Ⅲ 体力の向上に向けた具体的な取組の考え方
1 いまの子ども達の育ちをどうとらえるか , , ○ いまからわずか30年ほど前まで 日本の子ども達は自然の中でさまざまな遊びにのめり込み 思う存分からだを動かし,たくさんの仲間と関わっていました。また,からだを動かした後は おいしくご飯を食べ,ぐっすり眠るなど健やかに元気に育っていました。しかし,いま日本の 子どもたちに,かつてのような子どもらしさをみることは非常に難しい時代になりました。 ○ 子どもたちのライフスタイルが乱れ,子どもらしさが奪われていく中で,子どものからだと こころにさまざまな問題が生じてきていることは周知のことと思います。そのことを数値とし て明確に表しているものの一つが体力テストの結果であるといえます。 ○ 文部科学省「体力・運動能力調査」によると,いまの子どもたちは,走・跳・投といった基 礎的な運動能力や筋力が,1985年前後をピークに著しく低下の傾向にあり,柔軟性,敏捷性な どのからだをコントロールする能力も低下してきていると報告されています。その背景には, 運動量の著しい減少と,基本的な動作の未習得が存在しています。 ○ また,体力低下のみならず,転んでも手がつけないことから顔面や手首にケガをしてしまう 子どもが増えています。さらに,子ども達の多くは,朝から疲労しています。高血圧症や糖尿 病などの生活習慣病になる子ども,アレルギーや体温異常の子どもも多く現れてきました。 ○ 一方,こころの問題として,ストレスが増加し,何もやる気にならない子どもが増えている とともに,判断力の低下,工夫する能力の低下,感情や情緒を表出することの欠如,人との関 , 。 わりが未熟で集団の中で社会性を発揮することが困難 といったこともあげることができます ○ 今日,日本の子ども達の学力低下が大きな問題として叫ばれています。しかし,学力低下以 上に,それを支える子どものからだとこころの問題を深刻に受け止めていく必要があるのでは ないでしょうか。それは,子どものからだとこころの育ちが,まさに子ども達が健全なおとな に向かって健やかに育っていくための基礎基本であるからです。健やかなからだの育みと豊か なこころの成長がなければ,将来の日本の発展を望むことはできないといっても過言ではあり ません。 ○ 子どもたちが「子どもらしさ」を取り戻し,からだもこころも元気になっていくためには, 本県で行っている体力テストや健康実態調査の結果を踏まえ,子どもの育ちや生活の問題点を 関連づけて,生活全体をトータルにとらえた取り組みが必要となります。まさに学校と家庭と 地域が一体化して,問題解決に向かう必要があります。 ○ また,いまの子どもたちの問題は,おとなの問題であることを認識し,理解することが大切 です。子どもだけを変えようとしても,無理があります。保護者や教師をはじめ私たちおとな が,子どもと一緒になって取り組んでいくことが不可欠です。 ○ 子ども達の実態をふまえ,できるところからやってみることです。そしてさまざまな実践や 働きかけを提供し,それらを評価する仕組みをつくっていかなければなりません。まず,目標 に向かっての取組を始め,その結果をもとにより良い取り組みに改善したり,新しいアイディ アを創出していかなければ,子どものライフスタイルを変え,子どもを元気にし,子どもらし さを取り戻すことはできないと考えています。 2 体力テストの意義と活用 ○ 体力テストとは,体力や運動能力の実態を把握するためのテストです。我が国では 「文部科学省,体力・運動能力調査」や「日本体育協会運動適性テスト」が知られています 「文部科学省体力・運。 動能力調査」は全国的に実施されている体力テストであり,これまでに多くの人を対象とした長年 のデータが蓄積されています。自己の体力水準や国民の体力水準の推移などを知るめやすとして広 く活用されていものです。 ○ 体力テストでは,主に行動体力のレベルを測定しています。体力要素の中で行動体力とは,運動 を発現する能力である筋力や瞬発力,運動を持続する能力である全身持久力と筋持久力,そして運 動を調整する能力である調整力としてとらえることができます。調整力には,柔軟性,敏捷性,平 衡性,協応性,巧緻性等の要素が含まれています。体力テストは,その結果から,体力の要素ごと にそのレベルを把握することが可能となっているのです。 ○ 文部科学省では,1964年から継続して,ほぼ同様の測定項目を用いて「体力・運動能力調査」を 実施しています。測定を始めてから,20年間,1984年までは,青少年の体力は,ほとんど横ばいの 状況でした。すなわち同一年齢の体力に変化はみられないという状況が続いていました。しかし, 1985年を境に,青少年の体力の低下がみられるようになってきました。この低下傾向は,青少年の どの年代にも当てはまり,依然その傾向は続いております。 ○ 一方,中高年の体力の変化はどうなのでしょうか。実はこの5年ほど,40歳代,50歳代の中高年に おいては,その体力が向上しているという傾向がみられています。中高年においては,同一年齢の 体力が年々高まってきているのです。このような中高年の体力向上の背景としては,20年前の体力 の高かった年代が,中高年になっていることや,身体活動の機会の充実をあげることができます。 フィットネスクラブやスポーツスクールの加入者数が増加し,また,ウォーキングやジョギングと いった日常比較的簡単にできる身体活動を実施する中高年が増えてきています。 ○ しかし,いまの青少年が中高年になるとき,その体力は低下するものと予想されています。その 健康3 理由として,現在の青少年は現代の中高年の青少年期に比べ,運動・食事・睡眠のいわゆる 生活習慣の中で過ごしており,からだのさまざまな機能や体力・運動能力が高 原則が欠落している いレベルにまであがっていないこと。そして,からだを動かすことに関して 「快」の感覚をもって, 生活してきていないことがあげられます。 ○ さて,体力テストはそれを行うことにより,子ども達一人ひとりの体力水準を知ることができ, 。 その結果を考察することにより体力向上に向けての具体的な目標を設定することが可能となります , , 学校全体としての取り組みはもちろん その活用によって子ども達の健康に対する意識の芽生えや それに伴う生活習慣の見直しを図ることができます。 ○ さらに,設定された目標がどのように達成されたのか,その成果を正しく評価することが大切で す。そして,その結果をフィードバックさせることによって,より効果的な取り組みの設定が可能 。 , , , となります すなわち体力テストは それを実施することそのものではなく その結果を学校全体 さらには子ども達一人ひとりが自分のものとして活用することなどそのプロセスに意義があるとい えるのです。 3 学校体育と子どもの育ち ○ 放課後の子どもの生活が変わり,外遊びが減少(消失)し,子どもの運動量は極端に少なく なり,動作の獲得も困難な状況になっています。 ○ それ故に,学校体育での子ども達の運動量の確保,動作の習得,そして何より子ども達の運 動への意欲化の必要性が一層高まっているといえます。学校体育の中で,今日の子ども達の実 態を把握し,その状況に即した効果的な指導を行っているかどうかが問われています。 ○ まさに子どもの生活の実態を踏まえ,その発達段階を念頭に置いた学校体育のあり方を検討 していくことが重要なのです。特に運動量を確保することの重要性や動作の習得過程の理解と それを活かすことのできる教材の開発,また教師と子ども,さらには子ども同士のコミュニケ
ーションを可能にするスキルの習得は,これからの体育・保健体育科を担当する教師の重要な 課題であるといえます。 ○ 学校体育の中で,このように体力や運動の能力,情緒・社会性の能力の発達が遅滞,停滞し ているという問題を深く認識するとともに,保護者や地域社会に向けその情報を発信していく ことが,今後一層求められる取組だと思います。 ○ 今日の子どもを取り巻く環境,特に放課後の子どもの生活をとらえると,このような子ども の育ちの問題は,これからも続き,さらに深刻化するものと予想されます。いまや「放課後」 ということばは「死語」に近いといえるのではないでしょうか。 ○ 放課後とは課業(学校での学習)を解き放たれた後の時間を指すとすれば,下校後に塾や習 い事で多くの時間を机上の学習に充てている今の子ども達にとって,すでに課業を解き放され ることはないともいえます。 ○ 小・中学校の現行学習指導要領では,これまで年間105単位時間あった体育・保健体育科の授 業時間が90単位時間に削減されました。つまり,小学校1年生から中学校3年生までの9年間 で,計135単位時間が減少したことになります。 ○ また,中学校2年生から保健体育は選択制授業となり,発育発達段階に見合った運動量の確保 や生涯にわたっての基礎基本となる動作の習得に問題が生じていることも予想されます。 ○ 現在検討が進められている次期学習指導要領においては,今日の青少年の体力低下の状況を 重く受け止め,現在小学校高学年から位置づけられている「体つくり運動」の領域を,低学年 から実施することが検討されています。また,発育発達段階に見合った動作の習得の必要性か ら,さまざまな動きづくりの学習が小学校低学年の領域から行う見通しになっています。さら に中学校からの選択制授業のあり方に関しても見直しが進められています。 ○ このように体育・保健体育科が子どものこころとからだの育ちに欠かしてはならない重要な 教科であることを私たちは真剣に見つめ直す必要があります。体育・保健体育科という教科を 通して,子ども達がさまざまな運動を経験し,自らのこころとからだをコントロールできる能 力を養え,人との関わりの中で明るく楽しい生涯を送ることのできるような素地を学習するこ とができているかどうかを評価し,改善していくことが重要であると思います。 ○ 体育・保健体育科のあり方を再確認し,子どものこころとからだの育ちを保障していけるよ うなよりよい体育・保健体育の実践を小学校低学年から蓄積し,併せて家庭・地域に向けての 情報の発信と,家庭・地域との連携をとった取組を進めていくことが体力の向上には大切であ ると考えます。 4 体力の向上に向けた取組のポイント ○ 学校における体力向上の取組としては,体育・保健体育科の授業のさらなる充実とともに, 現在実施されている「健康・体力つくり一校一実践運動」を中心とした休み時間や放課後にお ける定期的な運動の機会の提供が不可欠です。その実施にあたっては前述したように,子ども の運動量の確保と,発達段階に応じた動作の習得という2つの観点が重要であると考えられま す。 ○ 現在の小学生の1日の平均歩数を測定すると,約10,000歩です(2006年 中村調査 。この値) は30年前の昭和40年代の小学生の平均歩数の37%にとどまっています。中には,1日に4,000歩 という子ども存在しています。からだのさまざまな機能を正常に発達させ,生活習慣病を予防 するために,さまざまな機会を通して運動量を増加させることが必要です。たとえば,バスで 通学している子ども達が,その登下校において一定の距離を歩くことができるような工夫をし ている小学校も全国にはあります。 ○ また,前述したように,顔面の擦り傷や切り傷,手首の骨折をする子どもが多くなるととも
に,階段から飛び降りて足を骨折してしまう子ども,ボールを顔面で受けて眼球を損傷してし まう子どもも出現しています。その理由として,遊びや運動経験の減少から,自分のからだを 自分でコントロールすることができない,動きの不器用な子どもが増えていることがあげられ ます。 ○ こういった事故を防ぐ観点からも,小学校低学年においては「走る 「跳ぶ 「投げる」など」 」 の基礎的基本的な動作を,また中学年以上では「走って跳ぶ 「捕って投げる 「ボールをつき」 」 ながら移動する」といった運動の組合せを習得していくことが重要です。その上で,中学校・ 高等学校において,生涯スポーツに結びつくようなさまざまなスポーツの経験を持つことがで きるような運動プログラムの発信・提供が必要である考えます。一つの運動,一つのスポーツ のみではなく,できるだけ動きのバリエーションを多く経験できるような実践がポイントとな ります。 ○ さらに,運動実践と併せて,保健学習,保健指導の中での規則正しい食事,適度な睡眠の確 保など,基本的生活習慣の改善に向けた取組が必要です。健康に関する知識を身につけ,子ど も達が自己の生活の中でその認識を深めていけるような健康教育の実践が望まれます。 ○ 実際,各学校で体力向上に向けた取組を推進・充実させていくにあたり,ただ単に取組を計 画するのではなく,体力テストや健康実態調査等の結果をふまえて,目指す子ども像や目標と する指標や目標数値を設定したうえで実践計画を立てていくことが重要です。 ○ 計画段階では,その目標を達成するために,実施内容だけでなく,学校内外の資源(教職員 の専門性や地域の環境や人材等)等についても分析したり,どのような方法や観点で評価をし ていくのか見通しを立てたりして計画を立案していくことが重要だと考えます。その際,一部 の教職員の考えのみで進めるのではなく,管理職のリーダーシップのもと,全教職員の共通理 解を図り,全校体制で進めていくことが効果的な取組につながると考えます。 ○ また,保護者や地域に積極的にその取組を発信し,理解や協力を得ながら連携の中で体力向 上,生活改善の日常化を図っていけるような「学校・家庭・地域」が一体となった取組が重要 。 , , , です 取組の趣旨や取組内容 成果について説明責任を果たし 信頼関係を築いていくことも この時代学校に求められる課題と考えます。 ○ さらに「幼稚園や保育園・小学校・中学校・高等学校」という子どもの育ちを縦断的に保障 していく縦の連携をとっていくことも今後重要な課題であると考えます。 ○ ここで,文部科学省「子どもの体力向上実践事業」において,計画の際に考慮された視点の 例を紹介します。 ① 活動の意図・目的は何か=運動習慣の改善,生活習慣の改善,保護者の意識の改善 等 ② 活動の対象は何か=子ども,保護者,地域住民 等 ③ 実施場所は主にどこか=学校(グラウンド・体育館 ,地域,家庭) ④ 主な実施内容は何か=身体活動,健康教育指導,啓発資料等の配付,講演会等の実施 ⑤ 実施期間はどのくらいか=1年間通じて,各学期単位,月単位,任意 ⑥ 実施頻度はどの程度か=毎日,週3回以上,週1∼2回,週1回未満 ⑦ 意識等の変容はどうか=子ども,保護者,地域住民 等 ○ より効果的に,体力の向上や生活の改善を図り,子ども達を健やかに成長させるためには, , , , 単に目標指標や数値の結果を見るだけでなく それらの結果から 上記のような観点について 自校の取組が適切であったかどうか評価し,取組を見直し改善していくプロセスを重視してい くことが必要だと考えます。
5 体力向上に向けたさまざまな取組 ○ 2000年9月にスポーツ振興法に基づいて 「スポーツ振興基本計画」が策定されました。この, 「スポーツ振興基本計画」には,2001年からの10年間にわたる我が国の体育・スポーツの政策 目標が示されています。策定から5年を経過した昨年(2006年)9月に,この「スポーツ振興基 本計画」の見直しが行われました。今回の見直しによって,スポーツ振興を通じた子どもの体 力向上は,生涯スポーツの振興,競技スポーツの充実とともに,最も重要な方策として取り入 れられました。文部科学省は子どもの体力向上を目指して,2002年からさまざまな取り組みを 展開しています。 ○ まず,2004年から3年間にわたり全国42校の小学校で「子どもの体力向上実践事業」が展開 されました。この事業では,体力テスト,生活実態調査,教員及び保護者の意識調査などのデ ータをもとにした,体力向上や生活改善のための具体的なプログラムを計画実施し,それぞれ のプログラムの意図や目的の達成度を詳細に評価しています。 ○ 現在,どのようなプログラムが今日の子ども達の体力の向上や生活の改善に効果的であるか を検討し公表するための作業を行っています。さらに,この事業の延長として,体力低下の低 年齢化を鑑み,2007年度から幼児を対象にした体力向上実践事業の展開が計画されています。 , , 「 」 。 ○ また 2006年から 全国の小学校において 元気アップ親子セミナー が実施されています 本県でも2006年度にモデル校を含め6校の小学校で「元気アップ親子セミナー」が開催されま した。このセミナーは,現在の子どもの体力低下の現状とその背景にある生活習慣の乱れにつ いて保護者が理解しその認識を深めることと,家庭の中で親子で実施可能な運動プログラムを 具体的に提供することを目指しています。ダンスエクササイズ「アイーダアイダ」や身体能力 向上プログラムを紹介しています。2007年度以降も実施規模を拡大して継続することになって います。 ○ また,今後,現在の青少年の体力の実態を詳細に検討するために,全国のすべての児童生徒 を対象とした体力テストの実施も必要となっています。本県では,2005年度から新体力テスト の全県実施を行っていますので,体力テストを継続的に実施していくことで,子どもの体力の 現状を経年的に分析していくことが可能となっています。このことは県内の子どもの体力向上 のために貴重な蓄積であることはいうまでもありません。 ○ (財)日本体育協会では 「スポーツ少年団」での子どものスポーツのあり方を検討するとと, もに,2005年度から,子どもの発育発達段階に適した体育指導,スポーツ指導を実践できる指 導者養成のために 「ジュニアスポーツ指導員」という指導者資格を認定しています。幼児期か, ら青年期までの運動プログラムの作成と評価についての力量を高めることを目指しています。 また 「幼少年期に身につけておくべき基礎的動きに関する研究プロジェクト」において幼少時, 期に習得すべき基本的な動作の分類とその実態についての研究が進められています。 ○ (財)日本オリンピック委員会ゴールドプラン専門委員会にはジュニアスポーツ部会と学校 , 。 スポーツ部会が設置され 子どもの発達段階に見合ったスポーツのあり方が模索されています 福岡県を中心に行われている一貫性指導システム「タレント発掘事業」など新たな試みも進ん でいます。 ○ (財)日本レクリエーション協会での「こどもの城」プラン,NHK教育テレビの子ども番 組「からだであそぼ」の放映,Jリーグ・アカデミーなど,今日の幼児及び青少年の体力向上 と望ましい運動実践のためのさまざまな試みが展開されています。民間企業を中心とした取り 組みの中にも,注目すべきものが多くみられています。 ぜひ,これらの取組も,インターネット等を活用し,参考にしていただきたいと思います。 (文責 中村 和彦)
【参考】スポーツ振興基本計画(平成18年9月21日改定)
<計画の背景> スポーツ振興法の規定に基づき,平成12年9月に文部大臣告示として策定 (平成13年度(2001年)。 ∼22年度(2010年)の10年計画)計画策定から5年が経過したことに伴い,中央教育審議会スポーツ・ 青少年分科会の意見を踏まえ,平成18年9月に計画を改定。 <計画の概要> 1.スポーツの振興を通じた子どもの体力の向上方策 , , 政策目標: 人間が発達・成長し 創造的な活動を行っていくために必要不可欠なものであり 「人間力」の重要な要素である子どもの体力について,スポーツの振興を通じ,その低下傾 向に歯止めをかけ,上昇傾向に転ずることを目指す。 A.政策目標達成のため必要不可欠である施策 (1) 子どもの体力向上国民運動の展開 −家庭へのアプローチ− :保護者をはじめとした国民全体が,子どもの体力の重要性について正しい認識を持つよう,国民運動を展 ○到達目標 開し,国民意識の喚起を行う。 ○今後の具体的施策展開 保護者をはじめとした国民全体が,子どもの体力の重要性について正しい認識を持つよう,以下のような施策を はじめとした国民運動を展開する。 , , , , , 国民に 子どもの体力低下の問題や体力の重要性 外遊びやスポーツの重要性について理解を促し 家庭 学校 地域において,子どもの体力の向上を目指した取組がなされるよう,学識経験者,民間団体,マスコミなど関係団 体等とともに全国民にアピールする取組を実施する。その際,国と地方公共団体等の一層の連携を図るため,推進 体制の強化を図る。 また,新体力テストを活用し,子どもが進んで体を動かすことの励みとなる取組を促進する。 さらに,大学や研究機関等における研究成果や「体力・運動能力調査」の結果の普及啓発を図るとともに,運動 科学や発育発達学等の知見も取り入れつつ,子どもの発達段階に応じた合理的・効率的な体力向上プログラムの開 発を行う。 加えて,全国学力・学習状況調査の中で,都道府県別の子どもの体力の状況等も公表することにより,各学校に おける指導の改善を図るとともに,各地域における子どものスポーツ活動の充実に向けた取組を促す。 (2) 子どもを惹きつけるスポーツ環境の充実 −学校と地域の連携− :学校と地域が連携して,子どもの学校内外のスポーツ環境を充実する。 ○到達目標 ○今後の具体的施策展開 1) 現場における実践的取組の強化 体育の授業だけでなく,特別活動,総合的な学習の時間,運動部活動など学校教育活動全体を通じて,豊かな スポーツライフの基礎を培うとともに体力の向上を図ることについて,各学校の取組を促し,あわせて児童生徒 が興味・関心に応じて,多様なスポーツに取り組めるよう,小学校をはじめとした総合運動部活動の実施等の環 境づくりの推進を図る。その際,児童生徒が体を動かすことを楽しみ,スポーツや体力向上に自ら積極的に取り 組むようになることに留意しつつ,始業前や休み時間を活用するなどの工夫が期待される。 また,運動部活動を総合型地域スポーツクラブ等の地域のスポーツ活動と連携して実施できるよう,教職員と 地域住民との協議の場を設けるなどの連携体制の工夫に努めたり,運動部活動と地域スポーツクラブに児童生徒 が同時に所属することを柔軟に認めたりするとともに,学校体育施設の地域との共同利用や運動部活動等における地域のスポーツ施設の活用に一層取り組むことを促進する。なお,学校体育団体においては,学校内外を通じ たスポーツ活動の充実の観点から,総合型地域スポーツクラブへの協力が期待される。 さらに,これまでの実践研究等で得られた成果を活用し,各実践研究地域を拠点として,先進的な取組等につ , 。 いて普及啓発するとともに 幼児を対象とした体力向上に資する取組を普及するための実践的な調査研究を行う 2) 学校と地域で活躍できる指導者の養成・確保 子どもが,発達段階に応じて多様な指導を受けることができるよう,次の事項に配慮しながら,総合型地域ス ポーツクラブ等との連携を図ることについて,各学校の取組を促す。 ア 地域のスポーツ環境の状況や学校の実態に応じて,体育の授業において総合型地域スポーツクラブ等に所属す る指導者,教員養成系及び体育系大学の学生等の地域のスポーツ指導者を教員の補助者や特別非常勤講師として 活用すること。 イ 地域のスポーツ指導者を活用する際に,地方公共団体が設置しているスポーツリーダーバンク等の一層の活用 に努めること。その際,地方公共団体・スポーツ団体・学校等の関係者による話し合いの場を確保し,地域のス ポーツ指導者の活用を促進することが期待される。 ウ 地域社会の一員としての教職員のボランティア活動の意義について教職員間で共通理解を図り,総合型地域ス ポーツクラブ等における地域のスポーツ活動に協力するよう努めること。 B.政策目標達成のための基盤的施策 (1) 教員の指導力の向上 :児童生徒の発達段階等に応じて指導し,スポーツの楽しさを感じさせることができるよう,教員の指導力 ○到達目標 の向上を図る。 ○今後の具体的施策展開 児童生徒が発達段階に応じて,運動の楽しさや喜びを味わうことや体力を向上させることについて,各学校の体育 の授業や運動部活動における取組が適切に進められるよう,実技を伴う研究協議会の開催,学校種別間の連携等を含 めた講習会の開催,大学院修学休業制度も活用した大学院への派遣等を通じて,教員の指導力の向上を図る。 また,具体的な指導事例や実践研究の成果等の指導情報を体系的に整備し,様々なニーズに対応した指導情報が各 教員に正確かつ的確に提供されるシステムを整備するなど,教員の指導力の向上のための支援を行う。 小学校においては,特に指導内容が高度化する高学年段階において,個に応じた指導や体力の向上が求められてい , 。 , , ることを踏まえ 体育専科教員の活用等により指導の充実を図る 中学校や高等学校においては 生徒の能力・適性 興味・関心等が多様化することを踏まえ,選択履修の幅の拡大に応じられるよう,複数の教員による指導等創意工夫 を生かした指導の充実を図る。 また,地方公共団体が設置しているスポーツリーダーバンクの一層の活用等に努め,専門的指導を行うことができ る人材を確保し,指導の充実を図る。 (2) 子どもが体を動かしたくなる場の充実 :学校内外において子どもが体を動かしたくなる場を充実させる。 ○到達目標 ○今後の具体的施策展開 子どもが緑豊かなグラウンドで楽しく安全にスポーツに親しめる環境を創り出すため,学校や地域の実態等に応じ て屋外運動場の芝生化を積極的に促進する。また,学校体育施設の設置者が次の事項にも配慮しながら施設の改善・ 充実を図れるよう,効果的な方策を検討し,具体化を図る。 ア 既存の学校体育施設については,地域との共同利用を促進するとともに,児童生徒や地域住民の多様なニーズに 応えるようにするため,温水シャワーや更衣室を備えたクラブハウスを整備するなど施設の整備・充実を今後とも 図ること。 イ 今後新たに設置する学校体育施設については,地域との共同利用の観点から整備を行うこと。 ウ 地域と共同利用できるトレーニング機材等を備えた「トレーニングルーム」の設置を促進するため,公立学校の 余裕教室の利用を推進すること。 エ 我が国固有の文化としての武道に親しむことができるよう武道場の整備・充実を今後とも図ること。
さらに,地域の公園については,子どもが一層自由かつ安全に遊べるよう,関係機関との連携を図る。 (3) 児童生徒の運動に親しむ資質・能力や体力を培う学校体育の充実 :運動に親しむ資質・能力を育成し,児童生徒が生涯にわたり豊かなスポーツライフを送れるようにする。 ○到達目標 ○今後の具体的施策展開 心と体を一体としてとらえ,運動についての理解と合理的な実践を通して,積極的に運動に親しむ資質・能力を育 てることや体力の向上を図ること等を定めた学習指導要領の趣旨の徹底により,学校体育の充実を図る。 また,体育の授業だけでなく,学校教育活動全体を通じて,豊かなスポーツライフの基礎を培うとともに体力の向 上を図ることについて,各学校の取組を促す。その際,児童生徒が体を動かすことを楽しみ,スポーツや体力向上に 自ら積極的に取り組むようになることに留意しつつ,始業前や休み時間に体を動かす場や機会を確保するなどの工夫 が期待される。 さらに,地域社会との連携や学校間連携を図りながら,日常生活における適切な運動の実践に結びつく運動の学び 方や体力の高め方を児童生徒の発達段階に応じて身に付けることができるよう,研修会の実施や指導資料等を活用し た情報提供を通じて,体育の授業の改善・充実を図る。 (4) 運動部活動の改善・充実 :児童生徒のスポーツに関する多様なニーズに応えるため,学校の実態等に応じて複数校合同で運動部活動 ○到達目標 等が柔軟に実施できるようにする。 ○今後の具体的施策展開 1) 複数校合同運動部活動等の推進 学校の実態等に応じて近隣の学校と合同で運動部を組織し,日常の活動を行う複数校合同運動部活動や,小学校 をはじめとして,児童生徒の興味・関心に応じて複数の種目に取り組むことができる総合運動部活動について,各 学校における取組みを促すとともに,複数校合同運動部の全国規模の大会等への参加について,学校体育団体等の 関係者の取組を促す。 2) 運動部活動の運営の改善 ア 児童生徒が豊かな学校生活を送りながら人格的に成長していくという運動部活動の基本的意義を踏まえ,例え ば,一部に見られる勝利至上主義的な運動部活動の在り方を見直すなど,児童生徒の主体性を尊重した運営に努 めること。 イ スポーツに関する多様なニーズに応える観点からは,例えば,競技志向や楽しみ志向等の志向の違いに対応し たり,一人の児童生徒が複数の運動部に所属することを認めるなど,柔軟な運営に努めること。 ウ バランスのとれた生活やスポーツ傷害を予防する観点から,学校段階に応じて,年間を通じての練習日数や1 日当たりの練習時間を適切に設定すること。 エ 学校週5日制の趣旨も踏まえて,児童生徒が学校外の多様な活動を行ったり,体を休めたりできるよう,例え ば,全国学校体育大会や都道府県学校体育大会等の試合期を除いて,学校や地域の実態等に応じ土曜日や日曜日 等を休養日とするなど,適切な運営に努めること。 , 。 オ 合同練習や定期的な交流大会で異校種間も含めた学校間の連携を図るなど 運動部活動の活性化に努めること 3)学校体育大会の充実 学校教育活動の一環として開催される全国中学校体育大会や全国高等学校総合体育大会等の学校体育大会は, 日頃の運動部活動の成果の発揮,異なる学校の児童生徒相互の交流等,大きな教育的効果があることを踏まえ, 今後とも支援の充実を図る。 また,学校体育大会の意義を踏まえ,学校体育大会における児童生徒の引率や学校体育大会に向けた週休日等 における部活動の指導が行われる場合に支給される指導手当の充実に努める。 なお,学校体育団体等においては,主催する大会について,大会規模,日程や回数,種目,開催地負担の軽減 方策,安全対策,補償等に関して国や地方公共団体と常に協議しながら対応するとともに,開催に伴う負担にも 配慮しながら,参加のための条件や大会の方式に関しても柔軟な対応が図られるよう検討することが望ましい。