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大震災を3.4年生のゼミで取り組んで

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Academic year: 2021

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102 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告

Ⅰ.何が論点になっているのか

①震災と原発についての小中学生たちの素朴な疑問に 答えることが大切 ②日本の科学技術のレベルでは大震災の予知はできな いのか ③原発事故は天災か人災か 1)人類史上での歴史的な反省の機会ととらえるべ きか否か 2)日本のエネルギーバランスの見直しを検討する ことはどうなのか エネルギーについてのパラダイム転換と言えるほど のことか少し反省し対策を打てばいいことなのか 3)根本的に考えて,原発の電力はどれだけ安いの か 4)日本が太陽光発電で,他の先進国などが原子力 発電で,日本は競争に勝てるのか 5)自然エネルギーでの発電や電力の自由化を急ぐ べきかどうか ④情報開示というがすべてを明らかにすることでいい のか ⑤損害額や賠償額の算定の正確さはどうなのか ⑥法学者や法律家はなぜ歴史的な裁判を起こそうとし ないのか ⑦日本の景気はどうなるのか ─不況の深化か復興需要を契機とした回復か─ ─さらに円高か(原油や天然ガス輸入による)国際 収支の赤字化による円安か─ ⑧自力での再建が難しい人たちへの支援をどうするか ⑨行政主導の再建プランか住民主導の再建プランか  これらの論点を学ぶ中で,実際に発生している深刻 な事態をよく知る癖をつけること,対立するそれぞれ の議論が反論出来ているかどうかを考え評価出来る力 を付けることを目標にしてきた。

Ⅱ.震災と原発について,筆者が授業や講

演で得た感想

 東日本大震災以来,公正な立場を堅持しながら学会 (経済教育学会)での報告や各地での講演(市民大 学・商工会・商工会議所・納税協会・メガバンク・地 方銀行),大学での講義・演習で「震災・原発と日本 社会」の問題を取り上げた。このテーマは大学の文系 の分野では,支援やボランティアについては取り上げ られても問題そのものを取り上げる教室での実践は極 めて少ないのが実情である。以下,その中で得た感想 を記しておく。多くは,自分の立ち位置が曖昧なため に事実をきちんと理解する意欲が低いこと,立ち位置 らしいものがあっても自分の性格や雑念に影響されて いることからきていると思われる。 1.とらえ方の問題 ○今回の震災・津波と原発の被害や被災地・被災者・ 避難を区別していないことが多い。 ○震災や津波の被害は目に見えるために反応できるが, 原発の被害は可視的ではないために直視しない傾向 があった。 ○原子力発電についての専門用語などが難しいと感じ て,考えることを止める向きもあった。 ○被災地に同情するが,自分たちは被害もなく良かっ たという安堵感……人間は他人との違いに目を向け 早く決めつけたくなる本能があるのか。温度差の一 言では片付けられない問題がある。自分より他人を 先に考えることのできる人間に育ってほしいと願う のだが。 ○知らない土地の知らない人達の中でボランティア活 動に消極的な人もいる……特に若い男性。 ○大学では震災と原発を考えようという姿勢は 3 〜 4 人のグループ作りと,知らなかった事実や情報をゼ

大震災を 3. 4 年生のゼミで

取り組んで

The Journal of Economic Education No.31, September, 2012

On the Cause of the Great Earthquake 2011 in My Seminar

Iwata, Toshihiro

岩田 年浩(大阪経済法科大学) The Japan Society for Economic Education

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103 ミなどで出し合うことから出てきた。被害の悲惨さ を知ることにとどまらないで,何を考えればいいの だろう,どんな意見があるのだろうかを知っていく ことに向かった。  そこでは,教員が持つ目標に向かって強引にひきま わすだけでは空回りになるので,粘り強くこのテーマ について,調べたり考えたりする意欲をもたせること を心がけた。努力した学生にはいい部分を褒めること で授業を進めた。  やはり,授業で依拠すべきは比較的勉強意欲のある まじめな学生である。事実を知ろう考えようという意 欲を高めるために,筆者が訪れた現地(石巻・仙台・ いわき市)の写真や現地での取材から反応はよく出て くるようになった。  さらに,福島第一原発所長の吉田昌郎氏が大阪出身 のこともあって,本社の指示と必ずしも一致しない行 動をどう考えるかについては議論がよく出た。  ほか,感情的にまたは感覚的に原発の是非を結論す る状態から,双方の見解やその根拠を知ることで多少 認識が深まった……特に,筆者が見聞した財界人の意 見の紹介には反応があった。その結果,次のような視 点を見出すことができた。 2.原発の是非についての意見 ○「原発の安全にもっと注意すべきだ」というきびし い批判的意見をもつ人たちの中には,原発に賛成の 結論と反対の結論の両方がある。 ○原発反対の人たちに多い,原発を即全廃した時の日 本人の生活と日本経済の状況に考えが及ばない。 ○原発賛成の(または原発反対に嫌悪感をもつ)人た ち(財界人等)に多いのは「日本が太陽光発電で他 の先進国や中国が原発で物を生産して経済的に勝て るのか」という懸念だった。この立場の人たちは過 去の原発推進政策への反省が少なく。効率的な脱原 発の推進への道の模索が乏しかった。 ○菅首相さえ交代すればすべてが解決するとする意見 については「菅首相は何を言いたかったのか」とい う発問で意見は様々に出る……菅政権の初動の遅れ は(官僚主導から政治家主導という)民主党政権の 性格と電力会社の(閉鎖的な情報管理の)問題の両 方がある。原因を客観的にみる必要がある。 ○福島原発所長の吉田昌郎氏が事故対策の判断で東電 本社の指示と異なる態度を一部で取ったことについ て「貴方ならどのように行動しますか」という問い かけは議論に緊張感を持たせることになった。 3.一時的には火力発電に依存すればよいとい う意見  ○円高なので,石油や天然ガスを輸入すれば安くつく だろうという誤解。円高差益を吹き飛ばすほどの世 界的な資源高。そして,石油(あと 46 年)や天然 ガス(あと 60 年)の地球埋蔵量は短くなっている のに。さらに,地球の温暖化が問題がある。 ○震災による萎縮は良くないという声も出たが,これ は無駄をしていいということではない……大切な資 金を有効に活用することが求められている。 4.事実誤認 ○当初は外国人に多かったが,日本全体が放射能に汚 染されているという誤解。 ○現代の日本の政治の権威のなさ,原発不況,ヨー ロッパとアメリカの金融危機。  日本人の意欲の欠如している実態から日本の滅亡ば かりを結論する人がいる……懸命に生きようとする 人や企業や行政の仕事に励む人がたくさんいるとい うのに。 ○ 10 の電力会社の周波数の違いを東京電力と関西電 力双方がボスになって対立しているという意見。 ○福井県にある関西電力の原発が“原発銀座”と呼ば れるほどに多いことを知らない。 ○原子力以外は自然エネルギーしかないする誤解…… 火力も水力もある。 ○民主党の震災・原発対策が批判されていることから, 原発を建設したのは民主党だとする誤解。 ○東北 6 県に北陸地方の県を入れてしまう間違い。  総じて,講演では集まっている人達によって多様な 意見があることに対応する必要があり,大学の講義で は問題意識をもたせて資料を分析させ,自分の意見を きちんと発表させることに苦労した。特に,筆者のゼ ミナールのメンバーが年度末に退職した前任者の構成 員を引き継いだ,お互いに知らないメンバーのためゼ ミ(そして,卒論も必修でない制度の中で)に出席さ せることから作業しなければならなかった。講演と講 義を通じて,どのような有効な発問をするかが大切と 感じた。なお,以後のゼミナールでは,震災原発と経 済と自然のデータをコンピュータで実証する作業を進 めた。

The Japan Society for Economic Education

参照

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