側 平 均0．
9kg 〆日の筋力 増 加であっ た。 ま た変 股 症に よ る 入 工股 関節 全 置 換 術 後の PT プロ グラ ム に よ る， 経過日数と股 関節 外転 筋々力 値の 関係につ い て検索する ため に対 数回帰 分 析を求め たs ｝ ｝Σ：yi正nxi
−
1
一
Σlnxi
Σyib ＝
一
Σ σnx ）L1 （Σ 1nxi）・ 。
− ！
（Σyi− b
Σ1
。 。i
）・ n rZ．
■
y＝
a ＋blnx xL
Σyil・x ・÷
・・x1 Σ・・1
［
Σ （lnxi
）・−
t
（Σ1
・x・）・ユ
［
・ …一
÷
磋
・・）・］
変股症， 人工股 関節全置換術施行例の
PT
期 間に おける股関節機 能と股 関節外転筋々 力値の推移9
90k5 1 100 5e 股 関 節 外 転 筋々力股 関 節 攤 皀
50
10°％ （t。tal） 図 6 変 股 症19例
，
人工 殷 関節 全 置 換 術施行 後にお ける各 症 例の 平 均値で の 股 関 節 機 能 （t。tal） と股関節外転筋々 力値の術 後 2週〜
8週 目で の相 関 を 示 す。 即ち，
術側におい て は y＝−
73．
44−
1−
44．
8X ， 非 術 側 で は y・
＝−
48．
53＋42．
2x と な り，
術 側， 非 術 側と もに P＝
1％で相 関が認め られた。
（図5）c ）術側と非術側の股 関 節 外 転 筋々力 値の差
．
等尺性 股 関 節外転 筋々 力の負荷に よ る筋 力 値の推 移を，
人工 関 節置換 術側と非 術 側の 値 差 を 求め る と，
術 前で は 平 均 19．
1kg （非 術 側を10D％とする と：平 均25．
2％の差 ），
術 後 2 週で 平 均34．
6kg
（22．
5％ ） ，3週で 平 均
18．
4kg
（22．50
／e），
4 週で 平 均 14．
8kg （16．
Ie／o），
5週で 平 均15．
3kg
（15％ ）， 6週で平 均王5．
8 kg （14．
2
％），
7週 で平 均15．
9kg （13．
8％），
8週で平 均14．
4kg （ユ1．
6％ ）の差 であっ た。
従っ て術後の PT プロ グラム遂 行と共に，
術 側，
非衛側の股 関 節 外 転 筋々力 値が増し，
術 側，
非術 鯏 の筋力値 差は，
術後の始め に はその差が 大 ぎいが，
経 過 と と も に差が小さくな り推移する のが 認め ら れた。
皿 人工 股開節全置 換 術のPT
プロゲ ラム と股 関 節 外 転 筋作業量 変股 症で人工股関節全 置換 術に よ るPT
プロ グラ ム に よ る股 関節外転 筋の作業量 （値）を求め ると，
術 前にお ける衛 側では平 均 59．
7kg・
sec，
非 術 側 平 均 75．
7kg・
sec であっ た。
人 工関節 置換 術後2週で の術 側 平 均45．
2kg・
sec，
非 術 側で平 均63．
4kg ・
sec，
4週で術 側 平 均71．
2
k9・
sec，
非 術 側の平均83．
4kg・
sec，
8週で の術 側 平 均97．
5kg ・
sec ， 非術 側の平 均109．
5kg ・
sec であっ たe 従っ て術 側，
非術 側と もに股 関節外転筋の作 業 量は，
筋 力の推移 と 同様の傾 向で増加 し 推移 する。
ま た術 側と非 術 側の比 較 差で は， 筋力 値の差よりも作 業 量にその差が少ない 。 W 人 工股 関 節全 置 換 術の PT プロゲラ厶 と 股関 節外 転 筋 筋 力 値／ 体 重 比の推 移 平衡 理 論に基づいた股 関 節 外 転 筋々力 値 を健常 者で は 体重の3 〜
4倍と算 定8｝ してい る、
本症 例の人工股 関 節 全 置 換術 PT プログラム における股 関節外転筋々力値／ 体 重 比を求め る と，
術 前で は術 側 平均1．
18，
非術側平均 工．
52であっ た。
人工 関飴 置 換 術後の 2週で術 側 平均O．
87， 非術側の平均1．
22。
4週で術 側平均1．
42，
非 術 側の平 均 工．
69，
8週で術側 平均2．
03，
非 術 側の平 均2．
29と な り，
変 股 症で人工関 節 置換術に よる股 関節外転筋々 力値／体 重 比は， 術 前に比し て術 後8
週 で術側0．
85
， 非術側0．
77 に増加した。
ま た術後日数 と股 関 節 外 転 筋々力 ／ 体 重 比 の 関係に つ い て検索 する た め，
対 数 回 帰に よっ て求め る と術側 y・
・
−
1．
53＋O．
88x，
非 術側 y＝− 0．
93＋O．
79．
x，
p；
1％ で相関 が認 め ら れ た。
V 変 股症で人 工 股関節 全 置換術に よ る， 股関 節 機 能 と 股 関 節 外 転 筋 筋 力 値の関係本症例の 人 工股 関節 全 置 換 術の施 行に よ る PT プロ グ ラム遂行での股 関節機能 （日整会
，
機能判定 total） と 股 関 節 外 転 筋々 力 値につ い て関係を検 索するk
め に，
対 数回帰を求め ると y＝−
405．
22十116、
68x，
p＝
1％で相 関が認め られた。
（図6） 考 察 股関 節は体重 を支持し運 動1
生に富んだ関 節で，
歩 行や ADL に重 要 な 機能を 果 し て い る。
従っ て股 関emlc
疼 痛 や 機 能 障 害は下 肢の他 関 節よ り も不自由度が大 ぎい9｝と い う。
変 股 症は疼 痛，
歩 行や ADL の制限・
障 害を 生ずる。
股 関 節は体重支持・
歩 行 や ADL に よっ て常に ス トレ ス を受け，
支持 組 織に 機 能 的 適 応の ス トレ ス が その限界を 超 えた時に発 症し10｝，
関 節 病 変は徐々 に進行し増悪 し，
何ら かの有 効 な治 療 を行な わ ない限り， 関 節は荒廃の一
途 を 辿る とい う。
近年 変 股 症で末 期 関 節に，
疼 痛の除去，
可動域の確保，
術後早 期より起 立・
歩 行が可 能と な る， 人工股関節置換 術が 諸 国におい て も行われて い る11〕。
人工股 関節の発展は，
1938年Smith−PetersQn
がCup 関 節 形成術工2｝を 発 表以来，Moore−Bohlman13
＞，
Judeti4
） らに よっ て人工骨頭 を 発 表。
1960年Charnley
が骨セ メ ン トを用い た 人工股 関 節 置換術の 優 秀な 成 纉 を 報 告 し10 理 学 療 法 学 第14巻 第 1号 50 1 100 50 股 関 節 外 転 筋〃カ 経 過 日数 図 5 変 股症19例
，
人工股関 節全 置 換 術施行 前・
後における各 症例の平 均 値に よる股関節 外 転 筋々力 （等尺性 負 荷 ）での推 移 及び相関 関 係を示 す
。
て以 来， 種々 の入 工股 関 節が開 発 され ／5），
世 界の諸国で 使用さ れ，
現 在で は Charnley 型，
MUIIer
型，
亜 型の人 工股 関 節 がお もに使 用さ れて い る／6）。
そこで著 者 らは，
当 院に お い て変 股 症でMuller
型 人 工股 関節 全 置 換 術の施 行 例に，PT
プ卩 グラム を設定し， それに従っ て股関 節機 能と 股 関 節外 転 筋々力 値の推 移 を 求め検索した。
人エ股 関 節のPT
プロ グラム は，
人 工 関 節の種 類 や 骨 セ メン ト使 用の有 無，
大 転子の切離・
骨 移植の有無等の 手 術 方 法に よっ て異 なる であろう。
術後初期の股関節機 能は PT プ v グラム の遂 行 と 伴に機 能 改 善 を 認め，
諸 家 の報 告と 同様の 傾 向を示 すも，
人工股 関 節 置換術 後のPT
プロ グラ ム による依 存 性に よっ て 股 関 節機 能 が変化 す る。
股 関 節外 転 筋の機能は歩 行・
骨 盤の側 方 安 定に大 き く 関与，
機 能し，
PauwelsS ｝ らが股 関 節 骨 頭に か か る合 力 と股 関 節 外 転 筋々力 値を平衡理論よ り求め，
股 関 節 外 転 筋々力 を 体 重の 3〜
4倍 と 算 定し てい る。
ま たMer ・
chant17 〕は 骨 格 標 本 を 用い て，
中・
小 殿 筋，
大 腿 筋 膜 張 筋 に stra三n gauge に ワ イ ヤー
をセ ッ ト し て，
各肢 位で の 各筋 筋力 値 を 測 定し た。
InmanL9｝は 筋横 断面積よ り中殿 筋4
， 小 殿筋2 ，
大 腿筋膜 張 筋 1の割 合で働 くと述べ て い る。 Hettinger20 ） らは 筋 線 維の走 行に直 角横断面積 当 り，
平均 5kg ／cm2 が絶対筋力とい う。
著 者は strain gauge 法に よる男 性 平 均22 歳の股 関 節外転 筋寝 力を実 測19）し，
体重の 2〜
3．
5倍で あっ
た。
筋 力ト レー
ニ ングに は種々 の方 法がある が，
著 者は健 常者 や 変 股 症で入工股関節 置換 術の施行 例に，
等尺性 ト レー
ニ ング法が有意2e）と考察し， 等 尺性トレー
ニ ン グ 法 に よっ て股 関 節 外 転 筋々 力の推 移を求めた。
変 股 症は関 節に退行 性・
増 殖 性 変 化が同 時に起こ り漫性に経 過2D し， 関 節に形 態 変化と機 能 障 害 を 起こす。
従っ て発 症か ら人 工関節置換術施行 さ れ る まで に長年月を要し，
疼痛や機 能 障 害が増すに従っ て癈用性筋萎縮も進 行し た状態での 関 節 置 換 術 例であろ うe 人工股 関節 全 置 換 術 創の軟部組 織が修 復 期よ り等 尺 性の股 関 節 外 転 筋の トレー
ニ ン グを 行い，
術後 7〜
8週で平均109．
9kg （体 重の2．
03）に達 し た。
トV一
ニ ング及び疼 痛の消 失，
機 能 改 善 も筋 力 増 強，
筋 萎 縮の改 善に大きく関与し てい る。
ま た非術 側の トレー
ニ ン グにおい て も同 様の傾 向によっ て筋 力が増 強 した が，
術 側 と非術 側の 股 関 節 外 転 筋々 力の差で は，
ト レー
ニ ン グの初 期で は差が大 きいが，
トレー
ニ ン グの遂 行とと もに小さくなるも術後 7閥
8週 で約10％の低 下が 認め られ た。
今後長 期にわ た る筋力の 変化につ い て観 察・
検 討 を要 する。
近 年パ イ オメカニ クスや金 属・
高分子素材等の進歩発変股 症
，
人 工 股 関 節 全 置 換術施 行 例の PT 期 間に おける股 関 節機能 と 股関 節外転 筋々力値の推 移 11 展に よ り，
優れ た人工関節が作れる傾 向に あっ て，
人 工 関 節のデ ザ イン に よ る許 容の範 囲以上の運 動 が 強 制さ れ る と，
「弛み」を誘 発させ るの で， 筋 力の 保持 やT杖歩行・
洋 式ト イ レ の使 用の 心 掛 けること が，
再手術の防止2Z｝ になる とい う。
ま と め 変 股 症で人 工股 関 節 全 置 換 術例， PT プロ グラムを設 定， 股 関節 機能と股 関 節外転 筋々 力の推 移を求め検 索と した。
1
） 当院 整 形 外 科で変 股 症と診 断，
人工股 関節 全 置 換 術 （MUIIer
型 ） を 施 行 された 19例，
全 例女性，
年 齢平均 60．
1歳， 体重54．
1kg ，
身長151、
9cm であっ た。
2
） 股関節機能 （日整 会）：術 前 total 平均30．
4
点，
術後 3週63 点，
6週73．
4点，
8週90．
8点，
著しく改 善 が 認め られ た。
3） 股 関 節外転筋々力 ：術 後 3週 （術 側）の：筋 力平均63．
3kg，
6週95．
1kg，
8週109．
9kg，
術後 2〜
8週の間 で の筋 力 増 加は，
術 側 平 均1．
2kg ／日，
非術 側0．
9kg であ っ た。
ま たPT
プロ グラム 経 過日 と股 関 節外 転 筋々力tC は p＝ 1％で相 関を 認めた。
．
4） 股関節外転筋々 力／体重 比 ：術前の術側1．
18，
術後 4週1．
42，8
週2．
03と なっ た。
5） 股 関 節 機 能 （日整 会 total＞ と股 関 節 外転筋々力に はp＝
10／」で相 関を認め た。 （本 発 表の主 旨は，
第20回 日本 理 学 療 法 士 学会におい て報 告した） 本発表にあたり ご指 導 を 賜 りました名 古 屋 市立大 学 医 学部助教授 蟹江良一，
名 城 大 学 工 学部 教 授 石 塚 鎮夫に謝 意を申し 上げます。
参 考 文 献 1） 牲ト1中 正一
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<Abstract>
Hip
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andAbductor
Muscle
Force
duringPT-training
with
Total
Hip Replacement for OsteoarthritisYoshio',
NONOGAKI,
RPT.
Yozo,
ASAI,
RPT,
Kazuto
ISHIDA,
RPT Nagaya City University H'ospitalIzumi KOZIMA, RPT
School
of
Physical and OcczipationalTheropy'The purpose of this study was to compare the
hip
joint
function
and the hip abdoctor musclesforce
in
pre-operative state with thosein
post-operative state.19
subjects were al}'womenl whoseages averaged 60.1 years. Their average body weight was 54,lkg and the average stature was
159,1em.
The hip
joint
function was evaluated6y
the peint system of our usein
pre and post operative state(3,
6 and 8 weeks after the operation). Subjectsgot 30.4 average pointinpre-operative state, 63I.p,ointsin 3 weeks pQst-operation, 73,4 pointsin
6 weeks post-operationand 90,8pointsin8weekst
.
post-operatlon.
The
hip
abductor muscles forcewas measured by a strain-guagedevice.
It
increased
to 63.3kg in 3 week$ post-operation,95.1kg in6 weeks post-operation,and 109.9kg ln8weeks post-operation.From 2 to 8 weeks after the operation, the
hip
abductorforce
shovved1.2kglday
increaseinoperated side and O.9kglday increaseinnon-operated $ide.'
The ratio of the hip abducter ynuscle
force
tobody
weight showed thus; Pre-operativestate, 1.18 times.4 weeks post-operation,1,42 times.
8
weeks post-operation,2.03
times.Relationship
