伊藤亜聖
2016 年 6 月
深圳国際ドローン展覧会
(
2016
)
視察報告書
Brief Observation Report:
1
目次
1.展覧会概要 ... 2 2.深圳ドローン展覧会出展者リスト ... 4 3.中国ドローン産業の概況と解題 ... 5 4.表彰結果 ... 11 5.国際フォーラムの概要 ... 13 6.会場の風景 ... 15 (写真:深圳市市民中心)2
1.展覧会概要
2016 年 6 月 17-19 日の 3 日間の日程で、深圳会展センターにて深圳国際ドローン展覧会 (2016)が開催された。主催者は深圳市ドローン協会(中国語では深圳市无人机行业协会)と 中国ドローン産業連盟(中国无人机产业联盟)である。深圳会展センターの 7 号館に合計パ ンフレットベースで 83 社、現地報道ベースで 110 社余りが出展し、200 台余りのドローン が展示された。なかでも産業用ドローンの完成品メーカーおよび関連部品モジュールのメ ーカーが主な出展者であった。展示会では、ドローンメーカーとブランドの表彰(2016 年中 国ドローン十大ブランド、2016 年中国ドローン二十強企業等)、国際ドローンフォーラム、 新製品発表会、国際ドローンレース大会も同時に開催された。会場への入場は当日の登録 で可能となっており、期間中、会場内は終始活況を呈していた。 展示会名称:深圳国際ドローン展覧会(2016)(Shenzhen International Unmanned Aerial Vehicle Expo 2016) 会場:深圳会展センター 7 号館 (7500 平米) 主催:深圳市ドローン協会(中国語では深圳市无人机行业协会) 中国ドローン産業連盟(同、中国无人机产业联盟) 共催:中国人工知能ロボット産業連盟(同、中国人工智能机器人产业联盟) 運営:深圳市安博会展有限公司 深圳市艾帝艾斯会会展有限公司 深圳国際ドローン展覧会 HP:http://www.china-drone.com.cn/index.php 深圳市ドローン協会 HP:http://www.szuav.org/ 中国ドローン産業連盟 HP:http://wrj.cpszhcs.com/ 深圳会展中心:http://www.szcec.com/
3 大会ロゴ
出所:深圳国際ドローン展覧会 HP より。
会場アクセスマップ
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2.深圳ドローン展覧会出展者リスト
企業名 企業名 1 哈瓦国际航空技术(深圳)有限公司 41 深圳光韵达光电科技股份有限公司 2 广州长天航空科技有限公司 42 深圳市智慧海安全救援服务中心 3 深圳市优鹰科技有限公司 43 深圳市昂特尔太阳能投资有限公司 4 翼通航空(深圳)科技有限公司 44 海视英科(苏州)有限公司 5 广东天浩科技有限公司 45 佛山市安尔康姆航空科技有限公司 6 深圳市双优通信设备有限公司 46 深圳一信泰质量技术有限公司 7 常州常探机器人有限公司 47 北京晨轩未来电子科技有限公司 8 深圳圣丽迪亚贸易有限公司 48 深圳市星火心肺复苏急救知识推广协会 9 深圳市镭神智能系统有限公司 49 厦门中海航通用航空服务有限公司 10 深圳市森讯达电子有限公司 50 广东泰一高新技术发展有限公司 11 深圳市华夏盛科技有限公司 51 深圳市唯真电机有限公司 12 成都时代星光科技有限公司 52 南京模拟技术研究所(总参六十所) 13 深圳市亿道信息股份有限公司 53 中国联通深圳市分公司 14 深圳市艾特航空科技股份有限公司 54 深圳市大疆创新科技有限公司 15 深圳震有科技股份有限公司 55 深圳市翼展航空科技有限公司 16 深圳九星智能航空科技有限公司 56 翼飞科技(深圳)有限公司 17 深圳洲际通航投资控股有限公司 57 深圳市富斯遥控模型技术有限公司 18 承德鹰眼电子科技有限公司 58 深圳市好盈科技有限公司 19 深圳智璟科技有限公司 59 珠海市世飞联体育运动策划管理有限公司 20 国鹰航空科技有限公司 60 超音速模型科技有限公司 21 长沙中部翼天智能装备科技有限公司 61 北方天途航空技术发展(北京)有限公司 22 全球鹰(深圳)无人机有限公司 62 南京交研科技实业有限公司 23 深圳科卫泰实业发展有限公司 63 北京蓝天飞扬科技有限公司 24 深圳市彩虹鹰无人机研究院有限公司 64 深圳市灵通智能科技有限公司 25 深圳市鼎创旭飞科技有限公司 65 深圳市东视电子有限公司 26 深圳华越无人机技术有限公司 66 厦门狄耐克物联智慧科技有限公司 27 深圳市高科新农技术有限公司 67 深圳市景阳科技有限公司 28 北京华力信通科技有限公司 68 北京正唐科技有限责任公司 29 深圳智航无人机有限公司 69 保千里视像科技集团股份有限公司 30 深圳一电科技有限公司 70 深圳市盛禾无人飞机科技有限公司 31 深圳市科比特航空科技有限公司 71 深圳市创翼睿翔天空科技有限公司 32 普宙飞行器科技(深圳)有限公司 72 南京航空航天大学 33 北京博雅英杰科技股份有限公司 73 安徽泽众安全科技有限公司 34 深圳翼航东升航空科技有限公司 74 中国航天科工集团海鹰航空通用装备有限责任公司 35 广州科易光电技术有限公司 75 深圳天鹰兄弟无人机科技创新有限公司 36 深圳市维斯德技术有限公司 76 合肥佳讯科技有限公司 37 拓扑联创(北京)科技有限公司 77 广东中安金狮科创有限公司 38 深圳市安科安全科技文化发展有限公司 78 深圳市警圣电子科技有限公司 39 深圳市公益救援志愿者联合会 79 深圳洲际通航科技有限公司 40 深圳市安邦国际商务有限公司 80 微型仿生无人飞行器设计重点实验室 81 西北工业大学深圳研究院 82 中国电子科技大学官网 83 深圳中天通用无人机联合控股有限公司 出所:『深圳国際無人機EXPO会刊』、p.4-5より作成。5
3.中国ドローン産業の概況と解題
3-1)中国ドローン産業の概要 ドローンは中国語では無人機(簡体字では无人机)と呼ばれ、近年、コンシューマー用に DJI 社が世界的に成功を収めていることもあり、中国国内でも大きな注目を集めている産業 分野となっている。直近では、中国の IT 企業テンセントや小米(Xiaomi)も新製品を発売す ることが予告されており、更に熱気を帯びている1。ドローンの世界的な製造拠点となって いるのは中国の南方、香港と隣接する広東省深圳市(シンセン)である。現地メディアの報 道ベースでは、深圳には 300 社のドローン関連メーカーが立地し、その売上げ規模は 200 億元(約 3172 億円、1 元 15.8 円換算、以下同じ)とされる2。このたび、2016 年 6 月 17-19 日の日程で、深圳国際ドローン展覧会が開催されたのが、その深圳市である。 以下では、展示会の際に配布された資料(『深圳国際無人機 EXPO 会刊』)やその他、中国 語の業界情報を基に、中国のドローンを巡る情報を簡単に整理しておこう。 表 1 は中国のドローンの輸出に関わるデータである。本展示会の報告書や、現地のシン クタンクは、国際的な貿易品目コードである HS コードのうち、880220 番「その他の航空機 のうち、自重が 2,000 キログラム以下のもの」をドローンとして捉えているが、現状では、 デジタルカメラ付機器は 852580 番、玩具に分類されるものは 9503 番、そして小型ヘリコ プターは 880211 番「ヘリコプターのうち、自重が 2,000 キログラム以下のもの」に分類さ れる可能性がある3。デジタルカメラや、玩具については、ドローン以外の製品の金額が多 く含まれてしまうため、表 1 では、880220 番と 880211 番の結果を示している。 これによると、中国のドローン輸出は、2013 年の 90 万ドルから、2014 年の 6930 万ドル、 そして 2015 年の 5.48 億ドルへと、突如増加していることがわかる。2012 年まで、この貿 易コードでの輸出額と台数は限られており、100 台程度の小型ヘリコプター・飛行機が単価 5 万ドルから 100 万ドル程度で輸出されていたに過ぎなかった。これが、2015 年には合計 95 万台にものぼるドローンが、単価 500 ドル台で輸出される構造へと転換したのである。 換言すれば、中国のドローン輸出は 2014 年から 2015 年にかけて、突如「発生した」と言 えよう。展示会会場で配布された資料によれば、特に DJI 社のドローンの輸出が、これら 輸出の大多数を占めているとされ、輸出単価も DJI 社の製品単価に近い金額になっている と考えられる。輸出元地域としては、その他飛行機については深圳港、その他ヘリコプタ ーについては広州の黄埔港が圧倒的であり、また仕向け地は香港が大多数を占め、香港経 1 『日本経済新聞』電子版 2016 年 1 月 6 日記事「中国テンセント、ドローン参入 年内に 独自商品」、同 2016 年 5 月 27 日記事「中国・小米がドローン参入、4K カメラ搭載で 5 万円」 を参照。 2 『南方日報』2016 年 6 月 20 日記事「中国無人機十大品牌深企占六席」より。 3 HS コードの説明については、東京税関、ドローン関連企業への問い合わせによる。HS コ ードの分類については、財務省 HP を参照 (http://www.customs.go.jp/yusyutu/2016/index.htm)。6 由で全世界にドローンが輸出されている。
表 1 中国のドローン輸出データ
表 2 は民生用のドローン市場の規模を示しており、2015 年時点で 23.3 億元(約 369 億円) の市場規模となっている。2016 年以降の市場予測については、UBM Market Research 社の 予測値によると、2018 年までに輸出台数は 800 万台に到達し、輸出額は 35 億ドルに達する というものもある4。また、国内の市場規模は、2018 年までに 81.2 億元(約 1287 億円)に達 するとも予測されている(表 2)。このほかに、長期的には 2025 年までに市場規模が 750 億 元(約 1 兆 1896 億円)に達するとするものもある5。これらの市場予測の背後には、過去 2 年 の伸び率が維持されるという想定があるようであり、このような高い伸びが維持される保 障はないものの、市場と用途の拡大によって市場規模の拡大自体は期待できるであろう。 表 2 中国民生用ドローン市場の規模 以上の情報から、2015 年の中国国内の民生用ドローン(産業用とコンシューマー用を含 む)の市場規模は、369 億円(23.3 億元)、輸出市場が 574 億円(5.48 億ドル)となっており、 為替レートの影響もあり、国内規模が小さくなっているものの、合計で約 940 億円の規模 4 『深圳国際無人機 EXPO 会刊』、p.14 より。 5 中国のシンクタンク、艾瑞諮詢のレポート「中国無人機行業研究報告簡版 2016 年」参照。 2010 2011 2012 2013 2014 2015 輸出額 (100万ドル) 7.6 12.9 9.6 0.9 69.3 548.9 台数(台) 80 135 116 20 168,925 954,941 単価(ドル) 94,569 95,850 83,121 45,455 410 575 輸出額 (100万ドル) 7.6 12.9 9.6 0.5 62.0 514.8 台数(台) 78 135 116 10 168,911 891,237 単価(ドル) 96,816 95,850 83,121 53,522 367 578 輸出額 (100万ドル) 0.01 0.0 0.0 0.4 7.3 34.1 台数(台) 2 0 0 10 14 63,704 単価(ドル) 6,933 N.A. N.A. 37,389 521,974 536 880211番 「ヘリコプター、自重が 2000kg以下」
出所:Global Trade Atlasデータベースより作成。 両類型合計 880220番 「その他飛行機、自重が 2000kg以下」 2014 2015 2016* 2017* 2018* 市場規模 (億元) 15 23.3 36.1 54.2 81.2 伸び率 (%) 50 55 55 50 50 注:2016年以降は予測値。 出所:『深圳国際無人機EXPO会刊』、p.14掲載データより。元 データはUBM Market Research。
7 となっている。ただ、これらのデータには軍事向けのドローンは含まれておらず、また輸 出データにはカメラ製品に分類されているドローンが含まれていない可能性があり、実際 には関連産業の規模はさらに大きいと考えられる。 次に中国におけるドローン関係の研究開発と知的財産取得の状況を見ておこう。図1は、 中国の特許局に申請された特許申請書の名称、摘要、権利要求書に「無人機」が含まれて いるものを集計したものであるが、2002 年に 1 件の申請があったものの、2005 年には 2 件 となっており、2000 年代前半まではごく少数であった。ところが、2000 年代後半以降に急 増し、2010 年には 84 件、そして 5 年後の 2015 年には 1908 件まで飛躍的な増加を示してい る。『深圳国際無人機 EXPO 会刊』によれば、特許の類型としては発明と実用新案がその大 部分を占めている6。 図 1 中国国内でのドローン関係の特許取得件数推移 注:特許は実用新案、外観設計、発明受権の合計。 出所:「専利信息服務平台」より作成。 同『会刊』には表 3 に示したように、ドローン関係の特許出願地域についても掲載され ている。実際にはここに示されない地域からの申請もあるはずであり、合計 100%となるの は不自然であるが、大まかな特徴は把握できる。まず深圳を筆頭とする広東地域が高いシ ェアを示しており、続いて北京地域、江蘇省、そして内陸地域が続く。表 4 には主要な特 許出願機関のリストが示してあるが、北京航空航天大学を筆頭に、研究機関が北京に集中 している一方で、DJI 社や深圳一電(AEE)などのメーカーが広東に立地している。これらの ことから、深圳は製造拠点のみならず研究開発の拠点ともなっており、北京や内陸地域の ソフトウェア技術、航空技術とも融合しながら中国のドローン産業の研究開発と実用化が 進んでいると考えられる7。 6 『深圳国際無人機 EXPO 会刊』、p.56 より。 7 この点については、『日本経済新聞』2014 年 11 月 16 日記事「世界を舞う中華ドローン ゆ りかごはスマホ工場、同 2015 年 6 月 6 日記事「ドローンの都・深圳 200 社新興 DJI な 0 500 1000 1500 2000 2500
8 表 3 中国ドローン関連特許の出願地域 表 4 中国におけるドローン関連特許出願上位 10 企業・機関 3-2)展示会から見えてきたもの――深圳・産業用ドローン・モジュラー化 以上の基本データを踏まえた上で、今次展示会の特徴として、以下の点を指摘できるだ ろう。 第一に、出展企業は深圳市に本拠を置く企業が過半を占める。出展企業はすでに 4 ペー ジに示しているとおりであるが、ここに示した 83 社のうち、54 社(研究機関などを含む、 以下同じ)を深圳市に本部を置く企業が占めている。その代表格が「十大ブランド」として も表彰されている深圳一電科技有限公司(AEE)や、深圳市科比特航空科技有限公司(MMC)で ある。深圳はすでに中国、ひいては世界の「ドローン産業の都」としての地位を築きつつ ど競争」が参考になる。 広東省深圳市 19.9% 広東省広州市 6.9% 北京市海淀区 10.7% 北京市西城区 8.2% 江蘇省無錫市 10.3% 江蘇省蘇州市 8.4% 四川省成都市 14.9% 湖北省武漢市 10.5% 陝西省西安市 5.8% 天津市津南区 5.0% 出所:『深圳国際無人機 EXPO会刊』、p.57より。元 データは北京隆源智信知 識産権諮詢有限公司。 特許出願数 北京航空航天大学 467 国家電網 205 西北工業大学 182 南京航空航天大学 149 清華大学 118 深圳大疆創新科技有限公司 97 中国航天空気動力技術研究院 91 天津全華時代航天科技発展有限公司 89 北京理工大学 84 深圳一電科技有限公司 74 注:2015年12月までの件数。 出所:『深圳国際無人機EXPO会刊』、p.58より。元データ は北京隆源智信知識産権諮詢有限公司。
9 あるが、出展企業の様々な業態を見ることでもその一端を感じることができる。出展企業 数として深圳に続くのは北京の 9 社、そして南京の 3 社である。北京からの出展企業には 国鷹航空科技有限公司、南京からの出展者には南京模擬技術研究所(総参六十所)が含まれ ている。 出展者に共通する第二の特徴は、圧倒的に産業用ドローンの完成品メーカーと関連部品 メーカーが多いことである。深圳市ドローン協会の楊会長の説明によると、今回のドロー ン展示会の焦点は産業用、その中でも警備用、セキュリティー用、農業用のドローンの展 示であり、そのために今次展示会にはコンシューマー向けドローンを主要な業務とする DJI は部品モジュールの販売ブースを設ける形で間接的には出展していたものの、直接には出 展していなかった。日本では中国のドローンメーカーとしては DJI が圧倒的に著名である が、今次展示会から垣間見えたのは、中国における産業用ドローン業界の勃興である。そ の用途のなかにはヤマハのドローンに類似したヘリコプター型の農業用ドローンだけでは なく、警備用・テロ対策用といった専門的なドローンも数多く展示されていた。セキュリ ティー関係の展示会も同時開催されていたこともあり、中国の警察や公安関係者も視察に 訪れ、公共部門での需要の大きさも感じられた。 例えば、本報告書の後半部に示している写真 12 の鷹眼科技は、ワンボックスカーの上部 にカタパルトと固定翼飛行機型ドローンが装備され、このドローンとセットで、3 機のマル チコプター型ドローンが追尾するシステムを開発し、これら 4 台のドローンを一人で車内 からコントロールできるシステムを構築していた。販売価格は装備にもよるが、車両も含 めたセットで 350 万元から 700 万元の価格帯で販売しており、すでに中国国内だけでなく、 イギリス、フランス、パキスタン、シリアにも輸出実績を持っていた。単なるハードウェ アとしてのドローンだけではなく、警備に特化した産業用のドローン開発企業がすでに事 業を展開している。 第三に指摘できることは、完成品ドローンメーカーと同時に、ドローンを開発製造する のに必要な部品モジュール、ソフトウェアの提供を担うパーツメーカーやソリューション 企業が数多く出展していたことである。中国の製造業では、多くの日本の大企業がかつて 採用してきた垂直統合型のビジネスモデルとは全く異なり、共通化された部品モジュール が流通することで新規企業の参入が喚起されてきた点が、たびたび報告されてきた8。いわ ゆる産業のモジュラー化である。輸出データから確認したように、ドローン産業が勃興し たのは 2014 年からのわずか 2 年余りであるが、すでに部品の売買が広範に展開している。 会場に出展していたメーカーが提供していた主な部品を列挙すると、モーター、プロペ ラ、フライトコントローラー及びメインボード、電池、通信モジュール(画像、無線)、カ メラモジュール、ぶれ防止スタビライザー、などである。例えば、写真 17 の融合北斗は、 8 丸川知雄著『現代中国の産業―勃興する中国企業の強さと脆さ』(中公新書、2007 年)、 渡邉真理子編著『中国の産業はどのように発展してきたか』(勁草書房、2013 年)などを参 照。
10 中国で著名なカーナビゲーターシステムを開発した北斗が新たに立ち上げた事業会社であ り、GSP と北斗の両ナビゲーションシステムへの対応がフライトコントローラーチップ及び それを搭載したメインボードを販売していた。この他にも、高倍率のカメラとスタビライ ザーをセットで展示していた拓扑聯創は、2012 年に北京で創業した研究開発型の企業で、 北京での開発、深圳での販売という事業モデルを構築していた。また、プロペラを展示し ていた深圳市維斯徳技術は、ジルコニアセラミック、シリコンセラミック、炭素繊維の部 品を製造する専門メーカーで、特にドローンのプロペラ製造を近年開始したとのことであ った。会場の業界人のなかには、会場に展示されている多くのドローンには、これらの企 業が提供する部品モジュールが搭載されていると述べる人もいた。 更にもう一点述べるとすれば、それは会場に充満していた若さであろう。ドローンレー スのパイロットは十代の学生であり、またレースの観衆の多くが若者であったという理由 もあるが、会場内の企業ブースで製品を説明する従業員の多くもまた 20 代であった。会場 内では、ドローンという新興産業が、深圳という若い都市で育まれ、成長しつつあるその 熱気が感じられた。 無論、今次展示会は、中国のドローン産業の氷山の一角を示すものに過ぎない。ドロー ンに関わる展示会は中国各地で頻繁に開催されており、11 月には中国国際産業ドローン展 示会が上海国家会展中心で開催され9、このほかにも北京、深圳など各地でビジネスの商談 会や展示会が企画されている。中国の新たな長期産業政策である「中国製造 2025」にドロ ーンが含まれていることもあり、今後長期にわたって中国の各地で、研究機関、製造業、 ソフトウェア産業を巻き込みつつ、新たなうねりが生じる予感が十分に感じられる展示会 であった。 9 http://www.chinauav-expo.com/を参照。
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4.表彰結果
2016 年中国ドローン十大ブランド 企業名 英語名 所在地 主要製品・サービス分野 ウェブサイト 深圳市大疆创新 科技有限公司 Da-Jiang Innovations Science and TechnologyCo., Ltd. (DJI) 深圳 コンシューマー用・産業用ド ローンの研究開発と製造販売 http://www.dji.co m/jp 深圳一电科技 有限公司 Shenzhen AEE Technology Co. Ltd. (AEE) 深圳 商用、警備用、軍事用、コン シューマー用ドローンの開発 製造販売 http://www.aee.c om/ 国鹰航空科技 有限公司
China Eagle Aviation
Technology Co., LTD 北京 警備用、軍事用ドローンの開 発製造販売 http://www.china eagleuav.com/ 零度智控(北京)智能 科技有限公司 ZEROTECH 北京 産業用ドローンのシステム開 発とドローン製品製造 http://www.zerote ch.com/ 深圳市艾特航空科技 股份有限公司 Shenzhen ART-TECH R/C Hobby Co., Ltd 深圳 電線検査、森林防火などの 産業用ドローン及びコン シューマー向けドローンの開 発製造販売 http://www.art-tech.com/ 深圳九星智能航空科技 有限公司 Nine Star 深圳 産業用ドローンの開発製造販 売 http://www.sznsi. com/ 深圳市科比特航空科技 有限公司 Shenzhen Micromulticpoter Aero Technology, Co. LTD (MMC) 深圳 コンシューマー用、産業用、 軍事用ドローンのシステム開 発とドローン製品製造 http://www.mmcu av.com/ 佛山安尔康姆航空科技 有限公司
Aircam UAV Technology Corporation 佛山 産業用ドローンの開発製造販 売 http://www.cnuav. com/cms/ 深圳华越无人机技术 有限公司 ― 深圳 産業用(特に農業用)ドローン の開発製造販売 ― 深圳科卫泰实业发展 有限公司 Shenzhen Keweitai Enterprise Development Co., Ltd 深圳 産業用ドローン向けの画像処 理送信部品、コントローラー の開発製造販売 http://www.keweit ai.com/ 广州极飞电子科技 有限公司 XAIRCRAFT Technology 広州 産業用ドローン及びフライトコ ントローラーの開発製造販売 http://www.xaircr aft.cn/en 出所:深圳国際ドローン展覧会(2016)発表の結果と各社HP情報より作成。 注:10大ブランドであるが、11社が選定されており、これは発表のとおりである。
12 2016 年中国ドローン二十強企業 企業名 英語名 所在地 主要製品・サービス分野 ウェブ サイト 湖北易瓦特科技 股份有限公司 Ewatt Co., Ltd. 武漢 産業用ドローン及び部品の 開発製造販売 http://www.ewatt.c om/ 长沙中部翼天智能装备 科技有限公司
Changsha Central Sky Wing (CSW) Intelligent
System Tech Co., Ltd
長沙 産業用、警備用ドローンの 開発製造販売 http://www.cciacor p.com/ 广州长天航空科技有限公司 Guangzhou Space Arrow 広州 産業用ドローン及び部品の 開発製造販売 http://www.spacea rrow.com/
承德鹰眼电子科技有限公司 Hawk Eye Technology 承德 警備用ドローンの開発製造 販売 http://www.yyuav.c om/ 哈瓦国际航空技术 (深圳)有限公司 Harwar International Aviation Technology (Shenzhen) Co.,Ltd 深圳 産業用ドローンの開発製造 販売 http://www.harwar. com/ 成都时代星光科技有限公司 Times Tech 成都 警備用、その他産業用ド ローンの開発製造販売 http://www.timeste ch.org/ 深圳天鹰兄弟无人机 科技创新有限公司 Eagle Brother 深圳 農業用ドローンの開発製造 販売 http://www.111uav .com/ 深圳市鼎创旭飞
科技有限公司 Sun Fly UAV 深圳
産業用、軍事用ドローンの 開発製造販売
http://www.sunflyu av.com/
深圳智航无人机有限公司 Shenzhen Smart Drone UAV Co., Ltd 深圳 産業用ドローン(特に物流 向け及び警備向け)の開発 製造販売 http://www.smd-uav.com/ 深圳市智璟科技有限公司 Shenzhen JTT Technology Co., Ltd 深圳 産業用ドローン、及び画像 処理システム、関連部品の 開発製造販売 http://www.jttuav.c om/cn/index.html 广州亿航智能技术有限公司 EHANG, Inc 広州 産業用ドローン、及びフラ イトコントロールシステムの 開発製造販売 http://www.ehang. com/ 湖北大秀天域科技 发展有限公司
Daisho Paradise Hi-tech Development Co. LTD 武漢 警備用、産業用ドローンの 開発製造販売 http://en.daisho-uav.com/ 广东泰一高新技术 发展有限公司 Airace Technology 惠州 産業用ドローンの開発製造 販売 http://www.airace. com.cn/static/taiyi keji/index.html#/ 普宙飞行器科技 (深圳)有限公司 GDU Technology Company 深圳 コンシューマー用ドローン の開発製造販売 http://www.prodro ne-tech.com/ 全球鹰(深圳)无人机 有限公司 GL UAV 深圳 産業用ドローンの開発製造 販売及びドローン操縦者向 け教育課程 http://www.gl-uav.com/html/cn/ 湖南基石信息技术 有限公司 Hunan Keyshare Information Technology 長沙 ドローンのフライトコントロー ラー、通信システムの開発 及びコンシューマー用、産 業用、軍事用ドローンの製 造販売 http://www.key-share.com/ 深圳飞豹航天航空 科技有限公司 FLYPRO Aerospace Tech Co., Ltd 深圳 コンシューマー用追尾型ド ローンの開発製造販売 http://www.flypro.c om/ 广东飞轮科技 股份有限公司 Guangdong Feilun Technology Industrial Co., Ltd 汕头 コンシューマー(玩具を含 む)向けドローンの開発製 造販売 http://www.feilunt oys.com/ 深圳市彩虹鹰无人机
研究院有限公司 Rainbow Eagle UAV 深圳
産業用ドローンの開発製造 販売 http://www.chyuav .com/ 出所:深圳国際ドローン展覧会(2016)発表の結果と各社HP情報より作成。 北方天途航空技术发展 (北京)有限公司 ― 北京 ドローン及び関連製品の リース、販売 ―
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5.国際フォーラムの概要
2016 年 6 月 18 日の午前 9 時から 11 時 50 分まで、中国、オーストラリア、韓国、日本、 アメリカのドローン関連団体が参加した国際フォーラムが開催された。タイムテーブルは 下記のとおりである。 フォーラムのタイムテーブル まず深圳市ドローン協会の楊金才会長より挨拶があった。ドローンの製品セグメントを 軍事用、民用(産業用)、個人消費用の 3 つにわけると、これまでは軍事用が主流を占めて きたが、近年では民用のドローンが伸びていることが指摘された。そしてこの民用の中で も、需要の量から見ると、警察や行政などの公共部門での利用が大きく、中国では各地の 政府部門が大口の顧客となっていることが紹介された。 続いて、Eddie Bennet 氏が、海に囲まれたオーストラリアにおいてドローンを海難救護 に利用する動きが進んでいることが紹介された。従来、海難救護にはヘリコプターの出動 が必要となってきたが、ドローンを活用して捜索と救護用具の投下を行うことで、救護費 用の削減が可能となっている。ただし、ドローンの飛行時間が限られている点や、悪天候 への耐久性など、ドローン機器が抱える問題点があることも指摘された。現在、最もドロ ーンの活用が進んでいる事例として、サメを自動で発見するシステムや、ドローンから救 護服を落とす取り組みが紹介された。目下のところ、ドローンを使う海難レスキュー隊の 数はまだ少ないものの、2020 年までに大幅に増加することが期待されている。 続いて、朴寛民氏は韓国ドローン協会の活動を紹介した。韓国はドローンの研究開発力 で世界 7 位の位置にあり、さらに規制が緩和されたことによって、ドローンの利用者が増 加している。この利用者に活用してもらうために、携帯電話のアプリで、飛行可能区域が 表示されるシステムが開発されている。韓国ドローン協会は 2015 年 9 月 9 日に設立し、主 9:00-9:10 開場 9:10-9:20 来賓紹介 楊鵬(中安伝媒、総裁) 9:20-9:30 開会の辞 楊金才(深圳市ドローン協会・会長) 11:10-11:35 MOU締結式 11:35-11:50 来賓交流10:50-11:10 劉斐(ASTM International, China office, Chief representative) The UAV Application for the Ocean Rescue
(海洋救護活動へのドローンの応用) The Present and Development Direction of Korea
Drone Industry
(韓国ドローン業界の現状と発展方向) JUIDA's Role in the Trends of Japanese Legislative
System and Industrial Drone Use (日本における法整備と産業用ドローンの発展)
China-Japan UAV Collabaration (日中ドローン業界の協力) ASTM International and Standards for UAS (ASTM国際標準組織及び国際ドローン標準)
Eddie Bennet(International Life Saving Federation Australia Branch, Chairman) 9:30-9:50 9:50-10:10 朴寛民(韓国ドローン協会・会長) 10:10-10:30 千田泰弘(一般社団法人日本UAS産業振興協 議会・副理事長) 10:30-10:50 国友享司(NPO未来アジア技術フォーラム、 副理事長)
14 にドローンの普及、産業用ドローンの開発促進、ドローンレースの開催、コンファレンス の実施を主要な活動としている。また、毎月 1 台のドローンを学校に寄付することや、DRONE という雑誌も発行することで普及促進に力を入れている。MOU を日本、オーストラリア、ヨ ーロッパの協会、そして企業とも結んでおり、今後、さらに活動を広げていくことが報告 された。 続いて千田泰弘氏より、昨年 12 月にドローンの関連法律が制定されたことによって起き た変化について報告がされた。日本では、もともとホビー用ドローン市場は非常に活発だ った一方で、産業用は発展が遅れていた。昨年 12 月にドローンの法律と規制が策定された が、基本的には世界のドローンの法律の作り方と同じで、危険度によって、規制を強くす る原則がとられている。飛行可能区間、そして飛行してはいけない地域(DID)が指定されて いる。飛行が制限されている地域で飛ばすためには申請をして許可を得る必要があり、6 か 月で、申請許可は 4000 件に達している。そして最大の変化は生産・開発側で生じており、 法律制定後に参入した 12 社はすべて日立、パナソニックといった大企業である。今後日本 では農業用に加えて輸送用が伸びることが考えられ、特に地方での輸送が期待されている。 日本ドローン産業振興協議会では、ドローンに関わる資格の認定、飛行支援の地図サービ スの提供、展示会 Japan Drone を開催しており、これらの活動が紹介された。 続いて国友亨二氏は NPO 未来アジア技術フォーラムの活動を報告した。本 NPO は、日中 共同で社会問題を解決することを目指しており、東京工業大学が実施してきた“Solutions Research”、つまり問題を解決するための研究を推進する取り組みがその前身にあたる。大 学の技術を活用するスキームを、日本だけでなく、アジアに広げていきたいと考えている。 実際に進行している事例の一つは、東京湾から千葉市への薬の配達をドローンで行う取り 組みである。東京の倉庫から千葉に宅配する際、コースの半分以上は海上であり、渋滞を 避けることができ、コストの削減が可能である。日本国内には 20 兆円の物流市場があるが、 ラスト1マイル輸送をどう低コスト化するかが課題となっている。ここでドローンを活用 し、コストを 1/10 にすることを目指している。こうした取り組みを中国でも広げることで、 日中で政府、企業などを巻き込んで社会問題を解決することを目指すことが報告された。 最後に、劉斐氏は ASTM が策定を進める国際標準の意義について報告した。産業の普及に は標準の策定が必須であり、どの標準、どのプラットフォームを利用するかが重要となる。 目下のところ、ドローンを巡っては各国で異なる基準が採用されており、この課題を克服 するうえで、ASTM が大きな役割を果たすことができると報告された。 また、本国際フォーラムでは、日本、中国、韓国のドローン協会の MOU の締結式や、企 業間の戦略協力協定の調印式も同時に開催された
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6.会場の風景
写真 1. 開会式の様子。
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写真 4. ドローン館(7 号館)の様子。奥にはドローンレースのコースが設けられている。
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写真 6. 新製品発表会の様子。
写真 7. 合計 8 社の新製品・サ ービスが発表された。
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写真 8. 国際フォーラムの様子。
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写真 10. ドローンレースのコース。オランダやタイからのチームも参加し、多くの若い観 衆を集めていた。優勝したのは 17 歳の中国人パイロット、李坤煌さんだった。
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写真 12. 公安向けのドローンメーカー、鷹眼科技のブース。
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写真 14. 産業用ドローンの開発製造、そしてドローン操縦者のトレーニングサービスも提 供している全球鷹(深圳)のブース。
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写真 16. 燃料電池メーカーの昴特尔太陽能のブース。
写真 17. フライトコントローラーのチップ、メインボートを販売していた融合北斗のブー ス。
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写真 18. ドローン向けモーターを製造する唯眞電機のブース。
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写真 20. DIY ドローンの組み立てレース用のブースの様子。600 名の参加希望者の中から 20 名が選定され、第一位となった温燕銘さん(24 才)は 83 分でドローンを組み上げた。
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写真 22. DJI のマルチコプター速度調整器の販売ブース。TAKYON シリーズとして販売。
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写真 24. ドローンレース会場でドローンの調整を行う選手。
写真 25. 会場ではおもちゃメーカーも臨時のブースを出し、220 元(4400 円)程度で販売し ていた。
28 ※謝辞 展示会の際、深圳市ドローン協会の楊金才会長、盖軍国際事務管理局長、楊洁琼副秘書 長から受けたサポート、そして日本ドローン産業振興協議会の千田泰弘副理事長、熊田貴 之副事務局長からのアドバイスに心から感謝します。なお、本報告者は科学研究費 (26780140)の成果の一部です。 ※写真について 本報告書に掲載される写真はすべて筆者が撮影したものです。 伊藤亜聖 (Asei ITO) 東京大学社会科学研究所・講師
(Lecturer, Institute of Social Science, University of Tokyo)
専門は中国経済論。著書に『現代中国の産業集積――「世界の工場」とボトムアップ型
経済発展』(名古屋大学出版会、2015 年 12 月)、『東大塾 社会人のための現代中国講義』(高
原明生・丸川知雄共編、東京大学出版会、2014 年 11 月)等。 Email: [email protected]