特集 – 画像による自動認識の物流分野での可能性
近年、デジタル画像(静止画・動画)の認識技術が急激な発達を遂げつつある。消費者にとっ て最も身近な例の一つは、デジタルカメラのオートフォーカス機能がここ数年で顔認識に、 そして笑顔認識や特定人物認識へと進化を遂げてきたことだろう。 筆者はこの画像認識技術の進歩が物流分野での自動認識の利用方法を大きく変えていく可 能性があると考える。本稿では、画像認識が可能にする新たな自動認識の用途、その中で 利用されうる識別情報とその現状について簡単に述べる。 【画像認識技術の物流現場への影響】 画像から認識情報を取得する技術が普及した場合、物流分野に与えるインパクトには以下 のようなものがある。 ※器材コストの低下 画像認識を用いて識別情報を取得する方法は、RFID や従来型バーコードと比較して以下の 2 つの理由でコスト削減が可能である。 多くのビジネスケースにおいてタグ・リーダー共に他の業務で利用しているものと共 用が可能である。 中核部品が民生品として大量生産が行われているため、価格の低下や性能の向上が期 待できる 前者は、タグは既存のバーコードラベル同様に印刷で作成することができ、リーダーはセ キュリティ用のネットワークカメラと共用できるということである。 後者は、画像による自動認識は民生品として物流業界専用のものよりはるかに多くのベン ダーが力を入れている部分であり、競争による性能向上や大量生産による価格低下が見込 みやすいということである。 ※画像情報との統合 画像から認識情報を読み取る場合、読み取った情報が何についてのものかを確認できるこ とが大きなメリットになる。 最も単純なケースとして読み取りタグの確認がある。Gen2 タグによる長距離読み取りでは予想していない場所にあるタグが読めてしまう場合があるが、読み取りの中から意図した 読み取りエリアに存在するものとそうでないものを区別することは難しい。これに対し、 画像認識の場合には画像上に何がどの識別番号で読めているかが表示されるので、何か意 図しないものがカメラに写り込んだ場合にも画像を見れば直ちに判別できる。 画像情報は更に高度なソリューションにも利用できる。例えば、現在市場にあるネットワ ークカメラのソリューションとして、生産ラインに何か問題があったときに関連する映像 を表示して問題解決に役立てるというものがある。現在は問題が発生した時間・場所を指 定することで画像を表示させているが、シリアル番号をキーとして画像に含まれる自動認 識情報を検索することが可能になればトレーサビリティーなどの面で非常に強力なソリュ ーションとなりうる このように画像から認識情報を取得するソリューションは「自動認識」という概念自体を 変えてしまう可能性がある。従来の自動認識技術は以下の 2 つの区分のいずれかに分類す ることができる: バーコードのように人がかざして読み取りその結果と共に対象の状態を確認する RFID のように長距離自動を読み取りを行えるが読んだものの状態は確認できない これに対し、高解像度画像からの自動認識情報の読み取りでは読み取った状況が画像とし て残されている。よって、その画像を読み取りの証拠とでき、「人手を解さない自動読み取 りでありながら証拠性も持つ」という性質を持つことが出来るのである。 ※位置情報の取得 画像を用いた自動認識では、画像中の自動認識情報の大きさや角度からカメラとタグとの 相対位置を知ることができる。電波や超音波を用いた三点測量では最低 3 つの測定器が必 要となるのに対し、画像を用いれば一つのカメラで測定が出来ることが有利な点である。 位置や設置角度が分かっている固定式のカメラであればそれだけで対象の位置を知ること が可能であるし、移動式のカメラであっても、撮影エリアの立体モデルを事前に準備して おくか位置測定用の補助タグを設置することで、撮影対象とカメラ自身の位置情報を取得 することが出来る。 これにより、認識情報、画像情報に加え位置情報までを画像という同一のインフラで扱う ことが出来るようになる。 ※高速な読み取り
現時点では RFID と比べた画像認識情報の読み取り速度は数百倍遅い。だが、RFID の読 み取り速度は基本的には無線の通信速度に依存するのに対し、画像認識の読み取り速度は 演算能力に依存する。そして、演算能力は今後の技術進歩にしたがって確実に向上してい くのに対し、無線の通信速度は一旦規格が制定されるとその規格が存在する限り進歩が止 まってしまう。 また、RFID による読み取りと画像認識による読み取りの違いは、RFID による読み取り はデータ取得時点ですべてのデータを読み取る必要があるのに対し、画像認識による読み 取りはデータ取得後、必要になった時点で必要な画像だけを読み取ることも可能である。 このため、リアルタイムのデータ取得が不要な用途であれば画像からの認識情報のための 読み取り速度の制約は小さくなる。 【画像認識可能な識別情報】 画像認識に使える識別情報としては以下のようなものがある。 ※カラーバーコード 名前の通り 2 色(背景色を含めると 3 色)以上の色を利用したバーコード。色数が増えること でデータ量を増やせることが最大の特徴だが、背景色とデータ部分の色を区別して扱える ためボケや滲みに強いというのも動画からの自動認識で利用する場合には非常に重要な要 素になる。 カラーバーコードにはさまざまな規格が存在する。多くの色を複雑なルールで組み合わせ ると表現できるデータ量は多くなるが、その分悪環境(退色、影の映りこみ、ボケなど)に弱 くなる。現時点ではデータ量の多さを訴求点とする規格が多く、それら規格は携帯電話や スマートフォンでしっかりとフォーカスを合わせて撮影しデータを取り出すという使い方 を主に想定している。 カラーバーコードのうち物流現場を含む悪環境での利用を想定しているのはビーコア社の 「カラービットコード」とシフト社の「カメレオンコード」であるが、両社とも物流分野 への本格的な導入はこれからという段階にある。 ※在来型バーコード・文字 従来は動画や通常の静止画からの認識が難しかった在来型バーコード(リニア・2D)、および
文字情報を読み取り、自動識別に利用するという手法である。物流現場で利用される管理 対象には人間が認識できるラベルが取り付けられていることが一般的であり、それをその まま中長距離自動認識に利用できれば非常に有用である。 ※イメージそのもの イメージそのものを識別情報にするということは、例えば識別対象に付いているロゴ、あ るいは識別対象の形状そのものを利用するということである。例えば店舗での利用シーン では、個々の顧客の性別や年齢を識別した上で個々の顧客を区別した動線分析、技術によ っては視線の向きまでを踏まえて分析対象とすることが可能になる。 一方で、物流現場では外見がほとんど同じものを扱うことが多く、通常は同種の製品群の 中での個体識別は困難である(色むらや形状変化が発生するような対象であれば理論的には 個体識別が可能となるかもしれない)。種類の識別と感覚的な外観検査を組み合わせた用途 で、何らかの個体識別情報と組み合わせて利用されることが多くなるであろう。
RFID 関連ニュース
プロダクト [ハードウェア] Motorola 社は軽量型の Gen2 ハンドヘルドリーダーMC3090-Z を発表した。この製品や店舗 やオフィスなどで利用されることを想定したもので、重量が 650 グラムと同社従来製品よ り軽量、読取距離 1~3 メートルに特化した全方位アンテナを持ち、タグの位置を検知する 機能を搭載している。北米版は 1 月 24 日発売予定で価格は 3,395 ドル、ヨーロッパ版は同 価格で 2010 年中に発売が予定されている。日本版の発売は未定。 [ソフトウェア] チューリッヒ工科大学のオート ID ラボでは EPCIS データのボリュームを見積もるツールを 作成した。EPCIS データは大量に発生し、毎週 300 枚のパレットが入庫する平均的なスーパ ーでのすべてのイベントを記録した場合には毎日 15 テラバイトのデータが生成されるとい う見積もりもある。このため、古いデータを削除したり、使わなくなったデータを圧縮し たりという作業が必要となる。システムの利便性を落とさずにどこまでの圧縮が必要にな るかを分析する際にこのツールは有効な手段となる。 ソリューション [パッシブ]RFID ソリューションプロバイダーODIN Technologies 社は航空手荷物タグの実環境を想定 したテストを実施し、レポート"RFID Baggage Tag Benchmark"を作成した。このテストによ ると、6 種類のタグがアメリカ・ヨーロッパ・日本の 3 周波数帯のテストで読み取り率 100 パーセントを達成した。ODIN 社の推定では、インフラ投資に 20 万ドルが必要な標準的な 空港では 18 ヶ月で投資を回収できる。レポートの価格は 995 ドルで同社サイトから購入で きる。 フランスの高級アパレルメーカーであるセルジュ・ブランコ社はトゥールーズの物流セン ターでの検品に RFID を利用している。具体的なビジネスプロセスは、同社がサプライヤー にオーダーを出す際に対応する Gen2 タグ内蔵の値札を送付し、サプライヤーはそのタグを
取り付けて納品、物流センターのゲートに設置した RFID リーダーで検品を自動的に行える というものである。 [アクティブ・RTLS] 大手化学メーカーBASF 社は北米で利用している貨車の動性を衛星電話タグで管理してい る。現在同社は 7000 両の貨車のうち危険品を扱う 1000 両が対象で、危険度が比較的低い 品物を扱う貨車には低軌道衛星電話と GPS に加えて衝撃・振動計を、危険度が高い貨車に ついてはそれに加えて温度計と蓋の開封検知センサーが取り付けられている。BASF 社が衛 星電話タグを用いる理由は 2 つあり、一つはコスト削減で貨車の有効利用による台数削減 や位置のきめ細かな把握による注射料金の削減、もう一つは危険の防止や危険品取り扱い 記録の当局への届出です。 スペインのビゴ市の鉄道トンネル建設現場では、作業者の位置確認と安全対策のために RTLS システムを利用している。利用中の製品は Ekahau 社の T301BD で、2.45GHz WiFi に よって位置測定が出来るだけではなく、タグに表示エリアを持っておりテキストメッセー ジの送信が可能である。 規制・標準化
メキシコ湾で操業するエネルギー企業が RFID ベンダーや大学と共同で Oil & Gas RFID Solution Group (OGR)という団体を設立した。OGR は海上のオイルリグなどでのアセット管 理に RFID を利用することを目的としており、ユースケースの開発や標準化などに取り組ん でいる。