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幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.36.27

幻肢・幻肢痛を通してみる身体知覚

大 内 田   裕

東北大学

Body perception through the phantom limb and phantom limb pain

Yutaka Oouchida

Tohoku University

Almost all the amputees feel the existence of the amputated limb after limb amputation, which is known to be phantom limb. Many amputees can move and control their phantom limb at their will and they report that they re-ceive sensory feedback of the phantom limb while phantom limb moving. Further, approximately 50–80% of them have pain on the amputated limb, phantom limb pain. A possible mechanism for phantom limb is that the informa-tion of the body in the amputee’s brain is not updated after amputation for some reason, causing this illusory feeling of the amputated limb. This phenomenon suggests that our body perception depends largely on the body informa-tion in the brain formed from sensory informainforma-tion of multimodal sensors in the body. For understanding the mech-anism of our perceptual system, to examine the mismatch between actual sensory information in the environment and our perception is very useful. Thus, to elucidate the phantom limb will provide us with rich information to help understand the mechanism of our body perception.

Keywords: phantom limb, body perception, brain plasticity

1. は じ め に 私たちは,自分の体を動かそうとするときに,正しく 自分の身体の状態を知らなければ,思い通りに身体を動 かすことができない。例えば,お葬式などで長時間正座 を強いられたとき,足がしびれて足先の状態,足首が伸 びているのがわからない状態になると,まともに歩けな くなってしまうだろう。このように自分の身体の状態を 知ることは,身体の運動制御に欠かすことのできない情 報といえるだろう。しかしながら,我々の知覚は,実際 の世界を「ありのまま」に捉えているわけではない。視 覚においても我々の知覚は,視覚情報が存在しない盲点 に気がつかないことや奥行き知覚など,実際に目から入 力される情報からのみ知覚が生み出されるわけではな く,存在しない情報が加えられたり減らされたりするこ とにより生み出されている。このようなことから,視覚 研究では,錯覚という現実と知覚との乖離の現象を詳し く調べることにより,視覚知覚の仕組みが明らかにされ てきた。身体の一部を何らかの理由で失った人たちの多 くは,失った身体部位が依然として存在しつづけている ように感じる。このような感覚は,幻肢と呼ばれ,まさ に現実の身体と知覚される身体との乖離を示す例といえ るだろう。本稿では,我々の身体知覚の理解を目的とし て,幻肢とその幻肢に生じる痛みについて紹介する。 2. 幻肢について 四肢が何らかの理由により切断されると,切断後に切 断肢が依然として存在する感覚が生じる。その残存感覚 は,幻肢と呼ばれる。幻肢の発症率は,文献にもよるが 9 割以上の患者で幻肢を感じることが報告されている (Oouchida et al., 2016; Ramachandran & Hirstein, 1998)。た だし,幻肢の明瞭度や形状などは,切断前と完全に同じ 幻肢から,一部が欠けていたり,足先や指先は感じるが その途中部分である膝や肘は感じないなど,非常に様々 である(Schott, 2014)。 2.1 幻肢の運動 幻肢を有する四肢切断患者は,意のままに幻肢を動か Copyright 2017. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: Department of Physical Medicine

and Rehabilitation, Tohoku University Graduate School of Medicine, 2–1 Seiryo-machi, Aoba-ku, Sendai, Miyagi 980– 8575, Japan. E-mail: [email protected]

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すことができ,さらには,幻肢が動いたという感覚 フィードバックも経験していると報告している。しかし ながら,本当にそのようなことが生じているのかを外部 から観察することは難しい。そこで,神経イメージング 手法を用いて,切断患者が幻肢を運動しているときの脳 活動を計測すれば,患者の主観的な報告を理解すること が可能となるだろう。ただし,幻肢は,外部から観察で きないため,本人が動かしていると主張しても単なる運 動のイメージを行っているだけかもしれない。この問い に答えるために,Raffin, Mattout, Reilly, & Giraux (2012) は,四肢切断患者で幻肢の運動実行と運動イメージを 行っているときの脳活動をfMRIにより計測し,切断患 者が報告する幻肢の運動が本当に運動実行なのか,それ とも運動イメージなのかを検証した。14名の四肢切断 患者が,幻肢と健側肢の運動実行と運動イメージを行 い,同時に脳活動を計測した。切断端部分から筋活動を 計測し筋活動の有無により運動実行(筋活動あり) と運 動イメージ (筋活動なし) の2種類の条件を区別した。 その結果,幻肢による運動実行と運動イメージ中の脳賦 活パターンは,健側肢とほぼ同様の脳賦活パターンで あった。このことから,幻肢の運動実行と運動イメージ は,両運動ともに目に見えないが,健側肢と同様に異な り,幻肢を動かしたり,運動のイメージを行えているこ とが推察される。 2.2 テレスコーピング 幻肢は,切断直後には切断肢と全く同じであるが,徐々 に短縮していき,切断端部分に遠位部が接着しているよ うに感じることがある。この現象は,テレスコーピング (telescoping)と呼ばれる。例えば,上腕切断の場合,上 腕の切断端部分から肘がなく,突然手または指が生えて いるような感覚になる。テレスコーピングの生じ方は, 近位(体幹に近い側: 肩など)から遠位(身体から遠い 部分: 指など)に向かって消失していく。テレスコーピ ングの発生頻度は,幻肢を有する切断患者の6∼70%程 度であり,一側切断患者では,四肢の残存部分が長いほ どテレスコーピングが生じやすい。テレスコーピングに よる幻肢の長さは,一次体性感覚野の体部位再現地図に 反映されていることが報告されているが (Bjorkman et al., 2012),テレスコーピングによる幻肢の長さの変化は, かなり短時間(数秒単位)で伸びたり縮んだりすること もあるため,一次体性感覚野が数秒単位で体部位再現性 が変化するのかという疑問が残る。 2.3 referred sensation referred sensation (関連感覚)とは,身体の残存部分に 触れると存在しない切断部分に触れたように感じる感覚 である。上肢切断の場合には,切断端部分周辺と顔に触 れると,幻肢に触れたというreferred sensationが生じる。 また,下肢切断の場合には,切断部分周辺のみにしか生 じない。この現象は,四肢切断後に生じる一次体性感覚 野の可塑的変化によるものと考えられている(Ramach-andran & Hirstein, 1998)。四肢が切断されると,その四 肢から脳へ(一次体性感覚野)の感覚入力は途絶える。 一次体性感覚野は,感覚情報を受け取る身体部位と一対 一対応をしているため,身体の一部から感覚入力が消失 すると,変わらず感覚入力を受けているその周辺領域 が,感覚入力を受けていない領域に侵入していくと考え られる。一次体性感覚野の体部位再現性地図を見ると, 例えば,手領域の上方には,肘,肩の領域があり,下方 には,顔の領域があることがわかる。そのため,手が切 断された場合には,上方から肘・肩から入力を受ける領 域,下方から顔からの感覚入力を受ける領域が侵入する ことになり,手から入力受けていた領域は,元々の手に 加えて肘・肩,または顔という2重の身体部位からの感 覚入力を受け取ることになる。一方,足先は,一次体性 感覚野の最も上方に位置しているため上方からの侵入は なく,下方の大腿部分,臀部などからの侵入をうけ,2 重支配を受けることになる。そのために,足のreferred sensationが,切断端部分である大腿部や臀部のみからし か生じないと考えられる。 この幻肢というのは,必ずしも四肢が切断されなけれ ばならないわけではない。切断に至らなくとも,バイク 事故などにより身体の感覚神経に損傷を受けた場合や, 脊髄損傷のように脊髄神経の感覚神経路に損傷を受けた 場合にも幻肢が生じる。さらには,健常者においても肩 や腕の感覚神経を一時的にブロックする腕神経ブロック 注射後に痛覚,運動感覚,随意運動の消失が生じている 状況では,実際の腕の位置とは異なる場所に腕が存在す ると感じることが報告されている(Melzack & Bromage, 1973)。このことから,幻肢が生じるには,四肢からの 感覚情報の遮断が必要と考えられる。 2.4 先天性四肢欠損者の幻肢 先天性四肢欠損者の場合には,幻肢は存在するのだろ うか?この疑問は,脳の一次感覚野や一次運動野が身体 のどの部位から感覚情報を受け取るのか,どの筋肉を制 御するのかということが,生後獲得されるのかそれとも ある程度生得的に決まっているのかという疑問にもつな

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がるだろう。しかしながら,現時点では,この問いに対 する一致した見解は得られていない。つまり,先天性四 肢欠損患者は,幻肢を感じるとする研究や幻肢は感じな いとする研究があり,さらに,幻肢を感じるのは,他者 の身体から欠損肢の視覚情報をえることから生じる欠損 肢の視覚イメージであり幻肢ではないとする考えもあ る。Brugger et al. (2000) は,大学教育を受けた教育レベ ルの高く,幻肢がある先天性全四肢欠損患者(両上腕欠 損,両大腿欠損) に対して,hand mental rotation課題, functional MRI,経 頭 蓋 磁 気 刺 激 (Transcranial Magnetic Stimulation: TMS) を行った。まずhand mental rotation課 題では,CRT上に提示される手または足が左(手・足) か右(手・足)かを判断する課題で,呈示される絵は, 指先が上の手(回転なし),指先が下の手(180度回転), 指先が上の足(180度回転),指先が上の足(回転なし) の4種類が用いられた。結果は,健常者と同様に回転な しの手足の左右判断は,180度回転に比較して,統計的 有意に短い反応時間であった。fMRI実験では,両側上 下肢の幻肢運動中の脳活動を計測した。その結果,一次 運動・感覚野に賦活は認められなかったが,両側の運動 前野と頭頂葉領域に賦活を認めた。最後にTMS実験で は,一次運動野への磁気刺激は,対側の幻肢の運動感覚 を引き起こした。このように先天性四肢欠損患者におい ても幻肢を感じている可能性は高いが,さらなる研究が 必要だろう。 2.5 余剰幻肢 四肢切断後に存在しない四肢があるという感覚が生じ るのが幻肢であるが,まれに脳卒中後に重度の感覚・運 動障害を伴った場合に,通常の四肢(左右上肢・下肢) 以外に五本目の四肢を感じる場合がある。この新たな四 肢は,余剰幻肢 (supernumerary phantom limb) と呼ばれ る。余剰幻肢を有する患者は,この幻肢が存在しないこ ということを正しく理解しており,せん妄などの精神症 状が起因しているとは考えにくい。この余剰幻肢は,幻 肢とは異なり多くの患者では制御不能で可動域も非常に 小さく,患者により勝手に健側肢と同一の動きをすると 報告される場合もある。Khateb et al.(2009)は,皮質下 損傷により生じた余剰幻肢を思い通りに動かせ,さらに 余剰幻肢を見えていると報告する患者を見出し,右健側 上肢,左麻痺肢,余剰幻肢を動かしているときの脳活動 を計測した。その結果,余剰幻肢で顎をひっかく運動に より,運動野,体性感覚野,視覚野において賦活が認め られた。このことは,余剰幻肢を動かし,顔に触れて, 見ることができたとする患者の報告と一致する。幻肢を 見ることができるなど少し余剰幻肢は,四肢切断後の幻 肢とは異なるメカニズムで生じている可能性があるだろ う。 3. 幻肢痛とは 幻肢を有する患者の約50∼80%に,幻肢に痛みが生じ る。この痛みは,幻肢痛と呼ばれ複合性局所疼痛症候群 (Complex Regional Pain Syndrome: CRPS)の神経損傷があ るII型に分類される。この幻肢痛が生じるのは,上下肢 切断,脱感覚(完全または不全),脊髄損傷,乳房切除 術後,抜歯後などと四肢に限らない。痛みの種類は,ナ イフで刺される,焼かれる,こむら返り,つぶされるな どの非常に多岐にわたり,痛みの種類も同じ患者内で変 化することもある。鎮痛剤などの薬物療法も,あまり効 果が認められない。切断前にすでに痛みがある場合,切 断後に同じ痛みが幻肢痛として認められることが多い。 痛みだけではなく切断前に四肢の固定などを行っていた 場合にも,同様に幻肢が固定された姿勢のままで固定さ れる場合もある。このことから,切除前の記憶というの も一部の幻肢痛の原因となっていると考えられる。 幻肢痛の存在は,古くから知られており,特にその研 究は大きな戦争後などに大きく進んできた。しかしなが ら,依然として幻肢に痛みが生じる原因はまだよくわ かっていない。このように幻肢痛のメカニズム解明を困 難にさせている理由は,おそらく幻肢痛の原因が一つで はないからだと考えられる。例えば,切断端部分の痛み と切断部の痛みである幻肢痛は,実際には明確に切り分 けることが難しい場合が多い。幻肢の部分でも述べたが 切断端部分には,referred sensationと呼ばれる切断端部分 に触れると幻肢に触れられたように感じる現象が起こる ことからも,痛みのある身体部位の同定は難しくなる。 また,切断後には切断端部分,脊髄,脳(視床や大脳皮 質)などに様々な変化が生じており,どこに異常が生じ ても痛みの原因となりうるため,痛みが同じでも原因が 異なることは十分ありえる。そのため,同じ痛みであっ ても,治療法の効果は,人または原因により異なると考 えられるため,大きなばらつきが生じ,その原因の解明 を困難にさせることになる。そこで,最近の幻肢痛研究 において報告されてきた中から,多くの幻肢痛症例に共 通すると考えられる3つの特徴を簡単に紹介する。 3.1 幻肢痛でわかっている3つの特徴 1)切断後に生じる一次運動野,一次感覚野における 可塑的変化の大きさは,痛みの強さと関係が見られる (Lotze, Flor, Grodd, Larbig, & Birbaumer, 2001; Ramachandran

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& Hirstein, 1998)。幻肢のところでも触れたが,四肢が 切断されるとその切除部位からの感覚入力を受け取って いた一次感覚野の領域は,周辺領域に入力される感覚情 報も受け取るようになる。このことは,γ-アミノ酪酸 (Gamma-AminoButric Acid: GABA)と呼ばれる抑制性の 神経伝達物質で機能が抑制されていた神経接続が,感覚 入力が途絶えたことにより抑制が解除され,今まで接続 はあったが抑制されて入力を受け取っていなかった身体 部位からの入力を受けつけるようになるというアンマス キング (unmasking) によるものと考えられる。このよう なreferred sensationに見られる周辺領域の侵入は,一次 感覚野だけではなく一次運動野においても生じているこ とがわかっている(Lotze et al., 2001)。さらに,神経イ メージング手法により,この周辺領域の侵入程度と幻肢 痛の強さに相関が見られることが報告されている。つま り,侵入の程度が大きいと痛みが強くなるということで ある。ただ,現状では,なぜ侵入の程度が大きくなると, 痛みを生じるメカニズムは,不明である。 2)鏡療法は,幻肢痛を軽減させる効果がある。ラマ チャンドランらの本や論文でかなり有名な幻肢痛の治療 法の一つで,健側肢を鏡に映すことで切断肢があるかの ように錯覚させることにより幻肢痛を軽減させるという 方法である。上肢,下肢切断ともに,健側肢と切断肢の 間に鏡を置き健側肢を鏡に映し,幻肢と健側肢で両手運 動を行う。Chan et al.(2007)は,22名の幻肢痛患者を3 つのグループに割り振り4週間の介入を行った。鏡を用 いて健側肢を映す鏡療法群,幻肢を動かすイメージを訓 練する心的イメージ群,そして,鏡療法と同様の状態で あるが鏡に布をかぶせ健側肢を映さない姿勢統制群であ る。痛みは,100段階のVisual Analogue Scale (VAS) を用

いて評価した。4週間の介入後,鏡療法群のみ痛みが VASで20点ほどの低下が見られたが,他の2群では痛み の変化は生じなかった。さらに,次の4週間は全群で鏡 療法を行うと,痛みの変化がなかった心的イメージ群, 姿勢統制群においても 20∼30点ほどの低下を認めた。 このように鏡療法は,幻肢痛を軽減させるのにかなり有 効な手法であることが報告されてきた。 鏡療法の幻肢痛軽減の効果機序は,幻肢痛の原因が切 断肢に対する視覚情報と体性感覚情報の不一致から生じ ていると考え,鏡を用いてこの不一致を解消することに より痛みが軽減すると考えられている(Figure 1参照)。 脳は,四肢切断後も切断肢が存在しないという情報の更 新が行われずに,切断前と同様に動かそうとして運動指 令をだす。しかし,運動指令を受け取る四肢(筋肉)が 存在しないため,動いたという感覚フィードバックは, 脳に戻らない。このため脳は,運動指令に対応する感覚 フィードバックが戻らないので,さらに強い運動指令を 出力し,感覚フィードバックがもどることを期待する。 このように,脳から筋肉へ伝えられる運動指令が段々と 強くなり,運動指令の出力元である一次運動野が過活動 になり,この過活動が何かしらの痛みに繋がると考えら れる。鏡療法では,Figure 1のように,鏡に映った健側 肢を切断肢と勘違いさせることにより,運動指令に対応 した視覚フィードバックが戻ってきたと脳に錯覚させ, 一次運動野から出力される運動指令が適切な強さに調節 され,痛みが減少すると考えられる。 Figure 1.

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3)一次運動野への電気刺激が幻肢痛を軽減させる。 Saitoh, Shibata, Sanada, & Mashimo(1999)は,幻肢痛の

ため3分間も立位を保持することができない非常に強い

下肢切断後幻肢痛患者に対して,一次運動野へ硬膜下電 気刺激を行い幻肢痛が軽減したことを報告した。Roux, Ibarrola, Lazorthes, & Berry(2001, 2008)も,fMRIにて幻 肢の運動中の脳活動を計測し,幻肢の運動を制御する一 次運動野を同定し長期的な慢性硬膜下電気刺激を行い幻 肢痛を70%低下させたと報告した。硬膜下電気刺激は, 脳表上に電極を直接留置するため,経頭蓋磁気刺激や電 気刺激と比較して,より正確に一次運動野を刺激してい る。このことは,幻肢痛には,感覚情報処理に関与する 一次感覚野ではなく,一次運動野が強く関連しているこ とを示唆すると考えられる。さらに,2)の鏡療法の効 果機序でも述べたが,一次運動野の過活動が痛みに関連 している可能性を示唆していたが,この3)においても その可能性を支持すると考えられる。 以上の3つの特徴,1) 一次運動野の体部位再現地図の 変化と幻肢痛,2)鏡療法の効果,3)一次運動野への刺 激による幻肢痛軽減効果から見えてくることは,幻肢痛 が脱感覚から生じる単なる感覚の問題ではなく,一次運 動野を含む運動経路も関連しているということである。 脳と身体は,一次運動野から皮質脊髄路(遠心性経路) という出力経路を介して筋肉を制御する。そして,制御 された筋肉は,身体の運動を生じさせその感覚情報は, 脊髄皮質路(求心性経路)を介して視床,大脳皮質へ伝 えられる。この脳と身体をつなぐ閉回路が幻肢痛の発生 に大きく関与していることが考えられる。 最 後 に 身体知覚のメカニズムの理解することを目的として, 幻肢,幻肢痛に関して簡単に紹介してきた。しかし,ま だまだ不明なことが多い。幻肢に関しては,なぜ脳は, 切断された四肢が存在しなくなったことを認識しないの か?という疑問が残る。一次感覚野は,動物実験などで 四肢を切断すると,切断直後から体部位再現地図に変化 がはじまることがわかっている(Merzenich, Kaas, Wall, Nelson, et al., 1983; Merzenich, Kaas, Wall, Sur, et al., 1983; Merzenich et al., 1984; Oouchida et al., 2016)。このことを 考えると,幻肢という切断後も切断前と変化しない知覚 が依然として継続しているというのは,幻肢の発生機序 には一次感覚野の体部位再現地図があまり関与しないよ うに思える。このように不明なことも多いが,幻肢,幻 肢痛を通して身体知覚を考えると,我々の身体知覚は, 実際の身体から得られる感覚情報というより,脳が保持 している身体の情報を優先的に利用して生み出されてい るといえるだろう。そして,この脳内の身体情報を変容 させるためには,脳と身体をつなぐ運動−感覚回路を利 用する,つまり,体を動かすことが重要であるといえる だろう。 謝 辞 本研究は,JSPS科研費 JP15K12572, JP26120007の助成 を受けたものです。 引用文献

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参照

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