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市場価格の産業循環的変動(III)-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

市場価格の産業循環的変動 (

I

I

I

)

安 井 修

1.課題設定 拙稿(6

1

では,恐慌・産業循環の分析を,パソコンを使ったシミュレーショ ン分析によって行った。こうした方法の採用は,恐慌・産業循環論の長い論争 史のなかでは,次のような意味をもっている。即ち,論争史の一方の大きな流 れは,いうまでもなく『資本論』の解釈とその発展であった。これは,今でも 商品過剰説と資本過剰説の対立として,論争が繰り返されている。しかし他方 では,こうした論争をより分析的な次元でとらえなおそうとする試みもあった (その代表が置塩であり,高須賀の試みも一資本家の行動様式が欠けていると いう点では,致命的な欠陥をもつが一これに近いといえる)。そうした試みでは, まず商品過剰説や資本過剰説が表現できるモデノレを組み立てて,次にその動き を数学的に分析するということになる。もちろん,商品過剰説や資本過剰説で 論争されたすべての論点が,そうしたモデノレによって表現できるわけではない。 したがって,そこには自ずから限界があるが,しかしそれでも,こうしたやり 方は従来の論争にはなかった明断性を与え,また統計的実証分析にも接続でき るという特徴をもっており(新しいものでは滝田(4)がある),それ故マルクス 経済学以外の産業循環論との比較も可能になるという側面をもっている。 ところで,こうした新しい分析的方法のなかでも,従来は,まず産業循環モ デノレを微分方程式体系か定差方程式体系として組み立て,その特性方程式を解 (1) 滝田は,稼働率を指標とする霞塩的投資関数を取り上げ,これが日本の高度成長期の投 資行動として正当化できるかどうか検討している。こうした実証分析に対しては,<独占 資本の行動様式を明示的に示すことなく検証している>という批判が起こりそうであ る。しかし,いまやるべきことは,こうした実証をともかく積み重ねることであろう。

(2)

-238ー 62巻 第3号

3

6

くことによってモデルの動きを解明するというやり方が多かった。われわれは, そうした手法の明解さを認めつつも,そのやり方には限界があり,その限界を 克服するにはコンピュータを使ったシミュレーション分析以外にないと考え た。ただし,拙稿(6)は,まず(置塩モデルとは異なった)基本的なモデJレの 構築とその動きの分析に重点を置いていた。それ故,モデルの動き自体は,現 実的な恐慌・産業循環を与えるには若干不十分なものといわざるをえなかった。 本稿はその不十分性を補うことを第一の課題としている。 ところで,このように, <より現実的な恐慌・産業循環>を構成しようと考え る時,まず、第一に取り入れられるべき点は信用恐慌論であろう。いうまでもな く,産業循環がなだらかな上昇と下降の繰り返しにならないのは,恐慌期に信 用恐慌が勃発して,下降局面をより急激なものとするからである。拙稿(7Jは, かかる観点を念頭に置きながら,信用恐慌論の論争を整理したものであった。 しかしながら,信用恐慌論を整理した後で考えてみると,われわれの産業循環 モデルに,かかる信用恐慌論的な論理を組み込むことはきわめて難しいことで あるといわざるをえない。信用崩壊の定式化も困難なら(拙稿

C

7J rIV.信用 恐慌論

(

3

)

一われわれの見解」参照),それがわれわれのモデルにどう影響する かを与えるのも困難である。ここには,先にも述べたようなモデノレ分析の限界 があるといってもよい。したがって,われわれは,信用恐慌の産業循環への影 響も,たとえば資本家の投資がその結果著しく低下するという形で組み込む以 外にないのである。以下の分析も,かかる意味での限定をもっていることをあ らかじめ注意しておきたい。 (2 ) 本稿のプログラミングでは, Quick BASIC (マイクロソフト株式会社)を利用してい る。そのため,拙稿(6)のN88BASICとは若干脅き方が異なっている。たとえば行番号 がない,とか。実験した結果,コンパイルしてから動かすと,計算速度がかなり早くなる ので,採用したものである。ただし,本稿の結果はファイJレをコンパイルしてから動かす というようなことはしていない。というのは,結果をだすのにそんなに時間がかかってい ないからである。また, Quick BASICの特徴たる構造化もしていない。いずれにせよ, 本稿のような小さなプログラムを書くだけなら, Quick BASICを用いる必要はない。

(3)

3

7

市場価格の産業循環的変動 (III) -239-II.モデルのイ修正 まず,拙稿(

6

)のモデルを確認しておこう。モデルを基本的に構成している 方程式をあげれば,次のようになる(以下,これを「モデル

1J

とする)。 Kt=Ktー1+SYt-1 ht= ht-l+u1(]t-l-S) lt= ltーl

{

1

+V十U2(]t-l-

S

)

}

(1-1) (1

-

2

)

(1-3) Yt=αKtht (1

-

4

)

lt= l

t

!

Yt (1-5) (1-1)式は資本(K)の動きを示し, (1-2)式は資本家の稼働率(h)決定を示 し, (1

-

3

)

式は資本家の投資(1)決定を示し,

(

1

-

4

)

式は供給(Y)を示し,

(

1

-

5

)

式は需給比率(刀を示す。単位は,Kと

I

Y

が金額表示である。モテソレの最大 の特徴は,いうまでもなく資本家のさまざまな決定が需給関係を指標として行 われるとしていることであれそれ故,需給関係=市場価格の変化が投資行動 や稼働率決定にいかなる影響を与えるかという分析が中心となっている。しか し,注意すべきことは,そこで生じた市場価格の変化をもって ,

K

Y

の金額 の再評価はしていないということである。その意味で,金額表示といっても, 不変の価格体系を用いているというべきであろう。この点は,後にみるように, 更新投資と減価償却積立金と関係を考える場合には大きな意味をもってくる。 この節では,拙稿(

6

)のモデルの一部を修正することにしよう。われわれの モデルで,稼働率や投資決定の基準とする需給関係というのは, (総需要一総供 給)/総供給という比率である。ところで,拙稿(6 )の注 (8) (42頁)で言及し (3 ) 価格体系は,本来二つの次元で区別されなければならない。一つは,均衡価格と市場価 格の区別であり,もう一つは同じ均衡価格体系内での,価値価格と生産価格の区別であ る。本稿で用いているのは前者である。それ故,<不変の価格体系>という場合,市場価 格の運動から独立した均衡価格体系という意味で考えているわけである。後者の区別で も,価値価格は分配関係から独立しており,その点で生産価格と決定的に異なるので,価 値価格を分配関係から独立したという意味で,<不変の価格体系>ということができる。 ただし,価値価格でも生産価格でも,その差異は複数の財における交換比率として問題に なるのであって,本稿のように部門分割をしていない場合には,両価格体系の差異は問題 とはならない。一部門モデルで問題としうるのは,前者の区別だけである。

(4)

-240ー 第62巻 第3号

3

8

たことであるが,そのような需給関係を rモデル

1

J

のように定式化すること については若干の疑問がある。というのは,そこでは消費性向を Cとした上で,

cY

を消費需要としている。しかし,拙稿(

6

)では,

Y

はあくまでも生産量を示 すものであるから ,

cY

を消費需要とすることには無理が伴うのである。われわ れは本稿では次のように考える。いま,乗数理論を前提にして,投資需要が一 定倍数の消費需要を創造するとし,この関係を,総需要=政とするとしょ弐 そうすると,需給差というのは,

l

t

!

s

-

Y

tと な れ こ れ を 総 供 給

Y

tでわるなら, 採用されるべき基準は,

]

t

!

s-l

でなければならない。ところが,拙稿(6)では, この値

(

]

t

!

s-l)

で は な し こ れ に

s

をかけた形になる, (ム

-5)

を採用してい る。もちろんそれでも,需給関係を反映していることにはなるが.5をかけた だけ(.5

<

1

であるから),変化が小さく表されることとなる。本稿で修正され たモデルを rモデル

2J

とすれば,それは次のように示される。なお, ]の定 義を最初から, ] = (I/s)

/

Y

としておけば,基準となる需給関係はん

-1

とな る。この方が,後のモデノレとの比較が簡単なので,こちらを採用しよう。

Kt

=

Kt

-

1

+sY

t

-

1

h

t

=

h

t

-

l

+

u

1

(

]

t

-

l

-

1

)

l

t

=

1

ト 1

{

1+v+u2U

ト 1 -

1

)

}

Yt

=

a

K

t

h

t

]t= (ft/

s

)

/

Y

t (2-1)

(

2

-

2

)

(

2

-

3

)

(2-4) (2-5) さて,この修正されたモデルの動きは,拙稿(6 )のものと基本的には大きく 変わらないのであって,異なるのは,すべての動きで周期が短くなっているこ とである。これは,調整過程が大きく(早く)作用することから生み出される 結果なのであろう。ここでは一例として,拙稿(

6

)の第

5

(

5

9

頁)に相当す (4 ) この場合,消費需要は,I,(1/s-1)であるから,消費需要と投資需要との比率は,(1-s)/s となる。 1-$ じとすると, ι/sとなる。つまり,投資需要がどのように変化しようと, それに連動して同じように消費需要も変化するため,消費需要と投資需要の比率は不変 のままに推移することとなる。需要の構成が変化しないとすれば,財の構成も変化しない こととなり,かくして sYが投資財の供給を示すとすれば, ιYは消費財の供給を示すこ ととなる。それ故,投資財の需給アンバランスが発生すれば,同時に消費財の需給アンバ ランスも発生していることとなる。

(5)

3

9

市場価格の産業循環的変動(lII) 図

H

(

t

)

I

hO

0

.

2

から

0

.

6

まで動かす

2

D

1

0

;

1

1

1

1

1

I 1111

0

0

-241-t るものを示しておこう。これは,初期値のうち稼働率を

0

.

.

2

から

0

,,

6

まで変化 させたものである。プログラム

1

と図

1

参照(なお,本稿でもプログラムは末 尾にまとめて掲載した)。この図では振幅も小さくなっているが,すべてのケー スで iモデルlJより「モデノレ2Jの振幅が小さくなるというわけではない。 ただし,その違いは本稿の主題ではないので,詳細は省略することとする。 III.<更新投資と減価償却積立金の関係>と<生産能力の遅れ> 以上の修正されたモデルを前提にして,この節では,先のモデルで欠けてい た点を補うことから始めよう。本稿では二つの観点を新しく導入することにす る。第一は,更新投資(以下 ,

R

と記す)と減価償却積立金(以下 ,

D

と記す) の関係であり,第二は,生産能力化の遅れを,拙稿(

6

)のケースより大きくと ることである。 まず,更新投資と減価償却積立金の関係から取り上げることにす£ 最初 (5 ) 固定資本の耐用期聞を問題にした場合,通常二つの問題が取り上げられる。第一が,ぃ

(6)

-242- 62巻 第3 40 に , こ の 問 題 の 定 式 を 与 え て お こ う 。 以 下 の 定 式 は , マ ル ク ス 経 済 学 の 教 科 書 に は ど れ に も 掲 載 さ れ て い る も の で あ る 。 た と え ば , 富 塚

C

5 )参照。単純化の た め に , す べ て の 設 備 の 耐 周 期 間 = 更 新 期 間 はn期 で あ る と し , 毎 期

l

/

n

だ け 減 価 償 却 積 立 を 行 う と す る 。 今 期 の

D

は 次 の よ う に 定 式 化 さ れ う る 。

Dt

=

K

t

/

n

(1) 他 方 , 更 新 投 資 は 次 の よ う に 定 式 化 さ れ る 。 Kは , さ ま ざ ま な 年 齢 の 設 備 か ら構成されているから,

Kt

=

Rt+Rt+l+

川わ十

R

t

+

n

-

2

+R

t

+

n

-

l

こ の 式 の 右 辺 は , 存 在 す る 設 備 が , 左 か ら 右 に 更 新 が や っ て く る 順 序 で 並 ん で お り , し た が っ て 右 端 の 最 も 後 で 更 新 が く る 設 備 は , 最 も 新 し い 設 備 と い う ことになる。そして,一番古い

Rt

が 今 期 更 新 の 時 期 に な っ て い る と い う わ け で ある。 Kの 増 加 率 が プ ラ ス で あ る 以 上 , こ の 式 の 右 辺 は , 左 か ら 右 に 拡 大 し て い る こ と に な る 。 た と え ば ,Kのt期 の 増 加 率 を め と す る と ,

R

t

R

t

+

l

=

{

1

+

g

t

+

l

ー(トl)

}

R

t

わゆるヴィンテージ・モデルをめぐる論争であり,第二が,更新投資と減価償却積立金の 関係である。前者の問題は,霞塩(2) (第3章 r3. 技術進歩と廃棄過程J)のなかです でに先駆的に取り扱われている。そこでは,まずいくつかの仮定を設定する。たとえば, 技術進歩は「労働生産性を上げながら,資本係数は変えない」タイプであり,その労働生 産性と実質賃金率の関係から,粗利潤をもたらしうる設備を規定し,この意味での経済的 耐周期間を問題にする(物的耐用期間は問題としない),とかである。そしてその下で, たとえば設備投資が活発な好況過程では,資本の廃棄への圧力がどう作用するか,といっ た分析がなされている。またこうした枠組を,く実質賃金率の上昇一利潤率の低下>を中 心とする産業循環論に適用したものとして,佐藤(3)がある。しかし,本稿が対象とする 問題は,後者の問題である。われわれのモデルの特徴は,需給不一致モデルであり,それ 故そこに,マルクス経済学の恐慌・産業循環論のなかで長く論争されてきたDマイナスR の問題を(需給不一致のー要因として)積極的に取り入れることができたのである。もち ろん,

D

マイナスRの問題自体はマルクス経済学だけが扱ってきた問題ではない(ハロツ ドやドーマーやシュタインドル等の試みもある)。したがって,それを需給不一致モデル の投資関数に組み込んで,モデJレを動かすという試みが他にもあったかもしれない。もし あるとすれば,われわれの試みはマルクス経済学からのアプローチということで理解し でいただきたい。

(7)

4

1

市場価格の産業循環的変動(I

m

-243ー 計 Rt+i=

{

l

+

gt+ト(n-l)}Rt+ト 1I

n

個 Rt+nー1= (1

+

gt)Rt+n-2 したがって,上の式は次のように変形される。

K

t

Rt = 1+(1+gt-n+2)+(1十gt-n+2)(1十gt-n+3)

+

(

2

)

なお,成長率が同じ

(

g

)

である場合には, (2)式は次のようになる。 R(t)= go

ι

j((l+g)n-

l

)

(富塚(5)291頁参照)。われわれは, (初期条件の)過去の 資本の成長率を同じと想定するので,この定式は何度か使うことになる。 さて,以上の定式を踏まえて,この問題をわれわれのモデルに新しく組み込 むこととしよう。(1-1)式や

(

2

-

1)式では,こうした問題は考慮されていないか ら一度設置された設備は永久に機能し続け,それに新たな部分が毎期

sY

とい う形で加わることとなっている。では,耐久=更新期間の問題を入れると,ど うなるのだろうか。本稿では,部門分割をしていないので,生産物は消費財に も設備にもなりうる。いま,たとえば10台・10億円の機械の更新が必要だとし よう。とりあえず技術進歩を捨象すれば, 10台・10億円の機械があれば,同じ 能力の設備に置き換えることができる。ところが,他方で消費にも新投資にも 使われない,更新用の財(機械)がたとえば11台・11億円生産されることにな る。これが上で定式化した

D

マイナス

R

の問題である。とすると,この結果, 供給が需要を上回ることになる。われわれのモデルにおける価格の取扱いから いって,この先は,問題が二つに分けられねばならない。第一に,資本設備の 供給が更新で必要となる部分より多くなるということだから,それは生産能力 の上昇をもたらすことになり,かかる上昇部分をわれわれの体系のなかに反映 させなければならない。もちろん,需給のギャップがある以上,市場価格の変 化(低下)が生まれるが,もし低下する市場価格で評価するなら,生産能力の 上昇は価格低下で(増加した台数が

1

台当たり価格の低下で)相殺されること になってしまう。したがって,つけ加わる部分(11台)から廃棄される部分(10

(8)

-244- 第62巻 第3号 42 台)を引いた数が,生産能力として計算されるように, (不変価格の)金額表示 で定式化されねばならない。ところで,今期の更新投資の大きさは,

n

期前のく 更新投資+新投資>部分に等しいから今期廃棄される部分というのは物財的 には今期の更新投資に等しくなる。他方,新しく設備にまわせる部分というの は物財的にはDtに等しい。そして ,RtもDtも,式をみれば明らかなように,

ι

と同じ次元の不変価格で計算されている。かくして, (1-1)式や (2-1)式から, Rtを差し引き ,Dtを加えなければならない。といっても,われわれは,生産能 力化に遅れを導入しているから ,

K

の増加となるのは,少なくとも前期の

D

マ イナス

R

でなければならない。 第二は,需給不一致=市場価格の変化が,全体の体系にいかなる作用を与え るかという問題である。したがって,ここでは,需給関係を与えている上述の (1-4)と(1-5)(または (2-4)と(2-5))の式に変更が必要となる。即ち,減価償 却積立金

D

G-W

なき

W-G

であるから,新たな供給要因となり,他方, 更新投資Rは

W-G

なき

G-W

であるから,新たな需要要因となる。かくし て,需給比率はいまやこの新しい需給要因を含んだものによって規定されるべ きである。ただし,ここに一つの疑問が発生する。われわれが

Y

の大きさを与 える時,現存の設備に産出係数をかけ,更にそこに稼働率をかけている。そし て,産出係数は当然技術的に与えられていると考えられている。その意味では, その係数のなかには減価償却積立金のための販売=供給も含まれていると考え るのが妥当であろう。だから,たとえば以前のモデルではこの値がOド5であっ たとすれば,それが今度は0.75となるというようにすればよいことになる。そ のようにしないで,Dを独立に取り出す意味は何か。われわれは,資本家の生 産決定の行動のなかには,技術的に可能な生産量水準を前提にして,これをた だ単に稼働率を調整するだけで対応するのではなしたとえば不況で稼働率を 落としていくとしても,減価償却積立分はまず先験的に確保して,その残りの 分を稼働率調整で対応するという行動もあるのではないかと考える。こうした 場合には新たな定式の方が意味をもってくることはいうまでもない。 Yt+Dt をGNPtとすると ,GNPt

=

Kt(

α

.ht+1/n)となる。

α

n

は,生産技術的なパ

(9)

43 市場価格の産業循環的変動 (III) 245-ラメータである

(

n

にはそれ以外の要素もあるが)から,この式は,生産技術 的なパラメータを二つに分けて,一方だけに稼働率をかけたということになる。 「モデノレ2J の残りの方程式のうち, (2-2)と(2-3)は変化させる必要はない。 かくして新しいモデルを「モデル3Jとすると,それは次のように与えられる。 Kt = Kt-1+sYt-1- Rト 1十Dt-1 ht

=

htー

l+u1

υ

1

-

1

)

I

t

=

I

ト 1

{

1

+

v

+

u

2

(

]

t

ー1 -

1

)

}

Y

t

=

αK

九 Dt = K

!

t

n GNPt

=

+Dt

R

, = , , f, , ¥ ,1,

K

t , t - 1 +(1 + gト 肘2)+(1+ gト n+2)(1+ gt-n+3)

+

なお

gt= (Kt-

κ

山)/Kt-1 lt=

(

I

.

+

Rt)/GNPt (3-1) (3-2) (3-3) (3-4) (3-5) (3-6) (3-7) (3-8) 以上のような定式を前提にして rモデル3Jを動かしてみよう。まず,あら かじめモデルの全体の特徴について説明しておこう。われわれは更新投資と減 価償却積立金の関係を導入した際,実はニつの問題を導入したこととなる。第 一は,生産能力自体が

D

マイナス

R

分だけ向上していくという問題であり,第 二は,Dマイナス

R

が需給関係に影響を与え,市場価格を変化させ,それを通 して資本家のさまざまな決定に影響を与えるという問題である。第一の問題は, 生産能力を必然的に高める。したがって他の条件が変わらないとすると,体系 は必然的に低い水準で停滞することとなる。試みに, (3-1)式から ,-Rt-1十Dト l を除いて比較してみればよい。その場合は,h=

1

を中心として循環を繰り返す のであって,他の条件が変わらない限り,停滞するということはないのである。 したがって,たとえば稼働率 (h)がlの水準の近くで動くためには,投資の予想、 成長率(v)を0..15から,たとえば0..2に上昇させなければならない。要するに,

D

マイナス

R

の問題があるから,それを補うだけの新投資が発生しないと,経 済は停滞局面に突入してしまうこととなる。そして vを0..2の水準にまで上

(10)

-246- 第62巻 第3号

4

4

げると,この体系が本来的にもっていた循環的な運動が現れてきて ,h= 1近く の水準をめぐって産業循環的な運動をすることとなる。ここから次のことが確 認できる。第一に ,

D

マイナス

R

は,経済発展のポテンシャリティであると同 時に,活用されなければ停滞への引きがねとなる。第二に

v

が高くなるかど うかは,資本家のアニマル・スピリットに依存していることであって vを高 めるような内的メカニズムを資本主義自らがもっているわけでは決してない。 本稿の主題は停滞論ではなしあくまでも恐慌・産業循環論であるから,以下 の分析では vを

0

.

.

2

として(,モデノレ

2

J

では

0

.

.

1

5

であったが),モデノレを動 かすこととする。他方,第二の問題は,これから詳しく分析することになるが, 全体的には,モデルの運行を一層複雑にするということになる。したがって, その中身を一般化することは困難であるが,あらかじめ次のことは確認できる。 第一は,複雑にはなるが,循環を内在化させている点では,モデル

2

J

と基本 的に変わらないということである。しかし第二に,更新投資が景気回復の下支 えになるという点が新たな特徴となる。「モデル

2

J

では,

1

=

0

h

=

0

.

.

2

に張 り付いた時,ここから回復する要素は体系の内部には存在しなかった。しかし, 今回のモデルでは,たとえ新投資はゼロでも,更新投資は維持されるから,そ れが回復への(決め手になるかどうかは別であるが)下支えにはなりうる。そ の意味では,モデル3Jでは循環的傾向は強まっているということもできる。 以上の全体的な特徴を踏まえて,細かい点に入ることとしよう。拙稿(

6

)と 同様に分析をするなら,まず,理想的な状況を前提して,モデノレが均衡経路を 走ることを与え,次に任意の点から出発した時,体系がどのように動くかをみ ればよい。そこでまず,モデルが均衡経路を走るケースを与えることにしよう。 その設定に先だって,とりあえず,更新の期間(n)は8期と想定しておこう。こ の期間自体は後に変化させて,シミュレーションを繰り返すので,特別の意味 はない。次に, (3-7)式をみれば明らかなように,それまでの資本の成長率を前 提しなければならない。ここでは,更新投資はその期に減価償却積立をした金 額も含めて行うとしているので,合計6期前までの成長率が前提されねばなら ない。いまそれをすべて

15%

であるとしよう。最後に,稼働率や需給比率等の

(11)

4

5

市場価格の産業循環的変動(lII) -247ー 図

2

H

(

t

)

I

更新投資を需給に導入

-8

期闘で更新

2

日“

1

.

.

0

日 ,

0

t 初期条件を与えねばならないが,ここでは(拙稿(6

J

で示した) r均衡経路を走 るケース」と同様の設定をしておくこととしよう。しかしながら,そうしたプ ログラムは均衡経路を走らないのである。プログラム2と図2参照。その理由 は,いうまでもなくこのモデルでは

D

マイナス

R

の問題が発生するからである。 いま需給比率の初期値(ん)として均衡値1を与えたとすれば, (3-2)式から

H7

は1を維持する。しかし,,hはlを維持することはできない。なぜ、なら,その ためには,(1出

)+R7=

+D7

でなければならないが,これが一般的には成立 しないからである。

R

D

との関係では,いうまでもなく絶対額がますます需 離していくから,これを相殺する形で,1がそれ故Uが伸びなければならない。 では vがいかなる値をとれば均衡経路を走ることとなるのか。実は,この例 では一度需離が発生すると,必ず体系は循環を始めるから ,vにいかなる値(固 定した値)を与えても,均衡経路を走るということはないのである。もし均衡 経路に入るとすれば vがそうした靖離を調整するように自動的に変化した場 合である。 Uがそのように変化することはもちろんありえないが,もしその場 合のUをあえて計算するなら,それは次のように計算される。まず,

l

t

-

l

1

(12)

-248ー 62巻 第3号 46 あるから, (3-3)式から ,v =

(

I

t

!

Itー

1

)

-

1

となる。次に ,]tも

1

であるためには, (3-8)式から ,

I

t

=

s(Yt+Dt-Rt

)

でなければならない。そこから逆に ,

I

t

が その値をとるためにはUがどのような値をとればよいかを計算すれば v

s

(

五十 Dt-Rt

)

/

I

t

-l-1となる。期首には,

K

の値は与えられており ,

K

が与え られれば,

Y

D

R

I

から独立に与えられる。したがって

v

が上の式に 示される値を自由にとれるとすれば, ]=1の経路を走ることとなる。しかも, 22222222222222222222222222222222222222222222 9 M 9 -9 M 内 4nL9uη49H 内 49M 内 4 内 49MnL の 4 の L のL A r -9 u n ι n r u 内 4 n ' u の Y M n r u n ' " の , -q ' u n , 白 内 , U の' u n F U 9 U 9 H q , 伽 内 L 内 4 の49un , uq49-n ,h 内4 叩 帥 h . . . 引 1 山 わ “ 刷 . l “ t 、 “ 刷 . 0 " . 0 . . “ 1 " 吋 1 d 刷 I 1 “ ハ V ハ V A υ ハ U ハ V A υ A υ ハ v ハ V ハ υAU ハ VAV ハ υ ハ U ハ υ A υ ハ VAU ハ U ハ U ハ V A V n υ ハ V ハ U A υ ハ υAυAυAv ハ U A υ A υ ハ V ハ V A υ ハvV A υ ハ υ ハ VAV ハ v = = z = = z -= -= = = = = = = = = = = = " = -= = = = z = = = = -= -= = = = = = = = -= -= = = = = ﹀ ﹀ ) } } ﹀ ﹀ ) } ﹀ ﹀ ) ﹀ } ﹀ ﹀ ) ﹀ ﹀ ) ﹀ ﹀ } ﹀ ﹀ ﹀ ) ﹀ } } ﹀ ﹀ } ) ﹀ ﹀ ) ﹀ } ) ﹀ ﹀ ) ) 78901234567890123456789012345678901234567890 11111111112222222222333333333344444444445 ︿ ︿ ︿ ( ︿ ︿ ( ︿ { ︿ ( ( ︿ ︿ ( ︿ ( ( { ︿ ( ( ︿ ︿ ︿ ( ( ︿ ( ︿ ( ( ( ( ︿ ( ( ( { ︿ ( ( ( ︿ wvvvwvwvwvvvv ・ -wvwvwvv ・-uvwvwvwvwvuvwvwvwvvvv ・-wvwvv ・-wvwvwvvvwvwvwvwvwvuvwvwvwvwvv ・-W U ・ V ・-w v w v , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , A U A U ハ V ハ VAVAVAUAVAUAV ハVAUAV ハ VAVAUAVAυAVAVAVAUAV ハ U ハ VAVAVAV ハ V A V A V A V A V A V A V A V A υ ハ VAVAVAVAVAVAU A V ハ U A υ A υ ハ U ハ V A V A υ ハ υ A υ A U A V A υ A U A υ n υ A V A υ ハ υ ハ υ ハ υ ︽ υ A υ ハ V A υ ハ υ A υ ハ υAUAUAV ハ VAU ハ υ A υ ハ υ A υ A V A υ ハ υ A υ ハ UAVAU 1 " 、 . 1 . l 叶 1 b t . 叶 刷 副 " . t り . i { 、 わ り 1 . ム ρ 引 白 併 . h { . i 叶 刷 0 " ム 。 " 1111111111111111l111111111111111111111111111 = = = = = = = -= -= = = = = = = -= -" = 闇 = = = = -= -= -= -= -= -目 g . = = = = = = -= -= = -= -= = = = -= -= = ﹀ ﹀ } ﹀ ﹀ ﹀ ﹀ ﹀ ﹀ ) ﹀ } ﹀ ) ) ﹀ } ﹀ ) ) } ﹀ ﹀ ﹀ ) ﹀ ﹀ ) ) } ﹀ ) ﹀ ) ﹀ ) ) } } ﹀ ﹀ ﹀ } } 勾 7

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(13)

4

7

市場価格の産業循環的変動 CIII) -249-(J =

1

だから)

h

=

1

で,

K

Y

I

は同じ成長率を維持する。ただ,この場 合は,均衡経路に最初から入るように初期条件を設定しているわけではないか ら,

(K

Y

I

とUの値に関しては)数期間は変動した値をとっている。そこ で,われわれが設定した例のなかでも,もし資本の過去の成長経路を15%でな く22%とし,初期投資を 15でなく 17とすると, 7期からすべての変数が均衡 経路を走ることとなる。プログラム3と表l参照(なお,プログラム3のUに 上の式ではなく,最初から 0..22を与えると,均衡経路を走るようにみえるが, 実はごく小さな循環が起こってしまうのである。これはたぶん計算上の誤差か ら発生するのであろう)。もちろん,資本家がこうした値を知っているわけでは ないから,この均衡経路が保証されるわけではない。ただ,理論的な分析をす るための基準にはなるだろう。 そこで,次に任意の点から体系を出発させてみよう。任意の点といっても, ここでは拙稿C6

J

と同じ条件で出発させてみよう。ただし,更新投資と減価償 却積立金の関係が導入されているため,初期値の一部は変化せざるをえない。 いま, 16を 5とし ,

H6

0

..4とし,このこつは拙稿(

6

J

と同じとする(拙稿(

6

)

の条件は,全体として不況局面を表しているといってよいが,これはわれわれ が産業循環を考える場合には不況局面からはじめた方がよいと考えているから である )0

K6

は100と与えられているから,この三つが与えられれば,拙稿(6 ) では自動的にんも決まっていた。(ん=

0

2

5

)

しかし,本稿では

f

の定義が異 なっており ,

J

を決めるには

R

それ故資本の過去の成長経路が与えられねばな らない。いま不況局面を前提しているのだから,その値を低くして,すべて5 % (6 ) 佐藤(3 )は,霞混(2)と同じヴィンテージ・モデルを前提し,これに実質賃金率を決定 する関係式等を導入して,モデルを完結させている。そして,まず「順調な拡大再生産径 路J(商品市場での需給一致,耐周期間一定,失業率一定が充たされる径路)が実現され る条件を明らかにし,そこからはずれた場合(一つは実質賃金率が異なった場合,もう一 つは初期ヴインテージが異なった場合)を想定し,いずれも「しばらく期間を経過した後, 循環解に収束していく」ことを明らかにしている。本稿は,同じ固定資本といってもく更 新投資と減価償却積立金>の関係を対象としたものである。しかし,後にみるように,固 定資本と減価償却積立金との関係は,われわれのモデルが内在的にもっていた産業循環 の動きに根本的な変更を加えるものではなしその意味では,佐藤(3)の結論と一定の類 似性をもっている。

(14)

250ー 第62巻 第3号 48 図

3

H(t)

I

更新投資を需給に導入 - 8期闘で更新

2

.

0

1

.

0

0

0

t 緑:穣働率(h),赤:需給比率(,)) とすることとしよう。過去の8期間すべてを5%とするのだから,少し極端な 設定になっている。これは100期間みた循環過程のなかで,最初の循環過程に いくらかの影響を与えると思われる。プログラム4と図3参照。 この図3が本稿の分析の出発点になる。図3では,かなり規則的な循環を繰 り返している。その理由は何か。もちろん vを0..15から 0..2に上昇させたこ とが最大の理由である。さもなければ,循環どころか停滞局面に向かっていた からである。しかし ,v = 0..2の下で,なぜ循環過程が発生するのかは別に説明 されねばならないことである。そこで,まず変数の決定関係を図示すれば,下 の図のようになる。 図があまり複雑になるのを避けるため ,t-1期から t期に受け継がれる決定 関係と t期内での決定関係を中心に図式化した。更に,決定関係を詳しくみる ために作ったのが表2である。表2のなかでは,H Hはh(稼働率)の増加率 であり ,

DR

D

マイナス

R

の増加率である。これらの図と表を参考にしなが ら循環が発生する理由を考えてみよう。まず,

1

の変化はすぐさま

h

I

(15)

4

9

市場価格の産業循環的変動 (III) -251-t-l期 「モデル2Jの決定関係 t期 t+l期 う Kt+l t-ll明 「モデル3Jの決定関係 t期 t+l期 D t - l - R t - l ¥ D t - R t ↑ ¥ ↑ Kt-l ~) Kt SYt-l~

It

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(16)

-252- 第62巻 第3号

5

0

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(17)

5

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1

が表2では30期から 32期かけて急上昇し,これが,h とIの31期から 33期の急上昇をもたらしている。ただ,投資関数と稼働率関 数の違いから(投資関数はUが入っているだけ,変化が緩和され), hの変化の 方が急激である(→(3-2)(3-3)式)0hの変化はYに影響を与え,それ故同じよ うにYも急上昇している。そしてその後,

1

の低下とともにhも低下し始める ので,

Y

も低下する。ところが,

Y

の動きはhのみならず,

K

の動きも影響す る(→(3-4)式)0

K

は生産能力化の遅れから,本来ならYの変化から少し遅れ て変化することになる。ところが,

K

は同じ時期に逆に増加している。これは,

D

マイナス

R

3

6

期から 44期まで増加したからである(→

(

3

-

1)式)。こうし て,Yの低下は一度逆転することとなる。かくして ,hのトップとKのトップ の中聞にYのトップがくるが,実はYはこつの山をもった形になり,その前後 にIのトップが現れるという複雑な形になっている。そして,こうしたなかで 起こる

I

Y

の動きの逆転関係こそが,説明の出発点にした/の上下運動を引 き起こすこととなる。ただし ,

1

にはDマイナスRも影響しているのであって,

f

が30期から32期まで急上昇したのも,その前後にDマイナスRが急低下し ていることも大きな原因となっている(→

(

3

-

8

)

式)。 以上を出発点にして,次にパラメータや初期値を変更してみることにしよう。 まずパラメータの変化からみていこう。第一は vの値である。プログラム5 と図

4

参照(以下,プログラムが基本的に大きく変わらない場合は掲載しない こととする )0vの値が小さいと,体系は若干の循環をしながらも ,hが1以下 の点へ収赦していくこととなる。要するに,経済は停滞状態に入っていくこと になるわけである。 Uが拡大するとともに,大きく循環をはじめ, hの平均的 なレベルが上昇していくことになる。ただ,循環の振幅は大きくなるが,周期 自体は若干長くなるという程度である。なお ,vの値をこれ以上あげていくと,

(18)

1 1

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(19)

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3

市場価格の産業循環的変動(1II) 図 6 H(t)

I

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j

1

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警が子期闘で更新

2

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0

0

0

s a 255ー t 振幅が大きくなり,何回目かの循環の局面で i計算結果がオーバーフローする」 と表示される。第二は,ulとu2の動きである。図5と図6参照。これは図だ けをみているとわからないが,実は正反対の動きを示すこととなる。即ち ,ul を上げていくと,振幅は次第に小さくなり ,h=

1

のラインより少し下のところ に収赦していくこととなる。逆に u2を上げていくと,最初h=lのラインより 少し下のところに収赦していたのが,次第に振幅を大きくしながら,循環をは じめることとなる。そして,特にulの変化では,振幅が小さくなるとともに, 周期も短くなってくる (u2の変化では周期はあまり変わらないようにみえ る)。いずれにせよ,まず確認できることは,h=l近くの平均的なラインを決 めているのは,ulや u2の値ではなく ,vの値(v=

0

2

)

であることである。そ して,稼働率の決定=生産量の決定の反応係数(ul)が高いことは,変動を小さ くさせるように働き,投資決定の反応係数(u2)が高いことは,逆に変動を大き くするように働くこととなる。要するに,生産量の決定では,調整しようとす る資本家の行動は調整過程を早く進行させるのに対し,投資決定では,調整し

(20)

-256- 62 3

5

4

7

H(t)

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J

J

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i

日,日 t

(21)

5

5

市場価格の産業循環的変動(III) -257-ょうとする資本家の動きは逆に調整過程の揺れを大きくし,変動を大きくする ことをもたらすのである。もちろん

v

ul

u2

のこれらの特徴は,拙稿

(

6

J

の分析と基本的に変わっていないのであり,更新投資と減価償却積立金の 関係を導入したこととは無関係である。第三に,。と Sの変化をみてみよう。 図?と図8参照。

α

s

を高めていくと,両方とも同様に,振幅も周期も小さ くなりながら,平均的な水準自体も低下する。そして両方ともある水準以上に なると ,h = 0..2の水準に張り付くこととなる。

α

が大きくなるということは, 同じ資本で生産できる生産量(Y)を大きくし,その分供給圧力を高め,需給比 率を圧迫する。 Sが大きくなるということは,生産能力を高め,供給>需要を 生む原因になることは明らかであるから,当然このような結果がでてくるので あ ろ う 。 な お が 大 き く な る と い う こ と は , 資 本 財 が 消 費 財 に 対 し て 大 き く なることを意味し,それは資本家と労働者の分配関係が資本家に有利になるこ とを意味するから,いわゆる「生産と消費の矛盾」が激化することを意味する。 もちろん

s

が大きくなることが自動的に不均衡経路を作り出すのではない。 大きくなった Sに対応したUの値を与えれば,均衡経路は同じように成立しう るのである。ただ,たとえば好況過程で労働分配率が低下し,それだけ生産設 備 に ま わ る 分 が 大 き く な る (sが大きくなる)とすれば,供給圧力が増すとい うことは事実である。とすれば,ますます多くの投資需要が生まれなければ

(

v

(7) 先にみたようにモデル2JのGと「モデル3Jのαでは意味が異なっている。即ち, 「モデル2Jでは,設備と生産高をつなぐのはαと稼働率(h)であったが rモデル3J では,減価償却積立金が入ってくるため,aとhとnが関係してくる。もちろん,与えら れた設備の下で,どれだけの生産高が実現するかが,モデJレの違いによって変わってくる わけがない。したがって,もしモデル2Jや「モデル 3Jを使って実証分析をしよう とするなら rモデル2JのGより「モデル3Jのαは低いものとしなければならない。 Gが低くなれば,振幅も周期も大きくなり,平均的な水準自体も上昇することとなる。 (8) sが大きくなるとKが拡大する(→(3-1)式)が,これは資本の成長率を高めることに なるから, (過去の資本の成長率に依存しない)Dと(過去の資本の成長率に逆比例する) Rの差を一層希離させることとなる。そして ,DマイナスRが拡大すると,それは再びK の拡大を生む(→(3-1)式)から,かくして循環的な拡大が起こることとなる。井村(1) がいう「膨大な余剰生産手段」とはこれを指すのであろう。ただし,井村(1)は二部門分 割をしているから,これはすぐさま「第I部門の不均等的拡大」と結び付けられることと なるカ九

(22)

-258- 第62巻 第3号

5

6

だとか u2が 高 く な ら な け れ ば ), 下 降 局 面 に 突 入 す る こ と と な ら ざ る を え な い。もちろんだからといって,-生産と消費の矛盾」が恐'慌の原因であるという わ け に は い か な い ( と い う の は

s

が 一 定 で も 恐 慌 ・ 産 業 循 環 が 発 生 す る こ と に 変 わ り は な い か ら で あ る ) が , そ れ で も 「 生 産 と 消 費 の 矛 盾 」 と 恐 慌 ・ 産 業 循 環 と は 一 定 の 関 連 を も つ も の と し て 位 置 づ け る こ と は で き る で あ ろ う 。 た と え ば , 恐 慌 が 発 生 し た そ の 時 に , も しSを低下させることができたら(も ちろ ん 資 本 主 義 で は そ れ は で き な い し , た と え 行 っ た と し て も , そ れ は 資 本 廃 棄 を 遅 ら せ , 結 果 と し て 別 の 問 題 を 惹 起 す る こ と に は な る が ),恐慌過程は(決して なくなるわけではないが)大きく異なったものとなろう。たぶん,井村(1)の 究極的な主張はそこに集約されていくことになると思われる。 次 に , 初 期 値 を 変 化 さ せ て み よ う 。 初 期 値 の 変 化 で は き わ め て 大 き な 違 い が ある。即ち,初期投資(ん)の変化は,体系の動きに大きく作用するが,それ以 外 の 稼 働 率

(H

6)や 資 本 の 成 長 経 路 ( 五 め か ら 品 た だ し プ ロ グ ラ ム で はK品 か らK K6)の 変 化 は 体 系 の 動 き を あ ま り 大 き く 変 え な い の で あ る 。 図9か ら 図11 まで参照。図9をみると,初期投資が小さいと ,h = 0..2のラインに張り付いて ま ま に な る 。 そ し て , 初 期 投 資 を 大 き く し て い く と 循 環 過 程 が 始 ま る が , 初 期 投 資 を 大 き く す る ほ ど 早 く 拡 大 過 程 が 始 ま る こ と と な る 。 か く し て , こ の 動 き (9 ) いま,社会主義の経済改革は急速にいわゆる市場社会主義化の方向に向かっているよ うにみえる。決定の権限が個別的な社会主義企業や個人企業にまで分権化され,それらを 連結するものが基本的には市場しかないということになれば,われわれの論理では,社会 主義といえども産業循環は避けがたいということになる。もちろん,市場社会主義を社会 主義とはみなさず,労働者の主体的な生産管理(=労働力の商品化の否定)こそが社会主 義の本質であるととらえる立場もある。そうした意味で,社会主義とは一体何かを問う試 みはいま緊急の課題であるといってよい。しかし,ここではそれが問題ではない。市場社 会主義といえども,社会主義である以上は,資本主義的な意味での搾取は存在しないであ ろうし,それ故「生産と消費の矛盾」は得在しないであろう。そこからわれわれは,もし 市場社会主義で産業循環が成立するとすれば r生産と消費の矛盾」から恐慌・産業循環 を説明する議論は最終的に破産するのではないかと考える。その解答がでてくるのもそ れほど先のことではないような気がする。そしてその時,ここで述べたような<蓄積と消 費の割合($)を変えることが,恐慌・産業循環過程にいかなる影響を与えるか>という本 来の問題提起がなされることとなるであろう。もちろん,ケインズ政策の展開は資本主義 という枠内での一つの解答を与えたものであるが,ここで初めて社会主義に対してもケ インズ政策とは異なった形での問題が提起されることとなろう。

(23)

57 市場価格の産業循環的変動(III) -259-図

9

H(t)

開号車顎警

l

議結

8

期間で更新

2

"

bー~: ~・ ;I!ー-t 図

1

0

H(t)

1

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誉会品鰐聞で更新

2

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0

0

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(24)

-260ー 第62巻 第3号 58 図

1

1

H(t)

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Z

F

起で量的、す

2

.

0

1

.

.

.-ー.,..,..ー

0

0

t は,不況局面を前提にして好況局面の開始を告げるには, 一定規模の初期投資 いつ拡大過程が始まるかを告げるのも初期投資の が不可欠であること,更に, 大きさであることを示している。 こうした初期投資の動きに対し, それ以外の 初期値の変化は, いずれも体系の動きにあまり大きな変化を与えない。いずれ も,大体グラフが左右にずれるだけで,振幅や周期にはほとんど影響を与えて いないように思われる。図

1

0

と図

1

1

参照。(なお,本稿の分析では,周期が短 くなったため,体系が発散したり収赦したりする過程がみやすくなっている。 われわれは, この

1

0

0

期までとった分析がそのまま産業循環過程を表すもので はないと考えているので,いかなるケースで循環しながら発散し,いかなるケー スで循環しながら収赦するかという点を深く追究しない。) いままでの分析では, nを

8

期としてきたが, これはとりあえず仮定したま でである。 これを更に長くしたり,短くしたりしたらどうなるであろうか。更 新期間を4期とし,残りの条件を同じにして描いたのが,プログラム 6と図 12 であり,更新期間を2期とし,残りの条件を同じにして描いたのが,図13であ る。 これに先にみた8期のもの加えて検討することとしよう。 この三つの図を

(25)

5

9

市場価格の産業循環的変動(lII) -261-図

1

2

H(t)

I

更新投資を需給に導入 - 4期間で更新

2

"

1

.

0

0

0

t 図

1

3

H(t)

I

更新投資を需給に導入 -2期間で更新

2

"

1

.

.

0

0

t

(26)

-262ー 62巻 第3 60 比較するだけでは,更新期間の長短が産業循環の振幅や周期にいかなる影響を 与えるかを読みとるのは難しい。たとえば 4期の更新期間のものは 2期の ものより,また

8

期のものより,振幅が小さいのである。これには次のような 理由があるように思われる。更新投資と減価償却積立金の関係を導入すると, そのままでは経済は停滞局面に突入してしまうので,ここでは,v = 0,2として いる。 Uの値を上げるということは,すでにみたように,振幅を大きくする。 他方,われわれは,更新期間を長くすることは振幅を大きくするように働くの ではないかと考える。したがって,

2

期の更新期間の場合には,v =

0

2

の振幅 拡大作用が更新期間の短さに伴う振幅縮小作用を打ち消すこととなり,振幅が 大きくなる。ところが,本稿の分析では更新期聞を長くしても ,

v

の値は

0

,,

2

の ままである(だから h=lのラインより下の方で循環を繰り返すようになる) から,更新期間を長くすると次第に更新期聞が長くなることに伴う振幅の拡大 作用が現れてくる。ただ,周期の方は必ずしも明確な傾向は見いだされない。 次に,拙稿(6

J

で捨象されていたもう一つの点,即ち生産能力効果の遅れを もう少し大きくとる場合を考えよう。いままでの分析を遅れが1期であるとす 図

1

4

H(t)

I

j

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黙警鐘野

J

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2

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.

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0

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(27)

6

1

市場価格の産業循環的変動(III) -263-図

1

5

H(t)

I

更新投資を需給に導入 - 8期間で更新

v

=

O

.

1

5

2

.

0

1

.

.

0

.

0

t ると,

2

期の遅れを導入したのが,プログラム?と図

1

4

である。実は本稿の分 析の出発点にしたプログラム

4

に遅れを

2

期とすると,体系は「計算結果がオー ノてーフローした」と出て,グラフ表示ができなくなる。そこで, ここでは

v=

0

.

.1

5

とした。この場合,遅れが

1

期のままなら hが低い水準で小さな循環を 繰り返すことになる。図

1

5

参照。ところが,このように生産能力効果の遅れを 大きくとると,大きな循環になるのである。このことは,同じ条件で遅れを

3

期とすると,更により大きな循環になることからも明らかである。かくして, 生産能力効果の遅れの拡大は,循環の振幅を大きくする(好況過程はより一層 拡大し,その反動として落ち込みは一層激しいものとなる)ということになる。

I

V

.

資本家の現実的行動 拙稿(

6

)でも述べたように,われわれは,資本家の行動が産業循環過程のそ れぞれの段階でb異なったものになると考えている。ただ,拙稿(6 )ではそうし た多様な行動様式をモデルのなかに組み入れるということはほとんどしなかっ

(28)

-264- 第62巻 第3号 62 た。本稿では,それを明示的に取り入れることによって,産業循環のあり方を より現実的なものに近づけていくこととしたい。 先にもみたように,モデル分析には自ずから限界があって,より現実的な産 業循環過程を与えるために必要と思われるものすべてを取り入れるというわけ にはいかない。取り入れることができるのはすべて資本家の生産決定(稼働率 決定)に影響するか,投資決定に影響するかという形でしかない。なおそデノレ は,本稿のように,更新投資と減価償却積立金との関係を導入したもの(,モデ ル

3

J)を使うこととする。 まず,生産決定(稼働率決定)については,多くの細かいケースを想定でき るが,ここでは,一つだけ取り上げておこう。好況末期を,まだ需要が供給を 上回る状況にあるが,需給比率が低下しはじめた時期としよう。ここで資本家 は稼働率を下げ,供給を減らす行動にでるだろうか。井村(1)をはじめ,多く の論者は,この時,資本家はかえって稼働率を上昇させるという行動をとると する。「競争市場では実現』条件が悪化しでも,個別諸企業はみずからすす んで操業率を下げ生産縮小をしようとするわけでは決してない。そればかりか, かかる状況で,自己の販路を確保する唯一の手段は,自己の販売価格を(低い) 市場価格以下に下げて『安売り』をすることであるから,相対的に優良な生産 条件をもっ企業,あるいは利潤率の低下を利潤量でカバーできる大企業は,既 存の固定資本投下の基礎上で生産をぎりぎりまで行ない,それら生産物を安売 りして,販売価格総量・利潤総量を確保しようと努める。J (井村(1 J298~299 頁)かかる行動を,われわれは次のように定式化する。

IF

.

1

t

>

1 AND

11t

<

0

THEN

u1t= 0..7+0.01.M

ELSE

u1t=

0

..7 lJt =

.

1

t

-

.

1

t-1 最初の不等式の条件

(

J

t

>

1)は,超過需要であることを示し,次の不等式の 条件

(

J

l

t

<

0

)

は,その傾向が鈍化してきていることを示すものである。そし て,その場合には,資本家はかえって稼働率を一層高める行動をとると想定し ていることとなる。その上で,

M

の値を細かく動かしてみて,どの方向に影響 がでてくるかをさぐってみるというわけである。プログラム8と図16参照。こ

参照

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