レポートの書き方
小山田 雄仁
いきなり演習
• 2つの抵抗 に対してそれぞれ電圧をかけ, 各抵抗に流れる を測定した. • 表1にまとめた計測結果を一つのグラフにプロットする.電圧[V]
[A]
[A]
11
1.0
2.9
20
2.2
6.1
32
3.1
9.9
41
3.9
11.8
表1 電圧と電流の関係本講義の目的
• レポートの書き方(レポートを書く際に守るべきルール)を学ぶ • 文章構成(IMRAD) • 文法 • 表,図,式の書き方 • 参考文献 • etc. • 実験開始日までに実験指導書pp.1-12を理解しておいてください. 3 2016/4/12 レポートの書き方実験レポートの目的
• (実験)レポート: 自分が伝えたい情報を他者に伝える手段 • 実験レポートの目的 • 実験項目の理解度の確認 • 科学技術文書の書き方を学ぶ • 論理的かつ簡潔で分かりやすい文章 • 学位論文(卒論)執筆の練習レポートの書き方の前に...
• 心構え(小山田個人の見解です) • あくまでも「実験レポート作成を通して科学技術論文執筆の技術 を身に着ける」 • 「実験の単位を取るための技術を身に着ける」 • 自分で考え,書き,他者の意見を基に直す • レポートの点数 • 個人の評価ではなく,提出されたレポートの評価 • レポートの点が高い → (おそらく)この書き方で良い • レポートの点が低い → 書き方を(何かしら)変える必要がある 5 2016/4/12 レポートの書き方レポート作成を頑張るメリット
• 良いレポートが書ける =自分が伝えたい情報を他者に効果的かつ効率的に伝えられる • 文書作成技術は様々な状況で必要 • 卒業前: インターンシップの応募書類,就職活動のエントリーシー ト,卒業論文 • 卒業後: 仕事の報告書,プレゼン資料,企画書最低限譲れない点
• 提出期限 • 必ず守りましょう • 何らかの理由で期限が守れない場合は,連絡をしましょう • 厳禁: 他人のレポートや本・論文の丸写し • 手段のために目的を蔑ろにする行為 • 他者の権利を侵害 7 2016/4/12 レポートの書き方科学技術文書の満たすべき条件
• 可読性 • 論理性 • 再現性
科学技術文書の満たすべき条件
• 可読性 • そもそも読める文章でなければならない • 正しい文法で書かれている必要がある • 科学技術論文の書き方に従っているか • 読者にとって読みやすい文章か • 論理性 • 再現性科学技術文書の満たすべき条件
• 可読性 • 論理性 • 話の流れが(レポートの初めから終わりまで)一方向 • 目的と結論が結びついているか • 考察が理論と結果をつなげているか • 考察・結論の内容は理論・実験結果によって導き出せるものか • 再現性 2016/4/12 レポートの書き方 11科学技術文書の満たすべき条件
• 可読性 • 論理性 • 再現性 • レポートを読んだ読者が,同様の実験結果を得られるか • 曖昧な表現 • 省略された詳細情報レポートの書き方のルール
• 以降,Coarse-to-fineで説明 1. レポートの構成: IMRAD
2. レポート中の様々な要素: 文,記号,式,図表,参考文献
レポートの文章構成(IMRAD)
• 論文では一般的な文章構成型式の一つ
• Introduction, Methods, Results, And Discussionの略
• Title: 題名 ← レポート表紙(題目,氏名,学生番号,etc.) • Abstract: 概要 ← レポートでは無くても良い • Introduction: 導入 • Methods: 方法 • Results: 結果 • Discussion: 考察 • Conclusion: 結論 • Appendix: 付録 • References: 参考文献 • 「起承転結」ではない
レポートの文章構成(IMRAD): Introduction 1/2
• 何を研究したのか?その理由は何故か? (What are you studying and why?)
• 問題設定
• 論文・レポートで何を扱うか定義
• (既存研究やシステムの)問題提起
レポートの文章構成(IMRAD): Introduction 2/2
• DOs and DON’Ts
• 実験で検証するトピックを理解するための原理を記述 • 関連する理論の説明を記述
• 関連するあらゆる項目を全て書くべきではない
• 足し算や引き算をいちいち導出する必要は無い • 参考文献を正しく参照し,過剰に説明をしない
レポートの文章構成(IMRAD): Methods 1/2
• どのような実験を行ったのか? (What did you do?)
• 実験方法を具体的に記述 • レポートを読んだ他者が実験を再現できる程度に具体的に • 具体的な手順 • 装置構成 • 解析手法 • 実験テキストに書いてある内容に基づいた記述 • 細かい部分は異なる可能性 • 装置のモデル,型番等は当日にならないと不明
レポートの文章構成(IMRAD): Methods 2/2
• DOs and DON’Ts
• 手順や装置などの詳細は全て記述する • 必ずノートにメモを取る • PCでのデータ収集は(あくまでも)予備 • 実験装置(特に回路)の写真や図を載せる • 実験環境(温度,湿度など)を記述する • 文章が長くなることを理由に(重要な)詳細の記述を除外しない
レポートの文章構成(IMRAD): Results 1/2
• 実験によって得られた結果は?何を観測したのか? (What did you find?)
• あらゆる実験結果を記述
• 実験によって観測・計測した数値・データ
• 観測・計測した数値・データから解析(計算)した数値・データ
レポートの文章構成(IMRAD): Results 2/2
• DOs and DON’Ts
• 一目で理解できるように図や表を効果的に使う • 実際に計測・観察した結果を記述 • 期待しなかった,驚いた結果を記述 • 失敗した結果として無視しない • まず最初に重要な結果を記述し,それ以外の結果はそれ以降に 書く • 図・表に示した結果について全てを詳細に記述しない
レポートの文章構成(IMRAD): Discussion 1/2
• 実験結果が何を意味するのか?どう解釈できるか? (What do your findings mean?)
• 観測・計測,もしくは解析した実験結果の傾向,意味,解釈について 論理的に説明 • 検証する仮説と結果で示したデータを関連付けるための論拠を 記述 • 必要であれば,実験の妥当性に関しても検証する • 特に予測と異なる結果が得られた時 • (例) オームの法則を検証する実験 • 実験結果から電流と電圧の間に正の比例関係があるのか? • 仮定した式( )に厳密に従っているのか? • 何かしらの誤差が生じているのか?
レポートの文章構成(IMRAD): Discussion 2/2
• DOs and DON’Ts
• 最初に検証したい仮説が確認できたか否か言及 • 観測・計測・解析した結果が何を示すのか解釈する • 結果と理論を照らし合わせる • 単に結果を繰り返し書かない • データから導けない考察を書かない • 期待する結果を基にした考察をしない
レポートの文章構成(IMRAD): Conclusion 1/2
• 研究・実験から明らかになったことは何か? (What have you learned from the study?)
• 導入(Introduction)で提起した問題を基に実験から得られた結論を述 べる
レポートの文章構成(IMRAD): Conclusion 2/2
• DOs and DON’Ts
• 実験を通して学んだ,選んだことを説明
• 導入(Indtroduction)で述べた目的と関連付ける • 実験結果を過度に一般化しない
• 単なる結果の要約にならないようにする
レポートの文章構成(IMRAD): まとめ
1. Introductionで検証する仮説,扱う問題を定義 2. Methodsで仮説の検証方法,問題の解決方法を提案 3. Resultsで得られた結果を提示 4. Discussionで原理,理論と結果を考察 5. Conclusionで全体を俯瞰しつつ目的の達成を確認2016/4/12 レポートの書き方 27
レポート(科学技術文書)のルール
• レポート中の以下の要素に関するルールを確認 • 文 • 記号 • 式 • 図 • 表 • 参考文献 • 研究分野や流派によって微妙に異なるルール 一意な番号を付ける = 本文中から参照するため文
• 敬体(です,ます)ではなく常体(だ,である) • 体言止めは使わない • 客観的な文章(以下はレポート・論文の表現として不適) • 主観(概ね良好,大きい・小さい) • 感情(残念だった,嬉しかった) • 口語(すごく) • ら抜き言葉(見れる,考えれる) • 「レポート 表現」などのキーワードで検索してみよう 29 2016/4/12 レポートの書き方文
• 主語と述語が対応する文 • 一つの文で一つのコトを説明 • 長い文は構造が複雑になりやすい = 曖昧な文章,非論理的な文章になりやすい句読点の統一(特 にPCを使う場合)文
• 時制に注意 • 目的や理論は現在形 ← 不変の事実 • 方法,結果は過去形 ← 自分が実際に行った事実 31 2016/4/12 レポートの書き方数値(単位)
• 物理量 = 数値 x 単位 • 単位: ある物理量の基準となる量を表す • 数値: 単位に対する大きさを表す • 数値と単位の間にスペースを挿入 • 1.0mではなく1.0 m • 物理量を表す記号は斜体,単位記号は立体で書く • 長さ は1.03 m • 質量 は50.3 kg • 時間 は0.3 s数値(単位)
• SI単位系 = 7個のSI基本単位 と 22個のSI組立単位
33 2016/4/12 レポートの書き方 物理量の名称 記号 単位名称 単位記号 時間 second s 長さ meter m 質量 kilogram kg 電流 ampere A 熱力学温度 kelvin K 物質量 mole mol 光度 candela cd 表. SI基本単位
数値(有効数字)
• 異なる数値の桁を揃える • パラグラフ,表,実験,章の中で統一 表2. 有効数字の統一 (a) 未統一な表 (b) 統一をとった表 電流 [mA] 電圧 [mV] 0 0.853 8 80.98 16 160.3473 24 240.5 32 320.416 40 400.377 48 480.91 電流 [mA] 電圧 [mV] 0 0.8538 8 80.9860 16 160.3473 24 240.5501 32 320.4166 40 400.3775 48 480.9140記号
• 初出時に何を表す記号なのか定義 • 一つの文書中で変数の表記の統一をとる • 一つのものを表すのは一つの変数 • 一つのものを表す変数を複数定義してはいけない • 一つの変数に複数のものを割り当ててはいけない 35 2016/4/12 レポートの書き方記号
• 一般的な変数を使う
• 同種のものは同一変数で表し,違いは下付き・上付き添え字で表す • 変数で表したい物理量やオブジェクトと関連がある,想起し易い変数
記号(書体)
• 物理量や変数を表す記号はイタリック体 • 物理量や変数を表す記号はイタリック体 • スカラーはイタリック体,ベクトルは小文字太字イタリック体,行列, テンソルは大文字太字イタリック体と書き分ける人もいる • 定数や演算記号,単位はローマン体 37 2016/4/12 レポートの書き方式
• 式は文章の一部 • Good • Bad (1) (1)式
• 式番号を割り当てる • 特に計算結果について言及する時に,どの式を使って計算した か明確にするため • 式番号が無い式は参照が難しい • Good: 式(3)を使って... • Bad: Nページ目のM番目の式を使って... 39 2016/4/12 レポートの書き方図・表
• 文章以外の情報の伝達方法 • 間違いなく識別できるように一意な図/表番号を割り当てる • 次の図/表に・・・を示す ← どれ? • 図1/表1に・・・を示す • 図・表を通して伝えたい内容を読者が正しく推測できる保証はない • 図・表が何を示しているのか,何に注目するべきなのか,どのように 解釈できるのか必ず記載 • 図1に…を示す.図が示すように,Aが確認できる ← 図の何? • 図1に…を示す.Bが徐々に増加していることから,Aが確認できる図
• 図番号を割り当てる • 図番号とキャプションは図の下部に表示 41 2016/4/12 レポートの書き方 図1 変圧器の簡易等価回路図図
• 文章中で必ず説明する
• 「図 1 に,変圧器の簡易等価回路図を示す....」
図(グラフ)
• 図の描き方のルールは同じように適用される • 図番号を割り当てる • 図番号とキャプションは図の下部に表示 43 2016/4/12 レポートの書き方図(グラフ)
• 軸のラベル (何を表している軸なのか) を書く
• 軸の目盛りと数値を書く (数値がどのように変化しているのか (線形 なのか指数関数的なのか) 読者は分からない)
図(グラフ)
• 複数のデータを一つのグラフに載せるときは,プロット (マーカ) の色 や形状を変え,凡例に各プロットが何を表すのか描くなどする.
45 2016/4/12 レポートの書き方
図(グラフ)
• 計測・計算したデータのプロットと近似直線・曲線の区別をつける • プロット = 実際に計測した値 • 近似直線・曲線 = 実際に計測していない値 : 無負荷電流 : 鉄損 電流[A] 電力[W]図(グラフ)
• プロットが無いグラフ = 何も計測していない? 47 2016/4/12 レポートの書き方 : 無負荷電流 : 鉄損 40 80 120 0 電流[A] 電力[W] 図3 無負荷試験結果.青×印は無負荷電流,赤○印は鉄損を表す.図(グラフ)
• 近似直線・曲線 • 意味があるなら書く(書かなければいけないわけではない) • 直線 or 曲線(何次曲線?指数?対数?) ? : 無負荷電流 : 鉄損 電流[A] 電力[W]表
• 表番号を割り当てる • 表番号とキャプションは表の上部に表示 49 2016/4/12 レポートの書き方 表3. 実画像実験結果.単位はpixel表
• 列毎にタイトルをつける
• 列毎に単位をつける(キャプションに記載しても良い) • 有効数字の統一
表
• 本文中で必ず説明する. • 「時定数の測定結果及び理論値と測定値の誤差を表1に示す. 抵抗値の上昇とともに理論値,測定値とも…」 51 2016/4/12 レポートの書き方表(罫線)
• 最小限にとどめる
参考文献
• 各文献を参照 · 引用する箇所に,参照・引用する文献を表す記号を 記載 • 文末に参考文献一覧を記載 • 例 • Spectral法[3]はこの問題を二次計画問題として定式化する. • Hungarianアルゴリズム[1,2]によって固有ベクトルを… • 参考文献 53 2016/4/12 レポートの書き方参考文献
• 参考文献を記載する理由
• 他者の主張やデータ,貢献に対して,「誰がどのような形式で」発 表したものなのか明らかにするため
その他
• 必ずページ番号を付ける(グラフ用紙にも) • 提出時にページが抜け落ちても分かる
55 2016/4/12 レポートの書き方
レポート作成におけるポイント
• あらかじめPCで下書きすると文章を練れる • 実験開始までに以下をまとめると実験を円滑に行え,データの計測 忘れなどを防げる • 実験目的 • どのような仮説を検証するのか? • 実験方法 • 実験テキストの要点をまとめ,無駄のない作業をする • 使用する装置・機器の型番などは当日調べる • 実験結果 • 実験時間中に行わなければいけない作業と実験後に行って も大丈夫な作業を区別 • 解析・計算するプログラム(Excelなど)を準備 • あらかじめグラフを準備 2016/4/12 レポートの書き方 57最終確認
• 表紙 • ページ番号 • 書き方(ルールは守れているか) • 式 • 図(グラフ) • 表 • 抜けは無いか(特に手書きのグラフ) 2016/4/12 レポートの書き方 59再レポート
• 修正箇所が一目で分かるように明記 • 修正項目一覧 • ① 表1にキャプションを追加 • ② Mページ目,下部に参考文献[2]への参照を追加 • 修正箇所に修正項目を強調①
2016/4/12 レポートの書き方 61
表計算ソフト
• 実験中,実験後のグラフ作成で表計算ソフトを使う事があります • Excel (MicroSoft Office)
• 有料 • LibreOffice
• オフィススイート(MicroSoft Officeと同じ) • 無料
• Writer ≒ Office Word
• Calc ≒ Office Excel
• Impress ≒ Office PowerPoint • Draw ≒ Microsoft Publisher
参考書
• 実験レポート作成法
• 著:Christopher S. Lobban,Maria Schefter • 訳: 畠山 雄二,大森 充香 • 丸善出版 • おすすめポイント • 実験結果のまとめ方 • 考察の書き方 • 論文・レポートの添削例 2016/4/12 レポートの書き方 63