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132 四辻伸吾 水野治久 かについて調査している この研究では, 学外者である大学生が複数のスタッフで小学校において, 小学校 6 年生 3 学級 ( 各クラス30 名程度 ) を対象に,SGEを1 単位時間 (45 分 ) 行った 実施前にリーダーと参加児童とのリレーション構築に差異をつけ実施さ

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児童の理想的学級像認知の視点で捉えたSGEとSSTの効果

よつ

つじ

 伸

しん

ご*

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みず

 治

はる

ひさ** *附属平野小学校・**学校教育講座 (平成25年8月31日 受付)  本研究では,児童の所属する学級がどのような状態であれば,児童にとっての理想の学級と考えられるのかを把握する理想的 学級像認知を媒介変数として,構成的グループ・エンカウンターとソーシャルスキル・トレーニングの連続的な取り組みが児童の スクール・モラールにどのような影響を及ぼすかを検証したものである。検証のための実践として,小学校6年生児童31名に構成 的グループ・エンカウンターを8単位時間とソーシャルスキル・トレーニングを8単位時間行なった。その結果,児童の理想的学 級像認知そのものの有意な変化は見られなかったが,児童の理想的学級像認知尺度,<まとまりに関する理想>因子の下位尺度 得点が高いグループは,低いグループに比べて,スクール・モラール尺度,<学習意欲>因子の下位尺度得点が有意に上昇してい た。これらより,児童が所属する学級について<まとまりに関する理想>を高く持っている児童には,構成的グループ・エンカウ ンターとソーシャルスキル・トレーニングの連続的な取り組みが,児童の<学習意欲>を有意に高めるのに効果的である可能性が 示唆された。 キーワード:理想的学級像認知,構成的グループ・エンカウンター,ソーシャルスキル・トレーニング Ⅰ 問題と目的 本研究は,構成的グループ・エンカウンターとソーシャルスキル・トレーニングの取り組みが児童のスクー ル・モラールにどのような影響を及ぼすかについて,児童の理想的学級像認知の視点で捉えたものである。 近年,教育現場では,「学級崩壊」や「いじめ」,「不登校」など様々な課題が山積している。これらの教育 問題を予防,解決するための教育的アプローチとして,構成的グループ・エンカウンターとソーシャルスキ ル・トレーニングが注目されている。

構成的グループ・エンカウンター(Structured Group Encounter,以下,SGEと略記する)は,子ど も同士の人間関係の改善に寄与する体験的な学習であり,ソーシャルスキル・トレーニング(Social Skills Training,以下,SSTと略記する)は,人間関係に必要なスキルの学習をするためにデザインされたワーク である。 SGEは,1975年に國分によって提唱されたもので,集団の成員がエクササイズを介して相互に自己開示を して新たな自己発見をする集中的グループ体験の一つである。國分(1992)はSGEを「ありたいようなあり 方を模索する能動的な方法として,エクササイズという誘発剤とグループの教育機能を活用したサイコエデュ ケーション」と定義している。 河村(2001)は,SGEが学級のスクール・モラールにどのような影響を与えるかについて調査している。 それによると,学級経営にSGEのプログラムを活用した実験群と,プログラムが活用されなかった統制群の 2つの学級集団において,実験群の児童のスクール・モラールの学級平均値が有意に向上したことが認められ ている。 久能ら(2006)は,大学生が小学生に対してSGEを実施することで,学級集団,児童個人に変化があるの

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かについて調査している。この研究では,学外者である大学生が複数のスタッフで小学校において,小学校6 年生3学級(各クラス30名程度)を対象に,SGEを1単位時間(45分)行った。実施前にリーダーと参加 児童とのリレーション構築に差異をつけ実施された。これについて「人間関係尺度」(國分ら,1987)を用い, 得られた結果を分析したところ,すべての学級で有意差が見出され,特にリレーションを実施前に深められた 学級でその変化が著しかった。 また,学校適応に関する予防的・開発的援助のひとつの方策として,近年,SSTの視点からもさまざまな 検討がなされている。ソーシャルスキルとは,「良好な人間関係をつくり保つための知識と具体的な技術やコ ツ」(相川,1999)である。SGEがエクササイズを通してのグループ体験における心と心のふれあいに焦点 を当てるのに対して,SSTは体験を通して人間関係をより円滑にするための技能を身につけるものだと考え られる。

藤枝・相川(1999)は,King & Kirschenbaum(1992)が提案した社会的スキル訓練モジュールの中から 6つの社会的スキル(積極的な聞き方,暖かいメッセージ,感情を分かち合う,自分を守る,自己コントロー ル,社会的問題解決)を選択し,小学校3年生〜6年生の児童に学級単位で指導した。それぞれ社会的スキル の内容を5項目〜9項目の質問紙にして,訓練効果の指標とした。彼らの研究で分析対象となった4つのスキ ル(積極的な聞き方,暖かいメッセージ,感情を分かち合う,自分を守る)について,指導の効果を検討した ところ,「積極的な聞き方」「感情を分かち合う」の2つのスキルには,訓練による得点の増加が認められ,ま た「自分を守る」スキルには,5年生のみに訓練後の得点増加が見出された。 また,河村ら(2007)は,「ソーシャルスキルを効果的に活用している子どもたちは,友人との交流も活発 で学級生活の満足度が高くなる」「子どもたちがソーシャルスキルを積極的に活用している学級では,学級が 親和的で建設的にまとまっていく」ことをふまえ,「学級生活で必要とされるソーシャルスキル(Classroom Social Skill)を開発した。「学級生活で必要とされるソーシャルスキル」は「配慮のスキル」と「かかわりの スキル」から成り立っていて,低学年・中学年・高学年と系統だってソーシャルスキル・トレーニングができ るように構成されている。 以上のように,SGEとSSTについての先行研究は様々な形で散見するが,ほとんどの場合はSGE及び SSTそれぞれ単独での実践が多い。しかし,SGEで重視される心と心のふれあいとSSTで学ぶ人間関係 を円滑にするための技能は,児童が学校教育現場においていずれも必要不可欠な要素であり,SGEとSST の両方が実践されることが望ましいと考えられる。 四辻・水野(2010)は,SGEとSSTを,小学校高学年児童48名に対して行ない,その取り組みが児童 のスクール・モラールと自尊感情に対してどのような影響をあたえるかについての調査を行なった。その結果, SGEとSSTの連続的な取り組みが,学校の集団生活ないし諸活動に対する帰属度,満足度,依存度などを 要因とする児童生徒の個人的,主観的な心理状態であるスクール・モラール(小川,1979)の<学級雰囲気> 因子及び自尊感情を有意に高めるのに有効だとしている。 しかし,SGEとSSTを連続的に実施し,その結果,児童のスクール・モラールに対して有効であったと しても,これには児童が実際にどのような取り組みを望んでいるのか,どのような学級を望んでいるのかとい う視点に欠けている。浦野(2001)は,「学級崩壊」などに代表される学級の荒れという現象が「子どもと教 師の関係性の中に潜む食い違いやズレに気付かないことに端を発することが多いのではないか」と指摘してい る。子どもと教師の関係性の中に「ズレ」が存在しているならば,教師が子どもの実態を把握し,その実態に 即したアプローチをすることが,「学級崩壊」などに代表される教育的課題の解決への第一歩となると考えら れる。本来,教育的アプローチは,そのアプローチを行う対象である児童が現段階においてどのような状態で あるかを把握し,それによりどのような状態に変容していくことが望ましいかについて見通しを持つことで展 開していく必要があるであろう。 そこで本研究では,児童の理想的学級像認知に焦点をあてることにする。四辻・水野(2013)は,その子ど もと教師の関係性の中に潜む「ズレ」について,児童が自分の所属する学級がどのような学級であってほしい かについて教師が十分に把握できていないことに着目し,児童の「理想的学級像認知尺度」を作成した。「理 想的学級像認知尺度」は,所属している学級がどのような状態であれば,児童にとって理想の学級と考えられ るのかについて把握するものであり,「理想的学級像認知」には,<まとまりに関する理想>,<学習・規律

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に関する理想>,<人間関係に関する理想>,<楽しさに関する理想>の4つの因子があると指摘している。 さらに,「理想的学級像認知」と「スクール・モラール」についての関連を調べるため,質問紙調査を行ない, 理想的学級像認知,<人間関係に関する理想>が,スクール・モラール,<学級の雰意気>,<級友との関係 >に対して,正の影響力,理想的学級像認知,<学習・規律に関する理想>,<まとまりに関する理想>はス クール・モラール,<学習意欲>に正の影響力があることを明らかにした。 スクール・モラールは,<学級の雰囲気>,<級友との関係>,<学習意欲>という3つの下位尺度因子 からなることから,学級における児童生徒の主観を捉えたものであると考えられ,河村(2001)や四辻・水 野(2010)などの先行研究により,SGEやSSTの取り組みより有意に高めることができることが示唆され ている。一方,四辻・水野(2013)の指摘のように,スクール・モラールは児童の理想的学級像認知の影響を 受けており,当該児童が自分の所属する学級においてどのような理想を持っているかによって,スクール・モ ラールの持ち方に違いがあると考えられる。 本研究では,児童の理想的学級像認知における各下位尺度得点の高低によって,SGEとSSTの取り組み がスクール・モラールの3つの下位尺度得点に及ぼす効果にどのような違いが見られるかどうかについて検討 する。先行研究によりスクール・モラールを有意に上昇させるのに有効であると考えられるSGEやSSTの 取り組みが,児童の理想的学級像認知の程度によって効果に差が見られるのであるならば,SGEやSSTの 取り組みが有効である児童においてはその取り組みをさらに充実させる必要があると考えられ,またSGEや SSTの取り組みが有効だとはいえない児童については新たな教育的アプローチを考えていく必要があると推 察される。本研究では,そのような児童の実態に応じた教育的アプローチを計画するための一助を担うことが できればと考える。 Ⅱ 方法 1 調査時期 2008年9〜 11月に学級集団単位で実施した。 2 対象者 大阪府内の小学校6年生,A学級31名を対象に実践及び調査を行った。 3 実験計画(Table 1参照) 介入前テスト,介入①,SGE後テスト,介入②,SST後テストの5つの部分からなる。 Table 1 プログラム実施計画 実施日 調査・介入の内容 1 10月8日  プレテスト(理想的学級像認知尺度・スクールモラール尺度) 2 10月8日〜10月17日  介入①(構成的グループ・エンカウンター)(45分×8時間) 3 10月17日  SGE後ポストテスト(理想的学級像認知尺度・スクールモラール尺度) 4 10月20日〜10月29日  介入②(学級ソーシャルスキル・トレーニング)(45分×8時間) 5 10月29日  SST後ポストテスト(理想的学級像認知尺度・スクールモラール尺度) 4 介入前テストについて 四辻・水野(2013)が作成した理想的学級像認知尺度の4因子16項目(Table 2-1),狩野・田崎(1985)が 作成したスクール・モラール尺度を児童が答えやすいように文章表現を訂正したもの,3因子9項目を使用し た(Table 2-2)。理想的学級像認知尺度の教示文は「あなたが自分のクラスのことを,このクラスは最高のク ラスだと思えるためには,どんなクラスであればいいと思いますか。あてはまる数字に○をつけてください」 であり,5件法(「5:とてもそう思う」「4:そう思う」「3:どちらでもない」「2:あまりそう思わない」 「1:そう思わない」)で回答が求められた。スクール・モラール尺度の教示文は,教示文は「あなたのクラス

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について質問します。あてはまる数字に○をつけてください。」であり,5件法(「5:とてもそう思う」「4: そう思う」「3:どちらでもない」「2:あまりそう思わない」「1:そう思わない」)で回答が求められた。 Table 2-1 理想的学級像尺度項目 Table 2-2 スクール・モラール尺度項目 因子 スクール・モラール尺度 (本研究用) スクールモラール尺度(狩野・田崎,1990) 学級の雰囲気 1.わたしのクラスは明るく楽しい クラスだと思う 1.あなたの組は明るく楽しい組だと思いますか 2.わたしのクラスはよくまとまっ ていると思う 2.あなたの組はよくまとまっていると思いますか 3.わたしのクラスの人たちは,協 力的で助け合っていると思う 3.あなたの組の人たちは,協力的で助け合っていると思いますか 級友との関係 4.わたしのクラスの人たちはみん なあなたに親切にしてくれる 4.あなたの組の人たちはみんなあなたに親切にしてくれますか 5.わたしは,クラスの人たちから 好かれていると思う 5.あなたは,組の人たちから好かれていると思いますか 6.わたしのクラスには,あなたの 尊敬する友達がいる 6.あなたの組には,あなたの尊敬する友達がいますか 学習意欲 7.勉強していてわかってくると楽しいと思う 7.勉強していてわかってくると楽しいと思いますか 8.授業中,先生にあてられるのは 好きだ 8.授業中,先生にあてられるのは好きですか 9.もっと勉強して良い成績をとろ うと努力している 9.もっと勉強して良い成績をとろうと努力していますか 学習・規律に関する理想 1.自習時間に静かに学習できるクラスであれば よい 2.授業中はまじめに,集中して受けることがで きるクラスであればよい 3.みんながそうじを一生けん命するクラスであ ればよい 4.楽しむときは楽しむ,まじめにするときはまじ めに,とメリハリがあるクラスであればよい まとまりに関する理想 5.みんながクラス全体のことを考えているクラ スであればよい 6.全体遊びをすることができるクラスであれば よい 7.先生がいなくても自分たちで考えて行動する ことができるクラスであればよい 8.学級会などで自分たちのことについて真剣に 考えることのできるクラスであればよい 人間関係に関する理想 9.やさしく思いやりがあり,お互いのことを気 づかうことのできるクラスであればよい 10.みんながお互いのことをよく知っているクラ スであればよい 11.男女の仲がよいクラスであればよい 12.みんなが明るく,よく笑うクラスであればよ い 楽しさに関する理想 13.授業中に必ずみんなが一度は笑うクラスであ ればよい 14.週に一度はお楽しみ会をするクラスであれば よい 15.お楽しみ会で盛り上がることのできるクラス であればよい 16.他のクラスにはない自分たちだけの楽しみが あるクラスであればよい 5 介入①について (1)SGEの手続き 小学校6年生の総合的な学習の時間の取り組みの一環としてSGEを行なった。SGEの展開は,國分ら (1997)にもとづいて,インストラクション,ウォーミングアップ,エクササイズ,シェアリングという流れ で行った。 (2)SGEのエクササイズの選定 國分ら(1997)によるSGEから8種類(各45分)のエクササイズを行った。SGEのエクササイズには, 「自己理解」「他者理解」「自己受容」「信頼体験」「感受性の促進」の五つを目的としたものがあるが,介入① は,理想的学級像認知尺度,<人間関係に関する理想>因子に対するアプローチであることから,「他者理解」 「自己理解」を目的としたエクササイズを中心に選定した。選定したエクササイズはTable 3–1に記した(Table 3–1参照)。 6 SGE後テストについて 介入①の終了後,介入前テストと同様に,理想的学級像認知尺度の4因子16項目(四辻・水野,2012),ス クール・モラール尺度の3因子9項目を使用し(狩野・田崎,1985),調査を行なった。以下,この調査を SGE後テストと記す。 7 介入②について (1)SSTの手続き SGEと同じく,小学校6年生の総合的な学習の時間の取り組みの一環としてSSTを行なった。河村ら (2007)に基づき,「教示」,「モデリング」,「ロールプレイ(リハーサル)」,「強化」という流れで行った。

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(2)SSTの選定 河村ら(2007)による学級ソーシャルスキルから,8種類のSST(各45分)を行った。 学級ソーシャルスキルは,「学校生活のスキル」,「集団活動のスキル」,「友達関係のスキル」からなるが, 介入②は「理想的学級像認知」<学習・規律に関する理想>に対するアプローチであることから,「学校生活 のスキル」,「集団活動のスキル」に関するSSTから選定した。 SSTのエクササイズの内容はTable 3-2に記した。 8 SST後テスト②について 介入②の修了後,介入前テスト,SGE後テストと同様に,研究2で使用した理想的学級像認知尺度の4因 子16項目(四辻・水野,2013),スクール・モラール尺度の3因子9項目(狩野・田崎,1985)を使用し,調 査を行なった。以下,この調査をSST後テストと記す。 Table 3–1 構成的グループ・エンカウンター実施計画 実施日 エクササイズ名 背景となる理論 内容 1 10月8日 私が見つけたグアナコ(赤川,1997) 信頼体験 謎の生物「グアナコ」がどんな生物なのかを予想し,発表し合う。似た考えの人同士がグループになり,さらにイメージをふくらます。みんなで発表し合い感想を述べる。図工で制作につなげる。 2 10月9日 (朝日,1997)友達大好き 他者理解 二人組になり,十の質問について一人は,自分のこと,もう一人は相手のことを答える。答え合わせをし,役割を交代して繰り替えす。次に自分について,友だちを好きだと思うときを書き,発表する。 3 10月10日 (服部,1997)友達発見 他者理解・自己理解 プリントの条件に当てはまる友達をインタビューしながら探す。きまりは四つ。①男女両方に質問すること。②一人に一つに質問しか聞けないこと。③同じ人の名前を二カ所に書けないこと。④自分の名前を書いてもいいこと。 4 10月14日 (朝日,1996)私はわたしよ 他者理解・自己理解 各自,紙に名前と自分の個性や自分だけの経験などを三つ書く。回収し教師が一人一人の書いたものを読み上げる。読まれたものがだれものか予想して,別の紙にその名前を書く。読み終えたら答え合わせをする。 5 10月15日 (服部,1996)無人島SOS 他者理解・自己理解 自分が無人島に遭難したという設定で,生き抜くために,または脱出するために必要な道具を,十七品目のうちから,八つ選ぶ。話し合って必要な順番つけ,選定理由を発表し合う。 6 10月16日 ブレーンストーミング(城崎,1996) 自己理解・他者理解 四〜六人のグループで「割り箸の使い方」について,思いつくかぎりの案を考え,出し合う。このとき,友達の意見を否定したり,批判したりしないようにする。 7 10月16日 してもらったことしてあげたこと (朝日,1996) 他者理解 「友達・家族・先生」などの「人にしてもらったこと・人にしてあげたこと」を思い出し,ワークシートに記入する。それを五〜六人のグループで発表する。印象に残った発表を覚えておく。 8 10月17日 何がいじめなの?(金子,1997) 他者理解 六人程度の班をつくる。八つの行為についていじめの度合いを自分で判定する。班で度合いを判定するために,前半は自己主張,後半は強調の方向で話し合う。結果を発表,質疑応答する。もう一度,自分の判定を出す。 Table 3–2 学級ソーシャルスキル実施計画 実施日 学級ソーシャルスキル 内容 1 10月20日 授業の準備・後片づけ(及川,2007) ・授業の準備・後片付けの仕方を説明する ・授業の準備・後片付けを体験させる。 ・準備や後片付けを早くする作戦を話し合う。 ・忘れ物をしたときの行動を練習させる。 ・活動を振り返る。 2 10月21日 授業中での発言の仕方(松岡,2007) ・発言の意義を確認する。 ・発言の仕方を体験させる。 ・活動を振り返る。 3 10月22日 時間を守って行動する(矢沢,2007) ・時間を守れないときの理由を発表させる。 ・守るためにはどうすればよいかを話し合わせる。 ・時間を頭に入れた行動の仕方を体験させる。 ・活動を振り返る。 4 10月23日 朝の会・終わりの会(矢澤,2007) ・朝の会・帰りの会が子どもたち自身のためにあることを確認する。 ・生活を振り返る話し合いを体験する。 ・生活を振り返ることのよさを確認する。 5 10月24日 掃除(及川,2007) ・掃除の仕方を考えることの意義を確認する。 ・掃除マニュアルをつくる。 ・マニュアル使用上の留意点を説明する。 6 10月27日 給食当番(小川,2007) ・給食当番の意義を確認する。 ・給食を準備し,食べ,片付ける。 ・継続して行うことを確認する。 7 10月28日 話し合い(矢澤,2007) ・これまでの話し合いの進め方を確認する。 ・話し合いをスムーズにまとめるコツを体験させる。 ・継続的にスキルを使うことを確認する。 8 10月29日 並ぶ(小川,2007) ・並び方を説明する。 ・子どもたちだけで並び方を練習させる。 ・活動を振り返る。

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Ⅲ 結果 1 スクール・モラール尺度の変化 (1)スクール・モラール尺度の各下位尺度の信頼性について スクール・モラール尺度の下位尺度のα係数は,事前テストにおいて,<学級の雰囲気>は.88,<級友との 関係>は.79,<学習意欲>は.59,SGE後テストにおいて,<学級の雰囲気>は.86,<級友との関係>は.71, <学習意欲>は.76,SST後テストにおいて,<学級の雰囲気>は.93,<級友との関係>は.76,<学習意欲 >は.71であった。事前テストにおける<学習意欲>については十分ではないものの,それ以外の因子につい ては内的整合性が高く,一定の信頼性が示唆されたと考えられる。 (2)「理想的学級像認知」の程度別によるスクール・モラールの変化について(Table 4参照) ここでは,「理想的学級像認知」程度別によって,SGEとSSTの取り組みによる「スクール・モラール」 の変化についてどのような違いがあったかについて検討した。 「理想的学級像認知」の程度別については,四辻・水野(2013)に倣い,「スクール・モラール」<学級の雰 囲気>,<級友との関係>に対して正の影響力が認められた「理想的学級像認知」<人間関係に関する理想 >の程度の度合い,「スクール・モラール」<学習の意欲>に対して正の影響力が認められた「理想的学級像 認知」<学習・規律に関する理想>の程度の度合い,「スクール・モラール」<学習の意欲>に対して正の影 響力が認められた「理想的学級像認知」<まとまりに関する理想>の程度の度合いの3つの視点で,介入① (SGE),介入②(SST)が「スクール・モラール」をどのように変化させたかを見ていくことにする。ま た,「スクール・モラール」のいずれの因子にも有意な影響が認められなかった「理想的学級像認知」<楽し さに関する理想>については,本研究では着目しないことにする。 Table 4 理想的学級像認知の程度別によるスクール・モラールの変化 スクール・ モラール 理想的学級像認知 H群・L群 尺度得点 主効果 交互作用 事前テスト M(SD) SGE後テストM(SD) SST後テストM(SD) FH群・L群値(多重比較) 事前・SGE後・SST後F値(多重比較) F値 学級の  雰囲気  人間関係に関する理想H群(n=15)人間関係に関する理想L群(n=16) 12.73(3.10) 14.66(0.72) 14.27(1.90)12.69(1.82) 13.63(1.54) 14.00(1.41) 0.64 n.s. 11.18**(事前<SGE後,SST後) 1.14 n.s. 級友との 関係   人間関係に関する理想H群(n=15)人間関係に関する理想L群(n=16) 11.93(3.08) 13.73(1.62) 13.53(2.50)11.44(2.37) 12.43(2.00) 12.75(1.91) 1.14 n.s. 11.55**(事前<SGE後,SST後) 0.69 n.s. 学習意欲 人間関係に関する理想H群(n=15) 12.07(1.94) 13.07(2.12) 13.13(2.13) 4.92**(H群>L群) 6.58**(事前<SGE後,SST後) 0.56 n.s. 人間関係に関する理想L群(n=16) 10.05(2.94) 10.93(2.69) 11.25(2.79) 学級の  雰囲気  学習・規律に関する理想H群(n=16) 12.50(3.01) 14.31( .94) 14.00(2.00) 0.04 n.s. 11.18**(事前<SGE後,SST後) 0.76 n.s. 学習・規律に関する理想L群(n=15) 12.93(1.83) 13.93(1.62) 14.26(1.22) 級友との 関係   学習・規律に関する理想H群(n=16) 11.69(2.93) 13.38(1.63) 13.25(2.49)学習・規律に関する理想L群(n=15) 11.67(2.53) 12.73(2.19) 13.00(1.96) 0.17 n.s. 11.55**(事前<SGE後,SST後) 0.41 n.s. 学習意欲 学習・規律に関する理想H群(n=16) 11.88(2.13) 12.75(2.05) 13.19(1.97) 3.85 n.s. 6.58**(事前<SGE後,SST後) 1.32 n.s. 学習・規律に関する理想L群(n=15) 10.60(2.94) 11.13(2.97) 11.07(2.87) 学級の  雰囲気  まとまりに関する理想H群(n=14)まとまりに関する理想L群(n=17) 12.50(2.95) 14.36( .93) 14.57(1.08)12.88(2.08) 13.94(1.56) 13.76(1.95) 0.25 n.s. 11.18**(事前<SGE後,SST後) 1.54 n.s. 級友との 関係   まとまりに関する理想H群(n=14) 12.29(2.97) 13.86(1.41) 13.93(1.59) 3.65 n.s. 11.55**(事前<SGE後,SST後) 0.16 n.s. まとまりに関する理想L群(n=17) 11.18(2.43) 12.41(2.06) 12.47(2.48) 学習意欲 まとまりに関する理想H群(n=14) 12.21(1.81) 13.21(1.81) 13.86(1.10) 8.85**(H群>L群) 10.937**(事前<SGE後,SST後) 3.61* まとまりに関する理想L群(n=17) 10.47(2.92) 10.94(2.79) 10.76(2.73) 0.90 n.s. *<.05 **<.01 1)<人間関係に関する理想>の程度によるスクール・モラールの変化の違い 介入前調査において,A学級の理想的学級像認知,<人間関係に関する理想>得点の平均値(M=17.52, SD=2.03)を基準に,平均値より低い児童をL群,平均値より高い群をH群とした。 まず,<人間関係に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学級の雰囲 気>の事前テスト,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の 分散分析を行った。その結果,「理想的学級像認知」<人間関係に関する理想>の下位尺度得点のL・H群と スクール・モラール,<学級の雰囲気>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2,58〕 =1.14,n.s)。時期の主効果が有意(F〔2,58〕=11.18,p <.01)であったため,多重比較(Bonffernoni法) を行なった結果,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点は,事前テストの下位尺度得点よりも有意

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に上昇していることが示唆された。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=.64,n.s)。 次に,<人間関係に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<級友との関 係>の事前テスト,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の 分散分析を行った。その結果,理想的学級像認知,<人間関係に関する理想>の下位尺度得点のL・H群とス クール・モラール,<級友との関係>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2,58〕=.69, n.s)。時期の主効果が有意(F〔2,58〕=11.55,p<.01)であったため,多重比較(Bonffernoni法)を行なっ た結果,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点は,事前テストの下位尺度得点よりも有意に上昇し ていることが示唆された。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=.64,n.s)。 また,<人間関係に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学習意欲> の事前テスト,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の分散 分析を行った。その結果,理想的学級像認知,<人間関係に関する理想>の下位尺度得点のL・H群とスクー ル・モラール,<学習意欲>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2,58〕=.56,n.s)。 時期の主効果が有意(F〔2,58〕=6.58,p<.01)であったため,多重比較(Bonffernoni法)を行なった結果, SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点は,事前テストの下位尺度得点よりも有意に上昇しているこ とが示唆された。H群・L群の主効果が有意であり(F〔1,29〕=4.92,p<.01),<人間関係に関する理想> のH群の方が,L群に比べて,スクール・モラール,<学習意欲>因子の下位尺度得点が有意に高いというこ とが示唆された。 2)<学習・規律に関する理想>の程度によるスクール・モラールの変化の違い 介入前調査において,A学級の理想的学級像認知,<学習・規律に関する理想>得点の平均値(M=17.23, SD=2.73)を基準に,平均値より低い児童をL群,平均値より高い群をH群とした。 まず,<学習・規律に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学級の雰 囲気>の事前テスト,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因 の分散分析を行った。その結果,理想的学級像認知,<学習・規律に関する理想>の下位尺度得点のL・H 群とスクール・モラール,<学級の雰囲気>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2, 58〕=.76,n.s)。時期の主効果については先述の通りである。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1, 29〕=.04,n.s)。 次に,<学習・規律に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<級友との 関係>の事前テスト,SGE後テスト,SST後テストの下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因 の分散分析を行った。その結果,理想的学級像認知,<学習・規律に関する理想>の下位尺度得点のL・H 群とスクール・モラール,<級友との関係>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2, 58〕=.41,n.s)。時期の主効果は先述の通りである。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=.17, n.s)。 また,<学習・規律に関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学習意欲> の事前テスト,SGE後テスト,SST後の下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の分散分析を 行った。その結果,理想的学級像認知,<学習・規律に関する理想>の下位尺度得点のL・H群とスクール・ モラール,<学習意欲>の各下位尺度得点に有意な交互作用が認められなかった(F〔2,58〕=1.32,n.s)。時 期の主効果は先述の通りである。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=3.85,n.s)。 3)<まとまりに関する理想>の程度によるスクール・モラールの変化の違い 介入前調査において,A学級の理想的学級像認知,<まとまりに関する理想>得点の平均値(M=17.12, SD=1.67)を基準に,平均値より低い児童をL群,平均値より高い群をH群とした。 まず,<まとまりに関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学級の雰囲 気>の事前テスト,SGE後テスト,SST後の下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の分散分 析を行った。その結果,理想的学級像認知,<まとまりに関する理想>の下位尺度得点のL・H群とスクー ル・モラール,<学級の雰囲気>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2,58〕=1.54, n.s)。時期の主効果は先述の通りである。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=0.25,n.s)。 次に,<まとまりに関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<級友との関

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係>の事前テスト,SGE後テスト,SST後の下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の分散分 析を行った。その結果,理想的学級像認知,<まとまりに関する理想>の下位尺度得点のL・H群とスクー ル・モラール,<級友との関係>の各下位尺度得点に有意な交互作用は認められなかった(F〔2,58〕=.16, n.s)。時期の主効果は先述の通りである。H群・L群の主効果は有意ではなかった(F〔1,29〕=3.65,n.s)。 また,<まとまりに関する理想>,下位尺度得点L・H群を独立変数,スクール・モラール,<学習意欲> の事前テスト,SGE後テスト,SST後の下位尺度得点を従属点数として,対応のある2要因の分散分析を 行った。その結果,理想的学級像認知,<まとまりに関する理想>の下位尺度得点のL・H群とスクール・モ ラール,<学習意欲>の各下位尺度得点に有意な交互作用が認められた(F〔2,58〕=3.61,p<.05)。単純主 効果を分析したところ,<まとまりに関する理想>のL群において有意差(F〔1,16〕=.90,n.s)は認められ ず,<まとまりに関する理想>,H群においては,有意差(F〔2,26〕=10.94,p<.01)が認められた。多重 比較(Bonferroni法)の結果,<まとまりに関する理想>のH群においては,スクール・モラール,<学習意 欲>の下位尺度得点は,事前テストに比べて,SGE後テスト,SST後テストに有意に上昇していた(事前 テスト<SGE後テスト,SST後テスト)。SGE後テストとSST後テストに有意差は認められなかった。 Ⅳ 考察 本研究は,理想的学級像認知の視点で,SGEとSSTが児童のスクール・モラールに及ぼす影響の違いに ついて捉えようとしたものである。 研究結果より,理想的学級像認知,<まとまりに関する理想>のL群に比べて,H群の方が,スクール・モ ラール,<学習意欲>の下位尺度得点がSGEの取り組みによって有意に上昇していた。これより,自分が所 属している学級について,所属する児童みんなで協力体制をとることでき,まとまって行動できることが理想 の学級であると考えている児童ほど,学級の構成員のリレーションを望ましいものへと変化させていく目的で 行なわれたSGEの取り組みによって,学習意欲が高まる可能性があることが示唆された。理想的学級像認知, <まとまりに関する理想>が高い児童は,学級を構成するメンバーがみんなで協力することで,一つの行動を きちんと行うということの大切さを感じていると推察される。<まとまりに関する理想>が高い児童が学級に 所属するメンバー同士のリレーションを高めていくためのアプローチの一つであるSGEを行なったことによ り,自己理解,他者理解の経験をすることにより,学級という集団の中における学習意欲が高まり,ひいては 個人的な学習意欲の向上につながっていったと考えられる。つまり,SGEの取り組みは,理想的学級像認知, <まとまりに関する理想>のH群により有効であると考えられる。理想的学級像認知,<まとまりに関する理 想>のL群については,H群ほど有効であるとはいえず,そのグループの児童のスクール・モラールを高める ためには新たな教育的アプローチを計画していく必要があるということが推察される。 一方,「理想的学級像認知」,<まとまりに関する理想>の程度によって,SGEとSSTの取り組みが「ス クール・モラール」,<学級の雰囲気>,<級友との関係>の下位尺度得点の変化に違いは見られなかった。 また,「理想的学級像認知」,<人間関係に関する理想>,<学習規律に関する理想>の程度の違いは,SGE とSSTが児童のスクール・モラールの3つの下位尺度得点の変化に影響を及ぼさなかった。本実践におい て,「スクール・モラール」については,介入前に比べて,SGE後において,「スクール・モラール」,<学級 の雰囲気>,<級友との関係>,<学習意欲>が有意に高まっていた。四辻・水野(2011)の研究においては, スクール・モラール,<学級の雰囲気>については,SGEの取り組み後に有意に上昇し,スクール・モラー ル,<級友との関係>,<学習意欲>についてはSGEとSSTの連続的な取り組みによって,有意に上昇 したとしている。しかし,本実践においては,スクール・モラールのいずれの因子においても,SGE後に有 意に高められた。児童の「理想的学級像認知」の程度に関係なく,児童のスクール・モラールを高めるために, SGEの取り組みが有効であることが推察される。 國分(1992)は,SGEの効果の一つとして,人間のコミュニケーションの前提となるリレーションの体験 を挙げている。本研究において行なわれた実践では,児童は様々なエクササイズを通じて,自分の気持ちを相 手に伝えたり,相手の気持ちを感じたりするなど自己理解,他者理解,信頼体験の機会に触れることができた と考えられる。学級に所属する児童同士の心の触れ合いを体験することで,信頼関係への一歩となり,それが,

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児童生徒の学級生活への意欲や満足度を測る概念であるスクール・モラールを高めることができたと推察され る。 SSTについては,スクール・モラールのいずれの因子も,SGE後の状態からはさらなる高まりを見せる ことはなかった。これより,「良好な人間関係をつくり保つための知識と具体的な技術やコツ」(相川,1999) であるソーシャルスキルを高める訓練としての位置づけと考えられるSSTの取り組みは,直接的には,児童 のスクール・モラールを有意に高めるのにはつながらない可能性があることが示唆された。SGEが学級集団 の人間関係にアプローチをするものであるのに対して,SSTは個人の技術にアプローチするものであるため, 学校生活における意欲を把握する尺度であるスクール・モラールには直接的な影響を及ぼさなかったと推察さ れる。また本研究においては,SGEとSSTは連続的に行なっているために,SSTを行う際には,すでに 児童はSGEの影響を受け,スクール・モラールが高まっていたため,SSTによって,さらなる高まりへと はつながらなかったと考えられる。 最後に本研究の課題について述べることにする。一つ目は,SGEとSSTの取り組みを連続的に行なっ たことである。本研究においては,SGEにより,スクール・モラールが有意に上昇し,その後に行なわれた SSTの取り組みでは,さらなるスクール・モラールの有意な上昇は見られなかった。純粋にSSTの取り組 みの効果を検証するためには,SSTの取り組みだけを行う実践により,児童のスクール・モラールにどのよ うな影響を及ぼすのかを調査する必要があるであろう。あるいは,SSTを先に実践したのちに,SGEを行 うことで,本研究との比較調査を行うことができると考えられる。二つ目としては,統制群を置くことができ なかったことである。本実践におけるSGEとSSTの取り組みは,本実践を行なったA学級だけでなく,同 じ小学校6年生であるB学級でも行なったが,総合的な学習の時間の一環として,児童のスクール・モラール を高める目的で行なったため,学習展開の同時進行の必要性や, 学習内容の公平性よりA学級,B学級ともに, 同じ時期に同じ内容の学習展開を行なった。そのため,実験群,統制群という区別をつけることができなかっ た。今後は,実験群,統制群として実践を行うことで,効果の妥当性をしっかりと検証していきたいと考える。 引用文献 相川 充 1999 ソーシャルスキル教育とは何か(小林正幸・相川充編 ソーシャルスキル教育で子どもが変 わる)図書文化,11–30. 赤川智子 1997 私が見つけたグアナコ(國分康孝監修 エンカウンターで学級が変わる 小学校編 Part 2),図書文化,80–83. 朝日滋也 1996 私はわたしよ(國分康孝監修 エンカウンターで学級が変わる 小学校編),図書文化, 152–153. 朝日朋子 1996 してあげたことしてもらったこと(國分康孝監修 エンカウンターで学級が変わる 小学校 編),図書文化,144–145. 朝日朋子 1997 友達,大好き!(國分康孝監修 エンカウンターで学級が変わる 小学校編 Part 2),図 書文化,118–121.

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Effects of SGE and SST from the Perspective of Students’ Image of Ideal Classes YOTSUTSUJI Shingo * and MIZUNO Haruhisa **

Hirano Elementary School Attached to Osaka Kyoiku University, Osaka, Osaka 547-0032, Japan ** School Education Course, Osaka Kyoiku University, Kashiwara, Osaka, 582-8582, Japan

 The effect of approaches using Structured Group Encounter (SGE) and Social Skills Training (SST) on students’ school morale was examined. The degree of strength of students’ images of ideal classes, i.e., how strong images students have about the ideal class situation, was used as a parameter. Participants were sixth grade elementary school students (N = 31). SGE and SST were conducted with them eight times respectively. The results did not indicate significant changes in the students’ images about ideal classes. However, the scores of the “learning motivation” factor, which is a sub-scale of the school morale scale, increased significantly with the group with high scores of “ideal of unity” factor, which is a sub-scale of the scale of elementary school students’ images of ideal classes, compared to the group with low scores of the factor. These results suggest that continuous use of SGE and STT would be effective for significantly increasing learning motivation in students with high ideal of unity about the classes they belong.

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参照

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