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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 地域研究 ) 氏名 佐藤麻理絵 現代中東における難民問題とイスラーム的 NGO 論文題目 - 難民ホスト国ヨルダンの研究 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 中東地域研究における重要な研究課題である難民問題について 難民研究 持続型生存基盤論 臨地研究などを総

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Academic year: 2021

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(1)

Title

現代中東における難民問題とイスラーム的NGO−難民ホ

スト国ヨルダンの研究−( Abstract_要旨 )

Author(s)

佐藤, 麻理絵

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2016-03-23

URL

https://doi.org/10.14989/doctor.k19844

Right

学位規則第9条第2項により要約公開

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

none

(2)

( 続紙 1 ) 京都大学 博士(地域研究) 氏名 佐藤 麻理絵 論文題目 現代中東における難民問題とイスラーム的 NGO -難民ホスト国ヨルダンの研究- (論文内容の要旨) 本 論 文 は 、 中 東 地 域 研 究 に お け る 重 要 な 研 究 課 題 で あ る 難 民 問 題 に つ い て 、 難 民研 究、持続型生存基盤論、臨地研究などを総合して研究したものである。特に対象地域と してヨルダンを取り上げ、同国の特徴を「難民ホスト国」として 調査・研究し、さらに 20世紀半ばから今日に至る断続的な難民の流入が同国の都市形成にどのような影響を与 えたかを、臨地研究に基づいて実証的に検討している。 第1章は、中東における難民問題について理論的・歴史的な側面から概観している。ま ず現代の国際社会にとってパレスチナ難民の発生が今日的な難民問題の出発点であった という歴史的経緯を踏まえ、国際社会における難民問題を通史的に概観した上で、難民 研究の史的展開を批判的に考察している。また中東・イスラーム世界が必ずしも国際難 民 条 約 を 批 准 せ ず に 、 独 自 の 難 民 認 識 や 難 民 対 策 を 有 し て い る こ と を 明 ら か に し てい る。現在の中東が国民国家体制を採用することで、生態的・歴史的特質に合致しない擬 制的な国家群を生みだし、それが紛争や戦争によって難民を増加させる結果を生んでい ることが、批判的に考察されている。 第2章では、持続型生存基盤論の観点から「熱帯乾燥域」に属する当該地域の特質を描 き出している。この特質の把握は、当該地域における難民問題の理解にとって重要であ る の み な ら ず 、 流 入 し た 難 民 が 水 の 乏 し い 国 境 地 帯 に 長 期 滞 在 せ ず 、 都 市 部 に 移 動し て、都市に変容をもたらすという実態を理解する上でも肝要である。さらに、当該地域 が本来の生態的特徴と近現代に成立した諸国家の人工性を合わせもっていることを考察 して、この地域について、個別国家を超える要素を多く持った「超域的中東」としてとら えるべきことが提案されている。さらに、この視座に基づいて現代ヨルダンの形成が論じら れている。 第3章では、断続的に数多くの難民を受け入れてきたヨルダンが、難民の受入と支援を どのように展開してきたかを、歴史的経緯とフィールド調査の成果に基づいて論究して い る 。 そ の 中 で 、 特 に 1970年 代 以 降 に 中 東 で 顕 在 化 し た イ ス ラ ー ム 復 興 に と も な って 「イスラー ム的 NGO」 が活発な活 動を展開 す るようにな った実態 を 、実証的に 論じてい る。本章では「イスラーム的NGO」が、難民保護及び支援に関して国際機関・受入国政府に 次ぐ「第三項」として位置づけられている。 第4章では、前章での考察を引き継ぎ、首都であるアンマンのイ ス ラー ム 的NGOに つ い て、フィールド調査の成果に基づいて詳細に明らかにしている。特に、東アンマンのバドル 地 区 で の 調 査 に 基 づ き 、 新 興 地 域 に 難 民 が 流 入 し 、 そ こ に 生 活 基 盤 を 形 成 し て い く 過 程 を

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「都市型生存基盤の構築」として描いている。それと同時に、多くの困難を抱える難民に対 して、イス ラーム的 NGOが「即応的 対応力」 を 発揮して草 の根的な 支 援をおこな っている現 状を明らかにしている。 第5章では、シリア難民が国境を超えて流入し続けているヨルダン北部の都市マフラク を対象としてフィールド調査をおこない、沙漠地帯の小都市が難民の流入によって拡張 している現状を詳細に描いている。現地における調査に加えて、 GISのデータなどを活用 し、水資源のあり方と居住地の拡張がどのように相関しているかについて、また水資源 の希少性が持続的な生存基盤を形成する上で大きな障壁となっている点について論じて いる。 結論では、以上のような研究の成果を総括 している。中東の難民問題は、この地域の 生態的特徴と結びついた固有性を持つと同時に、現代的な国民国家体制が紛争や戦争を もたらして難民を増加させるという構造的矛盾と結びついており、今後も難民が増加す る可能性が高い。難民の窮状を助ける一助として、今後の難民問題への対処について提 言がなされている。従来の国際的な取組は、国際機関と難民受入国の2者を、欧米系の N GOが部分的に補完する形でなされてきた。その一方で、中東現地ではイスラーム的なNGO が 広 範 に 活 動 し て い る 。 そ れ ら を 国 際 機 関 と 当 該 国 政 府 に 次 ぐ 「 第 三 項 」 と 位 置 づけ て、それら の NGOが持 つ即応的対 応力をも 活 用 するよう な 有機的 な 連携 の構築 が望まれ る。本論文では、地域研究の成果に基づいて、地域の実態に合わせた難民支援策が構築 されるべきと提案されている。

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(続紙 2 ) (論文審査の結果の要旨) 中東地域 は、国連 が 成立してま もなくこ の 地で パレス チナ難民 が 生まれ、国 際社会 にとっての「難民問題」の原点となったのみならず、近年においても、2003年のイラク 戦争とその後の国内紛争に起因するイラク難民、 2011年以降のシリア内戦に伴うシリア 難民など、多くの難民を生み出してきた。難民支援の現場および 学術的な難民研究にお いては、本来は出身国への帰還が望まれる難民が実際には長期にわたって難民状態に置 かれる「長期化」の問題が近年大きな課題とされ ている。さらに近年は、新たな難民が 次々と生まれる状態が生じて、深刻な人道上の危機となると同時に、難民研究にとって も大きな困難が生じている。2015年には世界全体の難民数が約6,000万人にのぼり、史 上最悪の数字となった。 本論文は、現場における難民問題も、難民問題の解決策を提示しきれていない難民研 究の現状も大きな危機に直面しているとの認識の下に、難民問題の原点であると同時に 今日的な危機の焦点ともなっている中東を対象として、難民問題の理解と 難民救援の現 実策に何らかのブレークスルーをもたらすことを目指している。特に臨地研究にあたっ ては、パレスチナ難民の発生から現在のシリア内戦に至るまで世界最大級の「難民ホス ト国」であり続けているヨルダンをフィールドとして、持続型生存基盤論の視座に則っ て、調査をおこなっている。 本論文の意義として、以下の四点が挙げられる。 第一に、 「難民ホ ス ト国」ヨル ダンにお い て、パレス チナ難民 、 イラク難民 、シリ ア難民などが継続的に流入し、その多くが都市部に定住している現状について、歴史的 考察とフィールド調査に基づく実証的な研究をおこない、今日の中東における難民 につ いてその実態を明らかにしたことである。中東の難民研究はこれまでパレスチナ難民に 偏っており、本研究が近年のイラクやシリアでの紛争による難民問題に光を当てたこと の意義は大きい。特に、2011年以降のシリア内戦にともなうシリア難民について、ヨル ダンへ の流入 、難民 キ ャンプ での生 活、都 市 部への 移動と いう動 的 なプロ セスに 関し て、現在進行形の実態を明らかにしたことは高く評価される。 第二に、 持続型生 存 基盤論の視 座を適用 し 、「熱帯乾 燥域」と し ての中東で の「難 民」の特質を明らかにしたことは、中東における生存基盤を考察する上で大きな 貢献と なっている。沙漠の上に人工的な国境が引かれている中東では、 現在では国境によって 人びとの移動が妨げられているが、沙漠は本来自由な往来を助けるものである。文化的 にも通底性の高い2国間で移動する場合、国際難民条約が想定している「難民」に当て はまらない事例が多く生まれるという点、また乾燥地域の国境は生態的に生存基盤が形 成されにくく、難民の8割が都市部に流入する点などは、重要な発見である。 第三に、ヨル ダン研 究への貢献であ る。 本 論文はヨルダン が 20世 紀に形成・発展 す

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る上で、難民や避難民の流入がきわめて大きな役割を果たしてきたことを明らかにして いる。一般に、難民は受入国において国民とは異なる少数派の他者と認識されるが、ヨ ルダンの場合、パレスチナ人、イラク人、シリア人のいずれもが言語的・宗教的な共通 性を持っており、長期の間に非常に多くの難民や避難民がヨルダン社会に溶け込んでい る。円滑な定着にしても社会的な摩擦がおこる場合でも、単に難民 として一括すべきで はなく、当人たちの出自や階層、流入した時点での経済状態、あるいはヨルダン人の親 類がど の程度 いるか 、 さらに 流入時 のヨル ダ ンの政 治経済 状態と い った諸 条件に よっ て、さ まざま な差異 が 生じて いるこ とを実 証 的に論 じたこ とも大 き な貢献 となっ てい る。 第四に、 本論文が 学 術的な考究 に加えて 、 現実の難民 問題の緩 和 にどのよう に貢献 しうるかを考察した点も、高く評価できる。従来の難民救援・支援および難民研究が国 際機関、当該国政府、欧米系のNGOなどを主としているのに対して、中東現地の草の根 のイスラーム的NGOに着目して実証的な調査をおこなった上で、それらと連携・協力す ることでより実効性のある難民支援が可能となる、と提起したことは、研究と実務を架 橋すべき地域研究の責務を果たす優れた貢献であろう。 以上のよ うに本論 文 は、 中東地 域研究、 持 続型生存基 盤論、難 民 研究を総合 して、 臨地研究に基づいて大きな成果をあげた優れた研究である。中東地域研究、ヨルダン研 究、難民研究に寄与するところが大きく、また地域研究の新分野としての持続型生存基 盤論の発展にも寄与するものである。 よ っ て 、 本 論 文 は 博 士 ( 地 域 研 究 ) の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。 ま た、平成28年2月3日、論文内容とそれに関連した事項について試問した結果、合格と認 めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第14条第2項に該当するものと判断し、公表に際 しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。

参照

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